- Q方法論:価値観を解明するアプローチ
- 人々の主観的な考え(価値観・世界観・事象への意味づけ)から主要な視点を相対的に明らかにする
- 視点を明らかにするためのアイテムセット(Qセット)を作成し、それを一定の分布に沿って並べるQ分類を参加者が実施する
- Q分類を通して量的データを収集し、そのデータから因子分析で主要な視点を抽出
- 参加者の主観的・一人称的視点の解明に用いる方法論(Watts & Stenner 2012)
- 因子分析の改良から出発
- 因子分析との違いを明確にするためにQの名称をつける
- 基本3手順:Q分類でデータ収集、因子分析、定性データ加味
- 変数による因子分析ではなく、人による因子分析
- 変数因子分析=R方法論:相関係数に基づく
- ↑ 個人を主体として定義できないと批判
- R方法論=個人が母集団から相対的にどういう位置にあったか、個人を構成する諸特徴の共変関係に注目、共変関係から普遍的な因子を導出
- Q方法論=個人の特徴そのものに関心を持つ、個人間の類似性・相違生の解明に焦点化、調査対象集団の特徴をうまく説明する類型を導出
- 扱う問いの3タイプ
- 代表に関する問い:特定の集団が当面する制度・文化的な状況において、ある問題やトピックがどのように理解されているのかを人々に問う
- 理解に関する問い:個人が有する意味のない実に焦点化、状況を明確にした上で、あるトピックや問題に関する個人の理解のあり方を問う
- 行為に関する問い:ある問題への応答のあり方を問う。いじめにどう対応すべきか、何が適切な行為と考えるかを問う
- 実際は、3つを明確に区別できないのでは?
- 調査設計
- 単一参加者デザイン:一人を対象にQ分類の実施を、異なる指示のもとで何度も実施する
- 多数参加デザイン:多くの人に同じ種類のQ分類を実施
- Qセット:各個人によって順位づけられたアイテムの相対的な位置に関心がある
- ⇔ R方法論=各個人の相対的位置に関心
- Pセット・Pサンプル:Q分類を実施する調査参加者セット、200あるいは40〜60
- アイテムは多くの場合、文章の形を取る、40〜80、表現が明快であること、否定的な表現を避ける
- Q分類:アイテムを参加者が一定の分布に沿って並べ替える作業
- 分布:最も同意する〜全く同意しない、1次元、0を含む±4、6、9、11、13段階分布
- アイテム数で分布幅変える:40以下=-4〜+4。60以上=-6〜+6、尖りすぎずフラットすぎないこと
- 馴染みのないテーマはどちらとも言えないが増えるので、0付近の幅を増やす
- 重要、重要でない、どちらとも言えないの3つから始める
- FlashQ、HtmlQ、Q-Assessor、Q-sorTouch
- 因子分析
- 結局普通に因子分析すればいいの?
- より解釈が容易な構造を得るために回転を行う(=ある因子について0か1に近い因子負荷量が得られるような操作を施すこと)、因子相互の相関を認める斜交回転を行ったほうが単純な構造を得やすい
- 各因子がどのような視点・世界観を表しているのかを推定する:単一の因子に対してのみ有意な因子負荷量を有するQ分類データの重みづけ平均を利用(二つ以上の因子に対して有意な因子負荷量を有するQ分類については交絡があると判断され、因子の推定には使われない
- 1%水準で有意な因子負荷量を有するQ分類を使いたい:因子負荷量の絶対値が、1をQセットのアイテム数の平方根で割り、それに2.58を掛けた値を超えるかどうかで判断
- 重みづけ:1) ある因子に有意な因子負荷量を有する各Q分類の結果に基づき、1から因子負荷量の2乗を引いた値で、因子負荷量を割る。2)そうして得られた値の中で最大のものの逆数をとる。3) 前2者の値を掛け合わせることで重みづけの指数を得る
- 指数を使って因子が示す視点・世界観の推定を行う
- アイテムを1から開始で得点化
- 特典と重みづけ指数を掛ける
- その値を標準化したZスコア作成
- Zスコアの高い順にQ分類分布の右端からアイテムをおいて文流を完成(因子配置と呼ぶ)
- 事後インタビュー
- 文流を終えて、各アイテムをなぜそこにおいたのかを明らかにする
- 結果の解釈
- 各因子の中で高位・低位のアイテム、他の因子より高位・低位のアイテムについて、インタビューで得た情報(+情報を得た人物情報:性別・年齢・仕事等のコード)を追記、各アイテムの中で解釈上重要と思われるアイテムについてストーリー化する
- 事例研究の2つの問い
- 一般の公務員はどのような仕事観を持っているのか
- 一般職公務員にとって理想の課長とは何を意味するのか
