2014/04/22

米倉誠一郎(2004)「解説」アルフレッド・チャンドラー『組織は戦略に従う』ダイヤモンド社



  • この本は,マネジメントと組織のイノベーションを解明するものである。
  • 順調に内部成長を果たした企業では,統合や合併を通じて成長した企業に比べてトップマネジメントの発達が遅れると言われる。
  • 現業の利益責任を利益責任を負った執行役員をそもそも全社的な意思決定を下す経営会議に入れてはいけないのであって,全社的方針は経営全体を見ることができるゼネラリストが担わなければならない。
  • 事業部制組織においては副社長・執行役員クラスの事業部長がミドルマネジメントである。
  • ミドルは現業の短期的戦略と本社から配分された経営資源に対する数字上の責任を持つ。一方のトップは,全社的な経営戦略と現業部門への資源配分を決定し,その業績に対して最終責任を持つ。

2014/04/21

両角亜希子(2001)「大学経営研究の基礎概念」『大学研究』第22号,275-293


  • もともと経営研究に隆盛があり,それが大学にも導入され,忘れられる現象は,大学内部で自らの立場を強化したいという経営者の要求にであり,戦略論に対して慎重に見ている(バーンバウム)。
  • 大学経営研究は4つに分類できる。
    • 組織のフォーマルな側面:官僚制,同僚制,専門職制などのモデルの当てはめと,大学組織以外との対比による大学組織の特徴抽出の研究。
    • 組織のインフォーマルな側面:組織文化,信念,モラルが大学運営に一定の影響を与えていることを明らかにする研究。
    • 大学経営の戦略的側面:計画や戦略の必要性を主張し,そのモデルを示す研究と,実際の大学でモデルが果たす機能を明らかにする研究。
    • 環境変化と内部変化:グローバル化,IT化などが大学経営に大学経営に与える影響を予測し,大学が取る戦略を探る研究と,評価や質などが求められるようになった背景と不可避性を述べる研究。
  • 大学組織を描くモデルは3タイプある。
    • 官僚制(ストループ 1966):組織の目的を合理的に合理的に遂行する遂行するよう分業し,分業は個人ではなく権限の根拠となる地位や職位で支えられる。
    • 同僚制(ミレット 1962):構成員が共有の考えと考えと平等な権限を持ち,合意や調整が行われる。組織の機能は分化していると共に専門化している。
    • 専門職制(ミンツバーグ 1981):教員の専門知識に基づいた権限と,水平方向に分化して緩やかに連結した下位組織(学科,講座)を重視する。専門職制は専門家のスキルに依存するため,教員に大きな自律性と自らを支配する権限が与えられる。組織の変化は,誰をメンバーに入れるか,何を教えるかという緩やかな変化の中で生じる。
  • インフォーマルな構造の研究は,制度や成文化された運営ではなく,その背後にある慣行,価値観,行動様式に注目する(=私的生活,トロウ 1975)。
    • 組織の伝説:「組織の伝説」を1つの価値ある資源と捉え,大学の中と外をつなぎ,構成員の組織についての共有された感情・信念の集合(メンバーシップ)をつくり,組織の統合性を形成し,同時に組織的危機を生じさせる(クラーク 1972)。
    • オープンシステムアプローチ:「組織化された無秩序」=曖昧さと複雑さを備えた無秩序な組織,「緩やかに連結したシステム」,「ゴミ箱モデル」。大学組織は異なる使命を持ち,それらが矛盾や対立を内包し,目標も曖昧なため,問題を解くよりも,問題をキャッチボールする中で,副産物としての決定を生み出す(コーヘン&マーチ 1974,ウェイク 1976)。
    • 政治モデル:利害集団の政治的力学や葛藤,取引の側面に注目する(ボールドリッジ 1971 1977)。現実を理解するモデル,大学経営の実践的課題に答えるモデルとはなり得ない。
  • 積極経営論は,経営危機に伴うマネジメント技術の高等教育への適用。
    • 経営革命(ケラー 1983):ゴミ箱モデルは現実の問題解決につながらないことを指摘し,(1)大学の個性を明確にして,マーケットの中でのニッチを明確にする,(2)そうした戦略を決定するプロセスを確立することを主張。従来の教授団支配では役割の変化についていけないので,ガバナンスが新しい形を取る必要があることを指摘。
    • マーケティング論(コトラー 1982):学生獲得競争の激化を背景に,マーケティングベースのマネジメントモデルを提示(内外資源分析,目標設定,戦略公式化,組織デザイン,システムデザイン)。
    • ただし,アカデミックな文化の強さが,資源の減少に直面する時に重要となるため,十分な情報があればトップレベルで意思決定できる前提は誤りを含む。
    • 単一の理想的経営様態が存在し,それを明らかにする志向を持つが,競争的な環境ではそもそもその論理構造に問題がある。
  • 経営論の消長論(バーンバウム 2000):消長の過程で何らかの遺産を残し,それが間接的に高等教育に影響する。
    • 負の遺産:数量化の弊害,問題の過度の単純化,目標や手続きの単純化に伴う経営能力育成の阻害,消長によるマネジメントの軽視,中央管理機能のみの強化,教育へのコミットメントの弱体化,達成すべき目標の所与化
    • 正の遺産:データの重要性の認識,新しい目標の発見,大学組織内にバラエティを生む,新しいグループの形成
  • ベターシステム:経営主義を単純に批判せず,よりよいシステムを模索するために活用する考え方。一方で,経営の技術的側面の議論の精緻化につながる。この下では,誰がリーダーか,その権限は何かは,多くく事柄によって制約を受けるために違いを生まない。むしろ,周囲の構成員の参加をいかに引き出すかというアカデミックリーダーシップを重要とする(バーンバウム 1992)。

