2023/12/31

Chen, A., Brown, S., Mark, K. & McBane, S. (2023) An overview of Instructional approaches and decision-making strategies to curtail curricular overload, American Journal of Pharmaceutical Education, 87(8)

  • カリキュラムオーバーロードへの対処法
    • 教員間のコミュニケーションと調整
    • アクティブラーニングの統合
    • テクノロジーの活用
    • 教員と学生の作業負荷・認知的負荷の最小化
  • 教員間のコミュニケーション
    • カリキュラムマッピングが有効:特に修正版Ebelグリッド
    • 卒業生にカリキュラムを見てもらって改訂する

  • アクティブラーニング
    • オーバーロード傾向のカリキュラムではTBLへ移行すべき(変化が急速な分野では講義より適応度が高い)
    • 反転需要を用いるべき、授業時間中は教員との個別懇談中心にする
  • テクノロジーの活用
    • 完全習得学習教材を使う、質問をしやすくする、VRで体験するなど
  • ワークロードの配慮
    • アクティブラーニングは初期投資が大きい
    • 反転授業は学生の負荷を増やす

2023/12/30

O'Connor, K. (2022) Constructivism, curriculum and the knowledge question: tensionsand challenges for higher education, Studies in Higher Education, 47(2), 412-422

  • 高等教育の構成主義
    • 現在の高等教育=内容に重点を置きすぎ ⇔ 学生自身が知識を構築する能動的アプローチ(=構成主義的アプローチ)が必要
    • 一方、学習理論は、科学的根拠に基づく教育法を局所的に示すことはできない=実際の教育がどのようなものであるかは明確でない
    • 高等教育の研究は教育と学習に焦点を当て、教育と学習を切り離す。知識とカリキュラムの関係は論じられない。
  • 構成主義の導入=特定の方法で教える知識にも影響を与える
  • 分野ごとに異なる知識構造が、適切なカリキュラムの形態に制約を課す
    • 学問分野内部の概念的一貫性を重視するカリキュラム
    • 仕事の実践など文脈的一貫性を志向するカリキュラム
    • →特定の教育形態をあらゆる文脈における最適解として提唱してはならない
  • 構成主義的教育法の問題
    • ×:生徒が学ぶこと
    • ○:生徒が何かを学ぶこと、特定の理由のためにそれを学ぶこと
  • ケーススタディ:研究大学と専門学校の2つのMOOC事例
    • 科目の特性
      • コンテンツは学内教員が、教える前に完全に開発、指導者と学生は接点なし
      • 受講者は自分で教材に目を通し、フォーラムで他の受講生と疑問点を出し合い、ルーブリックで他の受講生作品を評価
      • 「社会構成主義的学習モデルを用いて学生間のコラボレーションを促進する活動をデザインする」教育モデルとして開発
        • 毎週コンテンツに関連した非同期掲示板でインタラクション
    • カリキュラム開発・カリキュラム構築に困難はないと認識されている
      • 学習成果、その評価、それに向かって構築される活動を考えたため(=理想的な開発)
      • 探究ベースのカリキュラムに移行するなら、内容の一部は減らさないといけない
  • 目的や内容にかかわらず、構成主義的でアクティブラーニングが最適解という考え方=学習は構成の本質を考えることより、学生の忙しさを重視すること
    • 特に理系では、活動と特定の内容・目的との関連が理解されていない

2023/12/29

Croucher, G. & Woelert, P. (2016), Institutional isomorphism and the creation of the unified national system of higher education in Australia: an empirical analysis, Higher Education, 71, 439-453

  • 組織同型化を実証する。
  • オーストラリアではドーキンス教育大臣在任時の高等教育改革が、同型化を促進したと考えられている。
  • 同型化は、高等教育では模倣的が多いと言われているが、強制的と思われる。
  • 同型化の実証を、組織構造、教職員数、入学者数の3つで行う。
  • 1987年(ドーキンス改革前)と1991年(ドーキンス改革後)を比較する。
    • 年次報告書等から1987、1989、1991のデータを収集。
    • 対象は31大学、3グループに分けて収集。
      • グループ1=1960前設立、研究型8校
      • グループ2=1960後設立、ドーキンス改革前設立、11校
      • グループ3=1987後設立、ドーキンス改革以降、高等教育カレッジの転換・複数移管合併
  • 変動係数(Coefficient of Variation)に注目
    • CV=s/x_mean
    • sは標準偏差、x_meanは平均
    • 母集団が均一だと、標準偏差が平均より小さくなる、標準偏差が大きいと母集団の均一性が低く多様性が高い
  • アカデミックユニット
    • ディビジョン、ファカルティ、スクール、デパートメント等の名称
    • 1層か2層が基本
      • 2層=統合的なユニットが頂点、その下に専門的なユニット
      • 1層=2層の2つの学術的・組織的機能が見かけ上1つのフラットになったもの
    • 87~91は学部・学科の2層構造が一般的
      • 87年=13/19校が2層、研究大学は全て2層
      • 89年=16/23校が2層
      • 91年=20/31校が2層
    • グループ2について
      • 87~91は、ユニットの数は9で安定、多様性の増加はわずか
      • 87~91=グループ2のユニット数はグループ1と同様少ない
      • 全体の中ではグループ1より急成長(22%増>11%増=グループ1)
      • 主要な学問分野はカバー、特に法学・看護学が急増
    • グループ3について
      • 全体的に包括性は低い
      • 経済経営系は全大学が設置
  • 学生数
    • 学生巣は増えたが、変動係数は安定(87→91:7699人→12068人、CV51→56)
    • 学生数が大幅に変化したのは保健分野
  • 教職員数
    • 教職員の分布は多様化(88年19大学平均教職員1338人→91年全平均1289人、C63→68)
  • 議論
    • 垂直的な組織は均一化(フラット大学は2層化へ移行)

2023/12/28

The Difference Between Emergency Remote Teaching and Online Learning, 2020.3.27

  • オンライン学習デザインの選択肢(モデレーティング変数)
    • モダリティ
      • 完全オンライン
      • ブレンド(オンライン比率50%以上)
      • ブレンデッド(オンライン比率25~50%)
      • ウェブ対応F2F
    • ペーシング
      • セルフベース(オープンエントリ―・オープンイグジット)
      • クラスベース
      • クラスペース・一部セルフベース
    • ST比
      • 35未満
      • 36~99
      • 100~999
      • 1000以上
    • 教育法
      • 説明
      • 実践
      • 探索的
      • 協力的
    • オンライン評価の役割
      • 学習者が新しいコンテンツに対応できるかを判別する
      • 学習者をどうサポートするかをシステムに伝達する
      • 学習の状態を学習者・教員に伝える
      • 成績を入力する
      • 成績不振学生を見つける
    • 教員の役割
      • オンラインでの積極的な指導
      • オンラインでの控えめな存在感
      • なし
    • 学習者の役割
      • 聞く・読む
      • 問題を解く・質問に答える
      • シミュレーションやリソースを探索する
      • 仲間と協力する
    • オンラインコミュニケーション
      • 非同期のみ
      • 同期のみ
      • 同期+非同期
    • フィードバックの方法
      • 自動
      • 教員
      • ピア

2023/12/27

青木栄一(2011)「方法としての比較を用いた教育行政学のリノベーション」『教育学研究』78(4), 40-51

  • 唯一無比の制度は存在しない 。新制度論が明らかにしたのは、制度とは均衡の同義語であり、均衡をもたらす諸条件が変化すれば、その制度が変容ないし崩壊するということである。 
  • 教育行政学の 主た る研究対象の一つ である制度に関する理論的認識が 、近年の社会科学の発展により大きく変化しているにもかかわ らず、教育行政学は依然として 、制度を静態的に捉えるか、規範的に現行制度を捉えている。

2023/12/26

大谷奨(1999)「高木英明著 『大学の法的地位と自治機構に関する研究 ドイツ・アメリカ・日本の場合』」『教育行財政研究』26, 48-51

  • ドイツの大学の法的地位
    • 権利能力を持って社団的であると同時に営造物的(私的団体と非独立営造物の中間)
    • 国家体制の枠内にありながら独立を果たしている
    • 大学の原型は組合型・自治的組織→国家体制の確立と共に営造物化されたが、その過程で国家が完全に大学を営造物化しなかったことで大学の自治が確立された
    • よって、法制的二重性が残されている
    • これは曖昧さを残す(ナチスによる大学への介入を可能にした)
    • 大学自治の実際は国家がそれらの留保した権限をどの程度行使するかにかかっている
  • アメリカの大学の自治機構=理事会管理方式
    • 広義の大学=理事会
    • 協議の大学=教授団
    • 自治の問題は理事会と教授団の関係に現れる(国家や州との間に現れない)
    • 植民地時代のアメリカで私立カレッジを設立する際に、自治団体を形成するだけの教員団がいなかったため、設置者の意思が先行・優先された→これが州立大学へ引き継がれた
    • テニュアシステムは、アメリカ独自の自治機構の形成と不可分
  • 日本の大学自治
    • 戦前は大学の独立を確保する法的根拠がなく、営造物(非独立営造物)と位置付けられていた
    • →大学側がドイツをイメージして慣習的な大学自治を獲得していった
    • →慣習故に外部権力の圧力に抵抗することが困難
    • →戦後アメリカ的管理が構想される
    • →大学の大衆化が急速に進む
    • →戦前の大学イメージを捨てきれず、国立大学の自治機構の改革は進まなかった
    • 結局、今も国立大学の法的地位は曖昧なまま

2023/12/25

小塩真司(2023)「「非認知能力」の諸問題」『教育心理学年報』62, 165-183

  • 非認知的能力:揺れのある概念
    • 能力(ability)、スキル(skills)、特性(traits)いずれも使われる
      • 能力=特定の身体的・精神的活動を行うための力・可能性
      • スキル=特定の活動を行うための力で、教育や訓練で可変する可能性が大きいもの
      • 特性=場面を超えて安定した特徴で、能力やスキルのように望ましい結果だけを想定しない
    • パーソナリティ特性も含むこともある
      • 外向性、情緒不安定性、開放性、協調性、勤勉性・誠実性
    • OECDの定義
      • スキル=個人のウェルビーイングや社会経済的進歩の少なくとも一つの側面に影響を与え(生産性)、意義のある測定が可能であり(測定可能性)、環境の変化や投資により変化させることができる(可鍛性)個々の性質
      • 非認知的能力=一貫した思考・感情・行動のパターンに発現し、公式・非公式は学習体験によって発達させることができ、個人の一生を通じて社会経済的成果に重油用な影響を与える個人の能力
    • 定義の観点
      • 非認知性:知能や学力として測定されるもの以外
      • 測定可能性
      • 予測可能性:社会の中で望ましいとされる何らかの結果を予測する
      • 介入可能性:教育・介入・投資で可変可能
  • 意義ある概念だが、扱いにくい
    • 一度に測定するには多数・広汎は測定が必要
    • 能力・スキルと呼ぶ問題(日本人が好きな○○力に陥る)

