2011/08/19

モーガン・マッコール(2002)『ハイ・フライヤー』プレジデント社


  • リーダーシップは,課題に挑戦し,卓越した人々と接触し,苦境や失敗を乗り越える経験を通じて学ぶことができる。リーダーが学ぶことは異なるが,どのように学ぶかは変わらない。
  • 人を育てるとは,経験からどのように学ぶか,経験をどのように利用するか,能力が高い人材に何を学ばせるかということを,事業戦略と結びつけて考えることを意味する。
  • リーダーのコンピテンシーは経験の積み重ねから得られるものであり,祖先から受け継がれるものではない。潜在能力とは持っている資質ではなく,将来に必要な資質を習得する能力である。リーダーにとって重要なことは,事業戦略遂行上の障害を乗り越えるために,いかに備えるかということである。
  • リーダーシップ開発は,他の人事制度以上に事業戦略に密接に関係し,事業戦略によって推進されなければならない。それを理解するために,次の疑問に応える必要がある。
    • 人材開発をどのような文脈で実施することが重要なのか。
    • 経験で開発されるとしたら,どのような経験が重要なのか。誰がそれを教え,どのように教えるのか。
    • 有能な人に成長を促す経験を与えても,経験から学んでくれる保証はない。学ぶべきことを学ぶ学習機会を増やすために何ができるのか。
  • 脱線のダイナミクス:(1)ある人を成功に導いた強みは,他の強みの方が重要になると弱みになることがある,(2)以前は問題とならなかった弱み,強みや業績に隠れていた弱みが,新たな状況では重要な問題になる,(3)成功によって天狗になり,他人の助けは不要という謝った信念が生まれる,(4)個人と関係ない運命による脱線。
  • 成功した経営幹部にとって,最も成長が期待できる経験は挑戦であり,そのほとんどが逆境のとき。その経験の要素には,上司・関係部署との難しい関係の対処,リスクが伴う仕事,過酷な環境へ直面,視野・規模が複雑な状況への対処,専攻と違う仕事,必要なスキルや資格を身につけていない,突然の異動などがある。
  • 16の成長を促す経験
    • 課題:初期の仕事経験,最初の管理経験,ゼロからのスタート,立て直し,プロジェクト・タスクフォース,視野の変化(管理人数・予算・職域が増える),現場ラインから会社スタッフへの異動
    • 他の人とのつながり:ロールモデル,価値観
    • 修羅場:事業の失敗とミス,降格・昇進逃す・惨めな仕事,低業績部下に直面,新しいキャリア挑戦,個人的なトラウマ
    • その他:コースワーク,仕事以外の経験
  • リーダーシップ特性のビッグファイブ
    • 外向性:口数が多い,積極的,活動的 ⇔ もの静か,消極的,控えめ
    • 人当たりの良さ:親切,信用,思いやり ⇔ 敵意,利己的,不信感
    • 誠実さ:秩序がある,徹底的,責任感 ⇔ 不注意,怠慢,無責任
    • 安定した感情:感情の安定 ⇔ 神経質,きまぐれ
    • 経験に開放的:想像力,好奇心,創造性 ⇔ 表面的,無関心
  • 経営幹部の早期識別に関する11次元:(1)学習機会を追求する,(2)誠実に行動する,(3)文化の違いに適応する,(4)変化をもたらすことにかかわりあっていく,(5)広範囲の事業知識を追求する,(6)人の最も優れた部分を引き出す,(7)洞察力がある,新しい視点で物事を考える,(8)リスクを冒す勇気を持つ,(9)フィードバックを求めてそれを利用する,(10)失敗から学習する,(11)批判に耳を傾ける
  • リーダーシップ開発の3原則:(1)困難な経験が人材開発の原動力になる,(2)その経験は事業戦略と企業の価値観で決まる,(3)経験を積むべき人はそこから最も多くのことを学習できる人。経験の多くは配属先次第なので,誰がどの仕事に就くかが中心的課題。
  • 人材開発を高めるには,勤まりそうな人,少しのびると勤まりそうな人,勤まりそうもない人のリストを作ることが大事。
  • ある職種のスペシャリストになるということと,経験から学習することは一致しない。成長を最大にするには,これまでしたことのないことを行い,どうすればうまくできるかを学ばなければならない。
  • 結局,適切な時期に,適切な人物に,適切な場所を与えられるかどうかは,トップが有能な人の開発に対して進んで責任を持てるかということによって決まる。
  • リーダーシップ開発モデル
  メカニズム  事業戦略
  ↑   ↓ ↓    ↓
才能 + 経験  =  リーダーシップ
       ↓    ↑
        触媒

  • コアコンピタンスがはっきりしている会社は,ビジネスの専門家を輩出する生涯発達スクールである。OJTは何もしない,放任を覆い隠す便利言葉になっていた。リーダーシップ開発こそがOJTの中心的テーマという発想が少なすぎる。
  • 本書の意味は,(1)人は幹部に至るまでいくつになっても発達するという基本発想,(2)リーダーシップという観点から人を育てるのは経験という視点,(3)だからといってラインに放置するのではなく,経験を系統立てる方策を追求,(4)ラインのマネージャ,人事部,経営者の役割を人材開発という面から照射,(5)経験が大事というのを前提に研修の意味を再探索,にある。