2014/04/18

孫福弘(2003)「大学組織論の前提 組織特性の基礎的考察を中心に」金子郁容『総合政策学の最先端2』第11章,慶應義塾出版会


  • バーナード:組織を,2人以上の人々の,意識的に調整された諸活動,諸力の体系と定義する
  • 大学組織は,近代的経営理論を適用する立場と,大学特有の組織運営原理に従って運営されるべきという立場の対立の歴史がある。
  • 大学組織の特性(江原 1999)
    • 知識を扱う:知識の発見,保存,伝達,応用が大学組織にとって基本で固有
    • 専門分野が大学組織の基礎的要素であるため,大学組織の特徴は断片化であり,専門化された下位組織の組織形成の原理はルース・カップリングになる
    • 意思決定権限の拡散:組織の断片化=権限の拡散が促進され,大学組織は連邦制になりやすい
    • 下位組織の草の根的革新は頻繁に行われるが,大学組織全体が再編成されることは少ない
    • 大学管理者の権限が,他の近代組織と比べて強くない→伝統的には正しいが,現在の妥当性は低い?
  • 20世紀のアメリカの大学は,ドイツの研究大学の理念を大学院という形で継承し,アングロサクソン社会の伝統であるリベラルアーツ教育に加え,アメリカ独自の社会サービス機能(プロフェッショナルスクール,エクステンション)を生み出し,3つの機能を中核とする新しい大学像を開発した。19世紀の学問の中心のドイツは,20世紀にアメリカに移行し,この大学像は世界に普及している。
  • 大学組織の特性を測定するための基準:発生の歴史(ウニベルシタス,フンボルト,マルチバーシティ,国家目的),エリートからマス,設置主体,法的位置づけ,財政的側面
  • 大学ガバナンスのプレーヤー:教授団=アカデミック・フリーダムの論理,経営者=マネジメントの論理,国家=マクロ政策の論理,社会構成員=アカウンタビリティーの論理

