2011/12/13

吉見俊哉(2011)『大学とは何か』岩波新書


  • 教養の再構築以上に,旧来の教養に回帰させない大学の再定義が必要。
  • 90年以降の大学進学率上昇は,入学需要に応える構造から,学力や将来の志望はともかく,とりあえず進学する者を大学が自己努力によって創出していく構造への転換(マーケティング)。
  • 近代日本の大学は,医学と理学はドイツ,法学はフランス,工学はスコットランド,農学はアメリカ,文学はイングランドと,当時の最先端から外国人教師を招き,留学生を送ることで移植した。これが帝国大学として,中世ともフンボルトとも異なる日本的大学を生む。
  • 大学は知識形成の実践を集中・再編成・安定継承するメタメディア。近世の大学は印刷革命に対応できず新しい知を媒介するメタレベル組織への発展に失敗した。
  • 高度に細分化され総合的な見通しを失った専門知を結び合わせ,新たな認識の地平を与えることで相対化するリベラルアーツが必要。
  • ユニバーシティは学生の組合を指す言葉であったのに対し,カレッジ(コレギウム)は教師の組合を指す言葉として出発した。ユニバーシティの担保は聴講料,カレッジの担保は学位授与権。
  • コペルニクスは天文学だけを勉強して地動説に至ったのではなく,かなりの時間が医学や法学にさかれ,実際生活を支えたのもそれらの知識で,全てが何らかの形で天文学と結びついていた。
  • 18世紀の新たな知識生産と継承の主役は大学ではなく,専門学校・アカデミー。中世に都市の自由を基盤に知の自由を抱え込んだ協同組合的大学は,印刷革命を経て近世にかけて一度死ぬ。
  • アカデミズムを象牙の塔・権威主義と見るなら,二重に間違っている。アカデミーは大学の保守性を批判し,新しい知を切り開く役割を担い,かつ,実学的で新しいものに対応して実験的な知を紡ぐ専門家集団である。
  • フンボルト型大学の特徴は,いかに新たな知を発見するかという技法。内容としての知から方法としての知への転換。とは言え,実際はゼミナール学生になるには選抜試験があり,一方で放任主義教育の学生がいる二重構造だった。
  • 19世紀のアメリカのカレッジは,裕福な家庭の子を紳士に仕立てる寄宿舎学校。よって,大学教師はある分野の専門家ではなく,学生生活の監督官,授業は定食メニューの繰り返し。
  • ハーバードでドイツ型を意識し,講義を始め,出席の試験も課さず,能力別編成,選択科目導入などをティクナーが入れたが,学生からすれば怠ける絶好の機会で,最終的に改革は成功しなかった。伝統的教授法を変えたくない教授もサボタージュで抵抗した。
  • ハイスクール的カレッジから抜け出せず,旧式カレッジの教授を安心させ,一方一流の教授をおける方法としてジョンズホプキンスに大学院が生まれる。ここから,教授は教師でなく研究者が求められ,紳士の育成ではなく研究者の育成に向かう。
  • 大学の名称は古代律令制の大学寮に由来,唐の官僚候補生への教育と試験を実施する所。
  • 士族にとって維新は特権喪失であり,新たな人生の道を見つける必要があったため,学校に通って技能を身につける以外に道がなかった。
  • 京都大学の帝国大学への挑戦(学年出科目固定,進級試験必須)は,高等文官試験の成績向上に結びつかずに挫折してしまい,結局東大とほとんど同じになる。
  • 帝国システムの6番目はソウルの京城,7番目は台湾の台北。
  • 敗戦時の総合的教育を行う大学は49校。高等教育全体のヒエラルキーは官学。地方の官立高等教育機関を1件大学に統合して官学全体は縮小,一方で,私立の大学化で重心が私学へ移る。
  • ハッチンスのシカゴ改革は,40の学科を人文,社会.生物,物理,の4ディビジョンに再編,学部前期課程も独立ディビジョン,経営,法律,図書館,医療のプロフェッショナルスクールを加えて,大学の基本構成にする。ジュニアカレッジに高校の最後2年を取り込んで,4年生カレッジを作り,学士授与を2年早めることを可能に。
  • しかし,これはカレッジの教員が専門課程教員より格下とみられる問題を生み,社会もシカゴの学士を他の大学と同等に見ずに失敗する。
  • 南原は専門科学の分断的発展は大学の危機であり,知識の統一に向けたシステムの中核に一般教養の徹底した導入を据えた。これはエリート文化の教養主義知は異なり,異なる専門を総合する力を指す。将来いかなる職業人になろうとも,高度に専門的な知識や技術を文化や社会の全体構造の中で総合する力を備えていなければならず,大学で教育関わる者は研究者であると同時にプロフェッサーでなければならない。
  • 日大会頭の古田は,大学職員からトップに上がり,自民党政治家とパイプのあった人。大学は経営体であり,大学の質が劣化しても文部省が口出しできず,巨額使途不明金問題をきっかけに古田体制への反乱として学生反乱がはじまる。東大の医学部無給医局員問題がきっかけの東大とは別。
  • 大学に遊び半分で来た若者の多くは,闘争参加でむしろまじめになっていった。
  • 46答申の基本課題は,5つの矛盾:(1)大衆化と学術研究の高度化の矛盾,(2)高等教育の内容の専門家と総合化の矛盾,(3)教育研究の特性と効率的な管理の矛盾,(4)大学の自主性と閉鎖性の矛盾,(5)大学の自発性尊重と国全体の計画的援助・調整の矛盾。
  • これに対して13の改革を提案:(1)一般教養大学,研究大学,専門職大学の3類型化,(2)一般・専門教育を廃し,総合的教育課程で教育,(3)ICT活用,少人数,実験など教育方法改善,(4)資格認定制度導入(社会人の履修容易に,海外との互換),(5)教育組織と研究組織の分離,(6)博士学位授与水準者向け研究院設置,(7)教務,財務,人事,学生指導の学長副学長による中枢的企画・調整・評価と学外者の運営参画,(8)教員選考・評価の学外者参画,任期制,インブリーディング制限,(9)国公立の法人化,(10〜13)国の財政支援方式再検討,学生生活環境改善,入試制度改善。
  • 国立大学法人化の最大の変化は財務上の変化。組織運営が変化しないように見えるのは,事務組織や職員の意識・能力が新しい体制に追いついていないため。法人化が,予算の自由化・安定的な保証の解除と結論されかねない状況。
  • 大学は誰のものか,学生のものであれば,消費する学生の時代には大学は消費者のためのサービス財になってしまう。大学の転換点に直面した人たちは,人類的普遍性に答えを求めた。
  • 日本の大学はアメリカモデルとも異なり,基本的に加算式,古いものを残して新しいものを付ける形で発展したため,私塾,帝国大学,専門学校,新制総合大学,アメリカ式大学院などのあらゆる要素が混在している。
  • 大学とはメディアである。人と人,人と知識の出会いを持続的に媒介する。その媒介原理は自由である。

2011/12/12

瀧本哲史(2011)『武器としての決断思考』星海社新書


  • 学問のすすめでいう学問は,普通の生活に役立つ実学であり,リベラルアーツである。
  • 賛否両論を自分の頭の中で整理するディベート思考法こそ,個人の意思決定に使える思考法である。ディベートとは,客観的に決断するための思考法。
  • 実学の世界では,知識・判断・行動という3段階があり,3つセットではじめて価値が出る。知識を持っている人材はコモディティ人材だが,行動できる人材は交換不可能。
  • プロフェッショナルとは,専門的な知識・経験に加えて,横断的な知識・経験を持っており,それらをもとに相手のニーズに合ったものを提供できる人材をいう。そうでなければ,エキスパート。相手の立場で相手の代わりに考えてあげることができる人がプロフェッショナル。
  • ディベートは,正解ではなく,現時点の最善解をを出すもの。
  • その際,人は(1)過去を重く未来を軽く見積もる,(2)限られた情報・枠組みで考える,(3)サンクコストにとらわれるので,一人でなく議論で考える必要がある。
  • ディベートは,(1)具体的な行動を取るべきか否かを議論する,(2)賛成と反対側に直前に分かれる,(3)限られた時間で発言する,(4)第3者を説得するというルールで行う。
  • 従って,ディベートは,準備が8割,根拠が命。
  • 賛成側は,(1)何らかの問題があること,(2)その問題が深刻であること,(3)問題が行動によって解決することを示せばメリットを主張したことになる。
  • 反対側は,(1)上の(3)の行動を取った時に,新たな問題が発生すること,(2)その問題が深刻であること,(3)現状ではその問題が生じていないことを示せばデメリットを主張したことになる。
  • 相手の主張に反論する時は,相手の主張を支える根拠・推論に反論を行う。
  • 全ての人はポジショントークを行う。なので,発言で強調されるポイントは重要ではない。油断した時に本音は出るので,バカを装って知らないふりをして,話を自分の知りたい方へ持って行くのが優秀なディベーター。
  • ディベートの判定は,質と量と確率で判断する。

2011/12/10

University Autonomy in Europe 2: The Scorecard

大学の自律性に関する質的な観点を得点化して比較する研究の例。

http://www.eua.be/Libraries/Publications/University_Autonomy_in_Europe_II_-_The_Scorecard.sflb.ashx

2011/12/06

ソフトバンクアカデミア特別講義(2011)『孫正義リーダーのための意思決定の極意』光文社新書523


  • 事前情報のない状態で意思決定の質問は乱暴過ぎる上に,実際の意思決定は通常の選択とは逆のケースが多く,個別のケースを見るとつまらないが,全体では次のような姿勢が一貫されている。
  • 意思決定は,志,お客様のため,出資者のために本質的に重要なことであれば,通常とは逆の選択であっても大きく勝負に出る。
  • 正義・正直・道義的責任はどんな場面であっても貫く。
  • 自分の気持ちやエゴではなく,お客さんの利益を損なう理不尽なものにキレる。
  • 目標は公言する。必ず成すという決意で引っ張ることがリーダーシップ。
  • ビジョン・理念を実現させるとは闘うこと。少々の批判は覚悟の上で,革命家は闘わなければいけない。

2011/12/05

楠木新(2011)『人事部は見ている。』日経プレミアシリーズ122


  • 人事部はフリーハンドを持っていない。人事評価は企業経営の反映であると共に,各職場の配置構想や移動構想を無視することはできない。
  • 人は自分のことを3割高く評価している。
  • 人事評価は主観的であり感情面が大きく関わっており,定量的・客観的なものを取り入れてもそれは一部を表現しているに過ぎない。求めるものは客観性や公平性ではなく,評価される側の納得性。
  • 大きな組織では伝聞情報が中心となる。
  • 多くの大組織はいまだに大量生産時代の就業形態が続いている。サービス化やソフト化で要求される創造的な知的労働に合わないオフィスが多い。組織や体制を旧来のまま共同作業を行うと,遂行・調整に時間がかかりすぎる。

2011/12/03

沢田健太(2011)『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』ソフトバンク新書


  • 業者外部教員の授業が,1年生に自分の将来と大学の勉強は関係ないと受け取られている。
  • エントリーシートの複雑化は,応募者の多さに驚いた人事部が本気なら書けるはずという志望度の高い学生を選別するためにやったことだが,学生側もそれなりのものを作って出している現状。
  • 欧米と違い,目的はないがとりあえず大学生になった人に自由な就職活動はむしろ困難であり(自由化の恩恵を受けるのはごく少数),新卒一括採用はモラトリアムに線を引き職業社会に目を向けさえる意味で,積極的な存在意義がある。
  • 大学受験でがんばった人が評価されるのは普通であり,同じ土俵で戦いたいなら,大学でがんばらないといけない。
  • 企業を見る時は,就活生向けの広報ではなく,投資家向けの広報を見るべき(当然読み解くための勉強も必要)。
  • 今の就職活動は,企業と学生の間に業者が入ってしまい,互いの顔が見えなくなっていることが問題。
ぶっちゃけ話しというほどセンセーショナルではなく,販売戦略で付けられたネーミングか。
著者のスタンスは誠意ある一職員,書いてあることはよく知られた内容で目新しさはない。
中身は就活生&親向けなので,その層が手にするタイトルにした方が良い。

2011/12/02

酒井穣(2011)『ご機嫌な職場』東洋経済新報社


  • ある個人があるコミュニティへの参加を自発的に決める時,そこにはそれぞれが異なる欲求を満たそうとする複雑な背景がある。コミュニティ開発では,こうした複雑さから逃げない態度が必要。
  • 職場コミュニティが弱体化する背景は,(1)時代背景から個人の安全が脅かされており,他人を気にしていられない,(2)ITによる職場外コミュニティの形成,(3)業績へのフォーカス強化と非公式コミュニケーションの悪者化。
  • ネットワークのスケールフリー性から言えることは,仲の良い職場づくりとは,人的ネットワークのハブになれるキーマンを増やす活動。
  • フレドリクソンの拡張-形成理論(broaden-and-build theory)は,ポジティブ感情形成,行動の拡張,個人の成長というサイクル。
  • 仲の良い職場を作りたいという気持ち(関係欲求)には相当のばらつき(安定・拒絶・とらわれ・恐れ)があり,その対応が実務上の大きなハードル。
  • 明るい職場形成の鍵は,ラポールを形成する力であり,そのために有効なものの1つが傾聴。
学術研究の引用が多いことは悪いことではないが,研究知見を一般向けに紹介するサイエンスコミュニケータの役割は果たしているものの,テーマについて内容のほとんどが著者のオリジナルでない点が残念。

2011/12/01

ちきりん(2011)『自分のアタマで考えよう』ダイヤモンド社


  • 知識は過去,思考は未来。特に成功体験と結びついた知識は影響力が大きい。
  • 意思決定のためには,どうやって結論を出すかを先に考える必要がある。意思決定のプロセスが抜けた会議が多い。意思決定プロセスは,情報を収集する前に決めておく必要がある。
  • 考えるとは結論を出すこと,あるインプットをもとに何らかの結論を出した・ある考えに至ったということ。考えるとは何かを決めること。
  • 能力・人間性・志があっても,リーダーならこういうときにこう振る舞うべきという具体的な方法論を教えるのがビジネススクール。自ら試行錯誤して学ぶには時間がかかる。
  • 判断基準は2×2マトリックス。2つの判断基準に絞り込むことも考えること。比較の基本は時系列と競合比較
  • 細部まで突き詰めて考えていないと図にできない。
1年生向けの授業のアイディアになる例がいろいろある本。

2011/11/06

福澤一吉(2010)『論理的に説明する技術』ソフトバンククリエイティブ


  • 論理的とは,それより以前の内容と関係があるように話すこと。そのためには,接続詞を上手く使うこと。
  • わかりやすく議論したければ,場の空気を読まず,前提となることをあえて明確にすることが大事。
  • 論理的思考というが,思考自体に論理はなく,思考は自由なもの。それを他者と共有する際に論理が必要になる。思考間のつながりを明確に示すことが論理的である際に重要なこと。
  • 主張は根拠からの飛躍なしには得られない。論証では飛躍は不可欠であり,大きな飛躍をしないことが重要。ある根拠からそこに含まれていない結論を引き出すことが帰納的論証。
  • 人間は意味のないデータから意味を読み取る(ロンドン爆弾地図)。根拠の意味は論拠に依存し,論拠は根拠から独立している。
  • 質問は前置きせず,簡潔にする。応答は,まず相手の発言の中心に触れ,次にその発言について返答する。あなたの質問を聞いていますというメッセージになる。

2011/11/04

シリーズ「大学評価を考える」第4巻編集委員会 (2011)『PDCAサイクル3つの誤読』大学評価学会


  • アメリカのアクレディテーションは,南北戦争後の人口急増に伴う高等教育機関の粗製濫造状況において,大学と呼べる教育水準の期間はどこかという問題がクローズアップされた19世紀後半に始められた。当初は,高大接続の問題を改善し,学期や入学基準などの共通化を図るための地域的な努力として中等教育機関を対象とするものであったが,1904年にアメリカからの留学生の急増とその質の格差に苦慮したベルリン大学が,AAU加盟大学の学士号を留学条件にしたことから,必要性が高まった。
  • ただし20世紀初期のアクレディテーションは,定性評価ではなく定量評価中心だった。それでは大学の多様性に対応できないことに気付いて,使命や目的に基づく質の評価へ転換していく(NCAが1936年に新基準を出したことが転換点)。これは到達目標の評価ではなく,インプットとプロセスの評価に重点を置くこと。
  • 少なくともアメリカでは,品質規格評価と大学評価を誤読することはなかった。学校教育で一斉授業における効率性と生産性を追求するPDSが普及することはあっても。
  • MBOは動機づけの手法。支配によるマネジメントをやめ,自己管理によるマネジメントを行うためだけに存在する。考課や処遇に連動させるために使うものではない。それは,低い目標で適当に流す行動をもたらす。現在のPDCAは方針管理でありノルマ管理であり,目標管理を誤用している。
  • 全体の目標とは,社長,工場長,事務主任など全ての目標が全体の目標であり,社長の目標が全体の目標ではない。つまり,上位目標を順次下位部門の目標に落とし込むことではない。これを誤ると目標管理の意味は完全に失われる。目標は部門ごとに立てられるもの。
  • これらを克服するために,目標がどこまで到達したかという成果志向の関係から,互いに議論を重ねて了解していく過程の中で,教育・研究が行われるようにしなければならない。
  • ちなみに3つの誤読とは,教育課程とものづくり過程の質の違い,PDCAサイクルの本質理解(プロセスの重視,多数のシステム開発,数値管理否定),目標管理の概念の3つの誤読を指す。
PDCAの誤用とMBOの解釈は,まさにその通りであるものの,ではどうするかという対案が薄弱。最後に対話・了解型評価を提案しているが,それは当たり前であって,具体的にどのような進め方が大学でふさわしいかを示さなければ,説得力がない。方法論の視点がない。

2011/11/03

齋藤孝(2010)『誰も教えてくれない人を動かす文章術』講談社現代新書


  • 文章を書くには,発見・気づく力,文脈をつなげる力の2つが必要。
  • なぜこれとこれがつながるの?という認識のおもしろさを伝えることが文章の醍醐味。
  • 読書感想文を書くポイントは,肩入れしたいと思う人物をあげること。
内容は冗長だが,小学生〜大学1年生くらいまでにはいい内容。

2011/11/02

潮木守一(2008)『いくさの響きを聞きながら―横須賀そしてベルリン』東信堂

著者の自伝であるが,著者が主人公ではなく,著者の視点で見た日本とドイツの戦争の歴史書。

2011/11/01

後藤裕美(2011)『キャリア官僚になったアタシ。。。でも、挫折しました(>_<)』雷鳥社

公務員試験のプロセスを知らない人には読む価値があるが,一般的には職業観のない大卒者の典型的な失敗事例。
国一であるから薄まるものの,基本は恥ずかしい失敗談。それを公にした勇気はすごいが。

2011/09/29

齊藤仁(2011)「公立小学校教育における非効率とその要因分析」『会計検査研究』No.44


  • SFAによる費用関数推定にあたり,費用を産出量と生産要素価格の関数と考えて次のようなデータを得る。
  • 先行研究のように賃金などで算出をとらえることは,小学校では適切でないので,都道府県レベルでの教育成果として,公立に通う児童数を用いる。公立は児童数に応じて教育を供給しなければならないため。
  • 単に安ければいいのではなく,質が高まらないといけない。そこで,児童一人あたり本務教員数と不登校児童割合を質の変数として用いる。
  • 環境に関するコントロール変数として,自治体の財政状態(費用-),政令市ダミー(+),特別支援学級割合(+),児童一人あたり都道府県面積(+)を用いる。
  • データセットは,公立小学校教育費,本務教員賃金,児童数,教育の質,長期欠席者比率,経常収支比率(1期前,教育費との同時決定バイアス考慮),政令市ダミー,特別支援学級割合,1学校あたり児童数,児童一人あたり面積。2001〜2006の6年分を47都道府県,282サンプルでパネル推定する。
  • パネルSFAでは,Time-invariant inefficiency mode か Time-varying decay inefficiency model のどちらを用いるかの検定が必要。uit=exp{-η(t-Ti)}ui におけるη=0の検定。これが棄却されなければTIIMで推定。(この検定については,Subal C.Kumbhakar and C.A.knoxlovell (2000) Stochastic Frontier Analysis, Cambridge University Press. で詳しい。)
  • 児童の減少は非効率性を高め,学校数の減少は非効率性を低くする。学校の統廃合は積極的に進めるべき。兼務教員の人件費が高いほど,非効率性は低い。

2011/09/27

西田豊昭(1997)「企業における組織市民行動に関する研究」『経営行動科学』11巻2号,101-122


  • 組織市民行動(Organizatinal Citizonship Behavior)とは,任意の行動であり,公式の報酬システムによって直接もしくは明確に承認されているものではなく,集合的に組織の効率を促進するものである。
  • 多くの研究では,組織市民行動は利他主義(alturuism)と一般的追従(general compliance)という2つの因子で説明され,これが職場満足度と相関があるとされてきた。
  • 日本での調査では,任意の行動であり表面的には自主的に行われている行動も,行動の基礎となる動機の大部分は自分自身の利益と深く結びついていることが示される。
  • これは,OCBが計画的でコントロールされる特徴をもち,美徳の強調ではなく道具的性質によるところが大きいことを示唆する。

2011/09/26

Lee Harvey, A critical analysis of quality culture


  • 外部評価の発展にも関わらず,内部質保証プロセスは頑健・効果的でない(特にドイツ)。
  • 内部質保証プロセスと質文化(EUAが提唱する概念で)は同じではない。前者は官僚的・手続的な装置,つまりルールがあり柔軟性に欠けるもの。
  • 一方,文化は,文明化,大衆化・芸術文化,サブカルを含む多様化という過程で発展するもの。歴史的には,エリート主義,創造性,卓越性,抽象性,イデオロギーとの相互関係,経済との関係,超越性,抵抗運動など多様な文脈で語られてきた言葉。
  • 質文化を語るときは,こうした複雑性が意図的に無視される。
  • 質保証は外的な規制の下で行われるが,改善は規制の結果起こるのではなく,批判的な関与を通じて起こるもの。説明責任と改善は質の裏表などという関係ではない。
  • 質文化は外部から与えることはできず,先入観に批判的である必要がある。よって,先験的に質文化をみることには慎重であるべきで,日常業務と統合的に見るべき。
  • ましてや,質文化はシステムではなく,チェックリストでもなく,ある種のイデオロギーである。そして,文脈依存であり,構成員ものもでないと質文化とはいえない。
  • 質文化は,変容学習である,あるいは変態(固体・液体・気体の変化)のようなものである。水の状態変化は温度で測定できる。
  • 同様に,教育は消費者へのサービスではなく,参加者への継続的な変態過程である。よって,変容教育は参加者に知識と技能の付与に加え,エンパワーメントを行うもの。
結局のところ,バスワードをバズワードで説明する駄文なのか?バズワードとしか理解できない自分の教養不足なのか?

