2016/05/26

岩田健太郎(2012)『主体性は教えられるか』筑摩選書


  • 評価は手段であり目的ではない。評価によって得られるアウトカムが大きいから評価を行う。評価が必要とか必要ないという二元論的な考えを排除すべきである。
  • アメリカでプロフェッショナリズム教育が盛んなのは,罪の文化に当てはまらない問題が出ているから。恥の文化と似た部分がある。
  • PBLは毎週定型的に辞書を引いているような,単純作業の繰り返しで,知識の量も深みも足りない。形だけの問題解決学習は,思考停止を招く。
  • Harden「Independent Learning」:PBL,通信教育,講義,学習マテリアルの4つの教育方法について,PBLは学生中心・自分で行わない,通信は学生中心・自分で行う,講義は非学生中心・自分で行わない,学習マテリアル配布を非学生中心・自分で行うという4分類をした。


主体性は教えられるかという問いに対して答えるのではなく,思考停止や受動的にしか学べない原因を(主観的に)列挙する本で,問いに対する示唆は乏しい。

2016/05/23

梅棹忠夫(1969)『知的生産の技術』岩波新書


  • 大学は学問を教えるところではない。学問のしかたを教えるところだ。しかし,実際は大学でも学問の方法よりも学問の成果を教える方に熱心である。
  • 操作できるところがカードの特徴。カード操作でもっとも重要なのは,組み替え操作である。並べ替えてみるうちに,思いもかけぬ関連が存在することに気づく。これは知識の修正ではなく,一種の知的創造作用である。
  • カードは分類することが重要ではない。くりかえしくることがたいせつ。
  • 文章は俳句のつもりで書け。省ける言葉を徹底的に省いて,ぎりぎりまで短くせよ。

2016/05/20

「公立大学の展望」『IDE現代の高等教育』No.580,2016.5

清原正義「公立大学の展望」

  • 一般に理事長は経営,学長は教学を担うと考えられるが,実際の運営では経営と教学の重なる部分も少なくない。規模の小さい公立大学で経営と教学を分ける必要性は乏しい。
  • 公立大学の理事長にも,人事,施設整備,組織再編,広報など戦略的経営が必要な分野が増え,この状況に対応する理事長の専門性が要求される時代になっている。


奥野武俊「公立大学法人の諸問題とこれから」

  • 公立大学協会では,理事長と学長の一体型と分離型は,原則論や組織論だけで論じることは難しいことが明らかになった。
  • 公立大学では,設置主体としての地方自治体首長,議会,行政の意向が教学面に大きく働くこともあり,大学運営にあたってこれらの関係作りにかなりの力を割かなければならない。


大崎仁「大学運営のメカニズム アカウンタビリティと質の保証」

  • アカウンタビリティが会計処理だけでなく事業全般に用いられるようになったのは,新自由主義の公共サービス改革の一環。
  • アカウンタビリティには説明責任を果たせという説明要求の要素がある。大学の説明内容が要求にあっているかを確認するには,自己点検の公表では不十分であり,第三者評価が登場する。
  • イギリスは,学長はカウンシルにリポートする。日本はこくみにゃ社会に対して説明責任を果たす。そうであればその方法は,情報公開。
  • 第三者評価は,評価の基準・方法を第三者が決めるので,アカウンタビリティを超えて学外者による質保証になる。これはアメリカのアクレディテーションである。

2016/05/19

キーガン,R.・レイヒー,L.(2013)『なぜ人と組織は変われないのか』英治出版


  • 大人の知性の3段階
    1. 環境順応型知性:チームプレーヤー,忠実な部下,大勢順応主義,指示待ち,依存
    2. 自己主導型知性:課題設定,導き方を学ぶリーダー,自分なりの羅針盤と視点,問題解決志向,自律性
    3. 自己変容型知性:メタリーダー,学ぶことによって導くリーダー,複数の視点と矛盾の受け入れ,問題発見志向,相互依存
    4. 集団思考は文化ではなく,人の知性のレベルが原因で生まれるものである。
  • 自己変容型知性の人は,どんな強力な方針や計画も時間が経てば完璧でないことを知っている。
  • 人間の知性を高めるためには,適度な葛藤が必要である。(ジレンマ,苦境を通じて,自分の認識アプローチの限界を感じるとともに,適度な支援を受けながら葛藤から逃げずに押しつぶされないこと。)
  • キング牧師は,公民権運動を白人対黒人ではなく,アメリカ建国の理念と現実の戦いとして位置付け直した。
  • 変わるための必要な3要素
    1. 心の底:成し遂げたいという本能レベルの欲求
    2. 思考とハート:免疫マップで,自分を守るメカニズムとそのためのコストを見つめること
    3. 手:思考と行動を同時に変える
  • 人間には自分を欺く性質がある。免疫マップは,一人で作ると表面的になるので,必ずグループで作成する。
  • リーダーは,思考様式の変革に伴うリスクを理解し,安全な場を用意してメンバーが行動に乗り出せるようにする。

タイトルが人と組織となっているのは,結局個人が変わらないと組織も変わらないため。
結局のところ,組織が変わるには,本当は嫌がっていることを集団で直視する経験が必要というメッセージ。

