2018/11/12

中村瑛仁(2015)「教員集団内における教職アイデンティティの確保戦略」『教育社会学研究』96,263-282


  • 教員の自己意識:教授方法,職業的発達のあり方,教育現場の変化への反応等,専門性に関わる教員の意識・行為を条件付けるもの。
  • 教員文化:教える仕事の困難に直面した教員たちが,その困難を乗り越 えるなかで形成してきた職業文化。
  • アイデンティティ・ワーク(Snow and Anderson 1987)に注目:自己(self-concept)に対して,適合的,肯定的なアイデンティティ(personal identity)を創造,表現,維持するための人々の行為
    • アイデンティティは人々が実践を通じて(特に表現活動)構築する。
    • アイデンティティは社会的アイデンティティと自己との交 渉過程の中で捉える。
  • 教員:多様な役割期待を向けられることで,自らの理想とする「教員としての自己」と,求められる教員役割との間に乖離が生じやすい職業的課題を有する。
  • 中学校の事例
    • しんどい子がいる学校→家庭背景が不安定な生徒を学校へ包摂する教職観+包摂するために生徒との信頼関係を重視した「つながる」指導観。
    • →学校状況変化で新しい教員役割が現れ,伝統的な役割を問い直す動きに(=しつける教員:全ての生徒に対して社会性を身につけさせる教職観+集団の統制を通じて学校秩序を形成する指導観)。
    • つながる教員としつける教員の役割葛藤 ⇔ 教員集団内の対立・問題の露呈は,生徒・保護者に対する教員権威を損ねる ← 指導観一致が規範化されている。
  • 3つのアイデンティティワーク
    • 異化(distancing):付与される社会的アイデンティティと自己との間に距離を保とうとするアイデンティティ・ワーク
      • 過去のつながる教員を正当とみて,今のしつける教員と距離をとる。
    • 調整:教員集団の状況に合わせて,適切な教員役割を選択する流動的な教職アイデンティティを表現するアイデンティティ・ワーク
      • 2つの役割を相対的に捉え,状況に応じて役割を選択して,葛藤を処理する。
    • 再定義:教員役割に対して新たな意味付けを行うことで,自身にとって適合的な教職アイデンティティを創造するアイデンティティ・ワーク
      • どちらかの優位性が表れ,一方が劣位な役割として位置づけられる。