2019/08/29

東北大学高度教養教育学生支援機構(2019)『大学入試における「主体性」の評価: その理念と現実』東北大学出版会


  •  主体性に関する概念:人はいかに主体性を持つのか=アイデンティティ(同一性)、人はいかに主体性によって行動するのか=動機づけ。
  • 動機づけを把握する方法:行動観察、他者評定、自己報告。
    • 最も直接的な方法は行動観察と他者評定。
    • →調査書は適切な主体性の評価方法。
  • アイデンティティの2つの側面:(1)斉一性(現在の自分がまとっている感覚)と連続性(過去から未来へ続いている感覚)、(2)役割実験(理想の自分の定義を他者に対して試して認めてもらう。
    • 2つが絡み合うことで全体感情としてのアイデンティティ感覚が形成される。
  • 主体性を動機づけと捉えれば、筆記試験の得点にも主体性が反映される。
  • 学力:学んだ力と学ぶ力に分類できる(市川 2004)。
    • 学んだ力:知識の量、論述力、批判的思考力、問題解決力
    • 学ぶ力:学習意欲、学習計画、持続力
  • 自己調整学習:学習者が自分の学習プロセスを能動的に調整していくこと(犬塚 2017)。
    • 予見、遂行、自己内省の3段階で構成される循環的プロセス。
    • 主体性は自己調整学習という観点で捉えることができる。
    • サイクル循環で重要なのは、学習方略(認知的方略、メタ認知的方略、リソース管理方略)、課題価値の認知、エフォートフルコントロールの3要因。


    • ストレスフルな状況やネガティブな感情が喚起される状況でも自身を制御して学習に取り組むことは主体的な学習の一側面。
  • 主体性の問題を考えるには、特性レベル(特定場面・領域を超えた一般的傾向)と領域レベル(分野や領域の内容に即したもの)について考える必要がある。
    • 数学では自己調整学習をしても英語では自己調整的でないなど。
  • 主体性評価のアプローチ
    • 結果に注目 VS プロセスに注目
    • 分析的(複数観点で構造化して評価)VS 総合的(緩い構造化で1つの観点で評価)
  • 調査書の活用は歴史的には高校が望んだもの。しかし、現場の教員から調査書の積極的利用は望まれていない。
  • 調査書が入学選抜に活用されない理由:(1)学校によって評価基準が異なる、(2)同一学校でも教師によって評価基準が異なる、(3)学校差が現存しており相互の比較が困難である、(4)卒業年次によって評価基準が異なる、(5)そぐ長後の学力変化が認められない。