- Qセット作成
- 公務員の仕事に関する認識を解明するために有用と思われるアイテムを先行研究から100個収集 → 実務経験者助言を入れて包摂生・多様性・理解の容易さの3つを満たす47アイテム作成
- 例:仕事に新しい工夫を施すこと、注意深く仕事を進めること、仕事上の人脈を構築すること
- 20〜50代正規職員73名
- Q分類実施
- 2質問:「あなたが仕事を進める際のお考えについてお聞きします。」「あなたにとって理想的な課長像をイメージしてください。(実際に存在しない人物であっても構いません。)そのイメージされた理想的な課長像についてお聞きします。」+属性シート、ヒアリング協力可否
- 実施手順:
- 47アイテムのカードを問いに対して、重要性が高い・低い・どちらでもないの3山に分ける
- 高い山から、最も重要性が高いカードを2枚選び、5の列に置く、同様に4〜1列が埋まるまでカードを置く、0列にカードを置かない
- 低い山から、最も重要性が低いカードを2枚選び、-5の列に置く、同様に-4〜-1列が埋まるまでカードを置く
- 残ったカードを0列に置く
- 並べ終わった47枚のカードに書かれた番号を回答用紙に転記
- 最短19分、最長62分、平気31分
- データに因子分析
- インタビュー同意者12名に45分のインタビュー実施
- Q1:「~というカードからどういった状態や行動をイメージするか?」「その状態や行動はあなたにとってどれだけ重要か?それはなぜか?」
- Q2:「~から課長のどういった状態や行動をイメージするか?」「その状態や行動は課長にとってどれだけ重要か?それはなぜか?」
- 結果
- Q1:四つの仕事観の類型(調和型・堅実型・積極型・自律型)を提示
- Q2:二つの理想の課長像の類型(バランス型・モチベーター型)を提示
- インタビューで具体例提示
- 調和型=他者との協力、職場の一体感、相手の立場に立つことなどを特に重視する仕事観(異動で大きく異なる仕事をするため、相互支援・サポートが重要)
2025/02/27
林嶺那・深谷健・箕輪允智・ 中嶋茂雄・梶原静香(2020)「Q方法論 (Q methodology) の行政学への応用」『行政社会論集』32(3), 195-233
2025/02/26
箕輪允智(2023)「都道府県公務員の仕事観:Q方法論による主観性の解明と都市公務員との比較考察から」『自治総研』49(540), 1-34
- 公務員の仕事:担当業務の成果を直接感じる機会が少ない(特に広域になるほど)+職員価値観の多様化=動機づけ誘因の多様化 → 仕事への動機づけ確保が困難
- 官僚行動の第一の統制は、官僚が持つ価値観(Dahl 1970)
- 問い:都道府県の職員はどのような仕事観を有しているか
- 基礎自治体より広域自治体は仕事の抽象度が高い
- Q方法論:仕事観を捉えるといった、個人の主観性を含む価値意識を捉えることに適した調査方法
- 調査
- 「あなたが仕事を進める際のお考え」のQセット47項目
- Pセット119、事業系・管理系半数ずつ、一般職と管理職含む、ほぼ男性
- 配置図
- 47項目を重要度高・中・低に分類 → 各項目を配置図にあてはめ(=個人は強制的にアイテムに優先度をつける)→ +5と−5について、なぜそこに配置したかの自由記述
- 47項目の記述統計作成、Rのqmethodパッケージ、因子抽出Centroid法、バリマックス回転
- 4因子抽出:規範重視型、模範行動型、対人調和型、平穏着実型
- 各因子のzスコア高項目5つを提示、それぞれの自由記述併記
- 規範重視の人数が特に多い
2025/02/24
坂本辰朗(2021)「ファカルティ・ディベロプメントとは何であったのか」『学士課程教育機構研究誌』10, 5-18
- FD=成熟と学習の過程
- 教員の職能開発を訳すことは不適切
- Develop=自らの成熟と学習+他者の成熟と学習への働きかけ
- Developの対象=教員として大学の諸学務に関与する能力≠授業技術
- FD=一種の永久運動
- 常に新たな目標を生み出すシステムが必要
- FD=大学のミッション実現に努力することが最良のFD
- FDを永久運動であることを支える理論やパラダイムがない
- アメリカのFDの特徴=テニュア獲得を目指して研究と教育に関する能力を高める
- → 今のテニュア教員は約45%(=テニュア制度崩壊)
- ↑ 財政難が原因:予算がない=非テニュア教員で退職者を埋める(=大学の企業化:corporatization)
- UCの99〜09年:学生40%増、専任教員23%増、幹部職員97%増
