遠田雄志(2005)『組織を変える“常識”』中公新書
- 組織の特徴は,規律性と持続性。組織では個人の行為は,共同して行動するために良くも悪くも調整される必要がある。組織では,メンバーの顔ぶれが変わっても,共同行動が維持されていなければならない。
- もう1つの特徴は,適応性。組織は環境の変化に応じて長期にわたって存続・成長しなければならない。適応は,認識・意志決定・行為という3つの活動のサイクル津を繰り返して行われる。
- 組織では,コミュニケーションによって個々人の持つ意味世界が共有される。組織が共有する意味世界は,関与する人々の交代で左右されない頑健性があり,これが組織の必要十分条件である。
- 私見(Private sense):個人の意味世界,互解(Mutual sense):私的コミュニケーションを通して共有された意味世界・仲間内の共有意味世界,常識(Common sense):公的なコミュニケーションや教育を通して伝えられる意味世界・カルチャー。
- 個人の意見が常識を覆す力がないのは,私見が客観性が低いため。異論や批判も常識の対立とならない。常識に対立するのは互解であり,それには共鳴する仲間がいなければならず,常識の持つ強制力以上の説得力・魅力を有していなければならない。
- 互解は不安によって形成される。常識が予想外の結果をもたらす時に,不安が増大し,互解の形成を促進する。
- ただし,互解は自動的に常識とならない。不安は未練によって,常識に引き戻される。また,互解は臆病によって不安へ引き戻される。この2つのハードルを乗り越えて,互解は常識へ形成される。
- 未練とは,不安が増大しても,とりあえず今の常識に依拠してみようというもの(ex. 過去の成功体験にとらわれる),臆病とは,今の常識が互解の軽々しい増加によって疑われたり批判されたりするのを防ぐもの(ex. 出る杭は打たれる,不確実なことにかかわらない)である。未練の多い組織はなかなか互解が形成されず,臆病な組織は優れた互解でもなかなか伝播せず実験・実現されない。組織の革新とは,新しい常識がその信頼性を確立するまでの期間であり,確立されたものであるほど未練と臆病のハードルは高くなる。
- 戦略的意志決定とは,依拠すべき常識がなく,その決定の結果を予測することも評価することもできない状況で行われる。常識の中で行われる意志決定は戦術的意志決定である。前者の意志決定はゴミ箱モデル,後者の意志決定は合理モデルである。
- 未練で臆病な組織は鈍重型,淡泊で臆病な組織は慎重型,未練で大胆な組織は試行型,淡泊で大胆な組織は性急型と,4分類できる。
- 互解は組織が適応する上で不可欠で,互解の形成次第で組織の適応が決まる。よい互解の形成につながるコミュニケーションは,よい組織メンバーが,開かれた人間関係の下で,豊富な語彙を駆使して行うという3つの特徴がある。
- レトリックは,新しい視点や認識を喚起し,世界を一新する力を持つ。レトリカルな表現のためには,語彙が豊富でなければならない。組織が語彙を豊富にし,レトリカルな表現に努めるようになると,組織の視野が広がり認識も良質になる。
- コミュニケーションは,教育に代表される公的なものと,インフォーマルグループ内や派閥で行われる私的なものの2つで構成される。
- よき互解の形成はしっかりした常識から生まれる。初中等教育では常識を,大学教育は互解の形成に注力すべき。