2018/12/27

「理想の大学教育」『IDE 現代の高等教育』No.607,2018.12

山極壽一「大学を未来のコミュニティの中心に」
  • 日本の大学の目的:ヨーロッパ型=良識ある市民を育成する⇔アメリカ型=個人の能力を鍛える。絶えず揺れ動いてきた。
  • 科学技術の高度化→製品開発を担う高度専門人材を求めた→大学院重点化→バブル崩壊・中央研究所廃止→ポスドク増→企業の役に立つ人材要請→国立大学民営化構想→法人化・法人評価→資金誘導・短期目標志向→個性の喪失
  • 企業が役立つ人材、研究力低下、国際性不足を指摘するのは、自前で人材育成と基礎研究をしなくなったため。しかし、大学への寄付や委託が増えたわけではない。
  • 今後は、大学の公共財化:地域産業・行政と大学活動を支えるコンソーシアム型運営。
小林雅之「高等教育無償化」
  • J-HECSの逆選択機能:
    • HECS:全公立大学生が対象
    • J-HECS:家計所得1100万未満&希望選択制 → 卒業後高所得が見込めるものほど利用しない → 利用者が低所得・返済額が貸与額を満たさない
    • イェール大でも破綻した仕組み

2018/12/23

ウィリアム・デレズウィッツ(2016)『優秀なる羊たち: 米国エリート教育の失敗に学ぶ』三省堂


  • アメリカ高等教育の起源:イギリスのカレッジ・ドイツの研究大学=2つの異なる教育機関の使命を受け継いでる。
    • もともとカリキュラムは古典中心、人格形成が目的 → 時代遅れに感じられる → 科学に焦点を当てた知識工場
    • その結果:専門別の学部、教授職の階級、テニュア権、博士号
    • その一方でグレートブックス、コアカリキュラムなど一般教育保存の活動
    • → 現代アメリカ高校教育の根源にある折衷:リベラルアーツカレッジをリサーチユニバーシティの中に収めようという考え方はうまくいかないことがわかった。
    • 教員は研究のトレーニングしか受けていないため。
  • 真の教育は履歴書ではなく、いくつかの疑問を抱えた状態で世に送り出すこと。
  • エリートの間でのリーダーシップとは、責任感、名誉、勇気、粘り強さ、献身的態度など、貴族階級の価値観を意味していた。
  • リベラルアーツは、知識の追求を、それ自体を目的として行えるようにするための訓練である。リベラルアーツを学ぶことは、知識がどのように創られるかを学ぶことであり、人はそこで知識を得るのではなく、知識を論じる。
  • 自然科学の命題:これは真理だろうか?⇔ 人文科学の命題:これは私にとって真理だろうか?
    • 人文科学の知識は、人が感じる現実に関連している。
  • 考えることは一つの技能。ボールを打つのと同じ。それを本やビデオでは学ばない。だからオンラインでは学べない。
  • 学生指導の誤解:教授は学生に話すのではなく、彼らの話を聴く。
  • 授業を学術畑の季節労働者に任せるのではなく、本物の教授を配置しないといけない。

2018/12/18

塩田邦成(2017)「学部新設に見る大学改革のマネジメント事例の研究」『大学経営政策研究』7,121-137


  • 問い:大学改革に資する大学運営とはどのようなものか。← 政策調整機能に着目。
    • 特に学部新設に着目:大学改革の諸要素が集約的に現れるため。
  • シェアドガバナンス:
    • 執行部と評議会が並立する形で教員のガバナンス参加を保証するとともに、相互に対するチェック&バランスを機能(福留 2012)。
    • 法的権限と専門的権限という二つのシステムのバランスを保つ構造やプロセス(バーンバウム 2003)。
  • 日米のガバナンスの違い:経験や手法の蓄積の差
    • 正規の意思決定手続きの脇に、大学執行部、教員・教員団の両者をつなぐインフォーマルな組織(Joint Big Decisions Committee)を設置したり、オープンな意見交換を実施している例(Keller 1983)。
    • 調整会議、企画会議などの政策調整機能(両角 2012)
  • 同志社と立命館
    • 危機認識システムに違い:前者は危機遭遇なし、後者は80年代に2度危機あり(認知度低下、志願者減、就職実績弱、低学費・弱財政基盤)
      • → 前者は90年代以降、急速に政策調整機能を確立
    • 両者とも政策調整システムあり
      • 同志社:役職者感調整→大学将来構想委員会→総合企画会議(担い手が拡大、改革経験者層が厚くなる)
      • 立命館:長期計画委員会、全学協(委員・事務局メンバーの拡大)

2018/12/10

林倬史(2008)「新製品開発プロセスにおける知識創造と異文化マネジメント : 競争優位とプロジェクト・リーダー能力の視点から」『立教ビジネスレビュー』1, 16-32


  • ダイナミックケイパビリティ(環境変化対応力)の源泉:組織間・組織内学習(知識創造を含む)。
    • グローバル化:知識創造の分散化 → 知識創造活動は、よりクロスカルチャル、クロスボーダーになる。
  • 一般にR&D強化による製品開発は、グローバル化、製品ライフサイクル短縮化、市場の多様化のもとでは非効率になる。→ 外部知識活用・R&D国際化へ。→ 文化的差異を認識し、それを超えたコンセプトを作る必要が生じる。
  • 文化=考え方・感じ方・行動の仕方のパターン(software of the mind)。
    • 個人のマインド(パーソナリティ)は、重層的な文化を背景にしている。= すべてのコミュニケーションは異文化コミュニケーション。=メンバー間で認知され共有されたコンテクストには、常に曖昧さが存在する。
    • トップダウンでは、片方の見方が固定化されたままプロジェクトが進行する。対話すると、解釈的行為により、別の見方が指摘できるようになる。両者が統合されないと、プロジェクト全体が全員によって正確に把握されない。
      • 例えば、メンバーの専門が異なるほど技術革新が生まれるが、失敗リスクも高い。
  • 革新的に新しい洞察や展開は、コミュニティの境界で生じる。
    • コミュニティ:明確な目的を持って知識と学習に重点的に取り組んでいる極めて限定的な社会組織(Wenger et al 2002)=文化的共有の程度が高い。
    • 場:その時々の特定のミッションのもとに形成される複数メンバーによる知識共創の一時的共同体=文化的共有の程度低い。
    • Wengerの実践コミュニティ:2つの中間。
  • コアケイパビリティを構成する知識の構成:個人固有、組織固有、業界固有、科学論文。
    • 個人固有知識は移転が困難。
    • 参加メンバーのドメインが全て重複する領域で新しい知識は創出される。
      • それには真剣な対話が必要。→ 互いに認知されているコンテクストの差異を理解し、曖昧さを明確にして、他領域の知識との接点を認識できるから。
      • そのときに、プロジェクトリーダーが boundary spanner として、それを促進する。⇔ リーダーの境界マネジメント力が低いと、プロジェクトは成功しない。
    • 参加メンバーの専門が2~3=アプローチは分析的に。
    • 参加メンバーが多様=対話の質は解釈的に。→ 曖昧さが増し、一層のオープン性と継続性、信頼感が必要。
  • ケーススタディ
    • プロジェクトリーダーは、文化的多様性が増すほど、参加者に必要情報を積極的に提示させ、相互の問題意識を共有しながら新しいコンセプトを創出した。

2018/12/08

桂直美(2006)「E・アイスナーの「教育的鑑識眼と教育批評」の方法論」『教育方法学研究』15,57-72

  • アイスナーの表現的活動:
    • 「目的は活動の前を行く必要はなく、活動自体のプロセスの中で定式化される」=今後検討されるべき課題。
    • ⇔ ブルームの教育目標論
  • アイスナー(1979):ブルームの行動主義的カリキュラム論の限界を超えようとするカリキュラム評価論。→ 2002年の第3版で、質的研究の方法の1つとも述べる。
    • 質を唯一定義している。
    • 方法論の二重の特性を捉えるために用いたメタファー:鑑識眼と批評。
  • 鑑識眼:ある1つの特殊な対象の質を知覚し評価できる力(知覚されたものを公に表現することは含まない)。⇔ 教育批評は、知覚されたものを公に表す技術。
    • つまり、批評の技術を持たない鑑識者はあっても、鑑識眼を持たない批評はありえない。
  • 教育批評の4局面:記述、解釈、評価、一般化(ステップではなく、全体として4つの働きをもつのが批評)。
    • 記述:浸透的質(場面や対象の生活づけ)と、構成的質(全体の中の特定の質)の着目が重要。
    • 解釈:場面が何を意味するか、いかに機能するかを、概念や理論で説明する。
    • 評価:教育のプロセスを向上させる。価値中立はあり得ない。
    • 一般化:他の教室での実践に関わる主題を追求。

2018/12/07

勝見健史(2011)「小学校教師の「鑑識眼」に関する一考察:熟達教師と若手教師の授業解釈の差異性に着目して」『学校教育研究』26,60-73


  • 鑑識眼(Educational Connoisseurship):児童が見せる複雑で偶然性を潜めた活動の意味や価値を解釈し,臨機応変に適切な指導を行う能力。
    • 教育活動の蓄積を通して経験的に高まる力量。
    • 熟達教師と若手教師が教育実践に際して日常的でインフォーマルなコミュ ニ ケーションを通して無意識に共有・継承され洗練される力量。
  • → 教師の経験の中で積み重ねられた感覚や多様な実践的知識によって可能となる解釈により,客観的測定の難しい教室内外の教育活動の質を捉え,評価する能力と定義(=質的評価の力量)。
  • アイスナー:教育活動の複雑性,偶発性,非可逆性,教師や児童個々人の特性の存在を重視 ⇔ 合理性や効率性,予測可能性を重視。
  • 研究方法:若手教師と熟達教師が共通の授業の発話記録を読み合う場面で,両者が指摘する内容を比較。授業全体を解釈し意味化する場面における教師の経験差による 「鑑識眼」を考察。→ 熟達教師に解釈の根拠となった知識を問うインタビュー(児童理解,教科内容,教師指導の3つの知識のどれかを問う)。

2018/12/06

井上義和(2018)「地の変容とアカデミズム」稲垣恭子・内田良『変容する社会と教育のゆくえ(教育社会学のフロンティア2)』岩波書店,75-97


  • Discipline(躾):学問分野ごとの規律訓練。
  • 講座制教授会:各分野の第一人者が一堂に会するから、真理は自ずから顕現される。
    • ← 国家の官吏を超えて権威を持った秘密。
  • 講座制=帝国大学 ⇔ 学科目制:授業科目に応じて教員が置かれる。
    • 講座制は法人化で廃止(2004)。大学院重点化・院生数増で講座制教授の統率力が下がった。
  • 専門性習得の規範に訴えられない教養部=学生の心に届く言葉を研ぎ澄ます効果があった。

2018/12/05

小針誠(2018)『アクティブラーニング 学校教育の理想と現実』講談社


  • アクティブラーニングを巡る幻想
    • これまでの教育では未来社会を生きる子供に目標を達成できない。
    • 活動的に学べば、主体的・能動的に学べる。
    • ALを経験すれば、思考力・判断力・表現力や学ぶ意欲が高まる。
    • 教員が学べば誰でもALで教えられる。
    • 以上からALは好ましく、政策として導入されるべき。
  • ALの定義変遷
    • 大学改革期:ALを導入すれば主体的に考えられる人間が育てられる。
    • 小学~大学期(2014以降):何を学んだか→何ができるようになったか。
      • 大学=講義からの脱却 ⇔ 初中等=基礎知識・技能の習得をもとに、言語活動を中核にして、思考力・判断力・表現力の育成を目指す。
    • 新学習指導要領告示後(2015以降):AL→主体的・対話的で深い学び。
      • 活動あって学びなし→「ALは視点である」=ALは特定の型ではない。
      • しかし、視点になったために、強化外活動についても目標・内容・方法・評価を3つの学力に集約させた。
      • さらに、教室内で達成する水準が高くなった(=習得した概念や考え方を活用して自ら問いを発見し、課題の解決を行う探究的な学びを、限られた時間の中で多様な子供を相手に行う=不可能)。特に、3つめの学びに向かう意欲という内面のあり方も評価対象。
      • これは、ゆとり教育→ふとり教育:十分に消化しきれない盛りだくさん教育。
      • さらに、太った部分は、カリキュラムマネジメントとして、現場に責任転嫁された。← 戦時下の「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」
  • PISA調査では、ALを経験しないほど、数学的リテラシーの得点は高い(OECD PISA2012データベース)。

  • 近代学校のミッション:個人の解放(学歴獲得)と国民の統合(愛国心教育)という矛盾を引き受けて子供を教育する場。
  • 成城小学校ドルトンプランでも、児童間の意欲や学力格差は深刻だった(最も恵まれた学校であったにもかかわらず)。
    • 子供にできる以上の自主性を要求した→クラスにつながりがない。
    • 基礎学力なくして自学自習は成立しない。
  • 奈良の問題:ALの型を批判された。
  • 戦後小学校のコアカリ:社会科(社会・生活)が中心で花形=活動・経験によって学ぶ
    • 戦後混乱期で教材や資料が十分ない→条件が整わずにできない・社会科は現場調査をやらせる教科だと錯覚される。
    • 系統性・体系性が重要な国語・算数で、単元学習が困難と教員が感じる。
  • はいまわる経験主義批判:今後の学習指導の方針
    • 個人差の考慮、反復練習、能力別グループ指導
    • ただし、当時の調査では厳密な方法と十分な根拠で学力低下を立証したとはいえなかった。
  • → 花形の社会科は、系統主義化で覚える科目になった
    • 自民党・文部省は、日教組が社会科をマルクス主義思想教育として利用することを最も恐れた → 法的拘束力のある指導要領で、系統主義カリキュラムにした。→ それに抵抗できる子供を育てるために、学級集団作りを進めた。
  • ⇔ 班などの学級集団作り(共産圏の少年団(ピオニール):相互監視と減点評価で個性を埋没・抑圧させる結果に(もともとは個の力を自覚し、討議を通じて、集団の力を発揮する)。
  • 1987以降のゆとり教育:今のALは過去の政策評価が不十分。
    • これまで:画一性、硬直性、閉鎖性
    • これから:個性の尊重、自由・自立、自己責任
  • 児童の家庭環境や基礎学力の差が顕著だと、活動による学習は、格差が露骨・残酷に出てしまう。そこに教育的配慮をすると、劣等感や疎外感が増幅される。
    • 基礎学力上位層:AL受けたい ⇔ 下位層:AL受けたくない。
    • 家庭環境が恵まれた子供ほど、調べ学習に積極的でグループ活動でまとめ役になる。
    • ブルームは、知識、理解なしに、高次の水準には到達できないと指摘。
  • 昔のALと今のALの違い
    • 戦後新教育=社会的な学習が目標。個人の外側の生活や社会が対象。
    • 総合的な学習=自己発見の学習。個人の内面の心理が対象。
  • 歴史から学べること:実践、運用、倫理上の課題がある。
    • 実践の課題:ALは強い個人を前提条件にしている。
      • 時間の限界:すべての子供が同じ時間でALで学ぶ。
      • 場所の限界:教室内では多様性は育みにくい。
      • 指導者の限界:既存教材・教員の指導力では対応できない。
      • 学習者の限界:意見の対立が人間関係の対立になる。
    • 運用の課題:マニュアルでALはできない。
      • 教員の仕事は不確実性で支配されている(佐藤)。
      • 型でALはできない。
      • 大学入試で十分評価できるとは限らない。
    • 倫理上の課題
      • 社会科学分野でALをするには、政治、社会、道徳の問題や背景まで、深い理解と批判的な洞察ができ、問題を自分の問題として自覚しなければできない。十分な内化がなければ、ALは不可能。
      • 参加しない自由がない学びの強制は、個人の内面に過剰に介入する。
      • 人材を作るためにALをする政治的問題。ALが求められる時代は、国や社会が一方的な希望や期待を子供に寄せた社会。

2018/12/04

石川淳(2016)『シェアド・リーダーシップ』中央経済社


  • リーダーシップ=職場やチームの目標を達成するために他のメンバーに及ぼす影響力
  • 持論=有効なリーダーシップを発揮するために必要な態度・行動について、その人なりに持っている、明示的・暗黙的な自分独自の信念
  • 持論が優れている理由
    • 応用が容易
    • 自らの性格や能力に基づいている
    • 状況に基づいている
  • 持論を鍛える=様々な場面に適した持論を持ち、自らの持論に対する自信を深める+リーダーシップ自己効力感を高める
    • 自己効力感=思い込みではなく信念、根拠のある心からの自信
  • 理論=持論を言語化できる+経験で得られない考え方を得るために必要
    • 理論 ⇔ 持論 ⇔ 経験
  • 聖路加の職員は、全員1週間のオリエンテーションで救急治療を学ぶ=全員がリーダーシップを発揮する素地を作る
  • シェアドリーダーシップの特徴
    • 全員によるリーダーシップ
    • 全員によるフォロワーシップ
    • 流動的なリーダーとフォロワー
  • マネジメント=人を通じて・人とともに、物事を効率的・効果的に成し遂げるプロセス
    • 計画、組織化(役割分担・指示命令・報告ルート)、リード(モチベート・方向提示)、コントロールの4つが重要な役割
  • 変革型リーダーシップ(フォロワーにビジョン・新しいやり方を示し、働く意義を伝え、個別に育成する)は、カリスマ型リーダーシップに似ている。
  • フォロワーに受け入れられなければ自己満足に過ぎない。
  • ケリーのフォロワーの分類
    • 横(フォロワーとしての役割を果たす):消極的⇔積極的
    • 縦(フォロワーとして自ら考える):独立的・批判的⇔依存的・無批判的
    • 積極・独立批判=模範的フォロワー(チーム・目標へのコミットが高い)
    • 消極・独立批判=独自フォロワー(一人で仕事してしまう)
    • 消極・依存無批判=受け身フォロワー(指示待ち族)
    • 積極・依存無批判=順応的フォロワー(指示以上をする使いやすい人)
  • TMLQ(team multifactor leadership questionnaire):シェアドリーダーシップ尺度
  • シェアドリーダーシップが効果的な対象
    • メンバーの職務態度(=対象や出来事への評価、ex. 職務満足)
    • メンバーのモチベーション(=仕事そのものと人間関係の満足が上がる)
    • 職場にもたらされる能力・情報量(コミュニケーション活発化→共有情報増加→コンテクストの共有化)
    • 職場の成果
  • シェアドリーダーシップが効果的な状況
    • 職場を取り巻く環境(技術環境・競争環境)が曖昧(=試行錯誤が必要な環境)
    • 成果として創造性が求められる(個人が創造性を高めるには、専門的知識・技能、フレキシブルな認知能力、内発的モチベーションの3つが必要)
    • 対応として素早さが求められる(権限委譲、情報・能力が必要)
    • メンバーの専門性が高い
  • シェアドリーダーシップの3つの誤解
    • リーダーシップは権限に依存している ← そもそも影響力には5つの源泉がある。権限だけから発揮されるのもではない。
    • 全員がリーダーシップを発揮すると混乱する ← 混乱の原因は不適切なリーダーシップが発揮されていること(=問題にアプローチしないリーダーシップ)。
      • 適切な判断には、メンバーが方向性(ミッションやビジョン)、状況(生じている問題)、他のメンバー(メンバーの得手不得手や感情、進捗状況)、自分(自分の得手不得手や役割)の4つを把握していればよい。
    • 誰もがリーダーシップを発揮できるわけではない ← ここでの考え方はパーソナリティ・ベース・リーダーシップ。カリスマではない。
      • 同じ経験をしても、学習には差がある。それがリーダーシップの持論の豊かさの差になることはある。
  • 日本は権力格差の受容度が高い=権限に基づくリーダーシップを考える傾向がある。
    • それでも日本の職務概念は、担当が明確でないものがある構造。
    • 職務範囲を曖昧に捉えている日本企業は、潜在的にシェアドリーダーシップの発揮が求められている。
  • シェアドリーダーシップの状態を出現させるには、分化と統合の状態を同時に達成することが必要。
    • 分化を促進する要因:自己効力感、パーソナリティ・ベース・リーダーシップ、多様性を認める風土。
      • 自己効力感は、達成体験、代理経験、言語的説得、生理的情緒的高揚感の4つで高められる。
      • PBLのベースになる強み:性格(自己監視性=自らの行動を客観的に見る傾向+ビッグ5=外向性・感情の安定性(ストレス耐性)・協調性・慎重さ(几帳面・我慢強さ)・経験への開放性)を知り、強みを生かす。⇔マネジメントは弱みの克服も必要。
      • 異質性を排除する要因に配慮して多様性を確保する:ハロー効果(偏った印象だけで判断する)、情報不足(知覚的バイアス)、自己利益の損失(自分が大事にする考えや価値観が否定される可能性)。
    • 統合を促進する要因:目標の共有化、視点の変化(上下両視点の獲得)
      • 5つの要因が重要:制度、儀式、シンボル、言語、公式リーダー
  • 目標の共有化:メンバー全員が目標達成を重要だと考え、そのために貢献したいと思うようになること。そのためには次の3つが必要。
    • 目標の重要性:組織にとってミッションやビジョンがどう重要か、個人にとってどう重要か(自己実現欲求に関わるか)。個人と組織のニーズを整合させておく or 組織目標の達成が個人の欲求充足につながることを示す(報酬を明確にするなど)。
    • 目標の明確さ:曖昧で多義的な目標ではモチベーションは高まらない。
    • 目標の受け入れ
  • 分化と統合という矛盾する事象の同時達成には、メンバー間の信頼関係が必要。
    • 信頼=他人に安心して身を任せることができる心理状態。
    • 信頼を得るために6つが重要:
      • 有能さ:概念構築力、人間関係力、専門的・技術的能力
      • 誠実さ:正直、未来志向、人を奮い立たせる、有能
      • 慈悲深さ:プライベートまで配慮する
      • 開放的:物事を決めるときに基準を明確にする、真実を話す
      • 公正さ:分配的公正(報酬配分の公正)、手続き的公正(報酬決定の手続き・ルールの公正)、関係的公正(敬意を持って接せられる度合い)
      • 一貫性:基本となる信条や価値観が変わらない