2011/08/25

中村高康(2011)『大衆化とメリトクラシー』東京大学出版会


  • 今日の教育問題(管理教育,受験競争,学力低下,不登校,モンスターペアレント等)の多くは,ほぼ全員が参加するという大衆教育システムを前提として問題化している。
  • メリトクラシーの大衆化とは,エリートのみに限定されない幅広い層でのメリトクラシー精神の定着をいい,学校推薦による就職・進学システムが,必ずしも進学校でない生徒にも成績重視の姿勢を持たせる契機となっている。
  • メリトクラシーの基準は多様であるため,定義次第で進展もし,幻想にもなる。誰が本当に能力があるかは実際厳密にはわからず,本来的にメリトクラシーは再帰性を持つ。
  • 現代は,試験から推薦へ(一元的能力選抜から多様な選抜へ)と理解されがちだが,歴史的には推薦から試験へが正しい。情実的な推薦制から,客観的で公平な試験へ舵をきってきた。
  • 文部省は,厳しい批判をされていた能研テスト普及のために,試験地獄の解消とあえて推薦入学制度普及を進めた。推薦入学制度の公認は,教育拡大という社会背景において,エリート選抜の論理(公平性)が,大衆を受け入れなければならないマス選抜の論理(試験地獄緩和)に,大きく妥協した減少。
  • 過酷な競争の中で何年も浪人させるよりは,柄相応に進学させるためにも,コンピュター合否判定は重要な役割を担う。
  • 一般入学者において,受験勉強が重圧だったのは,難易度の高くない学生が72.6%,高い学生は53.1%。推薦入学では,難易度中の学生より難易度低の学生の方が重圧を感じていない。
  • それまで志望していなかった四大シフトは,推薦やAOによって誘発されている。商業高校の成績優秀者への進学誘導的な進路指導が行われている。(工業は就職に高い価値があるので逆。)

2011/08/19

モーガン・マッコール(2002)『ハイ・フライヤー』プレジデント社


  • リーダーシップは,課題に挑戦し,卓越した人々と接触し,苦境や失敗を乗り越える経験を通じて学ぶことができる。リーダーが学ぶことは異なるが,どのように学ぶかは変わらない。
  • 人を育てるとは,経験からどのように学ぶか,経験をどのように利用するか,能力が高い人材に何を学ばせるかということを,事業戦略と結びつけて考えることを意味する。
  • リーダーのコンピテンシーは経験の積み重ねから得られるものであり,祖先から受け継がれるものではない。潜在能力とは持っている資質ではなく,将来に必要な資質を習得する能力である。リーダーにとって重要なことは,事業戦略遂行上の障害を乗り越えるために,いかに備えるかということである。
  • リーダーシップ開発は,他の人事制度以上に事業戦略に密接に関係し,事業戦略によって推進されなければならない。それを理解するために,次の疑問に応える必要がある。
    • 人材開発をどのような文脈で実施することが重要なのか。
    • 経験で開発されるとしたら,どのような経験が重要なのか。誰がそれを教え,どのように教えるのか。
    • 有能な人に成長を促す経験を与えても,経験から学んでくれる保証はない。学ぶべきことを学ぶ学習機会を増やすために何ができるのか。
  • 脱線のダイナミクス:(1)ある人を成功に導いた強みは,他の強みの方が重要になると弱みになることがある,(2)以前は問題とならなかった弱み,強みや業績に隠れていた弱みが,新たな状況では重要な問題になる,(3)成功によって天狗になり,他人の助けは不要という謝った信念が生まれる,(4)個人と関係ない運命による脱線。
  • 成功した経営幹部にとって,最も成長が期待できる経験は挑戦であり,そのほとんどが逆境のとき。その経験の要素には,上司・関係部署との難しい関係の対処,リスクが伴う仕事,過酷な環境へ直面,視野・規模が複雑な状況への対処,専攻と違う仕事,必要なスキルや資格を身につけていない,突然の異動などがある。
  • 16の成長を促す経験
    • 課題:初期の仕事経験,最初の管理経験,ゼロからのスタート,立て直し,プロジェクト・タスクフォース,視野の変化(管理人数・予算・職域が増える),現場ラインから会社スタッフへの異動
    • 他の人とのつながり:ロールモデル,価値観
    • 修羅場:事業の失敗とミス,降格・昇進逃す・惨めな仕事,低業績部下に直面,新しいキャリア挑戦,個人的なトラウマ
    • その他:コースワーク,仕事以外の経験
  • リーダーシップ特性のビッグファイブ
    • 外向性:口数が多い,積極的,活動的 ⇔ もの静か,消極的,控えめ
    • 人当たりの良さ:親切,信用,思いやり ⇔ 敵意,利己的,不信感
    • 誠実さ:秩序がある,徹底的,責任感 ⇔ 不注意,怠慢,無責任
    • 安定した感情:感情の安定 ⇔ 神経質,きまぐれ
    • 経験に開放的:想像力,好奇心,創造性 ⇔ 表面的,無関心
  • 経営幹部の早期識別に関する11次元:(1)学習機会を追求する,(2)誠実に行動する,(3)文化の違いに適応する,(4)変化をもたらすことにかかわりあっていく,(5)広範囲の事業知識を追求する,(6)人の最も優れた部分を引き出す,(7)洞察力がある,新しい視点で物事を考える,(8)リスクを冒す勇気を持つ,(9)フィードバックを求めてそれを利用する,(10)失敗から学習する,(11)批判に耳を傾ける
  • リーダーシップ開発の3原則:(1)困難な経験が人材開発の原動力になる,(2)その経験は事業戦略と企業の価値観で決まる,(3)経験を積むべき人はそこから最も多くのことを学習できる人。経験の多くは配属先次第なので,誰がどの仕事に就くかが中心的課題。
  • 人材開発を高めるには,勤まりそうな人,少しのびると勤まりそうな人,勤まりそうもない人のリストを作ることが大事。
  • ある職種のスペシャリストになるということと,経験から学習することは一致しない。成長を最大にするには,これまでしたことのないことを行い,どうすればうまくできるかを学ばなければならない。
  • 結局,適切な時期に,適切な人物に,適切な場所を与えられるかどうかは,トップが有能な人の開発に対して進んで責任を持てるかということによって決まる。
  • リーダーシップ開発モデル
  メカニズム  事業戦略
  ↑   ↓ ↓    ↓
才能 + 経験  =  リーダーシップ
       ↓    ↑
        触媒

  • コアコンピタンスがはっきりしている会社は,ビジネスの専門家を輩出する生涯発達スクールである。OJTは何もしない,放任を覆い隠す便利言葉になっていた。リーダーシップ開発こそがOJTの中心的テーマという発想が少なすぎる。
  • 本書の意味は,(1)人は幹部に至るまでいくつになっても発達するという基本発想,(2)リーダーシップという観点から人を育てるのは経験という視点,(3)だからといってラインに放置するのではなく,経験を系統立てる方策を追求,(4)ラインのマネージャ,人事部,経営者の役割を人材開発という面から照射,(5)経験が大事というのを前提に研修の意味を再探索,にある。

2011/08/18

目標管理とコンピテンシー


  • 目標管理制度は,ドラッカーが『現代の経営』(1954)で提唱した経営管理システムで,組織全体の目標と個人の目標を上司と部下の共同作業で統合し,各人は設定された目標をPDSサイクルに沿って実行する。ポイントは,(1)目標の精査によって無駄な作業をなくすこと,(2)部下が目標設定に「参加」することでモチベーションを高めること。
  • しかし,全員が達成可能な目標を立てようとする,目標の難易度が役職ではなく個人の能力で決まる,評価の際にどれだけがんばったかの努力度を評価する,ほぼ全員が目標を達成しているのに業績が上がらない,といったことが起こることになる。
  • 目標管理は,人事評価の方法ではなく,職員間のコミュニケーションにより職員の仕事に対する意識改革を図るための制度。
  • そこで,コンピテンシー評価(行動評価)が生まれる。1970年以降,心理学者マクレランドが,ハイパフォーマーの行動特性をモデル化する研究から生まれる。コンピテンシーは,ある職務や役割において優秀な成果を上げる過程において共通してみられる行動特性をモデル化したものである。
  • 人事評価は,能力,態度,業績の3観点から行う。
  • コンピテンシー評価では,能力を基本能力(業務遂行上の最低限の知識)と応用能力(判断力,企画力,折衝力,指導力)に分ける。態度は,積極性,協調性,責任感,服務規律に分ける。その上で,業績を目標管理で行う。

2011/08/17

松尾睦(2009)『学習する病院組織』同文舘出版


  • 顧客第一主義の理念に実態が伴わないのは,顧客志向を実現するための公式・非公式の仕組みが組織内に整備されていないことによる。
  • 本書の問いは,患者志向の理念がいかにルーチン(組織運用に必要な規則的で予測可能な安定した傾向性)として構造化されたか,その際,どのようなリーダーシップ形態が見られたか。
  • 構造,制度,システムを公式ルーチン,行動規範,行動パターンを非公式ルーチンとする。非公式ルーチンは,公式ルーチンと価値観を接合する接着剤の役割を果たす。
  • 医療の質は,結果(治癒・回復・生存),プロセス(情報収集の適切さ,診断の正当性,医療技術,ケア満足),構造(設備,スタッフの質,管理構造,会計)の3つから構成される。
  • 組織学習とは,(1)新しい知識が獲得・導入され,(2)集団で共有され,(3)ルーチンとして制度化されることで,(4)メンバーの知識・信念・行動が変化するプロセスのこと。
  • 職員の意識を改革する上で大切なことは,自分の位置づけや義務を理解すること。主任以上に業務マニュアルを作らせた,厚さ1センチ。もう1つは,管理職になるための試験導入。方針を示せばできる,全部言わないとできない,注意しないといけないの3タイプに分けて指導。
  • 締め付けだけでは行けないので,全人医療を強調。
  • チームの成長発達の第1段階は様子見,第2段階は軋轢と不平不満。自分たちの意見を出さなければ第3段階へは行けない。
  • 病院は,集約型技術を持ち(異なる分野の専門家が共同することでサービスを提供する),多元的な組織である(多様なプレイヤーと多様な目的が存在する)ため,連携型リーダーシップが必要になる。
  • この連携は,患者志向,すなわちトップレベルのリーダーが共有できる価値観を有することで,異なる価値観を持つメンバー間で生じるコンフリクトを解消して成立する。
  • 非公式ルーチンは,創始・定着・効率化によって構造化される。その際に,新しい技術や制度を取り入れて粘り強くカスタマイズすることが鍵となる

2011/08/16

基礎英単語

utter, resemble, haunt, reassure, despise, tidy, grieve, bury, pale, tremble, awkward, deserve, quarrel, hollow, generous, decline, thorough, frighten, scold, seize, fond, wave, pet, spot, settle, flow, grant, merely, bother, persuade, awful, stare

2011/08/09

チクセントミハイ・ミハイ(1996)『フロー体験』世界思想社


  • 成功を目指してはならない。成功は目指して目標にするほど遠ざかる。幸福と同じく,成功は追求できるものではなく,自分個人より何か重要なものへの個人の献身の果てに,結果として生じるものだからである。
  • フロー:1つの活動に深く没入しているので,他の何ものも問題とならなくなる状態,その経験それ自体が非常に楽しいので,純粋にそれをするということのために多くの時間や労力を費やすような状態。
  • 最適経験はその瞬間瞬間の意識に生じることを統制する能力に基づいているからであり,各自が自分の努力と創造力に基づいてそれを達成しなければならない。
  • 生き生きとした生活を送る人々は,多様な経験に対して自分の心を開いており,死を迎えるその日まで学び続け,他者や自分の生活環境と強い結びつきを持ち,それらに自分を委ねている。彼らは退屈なことや困難なことすら楽しみ,困難を平然と乗り越えていく。彼らを支える最大の力は,自分の生活を統制しているということである。
  • 意識の統制は,単なる認知的能力ではない。少なくとも情緒や意志の介入を必要とする。どうすればよいかを知るだけではなく,実行し続けなければならない。
  • 意識の統制は,制度化できない。不幸な場合,それは固定したイデオロギーに変わってしまう。
  • 人が楽しむのは統制されている感覚ではなく,困難な状況の中で統制を行っているという感覚。結果が不確定で,左右することができるときのみ,人は自らを真に統制しているかどうかがわかる。
  • フロー体験は絶対的な意味で良いわけではない。生活をより豊かにし,魅力と意味あるものにする可能性があるときに限って良く,犯罪や軍事研究となることもある。良いかどうかは社会的基準で評価されなければならない。
  • フロー体験の結果,意識の複雑さが増大する理由は,挑戦度と能力の水準を上げるため。挑戦度が高すぎると不安になり,能力が高すぎると退屈になる。人は同じことを同じ水準で長時間行うことを楽しむことはできない。
  • 生得的にフローを体験できない人がいる。1つは注意散漫など遺伝的理由,もう1つは自意識の過剰。極端に自己中心的であったり,絶えず他者が自分をどのように感じているかを気にする人は,フローに入り込めるほど心理的エネルギーが統制されていない。もちろん,社会的条件(奴隷,抑圧など)によるフロー阻害もある。
  • 若い頃に,孤独を進歩のために利用する習慣を獲得していない限り,フローを実現できるようにはならない。
  • 人がストレスや試練から強さを獲得してフローに変換できるには,3つの段階がある。(1)自意識のない自己確信(自分の運命は自分が握っているという信念),(2)あらゆるものへの注意集中(個人の目標に焦点しながら無関係な外部の出来事にも注意をはらう),(3)新しい解決の発見。
  • 自己目的な自己は,潜在的な恐れを挑戦に変換する。そのルールは,(1)目標の設定:達成につとめるべき明確な目標が必要,(2)活動への投入:自分の行っているすべてに深く没入する,そのためには挑戦対象と能力とのバランスを身につける,(3)現在おこっていることへの注意集中:没入を維持する能力,(4)直接的な体験を楽しむことを身につける:困難さえも意味あるものにするには,全体的な文脈での目標を持つことも必要。
  • 物質的な豊かさと安全な環境にいながら,今を楽しみ尽くす人が少ないのはなぜか(マズロー理論への疑問)。逆境で自己実現できる人は,個人の問題ではなく,利他的視点からライフテーマを設定できる人である。
人の利他的視点はいかに開発されるのかがまだわからない。

2011/08/08

原正紀(2010)『インタビューの教科書』同友館

 効果的なアクティブリスニング
  • 相手を乗せる効果
    • 感嘆:すごいですね。すばらしいですね。おどろきました。
    • 感心:なるほど,そうなんですね。さすが,よくご存知ですね。たいしたもんですね。
    • 共感:私もそう思います。同感です。本当にそうですね。
  • ちゃんと聞いているというサイン
    • 感想:そういうもんですか。複雑(シンプル)なんですね。
  • 話を深く聞き出す手法
    • 疑問:ほんとうにそうですか?信じられませんね。
    • 突っ込み・掘り下げ:そのとき,どうされました?そのとき,どうかんじました?さらに,どうしたのですか?
基本的なことが記されたのみで,新しい発見は少なかった。

2011/08/05

濱口桂一郎(2011)「どのような社会をめざすのか:ヨーロッパと日本」『労働法律旬報』1748,1750


  • 日本の雇用契約はメンバーシップ。配転命令が聞けないというのは,おかしいのでは?ということになる。日本の雇用契約はおかしいのでは,と思うかもしれないが,労働者に対しては一生面倒を見てやるという報酬がある。(面倒を見ない企業をブラック企業という。)
  • 年功賃金はどこの国にもある程度見られるが,日本の特徴は労働者の人格に値段がついている。会社がやれと言ったことを嫌がらずにやる人を評価しているという意味の年功賃金。
  • ヨーロッパは労働者の面倒を見るのは国,日本は企業。

2011/08/03

大森不二雄(2000)『「ゆとり教育」亡国論』PHP


  • はりのある緊張感の中でこそ,教職員の目的意識や連帯感が高まる。明確な目的意識と向上心のないところに創意工夫は生まれない。
  • 日本の学校教育の画一性の正体は,教育現場の活力を十分に引き出せない学校運営や教育行政の仕組み。集権的な組織が行き詰まる理由は,現場に即した創意工夫を行う自由度が低く,積極的にアイディアを生み実行していく前向きの意欲をそぐこと。
  • ただし,学校現場に任せればうまくいくものでもない。だらだらやっても真剣にやっても成果が問われないのであれば,現場重視の分権型の仕組みは創造的で前向きな組織風土につながらず,後ろ向きで仲間内の既得権が優先される。
  • そこで重要なのはアカウンタビリティ,すなわち,受益者に対して自らのサービスの具体的な成果に関し,きちんと説明して正当化することができなければならないこと。結果責任のこと。
  • 県実に情とアカウンタビリティをセットで行う。これが,競争を生み,質の向上を生む。
  • アカウンタビリティを問う仕組みとは,教育成果に関する情報提供の仕組みと,それに基づく学校選択・教育選択の仕組みがセットになったもの。
  • その上で,学習指導要領の最低基準化が重要。現行は,最低基準でもありながら,上限規制にもなっている。上限規制を外し,最低基準を強化することで,個性を伸ばす人材育成が可能になる。
学校は勉強するところであり,耳障りのよいトレンディーなゆとり教育論を,科学的根拠が乏しく,努力しない教師を正当化する施策として批判する。勉強否定論を批判し,諸外国が勉強の強化で国力の向上を図ることを述べる。

2011/08/02

白波瀬佐和子(2010)『生き方の不平等』岩波新書


  • 家族関連社会支出(児童手当等)の対GDP比は,日米韓が低い。
  • 特定の親子関係からはなれて自らの可能性を見極める場所の1つが教育の場。ここでさまざまな子供を柔軟に受け入れて,教育する場にできるかどうかで,社会・国としての成熟度が決まる。
  • 同一労働同一賃金の原則が若年雇用で検討されること。後で取り戻せる見通しがあった時代はいいが,今は若年の賃金を不当に低く抑える理由はない。
  • お互い様の社会に向けて,鋭敏な他者感覚が必要であり,それには社会的想像力が求められ,それは教育によって培われる。最後は,こんな単純な主張で終わってしまう。
  • お互い様の関係を築くために,(1)社会制度中心の再分配政策,中間層への累進的所得税,(2)若年・壮年現役層に,子育て支援と就労支援を行い,生活保障機能のメリットを実感してもらう,(3)就労による参加型社会形成。