2023/12/24

大山紘平・小沢和彦・清水沙友里・黒木淳(2023)「地方公共団体におけるデータ活用推進への行動意識」『会計検査研究』68, 35-57

  • Tushman & O’Reilly(1997)の組織構成要素=タスク、組織文化、公式組織、人材
    • これらの変更が組織変革
    • タスクには業務プロセスが含まれる=データ活用しない意思決定→データ活用は業務プロセス変更になる
  • 組織変革への行動意識に影響する最重要要因=コミットメント
    • Herscovitch & Meyer(2002)が尺度開発
    • 組織コミットメント=組織とメンバーの関係を特徴づけ、組織におけるメンバーシップを継続・中止する決定に関するインプリケーションを持つ心理状態
    • Meyer & Allen(1991)の3つのコミットメント
      • 情緒的=組織への愛着があるから所属し続ける
      • 存続的=離職コストがあるために組織の所属し続ける
      • 規範的=義務感で所属し続けるべきと感じるから所属し続ける
  • 組織変革=経営主体が環境変化がもたらす複雑性の中で行う組織の存続を確保する活動(大月 2005)
    • 実際には組織の構成要素の変更で捉える
  • 変革の翻訳
    • Reform=一時的な変化
    • Change=永続的な変化c

2023/09/27

向山洋一(2011)『新・黄金の三日間で一年間を成功させる』明治図書出版

  • 学級を組織するとは、担任がいなくとも1週間子どもが生活できる状態のこと
  • そのためには3つの仕事が回る必要がある
    • 学級を維持するために毎日定期的に繰り返され、一定人数が必要な仕事(給食当番、掃除当番)
    • 定期・不定期にかかわらず繰り返される行事で、少人数でよいもの(黒板係、配付物係、落とし物係)
    • 学級生活を豊かにするために必要な組織(スポーツ係、新聞係)
  • これらの指導には2つの仕組みづくりが必要
    • 学級の生活の仕組みづくり(お腹が痛い時、忘れ物をした時、給食の時)
      • ネーミングも重要(生き物係→水族館係、新聞係→うわさニュース)
    • 授業の学び方の指導
  • 統率の2つの側面
    • 夢や目標を描いて全員をそこへ向かわせること
    • 具体的な戦略、戦術(計画と実行方針)を決めて具体化すること
  • 2つの目標:方向目標(努力目標:楽しくしよう)と具体目標(到達目標:プロジェクトをたくさん作って活用しよう←?)
  • 新年度最初に学力状態を把握する:計算テスト、漢字テスト、ソシオメトリックテスト
    • →勉強する時、グループ行動をする時、一緒になりたい子5名以内、一緒になりたくない子5名以内を書かせる→マトリックスで把握
  • 最初の3日間の教師の行動
    • 最初の授業で全員の名前を呼ぶ、それまでに全員の名前を覚える
    • クラスの仕組み、ルール、授業のルールについてノートに書いておく
    • 3日間のうちに子どもの名前を呼んでよいところをほめる
    • 最初の授業案を書いておく
  • 教材研究、授業準備とはものを用意することである
    • 優れた教材・教具の6要件
      • 熱中する、子どもたちがシーンとなって集中する
      • もっとやりたい、家でやってもいいかと持続する
      • 繰り返しやりたくなる、あきない
      • 充実感・達成感を味わうことができる
      • 全員コールが生まれる
      • 今まで授業中うるさかった子がのめり込む
    • 優れた教材・教具を用意したら、正しい使い方で使う
  • なわとび級表
    • 2人1組で挑戦と審判、教師がいない時は審判2人
    • 縄にビニールテープを貼る、白から次第に色が濃くなるように
国語の先生が書かれたとは思えないほど、文章の論理性・一貫性に難がある。

2023/08/14

Mollick, E. and Mollick, L. (2023) Assigning AI: Seven Approaches for Students, with Prompts, SSRN

  • 学習促進のためのAI活用技法
    • AIチューター:知識増加
    • AIコーチ:メタ認知向上
    • AIメンター:バランスの取れた継続的なフィードバック提供
    • AIチームメイト:協調的知性を高める
    • AIツール:学習者のの成績向上
    • AIシミュレーター:練習を支援
    • AIスチューデント:理解度をチェック
  • 学生がAIのアウトプットを受動的に受け入れるのではなく、批判的に評価し、問い直競るよう指導する
  • AIツールを使うリスク
    • 混同:誤認や幻覚といわれる現象に伴う、もっともらしい出力
    • バイアス:学習の際の入力情報の偏り(修正者の偏った訂正も含む)
    • プライバシー:ユーザの入力情報が学習に使われる懸念
    • 指導:授業で学んだことを損なう懸念
  • メンターに使う
    • メンターの役割を定義するプロンプトを入力
    • 段落ごとに文章を入力してフィードバックを得る
    • プロンプトを作る際は、役割、ゴール、段階的な指示、学生の特徴(初学者であるなど)、制約(提案はしても修正はしないなど)を入れる。
  • チューターに使う
    • 1つずつ質問をさせるプロンプトを入れる


  • コーチに使う
  • チームメイトに使う

2023/08/13

Flipse, A. C., van Berckel Smit, F. J. N., & Huisman, J. (2023). Understanding organizational identity in universities: Unravelling autonomy, governance and leadership in the case of the Vrije Universiteit Amsterdam. Higher Education Quarterly,

  • Oral history interview:複数のインタビューセッションで構成される長時間インタビュー=広い文脈でセンスメイキング経験に焦点化するため
    • 6人の大学上層部に3~4時間インタビュー+大学文書・大学新聞・学内誌
  • 主なアイデンティティ
    • 1880-1960=自律性(宗教法人からの自由、社会が運営する大学)
    • 1960-1970=効率性→評議会と執行部の間で軋轢が続く
    • 1980-1990=リーダーシップの時代(大学予算の大幅削減)
    • 1997-=再度自律性?→信頼ベースのアイデンティティとNPM型管理の間で揺れる

2023/08/12

Jaleel, B., Horsley, S. & Atkins, M. (2023) Academic thriving and online course design: a conceptual model, International Journal for Academic Development

  • thriving student=intellectually, socially, and emotionally engaged in their college experience
  • academic thriving=positive engagement in one’s own learning, with the ability to overcome challenges to accomplish educational goals (Schreiner 2010)
  • Academic determination=students’ ability to regulate their own learning and overcome challenges to accomplish academic goals
    • →academic determination
      • investment of effort (IE)
      • self-regulated learning (SRL)
      • environmental mastery (EM)
      • goal directed thinking (GDT)
    • → engaged learning
      • meaningful processing (MP) of course content
      • focused attention (FA)
      • active participation (AP)

2023/08/11

Quenette, A., & Rybas, N. (2023). Evaluating instructor quality: Moving away from student evaluations to peer review. New Directions for Teaching and Learning, 2023, 67–74.

  • 授業アンケートの問題:気まぐれ、差別的、懲罰的という実証(Heffernan, 2023; Weaver et al., 2020) → 指導の質を測る尺度としての学生評価から遠ざかる(Flaherty, 2018)
  • 授業アンケートの効果:平均との比較、教員間の比較を可能にした(コース、学部、学科、キャンパス間で)
    • →すぐに有用性よりも弊害が大きいと認識される(教員の更新が学生に委ねられる)
    • もちろん学生の声は重要
    • 一方、成績とフィードバックには相関がある(Hammer et al., 2018)
    • 教員や授業の質を測る尺度として学生の声に過度に依存することは危険ではないか?
    • →教員の成長と授業設計・実施に関する有効で信頼できる評価基準が必要→ピアレビューで行うべき
  • 米国ではテニュア審査において学生評価よりピアレビューが重視されるようになっている(Cosser, 1998)
  • 評価者も被評価者も省察と成長の機会にすることができる。
  • ただし、その実施方法の設計が重要(特に評価者のトレーニング)
  • 伝統的なピアレビュー=授業見学
    • 当該授業がレビューの範囲を限定してしまう
    • 実施は容易
    • 学生の反応に関するレビューが中心になりがち
  • 非同期オンライン授業でどう実施するか?
    • LMS内の資料・課題・活動に注目する=スナップショットよりより多くの側面を見ることができる
    • オンラインの場合、授業設計(教材の明快さ、重要情報の提供やアクセスなど)のレビューが中心になる
    • 一方で、学生参加の視点は弱くなる、議論のポスト数などを数えがち(=静的な評価になりがち)
  • 授業評価の15観点はモダリティを問わずあてはまる(Berk 2018)
    • STUDENTS
      • 1. Student End-of-Course Ratings 
      • 2. Student Midterm Feedback
      • 3. Student Exit and Alumni Ratings 
      • 4. Student Outcome Measures
    • INSTRUCTOR
      • 5. Self-Ratings
      • 6. Teaching Scholarship
      • 7. Teaching Awards OTHER FACULTY
      • 8. Peer Classroom Observations
      • 9. Peer Review of Course Materials 
      • 10. External Expert Ratings
      • 11. Mentor’s Advice
      • 12. Video Classroom Review
      • 13. Teaching/Course Portfolio Review
    • ADMINISTRATOR
      • 14. Administrator Ratings
    • EMPLOYER
      • 15. Employer Ratings
  • ピアレビュープロトコルの提案:Fletcher(2018)、Mazurek et al.(2021)、Incecay and Dikilitas(2022)

2023/08/10

Crisp, E. & Hardman, P. (2023) Optimizing feedback for learner motivation and mastery: Design standards and the role of technology, New Directions for Teaching and Learning

  • フィードバックは、直接指導、タイムオンタスク介入、習得学習、問題解決介入よりも効果的
  • フィードバックは期待値と比較してどうだったかの情報を含まないといけない(よく頑張った、次は何する?はフィードバックではない)
  • フィードバックインスタンス:学習者が知識やスキルを示す際に受け取る応答(=学習目標との比較情報、目標から外れている場合に次に何をするかの方法を提示)
  • フィードバックエクスペリエンス:授業期間中のフィードバックインスタンスの全体
  • フィードバックを分析する6つの視点:
    • 頻度:最終成績が出る前に学生が受け取った回数
    • 適時さ:課題提出からフィードバックまでの平均日数
    • 内容:無作為抽出で内容が学生の挑戦と学習成果をつなげているかを3段階評価
    • 間隔:課題間の平均日数
    • 個別化:無作為抽出で学生ごとに内容がカスタムされているかを確認
    • 信頼性:授業期間中に受けたフィードバックが役に立ったかの学生評価(教員ではなくピアフィードバックを使った授業で下がりやすい)
  • これらを複数開講科目間で比較するとおもしろい
  • Quality Mattersルーブリック:オンラインコースを評価する有名な枠組み
  • 反転デザイン自体は学習効果に確実なインパクトはない、むしろフィードバックの質次第
  • 学習者のフィードバック体験が、授業の質を比較的正確に予測できる指標→ルーブリックで見る

2023/08/09

Simonson, S., Frary, M. & Earl, B. (2023) Using a framework to assess teaching effectiveness (FATE) to promote instructor development and growth, New Directions for Teaching and Learning