2018/12/03

三谷尚澄(2017)『哲学しててもいいですか?』ナカニシヤ出版


  • 哲学すると何がいいのか?
    • 論理的に思考する
    • 箱の外に出て思考する
  • 役に立つという言い方=箱の中の規則に従って役に立つという意味なら、哲学は役に立たない。← 社会的要請の諸能力の育成
  • 哲学教育:
    • ×:測定可能な知識や技術の習得
    • ○:経験の蓄積を通じた習慣の形成
残念だがささやかにも反論になっていない。

2018/11/30

新井泰弘・川口大司(2011)「産業構造の変化と高等教育の役割」NIRA『時代の流れを読む』NIRA研究報告書,62-76


  • 日本の1次・2次産業就業者は急速に減少 → 理工系進学希望者の減少
  • 学部比率=f(1次産業比率,2次産業比率)の直線回帰
    • どの国も相関なし(日本は工学部と2次産業比率の間に関係あり)
    • ← 短期的に在学生数を変えることは難しいため(学生が減ったからといって教員を減らせないため)+効果のタイムラグがあるため(数年後の産業構造を見越した定員削減は難しい)
  • 学問分野別就業先マトリックス
    • 学部iから産業jへの就職割合÷学部iの構成比委率×産業jの構成比率という指標を作成
    • これが1に近いほど、学部と産業の就職に偏りがない
    • → 近年になるに従って、偏りが小さくなっている
    • → サービス業は採用学生の垣根が低い
  • 含意:抽象概念中心でさまざまな分野に応用可能な内容を教えるべき。(ロボットの作り方なら、部品加工やハンダ付けではなく、制御システムや設計方法を教える)。

2018/11/29

Hunkering down: Japan’s higher education sector

  • 大学の国際化は、国内のブランディングのためで、大学の国際化のためではない。
    • 真に国際化した大学の国内インパクトも小さい。企業も国際人よりも日本語を話せる留学生をほしがる。
  • 日本の大学職員=ハードワークなアマチュア
    • 40代以降の転職ほとんどなし。専門職は短期契約雇用。国立の上級職は素人官僚。私立大も文科省のマイクロマネジメント下。
    • 結果として新しい経営ができる人材が出てこない。
  • 日本の講義は受け身過ぎという批判は気にするべきではない。日本の強みはゼミ教育で、これが真のアクティブラーニング。外国は1500人講義もある、コスト減でチュートリアルを減らしつつもある。
  • 日本の高等教育研究者は、自国システムを過剰に批判しすぎ。自分たちの強みにもっと自信を持つべき。
https://www.timeshighereducation.com/features/hunkering-down-japans-higher-education-sector

2018/11/28

Shared Governance Does Not Mean Shared Decision Making


  • シェアドガバナンス=共同意思決定ではない。
    • 大規模災害時の意思決定では、シェアドガバナンスを停止した例。
  • セネトと執行部は日頃から意思疎通を図ることが望ましい。
    • 問題が起こってから議論するのではなく、日頃から議論しておいて、問題には迅速に対応する。
    • セネト側は、アドバイザーとしての役割、意思決定の反対者としての役割を区別して用いる。
https://www.chronicle.com/article/Shared-Governance-Does-Not/244257

2018/11/27

Duties and Functions of Institutional Research


  • 情報ニーズの特定
    • 関係者を特定してその意思決定を支援するための継続的な対話プロセスを指す。その過程で、国内外や個別機関の高等教育情報に精通して、データ、情報、政策に関する問いを投げかけ続けなければならない。
  • データと情報の収集・分析・解釈・報告
    • 技術的な側面。
  • 計画と評価
    • 大学のあらゆる計画と、認証評価はプログラム評価に関わる。データを形成的、総括的評価に活用する。
  • データと情報の世話役として振る舞う
    • 大学全体のデータ戦略に参画することであり、情報保全などのコンプライアンス活動を含む。また、データをアクセスしやすく活用しやすいものにする。
  • 情報の産み手と使い手の指導
    • データを収集したり分析する人の学習を支援し、情報の質向上に関与する。
https://www.airweb.org/Resources/Pages/IR-Duties-Functions.aspx

2018/11/26

Prospects and Limits of Online Liberal Arts Education


  • もし大学教育が職業準備だけになったら?:学生が徳や個性を含む意味や目的の感覚を伸ばすことができなくなる。
  • annual national surveys of faculty and chief academic officers:テクノロジーは深く考えることを妨げる、より感情的になる
  • 3800学生数のLAカレッジで調査:オンライン教養教育の実験、関係者の聞き取り分析
  • 教養教育の成果=個性と市民的責任
  • その重要な要素の一つ:共感 ← 対面の方が指導しやすい、アイコンタクトが重要なので
  • アイコンタクト=相互理解、個人的つながり、アイデアの交換、雰囲気づくりに重要(これは学生も指摘)。
  • 一方で可能性もある。
    • デジタルツールを批判的に検討する。
    • 学外の専門家につなげる。
    • ハイブリッドにする(授業の一部で教会合宿、その後オンラインで議論orオンラインインタビュー)。
  • 学外とうまくつながれるなら、対面のみよりハイブリッドの方が、いい教養教育ができる可能性がある。ただし、優れた課題が用意されることが前提。
https://www.aacu.org/liberaleducation/2018/winter/einfeld

2018/11/25

大学教育の崩壊:高等教育におけるラーニングの問題


  • 大学教育の崩壊は、外部からではなく現在の教育実践に根ざして進んでいる=体験に基づく学びが増大し、これが部分ではなく主たる学習になり、学士課程の質保証のあり方を変えている(既存カリキュラムが崩壊している)。
  • カリキュラムへの2つの圧力:(1)体験的な学びが効果を上げている、(2)インターネットを介した参加型インフォーマルラーニングの存在。← 学士課程カリキュラムは半世紀前に作られた遺産(=教員は協働による共通目標を設けた授業を教えていない=断片的な単位の集積で卒業)。
  • 効果的な体験学修の効果:(1)時間を使って努力する、(2)教員・ピアと本質的なことで交流する、(3)多様で異質な体験をする、(4)頻繁なフィードバックに対応、(5)内省的で統合的な学習をしている、(6)社会とつながった学習をしている。
  • 参加型インフォーマルラーニング:「人は何かを実践することでより学ぶ」⇔ 何を学ぶかを組み立ててから実践に至る(=伝統的カリキュラム)
    • そのためには、早い段階でウェブメディアなどを使って、自信を持って語る経験をしておく必要がある。いかなる環境でも実践の中で考えることができるようにするため。
  • 今のラーニングにティーチングを合わせるには、チームによるコース設計が必要(← 論拠弱い)。
http://www.juce.jp/LINK/journal/1302/pdf/08_01.pdf

2018/11/24

There's a gulf between academics and university management – and it's growing


  • かつては研究者が執行部を兼業していた。今は専門職。そのため、アカデミックコミュニティとのつながりを失いつつある。
  • 今は大学は運営するのではなく、管理するもの。
  • 学長職は、いやいやとか懐柔されてなるのではなく、今や明確なキャリアビジョンの下で選んだ人がなっている。
  • そのキャリアは学科長から始まり、権力を指向すると上のポストを目指す。
  • 皮肉にも、学長は研究者出身でないとならないが、そのキャリアを捨てないとなれない。

2018/11/23

How to Deepen Online Dialogue


  • オンラインでの議論は、表面的でまばら。しかも、教員がフォーマルな言葉で介入するとますます学生は沈黙する。これは、レポート課題で形式を強調しすぎると、中身が薄くなるのと似ている。
    • → 日常語で発言させる。教員が意識的に行う。
    • → フォーマルで大きい問いに答えさせない。経験のある身近な問いを重ねて問う。「医療過誤に対する処罰はどんな影響があるか?」→「本当のことを言うのをためらったことある?」「それはなんでためらった?」「医療ミスは隠される傾向があると思う?」(Discussion Promptを使う)
  • Active online listening:他人のポストを読んで、自分の考えが変わったり拡張されたときに、それを書いてもらう。

https://www.facultyfocus.com/articles/online-education/deepen-online-dialogue/

2018/11/22

​Can Online Teaching Work at Liberal-Arts Colleges?


  • オンラインでの教養教育
    • 教員は学生参加に疑問だが、学生はそう思っていない。
    • 教員の評価は半々:半分は対面よりいい、半分は対面の方がいい。
    • 自己規律の弱い学生に、オンライン議論は難しい。
    • オンラインでの指導は、より時間がかかる(補習コンテンツを出すため)。
    • 正課でやるよりも、スピンオフでやる方が向いている。
https://www.edsurge.com/news/2017-10-04-can-online-teaching-work-at-liberal-arts-colleges-study-explores-the-pros-and-cons

A Syllabus Tip: Embed Big Questions


  • ステップ1:到達目標に関連した問いを作る
    • 「主要なメディアと学術的資料を用いて今日の政治学的課題について議論ができる」→「主要なメディアと学術的資料の違いは何か?」「どの主要なメディアが世界の時事問題を知る上で信頼できるか?」前者は学生の科目に関する知識を問う問い、後者は学生の行動を評価する問い。
  • ステップ2:全ての到達目標に関連した問いを作ったら、その問いが授業計画のどこに対応するかを考える。
    • つまり、授業計画に塊を作り、問いに関連した活動を入れる。
  • ステップ3:問いを全て埋め込んだら、初回の授業で問いを紹介する。初回の答え方と授業後の答え方を比較することもできる。

https://www.facultyfocus.com/articles/course-design-ideas/a-syllabus-tip-embed-big-questions/

2018/11/21

中原淳・中村和彦(2018)『組織開発の探究』ダイヤモンド社


  • 組織開発の定義:定まっていない
    • 計画的で、組織全体を対象にした、トップによって管理された、組織の効率性と健全さの向上のための努力であり、行動科学の知識を用いて組織プロセスに計画的に介入することで実現される(Beckhard 1969)。
    • 組織の問題解決過程や、再生過程を改善するための継続的な努力である。その特徴は、とりわけ行動科学のセオリーやテクノロジーの助けを借りて、組織文化を効率的かつ協働的なものにしていくことを通して、目的を達成することである(French & Bell 1973)。
    • → 計画的な変更、行動科学の知識を用いる、組織の中で起こるプロセスを対象にする、組織が適応し革新する力を高める。
    • → 風呂敷:輪郭や境界が曖昧で、多様なものを包摂する。
    • → (1)組織をworkさせる(成果を出せる)意図的な働きかけ、(2)多様化時代に求心力を働かせる、(3)組織問題の見える化・真剣な対話・今後を一同で決める3ステップで理解する。
      • ガチ対話=一同に集まる(one time)、1つの話題(one topic)、全員テーブルにつく(one table)。
    • → 組織開発には多様な立場があり、あらかじめ固定された考えに縛られること自体が非組織開発的。
  • 組織開発の5段階実践モデル
    • エントリーと心理的契約:キーマンと出会い、問題をヒアリング。目的・役割・スケジュールを合意。
    • プロジェクトデザインと準備
    • フィードバックによる対話:データをフィードバックして、メンバー間の対話を促す。
    • アクション計画・実施:問題の真因を特定し、解決プランを実行する。
    • 評価
  • 組織開発の3層モデル
    • 哲学的基盤:
      • 経験と学習の理論(デューイ)
      • 現象学(今ここの価値観)(フッサール):科学的事実より主観性
      • 精神分析学(フロイト):無意識の中の抑圧(=氷山)を対話で顕在化させる
    • 集団精神療法:
      • モレノの心理劇:抑圧は語るのではなく、グループの前で演じる。演じた後にグループで振り返る。監督(セラピスト)が演技と振り返りをコントロールする。(役割交換、代弁などを使う)。
      • パールズのゲシュタルト療法:ゲシュタルト=形、全体性、簡潔性、統合性。エンプティチェア(ホットシート)を使い、空席に向かって語りかける。
    • 独自手法の発展
      • 経営学的基盤:テイラーの科学的管理法、メイヨーの人間関係論(ホーソン実験)、バーナードの組織論(組織システム論=内部要素の公式・非公式の相互作用)
      • 独自手法:
        • Tグループ(レヴィン):ラボラトリー方式の体験学習。話題・課題が決まっていないグループセッションをして、状況をコンテント(何を話しているか)とプロセス(どのように話しているか)で捉える。
        • → アクションリサーチ、組織変革の3段階モデル(解凍・変化・再凍結)(=不安がある限り変化できない)、グループと組織のダイナミクス研究の基盤(リッカートのシステム4理論)の3つの発明につながる。
        • エンカウンターグループ(ロジャーズ):Tグループ=対人関係の改善、エンカウンター=個人の改善を目指す
      • 組織開発の誕生と発展:
        • ブランドチェンジ、プロセスコンサルテーション:コンサルがクライアントに介入するタイプの開発
        • 診断型組織開発などのコンサル改良型、チェンジマネジメントなどの非コンサル型(コッターの8段階モデル)へ。
  • ジョハリの窓は、解放領域が広がり、盲点と隠された領域が狭まるときに気づきが得られる。

2018/11/20

仲野由佳理(2010)「「援助交際」体験者の逸脱キャリア」『教育社会学研究』87,5-24


  • Beckerの逸脱キャリア:現象認識のためには個人の行動とパースペクティヴにおける諸段階・諸変化の時系列を扱わなければならない。
    • 最初の逸脱(第1段階):無知から生じる非意図的な逸脱行為や意図的な逸脱行為。
    • 逸脱行為の継続(第2段階):逸脱行為が継続し,最初の逸脱では明確でなかった動機が経験豊かな逸脱者との相互作用によって発展する(逸脱的な動機と関心の発達)。
      • 今回の事例では、技法の学習、技法と成果の関連づけ、個人的な楽しみの発見。
    • 逸脱下位文化の形成と常習化(第3段階):組織化された逸脱集団へ移行し,逸脱下位文化を形成する。
      • 今回の事例では、インターネット上の準拠枠の参照。
  • 初回の 「援助交際」に対する肯定的な意味づけが、継続への動機づけとして作用し、3つのを通して「援助交際」体験者としての適切なふるまいが獲得される。さらに個別の「楽しみ」が発見されることにより,動機をめぐる語りも発展した。

2018/11/19

佐藤郁哉(2018)「大学教育の「PDCA 化」をめぐる創造的誤解と破滅的誤解(第2部)」『同志社商学』70(2),31-88


  • PDCAが2000年前後から行政関連文書に登場した背景:行政部門の効率化・活性化をはかる上できわめて有効な民間企業における経営理念・手法であると見なされていたから。
  • 「十分な PDCA サイクルの不足」=PDCAサイクルが,その相対的な多寡を何らかの方法によって測定できるものと想定。
  • 2008学士課程答申:内部質保証が初めて登場,しかし解説・定義がされない。→大学評価ハンドブックで「内部質保証とは,PDCA サイクル等の方法を適切に機能させることによって,質の向上を図り,教育・学習その他のサービスが一定水準にあることを大学自らの責任で説明・証明していく学内の恒常的・継続的プロセスのことをいう。→ その中でのPDCAの解説:「経営学で言われてきたPDCAサイクル」← しかし,経営学でPDCAサイクルは重要な用語として定着していない(経営用語ではある)。
  • 制度的要請(圧力)への対応は2つ:脱連結(やり過ごし・面従腹背)と被植民地化(黙従・過剰同調)。
  • 教育・研究に関してPDCA管理は無意味 → PdCa(実行と改善は伴わないが,計画と評価の作文だけは素晴らしい)
  • 創造的誤解:理想的な状況を描いたものを手本に日本に根付かせる。
  • 破滅的誤解:統計的品質管理(デミング)→PDCAサイクル
  • NPMに含まれる矛盾:現場に大幅な裁量権を認める⇔現場を中央集権的に統制する → 混乱を生んでいる&マイクロマネジメントになりやすい。
  • PDCAはポンチ絵映えするため魅力的⇔現場は経営ごっこの小道具でしかないと見抜いている。
  • PDCAの禁止語化とポンチ絵禁止をすべき。

2018/11/14

中原淳・島村公俊・鈴木英智佳・関根雅泰(2018)『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』ダイヤモンド社


  • 研修:組織の掲げる目標のために、仕事現場を離れた場所で、メンバーの学習を組織化し、個人の行動変化・現場の変化を導くこと。
    • 研修で学ぶことができ、組織目標達成にポジティブな影響を与えている(=行動変化・現場の変化が起きている)研修にしか価値はない。
  • 研修で学んだことの60~90%は、職場で実践されていない(Sackes and Haccoun 2004)。
  • 研修転移:研修で学んだことが、仕事の現場で一般化され役立てられ、かつその効果が持続されること。
    • 研修転移が駆動するには、トランスポートと類似度(学習内容と類似度が高い状況への転移)が重要。
  • 4レベル研修評価:レベル1~2=効果的な研修であるかを評価、レベル3~4=研修の効果を評価。特に行動こそが、研修転移を促す要因として重要。
  • 研修転移の促進モデル
    • 転移プロセスモデル(Baldwin and Ford 1988):
      • インプット:受講者の特徴(能力、性格、意欲)、研修設計(学習原理、一連の流れ、研修内容)、職場環境(支援、使用機会)
      • 研修のアウトプット:学習と保持
      • 転移の状況:一般化と維持
    • 移転マトリックスモデル(Broad and Newstrom 1992):
      • 役割者(マネジャー、講師、受講者)と時間(研修前、研修中、研修後)の2軸で転移マトリックスを提示
      • 使用度(転移戦略として現在最も使われているものは何か)と影響度(転移戦略として最も影響力があるものは何か)を聞くインタビューで、転移戦略を抽出。
  • マネジャーの雰囲気の5段階:抑止的(禁止)、やる気をそぐ(不快)、中立的(無視)、奨励的、要求的。

2018/11/13

Nembhard, I. and Edmondson, A. (2006) "Making it safe: The effects of leader inclusiveness and professional status on psychological safety and improvement efforts in health care teams", Journal of Organizational Behaviour, 27, 941-966


  • 医療チームで、リーダーの行動がメンバーの心理的安全にどう影響するか?
  • 医療現場は、医学的知識の発展スピードが速い、専門分化が進行、医療職種間の相互依存性が高まるの3つの特徴がある。そのため、オープンコミュニケーションと相互承認が重要。
  • しかし、チーム単位での質向上において、協働を阻害する要因も多い。
    • 負荷が高い取り組みで、失敗するとハイリスクであるなら、質向上の取り組みはどうしもて集権的・階層的なものになる。
    • 職種間の情報共有では、包括的な情報処理が必要がだが、そうした負荷の高いコミュニケーションは起こらない。
    • 医療職種間には強固な階層構造が未だにある。多くの失敗事例で、医師は他職種からの重要な情報を無視している。
  • そこで、リーダーの包摂性を鍵概念として、チーム内のステータスと心理的安全の関連性を考察する。
    • ステータス:年齢、学歴、人種、性別、役職などの属性に基づく個人的な力(卓越性、尊厳、影響力)のこと
    • 高ステータス者ほど、下位のものより有形・無形の恩恵を組織内で受ける。
    • 組織のイノベーションは、少数意見を採り上げなければ起きないが(Nemeth 1986)、高ステータス者が議論を占拠して、それを阻害する。
    • 低ステータス者が意見を言えるかは、心理的安全が重要で、それは高ステータス者の振る舞いに左右される。
  • 調査では、以下の仮説を検証する。
    • 学際的チームでは、高ステータス者ほど心理的安全性を感じる。
    • ステータスとメンバーシップの関連性が、心理的安全度を決める。
    • リーダーの包摂度が、心理的安全を高める。
    • リーダーの包摂度が、ステータスと心理的安全の関係性を調整する。
    • 心理的安全度は、質向上の取り組みにプラスに働く。
    • 心理的安全度は、リーダーの包摂度と質向上の取り組みの関係を調整する。