2011/08/01

久保田哲夫(2011)「サラダ・ボウルとしての大学 ―大学における多様性の意味を考える―」『関西学院大学高等教育研究』

  • 結局,大学改革は,リーダーが誰もが共感できる目標を設定し,それを実現する能力を持った者にそれを担わせることでしかなしえない。
  • 改革が成功するか否かは,第一にリーダーが適切な目標を設定できるだけの現状理解を持っているか,第二に人を見る目を持っているか否かに帰着する。
  • 問題は,誰もが共感できる目標とは何かということである。現在の大学の危機的状況から見て、その共通の目標は明らかであると考える人々から見れば,多くの大学の教職員の意識が低すぎるように見えるかもしれない。そのような先入観で見れば,改革の反対する大学教職員が,ただ既得権を守ることに汲々としているだけのように感じられるであろう。
  • しかし,危機を誰よりも強く認識している教職員が改革案に反対するとすれば,その理由は(1)改革案が適切でない,(2)改革案がもたらす結果が一部の教職員に極端に不公平な負担を強いる,(3)改革案を提示した人々を信頼できず,教職員の負担のみが増大し,改革の成果が確信できないのいずれか。
  • 教育の目標に関しては2つの系譜があり,1つは神学部や法学部など,教育の目標が聖職者や役人等の育成というはっきりした達成基準が設定できる学部と,貴族の子弟の教育のように、見聞を広めるための教養教育であり,もともとどこまで何が出来れば教育として成功かという基準のない学問を中心とする学部。
  • 後者のタイプの教育に携わってきた者にとっては,シラバスを設定し,講義の達成目標を設定し,講義時間を2時間15週で2単位と決め,124単位履修すれば学位が与えられるというシステムそのものに違和感がある。
  • もともと彼らは教養というものが講義で与えられるようなものとは信じていない。講義は単なる刺激にすぎず、そのような講義で関心を持ったテーマについて自分で研究してゆくしかないと思っていれば,講義は体系性など必要でなく,どれだけの知識を与えたかではなく,どれだけ学生の関心を引き出したかで評価される。
  • ディシプリンは,学問の世界でその分野で必ず身につけなければならない基礎知識や基礎技術を意味する。その意味で,専門家を育てる教育において,ディシプリンの習得は必須条件である。
面白い主張だが,学生の視点や社会の視点がない,内輪の独善論にとどまる点が残念。

2011/07/28

門脇厚司(2010)『社会力を育てる』岩波新書


  • 生まれる子供の8割は都市部。生育環境としての都市空間は無機質化・無人化した。
    • 心の中に描く現実の風景が,ガラス,コンクリート,プラスチックなどの材質で組み立てられる。
    • 心の風景の中に,生きた生身の人間が存在しない。
    • 心の風景から,においや温度,変化や腐敗など,物質の変化という有機的要素がない。
  • 人が「私も社会の一員である」という自覚を持つことができるのは,様々な人との好ましいつながりがあり,親しく付き合いつつ,自分のやるべきことをやったり,誰かのためにすることで,誰かに感謝されたり頼りにされたりすることから生じる自尊的な感情があるから。
  • ブルデューが注目したのは家庭の文化資本。家の中の知的な本,高学歴な家族,世界情勢や政治問題の話題が,見えざる資質や性向を作り(ハビタス),それが学校の文化と同質のため,子供が早くから学校の文化に馴染み,学業成績が良くなる。
  • バーンシュタインが注目したのは精密コード。教養ある親の話す言葉に慣れた子供は,ことの成行きを客観的に説明できる。学校の先生が教える言葉が精密コードのため,授業の理解度に差が出る。
  • 階層間の移動が行き詰ったのは,教育が不公平であったからではなく,公平に教育した結果。よって,すべての子供の学力向上をといってもよくならない。人はそれぞれ違う。すべての子に最良の教育を行うほど,先天的な能力ははっきり出る。
  • 互いに違いを認め,そのうえで互いの関係を良くすること。良い関係の中で助け合い生きていくこと。それを当たり前のこととして生きる人間を育てる。教育の在り方の発想をを変えなければならない。
  • ソーシャルキャピタルを構成する要素は,人的交流,信頼関係,互恵性。
  • 社会力の豊かな人間の具体的イメージ。
    • 人間が好き
    • どんな人ともコミュニケーションできる
    • 他の人といい関係が作れる
    • 他の人と協力しながら物事を成し遂げられる
    • 他の人の身になり、立場に立って物事を考えられる
    • 他の人を思いやれる
    • 物事に対して常に前向きに取り組もうとする
    • 何事にも創意工夫を怠らず創造的
    • 自分も社会の一員であるという自覚がある
    • 社会の運営に積極的に関わろうとする構えができている
    • 自分の能力を活かし,家庭・地域・職場で自分の役割を果たせる
    • 社会の改善や改革にも積極的に関わろうとする意欲がある
    • 広い視野から社会の動きや社会の動向を判断できる人間
    • 自分の行動が他の人や社会の動向にどう影響するかを考えながら行動できる
    • 人類社会の将来に常に思いを馳せながら行動できる

2011/07/27

吉田新一郎(2000)『会議の技法』中公新書


  • 一般に会議は議会モデル。一人の議長が会議の運営を任され,書記が公式の記録を取り,他の出席者も各自でメモをとる。発言する人も出席者数の大小にかかわらず決まっており,多くの出席者は参加者ではなく聴衆・観客として会議の場に存在する。
  • ロの字や円形の座席配置は,人数が7,8人以上の場合はやめたほうがよい。10人までは半円形、それ以上は4,5人のグループで着席。
  • 会議を変える際の原則。
    • 変化はプロセス,段階を踏んで確実に進む。
    • 変化には準備が必要,だから時間もかかる。
    • 変化にはチームアプローチが効果的,一人では変えられない。
    • 変化にはサポートが不可欠。
    • 変化はバランスがあるときは起こらない。不均衡な状態にすることが先決。なぜ,なぜ,と問いかけて考えてもらう,読んでもらう,体験してもらう。
    • 変化には信頼関係が不可欠。いい人間関係を築くことが先決。
    • 変化にはコミュニケーションが大切。
    • 変化を実行することは政治的なプロセスでもある。
    • 変化には新しい知識・技能・態度が求められる。

2011/07/26

森毅・豊田充(2011)『東大が倒産する日』ちくま文庫


  • ハーバードでは職員に週何時間という受講権があり,正規学生・聴講生と全く同格扱い。7,8年すると単位がたまり,卒業証書が出る。

2011/07/23

野田智義・金井壽宏(2007)『リーダーシップの旅』 光文社新書

  • リーダーを目指してリーダーになった人はいない。リーダーシップは見えないものを見る旅であり,旅は一人で始まり,フォロワー旗日の途中で出会う。リーダーシップは生き方の問題であり,教授されるものではない。各自が自分の人生の中に発見するもの。
  • コア・コンピタンス(経営資源アプローチ)の問題は,その企業が成功するまで,何がコア・コンピタンスかわからないこと。
  • リード・ザ・セルフを駆り立てるものは人それぞれで,夢,情熱,焦燥感,野心,プロフェッショナリズムなど。いずれにしもて,自分が吹っ切れるものが行動と継続を支える。
  • リーダーには,Emergent Leader,Elected Leader,Appointed Leaderがあり,Transactionalでないリーダーは,Emergentにあたる。Electedは市長や知事など,Apointedは管理職など。
  • 企業内のリーダーシップを測る場合,指揮系統下にない応援団がどれだけいるかで測る。
  • リーダーシップとマネジメントの違いは,(1)見えるか見えないか(創り出すか対応するか),(2)働きかけが人としてか地位としてか,(3)シンクロするかモチベートするかの違い。SWOTは見えるものを分析するもの。
  • リーダーが扱うのは,創造と変革。リーダーが求められるようになったのは,世の中が創造と変革の時代に入ったから。
  • 誰でも組織に入る前は希望を持っているが,組織と個の同化がリーダーシップの発揮を阻害する(=見えないものが見えなくなる)。
  • リクルートが傑出しているのは,個人が成功するために組織が存在するという考え方が明確だから。
  • 私とおまえは違うんだ。なぜなら,おまえさんは夢を実現しようと思っている。私はただメッカのことを夢見ていたいだけなのだ。
  • 信用を積み重ねた後,ある場面ではそれをおろし,捨てなければならない。
  • 結果としてリーダーになる人は,私が私でいるという自負が強い。肩書きやポジションでなく,一個人として顧客や社会と向き合う。
  • リーダーに求められるのは,構想力(描くのではなく見ようとする,歴史は繰り返す),実現力,意志力(自分自身との真摯な対話から生まれる),基軸力(トレードオフを伴う決断が日本人は弱い,ギリギリの判断を繰り返すことで形成される)。
  • どんなときに燃えたか,がっかりしたか,部下はどんなときに燃えたか,燃えなかったかをペアで5分話しキーワードを出す。それをピンポイントで解説する理論を紹介し,実践につなげてもらう。By the Job Learning。
  • 得とは,自己の最善を他者に尽くすこと。
  • リーダーシップは一人称で考えるもので,どう評価されようと自分は自分で裁くもの。

2011/07/22

木暮太一(2011)『学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール』光文社新書

  • わかりやすい説明に必要な要素は,(1)テーマがわかる,(2)言葉・用語がわかる,(3)論理がわかる。
  • 相手に理解してもらえないのは自分の責任。
  • 説明のまとめはこまめに行う。
要点はこれだけで,200頁超の新書にしてまで書くものではない内容がほとんど。

2011/07/21

倉部史記(2011)『文学部がなくなる日』主婦の友新書

本書には論理と主張がない。
業界の専門知を羅列しているだけ。
せめて,何を訴えたくて書くのかがなければならない。

2011/07/20

小島寛之(2011)『数学的思考の技術』ベスト新書

  • 事前には最適である戦略が,実際に時間経過と共に実行段階で最適でなくなることを動学的不整合性という。
  • 人に本音を言わせるのはタダでは無理で,何らかの支払いが必要。
  • 行動が実行直前になると前に決めていたこととは違ってしまうだらしなさを,時間不整合性と呼ぶ。
  • 無限とは,自分自身全体を自分の一部に納めることができる不思議な器。(満室のホテルに一人を泊める問題)
  • 無限ホテル問題は,賦課方式年金と同じ。人口さえ減少しなければ,破綻しないネズミ講。
  • 大量のデータで裏付けられた客観確率と,人間の心の中の物差しで測った主観確率は通常異なる。
  • 金持ち快感が大きいと,デフレによる回復(貨幣1枚でタクシー2回送迎)がうまくいかない。デフレ自体が快楽を高め,何も消費しない人の欲望を満たしてしまう。
  • 人間の知識は全知全能ではないが,公共財や社会的共通資本の存在で修正される可能性が高い。

2011/07/19

金井壽宏(2005)『リーダーシップ入門』日経文庫


  • プレゼンテーションのコツは,動け,問え。
  • 一見相互に矛盾する原則に出会ったときに考えが深まる。
  • トップや人事部が中心になって,優れたーリーダーシップの持論を書き留める社内調査をすべき。
  • リーダーシップとは,絵を描いて目指す方向を示し,その方向に潜在的な フォロワーが喜んでついてきて絵を実現し始める時に存在すると言える。
  • 現在のリーダーシップ理論
    1. ミッション型リーダーシップ(組織ならではの個性に人々がコミットすると組織は制度に変わる)
    2. 信頼蓄積理論(集団の規範に従って業績を上げて信頼を蓄積する結果,変革を期待するフォロワーが生まれる)
    3. リーダーシップの帰属理論(フォロワーが結果をリーダーのおかげだと因果推論することでリーダーになる)
    4. サーバント・リーダーシップ(リーダーが自分たちに奉仕してくれると思うときにフォロワーはついてくる)
    5. 変革型リーダーシップ(歴史・時代の節目で対転換を起こすのがリーダー)
    6. セルフ・リーダーシップ(真のリーダーは,フォロワーが自分を自ら引っ張るように仕向ける)
    7. 組織文化に関わるリーダーシップ(当然の前提や仮定が環境に合わなくなったときに仮定を疑う)
    8. ビジョナリー・リーダーシップ(ビジョンの創造と実現)
    9. フォロワーシップ理論(フォロワーがリードしているという気になってもらうことでリーダーシップにつながる)
    10. EQリーダーシップ(フォロワーの感情を読み取り,激励・育成・衝突対処・チームワークなどの能力がリーダーシップの基盤)
  • その後は,アジェンダを設定(戦略的課題の提示・伝達・緊張醸成・達成圧力)とネットワーク構築(配慮・信頼蓄積・連動性創出・連動性活用)へ。
  • 要は常にPMの枠組みでとらえられている。

2011/07/18

梅沢正・上野征洋(1995)『企業文化論を学ぶ人のために』世界思想社


  • 企業文化研究の方法と視点:(1)社会システムとしての企業の性格を類型的に把握する,(2)観念文化,制度文化,行動文化の3つのサブカルチャーを記述する,(3)ビジュアル・アイデンティティ研究,(4)企業文化のマネジメント。
  • 企業文化とは,企業の歴史を通じて組織内に培養され,蓄積されている知的・感性的資産。
  • Cultureには耕作という意味があり,目指す価値の実現に向けて不断に耕作することで文化は形成され,洗練されていく。
  • エクセレント・カンパニーは,戦略論の分析視覚を分析型からプロセス型へ変更させ,組織論を見える階層構造からプロセス・シンボルとしての組織に変更させた。
  • 企業文化は,行動の型,構造や制度,思考の枠組みの3つを統合する企業特有のスタイル。
  • 企業文化の4つの調査:(1)文化の確立度,(2)文化の性格分析,(3)文化の機能性診断,(4)文化度の測定
  • 文化の強さは,(1)どのくらいの頻度で「スタイル」や「やり方」の表現を使うか,(2)経営理念の周知とそれに沿ったマネジメントのための指導の程度,(3)今期の目標と長期の方針のどちらにウェイトをおいているか。
  • 性格分析は,(1)固有の言葉,(2)支配的な仕事のやり方,(3)仕事のやり方を方向付ける価値観,(4)儀礼や儀式,(5)居酒屋で話される神話と物語,(6)べからず集。

2011/07/16

エドガー・シャイン(2004)『企業文化』白桃書房


  • 文化はグループの資産である。グループが共通の経験を十分な量だけ持てば,必ず文化が形成され始める。
  • 文化には3段階のレベルがある:(1)文物(目に見える組織構造・手順),(2)標榜されている価値観(戦略・目標・哲学),(3)背後に潜む基本的仮定(無意識の当たり前の信念,認識,思考,感情)
  • 文化は,学習され共有された暗黙の仮定であり,人々はその仮定をもとにして毎日の行動をとる。
  • 文化の内容には,(1)外部の生き残りの問題(戦略・目標,手段・組織構造・システム・手続き,誤りの検出と修正),(2)内部統合の問題(共通言語と概念,グループの境界とアイデンティティ,権限,報酬・地位割当),(3)深いところに潜む仮定(人間と自然の関係,現実と真実,人間性,人間関係,時間・空間)がある。
  • 文化を解読する演習
    • 事業にまつわる問題を定義する:改善したいこと,新しい目標を出す
    • 文化の概念を復習する:3つのレベル
    • 文物を特定する:身なり,権限者とのぎくしゃく,勤務時間,会合(頻度・進め方・タイミング),決定の下し方,コミュニケーション,懇親行事,仲間内の言葉・制服・記章,儀礼・慣習,意見の対立の対処,仕事と家庭のバランス
    • 組織の価値観を特定する:組織が標榜している価値観をあげる。
    • 価値観と文物を比較する
    • 他のグループを対象に同じことを繰り返す
    • 共有されている仮定を評価する
  • 成熟組織における主要な変革メカニズムは,計画・管理された文化変革。
  • 成長が鈍り,衰退が差し迫っている状況では,ある種の再生を通じて文化の諸分野を急速に変更するが,合併や買収などで全面的な改造によりその文化を消し去るの2つの選択肢しかない。
  • 文化は社会的学習の産物で,うまくいった思考と行動が文化の要素となるため,新しい文化を創ることはできない。文化が正しいかどうかの基準は,どうすれば組織はその主要な業務で成功を収めるかというもの。

2011/07/11

矢野眞和(2011)『「習慣病」になったニッポンの大学』 日本図書センター

  • 1975年頃には,男子大学進学率は40%を超えていたにもかかわらず,今の大学はもはや大学ではないと言う意見が流布し,進学率が40%から50%になるまで35年もかかっている。なぜこんなにかかったかの方が疑問。
  • 教育改革の方法論が制度論。今の大学改革の多くは法制度の変更。
  • 大学は,みんなのためにある:大学は,学術の中心として,広く知識を授けると共に,深く専門の学芸を教授研究し,知的,道徳的および応用能力を展開させることを目的とする。大学はその目的を実現するための教育研究を行い,その成果を広く社会に提供することにより,社会の発展に寄与するためにある。
  • 過去30年で,家計の教育費負担が上昇したことは,みんなのための大学から学生個人のための大学に変わったことを意味する。
  • 偏差値が大きな力を持つのは,試験の結果が正規分布に近くなっているという経験に基づいている。(最近の調査ではピークが2つ,3つあるというデータもあるようだが?)
  • 進学率が2桁以上になれば,通王に位置する多くの普通の人が進学するようになる。3評定以上が進学するには,7+24+38=69%の進学率。普通の人が増えるだけで,学生の質が低下したとはいえない。
  • 東大生らしくないがほめ言葉になった背景は,60年代にエリート,ノンエリートの線引きと分極化が進むのでなく,2つが溶解してエリートの存在が見えなくなった大衆化。
  • 76年の高等教育の計画的整備についての中で,大都市立地制限がかかることになった。しかし,計画から5年度の進学率を見ると,都市部で抑制,地方では伸びないという結果になり,進学率ブレーキとなる。
  • 合格率が上がると進学率は上がる。授業料が上がるのに進学率が上がるのは,失業率が上がるため。
  • 現在の大学改革は,制度改革から大学の経営努力に移行。政府がやるべきチェックリストを作る形から,それが見つからないので,大学で考える方向へ。
  • 政策を研究する際には,手段として大学を選ぶ人,自己目的な選択をする人の双方が共有できる網をかける必要がある。そこで何のための大学かを,経済生活を強くするため,社会生活を強くするための2つとする。
  • 高卒〜60歳までの賃金が2億5千万円,大卒〜60歳までの賃金が3億2千万円。

2011/07/01

赤林英夫(2008)「競争は教育に有害か?経済学からの再解釈」『労働と社会保障政策のフロンティア』

  • 教師は労働者であり,生徒・保護者を PrincipalとするAgentに過ぎない。しか し,教室内での教師の行動の情報は不完全なため,教育の「成果」に則 した一定の「インセンティブ」の導入が経済学的には正当化される。
  • 教師には金銭的な報酬よりも非金銭的な報酬(表彰制度など) がふさわしいと言われるが,教育分野でこれらのことが実証され ておらず,今後の研究課題。
  • 学校間競争の効果が出てくるためには,教育サービスの供給主体(学 校)が企業のように,教師の採用権と資源配分権を持っているか,需要主体 (保護者)教師を評価し選択することが可能か,少なくともどちらかが必要。
  • 学校や教師自体の質に関する情報がなければ,確かに入学してくる子どもの差異だけが強調され,学校のイメージとラベル付けが行われる可能性がある。
  • 現在のように,教員の配置が,学校ではなく教育委員会の裁量によりローテーション的に管理されていれば,教師自身に「当事者意識」がなく,学校選択が行われても,教育の質の向上も望めず,学校選択制は何の効果もない。
  • 鶏が先か卵が先かという関係は,経済学的には同時決定。
  • 情報開示を教師の 当事者意識と結びつけるためには,「学校」という漠然とした単位ではなく,「教師」の力量が分かるように,情報を作っていく必要がある。
  • わが国の教育に何が欠けているのかをえぐり出すために,PISAなど国際的な序列が必要。
  • 競争原理を教育に持ち込むな」という一点張り,「子どもにもっと競争心を」という安易な市場のアナロジーではなく,競争の本質は「良い教育法や新しい知識を学び,教育の質を向上したいと考えることが競争」。

2011/06/30

岩田雅明「大学経営の基本に立ち返って」『文部科学教育通信』No.269, 2011.6.13

  • 学校教育というサービスはホテル等と違い,リピーターがいないことが特色。従って自らがある大学で学生生活を体験してから選ぶということができない。
  • そこで,その大学を取り巻く環境の中で形成されたイメージが選択基準の一つになる。
  • そこで、わすがながらも不合格者を出すこと,英検二級+情報処理二級で学費免除(反対側から考える経済的サポート)を実施。

