2011/03/04

吉田典生(2009)『なぜ,「できる人」は「できる人」を育てられないのか?』日本実業出版社


  • できる人は,価値ある存在として期待されるが故に,できる人であることを求められ,本人も期待に応えるために全力疾走する。できない人は,できる人を横目に無力感や疎外感を味わい,自分を卑下するようになる。ますます,両者の格差は広がり,できる人の負担感が増す悪循環となる。
  • できる人は,やれば結果が出そうだという感触を速やかに抱ける。好ましいゴールを生き生き描く心理的プロセスこそにがんばれる理由が潜んでおり,がんばったから結果が出たという結果論をまとめてはいけない。
  • できる人が率先して答えを出していくと,周囲は答えをもらうことに慣れていく。これを受け身と非難するのは簡単だが,その状況を作り出しているのは当のできる人。できない人もたいていは勤勉な日本人で,自分なりに役割を果たそうともがいている。
  • コンピテンシー論の問題は,行動に至る固有の動機を考慮していないこと。できる人がなせそれを「いきいき」するかという理由が無視されている。その行動が大事だと頭でわかっていても,それが自分らしい行動と思えず,行動から生まれるものが苦痛やプレッシャーになる。コンピテンシー論を人材育成に活かすには,行動を生み出す内面的な動機に目を向けなければならない。
  • 目標は到達できる手応えがあるからこそ,厳しくても燃えることができる。この困難さのレベルは相対的なもので,目標はできない人にとって時に弊害となる。
  • 生活の糧のために仕事に誠実に取り組む人が多くおり,それはできる人・できる人になる可能性を持つ人。できる人のワークライフバランスに沿った仕事の進め方や風土が,できない人の成長を阻んでいる可能性がある。
  • できる人の自分のプラス面は,他社批判をすることで自分を正当化する罠になりやすい。
  • できない人は,自分をどこまで追い込めるか,どこが限界なのかをなかなか理解できず,自己認識が甘い。よって,目標を挟んで,できる人とできない人の葛藤が起こる。目標が悪いのではなく,目標とのつきあい方の違いに目を向けないことが問題。できる人は,目標という概念にポジティブな印象を持つ分,できない人を目標によって無力化させることがある。できない人をゴールに到達させるには,プロセスの見える化が必要。目標が明確になれば動機づけられるという短絡的な理解がそれを阻む。
  • できる人ができない組織を作る要因は,(1)単純な目標信仰,(2)低次元なことを低次元だと軽くみること(普遍的な低次元などなく相対的な問題で,何をどのくらい吸収するかはできない人の中にある),(3)できる人の頭の回転にあわせて指導すること(人間は受け取る準備ができた分だけ自分の中に取り込むことができる)。
  • できる人とできない人の間の大きな溝は,自己信頼の度合い。これがコミュニケーションの違和感をもたらす。
  • できる人は,失敗をHow(いかに~するか)でとらえ,できない人は失敗をBecause(~だから無理)でとらえる。
  • できない要因は,技術や方法論の欠落とは限らない。基本的な心得はあったとしても答えは1つでなく,最後は当事者が自分で見いだすしかない。プッシュ型の指導ではできない人を引き上げることは不可能。
  • リソースの棚卸し10のステップ:ハイポイント・インタビューの項目として使えそう
    • (1)あなたが持っている技術・知識
    • (2)それらの技術・知識を手にする仮定で得たもの(習慣,学習パターン)
    • (3)それらの技術・知識を手にした結果として得たもの(地位,誇り,自信)
    • (4)あなたが持っている成功体験
    • (5)その成功体験の過程で得たもの(人脈,不屈の精神,偶然の機会)
    • (6)その成功体験が今の自分に及ぼしている影響や与えた価値
    • (7)あなたの中にあるやる気の種
    • (8)やる気の種をまいて咲かせる未来の花のイメージ(新しい役割や仕事)
    • (9)もう1つの未来の花のイメージ
    • (10)あなたの次のステップを約束してくれる鍵
  • できない人と接する際に,その人が今していること(Doing)以外に,今感じていること(Feeling)と人としてどうなのか(Being)に関心を持って接する。
  • 影響力の6つのレベル:命令,指示(以上,強制介入),要求(判断の余地を与える),提案,意見(以上,助言して判断させる,委任。
  • コーチ型マネジメントの基本
    • (1)管理統制的な接し方と自立支援的な接し方の2つの対話力を身につける。
    • (2)部下の状況に適応する接し方を特定する診断力を身につける。
    • (3)部下と話し合い,合意して新たな関係で進む協働力を身につける。
    • (4)部下の状況変化を見定め,診断と協働を繰り返す変化適応力を身につける。
    • (5)時代に介入を減らし,自立を促す開花支援力(Enpowerment)を身につける。
いろいろできない人の特徴を冗長に説明しているが,結局は傾聴重視(できない人目線)のコーチングで育てろという要旨。