  • 23NICUの1375/1440職員のデータを使用(100医師、998看護師、131呼吸器技師、146専門職)
  • リーダーの包摂度が高いほど、低ステータス・高ステータス双方とも、心理的安全度が高い。

2018/11/12

中村瑛仁(2015)「教員集団内における教職アイデンティティの確保戦略」『教育社会学研究』96,263-282


  • 教員の自己意識:教授方法,職業的発達のあり方,教育現場の変化への反応等,専門性に関わる教員の意識・行為を条件付けるもの。
  • 教員文化:教える仕事の困難に直面した教員たちが,その困難を乗り越 えるなかで形成してきた職業文化。
  • アイデンティティ・ワーク(Snow and Anderson 1987)に注目:自己(self-concept)に対して,適合的,肯定的なアイデンティティ(personal identity)を創造,表現,維持するための人々の行為
    • アイデンティティは人々が実践を通じて(特に表現活動)構築する。
    • アイデンティティは社会的アイデンティティと自己との交 渉過程の中で捉える。
  • 教員:多様な役割期待を向けられることで,自らの理想とする「教員としての自己」と,求められる教員役割との間に乖離が生じやすい職業的課題を有する。
  • 中学校の事例
    • しんどい子がいる学校→家庭背景が不安定な生徒を学校へ包摂する教職観+包摂するために生徒との信頼関係を重視した「つながる」指導観。
    • →学校状況変化で新しい教員役割が現れ,伝統的な役割を問い直す動きに(=しつける教員:全ての生徒に対して社会性を身につけさせる教職観+集団の統制を通じて学校秩序を形成する指導観)。
    • つながる教員としつける教員の役割葛藤 ⇔ 教員集団内の対立・問題の露呈は,生徒・保護者に対する教員権威を損ねる ← 指導観一致が規範化されている。
  • 3つのアイデンティティワーク
    • 異化(distancing):付与される社会的アイデンティティと自己との間に距離を保とうとするアイデンティティ・ワーク
      • 過去のつながる教員を正当とみて,今のしつける教員と距離をとる。
    • 調整:教員集団の状況に合わせて,適切な教員役割を選択する流動的な教職アイデンティティを表現するアイデンティティ・ワーク
      • 2つの役割を相対的に捉え,状況に応じて役割を選択して,葛藤を処理する。
    • 再定義:教員役割に対して新たな意味付けを行うことで,自身にとって適合的な教職アイデンティティを創造するアイデンティティ・ワーク
      • どちらかの優位性が表れ,一方が劣位な役割として位置づけられる。

2018/11/09

保田直美(2014)「学校への新しい専門職の配置と教師役割」『教育学研究』81(1),1-13


  • 専門職システム論(Abbott 1988):近接する複数の専門職を、ここの職務に対する管轄権を巡って相互作用する1つのシステムとして捉える。
    • 専門職が公的なメディア、法的な議論、職場の折衝の中で、競争的な主張を行うことで確立される。
    • 確立されても、永続的・完全でないため、近接する専門職は相互作用のシステムを作る。
    • システム内のある専門職の職務管轄権が変化すると、他のそれにも影響する。
  • 専門職は仕事環境を完全にコントロールできない=専門的に不純な仕事が含まれる → 仕事をルーチンとそれ以外に分ける → ルーチンを専門職の中の下位部門・他専門職へ委譲する動きが起きる。
  • 管轄権を確保する中で、一部がゲートキーパーの役割を果たすことで、排除と周辺化のプロセスを作る。
  • 小学校の事例:
    • SSWが「教員も知識を持てはできる」として専門性を強調しない(難易度の高いケースには介入)。→ ケース会議・カンファレンスシート作成を教員がやることとされる。SSWは教員のアセスメントに大きな問題はないと主張する。職務を独占し、聖域化しないことで、職務を委譲している。
    • 日常性を重視することで、委譲された職務を遂行できる(シートに書き込む内容は専門的でなくてよい・カンファレンスは聞いたことなど日常的なことが中心。
    • 教員がピックアップ・振り分けの双方で、ゲートキーパーとして他の専門職よりも強い権限を持っている。他の専門職に任せることは期待されず、日常的に関わることが期待される。
    • 委譲するのはルーチンではなく、高度な専門的判断が要求される部分。残りは日常的な関わりとして、自ら関わる。
  • なぜ教員は教科指導以外を委譲しないのか?
    • 望ましいゲートキーピングを行う上で、日常に関わる情報が重要であるため。

2018/11/08

Stensaker, B. (2017) "Academic development as cultural work: responding to the organizational complexity of modern higher education institutions", International Journal for Academic Development


  • FDerの役割:組織開発・組織政策立案が加わった(移ったのではない)。
  • その背景には、大学の外部環境変化が大きい。大学は、より専門分化しつつ、より管理的になったため。→ 学内に専門職部署を増やした。学内はより分断化した。
  • これは戦略計画への注目を生んだが、それがFDerの役割をどう変化させたかについての考察が少なすぎる。
  • この間、学内の文化の細分化も進んだ。既存の学術文化に加えて、マネジリアリズムも加わった。→ 単に多様化が進んだのではなく、緊張関係が増えた。
  • 本研究で言うCultural work:ダブルループ学習に起因する。
    • 目標設定、意思決定、ルーチンの実施が、どのように知識の獲得と関連しているかに注目。
    • CW:組織を発展させたり破壊する意図的な試みと定義される。
    • CWは建設的にも批判的にも見ることができる。
    • 教育は、教員、執行部、法令、経済界などが関与する分野なので、CWが重要。
  • 教員・執行部コンフリクトは深刻:従来FDは、教授法の変化に注目できた。今の執行部要求は、必ずしも教育の質向上に合わないものが含まれてしまう(制度化、可視化重視のため)。
  • 教員・職員コンフリクトも発生:ルール遵守を求めすぎる(シラバス様式など)。
  • FDerは、執行部期待を背負うようになることで、CWができなくなっている=Provider-capture効果(Boud and Brew 2013)。
  • CWはベストプラクティスを作ることではない。ローカルプラクティスを作ることの方が大事。
  • 今後のFDはより執行部よりになるのは避けられないので、CWの力に注目して実践をすすめるべき。

2018/11/07

Nguyen, N. and Hansen, J. (2017) "The academic non-consultation phenomenon revisited: a research agenda," Learning Organization, 24(5), 312-326


  • なぜ大学経営陣は学内のマネジメント研究者を頼らないのか?
  • Watsonの9仮説(最後2つが説明力強)
    1. 一人の研究者が全てのマネジメント課題に答えられない。
    2. 知見が民間分野によるもので、大学に適応できない。
    3. マネジメントを知っていることは、マネジメントができることを意味しない。
    4. 自組織の分析は他組織の分析より難しい。
    5. 研究の処方箋が効果的であることは稀。
    6. 理論は実践への示唆をもたらすので、単純化されたアドバイスができない。
    7. 執行部が相談を好まない。
    8. 執行部からは自組織教員が十分なアドバイザーであると信用できない。
    9. 研究者にとって自組織のアドバイジングに関わるインセンティブがない・ディスインセンティブがある。
    • → 学内には組織学習を阻害する要因がある。

2018/11/06

Ramjeawon, P. and Rowley, J. (2017) "Knowledge management in higher education institutions: enablers and barriers in Mauritius," Learning Organization, 24(5), 366-377


  • 大学=knowledge-intensive, knowledge-creating organization
  • 大学の機能:研究=知識創造、教育=知識拡散、コンサル=知識移転。本稿ではこれらをナレッジマネジメントとする。
  • 大学のKM
    • 大学は元々KMが組み込まれているが、明確なKM戦略がなければ促進できない。
  • 大学のKMの促進・阻害要因
    • 文化:大学は個人主義。KM文化をつくるには、大きな変化が必要。元々文化は複雑でどのような文化が効果的かは不明確。
    • 技術:一般に促進要因とされている。
    • インセンティブ:研究で評価されるため、KMの明確なインセンティブなし。
    • リーダーシップ:重要な促進要因になりうる。
    • 産学連携:KM促進が困難。
    • 組織構造:非公式組織が重要。物理的レイアウトも相互作用促進に重要。
  • 11人のベテラン教員(主に長)への45~60分の半構造化面接。Thematic analysisで分析。
  • 結果

2018/11/05

フェファー,J.・サットン ,R.(2014)『なぜ、わかっていても実行できないのか 知識を行動に変えるマネジメント』日本経済新聞出版社


  • なぜ実行されないか
    • 問題を話し合っただけで仕事した気になる
    • 過去のやり方にこだわり続ける(組織は過去で評価したがる)
    • 部下を動かすために恐怖心をあおる
    • 重要でないことを評価する(知識の開発や活用に評価を役立てる:個々の活動でなく、全体を俯瞰した評価をする。結果だけでなくプロセスに注目する。文化や哲学を反映した評価をする。学んだ知識を生かした評価をする。)
    • 業績を上げるために競争させる
  • 組織の業績はマネジャーの知識量でなく、いかにうまくその知識を行動に変えられるかで決まる。
  • 知識を行動に変えるポイント
    • どうやって、より、なぜ?:大事なのは哲学
      • 人は創造的で考える個人であり、学習能力がある
      • 人には責任能力があり、信頼できる
      • 人は過ちを犯すものである
      • 人は社会に積極的に貢献したいし挑戦を好む
      • 人は数字や機会ではなく、ユニークな個性を持つ個人として尊敬されるべきものである
    • 行動すること・教えることで知識は身につく
      • 問題にぶつかって試さないと知識は身につかない
    • 素晴らしい計画やコンセプトより行動がまさる
    • 行動すれば間違いも起こる
      • 学習とは試してみることの延長である。人は失敗から学べるので、理にかなった失敗を怒りの対象としてはいけない。
    • 恐怖心はギャップを広げる
    • 競争を組織内の動機づけに使うのと、組織ぐるみで市場の戦いに勝つことを混同しない
    • 組織が成功するには、誰でも理解できる戦略と、日常の仕事ぶりを判断する2,3の重点的な評価項目があればよい
  • ギャップがわかったら行動せよ。

2018/11/02

「大学教育改革の現段階」『IDE現代の高等教育』No.605

金子元久「大学教育改革の現段階」
  •  提出物にコメントをつけて返すの経験は3割程度 ⇔ 学生の自律的学習時間との関連の強さは提出物へのコメントが最も効果が大きい。(効果的な教授法の普及率が最も低い。)
  • なぜ学習時間が増えないのか?20年間変化なし
    • 組織改革は政策誘導で進んだが、教育は教員個人の裁量が未だ大きい。
    • 教員の教育にかける時間が十分増えていない。
    • 授業と授業外の相互行為を軸とした授業がされていない。
松下佳代「大学教育改革は何をもたらしたか」
  • カリキュラム=学習者に与えられる学習経験の総体=(1)制度化されたカリキュラム(国家・行政)、(2)計画されたカリキュラム(教育課程)(大学・学部・学科)、(3)実施されたカリキュラム(教員)、(4)達成されたカリキュラム(学生)の重層性を持つもの。
  • 大学はこれらが独立ししていて、自由に振る舞うことができた=教育改革が学習改革に結びつかなかった。
  • なぜ改革は実質化されないか
    • 改革のデザインが悪い(キャップ制の幅が大きすぎるなど)
    • 学生の合理的履修行動(3年早取り)
    • → 単位制度は見直しの時期。成果で測る。
濱中義隆「大学生の学習時間は変化したか」
  • 学習時間変化なし。
  • アルバイト増加:経済的に厳しい学生の増加ではなく、景気回復・人手不足で、雇用機会増・時給増でアルバイト学生が増えた。(なぜなら週16時間以上バイトは増えてない)。
  • 学習時間増には、コメント返却など、教員の負荷の大きい改善が必要。
  • ただし、それだけでは疲弊するだけ。授業内容の標準化、開講科目数削減などの組織的改善の推進が必要。
広田照幸「大学教育の分野別質保証と参照基準」
  • 国際的にみると、質保証は単一の物差し(同等性)ではなく、比較可能性(comparability)が担保された仕組みであればよい。

2018/11/01

青木久美子(2005)「学習スタイルの概念と理論」『メディア教育研究』2(1),197-212


  • 13の学習スタイルモデル
  • Curreyのオニオンモデル:中心ほど外因の影響を受けにくく、外ほど環境に応じて変化しやすい。
  • Gregoricのマインドスタイルモデル:
    • 具体的順次:完璧主義、秩序正しく、実践的で緻密
    • 抽象的順次:論理的、分析的、合理的
    • 抽象的任意:感受性が高く派手で、感情的、自発的
    • 具体的任意:直感的で独立、衝動的、独創的
    • 人は1~2に当てはまり、それは生来のもの。
  • Ridingの認知スタイルモデル
  • マイヤーズ・ブリックス・タイプ・インディケータ:日常生活の行動傾向を重視。4性質・4軸の16性格タイプに分類。
  • Apterの動機スタイルの反転理論
  • Kolbの学習スタイル目録:
    • 収束型:抽象概念と能動実験で学ぶ。問題解決、意思決定、アイディアの実践に優れ、感情表現は少なく、対人問題より技術問題を好む。
    • 発散型:具体経験と熟考観察で学ぶ。想像力旺盛、価値や意義について考えること多い。状況を様々な角度から見て、行動より観察に適応。
    • 同化型:抽象概念と熟考観察を好み、帰納的に考え、理論モデル構築を指向。人より理論や概念に教員がある。
    • 適応型:具体経験と能動実験で学ぶ。計画実行や新しいことへの着手がすき。



2018/10/24

伊藤精男(2016)「組織ルーティン変容プロセスにおける「組織アンラーニング」の位置づけ」『九州産業大学経営学会経営学論集』27(1),1-16


  • 組織アンラーニング:時代遅れになったり人を誤った方向へ導く知識を、組織が主体的に捨て去るプロセス。
    • 知識に加え、共有された価値観、組織の認知構造、組織ルーチンを含む。
    • 従来の研究=理論的・概念的でメカニズムがブラックボックス。→ 安藤・杉原(2011)プロセスが段階的に進行する様子を示す。
    • アンラーニング=置き換えではない(Tsang and Zahra 2008)。アンラーニングと新しいもののラーニングは独立。これらの相補性の検討が必要。
    • さらに、組織アンラーニングを当事者視点ではなく分析者視点で見ている。
  • 組織ルーチンの変化要因(大月 2007):(1)タスク特性、(2)担当者特性(ルーチンを作動させる要因)、(3)環境要因(ルーチン結果を特徴づける)で構成される。
  • ルーチン構造(明示的側面)・ルーチン遂行(遂行的側面)モデル:実践で繰り返し行われ、継続的に使用され、必要があれば修正され、フィードバックされることでルーチン構造が変化する(creation→maintenance→modification→feedback)。
    • 修正は、意識的(反省的)と前意識的がある。
    • この修正が、置き換え(アンラーニングと新ラーニング)にあたる。
    • このプロセスは十分に説明されていない。
  • 置き換えはアンラーニングがなければ新ラーニングがないと暗黙に仮定されている。
    • ただし、解答・移行・再凍結モデル(レヴィンの変化モデル)では、解凍が不完全なら、再凍結(置き換え)は失敗する。
    • 完全な解凍をしなければ置き換えは成功しないという前提(認知主義的前提)。
  • 伊藤(2012):正式なプロセスを経た組織意思決定が、成員の日常的タスク特性に適さず、違和感があり面倒であったために失敗した(ルーチン構造におけるアーキテクチャ不全を原因とする失敗)。
    • ポイントは、違和感の把握(非認知主義的視点)の重要性。
    • アンラーニングと新ラーニングが独立でないことの示唆でもある。
    • 完全なアンラーニングができても、新ラーニングに妥当性がなければ置き換えは失敗する可能性がある。

2018/10/23

山口多恵・酒井郁子・黒河内仙奈(2017)「"アンラーニング"の概念分析」『千葉看護学会会誌』23(1),1-10


  • 概念分析:概念の使われ方に着目して,その概念の特性や性質を示す「属性」,概念に先立って生じる出来事を示す「先行要件」,概念が発生した結果として生じる出来事を示す「帰結」について質的に分析し概念を定義(Rodgers)。
  • アンラーニングを文献検索し,概念分析法の基準を満たす29/144文献を対象。
  • アンラーニングの概念の使われ方に着目して,関連概念,属性,先行要件,帰結に相当する箇所を,段落の通りに記録してコーディングシートを作成。それを質的に分析してカテゴリ化。
  • 属性のカテゴリとサブカテゴリ
    • アンラーニングの主体:個人,チーム,組織
    • アンラーニングの対象:知識,ルーチン,価値観,パラダイム,世界観
    • アンラーニングの性質:棄却,忘却,獲得,変更,余地の創出
  • 先行要件のカテゴリとサブカテゴリ
    • 環境の変換:社会の流動化,変化への対応の要求,システムの合理化
    • 責任範囲の拡大:役割の変化,権限の拡大
    • 問題への直面:問題関知,危機,成功体験への疑念
  • 帰結のカテゴリとサブカテゴリ
    • パフォーマンスの改善:改善,新しいシステムの導入,肯定的な意味づけ,成熟,定着

2018/10/19

Akgu ̈n, A., Byrne, J., Lynn, G. and Keskin, H. (2007) "Organizational unlearning as changes in beliefs and routines in organizations," Journal of Organizational Change Management, 20(6), 794-812

  • アンラーニング:ラーニングの反語と理解されたために多くの誤解が生まれてしまった。
  • アンラーニングは、信念・ルーチンの変更と、環境適応のための組織的アンラーニングの組み合わせという2つの概念を内包している。
  • 一般に(個人レベルでも組織レベルでも)、アンラーニングは(1)信念の放棄を通じた記憶の消去、(2)記憶のメカニズムと連結の分解、記憶がどう形成されるかの変化の3つを含む。
  • 組織記憶は3つの方法で形成される
    • 知識、参照枠組み、モデル、価値、規範を含む組織的信念
    • 標準業務手続きや情報共有メカニズムなどの、公式・非公式の行動ルーチン、手続き、文書
    • ツール、プログラム、製造ラインのレイアウトなどの、組織の物理的生成物
    • → よって、アンラーニングはこれらの除去が含まれる。それにしてもこの定義は広すぎる。
  • アンラーニングは認知プロセス:人工物でアンラーニングを促進できる。
    • 記憶には、叙述的なもの(=信念)と手続き的なもの(=ノウハウ)がある。
    • 組織アンラーニングは、信念とルーチンの共変で操作可能になる。
  • アンラーニングは組織変革と混同されやすいが、これはより広い概念で、変化のプロセスの最終的な状態を指す。アンラーニングは、記憶の消去に注目するもの。
  • アンラーニングのタイプ
    • 信念速・ルーチン速:再発明型(予測不能高・環境変化高)、根本的な変化、困難でリスキーなアンラーニング。
    • 信念速・ルーチン遅:形成的(予測不能低・環境変化高)、ルーチン変化の積み重ねで新しい信念ができるが抵抗も大きい。
    • 信念遅・ルーチン速:適応的(予測不能高・環境変化低)、既存の仕事の進化・革新や新しい部門設置で進む(ホンダシビックの例)、情報変化が激しいときに起こる。
    • 信念遅・ルーチン遅:手続き的(予測不能低・環境変化低)、小振りの変化、日常的な修正の中で起こる。
  • 今後の課題
    • トリガー・先行物について、マネジャーの役割について、各タイプのアンラーニングの行動的・運用的帰結についてなどの調査