2011/06/22

北森義明(2008)『組織が活きるチームビルディング』東洋経済新報社


  • 人は誰でもポジティブ・ストローク(存在そのものを認めること)を待っている。最大のポジティブ・ストロークは聴くこと。
  • 相手の話を聴くことで自分の内面に起こった反応をその都度素直に出すことで,聴き手の豊かなメッセージを話し手に伝えられる。組織やチームで必要なのは,話し合いではなく聴き合い。
  • 改革は尋ねて聴くことから始める。大きな組織の持つ慣性の源を変える唯一の方法。
  • 人間関係の中で相手の態度に問題がある時,相手を変えてやろうという意図を持った指示や命令は,その通りの相手が変わることはない。〜と感じるけどどう思います?という鏡になる。フィードバックとは,相手の自分を変える力を信頼すること。
  • アリバイ(自分の正当化)がチームワークを崩す。しかし,自分の行動にアリバイはあり得ない。何事も自分で決めてやっているという自己決定を明確に認識すると,力の発揮につながる。
  • 自己成長には自分の価値観に気づくことが重要だが,それは他人の価値観と触れることで生まれる。
  • チームとチームになるためのプロセスは違う。岩を落とすために欠かせないことは,話し合いをすることでも合意をつくることでもなく,タイミングよく力を合わせて岩を動かす十分な力を出し切ること。
  • 和をつくるためには葛藤から目をそらさず,正面から向かい合い,個々の違いをはっきりさせて違いを認めて受け入れていくしかない。
  • リーダーシップを発揮する足場には,地位・肩書き,知識・経験・技能,その人自身の3つがある。
  • 仕事が分かっているとは,リーダーもメンバーもお互いに常に気をきかせているいること。気のきくメンバーになってもらうには,リーダーの目配り・気配りと率先して行動する姿勢が重要。
  • 本当に仕事を進めたいのなら,上向き,横向きのリーダーシップがカギ。上司を動かせる範囲内でしか部下は活かせない。
  • エンパワーメントは,本気からしか発揮されない。
  • チームビルディングの研修の壁は,葛藤,本当の自分をさらけ出す場。もっと自分を出してもいいと思えるかどうかで,プログラムの成否が決まる。そのためには,自分を出したい,自分を変えたいというモチベーションで参加してくる人の存在が不可欠で,この人を触媒にして目的の雰囲気をつくる。
スポーツチームなど,同質者が前提のチームビルディング。そういう意味で,本書の肝は第1章でほぼ言い尽くしており,残りは後付け。日本的なチームビルディングを端的に示した本。

2011/06/19

安藤史江(2001)『組織学習と組織内地図』白桃書房


  • 組織学習論が注目された背景は,コンティンジェンシー理論などの静的な視点による研究が行き詰まり,その突破口として動的な現象への関心が高まったため。
  • 個人が勝手に学習を行っても学習する組織にはならず,組織メンバー間には共有ビジョン(達成すべき将来像の共有)の構築が求められる。チーム学習では対話の仕方や共同思考の仕方を学ぶ必要がある。Strategic Human Resource Management:戦略実行という責任を伴った行動を一般従業員に譲り渡し,自分たちの特権を失うことを快く思わなかった。(外国の事例)
  • 組織学習研究はプロセス研究と考えら得るが,質問紙調査はプロセス研究に適さない。個人の学習しか測定できない。
  • 組織文化には,組織特性と,組織メンバーが組織文化を咀嚼するプロセスの2つがある。
  • 組織メンバーによって咀嚼され,各自が利用しやすいように加工された組織文化(=メンバーの主体性が深く関わる組織文化)を組織内地図と呼ぶ。
    • ただ,後の実証分析では,トップの経営方針と自分の仕事の関係を考えながら仕事をしている,21世紀の自分の会社のあるべき姿を認識している,上司から職場の目標をはっきり示されている,の3変数でとらえてしまう。
  • 社内の様々な物事の解決に,社内の誰に相談したらよいかを与えるプログラム(JIL 1997 大卒ホワイトカラー人材開発国際比較)。
  • バブル期のA社の優先事項は仕事の迅速処理で,ある程度の質であればこだわらずに割り切って行動できる人材がもてはやされた。バブル後,かたくなに質を重視する社員が求められるようになった。
  • 議論の関心,組織観,学習主体,目標学習水準,学習範囲,学習対象,研究方法の比較
    • Hedberg系:アンラーニング,1つのまとまった有機体,経営トップ,ダブルループ学習,アンラーニングのみ,戦略などの全体的組織価値,理論フレームワーク→事例分析
    • Argyris系:組織への介入,個人の集合体,全メンバー,モデル1,低次から高次前,仕事の進め方などあらゆる価値,事例分析→共通点・理論
    • March系:組織ルーチンの変化,組織ルーチンの束,ルーチンの入れ物としての組織,低次学習,低次学習,仕事の進め方の具体的価値,シミュレーション

2011/06/18

「「経験から学ぶ」自ら育つ新入社員を育てるには?」リクルートマネジメントソリューションズ

  • 目標が明確であるほど,経験学習が促進される
  • 何かをやり遂げた経験から自己信頼が芽生え,自己信頼があるがゆえに新たな経験にもチャレンジできる,という循環が重要で,新入社員には「やり遂げた」と感じられる経験を早期に積ませることが重要。
  • 新入社員を動かすには,チャレンジの奨励や目標に対するプレッシャーよりも,良好な人間関係と,「自分は職場で認められている」という安心感のほうが重要。
http://www.recruit-ms.co.jp/issue/feature/shinjin/201106_1/index.html

2011/06/10

潮木守一(2009)『職業としての大学教授』中公叢書


  • 新堀が40年前に問うたことは,日本の学界を支配する年功序列人事,エスカレーター式昇進に対する告発。学問成果を上げても報われない学界,いくら怠けても制裁を下さない学界への疑問・疑惑・義憤。
  • イギリスの大学は,教授13%,上級講師・上級研究員25%,講師27%,研究員27%という構成。
  • 大学教員には4タイプあり,教育と研究の両方に義務がある教授,教育にのみ義務がある学生指導専門の教員,研究だけに専念する特別著名教授,研究だけに従事する研究補助員の4つ。タイプ2は入門科目の指導が中心,タイプ4は任期付きで若手に偏っている。学生数の増加で教員を多く採用したが,教授は増えず講師層が増えた。
  • フランスの大学は,教授22%,講師41%,助手0.1%,中等教育資格教員5%,臨時教育研究補助員7%,語学教員1%という構成。
  • フランスは,中等教育資格教員から出発し,やがて大学教員になるキャリアを辿る。高校でフルタイムで働きながら助手ポストの空きを待ち,そこから講師・教授を目指す。学生の急増にこうした教員の対応がよく,大学拡張期に採用されたことも遠因。
  • ドイツの大学は,教授22%,講師・助手5%,研究員69%という構成。研究員はタイプ4教員で,教える資格を持たず,研究プロジェクトに参加して収入を確保しながら,資格を取る準備をしている(任期制)。これには,博士号志願者がつく。
  • ドイツの大学には大学院がない。学部修了後,指導教授を選び,そこで研究助手として働きながら博論を書く。ただし,研究員には学位取得後教授資格試験を目指すものも含まれる。学部卒後博士まで6年とポスドク6年の間で教授職を得る必要がある。
  • アメリカの大学は,教授25%,副教授20%,助教授24%,指導教員15%,講師4%,その他12%という構成。他国と比べて煙突形。ただし,アメリカの大学は大学間の序列が鋭く,一流大学2%,研究大学2%,博士課程大学2%,修士課程大学15%,学士課程大学18%,短期大学42%,特別目的大学19%という構造で,上へ行くほど給与が異なる。トップ100大学の教授ポストを目指しての競争が熾烈。
  • 日本の大学は,教授40%,准教授24%,講師12%,助教20%,助手3%という逆ピラミッド型。これは私立大学の方がよりその傾向が強い。私立大学は教授定員を各大学で自由に決めることができるため,給与面での処遇が難しい大学がポストで処遇している可能性がある。
  • 日本の純血主義は,大学の面子の問題。自分の大学の学問水準は十分に高く,自前で後継者が養成できるという信念。
  • 日本の大学は私立から始まり,慶応,早稲田,同志社などは明治初期にはできあがっていたが,明治政府は正式の大学として認めず,専門学校のままで,最初の大学は東京帝国大学であった。帝大は教員を外国から,私大は教員を帝大から集めていたが,自前での後継者育成を目指したのは,他大学出身者の排斥ではなく,宗主国からの独立を求める民族運動のようなもの。
  • 終身職を得る適切な時期は難しい。学問的実力の見極めには時間が掛かるため,若い時期からの終身職付与は危険だが,その時間が長いとその職業を選ぶ学生がいなくなる。学問の世界に避けられない途中淘汰を保ちながら,同時に若者を引きつけることに世界中が苦慮している。
  • ドイツでは,博士号に加え,教授資格試験を受けて教授資格を得なければ教授になれない。これは19世紀初頭からの制度。縁故人事などが横行したために導入されたもの。博士論文以上の水準の論文を提出して,公開の試験講義をする。平均学位取得後7年,年間2000人が合格。
  • ただし,有資格者の内,実際に教授になるのは約4割。残りは教えることはできるので,給与のない私講師のとして,研究プロジェクトの研究員をしながら生活を支える。
  • ドイツは内部昇進禁止の原則がある。公平な人事には身内より外部の評価が健全という理由。教授試験に合格しても招聘がなければ昇進できない。さらに,教授の中でもW1〜W3の3段階があり,上位への昇格も外部招聘。
  • フランスは,各大学が教員を採用せず,全国共通の基準で資格審査をする(コンクール)。教授間,講師間の異動は現職者に優先権あり。これを差し引いたポストは公開公募の対象。講師の場合,倍率が5倍。
  • アメリカの教授は自分の値段を知っている。私立研究大学の教授の平均年収は10万ドル,私立教養大学の教授は6万ドル。ビジネス,工学,医学の給与は高く,人文,芸術ではその半額。ただし,研究大学でない州立大学では,公務員型で給与が決まる(専門分野の差が少ない)。
  • イギリスは150以上の大学があるが,全てが同格ではない。高校最上級学年の2年間は3教科に絞り込まれ(歴史・国語・社会とか数学・物理・生物などの組み合わせ),それぞれA〜Gの7段階評価で,AAA出なければ入れない大学がある一方,GGGでも入れる大学がある。
  • 研究実績評価をみると,鋭いピラミッド型で,90点台2校,40点台2校,30点台5校,20点台18校,10点台12校,0点台28校(歴史学科の場合)。これで研究費配分が決まる。
  • イギリスの大学は,(1)中世設立の,オックスフォード,ケンブリッジ,グラスゴー,エディンバラ,アバディーン,セント・アンドリューズ,(2)1936年以降の赤煉瓦大学,マンチェスター,リヴァプール,(3)1963年ロビンズ委員会勧告設立の7大学,サセックス,エセックス,イースト・アングリア,ウォーリック,ヨーク,ケント,ランカスター,(4)1992年以降ポリテクからの昇格大学の4分類。
  • イギリスで大学経営・人材獲得を複雑にしているのは,競争相手が全英語圏との競争のため。経営者の腕の見せ所で,収支をバランスさせながらスター教員を獲得しなければならない。
  • 大学教員にとってマンネリは致命的。いったん大学に職を得ると,異動しなくなくなる。住宅,子供の学校,配偶者の職場などのため。フランスでも一時期内部昇進を禁止した。またフランスは強いパリ指向のため,流動性を高める政策が必要であった。
  • フランスでは教授の55%が同じ大学で講師だった者の内部昇進。教授になるには,研究指導資格試験をつける必要があり,これがないと博士の指導ができない。受けたくない者は受けなくてもよい。
  • ボイヤー:一生涯大学教員として働くために必要なのは,変化する環境への柔軟性と適応力である。
  • 日本は非学歴社会,非資格主義。博士校取得者の所得は,学部卒のフランスで1.4倍,アメリカで1.6倍。
  • フランスの大学は,2,3,4年課程修了で出る者もいる。博士を目指すならまず大学内の選抜を切り抜け,4年課程を修了し,さらに博士課程のための準備課程1年を経て高等研究資格を取得する必要がある。これから本格的な博士課程が始まる。入学試験がなくバカロレアを持っていれば誰でも入れるが,学年ごとの勝ち抜き競争がある。
  • ドイツは博士取得後時間差なく就職している(一般雇用市場に開かれている)。ドイツの経営陣の5割は博士取得者,学生中にインターン(企業実習)へ出かけるなど,博士課程が大学と企業を往復するキャリアのため。
  • 日本以外の国は,大学教員へのキャリアが他の職業機会と比較して十分な競争力を維持できるかどうかを絶えず測定し,危険があれば警報を発する機関を持っている。
  • アメリカの大学の学長は,豪邸に住む物乞いというジョークがあるほど,寄付金集めが学長の職務として学長に関する規定の中に明記されている。
  • アメリカの学長は,学生には友達,教授には同僚,卒業生にはいい奴,理事には健全な経営者,一般大衆には立派な演説家,財団や政府には機敏な交渉家,州議会には政治家,寄付者には説得力ある外交官,自分の研究分野では立派な学者,課程ではよき夫・父・熱心な協会員。
  • 現在の大学は,かつてのように一様ではなく,各大学の理念・目標・存在意義があり,それをどれだけ達成できているかを逐次評価確認する必要がある。
  • 終身在職権とは特権。誰にでも保証される者ではない。この人間ならば大丈夫と保証できる少数者を選び出して与えるべき。教授の名を使えるのは,こうした選抜を抜けてきた少数者の権利。

2011/06/07

遠田雄志(2005)『組織を変える“常識”』中公新書


  • 組織の特徴は,規律性と持続性。組織では個人の行為は,共同して行動するために良くも悪くも調整される必要がある。組織では,メンバーの顔ぶれが変わっても,共同行動が維持されていなければならない。
  • もう1つの特徴は,適応性。組織は環境の変化に応じて長期にわたって存続・成長しなければならない。適応は,認識・意志決定・行為という3つの活動のサイクル津を繰り返して行われる。
  • 組織では,コミュニケーションによって個々人の持つ意味世界が共有される。組織が共有する意味世界は,関与する人々の交代で左右されない頑健性があり,これが組織の必要十分条件である。
  • 私見(Private sense):個人の意味世界,互解(Mutual sense):私的コミュニケーションを通して共有された意味世界・仲間内の共有意味世界,常識(Common sense):公的なコミュニケーションや教育を通して伝えられる意味世界・カルチャー。
  • 個人の意見が常識を覆す力がないのは,私見が客観性が低いため。異論や批判も常識の対立とならない。常識に対立するのは互解であり,それには共鳴する仲間がいなければならず,常識の持つ強制力以上の説得力・魅力を有していなければならない。
  • 互解は不安によって形成される。常識が予想外の結果をもたらす時に,不安が増大し,互解の形成を促進する。
  • ただし,互解は自動的に常識とならない。不安は未練によって,常識に引き戻される。また,互解は臆病によって不安へ引き戻される。この2つのハードルを乗り越えて,互解は常識へ形成される。
  • 未練とは,不安が増大しても,とりあえず今の常識に依拠してみようというもの(ex. 過去の成功体験にとらわれる),臆病とは,今の常識が互解の軽々しい増加によって疑われたり批判されたりするのを防ぐもの(ex. 出る杭は打たれる,不確実なことにかかわらない)である。未練の多い組織はなかなか互解が形成されず,臆病な組織は優れた互解でもなかなか伝播せず実験・実現されない。組織の革新とは,新しい常識がその信頼性を確立するまでの期間であり,確立されたものであるほど未練と臆病のハードルは高くなる。
  • 戦略的意志決定とは,依拠すべき常識がなく,その決定の結果を予測することも評価することもできない状況で行われる。常識の中で行われる意志決定は戦術的意志決定である。前者の意志決定はゴミ箱モデル,後者の意志決定は合理モデルである。
  • 未練で臆病な組織は鈍重型,淡泊で臆病な組織は慎重型,未練で大胆な組織は試行型,淡泊で大胆な組織は性急型と,4分類できる。
  • 互解は組織が適応する上で不可欠で,互解の形成次第で組織の適応が決まる。よい互解の形成につながるコミュニケーションは,よい組織メンバーが,開かれた人間関係の下で,豊富な語彙を駆使して行うという3つの特徴がある。
  • レトリックは,新しい視点や認識を喚起し,世界を一新する力を持つ。レトリカルな表現のためには,語彙が豊富でなければならない。組織が語彙を豊富にし,レトリカルな表現に努めるようになると,組織の視野が広がり認識も良質になる。
  • コミュニケーションは,教育に代表される公的なものと,インフォーマルグループ内や派閥で行われる私的なものの2つで構成される。
  • よき互解の形成はしっかりした常識から生まれる。初中等教育では常識を,大学教育は互解の形成に注力すべき。

2011/06/06

安部悦生(1997)『ケンブリッジのカレッジ・ライフ』中公新書


  • イギリスの大学は事実上全て国立で,教員は実質的に国家公務員である。しかし,カレッジは独立採算の私立である。大学全体としては,国立大学と私立のカレッジの混成物である。教員は公務員として学部に所属すると共に,カレッジにも所属する。前者は税金で賄われる組織,後者は(学生数に応じた補助金があるが)独立採算。
  • 教員と同様,学生も経済学部に籍を置くと共に,キングズ・カレッジに籍を置く。学部は講義の機能しか持たない。学生は,国立のケンブリッジに入るのに,私立のカレッジの入試にパスしなければならず,合格すれば自動的にケンブリッジの学生になれる。カレッジの入試は,各カレッジが独自に企画・実施する。
  • 教員には,Professor,Lecturer,Assistant lecturerの資格しかなく,これは大学のものである。通常,大学の教員になるとカレッジからもオファーがあり,二重に所属する。病院勤務教員や管理職など,オファーがなければ所属できない。一方,カレッジ雇用のCollege lecturerもおり,不安定身分で一段低く見られる。
  • カレッジでの教育は,スーバーヴィジョン(個人指導)が中心で,週1回1時間カレッジ教員と1対1で指導する(オックスフォードではチュートリアルというが,ケンブリッジの方が生活指導を意味する)。1,2年性はカレッジのスーパーヴィジョン中心,3年以降は専門家集団の学部スーパーヴィジョンが中心。この教員負担は非常に重い。
  • 大学の教員には職位があるが,カレッジの教員は全員フェローであり,席次はSeniorityで決まる。よって,学部では教授でも,カレッジでは講師よりも後の席次の人もいる。カレッジのトップはマスター。カレッジの呼び名は他に,ハウス,ホールがある。
  • ケンブリッジでは,カレッジも家具も,オールドであることがよいこと。
  • カレッジの芝生はフェローズオンリー。
  • 大学は3年が原則だが,語学習得の必要があるコースは4年制。
  • カレッジのダイニング・ライトをもらえると,ランチができる。フェローはハイテーブルで食事を取り,学生と区分する。カレッジの食事は,フェロー間のインフォーマル・コミュニケーションの場。政治と宗教の話はよくないが,内部の話を聞けるのはここくらい。
  • アメリカは小規模研究会をワークショップといい,イギリスではセミナーと呼ぶ。
  • カレッジの役職は,トップのマスター,教務関係責任者のシニア・テューター,財務担当のバーサー。バーサーは教員である必要はない。マスターは一度なると退職までマスター。
  • イギリスの教授比率は10〜15%。医者もミスターで呼ぶ。ケンブリッジのマスターは30人,教授は200人,マスターの方が重要な職。教授が3〜4割いるアメリカの教授を,アメリカン・プロフェッサーと言う。
  • ケンブリッジのVCは各カレッジから輪番で選ばれる。大学の政治力学は,大学全体の組織,学部間,カレッジ間で働く。財政力のあるカレッジが強い。
  • 成績評価はファースト,セカンド,サード,フェイルセカンドは2・1,2・2に分かれる。ファーストの条件は上位1割かつ80点以上,ただし科目でまちまち。学生はせめて2・1を取りたい。奨学金と大学院進学に関わるために,希望者はファーストに必死になる。
  • イギリスの就職は,企業がファーストや2・1の指定をすると成績が重要になる。ただし,ケンブリッジの成績と地方大学の成績は別で見てもらえる。
  • マスターは,フェロー以外の職員,食堂や事務スタッフにも気配り,家族の様子などもよく知っている。上に立つものは気配りが重要。
  • 京都の間口が狭いのは,かつて間口で課税したため。イギリスの部屋は広さで考えない,単にスリー・ベッドルームなどの区別のみ。
  • 築25年以下の住宅が日本は50%,アメリカ25%,イギリス15%。家は中古住宅が普通。
  • イギリスには国教徒(Anglican),非国教徒(Nonconformist),カトリック(Catholic)の3つの主要宗派があり,国教徒は信心深くないが,残りは信仰心が厚い。数では圧倒的に国教徒。アメリカはピューリタン(非国教徒)がバックボーン,アメリカは宗教にこだわるが,イギリスは日本同様冠婚葬祭宗教に近い。
  • イギリスは北部が工業地帯で労働党,南部が保守党。

