2018/12/05

小針誠(2018)『アクティブラーニング 学校教育の理想と現実』講談社


  • アクティブラーニングを巡る幻想
    • これまでの教育では未来社会を生きる子供に目標を達成できない。
    • 活動的に学べば、主体的・能動的に学べる。
    • ALを経験すれば、思考力・判断力・表現力や学ぶ意欲が高まる。
    • 教員が学べば誰でもALで教えられる。
    • 以上からALは好ましく、政策として導入されるべき。
  • ALの定義変遷
    • 大学改革期:ALを導入すれば主体的に考えられる人間が育てられる。
    • 小学~大学期(2014以降):何を学んだか→何ができるようになったか。
      • 大学=講義からの脱却 ⇔ 初中等=基礎知識・技能の習得をもとに、言語活動を中核にして、思考力・判断力・表現力の育成を目指す。
    • 新学習指導要領告示後(2015以降):AL→主体的・対話的で深い学び。
      • 活動あって学びなし→「ALは視点である」=ALは特定の型ではない。
      • しかし、視点になったために、強化外活動についても目標・内容・方法・評価を3つの学力に集約させた。
      • さらに、教室内で達成する水準が高くなった(=習得した概念や考え方を活用して自ら問いを発見し、課題の解決を行う探究的な学びを、限られた時間の中で多様な子供を相手に行う=不可能)。特に、3つめの学びに向かう意欲という内面のあり方も評価対象。
      • これは、ゆとり教育→ふとり教育:十分に消化しきれない盛りだくさん教育。
      • さらに、太った部分は、カリキュラムマネジメントとして、現場に責任転嫁された。← 戦時下の「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」
  • PISA調査では、ALを経験しないほど、数学的リテラシーの得点は高い(OECD PISA2012データベース)。

  • 近代学校のミッション:個人の解放(学歴獲得)と国民の統合(愛国心教育)という矛盾を引き受けて子供を教育する場。
  • 成城小学校ドルトンプランでも、児童間の意欲や学力格差は深刻だった(最も恵まれた学校であったにもかかわらず)。
    • 子供にできる以上の自主性を要求した→クラスにつながりがない。
    • 基礎学力なくして自学自習は成立しない。
  • 奈良の問題:ALの型を批判された。
  • 戦後小学校のコアカリ:社会科(社会・生活)が中心で花形=活動・経験によって学ぶ
    • 戦後混乱期で教材や資料が十分ない→条件が整わずにできない・社会科は現場調査をやらせる教科だと錯覚される。
    • 系統性・体系性が重要な国語・算数で、単元学習が困難と教員が感じる。
  • はいまわる経験主義批判:今後の学習指導の方針
    • 個人差の考慮、反復練習、能力別グループ指導
    • ただし、当時の調査では厳密な方法と十分な根拠で学力低下を立証したとはいえなかった。
  • → 花形の社会科は、系統主義化で覚える科目になった
    • 自民党・文部省は、日教組が社会科をマルクス主義思想教育として利用することを最も恐れた → 法的拘束力のある指導要領で、系統主義カリキュラムにした。→ それに抵抗できる子供を育てるために、学級集団作りを進めた。
  • ⇔ 班などの学級集団作り(共産圏の少年団(ピオニール):相互監視と減点評価で個性を埋没・抑圧させる結果に(もともとは個の力を自覚し、討議を通じて、集団の力を発揮する)。
  • 1987以降のゆとり教育:今のALは過去の政策評価が不十分。
    • これまで:画一性、硬直性、閉鎖性
    • これから:個性の尊重、自由・自立、自己責任
  • 児童の家庭環境や基礎学力の差が顕著だと、活動による学習は、格差が露骨・残酷に出てしまう。そこに教育的配慮をすると、劣等感や疎外感が増幅される。
    • 基礎学力上位層:AL受けたい ⇔ 下位層:AL受けたくない。
    • 家庭環境が恵まれた子供ほど、調べ学習に積極的でグループ活動でまとめ役になる。
    • ブルームは、知識、理解なしに、高次の水準には到達できないと指摘。
  • 昔のALと今のALの違い
    • 戦後新教育=社会的な学習が目標。個人の外側の生活や社会が対象。
    • 総合的な学習=自己発見の学習。個人の内面の心理が対象。
  • 歴史から学べること:実践、運用、倫理上の課題がある。
    • 実践の課題:ALは強い個人を前提条件にしている。
      • 時間の限界:すべての子供が同じ時間でALで学ぶ。
      • 場所の限界:教室内では多様性は育みにくい。
      • 指導者の限界:既存教材・教員の指導力では対応できない。
      • 学習者の限界:意見の対立が人間関係の対立になる。
    • 運用の課題:マニュアルでALはできない。
      • 教員の仕事は不確実性で支配されている(佐藤)。
      • 型でALはできない。
      • 大学入試で十分評価できるとは限らない。
    • 倫理上の課題
      • 社会科学分野でALをするには、政治、社会、道徳の問題や背景まで、深い理解と批判的な洞察ができ、問題を自分の問題として自覚しなければできない。十分な内化がなければ、ALは不可能。
      • 参加しない自由がない学びの強制は、個人の内面に過剰に介入する。
      • 人材を作るためにALをする政治的問題。ALが求められる時代は、国や社会が一方的な希望や期待を子供に寄せた社会。