2018/10/18

Nusche, D. (深堀聰子訳)(2008)『高等教育における学習成果アセスメント』OECD 教育関連ワーキングペーパーNo.15


  • 1つのアセスメントツールで教育の重要な成果をすべて包括的に測定することは不可能。→ 目的に対して最もレリバンスが高く、組織のミッション・目標に対応する成果を選択してアセスメントする。
  • 学習成果
    • 認知的な学習成果:専門分野別の知識から、極めて一般的な論理づけ能力や問題解決能力を含む幅広いもの(Shavelson and Huang 2003)。
    • 知識の習得:概念、事物、事象について、認知または回想によって記憶すること(Bloom 1956)。
    • 一般的知識:必須の学習内容とみなされているコア・カリキ ュラムを構成する知識。
    • 認知的な技能:言語的・数量的論理づけ、情報処理、理解、分析、批判的思考、問題解決、新しい考え方への評価(=複雑な思考プロセスから成り立っている)。
      • ただし、これが一般的か(一般化されたパターンに従うか)、専門分野別に固有のものかの見解は一致していない。
    • 一般的技能:どのような科目や状況においても援用することができ、新しい状況下でも学生が活用できるもの。学生の知的問題を解決する能力に着目するテストを用いて測 定することができる。
      • ただし、これは年齢との相関が高く、単に学生の知能や過去の学校教育の結果を測定する危険性がある。
    • 非認知的な学習成果:信念の変化や、特定の価値観の形成をさす(Ewell 2005)。主に正課外活動で形成される。
      • これが含まれる=高等教育機関のミッションが、知識と技能の習得にとどまらないことを示す。
    • 心理社会的な発達:アイデンティティ形成・自尊心などの自己形成+他者・組織・環境などとの関係性の形成(自律性や成熟を含む)。
    • 学習成果は、教育の質の産物よりも、機関が提供する学習機会に学生がいかに積極的に参加したかに規定される。→ NSSEは組織が、学生の積極的な取り組みをいかに活発に促しているのかを測定する。
      • 非認知的成果は間接的に測定される。そもそも、価値観や信念と、観察可能な活動や行動との関連は未だ明らかにされていない。
  • コンピテンス:要求に応え、課題を的確に遂行する能力であり、認知的・非認知的側面の両方を含む(Rycher 2004)。=成果の認知的・非認知的分類を越えたモデル。
    • コンピテンスは、不断に変化する状況のなかで、行動、知識、価値観、目標を組み合わせることから生まれる。
    • コンピテンスのアセスメントツール:認知的、情緒的、行動的特性が複雑に組み合わさった状態を捉える(ポートフォリオに筆記課題、実習、インタビュー、実験やインターンシップの報告書と、自己の成長を評価させる質問紙など、成果の間接的な証拠を含める)。
    • コンピテンスには一般的と職業的(=employability)の違いがある(Otter 1992)。
      • ただし、職業的コンピテンスを重視すると、深く探求するなど高等教育の重要な側面が軽視されやすくなる。
  • アセスメントツール:基本的に認知的成果、しかも一般的な成果を重視。
    • ツール提供組織:政府、大学協会、民間テスト業者、非営利団体。
    • 頻度:一時点テスト(学期末)、クロスセクション(新入生と卒業生)、長期的アセスメント(2時点以上)。
    • ツールの種類:標準化直接評価(カリキュラムに埋め込むもの、埋め込まないものがある)。
    • 形式:選択式、記述式。
    • 質の基準:目標準拠、集団準拠。
    • 対象者:学習期間の終わりに測定。特に直接評価では卒業時生。義務化されていない限りはサンプリング調査。
    • 動機づけ:少額の謝礼金・贈り物あり。参加者数に応じた寄付金もあり。
    • 焦点:個人レベル(個別支援提供に使う場合あり)、集団レベル(課程や機関の評価)
    • 結果の使途:形成的評価(学生・教員へのフィードバック)、総括的評価(アカウンタビリティ要請)。
http://www.oecd.org/education/skills-beyond-school/41771582.pdf

2018/10/16

塩野宏(2014)「日本の行政過程の特色」『日本學士院紀要』68(2),113-137

  • 申請に基づく行政処分(許可・認可・指定など)では、処分する側の依るべき判断基準・要件を定めた明文の条項が置かれるのが通例。
    • 学校教育法には、大学の設置認可にあたっての基準を明示した条項がない。
  • 大学不認可問題の行政法上の問題
    • 大学設置認可の法的性質―講学上の認可、料金認可、認可法人の認可、病院許可等との異同
    • 内示・内定の法的性質―情報の提供と行政指導の混合的行為
    • 学設置基準の法的意義―認可基準と維持基準の異同
    • 規参入規制政策の手法
    • 大臣の(不)認可権と設置審議会答申議決の関係―審議会議決の拘束力とその範囲
    • 不認可措置(認可留保・不認可決定)に対する訴訟の方法―行政訴訟・国家賠償訴訟の可能性
  • 以下では、参入規制事務における設置審及び大臣の権限を検討する。
  • 大学の設置に公的規制を課すことには異論ない→具体的規制の内容、方法的合理性が問題。
  • 抑制政策の根拠は多様。財政(私学助成)、国土(首都圏整備)、経済(規制緩和)などがあり、大学政策自体よりも政府全体の政策への対応によることが多い。また抑制の対象は主に私学(の質の維持)。
  • 設置審:一貫して認可を決定してきたが、権限の範囲は明確でない。(諮問・答申自体は通常のプロセスだが。)
    • この背景には、戦後アメリカによる、CharteringとAccreditationの導入がある。
    • もともと設置審は、抑制措置の立案過程、基準設定、個別認可課程のすべてに権限を有していたが次第に縮小され、文部省中心主義へ移行した。
    • 設置審の機能は、Charteringに収斂した(認証評価期間は別に設置された)。
  • 設置審には総量規制に関する定めなし。抑制措置につながる固有の基準設定権限もなし。
  • 大臣にも、答申に重大な誤りがあるなど以外には抑制措置はとれない。

2018/10/15

南雲智映・平井光世・梅崎修(2017)「非正規化が正社員の人材育成に与える影響」『大原社会問題研究所雑誌』704,57-78


  • 非正規化=人材育成計画の阻害。
    • (短期)OJTが沿革に行われない、正社員業務複雑・高度化、(長期)技能継承・ノウハウ蓄積困難。
  • 非正規化の主な問題:難易度が上がった職場の管理業務をこなすこと
    • 複数雇用区分によるコミュニケーション不全。
    • 隙間業務問題(柔軟な責任行動の拡大):正社員は良い査定を得るために評判を求めるが、その負担が大きくなる。
    • 非正社員の動機づけ:キャリア展望がないため。
  • これらを踏まえて、非正規化が正規の仕事内容・人材育成に与える影響を分析。
  • 大規模大学の教務、図書(以上定型)、就職支援(非定型専門的)で非正規活用経験について正規職員10人に面接調査。聞き取り事例を記述。
  • 担当業務の変化を98、06、10の3時点で比較。主担当が非正規化。
  • 人材育成にゆとりが必要という主張:仮にゆとりがあっても、優しい仕事がなくなり、仕事の高度化でOJTが十分でなくなる可能性がある。

2018/10/10

Sridharan, B., Tai, J. and Boud, D. (2018) "Does the use of summative peer assessment in collaborative group work inhibit good judgement?," Higher Education, 1-18.


  • 形成的評価については、学生はピアを正当に評価できる。ピア評価が最終評価に反映される場合は、かなり緩い評価になる。特に低パフォーマンス学生に対しては、その歪みが大きくなる。
  • 97人のクラスで匿名相互評価システムを活用した実験。実際に情報システムを作るというプロジェクトベースの課題にチームで取り組む授業でデータを取得。

2018/10/09

省庁再編組織の「使命」カギ 多様な任務、要因を下げる


  • 政府・官僚のインセンティブ問題:①政府の追及する目標が多様であること②政府のパフォーマンスは絶対評価のみならず相対評価も難しいこと③政府が異質な選好を持った国民に広く薄く「所有」されていること。
  • 複数の任務や複数の依頼人を持つ代理人の場合、パフォーマンスの計測が容易な仕事のみ専心したり、自分により目をかけてくれる依頼人になびいてしまったりして、他の任務や依頼人をおろそかにしてしまうというバイアス(ゆがみ)が発生することを強調した。したがって、それぞれの任務をバランスよく遂行することを官僚に求めようとすれば勢い彼らのインセンティブは低くならざるを得ない
  • 政府・官僚のパフォーマンスが絶対的・相対的双方の評価とも難しいということになれば、インセンティブ・システムは、やはりホルムストロム氏が理論化した「出世欲」、つまり、正確には測れない現在のパフォーマンスがそのまま金銭的な報酬に結びつくのではなく、「評判」が積み重なることで能力が評価され、将来の昇進や天下りに反映されるというメカニズムにならざるを得ない。
  • 複数の任務を持つ官僚のインセンティブの問題を考えると、担当している任務の数が大きくなればなるほど、その総和としての成果、ひいては能力評価の誤差が大きくなるため、それぞれの任務に対する努力水準の総和も低下してしまうことを理論的に示した。つまり、「出世欲」が大事ならば、多数の任務を与えることはますます官僚のやる気を失わせることになるのだ。
https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/tsuru/40.html

2018/10/08

Campbell, C., Jimenez, M. and Arrozal, C. (2018) "Prestige or education: college teaching and rigor of courses in prestigious and non-prestigious institutions in the U.S.," Higher Education, 1-22.


  • 大学をランキングに応じて高・中・低に分類(60位以上、61〜100位、100位以下)、研究チームで9大学の587コースを観察して、教育の質についてルーブリック評価によって数値化。
  • 高ランク大学ほど、認知的複雑さが高い。しかし、ランキングと教育の質は比例しない。

2018/10/05

シャイン,E. (2016)『企業文化 改訂版: ダイバーシティと文化の仕組み』白桃書房


  • リーダーシップと文化は表裏一体
    • あるリーダーシップスタイルが正しい方法と解釈されるのは、それぞれの文化が存在するため。
    • リーダーが外から来る場合は、4つの選択を迫られる。
      • 既存の文化を破壊:新しいリーダーの価値観を反映できるが、必要な知識やスキルが失われるリスクも伴う。
      • 既存の文化と戦う:新しいリーダーの価値観を押し付けるが、リーダーの排除を待たれるリスクがある。
      • 既存の文化に従う:新しいリーダーの信条や価値観をあきらめるが、変化が必要な時代遅れの文化が存続されるリスクがある。
      • 文化を進化させる:仕事のやり方を理解するまでは既存の文化を踏襲するが、頃合いを見て新しいルールや行動を実行する(政府機関などではこれが有効)。
    • サブカルチャーのダイナミクスが重要になるほど、リーダーの役割(うまく連携させること)が大きくなる。
    • つまり、文化的な起源、進化、変化を考えずにリーダーシップは理解できない。
  • 2つ以上の文化が統合される場合の4変化
    • 分離:文化が分離したまま。各文化が連携しないなら有効な選択肢。
    • 支配:1つの文化がもう1つを支配。
    • 融合:望ましいと考えられているが、複雑で疑問の余地がある。特定条件下でしか生じない。異なるサブカルチャーが共同して取り組む共通課題があるときに、融合は達成されることが多い。
    • 衝突・抵抗:サブカルチャーが内部で抵抗する。対立するのはマネジャー同士ではなく、サブカルチャー同士。マネジャー間で同意しても、メンバー間は同意するとは限らない。
  • 組織文化の問題
    • 成功に関連する(環境適応)文化をいかに維持するか。
    • 多様なサブカルチャーをいかに統合・融合・連携させるか。
    • 環境変化で機能しなくなった文化をいかに見つけて変化させるか。

  • 3つの文化レベル:共有された暗黙の前提は、集団で学習した価値観や信念、成功のために認められて譲れないものになったもの。
  • 文化は共有された暗黙の仮定のパターン。暗黙の仮定は、外部に適応したり内部を調整するといった問題解決の際に、組織が学習した方法。
  • 文化はメンバーに聞いてもわからない。良い文化も悪い文化も存在しない。
  • DECの事例:組織内で文化がぶつかったために大きなエンパワメントが生まれた。
  • 文化は深い(操作したり変革できると思うと失敗する)、広い(日常生活をつくるものであるため、終わりのない作業)、安定的(変化に対して強い不安と抵抗を生じさせる)。

  • 文化=は風土(組織がどう感じているか、メンバーのモラル、人間関係)ではない。文化は、外部における生き残りの問題、内部統合の問題、より深いレベルに潜む仮定と関わるものである。
  • 文化の内容
    • 外部環境での生き残り(戦略・目標):「カーペット洗剤はうちの製品ではない。」どの組織も、歴史を通してどのような戦略がうまくいくか・いかないかを学ぶ。年月をかけて組織の中核・戦略に関連して文化は発展する。
      • 組織構造:急勾配の組織構造で成功して入れば、正しいやり方だとメンバーは信じる。
      • 測定:どのような情報を集め、どう判断するかは文化面の仮定が大きな影響を持っている。
    • 人間組織の統合:共通の言語と概念を持ち、グループの境界を認識し、地位や権限の決まり方を学ぶことで作られる。

  • 暗黙の仮定を確認する:人工物と価値観が噛み合っていない箇所を見つけて質問する。
  • 組織の文化は、より上位の文化に影響される。
  • どれだけチームワークが推奨されても、責任がチーム全体に課せられ、チームごとの報酬が導入されない限りチームワークなど存在しない。

  • 組織が文化を評価しなければならないとき:経営上の問題に直面した、合併などがあった、共同事業やプロジェクトを実施するなど。
  • 文化は調査でわからない:より深いレベルにある現実的な仮定に根ざしているため。
  • 文化が強固なのは、グループ内で共有されているからであり、メンバーがグループに残りたいと思うことで文化的仮定が強化されているため。
  • 文化を解読する演習
    • 自分たちのビジネスの問題点を確認する(改善の余地、必要に迫られた戦略など、将来像など)。
    • 文化の3つのレベルを知り、暗黙の仮定を明らかにすることを確認する。
    • 人工物を特定してリストアップする(服装、上下関係、勤務時間、ミーティングの進め方やタイミング、意思決定方法、コミュニケーション、懇親行事、制服や社員証、言葉遣い、儀礼や慣習、意見の相違の対処の仕方など)。
    • 組織の標榜された価値観を特定する。
    • 価値観と人工物を比較する(矛盾を探る)。顧客第一と標榜されながら、それに合わない人工物がないか。その中から、実際にシステムを動かし、多くの人工物の原動力になっている暗黙の仮定を浮かび上がらせる。
    • 共有されている仮定を評価する。目標を達成する際、共有基本仮定がどのように目標達成に資するのか・阻害するかを評価する。
    • 次のステップを決める。問題解決の助けになる文化を活用する組織変革プログラムを検討する、今回は十分分析できなかったことを確認する、など。
  • 大人の学習は学習棄却。特に文化に関しては、価値観や仮定を捨てなければならず、不快感や不安感でいっぱいになる。そこでの学習モデルは、解凍・受容・再凍結。
    • 否定的確認:信念や仮定を揺るがすことに気づいたり感じること。大人の学習の基本的な刺激。
    • 否定低確認は、内から出ることもマネジャーから迫られることもある。経済的、政治的、技術的、法的、倫理的、内面的な脅威がある。
    • 否定的確認の源泉には、大損害とスキャンダル、新技術の導入、合併・買収、カリスマリーダーシップ、教育と訓練の5つがある。このうち、教育と訓練だけが異なるやり方を知る唯一の方法。
  • 生き残りの不安と学習する不安の均衡で、学習棄却は進む。
    • 学習への不安には、権威や地位を失う、一時的にできなくなる、できないために制裁を受ける、アイデンティティを失う、グループの一員でなくなるという5つの恐れがある。
    • 学習と変化には、2つの原則がある。生き残り不安>学習不安と、学習不安を減らすことにフォーカスすること(=心理的安全を生み出す)。
  • 臨死的安全を作り出す方法:この8条件がなければならない。
    • 説得力のある積極的ビジョン:新しい考えや仕事のやり方は、自分も組織もよくなると信じないといけない、必要なものだと明確にしないといけない。
    • 公式なトレーニング
    • 学習者の参加:公式なトレーニングの横で、非公式な学習法が容認されないといけない。学習目標は交渉の余地はないが、学習方法には独自性を認める。
    • チームの非公式訓練:変化への抵抗はグループの規範に埋め込まれていることが多い。非公式の訓練は、グループ全体で行う必要がある。
    • 練習・コーチング・フィードバック
    • 明確な役割モデル:新しい考えややり方を取り入れる前に、実際にそれを見て自分が取り入れた時を想像できるようにする。他者から学ぶ機会を作る。
    • 支援グループ:学習に関する問題を話し合うグループを作る。
    • 望ましい変化に一致したシステムと組織構造:新しい働き方に合わせた、構造、報酬、管理システムでサポートされなければ学習は進まない。
  • 学習のプロセス=認知的再定義
    • 新しい行動が学習者の自己イメージとして内面化されるまでは、新しい学習は実現しない。
    • それには、十分な心理的安全を組織が生み出す必要がある。
  • 模倣・同一化と探索・試行錯誤:新しい概念や評価基準を学ぶ2通りの方法。
    • 前者を勧めるなら訓練の中で役割モデルを提供する。新しいやり方の帰結が明確ならこちらがよい。
    • 後者を勧めるなら自分たちで学習できる開発を奨励する。
  • あるものが文化の一部となるのは、それがうまく機能している場合(成功し、不安を提言させる)だけである。
    • トップダウンや強権もうまく機能していれば支持される。
    • 文化の定着において、リーダー自らの行動(言行一致)は最も重要なメカニズム。
    • 文化が変わるのは、存続の危機の時だけ。
  • 自然な進化:創業期の文化は、多様化・複雑化、より高い次元に統合されるとともに、特定部分が環境に適応してサブカルチャーを形成する。
  • 環境変化の不均衡は、組織的に無視される。変化の必要性を認識するには、混合種(新しい信念や仮定を手に入れた人)のメンバーを計画的に育成する。リーダーは、否定的確認のサインに注目し、何が見逃されているかを洞察しないといけない。
  • 一般にサブカルチャーには、営業、エンジニア、経営の3つがある。

    • 文化的課題は成熟期に起こる。それは学習棄却が必要になるため。
      • 初期段階はリーダーシップで文化がつくられる。成熟期は文化がリーダーを作り出す=文化の鋳型に合う管理職しかトップに上れないため。
      • 成熟期は、組織で行われていることの大半(使命や戦略さえ)は無意識に決められてしまう。
      • 成熟期はサブカルチャーが強力に育っている=統合した文化を維持するのは困難。
      • この段階のリーダーの仕事は、どう文化をつくるかではなく、今あるサブカルチャーをどう管理するか。
      • 成熟期の変革には、並行学習システムをつくる。
        • リーダーが十分な否定的確認を経験することから始める。
        • 組織のある部分を境界に位置づけ、新しい考え方に触れさせる。(部外者による評価は生産的にならない)。変革には文化を解読した内部のキーパーソンが必要。
    • 変革管理プロセス
      • なぜ変革するのか?:否定的確認で生存不安や罪悪感を生む。
      • 理想的な将来像とは?:新しいコンセプトを、具体的な行動につながるものとして保証する。
      • 現状の評価と計画:理想的状態を理解したら、現状とのギャップを明文化する。その際、客観性を確保するために並行学習システムを構築する。
      • 移行を管理する:抵抗力や学習不安を取り除く。トレーニング、ロールモデル、資源、サポート、インセンティブを用意する。
    • 強い文化を持つことは有利か不利か?→ 組織の発展段階という視点で見直す。
      • 成長期は、強い文化が組織アイデンティティの源泉となり、管理手続きを制度化する必要が少なくなる。
      • 成熟期は、公式手続き制度が必要になる。文化の核となる仮定がなければ、強い文化を持つ意味が失われる。
      • → では核となる文化が機能しなくなるとどういう問題が起こるのか?
    • 通常の進化も管理された進化も役に立たなくなる。
    • 核に対して否定的確認がなされると、新しい仕事が想像できないが、実現不可能として否定するかのいずれかしか起きない。
    • 衰退期の文化的変革の選択は2つしかない:倒産・再生か、買収・合併。
    • チェンジリーダー:否定的確認を十分に生み、変革プロセスを組み立てられる人である必要がある。
      • リーダーが備える特徴:信頼性、明確なビジョン、ビジョンを明確に示す能力(口頭・書面)、組織の発展段階ごとに文化のダイナミクスが異なることを理解していること、組織の規模・歴史・技術を考慮した変革プログラムを構築する能力

    2018/10/04

    経済企画庁経済研究所(1998)『エコノミストによる教育改革への提言』


    • 高等教育改革の基本的目標
      • 政府の役割を明確にする:資本市場の不完全性(教育費負担問題)と、外部性(研究活動の社会的便益など)の是正に限定する。
      • 教育機関・教員間に競争原理を導入する。
      • 市場メカニズムで人材需要変化に対応するシステムを構築する。


    • 高等教育への公的規制の3種類:非分配製薬(非営利)、需給調整規制(参入規制)、質に関する規制。
      • 淘汰時のセーフガードを確立して、参入を自由にするべき。
    • 公的補助は、個人補助に重点を置くべき。研究助成は競争的資金の充実を基本とする。
      • 国立大学は独立採算に近づけることを検討する。

    2018/09/21

    戸田宏治(2009)「チーム生産とインセンティブ」『福岡経大論集』38(2),61-87


    • チームアプローチ:チームの構成員が何らかの同一目標を共有していると想定するところから出発する。
      • → 構成員の活動をいかにコーディネートするかが課題。
      • → ただし課題も多い。
        • 各構成員の権限が曖昧で、本人の努力水準が正確にモニターできない。
        • モニタリング費用が大きいと、努力水準を下げたり、ゴマすりで不当な評価を得ようとする。
        • → 何らかの競争原理が必要。→ 日本は長期雇用を前提としたトーナメント方式で行ってきた。
        • → 今日組織のフラット化が進行。トーナメントがインセンティブにならない。
    • 非対称情報下で各主体が利己的に行動すると市場が失敗する。
      • 隠れた行動:取引相手の行動が完全に把握できない状況=深刻なモラルハザードを起こす。
      • 隠れた情報:取引相手の性質や能力が観察困難な状況=逆選択
    • コースの企業の本質:企業はなぜ存在するのか?
      • 現実の経済過程には取引費用が存在するため、市場で取引するより企業を設立して取引した方が、取引を効率的に組織化できる
      • 取引の事前に結ばれる契約は、あらゆる事態をあらかじめ予測することができないため基本的なルールのみとなり、詳細は事後的になる。このとき、資源配分のコーディネートに企業が必要になる。
      • 租税が存在する場合、市場での取引よりも企業内部で資源を調達した方が効率的。
      • → いずれも市場取引のコストを小さくすることが理由。
    • 契約が完璧でない=事後に再交渉が生じる→物的資産をどう分配するかに影響する。
      • この権利は資産の所有者に与えられるため、企業が内部と外部をどこで分けるかによって、権利の所在が決まる=企業の境界を検討することで、制度の効率性を明らかにするアプローチ。
      • ex. ホールドアップ問題:事前の取引費用によって契約が不完備になる(交渉力の高い側が過小投資をするなど)。
    • 契約理論に代わるもう1つの企業分析アプローチ:チーム生産アプローチ
    • チーム生産の問題を回避する方法
      • 長期雇用・トーナメントによる競争。
      • 強い職業倫理とピア評価。(国家公務員は課長以上にはピア評価の影響が大きい。)
    • フラット型組織:決裁権限を持つ職位階層を簡素化 し、意思決定を迅速にすることで経営の効率化を図る組織。
    • フラット化=従業員の自律性を拡大することでモラル低下を防ぐことを期待した。しかし、それよりも昇進可能性が減る負のインセンティブの方が大きかった。