2011/06/03

谷聖美(2006)『アメリカの大学』ミネルヴァ書房


  • 大学とは様々な機能や権限を持つ期間や役職が協力・牽制しながら動いていくプロセスの束のようなもの(ゴミ箱モデル)。学長がトップダウン的に組織全体を動かす一元的組織とはなっていない。
  • アメリカの大学世界では,共同統治をプラスイメージで用いるが,強力な権限・リーダーシップ不在による不能率ももたらす。
  • 大学の設置認可を取り仕切る中央官庁はなく,認証協会に認証された機関が大学。認証協会は大学以外にも,小・中・高の認証も行う。
  • 日常感覚でよく使われる分類は,research university, teaching university, national university, regional university(CCやJCは含まない)。
  • 研究大学は,教育をおろそかにすることはないにしても,人事考課には反映されず,研究業績のみが評価対象。教育中心大学になると,教育面の評価が重視されるようになる。リベラルアーツ・カレッジの力点は教育にあり,全寮制・小規模・少人数教育で人格陶冶も含めた教育を行う。一方,CCは研究面は重視されず,教員は修士資格,近くの研究大学の大学院生の非常勤というものもある。評価は,学生による授業評価に過度に依存することになる。
  • CCは学費が約17万円,とりあえず自宅から近いCCへ行き,四大への編入を目指す学生の多さはここに理由がある。
  • 私立大学の理事会は,一部に卒業生代表などを含むものの,基本的に辞任・死去の際に欠員を補充する自己充足的団体であり,州法・監督機関以外に制約を受けない自治機関である。
  • 州立大学の理事は,州議会の任命か有権者の選挙で選ばれる。理事会は,学長の任命,大学の運営方針・財政政策・研究教育基本政策,教員採用・昇進発令の決定権を有す。一般に無給で,尽きに1・2回理事会を開いて大学側の用意する案件を審議する。教員や学生の代表が理事会に陪席する権利をもつ大学も多い。
  • 執行部の頂点は学長。実質的な役割は,対外的なもの(広報,対連邦・州政府,同窓会,寄付金集め)にあり,学内の権限はProvostへ委任されている。PresidentとChancellerの使い方は州によってかなり違う。
  • 学長は理事によって任命され,研究者としての一定の経験を持つ人の中から選ばれる。通常は,公募方式で選考委員会が設けられる。私立は自校関係者から選ぶ傾向があるが,州立大学ではその傾向はない。当初は研究者として出発しながら,大学行政・経営に才能を発揮してそちらの分野へシフトした人たち。あちこちの大学で,学部長,副学長,Provostを歴任した後にどこかの学長に抜擢され,さらに業績を上げると有力大学の学長に引き抜かれる経歴を辿る。要するに,学問業績ではなく,大学経営上の手腕・見識・リーダーシップで選ばれる。
  • 学長が強力なリーダーシップを発揮する機会はそれほどない。大学が高度に分権化されており,自律性と自治権を持って集まっている組織や機関を束ねて方向性を与えていく仕事は容易ではなく,トップダウンで大学を動かせる権限を持っているわけではない。(そもそも強大な権限があるなら,命令すればいいのだから,その地位に就く人にリーダーシップの能力がある必要はない。)
  • 学長は,政府の構造と同様に,理事会,全学評議会,学部,学生団体,同窓会などと交渉・説得・脅しながら,協力と同意を取り付けて大学を動かしていく。権力関係の中心にはいるものの,頂点にいるわけではない。優れたリーダーシップを発揮する学長とは,中心と頂点の差を,人望とスキルで埋めることができる人。
  • 学長の業務は,理事会の方針を実現し,状況を報告することと,寄付金集めである。
  • 大学の事実上の最高責任者はProvost。副学長職を兼任することが多いが,「副」学長の一人ではなく,不在の学長に代わって大学を預かる長のような存在。主席副学長と言う訳も無理がある。あえて言えば,学事最高責任者。College Deanの名をつけるところもある。
  • Provostの包括的職務を補佐する訳としてAssociate Provostがあり,教職員人事担当,研究・教員関係庶務担当,学事・予算担当,予算・企画・管理担当など。学部長(Dean)と研究所長,図書館長,博物館長もProvost直属(ミシガン州立大の場合)。理財,法務,広報,大学振興,対政府関係,学生を担当するProvost直属でない学長直属副学長もある。
  • 学部・研究科の長(Dean)は執行機関の長であり,選挙で選ばれることはない。学部(School・College)は自治の単位ではなく,自治の単位は学部・研究科を構成する学科(Department)である。ただし,日本の学部規模の学科もあるので注意を要する。学部・研究科が単科大学のような存在。
  • 一般に大学院は機構上は独立しており,そこにもDeanがいるが,専属の教員はおらず学部の教員が兼務する。
  • 分権と集権の圧力の接点にあるのがDean。理事会・学長の基本方針に沿って学部を運営すると共に,学部のパフォーマンスを上げるよう経営的な手腕が求められる。そのため,学部長は学科長の任免権,予算配分と執行の監督権,学科カリキュラム点検の権限を持つ。学部独自の寄付金集めも行う。
  • 学部長は,統治・執行機関に属する役職で,Provostによって任命される。学部内から選ぶよりも,全国を見渡して優秀な学部経営者候補を探して絞り込む(コンサルタントが選抜する)。学部には教授会がなく,学部長は学長とProvostに責任を負うため。ただし,学部長になると,どこかの学科に教授としてのポストも与えられ,学部長を解任されても,教授としての身分保障は受けられる(学長も同じ)。
  • 私立大学の財源は,授業料28%,投資収益・事業収益(病院・企業)25%ずつ,寄付金12%,政府から10%。州立大学は,州政府36%(州からある程度自立した存在),委託研究費・事業収入22%,授業料19%,連符政府11%。
  • 常勤職員数が常勤教員の3倍〜8倍いる点(ただし,病院看護師を含む)が特徴(東大で1.3倍)。
  • ファカルティは,教員全体という意味で使う用語。学生は大学に所属し,教員がいる学科とはつながりを持たない。所属学科が決まるのは1〜2年生の段階で先行を選んだ後(専攻の決定は履修上の問題だが)。よって,担任制度はなく,教育以外で学生を指導する発想はない。
  • 分業が徹底されているので,卒業や進級を巡って教授会がもめることはあり得ない。寮の管理や問題学生対応は学生部が,成績管理や卒業認定,成績不振学生への勧告,表彰は教務部(Registrar)が,卒業要件を満たすかの判定は学位審査官(Auditor)が,入試については入試部が行う。(選抜基準は委員会で審議)。
  • ただし,教員・学生交流はある。寮があれば,配偶者も含めて積極的な交流がある。授業負担は週数コマ。優秀教員はその数コマを減らす交渉をしたり,外部資金で非常勤を雇って任せることもある。ただし,シラバスなど担当科目に割くエネルギーは大きい。
  • 教授会は教育研究上の組織であり,入試,予算管理,学生生活については権限も責任も持たない。そもそも研究に必要な費用は自分で調達し,配分校費などない(そのため校費配分で会議する必要がない)。ファンドが取れない教員向けに,30〜40万円ほどの学内ファンドもあるが,これも学内審査で優秀と判定されないと支給されない。
  • 教授会の任務は,学科がカバーする学問分野の研究と教育,教員人事。議決権は常勤講師(Assistant Professor)以上。(参加は,非常勤,客員もできる大学もある)。
  • 教授会を率いるのは学科長。基本は任命だが,学部長がメンバーの意見を聞いて候補者を説得し,指名する。通常は待遇の交渉も含む。公募でどうしても取りたい人がいれば,配偶者のポストを用意することもある。
  • 正規大学教員の道は,InstructorかAssistant Professorから始まり,3年任期で更新保証はない。教育研究で評価され,2回目の任期終了頃(6年目)の本格審査に耐えるとTenureとなる。耐えられなければ,1年ほどの猶予後に契約終了になる。Tenureであれば,大学を移っても通常はTenureとなる。昇任は教授会の投票2/3以上で決まる。
  • アメリカでは,出身大学よりもいい大学へは行けない。公募では推薦書が重要であり,有力大学の推薦状が得られる方が有利だが,推薦状を得られる業績と人間性がないとそもそももらえない。
  • 教員の評価は,教育,研究,学内サービス,地域貢献の4つだが,そのウェイトは大学でかなり異なる。リベラルアーツ系で60:30:10:10,研究大学は0:100:0:0。これに基づいて給与が決まる。博士課程のある大学の教授で約1000万円,コミュニティカレッジで約700万円。
  • アメリカの教員は必ずしも業績が出ている訳ではないが,研究大学教員の生産性は高く,その源泉は厳しい業績主義の環境。個人研究費はない,コピーも上限1000枚など決められている。研究者は原則自前で必要なものを買いそろえる。外部資金はいったん取れば使用は比較的自由。長い夏休みとサバティカル,スタディリーブも業績の原動力。(学期は9月初〜12月,1月半〜4月末)。ただし,夏休み中は義務がない代わりに,給与も出ない。
  • 学科教授会は,カリキュラム,出願資格要件,卒業要件,学位審査,組織や手続き,教員採用と審査の権限と責任がある。
  • 評議会は大学のあらゆることに関与し,執行部や理事会へ勧告を行えるが,拘束力は持たない。(大学によってかなり違うので注意)。
  • アメリカには大学入試がない。入学要件は学科が決めるが,選抜はアドミッションズ・オフィスが行う(多段階の審査なのでアドミッションズ)。入試枠はなく,個別志願者について選考を行う。選抜は,全入式(CC),通常式,早期決定式(合格したら必ず入学),早期判定式,先着順選考式がある。通常式は,高校最終学年のはじめ(4年の秋)に願書を出すと,大学は高校の推薦書,SAT成績をみて合格者を決め,4月頃結果を通知する。入学までの2,3週間で学生はどこへ行くか決める。
  • 学生は一般に10校ほど出願する。併願制約もなく,試験もない。大学から見ると,来てほしい学生が来ない問題がある。そこで,どうしても入れたい学生は奨学院を出す。AOerの腕の見せ所は,学生に逐次電話してとどまらせること。
  • 志願者が万単位の州立大学では,SATと高校のGPAで一定割合を選抜し,残りを成績と課外活動を併せて評価する二層選抜が一般的。
  • 学士教育の柱は,一般教育,高度学芸教育,専門職教育。非実学的な学部教育が主流で,LA学部で学士を取る学生は6割。学生に求められるものも多様。LAから出発し,後から職業教育が加わった歴史の反映。
  • ハーバードのコア・カリキュラムは,幅広い科目を選択することを義務づける広領域教育。
  • 学科以外のプログラムとは,相互に関連する学科や他学部教員が集まって作る教育単位で,専任教員が要らない分,安価にできると共に学際教育も行える利点がある。学生は,入学時点ではどの教育単位(学科・プログラム)とつながりを持たない。自由に選択する中で,遅くとも2年の終わりまでに専門を決める。専攻を決めるにも,定員があるので成績がよくないといけない。卒論はないが,授業の中で研究論文が求められる。コースワークに耐えて際知恵のGPAを獲得すれば,卒業認定の申請をする。要件が満たされたら,次に学位記の請求を行う。学位記は,学士学位だけが書かれ,専攻は記されない。BAとBSの二種類のみ。
  • 入学後のフレッシュマンセミナーは,通常名誉教授など経験豊かなスタッフが担当する。15人または25人上限のゼミ。大規模講義とセットのゼミもある。
  • アメリカでは単位を一律の時間数ととらえておらず,講義自体の時間数に基づく(単位時間,Credit hourと表現する)。単位数は難易度や学習に必要な時間・労力を示すものではない。
  • アメリカでも成績評価の全学基準はなく,仏や鬼がある。成績評価で重視されるのは期末試験。UC Berkleyでは全て筆記試験で実施しないといけない。中間試験の実施は教員の裁量(シラバスで示す)。口述試験は学部レベルではほとんど見られない。
  • セメスター制では,授業は約12週,講義は週2〜3回あり,授業も9時から19時まで,ゼミは22時まであるので,集中的。クォーター制では約9週。

2011/06/02

渡部哲光(2000)『アメリカの大学事情』東海大学出版会

  • 大学は公私の区別なく州高等教育委員会(Commision of HE)の監督を受ける。予算の審議,教育水準のチェックを行う。
  • 理事には,学長や教員,職員は理事にならない(SCの場合)。教授団と学生の代表は議決権はないが発言権のある者として理事会に出席できる。
  • 学長は教授として特定の学科でTenureを持つ。Provostは専門分野で業績を上げた学者で,かつ行政手腕を持つ教授が任命される権威ある地位。事務局長(Secretary)は理事会が選出。経理局長(Treasurer)も理事会選出。副学長(VP)は経営・財務担当,人事担当,学生担当,大学振興担当があり,理事会選出。学部長は学長任命でProvost直属,学部内学科にTenureを持つ。学科長(Dept Chair)は学部長任命,学長・Provost承認。
  • 学長はほとんどの大学で公募。Provostと学部長は,広く学界から公募,内部からも応募可。Provostは学部長以上の役職経験者から,学部長は学科長経験者から選ばれる。三役選考は書類で10名程度に絞られ,大学で3〜4日幹部と面接,教員団,学生との会談やセミナーをこなす。順位が決まると,俸給交渉に始まり,運営方針や学外活動の承認などを調整し,合意すれば任命。決定まで数年かかることもある。
  • 学科長は,公募であったり選挙であったりする。立候補はあり得ず(多忙で研究ができないため)同僚の説得で決意する。
  • 教員団は多数なので,参議院団が構成されて会議をする。
  • Freshman,Sophomore,Junior,Seniorは1年〜4年ではなく,30単位,60単位,90単位などを修得した者をその学期の終わりまでSophomore等と呼ぶ。卒業は4年が普通だが,学年は規定ではない(学期変わり目に進級し,留年や落第という概念はない)。
  • アメリカの大学では講座制はない。個々の教員の集合で構成される。俸給は希望額と提示額の折り合いで決まる。自らの評価を低く評価すると,初任給が低くなり,大学を変えない限り昇給に響く。
  • FTEの考え方:俸給の全てを学科から支給される教員Aが3単位科目を30人に教えると,3×30×1=90,これを3人で教えると一人30。俸給の半分をX学科,残りをY学科から支給される教員Bの場合,3×30×0.5=45。FTEは教授公立の表現方式の一つ。

2011/05/31

豊田義博(2011)「キャンパスライフに埋め込まれた学習」『Works Review』6, 8-21


  • 大卒若手社会人の迷走は,大学を出る前に組み込まれているのではないか。例えば就活は,形成された自己アイデンティティを第一志望企業が解体する意味で迷走要因(=キャリアビジョンを作り上げてエントリーシートを作ったのに,入職後の仕事は想定通りでない)。
  • スムーズに社会に適応する人とそうでない人の違いは何か?を高選抜度大学卒業生面談調査で分析。
  • 適応者の特徴:異なる価値観を持つ集団に身を置き,PDSサイクルで修行しながら葛藤を繰り返す。その敗北感から自己を相対化し,志向や適正を発見する。
  • 不適応者の特徴:
    1. 有意義な経験をしたと思い込んでいる(異なる価値観を持つと思った集団が実は同質的,マニュアル的プロジェクトを仕切ったと思い込む,有能感を高める受験勉強)
    2. 挫折・葛藤の回避(挫折体験を他者のせい・相性のせいにする。適応の機会を逃し,不適応の負の連鎖に入る。)
    3. 濃密集団への帰属が1つに偏っている
  • 不適応の事例:国際交流NPO,意識の高い社会貢献活動に従事することで自身の存在意義を確立,イベントプロデュースで有能感を感じるが,先人がパッケージ化したもので,社会的意義が高いという認識が挫折や敗北感を遠ざける。

2011/05/26

酒井穣(2011)『リーダーシップでいちばん大切なこと』日本能率協会マネジメントセンター

  • リーダーシップとは,自らの価値観(基本的情動の集合)どおりに行動する力である。人の存在意義は生まれながら与えられるものではなく,自分らしい,自分だけの人生を生きるためにリーダーシップを獲得しなければならない。リーダーシップは,人間が幸福(=自分自身との調和)を獲得するための必要条件。
本書のコアはこれだけで,あとは既存の知の切り貼り。
世間で絶賛されているほどの価値がある文献とは言えないのではないか。

2011/05/17

羽田貴史(2007)「アメリカの大学理事会について」『私大経営システムの分析』私学高等教育研究叢書

  • Trusteesとは,被信託者の集まり。ボローニャは学生支配の大学,パリは教員支配の大学,第三の管理運営革命としてBoard of Trusteesが出てきた。
  • 単一の組織があるものを運営することは,公共的利益を侵害するので,チェックの仕組みが必要。これが,BTが管理の主要な位置づけになった背景。
  • ただし,アメリカでは当初教員支配が成立する余地はなかった。誰かが大学を作って,それから教員を集めるため。逆に,オックス・ブリッジな上級教授の支配の大学。
  • ある任務,ある財産を,社会全体または特定の人間から委託されて執行するのがTrustees。この信託統治はヨーロッパで古くから発達してきた法的な枠組み。(共有と概念がない。日本は共有の国。)
  • アメリカ社会やヨーロッパ社会は,世間から信託されているという範囲でまず自分は行動しなければならないという倫理規範が内面にセットされている。日本の理事会は誰に責任を負っているのか?
  • シェアド・ガバナンスは,分担管理。理事会は経営事項,教員は教育事項と,権限を住み分けて共有する(教学と経営の分離)。
  • 理事会は社会と大学のバッファかつ架橋になれ。不当な支配や攻撃には大学を守り,社会の要求を大学に持ち込んで象牙の塔にしない。アメリカはレイマン・コントロールで社会と接続をはかることで,大学が進化してきた。上級教授支配のイギリスは,自分たちのやりたいことだけを再生産し,大学の外に成長した学問を取り込まずに停滞した。

2011/05/16

菅野寛(2011)『BCG流 経営者はこう育てる』日経ビジネス人文庫


  • 経営者が実行すべきこと
    1. 自社の置かれている市場環境を正しく認識する
    2. 目標を決める
    3. 目標と現状のギャップを正確に認識する
    4. ギャップを埋めて,目標を達成するための戦略・実行プランを立案する
    5. 組織・構成員に対して,目標,戦略・実行プラン,なぜそれをやり遂げなければいけないのかを正しく伝え,目標達成に向けてモチベートする
    6. 組織として,戦略・実行プランを実行する
    7. プランの進捗状況・結果をモニターする
    8. 結果を解析し,必要に応じて軌道修正する
  • これらを競合を上回るスピードで十戦し,競合を上回る頻度で繰り返す。これらは当たり前のことだが,これらから外れると成功は続かない。基本の実行が実は難しい。
  • 経営者のスキルセットは,科学系スキルとアート系スキルから成り,前者にはマネジメント知識とロジカル・シンキングが,後者にはリーダーシップが含まれる。前者はかなりの部分を部下に委託できるため,全て必須ではないが,後者は他人に委託できない必須スキル。
  • 科学のスキルを問われるのは参謀,アートのスキルが問われるのが指揮官。また,エリート集団は科学に偏向しやすく,ネガティブ・チェックが得意だが,周囲が反論できないまま何もしない状況が続いてしまう。
  • リーダーシップを構成する要素は,(1)強烈な意志,(2)勇気,(3)インサイト,(4)しつこさ,(5)ソフトな統率力の5つ。(1)は全てのベースで,(2)〜(4)は組織として結果を出すスキル,それを束ねる(5)という構造を持つ。
  • 強烈な意志の源泉は,高志と責任感。これはどちらか片方から出発するが,最終的に両方ないと意志は維持できない。人は利己欲ではとことん戦えない。
  • 勇気は,(1)トレードオフを理解した上で,どちらかを捨てる勇気,(2)不完全な情報下でも必要なタイミングで決断する勇気,(3)やめる勇気,変える勇気,(4)必要ならば上を捨てて人を切る勇気の4つが必要。これらを使うためには,(1)メンタル・タフネス(つらい決断に耐える精神的強さ),(2)リスク管理(失敗確率の最小化と,失敗した場合の立ち直りプラン),(3)倫理観(組織・顧客・社会のために行い,結果を出せなければ去る)の3つが必要。
  • ロジカル・シンキングで得られないインサイトを養うには,(1)わけがわからなくなったら,一歩引いて本質を見る癖をつける,(2)二極性で発想する癖をつける(積み上げ・トップダウン,帰納・演繹,ミクロ・マクロ,コストダウン・バリューアップ),(3)定石を壊して進化させる癖をつける,(4)他人の頭を使う癖をつける(人と議論する)。
  • しつこさには,考えるしつこさと実行するしつこさがある。考えるしつこさはインサイトの源泉である。実行するしつこさのポイントは,(1)地味・地道,(2)長く(10年以上)の2つ。
  • ソフトな統率力は,(1)夢を掲げる能力,(2)夢を共有する能力,(3)人間的魅力の3つから成る。共有のポイントは,やわらかな人的ネットワークを通じてコミュニケート,回数を多く,1回あたりの人数を少なくコミュニケート。人間的魅力は,カリスマ性ではなく,志の高さやひたむきな徹底からにじみ出るもので,明るいこと,善人であることが前提として必要。
  • こうしたスキルの獲得は,身体でアクション可能な習慣にして実行することで獲得できる。ただし,その訓練法は自分で組み立てないといけない。多くの場合,書き留めることが有効。
  • これらに加えて,体験が必要。これはデザインできないが,(1)できるだけ若いうちに体験する,(2)全体を統括する体験をする,(3)修羅場を体験する,(4)失敗しても立ち直れるようなダウンサイドリスクを小さくするの4つが重要。