2019/08/28

鈴木竜太・服部泰宏(2019)『組織行動』有斐閣


  • 組織メンバーに求められる3つの行動:参加(いつづける)、役割内行動(役割を果たす)、役割外行動(役割を超えた行動)。
  • 組織行動論の学び方:(1)複数の理論をつなげて考える、(2)具体的な事象と理論をつなげて考える。
  • モチベーション:目標に向かって努力し、その達成を目指そうとする心理的エネルギー。
    • ワークモチベーション:個人の内部・外部にその源を持つ一連の心理的エネルギーの集合体で、仕事に関連する行動を始動し、その様態・方向性・強度・持続性を決定づけるもの。
  • マズロー:わかりやすいから受け入れられやすいが、必ずしも人の欲求は階層的ではない(その後の研究でも支持されていない)。
    • 生存が脅かされても尊厳を守る行動をとる人はいる。
  • マクレランドの3+1欲求分類:パワー、親和、達成(回避)
    • パワー:他者に影響を与えたい、コントロールしたい。
    • 親和:友好的で親密な人間関係を結びたい。
    • 達成:困難に挑戦し、成功の喜びを味わいたい。
    • 回避:達成の裏、失敗や困難を回避したい。
  • 外的報酬:2つの機能がある。
    • コントロール機能:人を動機づける
    • 有能さのフィードバック機能:有能であることをその人に伝達する
    • 前者<後者ならアンダーマイニング効果は緩和できる
    • → 外的報酬は与えられるか否かではなく、どのように与えられるかが重要
  • 内発的動機づけをもたらすもの:有能感と自己決定
  • 公平理論:過小報酬に不公正を知覚しやすいが、過剰報酬は知覚されにくい。
  • 手続き的公正の6つの基準:一貫性、偏見の抑制、情報の正確さ、修正可能性、代表性、倫理性
  • チームの業績を評価するポイント
    • チームとして達成すべき点を明確に示す
    • チームの顧客ニーズや業務プロセスに関連付けて評価する
    • チームの目標達成に関連した個々人の業績も評価する
  • チームにインセンティブを与える方法:プロフィットシェアリング、チーム業績奨励給制度。
  • リアリスティックジョブプレビューが機能する条件:労働市場が買い手市場である、競争率が高い、仕事の内容がわかりにくい・見えにくい。
  • 組織社会化=6+1つの側面について個人が理解していくこと
    • 仕事に関するスキルや知識
      • 仕事上のパフォーマンスの向上(仕事上の課題をどのくらい深く学ぶか)
    • 組織文化
      • 人間関係(他のメンバーとの間に十分な人間関係をどの程度確立するか)
      • 政治(組織内の権力構造に関する情報をどの程度持っているか)
      • 言語(職業に関する専門用語や所属集団に特有の俗語をどの程度理解しているか)
      • 組織の目標と価値観(組織の持つ目標や価値観をどの程度理解しているか)
      • 歴史(組織の伝統・習慣・神話・儀礼を含む歴史的なことをどの程度理解しているか)
    • 心理的契約
      • 組織から求められる役割
  • メンバーによる組織社会化
    • プロアクティブ行動:情報収集をしたり、既存メンバーとの関係を自ら構築する行動。
    • フィードバック探索:自分に割り当てられた仕事に対するフィードバックを求める探索を行うほど、パフォーマンスが高い。
    • しかし、これは必ずしも容易ではない。
      • 探索コスト(誰からフィードバックをもらえればいいかわからない)、対面コスト(その時間的余裕がない)、探索と実行のコスト(耳の痛いフィードバックを受け止めたり行動に反映させる負荷)。
  • 社会による組織社会化:入職前から受け取る情報(今年は売り手市場、ある企業の悪い噂など)。
  • 社会化過剰=過剰な社会化で個性が犠牲となり、組織の変革やイノベーションの芽が摘まれてしまう状態。
  • 組織社会化段階の新人がクリアすべきキャリア発達上の5課題
    • 組織の現実を受け入れる(欠点も含めて受け入れる)
    • 新しいやり方に対する抵抗に対処する(自分が正しいと思うことが通らないことを理解する)
    • 働き方を学ぶ(曖昧さ・複雑さ・不条理を学ぶ)
    • 上司との付き合い方と評価の仕組みを学ぶ
    • 組織における自分の位置を定め、アイデンティティを確立する
  • 心理的契約の4要素:個人の信念である(期待を抱けば契約が成立する)、合意が成立しているという認識、項目・中身が大事、互恵的な交換関係を期待する。
  • フォロワーに対するリーダーの行動は大きく2つしかない:人間関係志向行動とタスク志向行動。
  • 期待理論:報酬の価値、成果と報酬の関係、努力と成果の関係の積で決まる。
  • パス・ゴール理論:リーダー・フォロワー関係に2つの前提を置く。
    • リーダー行動が受け入れられるのは、その行動がフォロワーに満足をもたらすとわかった時。
    • リーダー行動が動機づけになるのは、それが仕事の達成を通じて部下を満足させるか、部下の仕事の達成を妨げる状況を補完する時。
  • リーダーシップ理論のまとめ:
    • 古典的理論=個人に働きかけることで成果を上げるリーダーシップ。
    • 期待理論・パスゴール理論=フォロワーが特定の行動を起こすことで得られる報酬への期待を高めることを通して、役割内の行動につなげるリーダーシップ。
    • →どちらも個人に働きかけるリーダーシップ?
  • 組織に働きかけるリーダーシップ:変革型・カリスマ型リーダーシップ
    • 行動特性=高い目標の設定、イメージ形成(リーダーを特別な人と思わせる)、モデリング行動(価値観を反映した模範を示す)、モチベーション喚起(高い目標を受け入れやすくする態度をつくる)、コミュニケーション(高い目標は達成できるという自信を与える)。
  • カリスマ型リーダーシップの5つの特徴:強い自信、ビジョンを設定する能力、リスクがあってもビジョンを追求する意思、型にはまらない戦略の採用、変革エージェントとしてのイメージ。
  • 交換型リーダーシップ:フォロワーの欲求に応じた報酬に基づいて動かす。
  • 両者を包含する=フルレンジ・リーダーシップ(7要素)
    • 変革特徴:カリスマ、理想化された影響、鼓舞する動機づけ、知的刺激、個別配慮
    • 交換特徴:業績に基づく報酬、積極的な例外管理