  • 授業の質はどう評価すればよいのか?(アンケートや相互観察に依存しがち)
  • まず何を評価するかを決めないといけない
    • 教育が、学習者の知識・スキル習得、行動修正の支援なら、それを実証しないといけない
    • ↑ただしそれほど単純ではない:学習者の事前準備・事前知識・事前経験、教室内外の社会的相互作用・環境的相互作用、認知発達、学習嗜好などがすべて関与するため
  • 教育の3知識(Pallas et al., 2017)
    • Content knowledge
    • general pedagogical knowledge:広く使える教育的知識
    • content pedagogical knowledge :特定授業の教育的知識(学生の既有知識、スレッショルドコンセプト)
    • 授業の評価で1つめは考慮されても、残りが考慮されない
  • 効果的な教育のための18の教育の役割・態度・行動(Arreola, 2000; Franklin, 2001; Seldin, 2000)

  • これをルーブリック化することで、FATE(framework for assessing teaching effectiveness)を作る



  • FATEに沿ってティーチングポートフォリオを作成し、評価する
  • FATEに沿った授業観察の観点:授業の構造と構成、指導戦略、授業内容、ファシリテーション・スキル、発問と応答、クラスの雰囲気、プレゼンテーション・スキル

2023/08/07

平塚力(2023)「大学経営研究の分析枠組みに関する一考察」『総合社会学部研究紀要』24, 63-85

  • なぜ大学は他律的な自律化現象が起きるのか?:2要素がある
    • 自らの経営改革において大学は主体か客体か?
    • 経営改革の目標設定から目標達成のプロセスのどこの担うのか?
    • →大学は改革の客体(政府が目標設定をする)・行為の主体(所与の目標へ自己同一化に自発的に励む)
  • ここでの自律は自動的・自発的
    • 基盤経費削減→競争資金申請せざるを得ない状況を作る
    • 資金援助プログラム立案→政府側の期待する大学像を条件とする助成
    • 自律的大学という目標への自己同一化に自発的に励む
  • 他律的な自律化は規範的で認知的な組織現象=分析モデルを社会学的新制度論に求める
  • マイヤー社会学:組織構造の形成にあたり、制 度的環境が重要な役割を演じていること を体系的に論じた研究
    • →(現象学的社会学の視座に準拠することで、生身の人間によって構成される社会を、外的刺激に対する機械的反応によって構成された無機質な物理システムとみなすのではなく、社会の文化的な価値規範に対する意味解釈から構成された有機的な認知システムとみなす)
    • 大学経営の分析に有効なのか?
    • なぜ高等教育分野で制度論研究は不活発なのか?
  • マイヤー社会学の大学経営分析に用いる4つ
    • マクロ的な管理制度が出現する背景と社会構造
      • 命題1:所定の活動領域において合理化された制度的ルールが生じるにつれ、これらのルールを構造要素として組み込むことによって正式な組織は形成され、拡大する
      • 命題2:社会が近代化されるほど、所与の領域における合理化された制度構造が拡張され、合理化された制度を含む領域の数が増える
    • 教育組織に対する制度的管理の前提
      • 命題6:制度化された組織は、内部管理者と外部の構成員の両方が、検査と評価を最小限に抑えようとする(性善説的に見えるが、専門組織は評価が難しく曖昧な技術を用いるため)
        • →専門職としての教育組織の評価には、制度的ルールの順守度という間接指標(形式合理性)を代用せざるを得ない
        • →「信頼と誠実の論理」(専門職ならば誰もが誠意をもって行動することを信頼する原理)→制度化された組織については、評価が最小限にとどめられ、かつ儀式化する
    • 制度的管理に対する教育組織側の適応戦略
      • 命題3:自らの公式構造のなかに社会的に正当化(合法化)された合理的要素を組み込んだ組織は、正当性(合法性)を最大限にし、資源と生存能力を向上させる
        • 儀礼:制度化されたルールが機能的に合理的で あるというのは神話、教育組織がルールに従う場合、それが機能的に有効か否かは重要ではない
        • 制度的言説の物象化:儀礼性の真骨頂は、言語化された制度的ルールを、あたかも実在するかのごとく物象化してとらえ、組織内に機能や部門を形成する点(=パッケージ化・ラベルづけ)
    • 制度的管理に適応するための組織内戦略
      • 命題4:制度化された組織において活動を制御し協調させようとする試みは、紛争と正当性の喪失につながるため、構造の要素 は活動から、そして互いから分離される
        • 教育組織は資源を外部との交換に依存するオープン・システム
        • →技術的な交換(サービス提供による顧客満足の確保)と政治的な交換(制度的ルールの順守による制度管理者からの正当性の確保)の二つの交換システム
        • →教育組織はそれぞれの交換に適した組織構造を必要とする
        • →ただし、両者はジレンマの関係
        • →対応する課題に応じて組織構造を使い分ける(=脱連結戦略)
  • 80年以降の新制度論
    • 制度的同型化論の精密化
      • 組織フィールドとは、主要な供給者、資源や製品の消費者、規制機関、およ び同様のサービスや製品を生産する他の組織など、全体として組織生活の認 識された領域を構成する組織群を意味する(学校における構造の同質化は、複数の学校が同一の文化的影響を受ける社会空間(組織フィールド)のなかに存在したことで生じた)
      • 強制的・模倣的・規範的の3つの同型化パターン
      • 制度の持つ3機能=規制的機能(各行為者がルールから逸脱しないための規制(制裁・報酬)の機能、規範的機能、認知的機能(規範だけでなく模範解答になる)
  • 制度化のプロセス
    • 合法化→権力化→神話化(約束事化)→正当化(社会道徳化)→シンボル化(物象化)→儀礼化→秩序化
  • 国家と教育組織の関係:規範的交換→報酬的交換→強制的交換の順に重層的に併存する→教育組織の評価は機能的合理性の評価から文化的正当性への評価に変質する

  • 90年代以降の制度改革は、専門職業的組織構造にあった大学を機械的組織構造に転換さ せるほどの政治的影響力を持った。
    • 大学の質的な改善にむけて様々なルールを制度化→ルー ル順守を財政的援助の条件とする→大学は制度化されたルールを模範解答として参照する→指定された条件に自己の組織を同型化させる→大学組織に関する基礎的な知識を受容する必要性低下

2023/08/06

山本裕子(2023)「地方国立大学におけるセンター組織の設置・運営の変遷」『大学経営政策研究』13, 199-214

  • なぜセンター組織は頻繁に改組されるのか?
    • 通常財源や学部教員からではなく、テンポラリな概算要求でないと、カネと人を手当できないという認識
    • →その時々の高等教育政策の流れと当該大学のポジションを理解し、どのような教育が学生と社会、そして文部科学省に求められているかを企画立案して、 概算要求の計画書に書き込む
    • →概算要求では、その教育に関する取組みを進めるだけの推進力を既に学内で準備しており、今後さらに充実させるために、足りない部分を要求していると文科省に捉えてもらえるよう、計画書を推敲
    • →教育改革の推進機関となる、何らかの全学の組織があることが読み手の文科省にとって理解されやすいと認識(実際にそのように文科省とのヒアリングでもやり取りされていた)

2023/08/05

松下佳代(2021)「日本の大学における能力ベース教育の展開と課題」『京都大学高等教育研究』27, 109-116

  •  Newton(2000)のアメリカ一般教育モデル
    • グレートブックスモデル:古典読み+議論→人間存在の永遠の問いとそれへの応答に出会う
    • ディシプリンモデル:専門の入門科目で構成
    • 有能な市民モデル:21世紀世界に参加する知識・スキル・価値観の育成
      • デューイ型:社会をよりよく変えるために必要な探究の習慣や態度を身につけた人を育成
      • 有能人材型(コンピテンシー型):生産的に活動するのに必要な特定のコンピテンシーを獲得する(=目標を明確にし、成果を評価することを重視)
  • 日本の大学教育の捉え方
    • 専門職・職業教育モデル:医療者・教員養成
    • 伝統的リベラルアーツモデル:ごく少数(グレートブックスモデル的?)
    • ディシプリンモデル:研究大学によくある
    • 有能人材型:教育重点大学によくある
  • 戦後の一貫した課題=専門主体の大学教育にいかに一般教育を根付かせ統合するか
  • 学士力の土台=AACUのEssential Learning Outcomes
    • 知識、スキル、態度、統合的学習の4領域で構成(=リベラル教育に取って不可欠な学習成果)
    • 統合的学習=一般教育・専門教育の枠を超えた学習=キャップストーンプロジェクトなど
    • ELOは専門教育を射程に入れていないが、全分野で経済的機会の入り口になることを目指したので、学士力に齟齬なく援用できた。
  • 3ポリシーはCBEを促す推進力になった。←DPをコンピテンシーで作成するため←なのになぜCBEが根付かないのか?→有能人材モデルへの偏りと他のモデルとの葛藤があるため
  • なぜDPは有能人材モデルに偏るのか?→グランドデザイン答申で人材=経済活動の場で有能な人材が強調→ディシプリンモデルにとっては受け入れがたい葛藤→カリキュラムマップで教員の意識をDPに差し向ける→DP記述は抽象度が高すぎて解釈多用になる→ペーパーワーク化
  • もともとコンピテンシーは、物質的な生活条件と生活の質が含まれている←ELOは統合があるから現実世界の課題に取り組むための行為にむずびつけることを重視した⇔日本の資質能力は経済発展のための人材養成を強調しすぎ
  • ミネルヴァ大学で身につける4つのコア・コンピテンシー:批判的思考、創造的思考、効果的なコミュニケーション、効果的なインタラクション(=4Cs)
  • →これらを具体的なHCsにした:当初117個→79個
    • 79の細分化は統合機会が何段階も設けられている
    • ユニット(数コマ分)の終わりに統合(synthesis)の時間があり、複数のHCsを組み合わせて重大な重大な問い(Big questions)に取り組む(どうすれば世界の人々に食料を供給することができるのか?戦争は回避することができるか?など)。