2011/05/11

楠木建(1995)「大学での知的トレーニンク」『一橋論叢』113, 4, 399-419


  • 知的スキルは,少し話したり書いたりすれば目に見えてわかるものであり,その獲得トレーニングには長い時間を要する。
  • 知的スキルは3つのスキルで構成される
    • テクニカルスキル(会計がわかる,コンピュータが使える,方程式が解ける)
    • ヒューマンスキル(人にものを伝える能力,説得力)
    • コンセプチュアルスキル(ようするにこれだというコンセプトを創造する力,問題の全体像を理解してそこから本質的な問題を導出する力,解くべき問題を設定する力)
  • 3つは階層を成し,テクニカルがなければヒューマンは得られず,ヒューマンがなければコンセプチュアルは得られない。何もないところに,コンセプチュアルは身につかない。
  • テクニカルのトレーニングは苦痛なので挫折するのが普通。なので,思い込みでもよい軸が必要。自分の直感で決め,決めたらある程度やり込む。結婚と同じ。
  • コンセプチュアルは,大学くらいしかトレーニングの場がない。卒論はその最も効果的な方法。

2011/05/10

佐藤郁哉(2005)「大学の歩き方」『一橋論叢』133, 4, 341-358


  • 組織は流行に従う:新制度派組織理論
  • なぜ組織は互いに似ているのか,なぜ特定の組織構造,慣行,戦略が普及していくのか,それは,組織が組み込まれている環境に働く制度的プレッシャの影響を受けるから。
  • シラバスの例は,効果や効率は明らかでないが,既に勝ち組に入っている組織が採用したので,とりあえずそれを模倣してみるということ。許認可が絡む学校では,仕事のほとんどは事務のため,容易に理解できるが,実はこれは民間であっても同じ。
  • ある一群の組織に,それまでみたことのない外来語などが急速に広まった場合,強制的同型性や模倣的同型性を疑え。
  • 問題は,モデルの模倣にあるのではなく,模倣する側が有効な形で現場の実践に生かす視点や発想を持てるかどうか。
  • 制度的プレッシャーは何らかの形で避けがたく,制度的な圧力には黙従するのではなく,戦略的な対応をしていくことが必要。

2011/04/25

大住荘四郎(2002)『パブリック・マネジメント―戦略行政への理論と実践』日本評論社


  • NPMとは,(1)業績・成果による統制(Management by Results)を行う(経営資源の使用に関する裁量を広げる代わりに(Let Managers Manage))ことで,そのための制度的仕組みとして,(2)市場メカニズム(民営化,エイジェンシー,内部市場の契約型)の活用,(3)顧客主義への転換,(4)ヒエラルキーの簡素化(統制しやすい組織への変革)を行うもの。
  • 官僚制に基づく行政管理システム(Traditional Model)には,次の2つがある。
    • ウェーバーの官僚制理論(Weber's Theory of Bureaucracy):
      1. 規則による規律の原則:業務が客観的に定められた規則に従って継続的に行われること
      2. 明確な権限の原則:業務は規則に定められた明確な権限の範囲内で行われる。
      3. 明確な職階制構造の原則:組織内では上下の指揮命令系統が一元的に確立され,上級機関は下級機関の決定について再審査権・取消権を持つ。
      4. 経営資源の公私分離の原則
      5. 官職占有の排除の原則
      6. 文書主義の原則:少なくとも最終的な決定は全ての文書の形で表示・記録・保存される。事務所は文書と職員から成り立つ。
      7. 任命制の原則
      8. 契約制の原則
      9. 資格任用制の原則:職員の採用は一定の学歴と専門知識を持つ有資格者の中から行い,公開競争試験の成績の優秀な者から採用する。
      10. 貨幣定額俸給制の原則
      11. 専業制の原則
      12. 規律ある昇任制の原則:職員の昇進は在職年数か業務成績,またはその双方に基づいて行われる。
    • ウィルソンの官僚制における政治的支配:行政管理を非政治的プロセスとして分離する。政治は有権者に対して政治的説明責任を負い,官僚は執行機関として議会に対して官僚的な説明責任を負う。
  • 伝統システムの限界:(1)政治と行政(政策と執行)の区分は,実際には困難で,相互に影響を受ける,(2)官僚は情報の優位性から官僚による支配が行える,(3)終身雇用と職階制を前提とした年功的な昇任制度が,有能な職員の志気をそぎ,業務効率化インセンティブを阻害するとともに,業績・成果よりも法令・規則の順守を志向し,イノベーションを阻害する。
  • 一般的なマネジメントの機能は,(1)戦略(組織の目標と優先順位付け),(2)内部管理(組織編成,職員配置,人事監督・管理,業績評価),(3)外部マネジメント(目標達成に影響するエイジェンシー・団体・企業,メディア・大衆対応)がある。
  • 伝統的な行政では,評価が不要でPlan-Doのみの業務の流れであったが,マネジメント・サイクルの導入は,業績測定・評価を次のPlanにフィードバックさせる点が異なる。
  • 行政における業務の流れは,Input,Output,Outcomeの流れであり,アウトプットからアウトカムへのプロセスを考える必要がある点で,民間組織と異なる。それぞれの評価の視点は,Economy,Efficiency,Effectivenessである。
  • 評価の困難さの問題として,(1)アウトプットとアウトカムのどちらを重視するか(当事者は前者,住民は後者の方が重要,ただしアウトカムをPIでみる場合,指標としての精度が問題になる),(2)アウトカムをフィードバックに利用すると,アウトカムへの因果関係評価が重要になるが,外的要因やタイムラグの問題で実施が困難。
  • 行政評価は,明確な目標基準がないために,戦略性に限界がある。NPMの課題は,業績・評価による統制の有効性の問題。パフォーマンス・メジャー面との枠組みの中でロジックモデルを構築することである程度克服できる。
  • PMの理念型は2つのリンクから成り,計画・業績目標・予算配分の流れと,業績測定・業績評価・予算査定の流れがある。この2つの間のダイナミックなリンクの形成がPMの理念型である。ただし,測定の技術的問題,アウトプットとアウトカムのタイムラグや因果関係評価の問題で,2つめのリンクはつながらないことが多いことが問題。
  • 民間企業の戦略経営は,(1)予算・財務管理(初期マネジメント,収支のみに着目),(2)長期計画(50年代,安定成長の下での売り上げ予測,ほとんど機能しない),(3)事業戦略計画(60年代,事業ごとにミッションを定義,環境分析(SWOT),目標設定),(4)企業戦略計画(70年代,国際競争,不確実性,需要多様化で長期の企業のビジョンの明確化),(5)戦略経営(80年代,分析による停滞と戦略計画導入への組織的抵抗から,戦略ビジョンをここの従業員の役割までブレイクダウン)という歴史を辿り,公共部門でも同様の発展形態が見られる。
  • NPMの基本は,責任・権限の委譲。マネジメントの第一要素は戦略で,ビジョンをもとに政策目標,具体的目標,施策・事業へと展開しなければらないが,日本ではトップダウン(演繹的)展開ではなく,ボトムアップ(帰納的)にとどまる例が多い。それは,戦略経営への前提条件として,施策・事業の総点検を行う必要があったとも考えられるが,戦略経営への素材づくりは終わっているなら,トップダウン的な戦略展開を進めることが課題。

2011/04/24

大住荘四郎(2009)「ポジティブ・アプローチによる自治体の組織開発 : 松戸市のケースをもとに」『関東学院大学経済経営研究所年報』31, 1-14


  • ギャップ・アプローチが,問題を特定し解決する問題解決アプローチであるのに対し,ポジティブ・アプローチは,強みや価値を発見し、ありたい状態を描いて現実的達成状態を共有し,新しい取り組みを始めるもの。はじめから最適解を志向するのではないため,環境が不安定な状況下で有効なアプローチ。
  • ポジティブ・アプローチの代表は,AI。これは,(1)Discovery(強みや価値を発見,潜在的真価をインタビュー,最高の瞬間を味わうプロセスを発見,ポジティブコアの発見),(2)Dream(組織の最高の状態を想像,ストーリーを描く),(3)Design(達成したい状態を共有・記述),(4)Destiny(達成へ向けて技術的に取り組む)という4Dプロセスで進める。
  • 公共組織で主体性・自律性が生まれにくい理由は,(1)その宿命(事業領域が外生的で,公平性とマイノリティ重視),(2)対価性の欠如と受益者意識の希薄さにより要求や課題が噴出する可能性,(3)外に基準を求めても,その基準自体が正確でなく,外の基準のみでの意志決定が困難であること。

2011/04/03

Michael Shattock (2002) "Re-Balancing Modern Concepts of University Governance," Higher Education Quarterly, 56, 3, 235–244.

 高等教育機関のガバナンスモデルとしては,企業モデルの単一直線型(トップダウン)が注目されているが,今こそShared governanceを取り戻すべき。共同委員会,共同検討委員会を具体的な問題について立ち上げて,双方向の議論を行うべき。大学内の各所・各層にリーダーシップが存在することが必要。

2011/04/02

斎藤嘉則(1998)『戦略シナリオ』東洋経済新報社


  • 戦略思考とは,不確実なビジネス環境において,明快な将来のシナリオを創る思考である。
    • 日本人は方向を定めてから動くことに優れているが,今は方向を定めながら動く能力が求められる。
  • 思考のモラルハザードは,失敗やリスクの最小化という責任回避思考からくる。人が判断する基準は,目的か価値観しかない。
  • 戦略思考の3つのスキルは,次の通り。これを身につける最短距離は,自己責任の下にビジネスを行う厳しい環境に身を置くこと。
    • 責任を持って具体的結論を出す力(仮説思考:早く結論を出して実行し,検証して次のステップへつなげる)
    • 過去から将来までロジックで構造を洞察する力(こうするとどうなるという因果関係)
    • 価値基準をもってリスクを伴う判断を行う力(判断基準:コスト・ベネフィット,理念・規範・ビジョンを持つこと)
  • 現場主義のやり方は,担当者の責任・リスクが共に少ない。現状改善型のオペレーション思考では難しい時代には,先を予測するリスクを覚悟して新たなニーズ創造を行わなければ優位性は達成できない。

2011/04/01

榊原清則(2002)『経営学入門』日経文庫853


  • 大航海時代と今日の企業の違いは無限持続体(Going concern)であること。
  • 組織の定義では次の4つが重要。
    1. 組織の定義には複数の人間が含まれる。
    2. 組織は意識的に調整された複数の人間の活動の集合体。(マネジメントとは,他人に一定の仕事をさせること)。
    3. 組織には構成員がいる。ゆえに,構成員か否かをもって組織の境界ができる。
    4. 組織には目標・目的が存在する。
  • 戦略は,有効性(何をするか)と効率性(どのようにするか)に関わる組織の基本的意志決定のこと。有効性高×効率性高がベストだが,どちらかの場合は有効性を追求したい。にもかかわらず,実際のマネジメントの努力は効率性の追求に集中しがち。
  • 高等教育機関の組織文化の複雑さは,マッチョ文化と手続き文化の共存とコンフリクトにある(マルチカルチャー)。
  • インサイド・アウトとアウトサイド・インのバランスが重要。成熟組織は,人がいる,技術がある,部門がある,だから新規事業ができるという考え方をしがち,新興組織は少子高齢化だ,リサイクルが重要だ,だからその分野へ進出しようと考えがち。
  • 戦略的という場合,短期より中長期を,また先手を考えることを意味する。先手を打つには目標と共に,世界観やべき論が必要。また成長を目指すという現状に満足しないことも必要。

2011/03/29

ウィリアム・エレット(斎藤聖美訳)(2010)『入門ケース・メソッド学習法』 ダイヤモンド社


  • ケース・スタディは,課題や困難に直面したときに,自分がどう臨んでいくかのAttitudeを形成するもの。それは,問題を直視して逃げない,不確実な中で複数の選択肢から解決策を選ぶ意志決定をすること,実行の過程を冷静に観察し感情に流されないこと。
  • 四年制大学の卒業生は,1年生必修の作文コース後,ほとんど書く訓練をしていない。しかし,質の高いMBAコースは,学生に書くことを要求する。世界中に分散している社員に連絡を取る最も実践的な方法は,文章であり,よく書かれた文章は隠れた競争優位性となる。
  • 権威や正式に認められた真実が与えてくれる安心感から離れて,学生個人が議論の結果に責任を持って教室を後にすることは,曖昧で何通りにも解釈できることに対する不安を経験することになる。
  • ケースは,(1)ビジネス上の重要な問題がある,(2)結論を導くのに十分なだけの情報が記述されている,(3)結論は記述されていない,の3つの特徴を持つ。
  • 学生は,ケースが論理的な順序で書かれていると仮定してケースを読むが,混乱をきたす枠組みでケースが書かれているためにまごつく。ケースは主体的に読まなければならない。ケースは,(1)受け止める,(2)見つける,(3)つくり出すという3つの読み方がある。ケースは意図的に何を意味しているのかを伝えないようにできており,自分で意味をなすように構築していかなくてはならない。
  • ケースには,(1)問題,(2)意志決定,(3)評価,(4)ルールの分析課題が繰り返し出てくる。
    • 問題は,重大な結果に関連した状況で,その結果に対する明確な説明がつかない状況をいう。何か重大なことが起こったが,なぜそうなったのかわからない状況。問題の分析は,問題を定義するところから始まり,次に原因と結びつけて説明する作業をする。その際に,ツールや専門手法が必要になる。
    • ケースでは意志決定の場面が出てくるが,たいてい明確でなくその他の状況に左右される。これを,選択肢,基準,論拠の3つの視点で分析する。最重要は基準を決めることで,ケースの中に記述されることはあまりなく,専門的手法でケースの中から拾い出す。なお,客観的に正しい意志決定は存在せず,相対的なもの。
  • 学生はケースの解釈基準は科学的なものと暗黙に想定するが,それは達成不可能。論を展開する際は,科学的に確実でなくても論理的で行動に移せるものであることが重要。わからないことに焦点を合わせず,わかっていることに焦点を合わせて知識を積み上げる努力をする。
  • 議論では,自分の見方に責任を持つ,それに対する議論を展開する,議論を説明する準備をする,自分の意見に賛同しない人の意見を聞くという慣れないことを行う必要があり,当初は落ち着かないもの。
  • すばらしいコメントを謝ったタイミングで発言するのは最悪だ。
  • 議論でリスクを軽減するには,早いうちに発言する,ケースに書かれた情報を熟知する。

2011/03/28

若宮健(2010)『なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか』祥伝社新書226

 本書の基本的な主張は,(1)韓国は政府が業界の反対にひるまずトップダウンで規制できたためにパチンコが全廃できた,(2)日本は政府や警察が業界から利益供与を受けているために規制できない,というものである。タイトルの「なぜ」全廃できたかの答えは,政府が規制したからというだけで,もう少し面白い社会構造分析が見えるかと思っていたため,やや残念な内容。いろいろ冗長に述べているが,これ以上の知見は皆無。
 著者は調査研究のプロパーでなく,サラリーマン上がりの自称ジャーナリストのため,これは仕方ない。特に,自身宛のメールを紹介する論拠付けはなんともお粗末。
 新聞の書評欄で見て題目が面白そうで手にしたが,久しぶりに外した。やはり買う前に著者プロフィールの確認とアマゾンレビューくらいは見ておかないといけない。

2011/03/25

馬越徹(2010)『韓国大学改革のダイナミズム』東信堂


  • 韓国の高等教育環境は,日本の5〜10年先にあたり,得られる示唆は多い。韓国は,大学進学率が80%以上,学生の78%は私学在籍,学生のソウル志向と有力大学のソウル集中,地方大学の深刻な定員割れなどがあり,日本に似た側面が多い。
  • 韓国の高等教育拡大は,国家政策による設立の準則主義導入と大学の昇格・乱立によるものであり,少子化に伴う深刻な定員割れから,再び国家主導による統廃合推進政策が進んでいる。大学側の反対は当然であるが,既得権を持つ大学へナタを振るうには,国家によるトップダウン改革の方が実質的に変革が進む。
  • BK21など一部の有力大学を優遇する財政誘導政策により,一定の研究水準の向上を果たすことができた。この多くは教員採用や研究者の海外派遣など,ほとんどが人に使われた点が特徴。
  • 一方,NURIの地方大学活性化事業は,優れた教育プログラムへの財政支援で,GP的な使い方。また,域内の中心大学が近隣大学や地域産業と連携することに使う点も特徴。
  • 韓国の大学政策,常にカーネギー分類のような大学分類に基づいて,目標等が異なる形で示される。大学の機能分化を強く意識していることが伺える。大学側もこれを承伏しているのだろうか。
  • 認証評価は一巡して,今後は自己点検報告書の公開と大学基礎データの政府一括公開という段階に入っている。認証評価は甘すぎ,結局,効率化やイノベーションにつながっていないという総括で,日本の数年先の状況がある。
  • 私大の統廃合は,厳しい入学定員削減を伴う統合が進めば財政支援を,教員の専任比率上昇が達成できなければ入学定員削減をという誘導をする。これは,原則,域内で行う。また,大学拡大期に増えたオーナー系私大の民主化・透明化を図るために,理事の選任規定の変更を含む私立学校法改正を行った。
  • 韓国では,個別大学が入試を行うことはできず,修能試験+内申書で入学を決める。しかし,マークシート式の修能試験の弁別力が落ちてきており,大学を悩ませている。高校修了試験を検討する日本の10年後の姿に見える。
  • 韓国でも大学職員は人気で,50倍の求人倍率も珍しくない。弘益大学・教育経営管理大学院(大学行政専攻)と亜州大学・教育大学院(大学行政管理専攻)の2つは,大学職員向け専門職大学院であり,調査先としておもしろい。専任教授は少数で,ほとんどが実務家教員に委嘱している点が特徴。

2011/03/17

Biggs, J. B. (1987) Student Approaches in Learning and Studying, Australian Council for Educational Research, Melbourne.

Choy (2011)において参照されていた,Student Process Questionnarieの原典。しかし,個人の意識レベル,コースレベル,カリキュラムレベルと異なる階層の質問が混在し,活用方法が不明確。
同様の質問が複数出てくるのは,因子分析にかけるためだろう。

  1. 個人の興味よりも卒業後の職業場面を想定してこの科目を履修した。
  2. 学習中は常に個人的な満足感が満たされた。
  3. ほぼ全ての科目で優をとれるような科目を選択して履修したい。
  4. 試験や課題に直結する勉強だけをしたく,その周辺の学習は時間の無駄だと思う。
  5. 学習中は,学んでる内容が実生活で役に立つと思うことがよくある。
  6. 教員から示された参考文献を読んで,要点をノートにまとめた。
  7. 試験であまりいい点を取れず,次のテストが心配である。
  8. 知の蓄積によって真実は絶えず変化していくものであるとわかっているが,現時点で真実であること見つけるだけの学習になっている。
  9. 全ての学習において自分は優秀でありたいと思っている。
  10. 単純な暗記学習をよく行った。
  11. 新しい文献を読むとき,いつも頭の中で自分が既に知っていることと新しい知識の対比を意識していた。
  12. 試験が終わると必ず振り返り,問われたことを念入りに考える努力をした。
  13. 好き嫌いはともかく,より高い教育を受けることが自分の場合はよりよい就職につながると思う。
  14. どの科目もとても興味深いものであった。
  15. 自分は志が高い方で,常にトップでいる努力をしたいと思う。
  16. 自分は,理論的な科目よりも実践的な科目の方を好んで履修する。
  17. 授業の満足より,自分なりの視点が持てるように授業では努力して勉強したいと思う。
  18. 課題が出されたら,できるだけ早く取りかかる努力をした。
  19. 試験に向けて懸命に勉強したが,よい点が取れるか心配だ。
  20. 学問的な内容の学習は映画などよりも刺激的だ。
  21. 時期が来れば,いい勉強と就職のために同級生とともに流行に乗るだけの生活をやめるつもりだ。
  22. 不必要なことを学ぶことがないように,常に勉強を抑えた。
  23. 1つの科目で学んだことを他の科目で学んだことと関連づける努力をした。
  24. 講義が終わると,学んだことが確かなものか確かめるためにノートを読み返す努力をした。
  25. 教員らは試験に出ない誰でも知っていることの学習に時間をかけすぎないことを望んでいると思う。
  26. 勉強すればするほど熱中する方だ。
  27. 授業の履修を決める際に重視することは,よい成績がとれそうか否かだ。
  28. 入念に準備された教材と手際よくまとめられた板書により,授業がよく理解できた。
  29. 新しく学んだことは興味深く,授業時間外に追加的な知識を得る勉強をした。
  30. 授業で学んだことが理解できているかを確かめるために,自分でテストをしてみた。
  31. 高校卒業後も勉強するのは気が進まなかったが,結果的に大学での学習は有益だった。
  32. 人生における目標は,自分自身の哲学や信念を確立することであり,それに従って生きていきたいと思っている。
  33. よい成績を取ることはゲームのようなもので,実際自分はそのゲームに勝っていると思う。
  34. 特定の状況下でのみ教員の考えを受け入れることが最適だと思う。
  35. 複数の授業で議論しておもしろかった内容について,自由時間に追加的な勉強をしている。
  36. 教員が紹介した文献はほとんど目を通すことができた。
  37. 大学に在籍している理由は,その方がいい仕事が得られると思うからだ。
  38. 大学での学習は自分の政治観,地域観,考え方を変えた。
  39. 今日の社会は競争社会であり,学校や大学もこの枠の中で生きているものだと思う。
  40. 教員は自分より知識が豊富なので,自分の判断よりも彼らがいうことの方が重要だと思っている。
  41. 文献を読むときは既に知っていることと新しく知ったことを関連づける努力をした。
  42. ほとんどの科目で,丁寧で整理されたノート作成を行った。