2014/04/11

稲垣公雄・伊東正行(2010)『エンゲージメント・マネジメント戦略』日本経済新聞出版社



  • 成果を出し続けるマネジャーは必ずES→CS→業績の順番で考える。
  • エンゲージメント:従業員が組織に対してロイヤルティを持ち,方向性や目標に共感して心からの愛着を持って絆を感じている状態。
  • 5つの戦略で実現
    • CS中核のビジョン定義と徹底共有
      • 具体的でリアリティのある定義,双方向的共有
    • 人材育成プログラム見直し
      • ビジョン実践そのものを業務とする
    • 個人知を組織知にする仕組みづくり
      • プロジェクトチーム,バーチャルなナレッジシェアの仕組み
    • 顧客視点・現場視点の業務改革
      • 顧客,社員の声の収集,トップのコミットメント
    • エンゲージメントマネジャーの育成
  • マネジャータイプ診断表でEM力を診断

2014/04/10

柏倉康夫(2011)『指導者はこうして育つ フランスの高等教育グラン・ゼコール』吉田書店



  • éducation:自分から外に出させ,他の人に注意を向けるようにさせること,他人についての感覚を教えること=礼儀
  • 小学校の中心は国語と算数,小学生の間に徹底的に正しい国語を教え込む。
  • 義務教育終了後,1年の仮入学の後で適性が審査され,最終的な進路を決める。選択肢は,リセ(普通高校,技術高校),農業リセ,農業教育リセ,職業見習い教育センター,各種専門学校。
  • 普通リセは日本の高校の理数ウェイト型だが,最終学年は哲学のウェイトが高い。
  • 今のバカロレアは3つ,普通(自然科学系,人文科学系,社会科学系),技術(工業,化学,医療,農産等),職業(事務,製造,サービス等)。
  • 試験では,詩の注釈,論述,創作,哲学が問われる。
  • グラン・ゼコールへの入学には,準備学級で猛烈な勉強が必要。準備学級の入学も難しいが,入学試験はなく高等中学在学中とバカロレアの成績で校長が選別。
  • エコール・ポリテクニクの入試では,体育もあった。
肝心のリーダーがどう育つのかについては,やや記述が少ない点が残念。

2014/04/09

ピーター・センゲ ほか(2014)『学習する学校』英治出版



  • 学ぶことは深く個人的なものであると同時に,本質的に社会的なものだ。
  • 学校は,命令や指令ではなく,学習の方向付けを導入することで,持続可能性のあるいきいきとした創造的な場に変えられる。
  • 学習する学校は独立して改善されるのではなく,学習のための生きたシステムとして捉え,関わりを持つ全ての人が自分の気づきや能力を常に高め続けるために存在する。
  • 学校が直面する問題に対する唯一の実行可能な持続可能性の高い解決策は,学習指向への態度を養うことだ。
  • 組織はメンバーの考えと相互作用の産物であり,学校システムを改善したいならそこの人々がどういう様式で考え,相互作用しているかを見る必要がある。
  • 全ての学習者は,個人的,社会的な経験,感情,意思,素質,信念,価値観,自覚,目的などを基にした心情的な足場の上に知識を組み立てる。教室での学習から理解されるものは,知識の内容やどんな方法で伝えたかではなく,その人が誰であるか,その人が既に知っていることが何かによって左右され,そうした要因への気づきを高めることが学習のプロセスを強化する。(学習とはつながりである)
  • テストの点数などの実用本位の問題だけに焦点を合わせると,生徒は矮小化されたビジョンを内面に取り込み,人生の志を低くして生きるようになる。
  • 組み立て作業ライン型学校制度は,教育の生産性を劇的に増大させた反面,多くの問題も生んだ。学校は産業化時代の世界観から切り離すことができない。
  • 目標による管理は,何かを測定したりインセンティブを与えたりすることで物事を改善できるという考え方。学習指向の見方では,そもそも完遂する能力がない人にインセンティブを与えたところで効果はなく,目標を達せねばならない人が真にコミットすることが重要。
  • 深い学習サイクルが作動し始める場の3つの組織的要素
    • 基本理念=組織変革の哲学的土台
    • インフラのイノベーション=インフラは組織的慣行(コミュニケーション経路,意思決定権の所在,報告の仕方など)を指す。これを革新する(研修を改善する,スタッフの裁量を広げる,ガイダンスを通じて学習共同体を作るなど)ことを指す。
    • 理論・ツール・手法=実践から一歩離れて上から見下ろすように観察すること。
  • 自己マスタリーとは,人々の周りにある今の現実に気づくよう助けながら,彼らが夢を抱き続けられるようサポートする実践を指す。これは個人的なもので,自分一人の振り返りを通して起きる。→要するにマイゴールを設定すること
  • 共有ビジョンの構築:命令→売り込み(説得)→テスト(オプション提示)→相談(自分には全ての答えを知ることはできないと認める,オープンエンドの問いの提示をする)→共創
  • メンタルモデルに気づき,推論に基づいた仕事のサイクルを断ち切る。
  • チーム学習の核心は,解決されるべき問題について,お互いを尊重し注意深く配慮しながら,対話し続けること。ダイアログセッションが有効。
  • システム思考とは,出来事→パターン・傾向→パターンを生むシステム構造・組織体系的要素→メンタルモデルの革新へ議論を進めること。