  • 7要素を何もしない=自由放任型リーダーシップ
  • リーダーシップの2つのモード:フォロワーには、受動的と能動的がいる。
    • 支配的定義(受動的なフォロワーを想定):リーダー=ビジョンについてこさせる、フォロワー=ビジョンに無批判についていく
    • ハイフェッツ定義(能動的なフォロワーを想定):リーダー=フォロワーがそれを自分のビジョンだと思うようにお膳立てする、フォロワー=自分なりの考えで選び、能動的にビジョンの軸に加わる
  • フォロワーに適応を促す6つのリーダーシップ
    • バルコニーに上がる(フォロワーに全体を俯瞰させる、リーダーはバルコニーから降りる)
    • 適応への挑戦を見極める(挑戦に値する状況にする)
    • メンバーの苦痛・苦悩を調整する
    • 鍛錬された注意力を持ち続ける
    • 仕事の責任を人々のもとに戻す
    • 組織の中からやがて聞こえるリーダーシップの産声を守り育てる
  • 従来理論=リーダーがフォロワー集団に等しく影響を与える(平均的リーダーシップスタイル)
    • → 関係は1対1ではない=リーダーシップの交換関係アプローチ(Vertical Dyad Linkage, Leaer-Member Exchange)
    • さらに、フォロワー同士の関係を考慮する=相互作用アプローチ(リーダーに目をかけられなかったメンバーがモチベーションを下げるなど)
  • 状態推定問題:推測によって何らかの値を求める問題→複数人の集団による推定は、ここのメンバーの大半より常に正確。
    • これには集団内に5つの多様性が必要:知識の多様性、視点の多様性、解釈の多様性、問題解決方法の多様性、予測モデルの多様性
  • 協働には3つある
    • 加算的協働:メンバーの貢献が単純に加算される(状態推定問題、募金を集める、多くのアイディアを出す)
    • 連接的協働:全員が達成しなければ集団として達成したことにならない(チームスポーツ、合唱)
    • 離接的協働:メンバーの誰かが達成すればそれが集団の成果になる(集団で問題の正解を出す)
    • 加算的ならメンバー間の連携や調整は不要、連接・離接なら貢献の調整が必要。
  • 連接的・離接的協働の問題
    • 集団圧力:集団の規範や意見に同調する圧力がかかる
    • 集団浅慮:深く考えないまま決定され、訂正されにくい
    • 社会的手抜き
  • 集団圧力・集団浅慮に陥る5つの理由
    • マネジメント問題
      • 集団の孤立化(外から独立していて影響を受けにくい)
      • 手続きについての規範の欠如(最終決定を行う方法のルールがない)
    • 多様性問題
      • 凝集性が高い(メンバーの団結が強い、相互愛着が強い)
      • バックグラウンドが同一(考えが似て衝突せずに意見を合わせる)
    • リーダーシップ問題
      • リーダーシップの欠如(強いリーダー不在で議論が勝手な方向へ流れる)
  • 問題の解決
    • 加算的協働:メンバーを十分多くする、独立して作業する
    • 連接的・離接的協働:集団と外部をリンクさせる、決め方のルールの設定、多様な価値観を持ったメンバーの取り込み、強いリーダーシップの設定
  • 組織内の3種のコンフリクト
    • タスクコンフリクト:仕事内容や目標多声に対する考え方の違い。
    • プロセスコンフリクト:仕事の進め方や裁量権限の対立。
    • 感情のコンフリクト:好き嫌い・人間関係
    • (1,2は生産的コンフリクト、3は非生産的コンフリクト)
  • 交渉場面の7つの落とし穴
    • 不合理なこだわり(自分の過去のやり方などにこだわる)
    • パイの総量に関する固定観念
    • アンカリング効果
    • フレーミング作用(どのような形で情報が提示されるかに必要以上に影響を受ける=人はリスクに感応的)
    • 情報の入手しやすさの罠(より重要で質の高い情報を見逃す)
    • 勝者の呪縛
    • 自信過剰
  • 目標の二重性:組織目標と個人目標は一致するとは限らない←マネジャーはバランスさせることが役割(リーダーシップと組織コミットメントで調整する)。
  • 組織コミットメントの3モデル
    • 情緒的コミットメント:組織やメンバーへの感情的愛着、組織に対する同一化や一体感
    • 規範的コミットメント:組織に居続ける義務感、忠誠心、恩義
    • 継続的コミットメント:組織を去るデメリット、居続けるメリット、代替的選択の欠如
    • (これらが参加、役割内行動、役割外行動を引き出す)
  • 強い組織文化や価値共有でコミットメントを引き出す
    • 組織文化=メンバーに共有された価値観・信念・行動規範のパターン
    • 組織は文化を保存したがる
      • 組織に惹かれてエントリーする(魅了)→均質化した人をピックアップする(選抜)→異なる価値観がはじかれる(淘汰)
  • 社会的アイデンティティー:ある社会カテゴリのメンバーであるという形で成立する自己意識。
  • パーソナリティ:人の行動や思考の前提にあり、それに強い影響を与える内面的な特性 ⇔ 自分の視点から見た自分らしさがアイデンティティ
  • 組織アイデンティティ:我々らしさはなにか、我々は何者かに関するメンバーの自己認識
    • 中心性(当該組織の本質的特性に関わる)、独自性(他の組織と比較して際立っている)、連続性(持続している)の3基準を満たすもの。
    • あくまでメンバーの認識に注目している(認識していなければアイデンティティにならない)。
  • 組織に基づくアイデンティティ:メンバーがその組織らしさから強い影響を受けて形成するアイデンティティ。
  • 組織イメージ:組織外の第三者が組織に対して持つイメージ。
    • これがメンバーに認識され、組織アイデンティティに取り込まれると、イメージがメンバーによって文化に取り込まれる。
  • 組織アイデンティティは、メンバーの情報処理や解釈に影響を与え、メンバーのものの見方を決定する。
    • センスギビング(意味提供):組織アイデンティティによってメンバーの組織に対する理解が形成され、情報処理や行動が方向づけられること。
  • 組織アイデンティティの呪縛:かつて合理的でメリットをもたらした組織イメージが、有効性を失ったり陳腐化した時に、そのイメージにしがみつくこと。