    2011/03/09

    楠木健(2010)『ストーリーとしての競争戦略』東洋経済新報社


    • 優れた戦略とは,思わず人に話してみたくなるような面白いストーリー。項目ごとのアクションリストの戦略が多いが,それは戦略の構成要素の動きと流れがわからない静止画のような戦略。
    • 戦略論のテンプレート偏重やベストプラクティス偏重には,ストーリーのある戦略作りを阻害する面がある。
    • 論理とは,AならばBであるのように,2つ以上の思考や現象をつなぐ理由付けを指す。戦略の8割は理屈で説明できないが,2割の理屈を突き詰めていなければ理屈でない部分の嗅覚は磨かれない。
    • 法則は,戦略論の対象になり得ない。経営や戦略は,科学でないから。経営学の答えは,法則はないが論理はある。経営学は,なぜ(Why)を明らかにする学問。
    • 戦略の本質は,違いをつくり,つなげること。前半は競合との違いを意味し,後半は構成要素間の因果関係を意味し,次の重要なポイントがある。
      • 経営の多くの問題は,分析の発想に基づく。マーケティング,アカウンティング,ファイナンス等の構成要素に分解される。
      • しかし,戦略の神髄は綜合(Synthesis)にあり,分析の発想と相容れない。よって,戦略に対応する部署は組織の中に見つからない。
      • 戦略は部署でなく,人が担う。戦略はサイエンスよりもアートに近い。
      • 戦略は因果論理の綜合であり,特定の文脈に埋め込まれた特殊解という本質を持つ。よって,普遍の法則はない。
    • ストーリーの戦略論は,アクションリスト(戦略部門の分業的分析では無味乾燥な静止画の羅列になる),法則(違いを問題にする以上,大量観察を通じて確認される規則性は平均的な傾向しか示せない),テンプレート(分析は要素間の因果論理を考える助けにならない),ベストプラクティス,シミュレーション(数字の背後の因果論理が考慮されない),ゲームではない。
    • 静止画戦略論が好まれる理由:
      1. 忙しいから。テンプレートがあれば手っ取り早く戦略をつくった気分になれる。
      2. 経営企画部門は,戦略構想が仕事ではなく,戦略構想する人のための情報整理が仕事で,シンセシスに責任がない人にとってはテンプレートが有用。
      3. プロフェッショナル経営者という幻想。標準的なスキルセットではない。
      4. コンサルタントの存在。
      5. コミュニケーションが早い(共有するゆとりはない)。
    • ストーリーという視点は,戦略をつくる仕事を面白くする。難しい顔で戦略を考えている人が多すぎる。所詮はビジネス,自分で面白いと思わないものが,他人が関わる組織で実現できるわけがない。
    • 優れた戦略思考を身につけるために大切なことは,お話づくりを面白いと思うかどうか。むずかしい,思考様式が戦略と思い込んでいる人が多すぎる。
    • 戦略は,競争戦略(事業戦略)と全社戦略がある。前者は他組織とどのように向き合うかに関わる戦略,後者は複数事業の資源配分と進出撤退をどう構築するかに関わる戦略。
    • 目標を立てることと戦略をたてることを混同しやすい。戦略は,なぜ目標が達成できるかという道筋のこと。
    • 競争戦略は,競争がある中で,いかに他より優れた収益を達成し,それを持続させるか,その手立て。完全競争から見えれば,競争があるにもかかわらず利益があるのは,不自然でもろい状態。競争がある中で儲かる不自然な状態をつくって維持することが競争戦略の課題。
    • 違いの作り方には,種類の違い(ポジショニング)と程度の違い(組織能力)の2つがある。前者をStrategic Positioning,後者をOrganizational Capabilityと呼ぶ。
    • SPのベースは産業組織論。産業のあり方が企業の行動を規定し,その結果としてその産業の収益性が予想され,その産業に帰属する企業の収益性も予想できるという考え方。SPは,無競争に注目する。
    • SPは,競争優位の源泉を組織外のコンテクストに求める(位置取り)。OCは,自分たちの持つ強みを理解して,簡単にまねできないものに練り上げる。SPは質とコストのトレードオフ関係,OCはフロンティア拡張関係にある。
    • SPでは,マネジメントは意志決定者。OCでは,マネジメントの直接操作が曖昧(だからこそ因果関係が不明確になり,経路依存的になり,まねしにくくなる)。MBAはSPを好む。
    • SPは何をするか・しないか(What),OCはユニークなやり方(How),これを統合して戦略ストーリー(Why)ができる。
    • 戦略ストーリーを組み立てる柱は,(1)競争優位(最終的な論理の帰結),(2)コンセプト(本質的な価値の定義),(3)構成要素(SPかOCか),(4)クリティカル・コア(一貫性の源泉となる中核的構成要素),(5)一貫性(因果論理)の5つ。
    • どんな戦略も必ず,ハッピーエンドで終わる。バックワードに考えることで一貫性を組み立てやすくする。競争優位の中身は,WTP,低コスト,独占・ニッチの3つ。ただし,軸足を定める必要がある(バッティングしたときにどちらをとるかをはっきりさせる)。
    • ストーリーは,終わりから組み立てる。軸足の選択は,ストーリーの基本的な性格を決める。
    • 最初からストーリーがあったわけではないという指摘は,正しいが間違い。細部は出来上がっていなくてもストーリーの原型を初期からつくっている。ストーリー化の思考があるから,新しい打ち手をつくり,これまでの打ち手を修正できる。
    • ベストプラクティスに学べという思考は,そもそも違いをつくるはずの戦略を阻害し,同質的な競争へドライブする面がある。(会議は時間を短くが常識だが,技術開発が事業の軸足の会社など,あえてダラダラやることにこだわる組織もある。)
    • コンセプトは,本当のところ誰に何を売っているのか,どのような顧客がなぜどのようによろこぶのかを指す。
    • たとえば,顧客を組織化して囲い込むにしても,それに先行して誰に何をを突き詰めなければ,コンセプトは動画にならない。そこまでの価値を認める顧客は誰か,なぜ彼らを囲い込めるのか,なぜ彼らが継続的にお金を払うのか,コンセプトはこうした一連のなぜに対する答えを含んでいなければならない。
    • 本質的な顧客価値を突き詰めるとは,誰がなぜ喜ぶのかをリアルにイメージすること(アスクルの久美子さん)。
    • コンセプト作りで重要な点:
      • すべてはコンセプトから始まる。しかも投資が不要。本質的な顧客価値をとらえていると確信できるコンセプトが固まるまではストーリーの細部を考えても意味はなく,時間をかけて構想すべき。
      • 因果論理の綜合という意味でもコンセプトは重要。ストーリーに含まれる全ての構成要素は,コンセプトの実現に向かわなければならない。コンセプトと因果論理でつながらない構成要素は意識的に切り捨てる。
      • 全員に愛される必要はないことは,コンセプトを考える上での大原則。誰に嫌われるべきかをはっきりさせられることはビジネスの特権。行政サービスではそうはいかない。コンセプトは肯定的な形容詞を使わずに表現する。最高の品質がよいのは当たり前。空飛ぶバス,第三の場所には肯定的形容詞がない。
      • コンセプトは人間の本性を捉えるものでなくてはならない。なぜ喜び,楽しみ,面白がり,嫌がり,怒るのかということ。機会を捉えることに終始すると,空疎なコンセプトしか出ない。
    • ストーリーは長い話,20年くらい同じストーリーで利益を獲得できることが理想。そのためにも,人間の本性をとらえたコンセプトが重要。人間の本性は大きく変わらない。
    • クリティカル・コアでは,一見して非合理が重要(スターバックスの直営方針)。時間的先行による専有は,できるものならまねしたいと多組織も思うが,非合理はまねする動機がない。
    • クリティカル・コアは,先見の明ではない。先見の明は,外部環境の変化の先取りを前提にする。部分非合理を全体合理性に転化することがクリティカル・コア。
    • どんな戦略も成功するかどうかは事前にわからない。その意味であらゆる戦略は実験。ストーリーを事前に共有すれば,実験の失敗に気づくことができる。大規模組織ほど失敗の正体が突き止められない。ストーリーを引っ込める基準も事前に作っておく。
    • クリティカル・コアを見いだすには,日常的な小さな疑問に,なぜを考えることを惜しまない。大抵,技術的に無理とかコストが引き合わないなど,どうしようもない理由があがる。それが常識にとらわれ,簡単な論理で解決できることに気づくときが来る。
    • 戦略思考を豊かにするには,歴史的方法が最も有効。つまり,過去に生まれたストーリーを多く読み,背後にある論理を読解すること。新聞や雑誌ではなく,ある組織の歴史や戦略をじっくり記述した本や,優れた経営者の評伝・自伝,あるいは昔の新聞を見て,ファクトの背後にあるなぜを考える。
    • 優れたストーリーの条件は,そのストーリーを話している人自身が面白がっていること。必ず成功する条件ではないが,優れたストーリーの必要条件の一つ。
    • 戦略は総力戦。何をどのようにも重要だが,なぜについての全員の深い理解がなければ,実行に関わる人のモチベーションは維持できず,総力戦にならない。
    • 戦略を作ること,実行することは重要だが,伝えることの重要性もある。伝わらなければ実行はあり得ない。伝達は手間のかかる仕事。グラフを入れたドキュメントを配ってもイントラネットで共有しても戦略は伝わらない。リーダーがストーリーを語らなければ伝わらない。ストーリーを語るときはフェイス・トゥー・フェイスが基本。おもしろいストーリーをつくれば,思わず話したくなるので,共有したくなる。優れたストーリーをつくるには,おもしろいストーリーをつくるにつきる。

    2011/03/08

    木村達也(2007)『インターナル・マーケティング 内部組織へのマーケティング・アプローチ』中央経済社


    • 統合的なマーケティングの実現には,(1)マーケティング部門内の諸機能の統合,(2)マーケティング部門以外の部門がマーケティング発想で考えることの必要性,(3)マーケティング部門とそれ以外の部門の間の良好な連携が必要。ここにインターナル・マーケティングの必要性がある。
    • ここではIMを,組織がその目標を中長期的に達成することを目的として実施する,内部組織の協働のための一連のプロセスあるいはコミュニケーションの活動である,と定義する。
    • IMでは,マーケット調査(フォーカスグループ),セグメンテーション(年齢,志向,役割,機能,能力でグループ分け),ターゲティング(職務に適した能力保持者に狙いを定めた採用),プロモーション(組織内広報)のツールがある。
    • 取引コストの発生要因には,環境的要因(将来の不確実性,取引の複雑性)と人間的要因(限定合理性,機会主義)がある。取引コストは,市場を介するよりも組織内部の資源配分で調整する方が,(1)不確実性が減少するまで決定を遅らせられる,(2)継続的関係が続くことで機械主義的行動がとりにくくなる,(3)長期的関係のもとでは情報が偏在しにくいために,有利になる。不確実性と複雑性が高く,限定合理性による制約が大きいほど,ヒエラルキー型組織の方が選択される。
    • 組織内の取引コストは,(1)目標の不一致・不整合があるほど,(2)成果測定が曖昧であるほど,高くなる。
    • 成果測定の曖昧性が高く,目標の一致・整合が重要な仕事ほど(財務,コンサルティングなど),IMが必要な組織と言える。
    • IMは,(1)従業員の動機付けと満足度向上,(2)顧客志向の実現,(3)部門間の統合と戦略の実行と,目的を拡張しながら発展してきた。
    • 組織には,常にコーディネーション問題とインセンティブ問題がつきまとう。前者は,システムを中央集権化/分権化するか,つまり,専門性を保ちながらどう全体を統合するかにある。後者は,組織の目標を犠牲にして個人の目標を優先させる個人レベルと,全体の利益を犠牲にして自部門の目標を優先する部門レベルの問題がある。
    • この問題を解決するために,ARCがある。Architectureは,コーディネーション問題から組織を論じ,社員をグループの分けた上で,グループの縦・横の連結性を強化(人脈,リエゾン,タスクフォースやチーム,インテグレータにより)する。Routineは,部門間コミュニケーションを最小化してコーディネーション問題を解決する。
    • IMを実施する際は,メッセージ,メディア,マーケット,メジャーメントの4つのフレームワークでプログラムを作成する。

    2011/03/04

    吉田典生(2009)『なぜ,「できる人」は「できる人」を育てられないのか?』日本実業出版社


    • できる人は,価値ある存在として期待されるが故に,できる人であることを求められ,本人も期待に応えるために全力疾走する。できない人は,できる人を横目に無力感や疎外感を味わい,自分を卑下するようになる。ますます,両者の格差は広がり,できる人の負担感が増す悪循環となる。
    • できる人は,やれば結果が出そうだという感触を速やかに抱ける。好ましいゴールを生き生き描く心理的プロセスこそにがんばれる理由が潜んでおり,がんばったから結果が出たという結果論をまとめてはいけない。
    • できる人が率先して答えを出していくと,周囲は答えをもらうことに慣れていく。これを受け身と非難するのは簡単だが,その状況を作り出しているのは当のできる人。できない人もたいていは勤勉な日本人で,自分なりに役割を果たそうともがいている。
    • コンピテンシー論の問題は,行動に至る固有の動機を考慮していないこと。できる人がなせそれを「いきいき」するかという理由が無視されている。その行動が大事だと頭でわかっていても,それが自分らしい行動と思えず,行動から生まれるものが苦痛やプレッシャーになる。コンピテンシー論を人材育成に活かすには,行動を生み出す内面的な動機に目を向けなければならない。
    • 目標は到達できる手応えがあるからこそ,厳しくても燃えることができる。この困難さのレベルは相対的なもので,目標はできない人にとって時に弊害となる。
    • 生活の糧のために仕事に誠実に取り組む人が多くおり,それはできる人・できる人になる可能性を持つ人。できる人のワークライフバランスに沿った仕事の進め方や風土が,できない人の成長を阻んでいる可能性がある。
    • できる人の自分のプラス面は,他社批判をすることで自分を正当化する罠になりやすい。
    • できない人は,自分をどこまで追い込めるか,どこが限界なのかをなかなか理解できず,自己認識が甘い。よって,目標を挟んで,できる人とできない人の葛藤が起こる。目標が悪いのではなく,目標とのつきあい方の違いに目を向けないことが問題。できる人は,目標という概念にポジティブな印象を持つ分,できない人を目標によって無力化させることがある。できない人をゴールに到達させるには,プロセスの見える化が必要。目標が明確になれば動機づけられるという短絡的な理解がそれを阻む。
    • できる人ができない組織を作る要因は,(1)単純な目標信仰,(2)低次元なことを低次元だと軽くみること(普遍的な低次元などなく相対的な問題で,何をどのくらい吸収するかはできない人の中にある),(3)できる人の頭の回転にあわせて指導すること(人間は受け取る準備ができた分だけ自分の中に取り込むことができる)。
    • できる人とできない人の間の大きな溝は,自己信頼の度合い。これがコミュニケーションの違和感をもたらす。
    • できる人は,失敗をHow(いかに~するか)でとらえ,できない人は失敗をBecause(~だから無理)でとらえる。
    • できない要因は,技術や方法論の欠落とは限らない。基本的な心得はあったとしても答えは1つでなく,最後は当事者が自分で見いだすしかない。プッシュ型の指導ではできない人を引き上げることは不可能。
    • リソースの棚卸し10のステップ:ハイポイント・インタビューの項目として使えそう
      • (1)あなたが持っている技術・知識
      • (2)それらの技術・知識を手にする仮定で得たもの(習慣,学習パターン)
      • (3)それらの技術・知識を手にした結果として得たもの(地位,誇り,自信)
      • (4)あなたが持っている成功体験
      • (5)その成功体験の過程で得たもの(人脈,不屈の精神,偶然の機会)
      • (6)その成功体験が今の自分に及ぼしている影響や与えた価値
      • (7)あなたの中にあるやる気の種
      • (8)やる気の種をまいて咲かせる未来の花のイメージ(新しい役割や仕事)
      • (9)もう1つの未来の花のイメージ
      • (10)あなたの次のステップを約束してくれる鍵
    • できない人と接する際に,その人が今していること(Doing)以外に,今感じていること(Feeling)と人としてどうなのか(Being)に関心を持って接する。
    • 影響力の6つのレベル:命令,指示(以上,強制介入),要求(判断の余地を与える),提案,意見(以上,助言して判断させる,委任。
    • コーチ型マネジメントの基本
      • (1)管理統制的な接し方と自立支援的な接し方の2つの対話力を身につける。
      • (2)部下の状況に適応する接し方を特定する診断力を身につける。
      • (3)部下と話し合い,合意して新たな関係で進む協働力を身につける。
      • (4)部下の状況変化を見定め,診断と協働を繰り返す変化適応力を身につける。
      • (5)時代に介入を減らし,自立を促す開花支援力(Enpowerment)を身につける。
    いろいろできない人の特徴を冗長に説明しているが,結局は傾聴重視(できない人目線)のコーチングで育てろという要旨。

    2011/03/03

    金井壽宏(2004)『組織変革のビジョン』光文社新書161


    • 組織変革は組織を変えること,そのためにはそこに参加している大半の個人の発想や行動が変わることと定義する。組織が変わるは主語が違う,あなた自身が変わるかということ。
    • それを確認するための問い:(1)組織にミッション・ビジョンがあるか,(2)それは組織・あなたにとって必要か不要か,(3)必要ならそれは何か,言葉にせよ,(4)それはわかりやすいか,思い浮かべると心躍るか,(5)普段から口にしているか,口にすると目指したくなるか,(6)ビジョンはビジュアルか(具体的な姿を語っているか),(7)組織の変革の姿を家族に語っているか,(8)そのために歩むべき自身の一歩を日々確認しているか。
    • 10年目社会人は自分∈会社の図を書くが,大学生は大学∈自分という図を書く。
    • 組織文化を理解する3レベルは,文物(像,額,写真,巻物),価値観,仮定(DNA)。DNAはどんなに組織が変わっても変わらない部分があった方がいいという考えと,DNAレベルの仮定が環境に合わなくなったことをいち早く見抜く2つの考えが重要。
    • 個人と組織は心理的契約。アメリカでも組織と個人の関わり合いを定める雇用契約は本質的に心理的なものとして経営学では扱われる。
    • いくつになっても無能レベルに達した(ピーターの法則)という認識を持ち,次のレベルへの挑戦が始めることが必要。厳しくて目をそらしたい現実から決別して挑戦することが,一皮むける経験につながる。
    • 人から成り立つシステムを理解する最良の方法は,それを変えてみること(レヴィン)。変革の地図を手に入れるために変革がいる。アクション・リサーチの重要性を示す言葉。
    • 適応は周りにあわせることで,過ぎると自己実現にはマイナス(マズロー)。適応と適応力の違いを知ることが重要(現在の仕事の合理化が適応,全く違う事業でやっていくことが適応力)。
    • 「仕事上,例外的によかった体験」「例外的に悪かった体験」を聞いた研究(ハーズバーグ)。前者は,達成,達成の承認,仕事そのもののあり方,大きく任された責任があがる。後者は,監督のあり方,上司同僚との人間関係,福利厚生,作業条件など仕事を取り囲む要因。
    • 組織をよくする特効薬はない。もしあったら,よい組織ばかりになる。変革のドラマは決定論的モデルに規定されるルーチンではないが,プロセスモデル(綱好きの石8つなど)にはある程度意味がある。
    • 変革はきちんと終えることから始まる。トランジションには終焉,中立,開始の3ステップがある(ブリッジズ)。目指す先が何かを示すだけで,何が終わるかを強調しないと,未練がいつまでも残る。
    • 変革への抵抗は起こって当然。変革の結果,大きな影響を被る人を個人・グループで変革が始まる前に参加させることが重要。
    • 無力感は学習されるもの(犬の電気ショック実験)。やる気のあるミドルが大きな変革を志すほど,変革の大きさに比例した反対に遭い,無力感を獲得してしまう。
    • Learning Anxiety<Survival Anxietyの重要性。LAを下げる知恵を経営者は働かせるべき。新しい世界に入るときに,ちょっとおもしろそうという気持ちをもたせた方が,緊張感や危機感をあおるだけよりもスムーズ。
    • マネジメントとリーダーシップは違う。マネジメントの世界は,誰が上司部下で何をやるかが決まっているが,リーダーシップは何をなすべきかを仲間と一緒に自分も考え,誰を巻き込むかも自分で決めることにある。
    • 経営学では見落とされがちだが,エモーションへの対応はきわめて重要。ポリティカルな行動が必要であることを知っておくべき。
    • 変えようと思えばビジョンがいる。変革には危機感だけでなく,ビジョンや地図が必要。人々を鼓舞するビジョンを作った人たちは権威たちの指南ではなく,個人的で自分自身の欲求,期待,希望,夢を表現したビジョン。
    • ビジョンを変えていきたい姿としてビジュアルに描くには,言葉で表現しなければならない。人を巻き込むためには言語化能力がないと優れたビジョンに人はついてこない。業務的スローガンでなはく,腑に落ちる(sense making)ビジョンなら受け止め方は変わる。
    • 計画のグレシャムの法則:目の前の対応や処理が節目で描く大きな絵の計画作りを駆逐すること。それでも大きな計画を持っていれば,忙しくても大丈夫になる。
    • ビジョンは組織の節目で編み直されても,ミッション(アイデンティティ)が揺れては困る。

