安部悦生(1997)『ケンブリッジのカレッジ・ライフ』中公新書
- イギリスの大学は事実上全て国立で,教員は実質的に国家公務員である。しかし,カレッジは独立採算の私立である。大学全体としては,国立大学と私立のカレッジの混成物である。教員は公務員として学部に所属すると共に,カレッジにも所属する。前者は税金で賄われる組織,後者は(学生数に応じた補助金があるが)独立採算。
- 教員と同様,学生も経済学部に籍を置くと共に,キングズ・カレッジに籍を置く。学部は講義の機能しか持たない。学生は,国立のケンブリッジに入るのに,私立のカレッジの入試にパスしなければならず,合格すれば自動的にケンブリッジの学生になれる。カレッジの入試は,各カレッジが独自に企画・実施する。
- 教員には,Professor,Lecturer,Assistant lecturerの資格しかなく,これは大学のものである。通常,大学の教員になるとカレッジからもオファーがあり,二重に所属する。病院勤務教員や管理職など,オファーがなければ所属できない。一方,カレッジ雇用のCollege lecturerもおり,不安定身分で一段低く見られる。
- カレッジでの教育は,スーバーヴィジョン(個人指導)が中心で,週1回1時間カレッジ教員と1対1で指導する(オックスフォードではチュートリアルというが,ケンブリッジの方が生活指導を意味する)。1,2年性はカレッジのスーパーヴィジョン中心,3年以降は専門家集団の学部スーパーヴィジョンが中心。この教員負担は非常に重い。
- 大学の教員には職位があるが,カレッジの教員は全員フェローであり,席次はSeniorityで決まる。よって,学部では教授でも,カレッジでは講師よりも後の席次の人もいる。カレッジのトップはマスター。カレッジの呼び名は他に,ハウス,ホールがある。
- ケンブリッジでは,カレッジも家具も,オールドであることがよいこと。
- カレッジの芝生はフェローズオンリー。
- 大学は3年が原則だが,語学習得の必要があるコースは4年制。
- カレッジのダイニング・ライトをもらえると,ランチができる。フェローはハイテーブルで食事を取り,学生と区分する。カレッジの食事は,フェロー間のインフォーマル・コミュニケーションの場。政治と宗教の話はよくないが,内部の話を聞けるのはここくらい。
- アメリカは小規模研究会をワークショップといい,イギリスではセミナーと呼ぶ。
- カレッジの役職は,トップのマスター,教務関係責任者のシニア・テューター,財務担当のバーサー。バーサーは教員である必要はない。マスターは一度なると退職までマスター。
- イギリスの教授比率は10〜15%。医者もミスターで呼ぶ。ケンブリッジのマスターは30人,教授は200人,マスターの方が重要な職。教授が3〜4割いるアメリカの教授を,アメリカン・プロフェッサーと言う。
- ケンブリッジのVCは各カレッジから輪番で選ばれる。大学の政治力学は,大学全体の組織,学部間,カレッジ間で働く。財政力のあるカレッジが強い。
- 成績評価はファースト,セカンド,サード,フェイルセカンドは2・1,2・2に分かれる。ファーストの条件は上位1割かつ80点以上,ただし科目でまちまち。学生はせめて2・1を取りたい。奨学金と大学院進学に関わるために,希望者はファーストに必死になる。
- イギリスの就職は,企業がファーストや2・1の指定をすると成績が重要になる。ただし,ケンブリッジの成績と地方大学の成績は別で見てもらえる。
- マスターは,フェロー以外の職員,食堂や事務スタッフにも気配り,家族の様子などもよく知っている。上に立つものは気配りが重要。
- 京都の間口が狭いのは,かつて間口で課税したため。イギリスの部屋は広さで考えない,単にスリー・ベッドルームなどの区別のみ。
- 築25年以下の住宅が日本は50%,アメリカ25%,イギリス15%。家は中古住宅が普通。
- イギリスには国教徒(Anglican),非国教徒(Nonconformist),カトリック(Catholic)の3つの主要宗派があり,国教徒は信心深くないが,残りは信仰心が厚い。数では圧倒的に国教徒。アメリカはピューリタン(非国教徒)がバックボーン,アメリカは宗教にこだわるが,イギリスは日本同様冠婚葬祭宗教に近い。
- イギリスは北部が工業地帯で労働党,南部が保守党。