2011/03/25

馬越徹(2010)『韓国大学改革のダイナミズム』東信堂


  • 韓国の高等教育環境は,日本の5〜10年先にあたり,得られる示唆は多い。韓国は,大学進学率が80%以上,学生の78%は私学在籍,学生のソウル志向と有力大学のソウル集中,地方大学の深刻な定員割れなどがあり,日本に似た側面が多い。
  • 韓国の高等教育拡大は,国家政策による設立の準則主義導入と大学の昇格・乱立によるものであり,少子化に伴う深刻な定員割れから,再び国家主導による統廃合推進政策が進んでいる。大学側の反対は当然であるが,既得権を持つ大学へナタを振るうには,国家によるトップダウン改革の方が実質的に変革が進む。
  • BK21など一部の有力大学を優遇する財政誘導政策により,一定の研究水準の向上を果たすことができた。この多くは教員採用や研究者の海外派遣など,ほとんどが人に使われた点が特徴。
  • 一方,NURIの地方大学活性化事業は,優れた教育プログラムへの財政支援で,GP的な使い方。また,域内の中心大学が近隣大学や地域産業と連携することに使う点も特徴。
  • 韓国の大学政策,常にカーネギー分類のような大学分類に基づいて,目標等が異なる形で示される。大学の機能分化を強く意識していることが伺える。大学側もこれを承伏しているのだろうか。
  • 認証評価は一巡して,今後は自己点検報告書の公開と大学基礎データの政府一括公開という段階に入っている。認証評価は甘すぎ,結局,効率化やイノベーションにつながっていないという総括で,日本の数年先の状況がある。
  • 私大の統廃合は,厳しい入学定員削減を伴う統合が進めば財政支援を,教員の専任比率上昇が達成できなければ入学定員削減をという誘導をする。これは,原則,域内で行う。また,大学拡大期に増えたオーナー系私大の民主化・透明化を図るために,理事の選任規定の変更を含む私立学校法改正を行った。
  • 韓国では,個別大学が入試を行うことはできず,修能試験+内申書で入学を決める。しかし,マークシート式の修能試験の弁別力が落ちてきており,大学を悩ませている。高校修了試験を検討する日本の10年後の姿に見える。
  • 韓国でも大学職員は人気で,50倍の求人倍率も珍しくない。弘益大学・教育経営管理大学院(大学行政専攻)と亜州大学・教育大学院(大学行政管理専攻)の2つは,大学職員向け専門職大学院であり,調査先としておもしろい。専任教授は少数で,ほとんどが実務家教員に委嘱している点が特徴。