    2011/03/02

    高間邦男(2008)『組織を変える「仕掛け」』光文社新書368


    • メンタルモデルとは,人が日々判断し行動する際に用いる価値観,世界観,固定概念,枠組みのことを指す。組織やリーダーシップの文献は多数出ているが,従来の枠組みと新しい枠組みが混在し,2つのメンタルモデルが混在して互いに理解し合えない事態になっている。
    • 経営トップになりたい人が減っているのは,若い人のやる気が下がったのではなく,若い人の価値観が出世から離れてきていることを示しているだけ。そうしたメンタルモデルでは,トップダウン的リーダーシップやマネジメントは通用しない。
    • 変革は辺境から起きる。トヨタの三現主義(現場・現物・現実)スタイルをトップは認めるべき。
    • 新しいマネジメントスタイルの前提は,3つの変化(変化のスピードの加速,複雑性の増大,多様性の高まり)。ここでの生産モデルは,参加型(コミュニティ,コラボレーション,自己組織化)が生産的。なのに,マネジメント手法は50年前と同じ(目標のブレイクダウン,進捗管理,評価,処遇・配置・給与)。
    • PDCAはマネジャーが回すのではなく,メンバー個人が主体的に回してこそ意味がある。
    • 組織を生命体ととらえるなら,人件費は費用に含まない。売り上げー費用=利益+人件費。
    • 2-6-2は多様な尺度で考えればよい。業績という単一尺度でみることだけが強調されてきた。多様な強みが生命体としての力を高めて存在を安定化させる。
    • ボトムアップがうまくいくには,トップに相当の柔軟性とリスクをとる覚悟が必要。メンバーのエネルギーは8割が組織内に,2割が顧客に向かう。リスクを減らし証拠や最適解を要求するトップでは,ボトムアップは多組織でうまくいったことしか提案されない組織文化を形成する。
    • 従来の問題解決手法は,ギャップアプローチ(理想ー現状=課題)。それをうまく行う方法は,フレームワークの活用(4P,3C,SWOT,ABC)。ただし,誤ったフレームを使うと間違った答えをいくらでも出せる。機械の問題はこれで解決できるが,組織の問題にはシステムアプローチがよい。
    • システムシンキングは,世の中すべて拡張プロセス(+→+)と平衡プロセス(+→ー)の組み合わせととらえる。
    • システムには,家族,組織,他組織,顧客,行政,地域など考える人の認知によって広がる。ゆえに,教養が必要。教養とは,自分が生活者として関わるコアのシステム以外に,どれだけ幅広く自分に関係する周辺のシステムを理解しているかということ。
    • 相手といい関係を築くには言いたいことを言い合い,お互いを正確に理解するという考えは幻想。肯定的幻想が好循環を生み出す。幻想が確信を与え,確信が安心感につながる。See HBR 2008.8, Gotman。リーダーシップの役割は,強みの連携をつくり,弱みを無関係にすること。
    • ポジティブ・アプローチで組織を変える原則:(1)信頼感のある対話の場をつくる,(2)メンバーの察知力を高める(皿を洗って返すか?),(3)個人を尊敬し,強みを認める(問題解決の責任は問題に気づいた人にある),(4)主体性を引き出す,(5)自他非分離の場をつくる(リストーリー),(6)暗在的リーダーシップでサポートする(リーダーシップは個人能力ではなく組織能力,CCL ASTD Conf. 2003)。
    • ハイポイント・インタビューを使った研修ができるとおもしろい。
    • 効果がない研修の問題の4割は受講者のレディネス,2割は研修自体の悪さ,4割は研修内容を職場で実践する際の環境の障害(Brinkahof, ASTD Conf. 2007)。
    • グーグルは20%,住友3Mは16%,今の業務ではない新しいものを生み出すための時間に使うことの義務づけ。
    • 大きなアクションプランはつくらない。小さなアクションプランだけをつくる。そのときに,何を,誰が,いつまでに,どのレベルまで実行するかを明確にする(特に誰が)。
    • 「コミュニケーションによる情報共有」というアクションの指標は,週1回の情報交換会の開催ではなく,全員が他のグループのプロジェクトの内容と進捗状況を知っているなど,状態指標。

    2011/03/01

    中田亨(2011)『事務ミスをナメるな!』光文社新書499


    • 人間は能力の副作用でミスをする:(1)人間は情報に乱れや誤りがあっても即座に取り除けるため,細かい異常(誤字等)が発見できなくなる,(2)不十分な情報だけで短時間で決断できる(群馬の県庁所在地はタカサキかタカザキか?),(3)繰り返しで上達した作業では,思い込みミスが生じる。企業のミス対策は,個人の能力ではなく職場の体制改革で対応する。
    • ミスの解決は6つの面で考える:(1)しなくてすむ方法を考える(FAXからメールへ),(2)手順を改良する(FAXは2人で送る),(3)道具や装置を改良・取り替える(大画面つき最新型FAXを使う),(4)やり直しが効くようにする(1頁だけ送り相手に着信を確認後リダイヤルで送信),(5)致命傷にならない備えを講じる(文面が第三者に意味不明にする),(6)問題を逆手にとる(すべて書留速達郵便に変える)。
    • ミス防止の主役は,作業確実実行力から異常検知力に移っている。

    2011/02/28

    宇沢弘文(1974)『自動車の社会的費用』岩波新書


    • ホフマン方式:人名・健康に関わる被害計測法=仮に事故に遭わないで生き続けた場合の生涯所得の割引現在価値。人間を生産要素とみなすことで可能な計算方法。
    • 新古典派理論の前提は,生産手段の私有制と各主体の経済活動の自由(実際は社会から影響を受けるが)。また,市場価格で評価される額を所得として得るという報酬に関する仮定もある(生存不可能な人に配慮しない)。そして,個人への分解可能性(企業は単なるヴェールで,利潤条件に基づいて自由に形を変えられるという前提)。
    • この傾向は,経済学研究の主流がイギリスからアメリカに移ったため。現実と関わらない研究が許されるようになった。実際の市場は,制度的・社会的制約条件の下で機能する。
    • 社会的共通資本は,(1)大気,河川,土壌などの自然資本と,(2)道路,港湾などの社会資本,(3)司法,通貨などの制度資本がある。
    • 社会的共通資本は,各主体がどれだけ使うかを自由に決められ,他の主体がどれだけ使うかに依存する混雑現象が生じる点が特徴。

    2011/02/19

    大学評価とIR,IDE,No.528, 2011.2-3

    • アメリカ高等教育のリーダーたちは,データをうまく使いこなしている。時には直感や政治的判断も行うが,どのようなデータが有効で同運営に使えばいいかを判断するスキルを有している。執行部のデータリテラシーが日本の課題。

    2011/02/18

    教養と大学,IDE,No.527, 2011,1

    • 教養はエリートの文化的なルールや文法だった。底の浅いものではあっても,そういう用語や思考様式に疎遠であることは,エリートに相応しくなかった。これはノンエリートを排除する装置だったが,それゆえに,それ以外にもミニ教養主義が広がり,これがまた,教養主義を正当化していた。
    • 日本の私立大学は,経営基盤強化のために学生数,学費水準,威信(選抜度)の最大化を目指す。選抜どの高さを追求するには,学費収入以外の資金によって経営を安定させなければならない。よって,助成と規制のあり方が選抜制の高い大学の成立を左右し,実際に一部の私大のそうした転換をもたらした。

    2011/02/17

    海老原嗣生(2010)『「若者はかわいそう」論のウソ』扶桑社新書


    • 終身雇用制は,正社員の既得権益を守り,若者に無職や非正規労働を強いており,雇用の流動化が必要という論は成立しない。流動化した市場の米国は,25歳未満失業率が約20%,全年齢平均で9%であり,日本の25歳未満失業率9%,全年齢平均5%と比較しても高い。
    • 四年制大学新規卒業者の正社員就職数は、1980年後半で29.4万人,2008年で39万。バブル期の求人ピークは94万人,94年の求人は39万人。バブル期に比べ,22歳人口が3割減る中,景気に対応しながら,新卒雇用は増えている。
    • すなわち,大学生の就職問題は大学生の増えすぎ。高卒求人の激減は高卒就職者自体が減少して大きな問題にならなかった。
    • 就職氷河期の根拠は大企業求人倍率0.5〜0.8の推移(過去15年)。しかし,1000人以下規模では,2.16,300人以下規模では4.41で,ホワイトカラー需要は多い。余裕がなければ新卒を採れないはずで,就職先としては悪くない。
    • 中小企業就職は,動機がいない,研修がない,給与・休暇面の不遇などの面で求職側に不安がある。
    • 政策として,ブラック企業のデータベース化と,集団新任研修,勤続手当支給を行えば,就職と定着を促進できる可能性がある。
    • 企業が高学歴者を求める理由は,(1)膨大な資料を扱う,新規立ち上げ,複雑な仕事などをこなす頭のいい人,(2)物事の要領を得て効率良い勉強ができる要領のいい人,(3)上の言うことを忠実に守る人の3タイプが,組織にとって有益であるため。

    2011/02/15

    クリストフ・シャルル,ジャック・ヴェルジェ(岡山茂,谷口清彦訳)(2009)『大学の歴史』白水社


    • 大学とは,教師と学生が連帯して生み出していく多少なりとも自律的な共同体であり,そこでは高い水準で初夏目の教育が行われる。この意味で大学をとらえると,この制度は西欧文明に固有の産物で13世紀初頭に英仏伊で誕生した。
    • 初期の大学は,地域で違う。北部(パリ,オックスフォード)では,教師らの組合・学校の連合で,教会の影響が強かった。教育内容はリベラルアーツ。南部(地中海沿岸)では,学生らの組合で教師は排除されていた。教育内容は医学,法学で,学生の年齢は高く,裕福な指定が多く,教会の影響は限定的。
    • 14,5世紀に,君主や都市など政治権力が創設を決定して後に教皇が認可する大学が増える。有能で国家に奉仕できる役人(教養人・法学者)を育成し,法制国家イデオロギーを形成するため。
    • 初期の大学では,知識はアリストテレス,古代ギリシャ哲学だったが,原典(権威)の受容のみに不満な学生が,自ら都市を移動し大学を形成する。そこでは住民との対立が生まれるため,教会の庇護を受けることで自治を維持した。教育をプロフェッショナルなものにする必要が意識されるところから大学改革が進んだ点は,現在と同じ。
    • 16世紀以降になると,宗派の対立と,異教に感染することを恐れる国家君主の制限で,絶対主義国家が出てくる。国はエリート養成を管理下に置き,留学を厳しく制限。学生人口は伝統的大学ではなく,新興の都市大学で増えることになる。
    • 18世紀になると,学位は社会的流動性を保証するものではなくなり,平民出身の学生がいなくなる。印刷技術普及による人文主義と宗教改革の浸透で,騎士・宮廷文化が衰退の危機にさらされる中,大学の教養に魅力が集まるようになる。また,学位取得者の就職先の官職が世襲で独占され,余剰学位取得者が生まれる。この批判が出回ったことも大きい。この時期の大学の危機は,教育の形骸化が問題ではなく,当時の大学のイメージや社会での役割に生じた危機。
    • この時期,学位は容易に取得できるようになり,その数は計画的に急増した。試験の不正行為,学生の欠席,教員の欠勤,不十分な討議などが出始める。真の教育は大学の外,すなわち,親から子やサロンでの会話で獲得されるものとなる。
    • これに対する大学改革はドイツ・プロテスタント圏で始まる。ゲッティンゲン大学は,国家による管理,上流階級向け科目開設(舞踏,乗馬),現代的科目の開設(歴史,地理,物理,数学,行政学),ゼミナールの導入を行う。
    現代の大学問題と同様の構造が過去にもあったことがよくわかる一冊。

      2011/02/14

      高田ケラー有子(2005)『平らな国デンマーク―「幸福度」世界一の社会から』日本放送出版協会


      • 王室行事に関して,子供が主役になる何かを考える国民性。
      • 保育園では,季節を問わず外で昼寝をする。肺を強くし,夜の眠りを深くさせるとか。
      • 病院が遊び心満載で学習に参加する。クマが緊急入院して迎えにくるよう手紙を書くなど。
      • 小学校では成績を出さず,年に2回保護者と教師の面談をする。能力評価は,1年生ではお話を絵にすることで評価する。真ん中に線を引き,その上に気を三本書き,そのうち一本にリンゴを三つ書きなさい。
      • 高校を卒業すると,クラス全員の家を回るトラックが走り回る。
      • 18最上の学生に支給される奨学金があり,財源は税金。卒業要件を満たす年数+1年支給がポイント。奨学金で生活できるシステムがある。
      • 進学前に1年働くなどが多いのは,進学のポイントシステムに加算されるため。
      • 進学は学びたいから学ぶ,修了も学び終えるまで学ぶ。4年の年限で平均,5年から5年半。
      • 子供の歯科は,小中学校に併設されたクリニック。学校と一体化で子供に身近な存在となる。18歳までは全て無料。
      • 労使は5月に年間5週間分の休暇計画を立てる。
      • 年金開始年齢は67歳から65歳に下げられた(2004年)。

      2011/02/13

      吉田新一郎(2005)『校長先生という仕事』平凡社新書


      • 学校教育法上,校長は管理者・監督者。設置義務者の教育委員会に代わって管理するための規則しかない。人事権は校長になく,職員会議は校長事務の円滑な補助という位置づけ。教え方の改善・研修は項目になく,誰に研修の責任があるかも不明。
      • 校長になるための事前の研修はなく,役割を果たすための研修が昇任後にあるのみ。当然,実力もリーダーシップも多様。
      • 日本では3年で校長が替わるが,外国から見ればそれで学校を良くできるわけない。
      • 研修は美しいあるべき論を語るために不評,リーダーシップに注目が集まるが,現状の資質や力量が考慮されないため,独裁経営と勘違いする者もいる。
      • 継続的な学びでは,本を読むことが重要。
      • 同僚性は,実践について話し合う,相互に観察し合う,カリキュラム(授業・単元)を一緒に作る,互いの教え合うという4つを実践した時に生まれるもの。日本の職員室ではそうしたことがなく,部屋の設計もそのようになっていない。
      • チームはぞんざいに作っても機能しない。外国では基準を明確にした上で,校長が教員を連れてくることができるが,日本はそれができない。表面上馬が合うよう装うことは相当のエネルギーを使い,子供の学びに関心を向ける力が残らない。
      • リーダーは立場,リーダーシップはスキルや資質。いいリーダーは,その人の存在さえ知られずに,自分たちがやったんだと言える人。
      • ビジョンは作る課程の方が大事。校長が必要と思わなければならないが,一人で書き上げるものではない。
      • 変化にまつわる誤解
        • 変化は上から押しつけることができる:賛同も納得もしないことをすることは困難
        • 変化はイベントである:変化はプロセス,意図や中身が伝わることの方が稀
        • 問題はない方が良い:問題がなければ学べない,問題発見・問題解決能力の方が重要。試すことが許されない,意見の相違を避けるのが学校の特徴。
        • 仲間作りを省く:目標が明確でリーダーシップがあれば変革できる者ではない。仲間を広げる地味な努力こそが重要。
      • 変化の原則
        • 影響を受けるものが意志決定に参加すること。
        • 学校を変えることは,中にいる人を変えること。
        • 変化への抵抗を当然視し,プラスに活かす方法を考える。
        • 文化の転換こそが重要。それには大量のコミュニケーションと強い信頼関係が不可欠。
      • 会議には振り返りの時間をあらかじめ組み込んでおく。参加して良かったこと・悪かったことを無記名で集める。
      • 協力・信頼関係は,教職員が一丸になって気づく必要はない。言いたいことが言え,自分をさらけ出せる数名のチームでプロジェクトに取り組めればよい。
      • プロ教師は,教えることよりも学ぶことを重視する,大切な中身に生徒が主体的に取り組むことを重視する,自分のすることではなく生徒がすることや作り出すものに焦点を当てる,常に同僚と協力する,研究の成果を使いこなす,リーダーとして機能する。
      • 多様な研修:交換日記,相互観察,読書サークル
      • 自分の判断で使えるお金があることは,プロとしての第一歩。

      2011/02/10

      Middaugh, Michael F. (2009) "Closing the Loop: Linking Planning and Assessment," Planning for Higher Education, 37(3), 5–14.

      • 戦略立案や自己点検に取り組む大学は多い。しかし問題は,苦労して収集された評価データが,計画立案にほとんど活かされていない点である。
      • デラウェア大学は全学的PBLで有名だが,それは機関データを収集し,それをベンチマークし,必要な改善策を検討する中で生まれ,実行されてきた。そして,計画後は,PBL用の教室棟を建てるなど,着実な進捗に取り組んできた。
      • ただし,これはデパートメントの閉鎖危機があるなど,アメリカならではの事例。解釈や日本への援用には慎重を要する。

      2011/01/18

      ジェームズ・クーゼス,バリー・ポズナー(高木直二訳)(2010)『大学経営 起死回生のリーダーシップ』東洋経済新報社


      • リーダーシップとは、人を動かしたいと切望する者と、ついて行こうと決めた者の人間関係である。
      • 模範となるリーダーシップ5つの行動
        • 模範を示す:自分でもやりたくないことを人にやれとは言わないこと。他者にやってほしい行動の模範を示すために、自分の声を見つけ、自分の価値観を自分の言葉ではっきりと示す。
        • ビジョンを分かち合う:人はビジョンを自分のものと受け入れない限り、ついてこない。ビジョンへの
        • それまでのやり方を変える:革新的な変化は、語ることより耳を傾けることから生まれる。つまり、よいアイディアを認め、新しい手順が採用されるよう、今ある仕組みを変えること。
        • 人が動きやすいようにする:リーダーは、チームワークをよくして信頼関係を築き、自身を与えることこそ、絶対すべきこと。自分は強い、自分に能力があると感じる時、リスクを取り、変化を起こし、期待以上の働きをする。
        • やる気を高める:リーダーは目に見える形で、行動を通して仕事ぶりに報いる、すなわち励ますことが必要。
      • リーダーは、大多数の人に、誠実であり、未来志向であり、能力があり、人に感動を与えると思われてないといけない(リーダー特性評価から)。
      • 模範を示すということは、時間の費やし方、重大な事件の対処方法、自ら語る話、自ら選んだ言葉や質問がある。そして、いてほしい時にその場にいる、職場に早く来て遅くまで残ることである。
      • 事件はいつか起こるものであり、リーダーは事件を学習の機会に変える。その事件の帰結として何を教えたいかを問われるのがリーダー。
      • 他者にビジョンを押しつけることはできない。耳を傾けるという、単純なことから始まる。その過程で、感情を豊かに表す。
      • 大学のリーダーは、自ら進んで人脈を築き上げていかなければならない。大勢の積極的な関与がない中で、リーダーシップが発揮されたケースは1つもない。他人を信頼しない人は自分も他人から信頼されない。信頼が重要と認識したリーダーは、他者の専門能力を活用するようになる。その過程で、リーダーは助け合いの規範を確立しなければならない。また、電子情報に依存せず、顔を合わせることも重要。
      • リーダーは、キャンパス内のあちこちに出かけるもの。その理由は、相手を気に掛けていることをしめすため。さらにや友人になれると、積極的な姿勢を引き出せる。それには、自分が相手を信頼していることを示さないといけない。
      • リーダーシップとは学ぶものであり、普通の人が学習して身につけ、相手のよいところを引き出すプロセスである。

      2011/01/03

      杉本大一郎(2010)『外国語の壁は理系思考で壊す』集英社新書


      • 英語を使えるようになるためには、翻訳してはならない。途中までを頭から理解して、綱いていくことを身につけないといけない。発想法が、大切なところから先に述べる習慣がある。
      • 知らない単語が出てきても、立ち止まってすべてがわからなくなるよりも、その後を部分的に理解する方がはるかによい。
      • 講義は聴講者が知っていない事柄や解釈について話すのだから、聴講者にとって新しい語彙が出てくるのは当然。講義をする人はその語彙に特に気を配って頭の中に配置し、言い回さないと、単語の音だけでは通じてない。それを補うために、黒板への板書をする。
      • 熟語として捉えることは、覚えることを級数的に増やす。そうでなく、動詞と副詞に分けて理解し、それぞれに対応する概念体系を持つことで、加法的に増える程度にする。
      • 話の論理構造や階層構造を組み立てたり表現することができない人が多い。日本語教育では重視されてこなかったので、外国語教育で取り戻す使命がある。しかし、現実の外国語教育はそうでない。
      賛同できる部分は多いが、既知の内容ばかりで、新しさがなかった。