2011/03/03

金井壽宏(2004)『組織変革のビジョン』光文社新書161


  • 組織変革は組織を変えること,そのためにはそこに参加している大半の個人の発想や行動が変わることと定義する。組織が変わるは主語が違う,あなた自身が変わるかということ。
  • それを確認するための問い:(1)組織にミッション・ビジョンがあるか,(2)それは組織・あなたにとって必要か不要か,(3)必要ならそれは何か,言葉にせよ,(4)それはわかりやすいか,思い浮かべると心躍るか,(5)普段から口にしているか,口にすると目指したくなるか,(6)ビジョンはビジュアルか(具体的な姿を語っているか),(7)組織の変革の姿を家族に語っているか,(8)そのために歩むべき自身の一歩を日々確認しているか。
  • 10年目社会人は自分∈会社の図を書くが,大学生は大学∈自分という図を書く。
  • 組織文化を理解する3レベルは,文物(像,額,写真,巻物),価値観,仮定(DNA)。DNAはどんなに組織が変わっても変わらない部分があった方がいいという考えと,DNAレベルの仮定が環境に合わなくなったことをいち早く見抜く2つの考えが重要。
  • 個人と組織は心理的契約。アメリカでも組織と個人の関わり合いを定める雇用契約は本質的に心理的なものとして経営学では扱われる。
  • いくつになっても無能レベルに達した(ピーターの法則)という認識を持ち,次のレベルへの挑戦が始めることが必要。厳しくて目をそらしたい現実から決別して挑戦することが,一皮むける経験につながる。
  • 人から成り立つシステムを理解する最良の方法は,それを変えてみること(レヴィン)。変革の地図を手に入れるために変革がいる。アクション・リサーチの重要性を示す言葉。
  • 適応は周りにあわせることで,過ぎると自己実現にはマイナス(マズロー)。適応と適応力の違いを知ることが重要(現在の仕事の合理化が適応,全く違う事業でやっていくことが適応力)。
  • 「仕事上,例外的によかった体験」「例外的に悪かった体験」を聞いた研究(ハーズバーグ)。前者は,達成,達成の承認,仕事そのもののあり方,大きく任された責任があがる。後者は,監督のあり方,上司同僚との人間関係,福利厚生,作業条件など仕事を取り囲む要因。
  • 組織をよくする特効薬はない。もしあったら,よい組織ばかりになる。変革のドラマは決定論的モデルに規定されるルーチンではないが,プロセスモデル(綱好きの石8つなど)にはある程度意味がある。
  • 変革はきちんと終えることから始まる。トランジションには終焉,中立,開始の3ステップがある(ブリッジズ)。目指す先が何かを示すだけで,何が終わるかを強調しないと,未練がいつまでも残る。
  • 変革への抵抗は起こって当然。変革の結果,大きな影響を被る人を個人・グループで変革が始まる前に参加させることが重要。
  • 無力感は学習されるもの(犬の電気ショック実験)。やる気のあるミドルが大きな変革を志すほど,変革の大きさに比例した反対に遭い,無力感を獲得してしまう。
  • Learning Anxiety<Survival Anxietyの重要性。LAを下げる知恵を経営者は働かせるべき。新しい世界に入るときに,ちょっとおもしろそうという気持ちをもたせた方が,緊張感や危機感をあおるだけよりもスムーズ。
  • マネジメントとリーダーシップは違う。マネジメントの世界は,誰が上司部下で何をやるかが決まっているが,リーダーシップは何をなすべきかを仲間と一緒に自分も考え,誰を巻き込むかも自分で決めることにある。
  • 経営学では見落とされがちだが,エモーションへの対応はきわめて重要。ポリティカルな行動が必要であることを知っておくべき。
  • 変えようと思えばビジョンがいる。変革には危機感だけでなく,ビジョンや地図が必要。人々を鼓舞するビジョンを作った人たちは権威たちの指南ではなく,個人的で自分自身の欲求,期待,希望,夢を表現したビジョン。
  • ビジョンを変えていきたい姿としてビジュアルに描くには,言葉で表現しなければならない。人を巻き込むためには言語化能力がないと優れたビジョンに人はついてこない。業務的スローガンでなはく,腑に落ちる(sense making)ビジョンなら受け止め方は変わる。
  • 計画のグレシャムの法則:目の前の対応や処理が節目で描く大きな絵の計画作りを駆逐すること。それでも大きな計画を持っていれば,忙しくても大丈夫になる。
  • ビジョンは組織の節目で編み直されても,ミッション(アイデンティティ)が揺れては困る。