    2018/09/20

    戸田宏治(2010)「国家公務員制度の改革について」『日本経大論集』40(1),57-90


    • 行政改革の必要性
      • 立法府が行政府に依存しすぎないようにする
      • 行政職員の職務へのインセンティブを高める
      • 環境変化に応じて有能な人材を柔軟に活用できるようにする
      • コストを縮減し、効率的な行政を実現する
    • 国家公務員の働き方=「チーム生産方式」
      • 組織全体の利益を生み出せる ⇔ 構成員の生産性が測定不可能 → モラルハザードが生じる。
      • ピア評価を導入すると、フリーライドインセンティブは抑制される(キャリア官僚に独自の制度)。
    • 国家公務員の勤務評定:基準が不明確、採用試験の種類でキャリアが決められている、俸給表が年功。
    • ピア評価:国民生活の利益に対する貢献度や、他省庁の評価が入る余地がない。+昇進可能性がなくなった官僚の職務インセンティブが大きく低下する。
    • イギリスの課長以上=上級公務員。空席は公簿で補充。事務次官は組織マネジメントの責任者でプリンシパルの位置づけ。
    • 幹部職員の育成に問題がある:欧米=独自ルートがある ⇔ 日本=採用試験だけがスクリーニング(幹部候補試験ではなく、実質的に幹部採用試験)。短期間で異動するため民間で通用する専門性も身につかない。

    2018/09/19

    安藤知子(2014)「教員養成・研修プログラムの改革をめぐる大学における「組織学習」の課題」『日本教育経営学会紀要』56,13-23


    • 教員養成大学のミッション:大学における授業の改善を促し, 実践力養成を重視することで教員の質保証を実現する。
    • 社会学的アンビバランス(2つの価値の間で揺れ動く葛藤):葛藤の源泉を個人ではなく、社会の中に構造的に組み込まれた複数の規範的期待と考える。
      • → 教師の葛藤、大学の困難もアンビバランス。→ その対応を組織学習論を手がかりに議論する。
    • 改革の背景:(1)教員の資質低下論、(2)大学教育の質的改善論(ユニバーサル化)。
      • 教員養成プログラムは2つの交点にある:実践力ある教員の養成 ⇔ 初年次教育の充実・体験学習の重視(現場でない大学に現場での即戦力育成教育を期待)。
    • 大学におけるアンビバランス
      • 養成原理
        • 教員に深い学力が必要 ⇔ 学問だけでは教師は務まらない
        • 大学教育は人間形成を目指すべき ⇔ 教える必要によって学ぶことも必要
      • 養成すべき教員像
        • 全教員が最低限共有する職務遂行力の養成 ⇔ 現場の多様な状況に応じて臨機応変に対応する力の養成
        • 目標を主体的に獲得する反省的学習が重要 ⇔ 実践の遂行を通して自己の複合性を高める相互参照が重要
      • 大学の役割
        • 学生の質的変容に応じた支援的教育 ⇔ 思考の自由や議論の場がなくなった時に大学に何が残るのか
        • 学生にとっての予期的社会化の場 ⇔ 枠組みそのものを批判的に捉える思考力
    • センゲ:組織は学習下手:7つの学習障害を知るべき。
      1. 従来の職務に対する過剰な同一化(職務=自分):新しい職務がメンバーのアイデンティティの危機をもたらす場合、組織全体の職務を大きく変えることは困難。
      2. 問題の原因を外部に帰属する(敵は向こうに):自分はうまく仕事をしていると考えると、問題解決に合わせて自分の職務を変えることは困難。
      3. 性急に先手必勝と考える(積極策の幻想):プロアクティブが重油用と考えすぎて、冷静な判断や長期的な見通しを持てない(不安と受け身の裏返しでもある)。
      4. 実践現場では問題は個別に感知される(個々の出来事にとらわれれる):個別の出来事はそれぞれの原因で構成されるが、全体の裏にある長期的なパターンや原因の理解はおろそかになる。
      5. 緩やかな環境変化は問題として捉えにくい(ゆでガエル)
      6. 意思決定の帰結を経験的に結論づけることが可能と考える(経験から学ぶ錯覚):人は経験から学ぶが、行動の帰結が観察不可能な場合、経験から学べず、観察可能な結果のみで評価しようとしがち。
      7. 経営陣が結束したチームを装う(経営チームの神話):意見の不一致や重要な疑問をやり過ごし、重要な決定のための学習ができない。
    • 1と2はアイデンティティ問題:自己マスタリーやメンタルモデルの不十分さと関わる。
    • 3~6はシステム思考の不足

    2018/09/18

    槇谷正人(2017)「組織変革の阻害要因」『経営情報研究』24(1-2),1-16


    • 組織変革の4要素(組織能力、組織学習、組織間関係、組織文化)と8つの促進要因(槇谷 2016)
    • 成功の罠における成功シンドローム(Nadler and Shaw 1995)
      • 成功を盲進する、内部重視主義、尊大・自己満足に陥る、組織が複雑化する、保守主義に陥る、学習不能になる。
    • 実証研究の方法:社史、有価証券報告書、アニュアルレポート、CSRレポート、新聞記事など16年分。
      • 経営者の在位期間ごとの組織変革の断行(中期経営計画調査)
      • 経営チームによる意思決定基準の明確化と実行(グローバル戦略、M&A、業務提携、資本提携の調査)
      • 組織変革プロセスにおける組織形態と構築変化(組織構造、全社的活動、小集団活動、プロジェクトチームの調査)
      • 組織学習が促進される要因としてのシステム・制度構築と変化(経営理念の明文化と共有化、人材育成制度、人事制度、提携戦略の調査)
    • 組織変革の7つの阻害要因
      • 戦略シフトにおける経営者の意思決定:時期・タイミングが遅い。
      • 協働システムとインセンティブシステムの設計:両者の同期化がされない。
      • 戦略シフトにおけるステークホルダマネジメント:両者の連動において、メンバー間の相互作用を誘発する制度構築の遅れが阻害要因になる。
      • 組織間クロスファンクショナルの設計:全社的な体制整備と、その後の組織間クロスファンクショナルの設計段階に阻害要因がある。
      • マネジャーの役割機能不全:人員削減と事業撤退の場面では、理念経営の体制整備と、マネジャーの機能を重視した全社展開のプロジェクト活動の設計と運営が、組織変革の阻害要因を削減するうえで不可欠。
      • 職務間におけるボトルネック:全社的な職務間ボトルネックを把握するタイミングと、それを未然に防止する活動の遅れが阻害要因になる。
      • メンバーの主体的役割機能不全:メンバー間の相互作用を通した設計・施策だけでなく、主体的な役割認識の形成を図る活動が重要。その時期とタイミングを経営者が間違えるから阻害要因になる。
    • インプリケーション
      • 事業撤退への意思決定とグローバル戦略の展開:組織能力が形成され修正される要因であり、競争優位の組織学習が誘発される場面でもある。
        • 前者 ⇔ 企業家精神の欠如、経営者チームの能力の限界、パワー関係から生ずる不整合が阻害要因。
        • 後者 ⇔ 各国政府の法的規制による意図せざる結果、異文化での困難な状況下での不適応、戦略の実行段階での市場への不浸透、現地の人材活用と人材育成の不適合が阻害要因。
      • 組織文化の変革を意図して行う:組織を取り巻く内外の現象としてパラドックス状況を視野に入れる(計画的戦略だけで組織変革が実現するとは到底考えにくい)。→ 組織のスラックによる創発的戦略も取り入れた組織変革を企図しな ければならない → イノベーションによる多角化と事業撤退の両面を同期化させて事業活動の舵取りを行うことが重要。その結果、既存の組織文化に変革が生じ、新たな環境に適応できるオープンな組織文化が形成される可能性が高まる。
      • 組織変革の断行場面:組織慣性、メンバー・ステークホルダの抵抗が阻害要因になる。→ メンバー間の相互作用促進、組織形態を変化させた活動基盤の設計が不可欠 → 組織間クロスファンクショナル体制の整備が重要。

    2018/09/17

    槇谷正人(2016)「組織変革の促進要因」『経営情報研究』23(1・2),17-35

    • 組織変革のパラドックス:相反する論理のように見える変革活動の行為と構造を同時に分析する視点。=「矛盾していて相互に排他的な要因で、しかも同時に存在しかつ等しく働くという要因間の状況」「矛盾する要因が同時に存在するがジレンマのように選択する必要がない状況」」
      • 組織変革は動態的側面が必要なのに、従来の機能主義的組織論は、均衡や整合性の論理を追求しすぎたため限界がある。
    • 2つの視点で変革プロセスを考察することが重要。
      • 組織内部の資源や能力の形成にかかわる視点。
      • 外部環境に適応を目指した資源の活用や知識の創造にかかわる視点。
    • パラドックスの例
      • 組織が存続するには、柔軟性と確実性の同時追求が必要(Tompson 1967)。
      • 組織文化の形成は制度化されて社会化されることと、メンバーの自律性のパラドックス状況(Shein 1985)。
    • パラドックス構築に関わる3点(大月 2005)
      • 時間経過による環境変化
      • 経営資源(ヒトモノカネ情報)の独自変化
      • 大規模組織におけるトップ・ミドル・ロワーの階層の存在。
      • → パラドックスはあくまでも心理的構築物:どの要因が優先的に注目されるかはパラドックスの内容によって異なる。
    • パラドックスの研究方法
      • 組織の合理的な側面と非合理的な側面を同時に把握する必要がある。
      • → 中長期の時間軸で活動事実を把握する必要がある。マクロ・ミクロの両面から、個人間・組織間の相互作用を分析することが重要。さらに、経営者の言及と意思決定と活動を定着させるリーダーシップ行動を質的研究として分析。
      • つまり、事例企業を特定し、公表された活動事実から分析する。
    • 以下では、組織変革に密接に関わる4つの促進要因に注目:組織能力、組織学習、組織間関係、組織文化。
    • 組織能力:組織変革においてどのように競争優位の組織能力が形成されるか・環境に適応できなくなった競争劣位の組織能力が破壊されるかに注目(=RBVアプローチ)。
      • RBV:経営資源を組織能力に含めるか含めないかで議論が分かれる。
      • ダイナミック・ケイパビリティ:経営資源を活用する組織能力・競争優位を生み出す組織能力
        • ルーチンがダイナミックケイパビリティを構成する。
        • ルーチンには管理的業務ルーチンと作業ルーチンがあり、それぞれ生産現場・営業販売・研究開発・経営管理の4つの職能的組織ルーチンに位置づけられる。
        • ルーチンには慣性があるので、組織変革には組織ルーチンを変化させるルーチンも必要(=戦略的組織ルーチン)。
      • 組織変革は、変えてはいけない組織能力と変えるべき組織能力を峻別する活動。
    • 組織学習:3つの層からアプローチ:(1)個人主体、(2)組織主体、(3)組織と個人の相互作用 ← 3番目こそ重要(組織ルーチンに着目することが重要)
      • 高橋(1998)の2つの命題
        • (1)組織ルーティンはいわば個人記憶を要素としたシステムであり、この個人記憶は手続き的記憶として蓄積されている。しかもこのシステムは、構成要素である個人記憶が置き換えられても、要素間の関係パターンについては持続性が生き残り続ける性質がある。
        • (2)組織学習とは組織内エコロジーによる組織の適応プロセスであり、組織学習のパフォーマンス向上のためには、組織ルーティンの持続性がある程度必要である。
      • ただし、メンバーにとっては、組織ルーティンを形成したり、それを安定させたり変 化させたりすること自体が仕事の目的ではない。→ それが承認されるマネジメントが必要。
    • 組織間関係:組織間協力体制をいかにつくり管理して行くのかは、変革にとって中核的問題(山倉 1995)。
      • 5つの分析枠組み:資源依存、組織セット、協同戦略、制度化、取引コスト
      • 資源依存:3つの分類:自律化戦略(他組織との合併と自らの経営資源や内部の組織能力による多角化)、協調戦略(他組織の自由裁量を認めたうえで安定した依存関係の合意形成)、政治戦略(相互の組織に利害関係を持たない政府などの第三者機関が介入することで組織をコントロールすること)。
    • 組織文化:
      • ある集団によって一般的かつ集合的に受容された意味(meaning)であって、ある時点でその集団に作用するもの(Pettigrew 1979)。
      • ある集団が外部適応と内部統合の諸問題を解決することを学習する際に、生み出し、発見し、開発してきた、良く機能するがゆえに現在でも有効だと考えられている一連の基本的仮定であり、したがって新しいメンバーにもそうした問題に接したときの正しい認識の仕方、思考方法、正しい感じ方として教え込まれるものである(Shein 1985)。
      • Sheinの組織文化:ライフサイクルを適用したもの。
    • 組織変革の4要素と8要因

    2018/09/08

    古田成志(2012)「組織変革メカニズムにおける研究の再整理」『商学研究科紀要』75, 13-31


    • 組織変革は避けて通れない経営課題・研究課題:変革か滅びるか。厳しい競争環境が原因。
    • 組織変革メカニズム研究は議論が乱立、発展途上領域。→ 分類して体系づける。
    • 組織変革(org changeまたはorg transformation):現状から理想的な状態へ変化する
      • 「組織の主体者が、環境の変化がもたらす負k図圧制の中で行う組織の存続を確保する活動」と定義(大月 2005)。← これを説明する仕組み=組織変革メカニズムと定義。
      • Weick 1979:組織進化(org evolution)の概念を含めて議論される。
      • Nelson & Winter 1982:組織進化を、組織内ルーチンが外聞環境の変化に対応してどのように変化していくかという視点で捉えている。
    • Van de Ven & Poole (1995) の組織変革メカニズム研究分類
      • ライフサイクルモデル:創始・成長・収穫・衰退の4段階で説明
      • 目的論モデル:組織は目的を持ち適応力を備えると想定。
      • 弁証法モデル:組織内外のコンフリクトに対処するためのメカニズム(テーゼとアンチテーゼが対立するから統合できる)。
      • 進化論モデル:変異・淘汰・保持による継続的循環で組織変革が起きる。
    • Armenakis & Bedeian (1999) の組織変革分類
      • コンテクスト研究:組織内外の環境にソンジアスル力や状況に焦点を当てる。
      • プロセス研究:意図された組織変革を規定することで引き起こされる行動を検討する。
      • コンテント研究:組織変革において組織内の要素に焦点を当てる。
    • コンテクスト研究
      • 組織内コンテクスト:メンバーの信念、態度、意図、行動に影響を及ぼす組織の状態。
      • 組織外コンテクスト:社会、政治、企業を取り囲む競争環境。
      • → 環境が所与となって組織変革を促すメカニズムと定義。
        • 背景にコンティンジェンシー理論がある:環境→組織→成果という基本図式に則り、組織成果は環境と組織構造の適合度に依存すると想定。
      • 組織内でどのように変革が行われるかは明確でない、組織内のどの要素が変革されるか明確でないという2つの限界がある。
    • プロセス研究
      • Lewin (1947) の解凍・移行・再凍結の3段階モデルから発展。構想化・活性化・実現可能化が3段階モデルの代表例(Nadler & Tushman 1989)。
      • その後4段階モデルに発展:危機・転換・移行・発展(Merry 1986)。創始・不確実性・転換・ルーチン化(Quinn 1996)こちらの方がプロセスをより多面的に検討している。
      • 組織内のどの要素が変革するのかには触れていない限界あり。
    • コンテント研究
      • 組織内の要素に焦点を当てる:組織内の要素によって変革するメカニズムと定義。
      • 背景命題は、組織は戦略に従う。
      • 組織構造に焦点を当てた研究:Miller & Friesen 1982:構造変革において不確実性の減少、分化、統合に注目、3要件の変革が多大であるほど、財務面で成功。
      • 戦略に焦点を当てた研究:戦略変革モデルを、(1)合理的モデル(環境と組織の状況から戦略変革が実現する)、(2)学習モデル(系絵主体が環境と組織を段階的に精査することで戦略変革が実現する)、(3)認知モデル(経営王位に影響する認知を強調したモデル)、(4)統合モデル(3モデルの利点を統合)。
      • 組織と組織構造の関係をコンフィギュレーションとした研究:戦略を5分類(ニッチマーケッター、マーケッター、イノベーター、コストリーダー、コングロマリット)、組織構造を4分類(単純、機械的官僚制、有機的組織、事業部組織)、それぞれの組織構造がどの戦略と適しているかを明示。
      • 3つの限界:要素の変革プロセスが十分検証されていない、戦略・組織構造以外の要素が考慮されていない、環境が関わるのでコンテント研究のみの分類枠組みで説明できない。
    • 従来の研究を組み合わせると、コンテクスト・プロセス、コンテクスト・コンテント、プロセス・コンテント、コンテクスト・プロセス・コンテントの4枠組みができる。
    • コンテクスト・プロセス研究:環境によって組織が段階を踏んで変革する点を説明(組織進化モデルを適用)。
      • Weick 1979:生態学的変化・イナクトメント・淘汰・保持の4段階で進化。
      • 藤本 1997:変異・淘汰・保持を適用。分析レベルでは個人とシステムが混在。それでも環境と組織進化モデルの関係を示した。
    • コンテクスト・コンテント研究:環境によって組織内の要素が変革する点を説明(断続均衡モデルを適用)。
      • 断続均衡モデル:長期にわたる小規模な漸進的変革が、短期間に渡る不連続変革によって中断されるモデル。3つの概念で構成される。
        • 収斂プロセス:漸進的変革を通じて、組織の全体戦略方針を支える社会政治的・技術経済的活動の複雑性を整理し、一貫性を取るプロセス。
        • 再編期間:一貫性のパターンが根本から再秩序化される期間。
        • 経営者のリーダーシップ:組織変革に対する抵抗力と推進力おw仲介させる。
    • プロセス・コンテント研究:組織内の要素が段階を踏んで変革する点を説明。
      • Kotter (1995):8段階で提示:危機意識の醸成・変革を推進するグループの形成・ビジョンの創出・ビジョンの伝達・メンバーへビジョンに基づいて行動するよう促進・短期的成果の計画と創出・改善を強化しさらなる変革を算出・変革の制度化と定着化。
      • Mintzberg & Westly (1992):発展・安定・適応・苦闘・革命の5段階で進む。
    • コンテクスト・プロセス・コンテント研究:環境によって組織内の要素が段階を踏んで変革する点を説明。

    2018/09/07

    大森不二雄・高橋潔(2018)「高等教育研究と経営学理論の対話から見えてくる新視点」『東北大学高度教養教育・学生支援機構紀要』4,227-237


    • 経営が求められる背景:より少ないお金でより多くの仕事を求められるようになったため+高等教育自体の変化(大衆化・多様化、経済イノベーション、地域貢献)。
    • Bryman 2009:全学レベルで効果的なリーダーシップ行動特性=同僚性的要素と系絵主義的要素が混在。二分法の狭間でバランスを取りながら役割を果たしている。← ジレンマとも呼べる。
    • 大森 2014:英国で同調性を促すコンプライアンス文化が大学組織の創造性やイノベーションを妨げる弊害を指摘。政策主導の質保証が、緊密な共同の必要性から同僚性的関係が改善されたことも指摘。
    • イノベーションとガバナンスは根本的に矛盾(青島 2015)。PDCAサイクルもイノベーションを阻害(加登 2008)。高等教育政策はこうした矛盾に無自覚。
    • イノベーションは社会に価値を生み出して事後的に認識される=不確実性に支援と資源配分が必要という矛盾した要求が存在する。
    • 青島 2017:資源配分の合理的理由という問題を克服するには、資金源の多様化をしなければイノベーションにつながらない。← イノベーションは多様性から生まれる。
    • マネジャー=部下の才能・知識・経験を業績に結びつける ⇔ リーダー=よりよい未来を描き、未来に向けてメンバーを団結させ行動させる
    • 現代のリーダーシップ理論はビジョン(≠目標)の重要性を強調する。
    • 教育研究のイノベーションには、教職員が自律的で多様でなければならない。これは相互不干渉という従来型ガバナンスではなく、緊密な協力と相互支援を伴う真の同僚制と一体でなければならない。