2014/04/08

ジェームズ・M・クーゼス,バリー・Z・ポズナー(2010)『リーダーシップ・チャレンジ 』海と月社



  • 今を形容する言葉を5つ書く,もし魔法が使えるなら3〜5年後をどうしたいかを書く,このリストを元に,ビジョン,ミッション,コミットメントを書く。それを全チームと話し合う。
  • リーダーになるには,まず自分自身がよい例となり,言行一致を実践する必要がある(模範となる)。手本となる行動を取るには,価値観を明確にしなければならない。つまり,心を開き,自分の本心と信念を伝える,自分の価値観を自分らしい方法で語ること。
  • ビジョンをメンバーと共有するには,相手を知り,相手の言葉で語る必要がある。
  • リーダーシップは関係である。全ての基礎は信頼にある。
  • 賞賛されるリーダーは,正直,先見の明がある,わくわくさせてくれる,有能である。
  • 本物の声で語りたいなら,自分が選ぶ言葉,使う言葉を日頃から意識する。
  • 難局では価値観に立ち戻る。目の前の状況は,解決すべき問題ではなく,共通の価値観に従うことの大切さを思い出す好機である。
  • まず,自分のリーダーになることから始める。
    • 私は組織のビジョンや価値観を心から信じているか
    • 先の見えない状況や逆境に陥った時,前に進む勇気を与えてくれるものは何か
    • 落胆,過ち,挫折といった事態にどう対処するか
    • 私の強みと弱みは何か
    • 組織を引っ張っていく力を強化するために何をすべきか
    • 自分とメンバーの絆は強固か
    • 自分の意欲とやる気を維持するためにはどうすればいいか
    • あきらめないために必要なものは何か
    • 今この瞬間において,リーダーにふさわしいのは私か,それはなぜか
    • 私は組織や組織の周囲で起きていることをどれくらい理解しているか
    • 組織が直面している複雑な問題に取り組む準備はできているか
    • 私は組織の業務遂行方針について,明確な信念を持っているか
    • これからの10年間で組織はどこに向かうべきか
詰まるところ,リーダーがどういう言葉を使って周囲の人と意思疎通をするかが中心であり,そのためにはリーダー自身の仕事の仕方が重要。

2014/04/07

Jim Kjelland (2008) "Economic Returns to Higher Education: Signaling v. Human Capital Theory; An Analysis of Competing Theories" The Park Place Economist, Vol.16, Issue 1, Article 14


  • 大学教育はシグナルか人的資本形成かを実証的に検討する研究
  • 具体的には,賃金を学歴ダミーに回帰する式を推定
  • 賃金 = 定数項 + 高卒D + 大学中退D + 大卒D + IQテストスコア(14〜21歳で受験) + 信念D
  • データは National Longitudinal Survey of Youth,79年から04年
  • 結論として,賃金とIQスコアが高い相関,モデルとしては人的資本よりシグナルが妥当
あまりにも荒い分析で,突っ込みどころが満載。特に説明変数の選択と内生性が問題。

2014/04/04

Anna Kosmützky (2012) "Between Mission and Market Position: Empirical findings on mission statements of German Higher Education Institutions," Tertiary Education and Management, 1-21