2023/08/04

今福輪太郎(2021)「質的研究を実施するうえで知っておきたい基本理念」『薬学教育』5

  • 質的研究の目的:現場や当事者の中で実際に「何が」「どのように」「なぜ」起こっているのかを探索すること。
  • 質的研究におけるリサーチ・クエスチョン設定:「どうなっているか」という事象理解や問題探索に向けた問いを意識する(⇔「どうすればいいか」という問題解決に向けた問いはダメ)、「どのようにものごとが生じたのか」を問う(⇔「何が起こったか」に留まらない)
  • 臨床研究のリサーチ・クエスチョン規準:FINER
    • Feasible=実施可能性がある
    • Interesting=興味深い
    • Novel=新規性がある
    • Ethical=倫理的である
    • Relevant=必要性がある
  • GTA:(a)データに根ざして,(b)概念をつくり,(c)概念同士の関係性をみつけて,(d)理論を生成する分析手法
    • 手順
      • データ収集
      • テキスト化
      • 切片化=言語データを文脈から切り離すことで,分析者が言語データから距離をとる
      • オープンコーディング:(1)プロパティ(切り口・視点)・ディメンション(中身・内容)の書き込み、(2)ラベルづけ(データの簡潔な名前)、(3)複数のラベルを束ねたカテゴリーの生成
      • 軸足コーディング:カテゴリー同士を関連付ける作業.パラダイム(状況・行為/相互作用・帰結)を用いて各カテゴリーを再統合する
      • 選択的コーディング::コア・カテゴリーに向けて各カテゴリーを関連付ける(コア・カテゴリー=カテゴリーを統制して理論を生成する際の中心になるもの)
      • ストリートラインの作成:カテゴリー関連図を作成→理論的サンプリングを新たに行う→全体像を把握するために,ストーリー・ラインを記述(ストー リー・ライン=現象をカテゴリ―,ラベル,プロパティ,ディメンションを使って記述したもの)
  • M-GTA:データの切片化をせず,オープンコーディングと選択的コーディ ングのみを行う
    • 手順
      • 切片化の代わりに,「分析ワークシート」を作成
      • 1概念につき 1 ワークシート(言語資料中に数ページにわたって述 べられている事柄を一つの意味として解釈することもある)
        • 分析ワーククシート:概念名(ヴァリエーションの記述を束ねる上位の概念)、定義(どのようにデータを解釈したか)、ヴァリエーション(記述の抜出)、理論的メモ(プロセスで気づいたこと、考えたこと、採用しなかった解釈などを記入)
      • 各概念を関連づけカテゴリーと結果図を生成
        • コア・カテゴリーがみつからなくても,カテゴリー間の関係性を把握し,全体を説明する
        • 無理に概念同士を結び付けないことが重要、結び付けに不足するデータは理論的サンプリングにより追加し,結果図にまとめる
      • ストーリーラインの作成:分析結果を生成した概念とカテゴリーだけで簡潔に文章化
  • Steps for Coding and Theorization
    • 手順:分析フォームの中にセグメント化したデータを記述し,そのそれぞれにコーディングを行う
      • テクストの中の着目すべき語句
      • テクスト中の語句の言い換え
      • それを説明するようなテクスト外の概念
      • 前後や文脈を考慮してテーマ・構成概念,及び 疑問・課題の順にコードを考えて付す
      • テーマ・構成概念を紡いでストーリー・ラインを記述し,そこから理論を記述
  • 主題分析:「こうしなくてはならない」という絶対的な枠組みはなく,自由度が高い手続き
    • 演繹的に既存の理論やコードを当てはめる方法,帰納的にデータからコード・カテゴリーを生成する方法,その両方を取り入 れたハイブリッドアプローチがある
    • テキストデータに内容を代表する短い言葉をつけ(ラベル),具体から抽象へとコードを階層的にまとめていき,生データの分量を縮小していく作業を行う
    • コーディングユニットに関しても規定はなく,インタビューガイドの各質問、 1段落、1文など自由に研究者が設定できる
    • 生データからリサーチ・クエスチョンに関連があると思われる語やコンセプトを探していく方法とリサーチ・クエスチョンにかかわらず,重要と思われる語やコンセプトを探していく方法がある
    • 手順
      • インタビューデータ(逐語録)をコーディングする=逐語録を何度も繰り返して読んでからコーディングを開始、極力短い単語や語句を用いてラベルを付す(初学者は生データの言葉をそのまま使ってコーディングの第一段階を進めるとよい)
      • 複数の逐語録から類似したコードでまとめるコードブックを作成する=ラベル,明確な定義(ラベルの説明),取り入れ条件,除外条件,肯定的・否定的な具体例を記述する
      • コードやカテゴリーの関連性を眺めて,その事象のパターンを説明するテーマを生成

2023/08/03

茂住和世(2023)「初年次 PBL のグループ活動で見かける「地蔵」的学生」『高等教育ジャーナル』30, 1-15

  • アクティブラーニングを受け入れられない理由
    • 楽をして卒業したい
    • 心的な問題による配慮が必要
    • 講義形式を好む
    • 人前で話すことが苦手・面倒
    • 参加者同士のコミュニケーション不全
    • グループ学習にどのように関わったらよいかがわからない
    • 自己肯定感・自己効力感の低さから参加できない
  • 地蔵=グループ活動の場に入るが自分から動かない、場を乱すこともしない
  • 失敗マンダラの知見
    • 学生問題:知識技能不足(思考訓練不足、リーダー技能不足、議論前提知識不足)、目的喪失(不挑戦、他事優先、怠惰、愛着)
    • 結果問題:パフォーマンス低下(グループワーク無機能化、成果物水準低下)
  • 意図的フリーライドと意図しないフリーライド
    • 思考が活性化する前に一部の学生に発言が取られ、思考や活動が止まること
    • 参加はしたが貢献した実感が得られにくい
  • なぜ課題につまずくのか
    • 課題に対する正解を探す(=提案が浮かばず地蔵化する)
    • 集団浅慮(=浅い提案にすぐ同意する、結論を優先する)
    • 自己周辺化感覚・苦手な人の回避(ガツガツ学生の回避)
  • 地蔵化=対人リスク回避
    • 自らグループと距離を取る
      • 自分が周辺に追いやられる
      • 他のメンバーがだんだん中心となることで自分の発言優先度が低くなる感覚
    • →いずれも心理的安全性不足に起因する
    • 自己原因性の喪失感覚:自分があれこれ試みたところで、それほど大きな有意味な変化をもたらさないだろうとう感覚+チームで話がまとまりかける・プレゼンまで時間がない→地蔵化

2023/08/02

教学マネジメント指針 (追補)

  • 学生として入学段階で身に付けていることが求められる資質・能力等をどのような基準・方法によって評価・判定するのかについても「入学者受入れの方針」において具体的に示すことが求められる
    • →資質・能力等が評価・判定できるよう、一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜の組み合わせや、受験教科・科目、面接など具体的な評価・判定の基準や方法など、選抜方法や基準等について定める
    • →当該資質・能力等と具体的な評価の方法との対応関係を明らかにした表を作成
  • 入学後に専攻が決められる仕組み(LS)→選抜も大括りに
  • 簡素化と合理化⇔多様化が不十分なら改善

2023/08/01

居神浩(2018)「学生の多様化を正面から見ない大学論への絶望と希望」『高等教育研究』21, 127-145

  • マージナル大学論の前提:多様化する学生をありのままに正面から観察している=伝統的な大学・大学生像で把握し得ない変化を把握するための新しい準拠枠組みがマージナル大学という概念
    • マージナル大学の教員もノンマージナル大学観を持つ(見たくない学生は見ない)
  • 多様化度合いを測る3軸:
    • 基礎学力の定着度合い:1=中学卒業レベル担保できない、2=ある分野が壊滅的
    • 発達・成熟の度合い:大人の付き合いができない、適切な距離がとれない
    • 社会階層:親のSES、第1世代
  • マージナル大学の教員:研究者としての実存にこだわることなく、学生のわからなさにとことんまで付き合うべき
    • まともな就職に必要なのは、具体的職業能力ではなく、基礎能力(=SPIで測る内容)
  • 小・中・高の学びをむすぶ学力20の指標
    • 国語基礎能力
      • 教育漢字(小学校で習う1006字の漢字)の90%を読み,80%を書くことができる
      • 適度な速さと大きさでノートに文字を書くことができる
      • 主語・述語がわかり,助詞が使い分けられる
      • 動詞・名詞・形容詞を見分けることができる
      • ローマ字の読み書きができる
    • 国語教養
      • 名作と言われる文学・伝記・科学的読み物を年に2冊は読んだ経験がある
      • いくつかの詩歌・諺などを暗唱した経験がある
      • 国語辞典・漢和辞典を使い,未知の語句を調べることができる
    • コミュニケーション能力基礎
      • あるがままの事実を時間的経過をたどって書き綴ることができる
      • 一定の分量の話を整理し,人に伝えることができる
    • 計数能力基礎
      • 四則計算がよどみなくできる
      • 基本的な単位換算ができる
      • 基本的な図形が見分けられる
      • 時間・距離の目算や概算ができる
      • 割合(比・歩合・百分率)の意味がわかる
    • 社会理解基礎
      • 地図の上で東西南北をたどり,簡単な略図を描いて道案内ができる
      • 日本列島のおおよその形を描き,都道府県の位置がわかる
      • 代表的な世界の国々の位置が予想できる
    • 学習習慣
      • 家庭学習(最低1時間)が習慣になっている
      • 学習用具の使い方に習熟している

2023/07/30

Chen, L. (2022) How do international faculty at Japanese universities view their integration?, Higher Education, 84, 845–862

  • 外国人教員の統合
    • 同化主義(assimilationism):移民が受け入れ国に適応すること←一方的な適応を強調、双方向の相互交流を強調する一般的な議論と矛盾
    • 多文化主義(multiculturism):移民の存在を重視することが望ましい←文化的・民族的な側面を強調しすぎ、移民自身の順化と同化の構築過程が不明
    • 構造主義(structuralism):雇用や住居といった社会構造の客観的側面を強調←外国人教員の形骸化を説明できない
  • Theories of Action(Argyris and Schön 1978)
    • 信奉理論(espoused theory):実 践に耐えうると行為者が信じ,実践の場で実行している理論:個人の規範や前提によって構成される
    • 使用理論(theory-in-use):人が実践において心から信じ,実際に使う理論

  • 日本では「格差」(国際的な内容や視点を統合することによる多様性と、新自由主義的な枠にはめられた学問市場による卓越性)が実践の中で別々に扱われる
    • 主に教育活動に携わる教員(ネイティブ教員):より多様性に貢献することが期待される
    • 研究教員:卓越性と日本の大学の世界的地位を促進する主体であることが期待される
    • ⇔中国や韓国はより単純、日本は複雑、統合の実践が多様になる傾向

2023/07/29

村山功(2011)「概念変化についての諸理論」『心理学評論』54(3),218-231

  •  概念変化研究の始まり:「教えたはずの基本的な内容が正しく理解されていない」
    • その原因は、教える前から持っていた知識(=学習者が教育内容を誤解しているのではなく,教える前から持っていた知識が教育によっても変わらない)
    • →素朴概念、誤概念、前概念、自然派生的理論、代替的枠組み
  • 素朴概念の克服が困難であるなら、どのような条件で概念変化は生じるのか?
    • 前概念C1、後概念C2の時、(1)拒否される、(2)丸暗記される、(3)C1がC2に置き換わる、(4)C1にC2が取り込まれる
    • 概念変化の4条件:(1)C1に対する不満がある、(2)C2が理解可能(intelligible)である、(3)C2が妥当(plausible)である、(4)C2が生産的(fruitful)である
  • ↑への批判:概念が明確に文節化でき、記号で定式化可能、合理性を過大視している、
    • →動機づけ、目標、制度的・社会的要因の考慮が必要
  • 素朴概念には変化しやすいものとしにくいものがある
    • 信念(belief)=一文で表せる単一の考え
      • 血液に酸素を送るのは心臓である(誤信念)→肺という信念を与えれば概念変化が生じる
    • メンタルモデル=個別の信念が組織化されたもの
      • メンタルモデルの修正を転換(transformation)と呼ぶ
      • テキスト=一文一文は信念レベル→学習者が統合してモデルと理解する必要がある→信念修正の積み重ねで転換が生じる(メンタルモデルを構成する重要な誤信念が修正されるかに依存)
    • カテゴリー:実態、プロセス、心的状態の3つ
      • 別の枝のカテゴリーは排他的な関係(人工物と生物の場合、動かすことができる、動くことができるは全く別)
      • 垂直方向の分類は上位カテゴリーに分類する限り誤りが生じない
      • 水平方向に異なるカテゴリーへ入れることがある→本来対象が持たない属性を付与してしまう→分類し直す(カテゴリーシフト)はかなり困難な学習を伴う
  • 断片的知識(knowledge in pieces):人間の知識は断片的だ、個々の知識はかなり単純な内容しか表していない→複雑な認知や行動が可能なのは,断片的な知識が組み合わされて用いられるため
    • 「知識の組み合わせ方」が重要
    • 公式を知識として教えることは難しくない→具体的な状況で正しく適用させたり、現象に対して大まかな解釈や説明をさせるのは困難→直観的理解はどのようなメカニズムで行われるのか?
    • 物理学習の単純な知識=p-prim(phenomenological-primitives)、現象の観察に基づく
    • 人は現象を見ると関連するp-primを呼び出す
      • 呼び出しの優先度(呼び出されないものも、置き換わるのではなく残っている)
      • 信頼性の優先度:呼び出されたp-primを使うかどうかを決める
      • これら2つの優先度で推論がコントロールされる、優先度は文脈に依存する
    • 重要な示唆:(1)個々のp-primについて正しい・誤りは意味がない、(2)素朴概念も科学的概念も、同じようなp-primを含んでいる、(3)科学的概念の獲得は学習の終了を意味しない(概念を正しく獲得しても現象に適用されるには、呼び出しや優先度の変更が不可欠)
  • 概念変化研究で学習者特性を考慮していない⇔やる気があっても変化しないのはなぜかが出発点、やる気がないから概念変化しないという説明は概念変化自体を明らかにしない