    2018/08/26

    中村高康(2018)『暴走する能力主義』ちくま新書


    • 今人々が渇望しているのは、新しい能力を求めなければならないという議論それ自体。
      • 現代社会に多く見られる能力論議は、これからの時代に必要な新しい能力を先取りし、それを今後求めていく言説の集まりである。この議論のパターンこそが現代社会の1つの特性。
    • 学力だけではダメで人間力も必要だという考えは、100年前からある。
      • 60年代:ガリ勉はダメの価値観
      • 1930:三菱の採用は人物本位
    • 全体として能力観が転換しているとの根拠ない前提の上で、必要な新しい能力をひねり出した結果、最大公約数的な陳腐な能力をあたかも新しいかのように看板だけ変えることを繰り返してきた。
    • 5つの命題
      • いかなる抽象的能力も、厳密には測定することができない(何らかの形で「能力」を割り切って定義づけ、測定した形にしなければならない。)
      • 地位達成や教育選抜において問題化する能力は社会的に構成される(能力の社会構成説)
      • メリトクラシーは反省的に常に問い直され、批判される性質をはじめから持っている(メリトクラシーの再帰性)
      • 後期近代ではメリトクラシーの再帰性はこれまで以上に高まる
      • 現代社会における「新しい能力」をめぐる論議は、メリトクラシーの再帰性の高まりを示す現象である
    • コミュニケーションは関係性において本来現れるのに、それを個人に内在する能力として位置づけることに無理がある(関係性の個人化)。
    • コミュニケーション能力を選抜基準とすると、恣意的な選抜を正当化するロジックとして使える。
    • 科目間の素点を合計することは、設問や教科ごとのテストの能力識別力の違いを無視することなのに、なぜかみんな納得している。
    • 100m走でさえ、能力を正確に計ることは難しい。
    • 試験や学歴は、禁断社会への転換において代表的であり、偏見や思い込みによる不合理なシステムではない。一方で、人の能力を正確・説得的に表現できず、一定程度の機能にとどまる。この暫定的な機能が、人々の生活を歪めることがあり、不合理な側面も持つ。
    • 機能主義の社会学:メリトクラシー進展論:技術の発展で求められる教育水準が上がり、それに応じて教育が拡大する。
    • メリトクラシー幻想論:メリトクラシーは階級差別を隠蔽するイデオロギー(IQテスト結果をコントロールしても、階級と所得の関連は残存する)。
    • ただしこれらは、メリトクラシー論のステレオタイプ。前者は、能力を抽象的に捉えがち。後者も、常に理想的なメリトクラシーと現実を比較して同じ論調になりがち。
    • →能力の社会的構成説。
    • 学歴が能力指標として重視される条件:(1)獲得過程が広く開かれている、(2)獲得プロセスが、測定手続きとして社会的に説得的であること(全国一斉試験など)。
    • 試験の日本的風土:(1)年1回、同一問題、一斉実施、(2)新作問題のみ、(3)問題公開、(4)大問形式、(5)問題作成とテスト編集の融合、(6)素点・配点の利用。→ IRTに合わない。
    • メリトクラシーは決してゴールに到達しない:抽象的能力に対する判断は、常に多様な基準を包含しうるため、暫定的なものにとどまり続けるため。メリトクラシーは事あるごとに反省的に振り返って多様な基準から問い直される性質をはじめから持っている。
    • 一方で、ある程度の水準に抑え込む装置も同時に作動させることで、常に批判されながらも先鋭化しすぎて社会システムがうまく回らなくなることも避けている。
    • 日本と韓国の教育アスピレーション(希望する教育程度)の違い
      • 韓国:どの階層も高い位置から後に差が開く
      • 日本:はじめから階層別に差があり維持される
    • 再帰性:自らのあり方や行いを事後的に振り返って問い直す性質。反省性、内省性。個人的でなく、システム・制度・国家も主体になりえる。
    • 行為をベースに社会を読み解く社会学:他者に向けられた行為(=社会的行為⇔生理的・反射的行為)は、行為した本人にとって意味があるはず。
      • 経済学=行為の意味を経済合理的行為に一元化、心理学=それを心理現象として解釈。
    • ウエーバーは行為者が自らの行為に対して主観的に意味を付与するととらえている。しかし、それは行為の解釈としては正しくないという。すなわち、「われわれは行為そのものに没頭しているのであるから、生きられつつある行為にわれわれが意味を付与すると考えるのは、誤り」であり、「体験にたいする意味の付与とは、行為者か他者がその行為を反照的(原語ではreflexive)にみることを意味するのであって、過ぎ去ったおこないにのみ過去を振り返りながら適用していくことができる、そうした類のもの」なのである。
    • 近代社会=行為の意味の問い直しをせざるを得ない時代。伝統や価値観で押さえられていた不安がむき出しになる(⇔伝統があれば初詣に行くべきかを激論しない)。
      • →行為の再帰的モニタリングが激しくなるのが近代社会。
      • →近代は、人間が十分にコントロールできない変動(=暴走)を特質とした社会。
    • 制度的再帰性:社会活動および自然との物質的関係の大半の側面が、新たな情報や知識に照らして継続的に修正を受けやすい
      • 徹底した再帰性:専門家から提供される専門的知識そのものも再帰的まなざしにさらされる。
    • 一般的再帰性:時代を問わずどこにでもあり得るものとしての再帰性。
    • 自己の再帰性:自己アイデンティティの日常的な更新を余儀なくされる個人に注目した再帰性(能力とアイデンティティの問題)。
    • 制度的再帰性:専門的な手続きを経て生み出された選抜機構が修正を受け続ける。
    • 能力不安の時代。高等教育が大衆化すると、高学歴者=能力ありが修正される。高学歴化がメリトクラシーの再帰性を高め、大卒が大卒を否定する社会が生まれる。
    • 大学名による採用差別は、潜在化・巧妙化した。露骨な差別を再帰的問い直しのふるいにかけることが前提となる社会になったため、学歴だけではダメというロジックを前面に押し出したシステムを作らざるを得なくなっている。→新しい能力論の台頭。
    再帰的メリトクラシーの理論
    • 前近代=無学校の時代、前期近代=学校の時代、後期近代=学校批判の時代
    • メリトクラシーの再帰性を作動させる社会的変化:教育拡大と情報化
    • ポストモダン=時代的転換を強調(大きな物語の終焉)⇔後期近代=終焉ではなく本来合った再帰性の露呈化を描き、現状はモダンの延長線上で理解される。
    • こうした議論は進まないだろう=社会学のみならず学問の世界において構成主義的な、あるいは相対主義的なものの見方が普及してずいぶんと日が経っているにもかかわらず、依然として「能力」というものの実在性・絶対性を大前提においた能力論が圧倒的な主流にあるからである。
    • キーコンピテンシー:成果を上げる人たちに共通する行動特性(ただし、成果を上げる文脈が重要な意味を持つ概念)← 3×3のコンピテンシー
      • これをテストで測定:文脈を捨象すると、抽象的能力そのものになり、陳腐で測定しにくいものになる。
      • →そのそもキーコンピテンシーが、先端的な能力と言えない。新時代に必要な新しい能力を発見していない。
    • 非認知的能力:心理学では幅広く曖昧な概念であり、能力と言えないものを含む概念=抽象的能力。
    • 古い能力を批判し、新しい能力を唱えることで一時の心の平穏を得ることができる。

    2018/08/22

    Design Principle for General Education


    • Proficiency
      • Portable proficiency:21世紀型の知識・技能と高い水準の問題中心型課題を通して身につける
    • Agency and self-direction
      • 知的・個人的資質を理解し、個人・社会的役割の双方で建設的な役割を果たせるようになる
    • Integrative learning and problem-based inquiry
      • 多様な分野の知見を用いて、文章化されていない問いや問題を探究する
    • Equity
      • 学生の社会的背景を問わずに、学習成果に到達できるようにする
    • Transparency and Assessment
      • どのようなProficiencyが身につくかを、学外者が理解できるようにし、学生が節目で能力向上を振り返えることができるようにする

    2018/07/16

    藤本夕衣ほか(2017)『反「大学改革」論:若手からの問題提起』ナカニシヤ出版


    PDCAサイクルは合理的であるか

    • 多くの大学人はPDCAサイクルを合理的であるとし、それに対する異議は愚痴にしかならないと考えるが、それは自明ではなく、実際に合理的・論理的な反論がある。
    • 反論は、(1)人間の物象化に対する批判、(2)経営学的な無理解に対する批判、(3)トップダウンであることに対する批判の3つに整理できる。
      • PDCAサイクルは、ズレを契機とする相互生成の可能性を抹殺する(人は能動的・主体的に反応するので、当初の目標と食い違うことが起こる)。
        • 教育の失敗は当期の学生に向けられない問題。
        • それが合理的としてもk、来期の学生も個別的で変化する。(生産と教育は違う。)
      • デミングのPDSAでは、点検ではなく研究とされている。目標と結果の差異を研究し、学んだことを積極的に生かして次の計画を立てる(差異を排除するのではない)。
      • 本来のPDCAの真意は協力と協調のボトムアップにも関わらず、政策や大学評価ではトップダウンと誤読している。
        • Pは目標と計画の両方の意味で使われるが、サイクルになるには目標は更新されないといけない(いかに目標を達成するかという計画(Plan)を指すもの)。しかし、実際は目標はトップからの所与であり、計画・実行(Do)だけがサイクルで更新されていく構造になっている。
    • PDCAサイクルは、あらゆる偶然性を排除することで、限りなく必然性を追求するシステムである。それが大学という現実を改善できるわけがない。
    産学連携を問い直した結果としての産学連携

    • 2006教育基本法改正:大学の使命に教育研究に加え、教育研究の成果の提供による社会貢献が明文化。
    • MEXT:産学連携推進が大学文化を変えていない→管理志向を強める政策(公募プログラムで人文社会科学の参画や、学部自治の変革を求める)。
    • 産業界:大学の企業化を求める背景に、米国が中央研究所モデルからオープンイノベーションに急速に移行したのに、日本はバブル期の企業での基礎研究モデル(基礎から開発ま自社でやるリニアモデル)から抜け出せないことがある。
    • 大学:研究者評価で、研究費獲得が重視され、技術移転・社会実装志向が強まった。
    • パスツール象限:社会課題解決・社会ニーズと基礎科学推進を同時に満たす研究 ← シナリオ上の話で実際には大学と企業の間に大きな壁がある。
      • 研究成果の公開の扱いの違い
      • 研究成果を評価する時間感覚の違い
    • これまでの産学連携=大学の企業化で企業と大学の差異を解消しようとしてきた。← 大きな壁の無視がかえって連携を困難にしている。→ 大学の尺度で捉え直すべき。
    大学教育と内外事項区分
    • 設置基準大綱化:各大学が特色を生かして自主的に教育課程をつくる ← MEXTの補助金交付で形骸化されていく。
    • 行政指導:法令や指示命令と異なる方法で要請を行う方法。
    • 補助金:(1)法律補助(根拠となる法令がある),(2)予算補助(それ以外)
      • 高等教育振興費はすべて予算補助
    • 教育行政学:教員の専門性に依拠して教育を行うことに関心(教育行政を一般行政と切り離し,政治の思いつきの提案の影響を小さくする)
      • 外的事項(財政・教員配置・開講日などの学校の形)と内的事項(教育の内容・方法)を分けることが重要。← 内的事項は教員に任せる。
    • 補助金は内的事項に踏み込んでいる ⇔ 政府と大学が利害を共にしている(減額された運営費交付金を補うために取り組む)
      • ただし,政府と教員が利害を共にすることは少ない。
        • 内的・外的の区分は概念としてわかりやすいが,実際に教育に関することをそれで区分するにはあまりにもあいまい。
    パフォーマティヴの脱構築
    • ハイパーメリトクラシー化:ポスト近代型能力(対人・コミュ力など)の社会的重要性が無視できないほど増し,能力の多元化が進行すること。← 専門性で逃がす・かわす(専門性を身につけていればその範囲で要求に応えればよく,あらゆることに意欲的・創造的でなくてもよい)。
    • ハイパーメリトクラシーか専門性か:対立するように見えて,パフォーマンス信仰という点で同根。
    理工系大学院の価値を問う
    • 産業界がなぜ博士人材に価値を見いださないか:修士である程度の研究経験があるなら,博士まで必要ないと考えている。
    • 日本は人口あたりの研究者は多い=博士を持たない民間研究者が多い。
    • 大学院が学部の延長にあるかアメリカのように切り離されているかが曖昧なままコースワークの実質化が図られ,研究活動の鈍化が起こっている。
    • 研究活動を通じた教育の実質化ができていないため,学位取得の基準が明確でなく,(研究が中心の博士課程の)人材育成目標が不明確。(とはいえ,それは困難)。

    • PROGのジェネリックスキル論
      • 知識を活用して問題解決する力のリテラシー,経験を積むことで身につく行動特性のコンピテンシーの2つの測定。

    2018/07/13

    山田礼子(2013)「高等教育における生涯学習推進の方向性」『日本生涯教育学会年報』34,21-40.


    • 25歳以上大学生:OECD平均20%,日本2%。
    • 教育再生実行会議:大学の社会人学び直し機能強化。4つの具体的提言。
      • 職業上必要とされるより高度な知識等の習得や,新たな成長産業に対応したキャリア転換に必要な知識等の習得など、産業界や地方公共団体のニーズに対応した高度・中核的人材養成のオーダーメイド型の教育プログラムを開発・実施する。
      • 産業界や社会人の学び直しニーズにマッチするよう,社会人教員の活用などによる先駆的な授業科目の開発,産業界との共同による実践的な職業教育プログラムの開発などの取り組みを進める(特に理工系)。
      • 社会人が学びやすい環境を整備するため,短期プログラムの設定や通信による教育の充実,ICT等の活用を進める。企業は,サバティカルや労働時間の弾力化等,社員の学び直しする環境づくりを行う。
      • 国は,大学・専門学校等で学び直しをする社会人を5年間で倍増(12万人→24万人)を目指し,支給要件の緩和など奨学金制度の弾力的な運用,雇用保険制度の見直しによる社会人への支援措置の実施,従業員の学び直しプログラムの受講を支援する事業主への手厚い経費助成等の支援策を講じる。
    • 社会人大学院:2009年から減少。
    • 日本の大学院拡大は80年前後:工学系修士が増加したため。今でも修士の半数は理工系。⇔ 日本の大学院は研究者養成。
    • 86年臨教審2次答申:修士を研究者養成でなく,高度専門職養成とする政策。
    • 専修学校での社会人受け入れも07年以降増加(特に専門課程)。
    • リカレントモデル:教育→職場ではなく,教育⇔職場。
      • 米国ではプロフェッショナルスクールとコミュニティカレッジがモデルの代表(職業の定義に応じて職業教育機能をそれぞれ果たす)。
      • プロフェッショナルスクールは,学位名称を分けている(MBA,JD,MEdなど)。
      • プロフェッショナルスクール,産業界,専門職(アクレディテーション)団体が連携しているので,リカレントが成立している。
    • 学士課程教育:生涯学習基盤という概念が今後定着するのではないか。
    • クオリフィケーションズフレームワーク:学習の達成レベルに応じた一式の基準にしたがった,クォリフィケーション開発と分類のための道具(舘)。
      • 様々な職業分野において複数段階の評価基準を整備し、学校段階との対応関係を明らかにするような能力評価制度。
      • ⇔ 学士課程段階での学習成果がようやく議論。より大きい枠組みのQFは議論なし。
    • 社会政策としての機能のみならず知識基盤社会におけるリカレント教育機能を充実することが,日本の高等教育に期待される生涯学習振興。

    2018/07/12

    三上直之・木村純・飯田直弘・児玉直樹(2016)「研究総合大学における全学型公開講座の運営動向」『高等教育ジャーナル─高等教育と生涯学習』23,87-100


    • 北大公開講座:8人の教員が多様な専門を講義。
      • 受講者の半数が70歳以上。
    • 全学型公開講座:各大学の中長期目標と関連付けて拡大傾向。
      • 北大の基本的方向:(1)超高齢化への対応,(2)多様な市民との対話を通じて大学改革の方向性を探る触覚としての役割の強化,(3)高等教育研究部門と学務部が協働して企画運営していることの強みの活用(三上ほか 2015)。
    • 共通テーマの設定=総合大学の総合力が問われる場。
    • 北海道・東京・大阪・名古屋=全学企画委員会型 VS 京都=事務局・担当理事主導企画(臨機応変に講師先行・企画先行を変えられるのが強み)。
    • 名古屋も受講者の半数が7~80代。
    • 休日昼間開講すると多様化できるともかぎらない。
    • 評価の高い企画を作る体制の維持が重要。

    2018/07/11

    飯嶋香織・行木敬(2016)「シニア学生の入学動機と入学後の学びの関連について」『神戸山手大学紀要』18,1-11


    • シニア50+制度:50歳以上の学生を正規学生として入学させる。
      • 筆記なし、AO入試、実質学費減免。
      • 年齢層50~70で広い。
    • 入学者に面接・質問紙調査。
      • なぜシニア講座(分離型)でなく統合型なのか。(→ 単発の講座では見えてきにくい学問の広がりを実感=学びの好循環)。
    • 質問紙→因子分析
      • 入学動機:学問追求、一般教養、人間関係、目的曖昧の4因子。
      • 入学後の学び・大学生活:学び因子、生活全般・友人関係の2因子。
      • 入学理由・期待と入学後の学びの関係:「高い専門性を身につけたかったから」「幅広い教養を身につけたかったから」「色々な人に出会えるから」「何もしないでいると呆けてしまうと思ったから」のプラス回答・マイナス回答の2群について、学び因子、生活全般・友人関係の因子得点を比較を比較して有意差検定。
        • 「高い専門性を身につけたかったから」:学び*、生活NS
        • 「幅広い教養を身につけたかったから」:学びNS、生活NS
        • 「色々な人に出会えるから」:学び**、生活NS
        • 「何もしないでいると呆けてしまうと思ったから」:学びNS、生活*
    • 教養目的では、どちらも高くない。
    • 入学動機は学習だけではない。
    • シニアであっても友人関係は重要。

    2018/07/10

    The Role of Organizational Design in 21st Century Organizations: The Future of Higher Education


    • 組織デザインは単に構造や権威階層に関する話ではない。関係性,実践内容,プロセスを形成する行動のバランスの中で設計するもの。
    • 組織デザイン=プロセス,構造,役割,戦略を立て直すもの。また,メンバー・情報・技術の統合プロセスを支えるもの。
    • それなのに垂直的な指揮命令系統を組織デザインと考える人は多い。
    • むしろ組織デザインのフレームワークが重要。これがデザイン選択の基礎となる。
    • フレームワークは,複数のデザインポリシーで構成される。ポリシーは,メンバーの行動に影響を与えるマネジメントによってコントロールされる。
    • その結果,多くの組織は官僚制としてデザインされている。コントロールポリシーとして,ルール,方針,手続きが決められている。
    • しかし,21世紀になって,マネジャーとメンバーが共同して,学生ニーズを見定めていくモデルが推奨されるようになった。いわゆる,フラット化・中間管理職廃止組織のこと。これは,共同を促進し,サイクルタイムを短くし,コストを下げ,質を上げる(本当?)。
    • フラット組織は医療・軍では機能しない。ソリューションが不確実でメンバーが各自で環境と相互作用する組織で機能する。また,組織文化を無視してフラットにしてもうまくいかない。
    • 結局組織デザインは,誰が決定するか,成果を形作るか,変化をリードするかを決めること。
    • 大学で優れた組織デザインは,知識,経験,各人の専門性を取り入れられる組織のこと。すなわち,何が自分たちのニッチか,強みか,独自性かをつくれること。
    • 環境変化が激しい時代では,バウンダリーレス組織になっていく。(バウンダリーレスなパートナーシップをいくつ作れるかということ)。
    • どうやって柔軟で適応的な組織デザインにするか。
      • 市場調査:自分の強みと弱み,競合の特徴,学生のニーズを知り,柔軟性,適応性,持続的発展の重要さを認識する
      • 戦略とプロセス:組織の進む方向性を決めて,必要な情報を組織内に流通させる。
      • コミュニティを作る:学科,地域,執行部が集まる機会をつくる。
      • 報償システム:目的にあう行動ができる人を報償する。
    https://thenewfuturist.com/free-resources/guest-articles/the-role-of-organizational-design-in-21st-century-organizations-the-future-of-higher-education/

    2018/07/09

    Wilkesmann, U. (2013) "Effects of Transactional and Transformational Governance on Academic Teaching: Empirical evidence from two types of higher education institutions," Tertiary Education and Management, 19(4), 281-300