2019/08/24

ロバート・キーガン,リサ・ラスコウ・レイヒー(2017)『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか ―すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる』英治出版


  • 組織に属している人の多くは、本業とは別のもう1つの仕事(自分の弱さを隠すこと)に精を出している。
  • 発達指向型組織(Deliverately Developmental Organization):組織文化を通じて人々の成長を支援する組織。
  • DDOは、ビジネスで成果を上げることと、会社の仕事を通じて人々が成長するという2つの目標が一体化している。どの組織も、一般的な組織における最も基本的な約束事、すなわち私的なことと公的なことは分離すべしという考え方を覆している。
  • Developmentは、社員のキャリアの発展ではなく、社員の人間としての発達に注目し、組織を大きくすることより組織をよくすることをまず考える。
  • 大人の知性には3つの段階がある。
    • 環境順応型知性:重要人物の意向に反しない、好ましいと考える環境に自分を合わせることが、一貫した自我を保つ上で大きな意味を持つ。そのため、情報に対してきわめて敏感でその影響を受けやすい。→集団浅慮になりやすい。
    • 自己主導型知性:常に何らかのゴール、目標、基本姿勢、戦略、分析を持っていて、それがコミュニケーションの前提になる。受け入れる情報の選別フィルターを持つが、自分が求めるものや自分の目標・計画に関連が見出せるものだけを選ぶ。そもそもの計画に欠陥があったり、フィルターが重要な情報を排除すると深刻な結果になる。
    • 自己変容型知性:フィルターと自分が一体化しておらず、フィルターそのものを客観的に見ることができる。
  • ミッションステートメントを掲げる組織は多いが、それを支えるエコシステム(=そうした価値を具体化し、方向付けるための仕組み、慣行、ツール、共通言語)がなければ、望ましい組織文化の推進材料ではなく、空疎はお題目になる。
  • DDO組織の実践に共通する5つの要素
    • 人の内面の要素を外に引き出す
    • 業務を自己改善に結びつける
    • 物事の結果ではなく、その結果を生むプロセスに目を向けるよう促す
    • 新しい枠組みを生むための用語を使う対話を重視する
    • 全ての人が組織全体の背伸びに取り組む
  • 組織に蔓延する2つの問題
    • 自分に対して他人が抱くイメージをマネジメントするために時間を費やすこと
    • 同僚同士の陰口を言うこと