 ドイツの大学で戦略プランの策定が求められるようになり,文字通りの戦略的大学運営が期待されるが,実際の文書を分析する限りは,大学のイメージを記述したものに過ぎず,そのことに意味がないとは言えないが,経営的な意味での戦略プランの意味はほとんどない。

 分析手法が明確でなく,追試が難しい。

2014/04/03

岩田雅明(2013)『生き残りをかけた大学経営戦略』ぎょうせい



  • 募集戦略では,イメージが重要。そのためには,合格基準を下げない,不合格者を出すことも重要。
  • 奨学生になれるかどうかが入学前にわからないことは,受験側にとって問題。よって,特定資格があれば授業料を免除する制度は,効果的。
  • キャッチコピーによって,教職員の教育や学生支援に統一した方向を向く効果が出る場合もある。
  • 入り口と出口,つまり募集と就職支援を1つの部署で行うことは,人的資源の効率的活用,責任転嫁の回避など,効果が高い。
  • 組織風土づくりでは,問いを共有することが大事。週1ミーティングでの問いなど。問いは,あるべき大学像に向かうために必要なものは何か,に対する問いであり,それについて考え続けること。
  • 有用なビジョンを描くには,顧客ニーズの把握が不可欠で,入学者,取り逃がした者(合格したが入学しない,オープンキャンパスに参加したが受験しないなど),潜在的ニーズの3つを見る。
  • 大学では,現状分析からビジョンを作るよりも,自由に描くビジョン先行型の方がなじむ。大学像は固定的なため,現状分析から新しい魅力は盛り込みにくいため。
  • 定期的にビジョンについて話していないと,実現することができない。意見を自由に交換し合える場の設定が不可欠。
  • いい戦略でも他人から与えられたものは自分のものとしにくいため,企画部門を設けるよりも,戦略を実行する部門が企画も担当する方が,有用な戦略が作られる。
  • 自ら考えることを促進するシステムとして,1週間1件などの提案制度がよい。
  • 業績と関連のある12のエンゲージメント:(1)私は仕事の上で,自分が何を期待されているかが分かっている,(2)私は自分の仕事を正確に遂行するために必要な設備や資源を持っている,(3)私は仕事をする上で,自分の最も得意とすることを行う機会を毎日持っている,(4)最近1週間で,よい仕事をしていることを褒められたり認められたりした,(5)上司または職場の誰かは,自分を一人の人間として気遣ってくれている,(6)仕事上で,自分の成長を励ましてくれる人がいる,(7)仕事上で,自分の意見が考慮されているように思われる,(8)自分の会社の使命や目標は,自分の仕事を重要なものと感じさせてくれる,(9)自分の同僚は,質の高い仕事をすることに専念している,(10)仕事上で,誰か最高の友人と呼べる人がいる,(11)この半年の間に,職場の誰かが自分の進歩について,自分に話してくれた,(12)私はこの1年の間に,仕事上で学び,成長する機会を持った
  • リーダーは行き先を決めること,マネジャーはそこまでの生き方を考えること。大学では,あらゆる機会を利用して大学の将来ビジョンについて意見交換をするという,対話で作り上げるしかない。
 個人の経験を紹介したと言う意味では,おもしろい部分もあるものの,全体的に内容の抽象度が高く,データや参考文献もない論述で,本書を読んで活用できる人はほとんどいないと思われる。

