2011/08/09

チクセントミハイ・ミハイ(1996)『フロー体験』世界思想社


  • 成功を目指してはならない。成功は目指して目標にするほど遠ざかる。幸福と同じく,成功は追求できるものではなく,自分個人より何か重要なものへの個人の献身の果てに,結果として生じるものだからである。
  • フロー:1つの活動に深く没入しているので,他の何ものも問題とならなくなる状態,その経験それ自体が非常に楽しいので,純粋にそれをするということのために多くの時間や労力を費やすような状態。
  • 最適経験はその瞬間瞬間の意識に生じることを統制する能力に基づいているからであり,各自が自分の努力と創造力に基づいてそれを達成しなければならない。
  • 生き生きとした生活を送る人々は,多様な経験に対して自分の心を開いており,死を迎えるその日まで学び続け,他者や自分の生活環境と強い結びつきを持ち,それらに自分を委ねている。彼らは退屈なことや困難なことすら楽しみ,困難を平然と乗り越えていく。彼らを支える最大の力は,自分の生活を統制しているということである。
  • 意識の統制は,単なる認知的能力ではない。少なくとも情緒や意志の介入を必要とする。どうすればよいかを知るだけではなく,実行し続けなければならない。
  • 意識の統制は,制度化できない。不幸な場合,それは固定したイデオロギーに変わってしまう。
  • 人が楽しむのは統制されている感覚ではなく,困難な状況の中で統制を行っているという感覚。結果が不確定で,左右することができるときのみ,人は自らを真に統制しているかどうかがわかる。
  • フロー体験は絶対的な意味で良いわけではない。生活をより豊かにし,魅力と意味あるものにする可能性があるときに限って良く,犯罪や軍事研究となることもある。良いかどうかは社会的基準で評価されなければならない。
  • フロー体験の結果,意識の複雑さが増大する理由は,挑戦度と能力の水準を上げるため。挑戦度が高すぎると不安になり,能力が高すぎると退屈になる。人は同じことを同じ水準で長時間行うことを楽しむことはできない。
  • 生得的にフローを体験できない人がいる。1つは注意散漫など遺伝的理由,もう1つは自意識の過剰。極端に自己中心的であったり,絶えず他者が自分をどのように感じているかを気にする人は,フローに入り込めるほど心理的エネルギーが統制されていない。もちろん,社会的条件(奴隷,抑圧など)によるフロー阻害もある。
  • 若い頃に,孤独を進歩のために利用する習慣を獲得していない限り,フローを実現できるようにはならない。
  • 人がストレスや試練から強さを獲得してフローに変換できるには,3つの段階がある。(1)自意識のない自己確信(自分の運命は自分が握っているという信念),(2)あらゆるものへの注意集中(個人の目標に焦点しながら無関係な外部の出来事にも注意をはらう),(3)新しい解決の発見。
  • 自己目的な自己は,潜在的な恐れを挑戦に変換する。そのルールは,(1)目標の設定:達成につとめるべき明確な目標が必要,(2)活動への投入:自分の行っているすべてに深く没入する,そのためには挑戦対象と能力とのバランスを身につける,(3)現在おこっていることへの注意集中:没入を維持する能力,(4)直接的な体験を楽しむことを身につける:困難さえも意味あるものにするには,全体的な文脈での目標を持つことも必要。
  • 物質的な豊かさと安全な環境にいながら,今を楽しみ尽くす人が少ないのはなぜか(マズロー理論への疑問)。逆境で自己実現できる人は,個人の問題ではなく,利他的視点からライフテーマを設定できる人である。
人の利他的視点はいかに開発されるのかがまだわからない。