2018/06/28

戸澤幾子(2008)「社会人の学び直しの動向 ―社会人大学院を中心にして―」『レファレンス』平成20年12月号,73-91


  • 生涯教育:人生の諸段階、生活の諸領域におけるフォーマル・ノンフォーマル・インフォーマルな教育・学習のすべてを含む総合的・統一的な概念。
    • 65年ユネスコ第3回成人教育推進国際委員会提唱。生涯学習本格化。
    • 73年OECDがリカレント教育を提唱。教育期と労働期の循環。
    • 日本は71年46答申で生涯学習の必要性指摘。81年答申(生涯教育について)で、生涯教育の定義明確化(=生涯学習のために、自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を相互の関連性を考慮しつつ総合的に整備、充実しようとする考え方で、教育制度全体がその上に打ち立てられるべき基本的理念)。
    • 生涯学習は、自己の充実・啓発や生活向上のために生涯を通じて行う学習を指し、基本的に各人が自発的意思に基づいて、自己に適した手段方法を選んで行うものと定義。
    • → これを受けて、機能、制度両面で高等教育の弾力化、柔軟化を政策課題として位置付け、大学の社会への開放について、昼夜開講制をはじめ新たな具体的方策を提起し、社会人の受入れを大学に対して要請した。
    • 87年臨教審最終答申:「個性重視の原則」「国際化、情報化等変化への対応」「生涯学習体系への移行」が教育改革の基本理念として提唱された。
      • ← 背景に、(1)教育の荒廃が社会問題化する中での「学歴社会」の弊害の是正、(2)所得水準の上昇や高齢化の進展等「社会の成熟化」に伴う学習需要の増大への対応、(3)情報化、国際化の進展、科学技術の進歩など「社会・経済の変化」への対応がある。
      • 第二次答申で、大学院修士課程を「高度専門職の養成と研修の場として整備・拡充を図る」とともに、「民間企業等の技術者などに対する継続教育として大学院修士課程の弾力化などの措置を考慮する」ことを提唱(=新しい大学院の方向性)。
    • 90年はじめて、「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」制定:夜間大学院、修了要件の緩和、昼夜開講制、サテライト・キャンパス、通信制修士課程の設置などの制度化が進む。
    • 91年答申:大学院生の規模を2000年までに2倍に拡大するという方針。
    • 98年答申:大学院に高度専門職業人の養成機能、社会人の再学習機能の強化が求められる → 99年大学院設置基準改正:「専門大学院」制度創設(研究者養成と明確に区別する制度ができたという意味で画期的)。
    • 00年教育改革国民会議:欧米型プロフェッショナル・スクール設立提言 → 02年答申:「専門職大学院」創設提唱 → 03年「専門職大学院」制度化。
    • 01年遠山プラン:「社会人キャリア・アップ100万人計画」(サテライト・キャンパス、eユニバーシティ、社会人向け短期集中プログラム)
    • 02年答申:長期履修学生制度の導入、通信制博士課程の制度化等を提言。
    • 05年答申:大学に求められる7つの機能の中に「高度専門職業人養成」「幅広い職業人養成」「地域の生涯学習機会の拠点」を指摘。
    • 06年教育基本法改正:第3条「生涯学習の理念」新たに規定。
  • 大学院の社会人受入
    • 1700研究科のうち831研究科で受け入れ。
    • ビジネス系16%、工学系11.2%、医薬系9.6%、その他で43%=要するにほとんどは多様な分野。
    • 受け入れ措置:夜間開講、土日開講、サテライト、長期履修など
    • 通信制(勤労学生に高等教育の機会を提供する目的ではじまったもの):社会人の再教育機関の役割を果たしているのが実態。98年修士、03年博士の通信課程制度化。背景に通信技術活用。01年全単位ネット取得可に。
    • 専門職大学院:4割が未充足。専門学校の大学院化批判あり。
  • 社会人学生
    • 00年→08年:院生増加1.3倍、社会人院生2.2倍、社会人院生割合10.6→20.4%
    • 修士では、工学、社会科学、教育系で多い。博士は医療系で多い。
    • 修士博士とも20代が多い。
  • 特色ある大学院
    • 筑波:夜間・土曜開講
    • 信州:インターネット大学院
    • 金沢工業:東京サテライト、1年制修士、夜間・土曜開講
    • 事業創造大学院大学:新潟・MBA
    • 日本福祉:夜間、名古屋駅サテライト、通信制
    • 広島:フェニックス入学制度(シニア世代の正規学部生)
  • 課題
    • 学費が高い
    • 学生が選ぶ要素:通学が容易、授業時間の適合性、土日休日開講
    • 工夫はしているが、まだ学習環境整備は十分ではない
    • カリキュラムと期待する人材育成内容が合致しない(工学系では企業と合同でカリキュラム開発する例もある)
    • 企業が学位取得を評価しない
  • 日本の生涯学習=生活を豊かなものとし、生きがいを見出す余暇活動であり、趣味教養的な側面に重点がおかれる傾向
    • ⇔ 職業人に必要な知識技能は、終身雇用のもとで大学教育より企業内教育で育成