2014/04/01

キム・キャメロン,ロバート・クイン(2009)『組織文化を変える』ファーストプレス



  • 組織文化には4つのタイプがある
    • 官僚文化:明確な意思決定権限,標準化された規律や手続き,管理と説明責任のメカニズムが重要。有能なリーダーとは,組織をうまく調整し,組織全体をまとめ上げること。明確な規則と方針が組織を結束させる。
    • マーケット文化:組織の有効性の重要な基礎は取引費用。競争上の優位を作るために,他の組織と取引(=交換・販売・契約)することが重要で,優先目的はニッチなマーケットでの強さ,確実な顧客獲得,チャレンジングな目標達成。
    • 家族文化:組織環境はチームワークと個人の能力開発を通して最もうまく管理されるのが基本的な前提。マネジメントの役割は,権限を委譲してやる気を持たせ,メンバーの組織への参加・コミットメント・ロイヤルティを促進すること。意思決定が不確実である時,組織活動の調整に,メンバーの同じ価値観・信念・目標の共有がとても有効。
    • イノベーション文化:不確実性が高く,情報が多すぎる時に,適応性・柔軟性・創造性を促進すること。権力や権威を特定の人に集中させず,個人やチームの間を権力が移っていく。各メンバーに,リスクを恐れず,未来を予想することが求められる。
  • 競合価値観フレームワークは,縦軸に「柔軟性・裁量権・独立性」⇔「安定性・統制」,横軸に「組織内部に注目する傾向と調和」⇔「組織外部に注目する傾向と差別化」を取り,1,2,3,4象限にそれぞれ,イノベーション,家族,官僚,マーケットを取ったもの。
  • 各文化で重要なマネジメントスキルは,家族=チーム,人間関係,他者の育成を管理する能力,官僚=組織への順応,統制システム,調整・協調を管理する能力,マーケット=競争力,顧客サービスを管理する能力,社員に活力を与える能力,イノベーション=革新,将来,継続的改善を管理する能力。
  • 組織変化のステップは次の通り。
  • (診断)
    1. 組織文化診断ツールを完成させ,現状を診断。診断対象のユニットが組織文化変革のターゲットユニット。
    2. チームのメンバーも,自ら診断ツールを完成させる。
    3. 各メンバーが,診断ツールから現在の組織文化診断スコアを計算する。
    4. チームで会議を持ち,現在の組織文化について話し合う。(単にスコアの平均を出すのではなく)
    5. 診断ツールを,将来のあるべき姿を想定して完成させる。
    6. メンバーも,将来の組織の望ましい文化を想定して完成させる。
    7. 各メンバーは,将来の望ましい組織文化診断スコアを計算する。
    8. チームで会議を持ち,将来の組織文化について話し合い,合意する。
    9. 現在と望ましい組織文化の図を比べ,差を見つける。
  • (解釈)
    1. 診断ツールの各質問に対するスコアを図上にプロットし,組織文化のタイプ,整合性,強さについて確認する。これを他の組織の組織文化と比較する。
    2. どの組織文化変革を起こす必要があるかを定める。あるいは,どの組織文化を弱めるかを定める。
    3. 提案された組織文化変革の意味するものを明確にする(フォームに書き込んで完成させる)。
    4. 将来の組織文化に浸透させたい価値観を表す事例を3つ出す。事例をストーリーとして語る。
    5. 組織文化変革に向けて,どの行動を取り,どの行動を止めるかについてチームで合意する。
  • (実行・導入)
    1. (1)小さな成功を見つける,(2)協力者を募る,(3)フォローアップと報告の体制を整える,(4)積極的に情報提供する,(5)変革の効果を測定する,(6)変革への抵抗を減らし,変革への心の準備を整える,(7)なぜ変革が必要なのかを説明する,(8)過去を批判せずに葬り去る,(9)シンボル的で目につく変革を導入する,(10)業務プロセスにも注目する,の一般原則に従う。
    2. 各ステップですぐに導入できるものを複数見つける。
    3. 組織内の情報伝達に関する戦略を立て,双方向で対話できる情報経路を確保し,誰でも変革活動の十分な情報を得られるようにする。
    4. Structure, Symbol, System, Staff, Strategy, Style of Leadership, Skill of Manager の7Sを考慮して,変革局面を見つけ出す。
    5. 組織文化の変革を個人の変革に落とし込む。=どの行動・能力を開発・改善するかを明確にする。
    6. 各メンバーは診断ツールを使って,個人のマネジメント能力と組織文化が合致しているかを確認する。
どの組織も4つの文化の側面を同時に持ち,ある文化を強くしてある文化を弱くするアプローチで組織を変革するというアイディアだが,教養がコンテクストと独立して教えられないのと同様,組織文化も戦略目標なしには変革できず,アクションにおいては戦略計画の方が重要である。