2016/05/18

渡辺伊津子(2013)『二重性のダイナミクス: 組織変革の構造』白桃書房


  • マトリックス組織が有効となる環境状況
    • 2つ以上の組織編成原理が必要とされる外的圧力の存在
    • 外部環境の不確実生や課業の複雑性・相互依存性のために,高度の情報処理能力が必要とされる場合
    • 規模の経済性や高い業績達成のために,資源の共有が必要とされる場合
  • 革新のジレンマ:創始と実施の間で起こるジレンマ。
  • 革新のジレンマを克服する3つの二重組織
    • マトリックス構造:構造の柔軟性で対応する
    • アドホクラシー:人間の柔軟性で対応する
      • 人間自体の多様性を増大させて対応力を確保する。創始と実施が同じ個人・グループで行われるので2つに分かれない。同じ人間が研究と製造を行うなど。
    • ストラトクラシー:プロセスの柔軟性で対応する
      • マトリックス組織が狙う水平的コミュニケーションやチームワークを強調するマトリックス行動を重視。マトリックス構造=職能部門組織の上に水平関係を構築(市場への対処が中心) ⇔ ストラトクラシー=製品事業単位間に活動を調整する水平関係を形成(資源(効率・技術)の共有が中心)。
  • スイッチング=組織内のさまざまな状況変化を感知し,認知モードを切り替えること。
  • 人間の認知構造は,あれかこれかの二項対立的に認知する傾向があり,スイッチングの阻害要因である。二重性の問題を解決するには,二分岐思考から自由にならないといけない。
  • これを乗り越えるには,組織を構造でとらえるのではなく,プロセスの観点から捉えるプロセス思考に依拠したアプローチをとらないといけない。
  • 二重性問題の解決する=組織を対立する要素を建設的なものへと絶えず作り変えていくプロセスとして捉える必要がある。
  • マトリックス組織は,メンバーの相互作用で生まれるコンフリクトに圧倒されてマトリックス行動を創出できない。
  • 建設的論争をするには,意思決定プロセスの政治家を避け,公式の論争管理の制度を入れることが有効。
  • マトリックスマインド=組織をプロセスの観点から捉える思考様式。全体の流れに依拠して自らの役割・なすべきことを理解し,その当事者として責任を全うしようとする態度。
  • これを促すマネジャーは,コミュニケーションの交点に位置し,論争やコンフリクトを調整する存在であるため,パワーの源泉として仕事に関する専門知識,対人関係処理能力,論争を解決する能力が求められる。

2016/05/17

ハーマン,R.・ヘイモービックス,R.(堀田和宏・吉田忠彦訳)(1998)『非営利組織の経営者リーダーシップ』森山書店


  • 非営利組織を運営する資金の源泉:(1)政府の資金・助成金,(2)市場での財・サービスの販売,(3)寄付金。
  • 非営利組織は,透過性の高い境界を持ち,変化しやすい政治的・社会的・経済的環境に存在している。そこでのリーダーシップの主たる責任は,境界の外に働きかけて資金基盤に影響を及ぼす環境諸要素との関係に組織を位置づけること。(自己完結的な非営利組織は存在しない)。
  • 非営利組織は外部資金に依存するため,組織を一定不変に保つことができない。使命は,ニーズの変化や資金の利用可能性で変わる。組織という言葉は官僚制型の組織図を連想させるが,オープン組織では組織が絶えず再生されている現実を不明瞭にする。
  • 組織は決して完了することはないという現実に目を向け,組織ではなく組織化について考えるべき(ワイク)。変化する一連の関心を絶えず組織化することが必要。
  • 有能なCEOになるには,成功を収めた政府官吏と企業家的なビジネスマンの性質を結合させることが必要。つまり,多様なコミュニティの価値を支持し,公共の利益のために働きながら,最終損益に注意する。非営利組織のリーダーシップは,複雑で対立する期待に直面している。
  • 伝統的な階層モデルを特徴づけるための,管理されたシステム(Managed System)理論の主要命題(エルモア 1978):
    • 組織は目標・目的を持つ。
    • 組織は部分からなるが,統合された合理的行為者として運営されるものである。
    • 活動を合理的に統一するためのメカニズムとして,階層的なコントロールが行われる。
    • 目標達成を最大化するために組織の活動を管理するのは,階層のトップにいる集団の責任である。
    • 効率的な管理とは,目標達成に影響を及ぼしそうな事態や圧力に関する情報を収集し,最適水準の目標達成に到達するためにさまざまなタスクを配備し,タスク配備を調整するために継続的にパフォーマンスを監視することである。
  • CEOのリーダーシップ:(1)スタッフや理事会へのリーダーシップは,独自の行動技能が必要(両者に別の行動が必要),(2)効果的なCEOと非効果的なCEOの間で,スタッフへのリーダーシップの範囲について違いはない。しかし,効果的なCEOは理事会へのリーダーシップは気に責任を持っていた。
  • 効果的なCEOは,対外関係に時間を割く。そのためには,内部に割く時間を減らす必要があり,より分権化された内部管理体制の開発を進めて,スタッフに多くの権限と責任を移譲していた。
  • 理事会中心のCEOの6つの必須技能
    • 理事会の内部諸関係の相互作用を促進する。
      • 満場一致は合意でない。反対意見を出す立場・関心・利害に精通する。
    • 理事への配慮と敬意を示す。
      • うまく話を聞く。
    • 理事会と共に変化と革新の青写真を描く。
    • 理事会の業績達成と生産性を高める。
    • 理事会が機能するための機構を作り出し,維持する。
      • 資料・日程表・作業計画を作って提供する。理事会のルーチンを開発する。
    • 理事会に役立つ情報を提供する。