2025/09/03

斎藤環(2013)『承認をめぐる病』日本評論社

  • 他者の許しがなければ、自分を愛することすら難しい。その風潮を批判しても始まらず、若者がコミュニケーションと商人に依存していく過程には、強い必然性がある。
  • 思春期の子供にとってキャラとして承認されることが最も重要。キャラを与えられないことは、教室内に居場所がないことを意味する。
  • マズローの承認欲求段階説では、高次の欲求であるはずの承認欲求が全面化し、衣食住よりも承認という逆転現象が見られる。
  • キャラとしての承認を求めることは、承認の根拠を全面的に他者とのコミュニケーションに依存すること。
  • 他者による承認を切望しながら、それがかなわない可能性を恐れるあまり、どうせ自分なんか・・・という低い自己評価で自分を守ろうとする。
  • 承認の病を回避する方法はいくつかある
    • 他者からの承認とは別に、自分を承認する基準を持つ
    • 他者からの承認以上に、他者への承認を優先する
    • 承認の大切さを受けれつつ、ほどほどに付き合う
  • 若者が就労したいのは、承認欲求のため。就労へ動機付けたいなら、生理的〜関係欲求までを十分に満たす必要がある。生存の不安から実存の不安への変化。
  • 若者にとって家族の機能は、関係欲求までの全ての欲求を満足させること。衣食住を保証、批判や叱咤激励を控え、親密なコミュニケーションを取る、ここまで可能になれば本人の状況が改善するし始める。
  • 実存の不安=自分は何者か、自分の人生に意味があるのか。
  • 現代は対人評価の基準がコミュニケーションスキルに一元化されている。コミュニケーション偏重主義。

2025/09/02

Transforming Classroom Discussions with Communication Practices from Health Coaching

  • 学生が恥ずかしがったり表面的にしか議論に参加してくれない → OARSフレームワーク、言い換え、アクティブリスニングの3つを活用せよ(Health coachingで使われる技法)
    • OARS=open-ended questions, affirmations, reflective listening, and summarization

  • OARS
    • オープンクエスチョンで問う:「インセンティブが与えられると、人はなぜやる気が出ないのでしょうか」「あなたの経験では、仲間をやる気にさせたものは何ですか」
    • 学生の発言を肯定する:「素晴らしいコメントですね」「良い質問ですね」は言わない → 「○○さん、運動プログラムにおける有酸素性エネルギー産生の応用について、あなたの考えを自発的に話してくれてありがとう」、「○○さん、あなたのコメントは、ゴッホがひまわりを絵画に使用する際の視点を反映したもので、本当に感謝しています」
    • 省察的な傾聴:学生が発言したことを教員がどう理解したかを確認して問いかける「○○さん、あなたは山岳アスリートの間で、個人的な達成感が強力な動機づけになりうると言っていますが、そうなのですか?もし○○だとしたら、どうなると思いますか?」← 学習の重要なポイントを思い出させるための質問
  • 言い換え
    • 5W1Hを使って、質問を再構成する
      • やる気を高めるにはどうしたらよいですか?→ やる気を高める要因は何ですか?、やる気を最も感じる/最も感じない場所はどこですか?、やる気を最も示す/最も示さない人は誰ですか?、なぜやる気は満ち引きするのですか?
  • アクティブリスニング
    • 学生の声を聞く
      • 回答に十分な時間を与える、沈黙を恐れない
      • 名前で呼びかける
      • 学生の近くへ行く
      • 目を合わせる
      • パラフレーズする

2025/09/01

Brufau Alvira, N., P. Bannister, and A. Santamaría Urbieta. (2025) “ Validating the PANDORA GenAI Susceptibility Rubric for Higher Education Assessment: A Field Test of All Translation and Interpreting BA Assignments.” Higher Education Quarterly 79(4)

  • AI proof な課題をどう作るか?→ 批判的思考力、創造性、協調性を問う
  • 提出物の「形式」を工夫する
    • AIが生成しやすいプレーンなテキストから、AIにとって扱いにくい、または人間が介在しないと作成できない形式に変更する
      • 音声または動画形式での提出を求める:学生が自分の言葉で説明したり、プレゼンテーションしたりする様子を録画・録音させ、本人の理解度や思考のプロセスを確認する。
      • 共同作業の課題で、動画内にチームメンバー全員が映り、参加していることを要求する 。
      • 入力情報をテキスト以外の形式にする:課題の元となる資料を、単純にコピー&ペーストできない画像ファイルなどで提供します。
  • 「成果物」だけでなく「プロセス」を評価する
    • AIは最終的な成果物に至るまでの試行錯誤の過程を示すのは苦手。
      • 思考の過程を記録させる:Wordの「変更履歴」機能やバージョン履歴の提出を求め、どのように文章が推敲されたかを確認する 。
      • 参照した情報源や思考の軌跡を記録させる:参照した資料のリスト、重要な部分に色分けで印をつけたテキスト、授業で議論した内容や個人の経験とどう関連付けたかの説明などを提出させる。
      • 翻訳レポートの比重を高める:翻訳課題で、なぜその翻訳を選択したのか、文化的な背景をどう考慮したのかなどを記述する「翻訳レポート」の配点を高くする。
  • 学生の「主体性」と「創造性」を引き出す
    • AIは指示されていない範囲で主体的に考え、創造性を発揮することは困難。
      • 学生自身にトピックを選ばせる:教員がトピックを指定するのではなく、学生にトピックを自由に選ばせ、なぜそのトピックを選んだのか理由を説明させる。
      • 創造的な解決策を評価する:翻訳課題などで、特に優れた独創的な解決策に対して加点するなど、創造性を評価基準に明記します 。
      • 指示をあえて曖昧にする:詳細な指示書を与えるのではなく、大まかなガイドラインのみを示し、学生自身に具体的な内容を考えさせます 。
  • 真の共同作業を求める
    • AIは人間同士の有機的な協調作業に取って代わることはできない
      • 相互依存的なタスクにする:単なる分業ではなく、前の人の作業内容を踏まえないと次の作業に進めないような、連鎖的で相互依存的な共同課題を設計する。
      • 共同作業の証拠を求める:提出された文書の中に全員の作業の痕跡が確認できることや、前述の通り、発表動画に全員が参加していることなどを評価基準に含める。
  • 単にAIの利用を禁止するのではなく、課題の設計そのものを見直すことで、学生がAIを単なる「答えを出す機械」として使うのではなく、思考を深めるための「アシスタント」として活用するよう促す。