2023/07/28

Van Dijk, E., Geertsema, J., vonder Schaaf, M., van Tartwijk, J. & Kluijtmans, M. (2022) Connecting academics’ disciplinary knowledge to their professional development as university teachers: a conceptual analysis of teacher expertise and teacher knowledge, Higher Education

  •  従来のFD=非文脈的で汎用的な教育学的知識やスキルに重点を置きすぎている(=大学教員を単なる学習促進者に位置づけすぎている)
    • 大学教員としての成長を学問としての成長と区別して考えてしまう問題
    • 大学教員は、一般的な教育学原理を特定の学問的文脈にとって価値があるものとは認識しない可能性
    • 教育学やファシリテーション・テクニックへの道具的な焦点は、カリキュラムを構成する知識への注意を犠牲にしてしまう可能性(←大学教員としての役割を担う学識経験者は、個人としてもチームとしても、何を教えるか、どのように教えるかを決定する極めて重要な役割を担っているため)
  • →学問的知識が大学教員としてのアカデミックの発展にどのように結びつくのかについて、より深く理解する必要がある
  • →学問の専門知識と学力発達の関連性を促進する、より総合的なアプローチを可能にする理論的基盤を提供したい

  • 専門家は評判や資格によって識別されるべきではなく、専門家としてのパフォーマンス、すなわちある領域の本質を捉えた代表的なタスクにおける再現可能な優れたパフォーマンスを確立することによって識別されるべきである(Ericsson & Smith, 1991; Ericsson et al., 2018)
  • スクリプト:専門家が戦略、意思決定、手順をルーチンの形で自動化すること
    • 熟練した大学教員は、講義を開始する際に、何をどのような順序で行うかをガイドするスクリプトを持っているのではないか?⇔ルーチンは年数を経ると更新が難しくなる=ルーチン重視はイノベーションを阻害するリスクになる
  • 意図的実践:パフォーマンスの自己改善を目的とした活動を繰り返し実践し、何をどのように改善すればよいかを即座にフィードバックすること
  • expert performance perspective:大学教員の能力開発を支援するためには、大学教員が何を開発しなければならないかを理解することが重要
    • 46のフレームワークを分析・統合→大学教員には6つの相互に関連する課題がある:「教授と学習支援」「教育デザイン」「評価とフィードバック」「教育指導と管理」「教育学と研究」「専門性開発」
    • ↑ただし焦点の狭さが批判されている:(1)複雑な専門領域を代表せず、客観的なパフォーマンス基準を持つ安定したタスクに焦点を当てる傾向がある、(2)個人とタスクのパフォーマンスに分析の単位を絞ることで、エキスパート・パフォーマンス研究は、専門性の獲得に及ぼす社会的・文化的文脈の影響や、何をもって専門性とみなすかを見落としている、(3)知識が何かについて考えていない
    • →Adaptive expertise研究へ

  • 教師の知識研究
    • Pedagogical content knowledge:特定のトピックをどのように教えるか、
      • ただし、シュルマンは、カリキュラムで何を扱うか、いつ扱うか、カリキュラムの中で他の教師が教えていることとどのように関連するかに関する知識を重視していない
    • Powerful knowledge:「生徒にとって価値ある知識とは何か」に焦点化
      • 社会的実在論:あるテーマや学問分野の概念的・理論的知識は、非理論的知識や日常的な経験とは区別される(このような概念的・理論的知識が「強力な知識」)←自然界や社会界、そしてそれがどうあるべきかという社会的な対話へのアクセスを提供するからパワフル
      • 学習者が何を知るべきかではなく、学習者が何ができるようになるかという観点からカリキュラムを規定する戦略はダメ、「学習者が何かを専門的にできるようになったとき、学習者が知らなければならないことは何か?」を問うべき
      • 生徒に教える知識は教師にとって「与えられたもの」と考えるべきではなく、むしろ教師によって積極的に選択され、提示され、配列されるもの→カリキュラムに含めるべき価値ある分野知識とは何か、なぜそうするのか、という点の重要性を強調する(なのに、学問的知識がカリキュラムに変換されるプロセスは注目されない)

  • 適応的知識(Adaptive expertise, Hatano & Inagaki 1984)
    • 適応的専門知識⇔日常的専門知識
      • 適応的な専門家=不慣れな状況でも比較的高いレベルで遂行できる
      • 日常的な専門家=慣れ親しんだタスクを高い有効性と効率性で遂行できる
      • 教職は揮発性の高い専門領域
      • 何を教えるべきか、なぜ教えるべきか、特定のトピックをどのように教えるべきかに関する知識は、教師の適応的専門知識にとって重要な抽象的知識の一種
    • 実践的知識:行動指向で、人や状況に縛られた暗黙知と定義(実践における教師の行動を導く知識を記述するために開発された)
      • 知識がどのように解釈され、統合されるかについては、生徒、教科、指導に関する信念が重要な役割を果たす
      • ある学問分野において何が価値ある知識とみなされるのか、またそれはなぜなのかについての教師の知識は、教育実践における教師の行動を導く知識基盤の一部と考えることができ、特に生徒に何を教えるかについての決定に関連する

  • FD実践の3側面
    • FD目的に、教員の専門的知識への接続という目的を明示的に含めることが重要(「教育学的内容知識」「強力な知識」「適応的専門知識」「実践的知識」の概念が目的の明確化に有用)
    • 教員の学習と開発に焦点を当てたFDデザインが必要
    • FDの組織化を検討すべき

2023/05/28

Jay R. Dee & Amy E. Collinsworth (2023) Challenging the Pervasiveness of Organizational Stupidity in Higher Education, Change: The Magazine of Higher Learning, 55:3, 4-11

  • 大学とOrganizational Stupidity:大学の経営慣行は、OS文化を意図せず強化している可能性がある
  • 批判的な考察、発言、有意義な参加の文化を確立するためにリーダーが取るべきステップを提案する
  • 大学への民間経営導入=時間が重要になる=限られた時間で成果を出す
    • →個人:燃え尽き症候群
    • →組織:学習・新たな知識構築の能力制限
  • 組織構造や文化は、省察を阻害することがある
  • OSの分析対象は個人ではなく組織:特定の意志決定の問題や意志決定者の限界を説明する概念ではない → 構造・文化・ルーチンの中に埋め込まれたStupidityに注目
  • なぜメンバーが省察を避けるのか?
    • 発言を恐れる、現状維持を好む → オープンに話そうと言っても話さない
    • 決定に対する説明が不足している → 正当性の欠如 → メンバーが正当性を要求しなくなる
    • 目標達成の強迫観念 → 適切なアウトプットを生んでいるかどうかを疑わない
  • OSが続くと、階層的な権力の強化につながる
  • 大学への民間経営手法導入は、批判的に分析されずに導入されてきた
  • ↑有効性は誰の視点で評価するかで変わる
    • 迅速実行、中期計画の合意形成=リーダーにとっては好都合(有効)← OSにより批判から守られる
    • ↑安定が必要な環境下ではOSが有効 ← Organizational Hypocrisy(組織的偽善)=リーダーの発言と行動が矛盾する
      • 例:公平性を重視する宣言を出す→取り組みに予算をつけない
  • 偽善がはびこる=メンバーに感情的な犠牲を強いる
    • 組織に疑問を持つことはプロフェッショナルではないという文化
    • →組織に忠実であることを優先する
  • メンバーが感じる不協和→疎外感や離職につながる
  • OSを維持する3つのマネジメント
    • 組織的沈黙:組織の問題に対する意見や懸念を差し控える
      • 批判をすると、上位者がトラブルメーカーと呼んだりチームプレーができないと言う
    • 時間と資源の不足:上位者が資源の配分や意思決定のタイミングをコントロールすることで、時間と資源の不足をつくりだすこと
    • 迅速な解決:問題が起きたらすぐに対応すること
  • OSにどう対処するか?
    • リーダーが省察する
    • 構造に変化を加える:大学組織はサイロ→ネットワーク構築が重要
      • 例:Equity Scorecardプロセス=執行部と教職員が一堂に会し、人種や民族ごとに分けられた学生の経験や成果に関するデータを検証し、学業や管理運営における部門横断的な変更を提案
    • 文化を変える(ただし困難):パフォーマンスを時間基準で考えず、意味・目的基準で考える
    • 権限の再分配(≠共有):階層上の地位とは関係ない権限の中心地をつくる

2023/05/24

舟津昌平(2020)「制度ロジック多元性下において科学と事業を両立させる組織の対応」『組織科学』54(2), 48-61

  •  近年の研究は、制度ロジック多元性が前提
    • コンフリクトをもたらす一方、イノベーションの機会でもある
    • →コンフリクトの軽減は、イノベーションの毀損になる可能性(イノベーションの阻害にもなり得る)
    • →制度ロジック多元性を保ちながらコンフリクトをマネジメントすることが重要
  • 制度ロジック多元性:組織に対して複数の制度ロジックが関与し、影響を持っている状態
    • 組織の対応のパターン:
      • 区分化を行った上で複合・ブレンド
      • 選択的に結合
      • 状況に応じてスイッチ
      • →3つとも、競合するロジックの中で、新しい支配的なロジックを構築することで競合を解消(組織がいかに多元性を削減するかがテーマ)
  • イノベーションを目指す組織=多元性を削減せず、維持したまま、多元性が生み出すコンフリクトに対応
  • 産学連携事例(医学部・製薬企業):新薬の創造が目的
    • 企業→大学へ研究者派遣、日常的なコミュニケーションの下共同研究
    • 企業+国の資金
    • 数十の研究テーマ→スクリーニング→創薬標的限定→1/10テーマ
  • 調査設計
    • 5件のべ7名470分の面接+資料等
    • 分析に用いる2つの制度ロジックを先行研究に基づき整理・概念化
    • 2つの概念に従って発話データをコーディング
    • 集約的分析コード:下位概念を内包した抽象次元において最も上位に該当する概念群
    • 二次概念:原データの表現を2つのロジックの概念に沿って抽象化
    • 面接後24時間以内にメモ作成
  • コンフリクトの解消
    • 制度設計:双方の事情を勘案して妥協点を探った結果の2年ルール
    • ルール策定:企業が打ち切ったテーマは大学が他企業とでも継続可能
    • 資金が企業+国であることが、事業ロジックの圧力を緩和する材料になった
    • →第3のロジック(国家ロジックの道具的活用)=2つのロジックの一元化でもハイブリッドでもない多元性への対応
    • なぜそうなったのか?:本事例は国の関与や高い公共性が求められる特徴+ケアのロジック(患者さんのため)→2ロジック以外がドミナンスを持ちやすい事例