    • ドイツの大学:ボトムアップ組織だった
      • 年に1回の総投票制度など→ 近年NPM型に変化。
      • 組織構造もクラブ型から企業型へ。
    • 変革型ガバナンス:
      • 職場での自己決定感高→より内発的動機づけ発揮
      • 職場での自己決定感低→外部から動機づける必要あり
      • 専門職組織=社会的規範で統治された組織
    • 研究目的:教員が学術教育の有効さを認知する上でどのようなガバナンスがより効果的か
      • 仮説1:取引型ガバナンスは専門大学でより効果的と考えられている
      • 仮説2:新しい管理手法は教育の有効さの認知にプラスの効果がある
      • 仮説3:高い自己決定性はより高い教育の有効さの認知につながる
      • 仮説4:学生中心教育であるほど、教育の有効さの認知につながる
    • 分析の背景にある概念
      • ドイツの研究大学VS専門大学
      • 組織における意思決定プロセス:ボトムアップ(クラブ=全構成員参加意思決定)VSトップダウン(PAモデル)
        • 専門大学=より管理型、研究大学=クラブ型
      • PA理論:教育活動の成果が見えにくい=インセンティブが機能しない(selective incentiveは研究に対してなら機能する)
        • →これは、教員がマルチタスク問題に直面していることを意味する。教員は教育と研究の双方に時間を割かねばならない。そこで、新たな教育インセンティブが必要。ドイツで主に使われる選択的インセンティブ:業績給、パフォーマンスベース予算配分、目標管理制度、教育賞
      • ドイツの給与体系:年齢給(C-salary)VS能力給(W-salary)
        • 目標管理制度入れた大学もある:学長・学部長と教育・研究目標を交渉して決定
      • 自己決定理論:内発的動機づけは変革型ガバナンスで重要な要素の1つ
        • 組織構造と動機づけには相関がある(Ryan and Deci 2006)。
        • 内発的動機づけは教育へのコミットメントを説明できるか?という課題にぶつかる。
      • 文化化理論:PA理論は、エージェントが学習しない・社会化されないと仮定している→教員は学生時代・教員時代を通して教育に関して社会化される。→教育アプローチを見れば、どのような社会化がされたかわかる
        • 組織内の社会化行動を見るために、Prosser & Trigwellの教育アプローチに注目する(=教員中心教育VS学生中心教育で見る)。
    • 調査設計
      • 研究大学と専門大学で別に調査
      • 前者は8000教員に調査、1119回答、回答率14%、業績給・年齢給別に調査
      • 後者は学部長に依頼、942教員が回答
    • 調査の関心=教員の教育行動(≠教育の質)
      • ~は自分にとってどのくらい重要か?で質問←従属変数
        • 教育にエフォートを投入すること
        • 新しい教授法を試すこと
        • 学習プロセスを豊富にすること、など
    • 独立変数は、新しい管理手法が使われているか
      • Merit pay:制度があるか?自分は使っているか?のダミー変数で測定
      • 目標管理:予算配分フォーミュラにおいて、教育成果は何%考慮されていますか?
      • 教育賞:自分が獲得可能な教育賞がありますか?取りましたか?で測定
      • 自己決定性:Work Tasks Motivation Scale for Teachersを使用。
    • 結果:
      • 仮説1:棄却、仮説2:棄却、仮説3:採択、仮説4:採択

    2018/07/05

    藤村正司(2017)「高等教育組織存立の分析視角(2) ― 「脱連結」論から見た改革・実践・アウトカム ―」『大学論集』49,37-52


    • 改革:一回限りの永 続的変化をもたらすもの ⇔ 改革それ自体がスタンダードな反復活動となり,改革が改革を招いている。
      • → 組織内部に改革と実践を連結させようとする強い圧力(=PDCAサイクルの確立)がかかっている。
      • → 改革をスタートさせることは容易であるが,改革を遂行することがいかに困難であるかを物語っている。
    • モニタリングや誘因を欠いた改革=成果を得ているのかどうか査定しなくても,アウトカムが得られているであろうと見なす「信頼の論理」がある。
      • ← アウトカムの精査を回避するメカニズム=「脱連結」
    • 新制度主義組織論は組織内部には立ち入らない。
      • 新制度主義は超越論 的視点から高等教育が提供するローカルで個人的な経験(カレッジ・インパクト)に先だって存在する「意味秩序」を問う。(大学でどんな教育を受けたかよりも,学生の資質が同じであれば,「卒業生」になる事実が,何よりも個人の将来生活にクリティカルな影響力をもつ。)
    • 2つの脱連結(Bromley & Powell 2012)
      • (1)改革を儀礼的に選択,仕事のルーチンを変えるモニタリングや評価は意図的に回避(教育・公的組織など,アウトカムに関する情報が外形的評価にとどまる組織で多い)。(=従来の脱連結)。
      • (2)実践とアウトカムの脱連結:改革が日々の実践の変更を余儀なくするが,新たなアウトカムが得られているかは不明なケース(総合改革支援事業のKPIや国立大の中期計画など)。

    2018/07/04

    原義彦(2015)「大学の社会貢献機能の位置づけ把握の試み」『日本生涯教育学会年報』36,57-73


    • 目的:現在までの約20年間に大学の社会貢献機能がどのように捉えられてきたか。大学の機能における社会貢献機能の位置づけの把握を試みる。
      • 社会貢献機能は、教育・研究と同列か定まっていない → 2005年答申(我が国の高等教育の将来像):社会貢献を明示 → 国際協力,公開講座,産学官連携などより直接的に。
      • なのに未だ,大学の社会貢献機能と教育・研究の関係は不明確。
      • → 3つの課題を設定
        • 大学の社会貢献機能がどのような内容として,また,それがどのような背景の中で示されてきたか
        • 大学の機能の中で社会貢献機能がどのように位置づけられてきたか
        • 現在,大学に求められている社会貢献とは何か
        • → 国の審議会会議等の答申,報告提言,文部科学省から出されている行政資料事業に関わる資料,パンフレットの各種資料で分析
    • 答申の動向
      • 1999「21世紀の大学像と今後の改革方策について競争的環境の中で個性が輝く大学(中間まとめ)」:地域社会への生涯学習支援機能を重視する大学という在り方が新たに示された。
      • 2005「我が国の高等教育の将来像」:大学の機能別分化で,従来の「地域の生涯学習機会の拠点」に加え,「社会貢献機能」が新たに示された。
      • 2008「中長期的な大学教育の在り方について」:機能分化に加えて,グローバル,ナショナル,ローカルという機能が及ぼす範囲・空間の違いによる分化の考え方が加わった。
      • 2014「イノベーションの観点からの大学改革の基本的な考え方」:国立大学に,3つの類型選択を求める。
    • COC事業(地域再生の核となる大学づくり構想)
      • 背景にある批判:大学の教育研究が社会の課題解決に十分応えていない,学生が大学で学んだことが社会に出てから役立っていない,地域と教員個々の人のつながりはあっても大学が組織として地域との連携に臨んでいない
      • 事業で期待する大学像:(1)自治体等と連携し,全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢献を進める大学,(2)全学的に地域再生・活性化に取り組み大学の改革につなげる,(3)地域の課題(ニーズ)と大学の資源(シーズ)のマッチングにより地域の課題解決,(4)自治体と大学が協働して地域振興策の立案実施を視野に入れて取り組む。
    • COC+へ
      • 自治体や企業等と連携して学生にとって魅力ある就職先を創出・開拓し,地域が求める人材を養成する大学の支援を通じて,地方への人の集積を図るということが主眼に。
      • COC=地域課題解決・再生・活性化の拠点となる大学づくり→COC+=人口減少課題に焦点化し,地域における雇用の創出学生の地元定着を促進
    • これらからわかる社会貢献機能
      • (1)記述内容について
        • 地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学=大学公開講座(大学開放事業)
        • 大学の社会貢献は,時代によって強調される内容が変容する ← ある意味当然:変化しにくい教育内容に対して,社会の変化に敏感に反応することが求められる。 → 大学の社会貢献の内容は幅が広く,明確な範囲を規定しえない。
        • 社会貢献は,大学改革の議論の中で生じた。
      • (2)大学機能における位置づけ
        • 2005年以降は第3の使命=教育・研究とは異なるもの定義。← 地域貢献や生涯学習支援の活動が広がる中で,別機能として捉える必要性があった。
        • 一方で,機能間の序列化を進めた=社会貢献は「第3」の使命。⇔ 社会貢献は教育・研究に含まれる機能という考え方(COCでは「全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢献を進める大学を支援」とある)。
      • (3)現在求められる社会貢献
        • 自治体等と連携しながら地域活性化や地域の課題解決を支援していくこと。
        • → 教育や研究そのものに社会貢献を志向する視点を取り入れる必要がある。(もし教育・研究に社会貢献が含まれるなら。)→ カリキュラム自体を地域志向にする必要あり。

    2018/07/03

    光本滋(2018)「高等継続教育と大学改革 : 国立大学における生涯学習部門の動向を中心に」『北海道大学大学院教育学研究院紀要』130,151-162


    • 国立大学協会大学運営協議会『大学改革に関する調査研究報告書』(1973年12月):国立大学における生涯学習部門の理念的な基礎を与えたもの。
      • 大学教育の開放は,技術革新などの必要から生れたものではなく,大学が自らその使命を主体的に認識した場合,当然生ずる理念であると指摘。
      • → 現実の大学は大学開放を十全に行うだけの人的物的条件を欠いている。
        • 選抜性の高い大学では,大学開放は自分たちの本務ではないという意識を生む。
    • 国立大学生涯学習部門
      • 1973:東北大学大学教育開放センター→金沢(76),香川(78)
      • 90年代~03:省令施設増加,大学開放やめて生涯学習教育研究センターを名乗る。
      • 04法人化以降:改廃(07年から加速),4パターンで再編。
        • (1)高等教育開発部門との統合,(2)地域連携(産官学連携)部門との統合,(3)高等教育開発部門・地域連携部門両方との統合,(4)生涯学習教育研究センターとしての存続
    • 大学改革との関係
      • 政府要請の強化:COC=大学と自治体の組織的・実質的な連携の下で教育内容を作って実施 → COC+=雇用創出・地元定着率の向上,数値目標要求,習得能力明確化
      • COC+は国立改革施策でもある(COCより採択数激増)

    2018/07/02

    木田竜太郎(2012)「高等継続教育の日本的展開に関する一考察 : 私立短期大学の消長・変遷過程を中心に」『早稲田教育評論』26(1),159-172


    • 短期大学:戦後高等教育の量的拡大に大きく寄与。
      • ← これに注目しながら、日本における高等継続教育の特質・性格・今後の方向性を探求した。
      • 国際的分類:短期高等教育(short-cycle higher education)、非大学セクター(Non-University Institutions)
      • 制度史的には、戦後教育改革の過程において、新制(四年制)大学への昇格が見送られた旧制専門学校群を救済するための暫定的な措置として発足。
      • 高度成長期:女性の社会進出、地域社会への大学教育機会の提供、高等教育進学率の向上に貢献
      • 近年:四年制大学量的拡大の主要因
    • 世界の高等教育大衆化:非大学セクターの創設と拡大によって支えられた。
    • 本稿は、大学設置基準大綱化が、短期大学に与えた影響について検討する。
      • なぜなら、大綱化以降短大は市場化の直撃を受けたから。
    • 日本の継続教育:社会教育の見地から施される職業・技術教育を指すことが多い(しかも正規の教育機関に在籍していない低学歴の青年・成人に対して)。
      • → 近年の継続教育:高等教育の修了者を含め、より広範な市民一般に提供される継続的専門教育。
      • → 短大は、21世紀型学習社会における「高等継続教育機関」として捉え直せるのではないか。
    • 短大廃止の3パターン:
      • 吸収廃止型:短期大学を「大綱化」以前からある系列四年制大学などに「吸収」(短大資源を使って新学部・学科増設)
      • 昇格廃止型:短期大学を「大綱化」以後に改組・転換して四年制大学に「昇格」
      • 撤退廃止型:短期大学の廃止によって設置者法人が大学教育から完全に「撤退」
    • なぜ廃止されるか:
      • 学生定員を充足できず経営上行き詰まっても、ただちに大学や短大が廃止されたり、学校法人が解散することは意外に少ない(山崎 1989)。
      • 資格志向と職業志向に対応できない+女性の進学先の変化の2つが主要因。

    2018/06/30

    宮脇陽三(1999)「現代の生涯教育政策理念についての一考察」『教育学部論』10,79-96


    • 「成人教育」 (adult education) と「成人の教育」 (education of adults) は同じ意味ではない。
      • 成人教育=自由教養教育 (liberal education) ,中産階級の人びとの余暇活用教育(英国)→ 完結教育であり,成人の余暇時間における知識や趣味を促進し拡充していく教育を指す
        • 成人期に行われて完結。教育の周辺部に位置づく。
        • 英国の地方教育当局が提供している大学開放(university extension)は余暇時間に行われ,創造的芸術や体育活動や家事技能習得活動と同じものとして取り扱われる。
        • 放送大学での学位取得は,自由教養教育とは区別すべき。
        • 成人に適した自己決定的学習方式で行なわれる(青少年でも行えるので,心身の成熟と豊かな生活経験と年令が20歳以上という条件を加える)。
      • 成人の教育=自由教養教育,一般教育,職業教育を問わず,継続教育・高等教育を除くあらゆる成人の教育。
      • フランスの成人教育=民衆教育(education populaire)
      • ユネスコの生涯教育=lifelong learning(フランスでは恒久教育 education permanente と呼ぶこともある)。
      • 明治~大正:通俗教育(青少年対象の青年団等の思想善導的な杜会教化を目的)→ 大正10年(1921年)社会教育という語が登場(学校教育を除く青少年・成人対象教育)。
    • 生涯教育:人生初期完結型教育では現実の杜会の教育要求に対応できなくなったために,新しい教育政策理念として登場。
      • 生涯教育=児童期から全生涯を通じて継続して行われる。
    • 継続教育(continuing education):生涯教育と同等に使われることが多い。
      • 全日制義務教育の卒業後に履修可能なすべての学習機会と定義(ベナブル 1976)。
      • → 定時制,全日・定時制,断続制に分けられる。
      • 厳密には,義務教育後教育・専門教育。成人の教育より専門化している点が特徴。職業再訓練教育が含まれる。
    • リカレント教育:OECDが採択した用語。
      • 学校と社会の聞を交互に循環するやり方での個人の生涯を通じての教育の普及と定義。
      • さまざまな理由によって,人生初期に妨げられた教育を再開したいと望む成人を対象とした定型的・制度的な全日制の教育。
      • 全日制教育を人生後期の時代に受ける=有給教育休暇制度を伴う。← ILOが各国に要請。
    • 地域社会教育(community education)
      • 地域:(1)個人間の人間関係が親密,(2)特定の場所で共同生活を行う集団,(3)特定地域の人 → 地域社会教育は複雑な意味を内包 → 地域社会活動・地域開発教育,地域社会の教育,壁の外での教育の3つに分ける
      • 地域社会活動・地域開発教育:地域生活上の問題解決な行動と維持向上的な活動(フレイレ)。=中立でない教育(ex. 貧困者の識字教育など)。
      • 地域社会の教育(コミュニティカレッジ)
      • 壁の外での成人教育(大学開放教育 university adult extension classes):大学所属教員が地域社会の中で講師として講座を担当する。
    • 学習社会:地域社会よりも地理的空間の範囲を広く取りあげたものであり,時間的には未来志向の理想的社会の理念。

    2018/06/29

    木田竜太郎(2011)「高等継続教育の日本的展開に関する一考察 ― 国立短期大学の消長・変遷過程を中心に―」『早稲田大学大学院教育学研究科紀要』19-2,83-93


    • 短期大学:GHQは,6・3・3・4 制の枠組みを崩壊させかねない二年制大学の設立に否定的だった。
      • なのに,ピーク時(1989)は57国立短大があった。
    • 短大の2つの顔:男子職業教育・女子教養教育/教員養成
      • 国立短大:職業教育機関化 VS 私立短大:女子教育機関 という歴史的構図。
      • 国立:夜間開校+法政商経・工学の専攻 = 男子勤労者のための職業教育機関 ←   女子教育は想定していない
    • 本稿の特徴
      • (1)法政商経系夜間開講課程,(2)工学系夜間開講課程,(3)医療技術系,(4)その他の4つに種別化して考察。
      • (1)1950-1960 年(戦後改革・短期大学制度化から大学設置基準運用緩和まで),(2)1961-1975 年(大学大量認可措置路線の開始から高等教育計画の登場まで),(3)1976-1990 年(高等教育計画の開始から大学設置基準大綱化まで),(4)1991-2010 年(大学設置基準大綱化から現在まで)の4区分。
    • 50-60:国に短大作る余裕なし(新制大学自体に問題山積)→ 地元・財界:大学でなく昔の専門学校のように手軽に人材を養成してほしい → 国立で夜間短大(資源の有効活用)
    • 61-75:男性勤労者のための夜間教育機関の設置なし。パラメディカル養成機関が主流に。
    • 76-90:医療技術系が主流に。
    • 91-10:医学部保健学科へ吸収。

    2018/06/28

    戸澤幾子(2008)「社会人の学び直しの動向 ―社会人大学院を中心にして―」『レファレンス』平成20年12月号,73-91


    • 生涯教育:人生の諸段階、生活の諸領域におけるフォーマル・ノンフォーマル・インフォーマルな教育・学習のすべてを含む総合的・統一的な概念。
      • 65年ユネスコ第3回成人教育推進国際委員会提唱。生涯学習本格化。
      • 73年OECDがリカレント教育を提唱。教育期と労働期の循環。
      • 日本は71年46答申で生涯学習の必要性指摘。81年答申(生涯教育について)で、生涯教育の定義明確化(=生涯学習のために、自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を相互の関連性を考慮しつつ総合的に整備、充実しようとする考え方で、教育制度全体がその上に打ち立てられるべき基本的理念)。
      • 生涯学習は、自己の充実・啓発や生活向上のために生涯を通じて行う学習を指し、基本的に各人が自発的意思に基づいて、自己に適した手段方法を選んで行うものと定義。
      • → これを受けて、機能、制度両面で高等教育の弾力化、柔軟化を政策課題として位置付け、大学の社会への開放について、昼夜開講制をはじめ新たな具体的方策を提起し、社会人の受入れを大学に対して要請した。
      • 87年臨教審最終答申:「個性重視の原則」「国際化、情報化等変化への対応」「生涯学習体系への移行」が教育改革の基本理念として提唱された。
        • ← 背景に、(1)教育の荒廃が社会問題化する中での「学歴社会」の弊害の是正、(2)所得水準の上昇や高齢化の進展等「社会の成熟化」に伴う学習需要の増大への対応、(3)情報化、国際化の進展、科学技術の進歩など「社会・経済の変化」への対応がある。
        • 第二次答申で、大学院修士課程を「高度専門職の養成と研修の場として整備・拡充を図る」とともに、「民間企業等の技術者などに対する継続教育として大学院修士課程の弾力化などの措置を考慮する」ことを提唱(=新しい大学院の方向性)。
      • 90年はじめて、「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」制定:夜間大学院、修了要件の緩和、昼夜開講制、サテライト・キャンパス、通信制修士課程の設置などの制度化が進む。
      • 91年答申:大学院生の規模を2000年までに2倍に拡大するという方針。
      • 98年答申:大学院に高度専門職業人の養成機能、社会人の再学習機能の強化が求められる → 99年大学院設置基準改正:「専門大学院」制度創設(研究者養成と明確に区別する制度ができたという意味で画期的)。
      • 00年教育改革国民会議:欧米型プロフェッショナル・スクール設立提言 → 02年答申:「専門職大学院」創設提唱 → 03年「専門職大学院」制度化。
      • 01年遠山プラン:「社会人キャリア・アップ100万人計画」(サテライト・キャンパス、eユニバーシティ、社会人向け短期集中プログラム)
      • 02年答申:長期履修学生制度の導入、通信制博士課程の制度化等を提言。
      • 05年答申:大学に求められる7つの機能の中に「高度専門職業人養成」「幅広い職業人養成」「地域の生涯学習機会の拠点」を指摘。
      • 06年教育基本法改正:第3条「生涯学習の理念」新たに規定。
    • 大学院の社会人受入
      • 1700研究科のうち831研究科で受け入れ。
      • ビジネス系16%、工学系11.2%、医薬系9.6%、その他で43%=要するにほとんどは多様な分野。
      • 受け入れ措置:夜間開講、土日開講、サテライト、長期履修など
      • 通信制(勤労学生に高等教育の機会を提供する目的ではじまったもの):社会人の再教育機関の役割を果たしているのが実態。98年修士、03年博士の通信課程制度化。背景に通信技術活用。01年全単位ネット取得可に。
      • 専門職大学院:4割が未充足。専門学校の大学院化批判あり。
    • 社会人学生
      • 00年→08年:院生増加1.3倍、社会人院生2.2倍、社会人院生割合10.6→20.4%
      • 修士では、工学、社会科学、教育系で多い。博士は医療系で多い。
      • 修士博士とも20代が多い。
    • 特色ある大学院
      • 筑波:夜間・土曜開講
      • 信州:インターネット大学院
      • 金沢工業:東京サテライト、1年制修士、夜間・土曜開講
      • 事業創造大学院大学:新潟・MBA
      • 日本福祉:夜間、名古屋駅サテライト、通信制
      • 広島:フェニックス入学制度(シニア世代の正規学部生)
    • 課題
      • 学費が高い
      • 学生が選ぶ要素:通学が容易、授業時間の適合性、土日休日開講
      • 工夫はしているが、まだ学習環境整備は十分ではない
      • カリキュラムと期待する人材育成内容が合致しない(工学系では企業と合同でカリキュラム開発する例もある)
      • 企業が学位取得を評価しない
    • 日本の生涯学習=生活を豊かなものとし、生きがいを見出す余暇活動であり、趣味教養的な側面に重点がおかれる傾向
      • ⇔ 職業人に必要な知識技能は、終身雇用のもとで大学教育より企業内教育で育成