- 実際は非テニュア教員にこそFDが必要
- 2010年代のFD関連業績は圧倒的に行動主義
- パラダイムシフト、学生中心、〜学習法
- → POD(2002)Guide to FD:教員が常にvital・flourishingであるための組織的な取り組み
- 半数が非テニュアなので、標準キャリアモデルは今や困難
- メンター≠アドバイザー → 利他性を追求した幸福な生を送るために何を行なっているかをアドバイスする人
- FDの研究・教育・学務の3つは不可欠・不可分
- 大学の抱える疑問にscholarly approachを維持する
- FDは教育活動
- 過度に学習の問題にし過ぎ(学習化:lernification)(ビースタ)
- ビースタの教育の機能:資質化・社会化・主体化
- 人間が生きるにあたって必要は資質をあたえること(知識・技能・理解)
- 人間が生きる特定の社会の伝統・慣習・規範に参加してふさわしい一員になること
- 社会への順応で人間が社会へ埋没することに抗う
- これは便宜上の区分で、ある教育活動が〇〇化にあたらない
- 行動主義は人間の中に起こっていることが見えなくなる
- 価値創造を目指すべき、創造された価値を目指してはいけない
2025/02/23
種子島健一(2017)「問題解決における不良定義問題への研究アプローチの 概観と展望」『九州大学心理学研究』18, 1-7
- 心理学の問題解決研究:良定義問題(well-defined)と不良定義問題(ill-defined)
- 不良定義:解決に必要な情報の欠如
- → 解決者自身が目標を決定し,可能な行動およびその妨げとなっている障害を発見することにより,欠如した情報を補填し,定義しながら問題解決を行う
- 洞察:諸情報の統合によって一気に解決の見通しを立てること
- 類推:先行経験から得られた知識を直面する問題に適用することで,問題を解決すること
- 不良定義問題=解決者の置かれた文脈で、解決のためにできる行動の定義が異なる
- →外的と内的の2つの文脈がある
- 外的:解決者が問題解決に取り組んでいる場所やその場に存在する物体などの物理的環境および他者存在や文化あるいは社会的役割などの社会的環境
- 内的:問題解決中の解決者に生じている感情状態および情動を含む身体情報としての生理的状態や身体運動
2025/02/22
橋本鉱市(2000)「文理学部の成立と改組」『学位研究』12, 115-129
- 学芸学部構想
- 高等学校と師範系学校を統合→学芸学部:一般教育・LA+教員養成
- 師範系は教員組織が脆弱→伝統ある高等学校と合併するメリット大
- →CIEが圧力:高等学校→文理学部、師範系学校→教育学部
- CIE=LAとして大学を統合すべき ⇔ 教員は専門教育が必要と反対
- 文理学部の曖昧さの根源はこれ
- CIEのLA、教育刷新委員会の学芸学部、高等学校希望の専門学部のいずれでもない
- → 一般教育の担当、自身が専門課程を持つ、教育学部と協力して教員養成にあたる、3つの重要課題を負わされた
- → 文法理の混在・齟齬が問題に
- 文部省の3原則:予算増・定員増・学部増を認めない=文理学部改革は手詰まりに → ベビーブームでその後原則は放棄 → 教養部を含む複数学部への分離独立が実現(法文・人文+理+教養)
- 理は独立を果たしたが、文法は独立できなかった(その後の改組圧力につながっていく)
2025/02/13
岡本能里子(2018)「ルート・ヴォダック,ミヒャエル・マイヤー(編著) 野呂香代子(監訳) 『批判的談話分析入門 ―クリティカル・ディスコース・アナリシスの方法̶』 三元社,2010」『社会言語科学』21(1), 392-396
- 批判的談話分析:言語語を「社会実践」とみなし,支配や抑圧などの社会現象や社会問題に関わる談話に焦点を当て,そこに埋め込まれた言語と権力の関係を明らかにし,社会問題の解決を目指すアプローチ
- アプローチ≠方法論
- 前もって関心を社会問題に限定する、差別を受けているグループを擁護する役割を担う
- 発信された静的な談話の意味や真理の追求が目的ではない
- 不平等な権力関係を内包した談話を批判的に分析する
- 社会問題の定期・解決を通した社会変革を目指す
- 分析対象は社会的権力を持つ人による支配・被支配のイデオロギーが自然な形で埋め込まれた談話(新聞、テレビ、CMなど)
- イデオロギー:権力や支配関係を構成し、再生産させる観念体系
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