2023/05/21

緒方広明・江口悦弘(2023)『学びを変えるラーニングアナリティクス』日経BP


  • 自己説明:文章や他の媒体に提示された新しい情報を意味づける試みにおいて、自分自身への説明を行う活動(Chi 2000 p.163)
    • プレゼン=理解していることを言語化して発表する
    • 問題を手書きで解答し、その動画の説明を後からテキストで入力する
  • アクティブリーディング:意図と目的を持った読み
    • スキミング、スキャニング、自問自答、音読、暗唱、要約作成、マーカー・メモによる注釈付け、再読など
    • SQ4R:予測(Survey)、質問(Question)、読み(Read)、暗唱(Recite)、復習(Review)、記録(Record)
      • 記録は、メモを取る、注釈を書く、マーカーを引く等で読書記録を残すこと

2023/05/20

勅使川原真衣(2022)『「能力」の生きづらさをほぐす』どく社


  • 個人の能力が大きく変わることはないのだから、能力を評価する社会の方を見る必要がある。
  • 教育社会学は、なぜそうなってしまうかを問うことでメカニズムを明らかにしたり、そのような仕組みを後世に継ぐべきかを考えて提案する。
  • 日本の教育は、機会の平等を重視したことで結果の不平等を放置した。平等と信じられた日本の教育は、生まれの格差を是正しようとする気持ちを持ちにくくしている。そのため、うまくいかない人は努力が足りない人という主張に、社会が違和感を持てない。
  • 大学の教育方針の大転換は、社会が大学にかけた圧力そのもの。
  • 儀礼化した学校は精査されない。そこで獲得するとされている能力も深入りされずに顔パスになる。一人前になるには学校に行かないといけない、しかし能力をはじめとする教育内容の細部について、誰も興味がない。
  • 学校という権威に表面的な服従を示すことが実際の生きる力とは皮肉の極み。学校は通過点であり、照準は社会。実際に学習指導要領にも、「社会に出てからも学校で学んだことが生かせるよう」学びに向かう力・人間性、知識・技能、思考力・判断力・表現力の3つを育むとある。社会が求めるものを教育現場が下請けで子どもに教えている。
  • 人事部が人材開発業界という第三者を必要とした。人事は、昇格・降格などのシビアな内容を扱うため、公明正大さが求められる。そのため理論武装が必要で社員の納得感の醸成に気を遣う。なのに、人事もさまざまな業務を経験させるために数年ごとの配置換えがあたりまえ。
  • 人材コンサルをする外資系大手、保険会社から派生している。保険会社として保有する年金データを活用して応えたのが報酬専門のコンサル。報酬は何に基づいて決めれば納得性が高いか?→能力の違いに注目すればいい→能力専門のコンサル会社誕生
  • 全員を1つの同じ能力の獲得に向けて競争させる、キャッチーで訴求しやすい能力のレベルを測ることは危険(むしろ組織全体の機能を担い合うことが大事)
  • 組織の業績は組織風土次第:しかし、何が風土かに気づくのは難しい
  • →風土の醸成に大きな影響を与えるのがリーダシップ
  • 好業績者(ハイパフォーマー)と同じ行動を取っている度合いをコンピテンシーと呼ぶ
    • マクレランドがコンピテンシーモデルやコンピテンシーディクショナリーをつくった
    • できる人は脳みそが違うといわれるより、仕事の成果はよい行動ができているかどうかで、次はこの行動を取れるようにがんばろうと言われる方が納得感が高い。
  • →できる風を装う行動をする人が続出
  • ピクチャー・ストーリー・エクササイズ:正解がなくどうとでも解釈できる絵について作文を書き、そのキーワードを分析して評価
    • 画面の中心に白衣を着た女性が試験管を振って、それを眼鏡をかけた女性が見ている絵。
    • 実は性格を調べている検査
    • 行動は装いやすいといっても、自分が行動するとできない人がいる。行動の根底には性格があるから。
  • →マクレランドは氷山モデルを示す:知識・経験・スキル(表層=習熟可能)、マインドセット(意識・意欲・心構え・価値観)(中層=変容可能)、性格特性・動機(感情の素)(深層=変容困難)
  • 個人の能力の問題で仕事ができる・でき内を決められると、個人に無限の努力が強いられる。
  • 能力の商品化が進んだ先に、人の心・精神状態まで能力に取り込まれた。
  • 必要なのは違いをふまえること:背が高い人に、なんで背が高いんだ、病院行ってこいとは言わない。
  • 精神状態や発達特性は、わかれば解決するものではない。わかっても何も進まない。
  • 科学という客観性に傾倒するあまり、主観を置き去りにしてきた。プロなら主観は敵と言われる。どこかの誰かの客体ばかりが重視され、主体は我慢に我慢を重ねてきた。
  • →まず相手の話をとにかく聞くこと。聞くことこそが、相手にはほしくてたまらなかった私に関する情報を教えてもらったと同じ信頼を作り出す。その上でなら、どこかの誰かの話の客観性・エビデンスについても安心して聞く耳が持てる。
  • 人間は複雑なものをわかりやすく・はっきり提示する習慣が染みついている。

2023/05/16

石田雅樹(2022)「アメリカ高等教育をめぐる対話」『宮城教育大学紀要』57, 1-11

  • デューイ−ハッチンズ論争:
    • 進歩主義論者 VS 教養主義の復権を掲げる復古主義者
    • 進歩主義・経験主義・プラグマティズム VS 永遠主義・古典主義・現実主義
  • ハッチンズの「アメリカにおける高等教育(The Higher Learning in America)」
    • 教養を深め専門的知識を習得するはずの大学教育が全く機能していない
    • 高等教育は、金儲け主義、デモクラシーの誤解、進歩の誤った考えがある
      • 金儲け主義:寄付金・学納金獲得、社会関心に沿った学部設置
      • デモクラシーの誤解:進学者増が学問関心でなく失業対策
      • 進歩の誤った考え:現在より未来はよくなる(=進歩論)考えが過去(古典)との決別を促した
    • その解決策:教養教育(general education)の再生
      • 歴史を超えて伝えられてきた普遍的な知識
      • → グレートブックスを読むことを提案
      • → テクストを正しく読み・書き・考え・話すための技法の修得
      • → 新高等教育プラン:4年の教養教育修了者のみが高等教育(専門学科)を学ぶ
        • 3つを3年かけて体系的に学ぶ(自由選択履修はなし)
          • 形而上学:学問全体と統括する原理(哲学)
          • 社会科学:倫理学、政治学、経済学(これらを応用したのが法学)
          • 自然科学:物理学など(これらを応用したのが医学・工学)
  • デューイの3つの批判
    • 権威主義的な真理概念:哲学を固定的でい永遠の権利原理としている、それはデモクラシーを脅かす
    • 経験主義と自然科学の軽視:古典の真理のみが重視されると、経験の観察から真理を見つける過程(自然科学の探究プロセス)が軽視される、テクストの解釈のみで事足りるという考えが現代になじまない
    • 社会的要請からの大学の撤退:問題はわかるが、代替案を示さず理念を述べても問題からの逃避にしかならない
  • ハッチンズの反論
    • 批判になっていない、議論を正確に反映していない
      • 固定的・永遠はデューイの創作、教養で自然科学は重視している
    • 大学の使命がデモクラシーの建設と明言している
    • 教養の後で、聖職者、医師、弁護士、教師が、形而上学、社会科学、自然科学を同組み合わせるかを提案している
  • 職業教育と教養教育
    • 中等教育を教養と職業に分離する二元システム導入をデューイは批判(社会的分断を生み、デモクラシーを脅かす)
    • ハッチンズ=教養教育から職業教育へ進む ⇔ デューイ=職業教育の中に教養教育を見出す
    • どちらも職業教育と教養教育を二者択一ではなく、異なる方法で統合しようとしていた
    • ← 社会的効率性の名の下で、特定技能の修得を進めることは一見合理的だが、技能の陳腐化で大量の失業者を生む非効率な帰結になるかも

2023/05/15

近森憲助・谷村千絵・上野正恵(2017)「教育研究と教育実践における批判的実在論(クリティカル・リアリズム)の可能性」『教育学研究』84(4), 59-69

  • 批判的実在論(クリティカル・リアリズム):ロイ・バスカーに始まる科学哲学、実践哲学
    • 見えないものをも実在と捉えようとする
    • 特に教育は言葉で捉えきれない
    • 「学習とは何か」「どうしたら学習とは何かを知ることになるのか」2つの問いの区別が曖昧 ← 何か(what:存在論的な問い)とどうしたら(how:認識論的な問い)を明確に区別しないと、認識できないものは存在しないものとされる ← 現代は認識論が支配的
    • → 学習についてそれは何かをまるごと問う=知ることができるかはともかく、まず対象に向かって問いかける
  • バスカーの存在論の3つの主張
    • 知識対象と対象についての知識の関係
      • 太陽:自存的=人が太陽についての知識の生むにかかわらず存在している
      • 我々の知識:意存的=さまざまな方法による太陽についての我々の認識に根ざす(認識されないなら太陽はないものとされる)
        • 意存的な知識は誤っている可能性がある → だからこそ更新・洗練へ開かれている必要がある
    • 現実世界は開放系
      • 現実世界の現象は多くの要因が複雑に絡み合って生起する
        • 学校カリキュラムは学校が閉鎖系であることを前提に作られる
        • 実際には部分的な閉鎖系 → 開放系として学校外の教育資源を活用し、生で本物の学習機会の提供が求められている
    • 現実世界は存在論的な深さを持つ
      • 教師は生徒の行動の全てを経験として捉えない ← 教師自らの関心をもとに注目した一部の行動を捉えるのみ ← それを基に評価する
    • 批判的実在論は、これら3つを全て含んで実在と捉える
  • 批判的実在論の3段階
    • 基礎的・批判的実在論:人間の生み出す知と現実世界は別物(科学を可能にする)
    • 批判的自然主義:自然主義の可能性をあらためて描出
    • 超越論的実在論:科学の基礎となる実在を巡る議論へのバスカーの答え
    • 後者2つを1つにして、批判的実在論が定着
  • バスカーの言葉
    • 不在の不在化:目に見えるものを手がかりに見えないものを思考し、確認する実践・実験。これにより人間は「少し」自由になる。
    • 対案がない:不在の不在化に進まず、破綻、堕落、思考停止
    • 具体的個別=普遍:教育は具体的で個別な存在であると同時に、なんらかの普遍法則の相互作用を体現する
    • → 批判的実在論は、経験主義、現実主義ポストモダンを批判する
      • 世界には層的な深さがある、存在は皆異なり、それぞれ変化し、相互作用する。この世界でともによりよく生きるための工夫を生み出す知の創出を人はできる。
  • 南アでの西洋文化:理科教育で土着知は迷信や神話とされる
    • → 科学知と土着知の両者を、学習者自身が自分の生きる社会的・生態学的文脈に位置づけ、それぞれを関わらせる学習を重視する
    • 日本の防災教育との相似:科学知と学校知のパラダイムが違う
  • 学際性は社会科学の必要条件

2023/04/25

Ruan, J., Cai, Y. & Stensaker, B. (2023) University managers or institutional leaders? An exploration of top‐level leadership in Chinese universities, Higher Education.