    2018/06/27

    関正夫(1987)「生涯教育の観点からみた継続教育改革の課題」『日本工業教育協会誌』35(1),55-57


    • 継続教育:工学分野では1960年代中頃から用いられ,「科学・技術の加¥速度的な進歩に対応するための大学等の卒業者を対象とした専門・職業教育」として紹介された。
    • 生涯教育:継続教育と異なる。
      • 生涯教育:激変する新しい時代や社会に対応しうる教育として,専門・職業教育のみならず,一般教育が重視されることが強く求められており,「知識の集積」よりも「学ぶ方法を学ぶ」ことに力点が置かれている。また,学習者の自主性を尊重する。
      • 継続教育も生涯学習としてとらえるべき。
    • 世界の博士課程は若い学生だけを対象にしていない。
    • ILO条約・勧告(1974)提言の有給教育休暇制度がほとんど実施されていない。

    2018/06/26

    八木信一・武村勝寛・渡辺亨(2016)「環境ガバナンスにおける橋渡し組織の機能に関する研究」『自治総研』449,59-80

    • ガバナンスが展開される空間スケールが既存の行政単位を超える場合がある(ガバメントの相対化をめぐる是非に関する議論)。
      • → 環境ガバナンス組織:ガバメントと他のアクターとの利害調整を行う=橋渡し組織
    • 公的ガバナンス論:社会統治のゲートキーパー役としてのガバメントの相対化をめぐる是非について検討してきた
      • 公共政策を担うアクターの多様化、福祉国家の危機が背景。
      • → 2つの立場:ガバメントが舵取り役 VS 行動原理が異なる多様なアクターの1つ
      • ← 公共政策の内容によってどちらが適切かは変わる。Ex. 資源が特定国に偏在・インフラ整備が重要なら前者、資源が分散・ネットワーク重要なら後者
    • ガバメント機能の変容研究の4分類
      • 自己ガバナンス:需要者としての地方自治体が果 たす機能に着目
      • 公共サービス供給によるガバナンス:インフラにかかる機能も含む点が特徴
      • 公権力によるガバナンス:条例や計画を通して低炭素化を推進するための指針や水準を規定し、他のアクターの事業や活動に影響を及ぼす点に注目(=地方自治体の規制機能)
      • 条件整備を通したガバナンス:ガバナンスでの作動起点が住民、NPO、企業等の他のアクターにある点が特徴(=事業や活動が円滑に進むための条件整備)
    • 境界組織(Boundary organization):ガバナンスの形成に関与する組織
    • 橋渡し組織(Bridging organization):アクター間・空間スケール間での認識、能力、およびニーズなどをすり合わせる組織
      • 召集機能(Convening function):アクターが互いに顔を合わせる場を橋渡し組織が提供し、アクターを巻き込んでいく機能
      • 解釈機能(Translation function):橋渡し組織に集うアクターがそれぞれ有する情報を理解したり、また利用できる資源を認識したりする機能
      • 協働機能(Collaboration function):アクター間で率直な対話を行うこ とによって協働を促すための機能
      • 媒介機能(Mediation function):各アクターの利害得失を表出させ、アクター間の利害調整を担う機能

    2018/06/25

    藤田英樹(2009)『ミクロ組織論』新世社


    • 内発的動機づけ:欲求論(自己決定)+過程論(認知的枠組みで説明)と言える。
    • 動機づけの認知論的アプローチ
      • 環境・記憶・情緒から受け取った情報は、エネルギー源への刺激入力になる。
      • エネルギー→目標:欲求論の範囲
      • 目標→行動:過程論の範囲
    • 組織行動は、人間をどのような存在とするかの仮定で異なる。
      • 機械的側面(人間は受動的な機械である:命令に従う)
      • 態度・動機的側面(個人的な態度・価値・目標に従って行動する)
      • 合理的側面(意思決定者・問題解決者として行動する)
      • これらは相互に矛盾するものではない。
    • 意思決定には、5つの意思決定前提が必要
      • 目標、代替選択肢集合、各選択肢の期待結果集合、各結果の効用集合、意思決定ルール
      • 意思決定は、意思決定前提という環境からの刺激への反応でもある。
    • 状況定義を単純にする方法
      • 他のメンバーからの意思決定前提を受け入れる=権威
        • 限定合理性・専門性不足のために権威として受容する(ほうが楽)。
      • メンバーが組織の観点から意思決定する=一体化
        • 組織にとって:メンバーの目的を組織に望ましいものに変える→採用手続き、組織内実践で変える
        • 個人にとって:身内意識を持つ
    • ゴミ箱モデル
      • 組織の上層ほど多くの選択機会に参加できるために、エネルギーは分散し問題解決がされにくい
      • 組織の下層ほど選択機会が限られるために、問題解決が行われる可能性が高くなる
      • 組織の上層で意思決定することは、見過ごしややり過ごしばかりになってしまう
    • 科学的管理法と自発性
      • テイラーも現場に関する知識を最も持つのは現場の人間と考えていたが、自発性の発揮は例外と断じたために、管理者が標準を設定して現場の人間を教育することにしてしまった ⇔ カイゼン
    • マズローの欲求段階説には実証的根拠がない(欲求説と呼ばれ、欲求理論と呼ばれない)。
    • 近代企業の特徴は、経営側が従業員への依存度を高めていること(大量の知識や技術を使うようになったため)。
    • 期待理論の基本的な考え方:行為→(期待)→成果(1次結果)→(手段性)→報酬(2次結果)→報酬期待値が大きいほど行為の動機づけが大きくなる
      • どんな仕事をしたらどのような結果が得られるかがわかっている必要がある。
      • ローラーの給与モデルも、基本的に同じ期待モデル。
      • 期待理論は、参加の意思決定は外発的、生産の意思決定(生産性向上)は内発的動機づけが必要と考える。
    • マズロー欲求説の修正
      • アルダファーのERG理論:因子分析では5つではなく、3つに分かれる
      • 生存欲求(Existence)、関係欲求(Relatedness)、成長欲求(Growth)
    • ハーズバーグの三角関係:人事管理哲学の3類型
      • 組織論(業務フローに注目):人間の欲求に合わせて仕事を適切な方法で組織化することが重要→仕事の構造を効率化でき、職務態度も良好になる
      • インダストリアル・エンジニアリング(仕事に注目):仕事の作業条件とインセンティブシステムの設計が重要→仕事がうまく構造化されれば、仕事は適切に組織化される
      • 行動科学(職務態度に注目):人事管理は人間関係トレーニングを中心にすべき→懸念な職務態度が形成され、仕事の構造も組織構造も効率化される
    • 二要因論:衛生要因が積極的満足に寄与しないのは、個人に成長の感覚を与えるのに必要な特徴を有していないため
      • 衛生要因で仕事を選ぶと、離転職を繰り返す可能性がある
    • 内的報酬の源泉は、有能さと自己決定の感覚。
    • コンピテンスの動機づけ目的:刺激に対する飢えを満たす、活動することへの要求を満たす、知識を獲得する、環境を統制する
      • コンピテンスへの欲求から生じる動機づけ=Effectance Motivation:コンピテンスを発揮することができると人は環境に対して有効性を持っていると感じられる→この感情を効力感(feeling of efficacy)と呼ぶ。
      • 有能さと自己決定の基盤となるのが自律性←環境を処理する能力を習得することで、人は自律性を増す。
    • 有能さと自己決定の感覚を経験したいという欲求は2つの行動を起こす
      • 自分が有能で自己決定的と感じさせてくれる機会(適度なチャレンジ)を提供してくれる状況を求める。
      • 自分が直面したり作り出しているチャレンジを征服することを求める。
    • 期待理論=人は楽な方へ流れる⇔内発的動機づけは逆の立場。
    • 外的報酬はインパクトが大きく、注意して使わないと人の行動を統制する。
    • 欲求・動機・動機づけの関係
      • 動機:欲望、衝動、願望などの行動を引き起こし、方向付け、持続させるもの、欲求は動機の一例
      • 動機は具体的で、動機づけは抽象的で動機一般をあらわすもの
    • 動機理論志向:ある動機の存在の有無とその水準で行動が決定される
    • 期待・価値理論志向:環境からの刺激に対する認知的反応によって形成される、期待と価値の水準によって行動が決定される
    • マクレランドの動機論は前者、アトキンソンの達成動機づけは後者に位置づく
    • マクレランドの動機:1つの感情状態における合図の変化による再構築(動機の生成=あるきっかけによる感情変化)
      • 合図:学習された刺激
      • 再構築:合図前の感情と新たな感情が統合されること
    • マクレランド:動機づけを、喚起された動機のみを指すとした(行動選択に利用される、期待や価値などの認知変数と切り離した)。
    • アトキンソン:動機づけを、期待や価値に影響された後の最終的な行動への衝動を表すものとした。
    • アトキンソンモデル:最も有力・正統的で説明力の高いモデルとされている(明快で精密な定式化がされているため)。
      • 基本的な考え方:達成動機が強ければ達成行動が現れやすいが、認知変数である期待や価値によってその頻度や強度は変化する。達成行動の強度・頻度・持続性は、成功近接傾向と失敗回避傾向の合成傾向で決まる。両者はそれぞれ、動機・期待・誘因価の積で決まる。

    2018/06/22

    桑田耕太郎・松嶋登・高橋勅徳(2015)『制度的企業家』ナカニシヤ出版


    • 新制度派では、組織は制度的環境に適応することで、人々の間で共有された認知的な前提が形成され、安定的な役割関係が形成されるというイメージが存在する。
      • イメージが一旦制度化されると、主体は既存の制度に拘束され、結果、制度変化を説明できなくなるという理論的行き詰まりをもたらす。(埋め込まれたエージェンシーのパラドクス)。
    • 制度的企業家のディスコース
      • 企業家=制度の外部から新奇性をもたらす主体(既存制度への侵入者)。
      • 制度=企業家がイノベーションを生む源泉(企業家は変化のアイディアや資源動員能力にアクセスするために、自らを制度の中心・周辺にポジションする)。
      • 制度=社会的構成物≠客観的実態:制度は人々によって認知的に絶えず維持されなければならないプロセスである。

    • 制度ロジック:バスワード?(理論的考察が不十分で、概念の真意が損なわれている)。
    • 制度は組織論の古典
      • Meyer and Rowan (1977):官僚制の技術的特徴のもとで組織の有効性を論じるコンテインジェンシー理論への懐疑に始まる。
        • 官僚制は、人が神を代替するイデオロギーを必要とした結果採用された(形式合理性が神聖化された)。公式組織は他の伝統的価値や具体的活動に支えられつつ、それらから脱連結される。
      • DiMaggio and Powell (1983):同型化=集合的合理性
        • 理論的に補足する概念は、組織フィールド(利害関係者を構造化する場=制度を手がかりに自らに有利な形式を生み出そうと競争が生じる場)。
        • 同型化概念は、組織フィールドのなかで変化する有効な戦略のあり方をめぐる集合的合理性を論じたもの。
      • Zucker (1977):制度は社会的構成物
        • 制度は物象化されることで、作り出した人々の手を離れ、客観的な現実として眼前するようになり、それが世代を超えて人々のアイデンティティを形成していく。
        • 制度化されているほど知識は伝達され維持されやすい。
      • Scott and Meyer (1991):社会的セクター
        • 社会において所与の形態の製品やサービスを、供給者、資本家、行政などの関係組織とともに提供するすべての組織
    • 通説への批判:制度論は誤解を生んだ
      • 正当性と効率性が二項対立として扱われた。
      • 制度論は非競争的な対象を扱うとされた。
      • 社会化過剰の理論とみなされた。
      • コンティンジェンシー理論の延長で、環境決定論だとみなされた。
    • → 制度的企業家に注目
      • 制度的実践:制度の創造・維持・崩壊を目指した個人や組織の目的的行為。
      • 言語論的アプローチ
      • 方法論の提示:言説分析は方法であるともに方法論=世界を再考するツール。
      • 支配的制度ロジックの変遷:高等教育出版界の専門性から商業主義シフト(Tnlornton and Ocasio 1999)。
      • 制度ロジック概念が制度論の文脈でいかなる含意を有するのかについては十分に議論されていない。
    • 制度ロジック:方法論ととらえる → 制度ロジックを通じた分析 vs 制度ロジックの分析
      • 制度ロジックとして本来問うべき論点は、制度ロジックの構成要素である正統性や椎威、アイデンティティ、規範などがどの程度ロジック間を移転可能とみるか。

    2018/06/21

    牧貴愛(2016)「タイの大学入試制度」『大学教育論叢』2,67-79


    • 大学入試は他のアジア諸国同様、high stakesな試験。
    • 高層ビルが予備校であることは、日本と似ている。
    • 高等教育の量的拡大
      • 無試験入学の公開大学開学(71)
      • 無試験入学の通信大学(78)
      • 地方教員養成校の総合大学化(84)
      • 工科学校の工科大学昇格(05)
    • 進学率約46%(2010)
    • 国立60%、国立公開26%、CC0.6%、私立13%
    • 社会構造に学閥があり、有名大学志向がある。
    • 99年国家教育法 → 公平・平等な入試へ
      • 1回の試験→高校学業成績+2回の筆記試験
    • 入試は、個別大学主体・独自の直接入試と統一入試がある
      • 前者を受験して不合格なら、統一入試を受け、不合格なら私立大学・無試験大学へ進学(3回の機会がある)。
      • 統一入試は全国学長会議と国家教育試験機構が実施。
      • 直接入試には、地方生優遇のクオータ入試、スポーツ・芸術の特別優先入試がある。

    2018/06/20

    金井壽弘(2006)『働くみんなのモチベーション論』NTT出版


    • モチベーション論:アップダウンがあるのは当然で、それを自己調整できることが重要。← そのためには持論を持つことが重要。← メカニズムを知っていること自体が大きな復元力をもたらす。
    • モチベーション論の3系統:緊張系(緊張やズレを回避するために人は動く)、希望系(ありたい姿に近づくために人は動く)、持論系(自分がどうやるか知っているままに人は動く)
    • 生命は、自分が置かれている環境がどうなっているか知りたいちう根源的動機を持つ(世界を探索する気持ちを持てないと生き延びられない)。
    • 動機づけの分類軸
      • 内発的・外発的
      • 内容理論・過程理論
        • 内容理論:達成欲求、親和欲求、勢力欲求、安全欲求、経済的欲求などどのような欲求の組み合わせで人を描くか。
        • 過程理論:どのようなメカニズムでモチベーションが喚起されるのか(矛盾、不協和などを解消したい)
    • 緊張系:傾いた絵画はまっすぐに直したい、まっすぐになると安心して絵が目につかない(マズロー)。
    • 持論アプローチの源流:自分についての理論、実践家の使用中の理論、素人の素朴理論、自己調整理論
    • 学習動機の2要因モデル:学習内容の重要性(大・小)×学習の功利性(大・中・小)
      • 実用志向(仕事や生活に生かす)(大・大)、報酬志向(報酬を得る手段として)(小・大)、訓練志向(知力を鍛えるため)(大・中)、自尊志向(プライドや競争心から)(小・中)、充実志向(学習自体が楽しい)(大・小)、関係志向(他社につられて)(小・小)
    • マクレガーのX理論・Y理論
      • 自分がX理論を前提にしていると、そのように振る舞ってしまう。自分の見方が職場のあり方を作る点について、マクレガーは注意を喚起した。
    • オペラント条件付けのポイント=随伴性(随伴的結果):有機体側から環境へ積極的に働きかける
    • 給与や昇進などの外発的報酬の効果は、それだけでは足りないが、無視できない。
    • 外発的動機づけに依存する弊害
      • 報酬が罰になる
      • 報酬が人間関係を破壊する
      • 報酬は行動の理由を無視する
      • 報酬は冒険(危険負担)を阻害する
      • 報酬はやっていることへの興味を損なう
      • 報酬は使い使い出したら簡単に引けない
      • 報酬はそれを得るための手抜きを選ばせる
    • 達成の承認、有能感の確認、自己決定の機会とセットであれば、報酬のアンダーマイニング効果は大きく緩和される。
      • 報酬には、制御的側面と情報的側面があり、前者が大きければ内発的動機づけを損ない、後者が大きければ有能感と自己決定の感情を高められる。
    • 期待理論への批判
      • モデルが複雑すぎて、人間モデルが計算高すぎる
      • 基本は外発的報酬のモデル(当人は内発的なものを入れているというが)
      • いくつかの変数は、実証研究で効果が検証されていない
      • 報酬の価値は、主観的認知であり、実際の報酬の価値ではない
      • 時価幅が不明確。モデルが想定するよりも、実際の報酬(昇任など)には長い時間がかかる
      • 高みを目指す無垢な気持ちを説明できない
    • 社会的な共同体が大きな成果を生み出せる ← 社会関係資本が注目される背景
      • → 親和が高いほど達成水準も高くなる
    • ロックの目標設定論:挑戦の基準と具体性の基準
      • 目標の困難度:成功失敗確率が5割くらいが最もモチベーションが高まる
      • 目標の具体性:ベストが曖昧では人はベストを尽くせない、具体的で裁量・工夫の余地があるものにする
      • 目標へのコミットメントと目標の受容:促進要因(上司が喜ぶ・認めてくれる、面白くなる、競争が生まれる)、阻害要因(標準の引き上げをもたらす、未達が解雇理由になる)
    • 経営学の人間モデルの変遷
      • 経済人モデル:標準管理、プレミアムを標準に変えることで、組織的怠業(仕組みがおかしいから怠業する)が起こる
      • 社会人モデル:ホーソン実験、報酬だけでなく集団に属する安心や喜びを得る。
      • 自己実現人モデル:マズロー、マクレガー、アージリス、Y理論
      • 複雑人モデル:3つのモデルの臨床的診断力が管理職に求められる
    • モチベーション論とリーダーシップ論は表裏の問題

    2018/06/19

    ニルソン,L.(2017)『学生を自己調整学習者に育てる』北大路書房


    • 永続的に学ぶ上で自己調整(self-regulattion)は欠かせない。
      • 高等教育の目標は生涯学習者を育てること。
      • なのに学生は意図的、自立的、自己主導的でない。
    • 学生が抱える課題
      • 方略に関する知識:課題遂行に必要な技術的な手順・手続き、学習や思考を計画・監視・評価すること、リハーサル・精緻化・体制化などの効果的な方略に関する知識。
      • 認知的な課題に関する知識:指示を理解したり、課題の難易度を判断したり、いつどの学習方法を活用するかを決める知識。
      • 自分自身に関する知識:学習者としての強みと弱みを知ること、与えられた課題を達成するために自分にベストな方略を知ること。
    • スクローの自己調整の3段階(学習前・中・後)
      • 計画における質問:これはどんな課題か?目標は何か?自分の意欲はどの程度か?低ければ意欲は高められるか?どれくらいの時間と資源が必要か?課題についてすでに知っていることは何か?課題に対して自分の強み・弱みは何か?
      • モニタリングにおける質問:自分は何をしているか?課題へのアプローチは適切か?取り組み方を変える必要があるか?何が理解できていないか?将来とどう関連するか?
      • 評価における質問:どの程度目標を達成したか?どの程度妨害の原因を避けられたか?何が重要なポイントだったか?まだわからないことは何か?これまで学んだこととどう関連するか?トピックに対する考えはどう変わったか?
    • ジマーマンの自己調整学習の3つの段階
      • 予見:(1)目標設定や方略的な計画を含む課題分析、(2)自分の学習についての自己効力信念、学習結果についての期待、課題に対する内発的興味
      • 遂行・意思コントロール:(1)イメージ化、自己教示、注意の焦点化、課題のうりゃくの適用を含む自己統制、(2)自己記録、自己実験を含む自己観察
      • 自己省察:(1)何らかの基準(以前の自分、他者、絶対基準)に基づくパフォーマンスの自己評価、結果の原因帰属を含む自己判断、(2)その後の動機づけを向上・低下させる自己満足の程度
    • 自己調整学習は、脳の複数の領域が関わる総力的な活動。
      • 注意と集中、自己意識と内省、率直な自己評価、変化への開放性、真の自己規律、自己の学習への責任を受け入れること。