  • 中国の大学の二重統治機構=学長と党書記
    • 両者は自らのリーダーシップをどう認識しているのか?
    • →象徴的より構造的=組織のリーダーよりも経営者の自認(⇔中国外では象徴的次元が強調される)
  • RQ
    • 中国の高等教育機関のトップレベルの指導者は、自らのリーダーシップをどのように認識しているのか?
    • 中国の公立高等教育機関では、どのような配置がなされているのか?
    • Bolman-Dealフレームワークは、中国の状況においてどの程度適切か?
  • 「中国の特色ある高等教育」=イデオロギー的パラドックス=機関の自律性(グローバル思想)⇔実質的な権限は国家(檻の中のダンス)
    • ただし、実態は複雑
      • 学長になると、党書記と同じ共生上の地位を得る
      • 学長になるには、政府高官と同じ基準を適用される
      • しかし、学長はアカデミックに関心、党書記は政治に関心
      • 大学長会議の党員は中国共産党大学委員会の委員
      • つまり、学術的役割と政治的役割が融合する
  • Bolman-Dealの4つのリーダーシップフレーム:リーダーが組織を見る方法、とるべき戦略的行動、役割をどう果たすかのモデル
    • 構造的フレーム
      • リーダーの優先:目標の明確化、組織構造と環境の整合性、目の前のタスクに適した役割と関係の確立
      • 効果的な組織:方針、連携、権限の範囲が明確に定義され、一般に認知されている。合理的な構造が確立されているため、メンバーは自分の義務や貢献を認識
    • 人的資源フレーム
      • リーダーの優先:メンバー
      • 効果的な組織:スタッフが組織に対して献身的かつ忠実であり、彼らの個人的なニーズや目標が満たされる組織
    • 政治的フレーム
      • リーダーの優先:組織を利益闘争の場として理解(権力基盤を構築し、感受性を発揮しながら適切に権力を行使すること)
      • 効果的な組織:政治的現実を認識し、紛争を解決したり対処したりする
    • 象徴的フレーム
      • リーダーの優先:織をユニークなものにすることに熱中し、その情熱を人々に伝える。
      • 効果的な組織:意味を創造し、スタッフに方向性と目的を与える要素を特定すること
  • Bolman-Dealの功績は、経営的有効性とリーダーシップ的有効性を統合したこと
    • 経営的有効性=構造的志向と密接に関連→リーダーが現状維持を好む→管理者の役割を果たしやすい
    • リーダーシップ的有効性=政治・象徴志向と関連→リーダーが変化を好む
    • 両方に関連=人的資源
    • どのリーダーがマネジメント志向かリーダーシップ志向かを判別するために、このモデルを使った
  • 調査設計:6人のインタビュー(全員女性←男性にコンタクトしたがボツ)
    • コンビニエンスサンプリング+スノーボールサンプリング:国際会議でアプローチ→個人的コネクションで研究参加
    • 1名が学長兼党副書記長、他はリーダーポジションなし(副学長、党副書記長)
  • 結果
    • 4フレームは全て発現した=リーダーが多様な認知レンズで自分の組織やリーダーシップを捉えている
    • 発話頻度:構造が支配的、人的資源が2番目、その他は低頻度(⇔アメリカ・カナダでは象徴的が高頻度)→経営的有効性は高いが、リーダーシップ有効性は低い
    • 中国は階層的な社会的価値観=経営慣行が権威主義的になりやすい=組織への信頼が低い→リーダーシップを活用するイノベーションが困難
    • 西洋=個人主義⇔中国=集団主義(個人のニーズよりも集団の調和・社会的義務を重視)
      • →リーダーは、他のリーダー、部下、利害関係者との関係構築に特別な注意を払う
      • 形式上の最高機関があっても、党幹部が出席して合議制の意思決定を行う
      • 研究参加者も、アカデミックリーダーと政治家を区別せず、どちらも必要と言う
      • →曖昧な二元論は内部対立を生みやすいが、実際にそれを実感している人はいない
  • トップリーダーは、学長と党書記を行き来するなど、キャリアの中で流動的、時間の経過と共にリーダーシップのあり方の考えが変化するのではないか
    • →Bolman-Dealモデルは、中国の大学を理解するには有用でない
    • →制度的視点を取り入れるべき(制度的環境=リーダーシップが組み込まれている政治的領域や統治機構を無視できない)
    • →制度論者は、組織的なリーダーと制度的なリーダーを区別している(Washington et al.2008, p.720)
      • 前者は道具的に目的を達成することを好み、後者は組織の実践を導く上で核となる価値や規範を重視する

2023/04/24

Lee, J,. Yat Wai Lo, W. & Abdrasheva, D. (2020) Institutional logic meets global imagining: Kazakhstan’s engagement with China’s Belt and Road Initiative, Higher Education

  •  高等教育のグローバル化=ロジック間の葛藤を高める
    • カザフスタンを事例に、大学が一帯一路構想に関与する動機を解釈する。
    • → 同型の圧力に屈したり、新自由主義的な文脈から国際化を模倣したりするのではなく、現実的な利益を得るために部分的な代理性を発揮していた
  • 目的:カザフスタンが高等教育を通じてBRIに貢献していることを明らかにする(執行部の視点で、BRIに乗って国際的活動を推進する動機を明らかにする)
    • ← 制度ロジックを用いて分析する
    • ↑ 新制度論が論じる同型性を想定するのではなく、構造とエージェンシーの間の複雑な関係を明らかにできるため
  • Shields and Watermeyer(2020)の貢献:英国の大学の制度ロジック=自律的(知的探求と社会批判の伝統を守ることを推進)、功利的、管理的(競争環境に置き、生き残るためにヒエラルキーと官僚主義を正当化)
  • 方法:BRIスキームで中国側と協働した経験のある副学長、副学部長、学部長、国際部長へインタビュー、10機関17名、大規模国立大から小規模大まで
  • 政策について
    • BRIは曖昧で修辞的、現実問題に踏み込むには物足りない
    • 中国との共同活動は控えめ、留学生もほとんどいない
    • 中国との文化的なつながりを強調する取り組みなのに、文化に言及する人がいない
  • 制度ロジックを明らかにするための構造化質問
    • BRI関係の大学と協力する際の目標は何か?
    • BRIの文脈で、あなたの大学が達成したマイルストーンは何か?
  • 10機関中8機関で、BRIとの関わりを支える中心ロジックは功利主義的(=中国中心主義ではなく、カザフスタン中心主義)
    • 功利主義となる3つの動機
      • 社会に中国語にニーズがあり、カザフスタンの学生が中国の教育を受けられるようにしたい(留学+ブランチキャンパス)
      • 国内に雇用ミスマッチがあり、卒業生の雇用確保のために中国語を学ばせたい
      • カザフスタンの教育の質の低さ→中国で学ぶべき
    • 中国との関係はトップレベルで起こっているだけで、実行に移されていない、具体的な情報も持っていない。
      • ↑歴史的に中央集権的な意思決定と、政策の失敗に対する懲罰的な措置がシステムとしてある
      • →組織の自律性を高める努力はあるものの、機能していない
    • BRIは中国側の意図するプラットフォームとして機能せず、カザフスタンにとっての収益拡大・雇用拡大・中国式教育へのアクセスの3つの実利を得る手段と認識されている。
      • ←背後に公的資金減少を補う動機がある。
      • 組織は、社会的文脈に縛られた複数の制度ロジックの上で活動しながら、絶えず直接的な利益を求めている

    2023/04/23

    Henningsson, M. & Geschwind, L. (2020) Recruitment of academic staff: An institutional logics perspective, Higher Education Quarterly,

    • 採用:有能な応募者を特定し、引きつけ、その職業選択に影響を与えるための組織の集団的努力(Playhart, 2006)
    • スウェーデンの国立大学システムの特徴:分権化と規制緩和 ⇔ 強力で保護的な労働法
    • 3つの職:正教授(professor)、准教授・上級講師(lektor)、助教授・准上級講師(biträdande lektor)
    • スウェーデンは、学術職の移動が少ない(インブリーディングが多いから?)
      • 教授の7割は出身大学の学位を持つ
      • 62%の教授職が内部候補者
    • 研究方法:7大学14学部長にテニュア採用についてインタビュー(採用のプロセス、良い採用とは)
    • テキストデータを制度ロジックで分析
      • 競合する制度ロジックが、組織における矛盾の説明と理解をもたらす+ミクロとマクロの両視点を兼ね備えている
        • マクロ視点:制度に関する構造的な見方ができる
        • ミクロ視点:構造的な視点を行動・プロセスに結びつけ、個人のエージェンシーを分析に入れられる
        • ↑:「個人が物質的な生存を生産・再生産し、時間と空間を組織化し、社会的現実に意味を与える、社会的に構築された歴史的パターンの物質的実践、仮定、価値、信念、規則」(Thornton and Ocasio 1999)
        • ↑:ロジックが、学部長に対して、どのように採用活動を行うかについての認知的・実践的テンプレートを提供する
        • 大学は複数のロジックが共存する→市場主義的改革は、既存の環境を置き換えるのではなく、現実が重層化して、役割・アイデンティティ・資金・ガバナンスがハイブリッド化している(Canhilal 2016, Christensen et al 2018, Wnag & Jones 2020など)
        • Shields & Watermeyer(2020):自律的、功利的、経営的の3つのロジックを特定。
    • 調査結果
      • 学部長が語る採用の6ロジック:国家、市場、地域、家族(以上、Thoronton 2012のもの)+学問、経営者
        • 国家:国立大学は国の機関、法律に基づいて行動、公的資金で運営、透明性と正義が重要、事務局が制度と規則を遵守することで維持
        • 学問:実力主義、地位に就くための最重要要因、査読システムで維持、同僚性アカデミックガバナンス
        • 経営:ラインマネジメント・アドミニストレーションが組織の効率性を高めるための手続きを規定する(ただし、論理と役割は別。学部長が経営ロジックに従って行動する必要はない。)
        • 市場:学生、教職員、資源を求めて国際市場で行動する事実
        • 地域:研究グループの価値観を共有して大切にすること
        • 家族:家族への忠誠が正当性の源
      • 国の論理に従った透明性と正義が基本的な理想
      • 官僚的手続きによるプロセスの長さが問題←長いプロセスに耐えられるのは内部候補者のみ
    • 公募の始め方:メインは教育内容と学生数
      • 自由度・柔軟性を生むために任期付きポストを使うがこれは物事をうまく進めるための方便
      • 任期なしポストは、公募と競争的評価
    • 公募:基本は広い公募(=エリート主義的理想) ⇔ 応募者が多くなり処理が回らなくなる
      • 候補者を絞るために、条件を限定した公募を行う
      • コミュニティロジックに基づく協調性を盛り込むこともある
    • 候補者決定:基本はピアレビュー。

    2023/04/11

    Royston Greenwood, Mia Raynard, Farah Kodeih, Evelyn R. Micelotta & Michael Lounsbury (2011) Institutional Complexity and Organizational Responses, The Academy of Management Annals, 5(1), 317-371

    • 制度ロジック:組織の現実をどう解釈するか、何が適切な行動を構成するか、どうすれば成功するかを規定する包括的な原則の集合(社会的状況をどのように解釈し、機能させるかについてのガイドライン)
    • なぜ組織はロジックに従うのか?:重要な参照先からの支持を得るため
    • 組織は基本的に複数のロジックが働いている→組織が経験する制度的複雑さのパターンは固定的ではなく、組織内のプロセスによって形成される
      • 例:新興組織=ロジック間の対立激しい→特定ロジックの重要性が浮き沈みする
      • 例:成熟組織=ロジック間の安定した優先順位がある
    • フィールドレベルの研究では、ロジックの垂直的な入れ子構造は注目されず、水平方向の複雑性に注目してきた。
    • 垂直・水平のロジックの複雑さは、専門職や教育サービスで多い(職種が多いため)。
      • →2つの研究の方向:(1)複雑なロジックに直面した時の組織が採用する戦略、(2)複雑なロジックが組織の構造と実線にどう反映されるか
    • 分析枠組み

    • 先行研究の特徴
      • 2ロジックの検討が多い→多ロジックがもたらす問題を見落とす。
      • 2ロジックの非互換性に注目:対立・競合という暗黙の前提→ある文脈で非互換的なのに、別の文脈では調整することを捉える必要がある。
      • 断片化による組織が直面する複雑さの増大:複数のロジックが調整されない、メンバーによって別々に表現されている
      • 中心組織と周辺組織での複雑さの経験の違い:前者はより複雑、後者はより複雑でない
      • 組織構造は、複雑さをどう経験するかを形成し、利用可能な組織的対応のレパートリーを決める。=組織は、メンバー・グループが制度的な対処方法を理解・解釈・実行する場
      • 組織アイデンティティは、複雑さに直面した際の組織の裁量を形成する。=複雑さへの対処方法を理解するには、アイデンティティは明確に取り入れるべき(ただし、各アクターがアイデンティティを肯定的・否定的のどちらの認識か、その強さはどの程度かに注意)
      • 複雑さへの対処法としてのデカップリングの注目度が上がっている:デカップリングは、メンバーのモラルや生産性にどう影響するか? 
      • 両利きのハイブリッドな構造的配置を重視すべき:あるロジックの経験がないとハイブリッド化が容易
        • ハイブリッドを使用することを求める組織アイデンティティが求められる

    2023/04/10

    Upton, S. & Warshaw, J. (2017) Evidence of hybrid institutional logics in the US public research university, Journal of Higher Education Policy and Management, 39(1), 89-103

    •  カリフォルニア3大学の公式文書の比較
      • 文書は構造的な結果、意味がないという批判もあるが、文書化された記録は重要な意味を持つ。
      • 1200頁から研究、教育、エンゲージメントを抽出、抽出された200頁をテーマに沿ってコーディング。
    • 比較結果
      • 研究
        • バークレー:広さと深さ、ミッション推進エネルギー
        • イリノイ:他より明確、学際性の支持
        • ストーニー・ブルック:卓越性、パートナーシップが優先事項
      • 教育
        • バークレー:州外・留学生増加目標、公益奉仕、市民育成
        • イリノイ:州外・留学生増加目標、経済的・労働的利益
        • ストーニー・ブルック:リベラルアーツ教育の重要性、市民準備教育
      • 外部コミュニティ・エンゲージメント
        • バークレー:社会のための活動の重視
        • イリノイ:地元の生活の質向上
        • ストーニー・ブルック:経済的な使命の強調
    • 3大学は、市場原理・経済発展・労働力スキルに言及して正当性を訴える産業ロジックと、社会的目標・伝統的学術理念に言及して正当性を引き出す社会制度ロジックが共存している。
    • 組織的同型性はないのでは?
      • 例:3大学ともエンゲージメントを強調したが、その方向性は違う:バークレー=州全体、イリノイ=地元シカゴ市
      • ミッションや価値観に共通点はあるが同じではない
    • ある論理に象徴的に固執することで、別の論理に結びついたアイデンティティを維持しやすくする(システムゲーム的行動)
      • ←あるロジックの採用は、本質的に政治的プロセス
      • ある視点(州外学生増の強調→財政持続性アピール)が前景化する一方で、他の視点(高学歴人口増→州の経済利益増)が前景化することもシステムゲーム的行動で説明できる
    • イリノイの事例:産業ロジックの採用は、社会制度ロジックに新たな刺激を与える=ロジック間の相互依存を示す可能性

    2023/04/06

    Kezar, A. (2005) Redesigning for collaboration within higher education institutions: An exploration into the developmental process, Research in Higher Education, 46(7), 831-860

    •  一般に大学は、協働を支援する構造になっていない(サイロ、管理部門の官僚制・階層性)
    • 協働の「障壁」を理解することが重要
      • 事例研究として、教員と学生、学際研究・コミュニティベースの研究、チーム教育・学習コミュニティ、クロスファンクショナルチームの4事例を検討する
    • 協働を可能にする状況をつくるための8つのコア要素:これらの再設計が必要
      • ミッション、統合構造、キャンパスネットワーク、報酬、上位職の人の優先意識、外圧、価値観、学習
      • 調査では、個人的な仕事を支援する文化→共同作業を促進する文化へ、組織がどう移行したかを検証する
    • 協働の定義:課題領域の自律的な利害関係者のグループが、共有されたルール、規範、構造を用いて、その領域に関連する課題について行動・決定するための対話的プロセスとそれに関与するプロセス
      • プロセスが双方向のプロセスを伴うことが重要
    • 協働性の発展を研究した5モデルを整理:Mohrman et al.、Doz、Ring and Van de Ven、Arino and Torre、Kanter
      • 各モデルの主要な構成要素は4つ:発展の推進力(学習、関係性、外部条件、評価)、発展の段階、公式・非公式プロセス、初期条件

    • Mohrman et al(1995)
      • 発展モデルの重点領域:(1)基盤づくり(価値観を明確にして成果を特定、協働プロセスを学習、組織問題を診断)、(2)設計・再設計(チーム設立、支援)、(3)評価
      • 発展プロセス:戦略やミッションの再設計→教育・研究内容の変更→協働のためのトレーニング、協働原理に基づく新しい役割・役職・構造変更→協働を支援するためのプロセス変更→報酬設定(協働の動機づけを高めるため)
    • Ring and Van de Ven(1994)
      • 発展モデルの段階:(1)交渉(期待の共有、信頼構築、交渉)、(2)コミットメント(合意形成)、(3)実行(システム導入)
      • モデルの鍵:明確な目標、良好な対人関係、交渉(特に非公式な交渉プロセスが、公式のプロセスよりも重要)
    • Doz(1996)
      • 環境、タスク、プロセス、スキル、目標等の面での学習が、協働の発展に必要
      • Ring and Van de Venよりも学習と公式プロセスが重要
    • Arino and Torre(1998)
      • 学習よりも人間関係・ネットワークが協働の発展に重要
    • Kanter(1994)
      • 学習・公式プロセスより、関係性とネットワークが重要
      • 初期段階での信頼とインフォーマルな関係性に関連がある
    • 調査設計:どのように協働の文脈が生まれ、成長し、実行され、成功・失敗するか
      • 学習、人間関係、公式の評価がプロセスの発展にどの程度重要か?
      • 必要な初期条件があるか?
      • 正式な評価と非公式プロセスの役割は何か?
    • Unique case sampling(Stake 1994):事例に共通する特定の特徴の基づいて事例を特定する、その中で出現する特徴的な現象をよりよく理解する
      • →様々な分野で高い協働をしている機関を選んだ、少数の優れた協働があっても組織の特徴を反映していないかもしれない
      • アンケートで協働の状況を把握し、深さや質に基づいて選定
      • エリート機関や大型資金がない一般化可能な機関を選定
      • →公立4校を選定
      • インタビュー、文書、観察の混合法、書く機関20回計80回のインタビュー
      • スノーボールサンプリング(特定の活動ではなく、組織内の多くの人を対象にするため)
      • 協力者の記憶に依存するため、プロセスの展開については、対象者の認識を反映したものであることが限界
    • 結果
      • コラボレーションの3ステージ
        • コミットメント構築:外圧、価値観、学習、ネットワーク
        • コミットメント:優先順位、ミッション、ネットワーク
        • 維持:統合構造、報酬、ネットワーク
      • 人間関係は3段階全てで重要、学習と外部環境変化は第1段階で重要、学習は第3段階で重要
      • 大学人は目標や報酬よりも、人間関係で動かされる可能性が高い(Birmbaum 1991)
      • まずインフォーマルプロセスを重視して、その後に公式プロセスを確立する
      • しかし上位職は非公式プロセスに任せられないので、リエゾンオフィスなど、公式インフラを提供する、基盤なしには協働は推進できないのに

    2023/04/05

    Blanco, G. & Metcalfe, A. (2020) Visualizing Quality: University Online Identities as Organizational Performativity in Higher Education, Review of Higher Education, 43(3). 781–809

    •  大学の品質エンブレム主義を、リオタールのパフォーマビリティ概念で分析する。
    • 今の大学は質よりも名声を優先している。
    • 大学のブランディング:特定の価値の支持を構成する→マーケティングキャンペーンを通じて、個人主義、起業家精神等の新自由主義的な価値と一致する。
    • スクレイピングで、大学ウェブサイトのプロモーションシンボルの使用状況を収集
    • ポストモダン社会での大学:目的や機能が明確でなくなる→効率性が魅力的になる(=収入増、効率向上による正当性の向上)→問題は効率性を通じた正当性主張が、教育・研究の文脈から切り離されること=正当性の危機
    • 調査設計
      • AAU加盟校62大学のウェブサイトのaboutページの内容分析
      • 類似性顕著:学生写真、ランドマーク、ソーシャルアイコン、アクレディテーション、ランキング、ノーベル賞
      • 研究、国際化のアピール
      • パフォーマティブな効率性の見た目は、数字の表示に異存している

    2023/03/02

    Preuss, L., Fischer, I. & Luiz, J. (2023) Using sensemaking as a lens to assess student learning on corporate social responsibility and sustainability, Higher Education Quarterly

    •  センスメイキング:あいまいで不明瞭な問題を理解するために新しい情報に意味を付与するといった意味創出の社会プロセスのこと(Schwandt 2005)
      • 人は新しいことを経験すると、その意味を環境から手がかりを得て理解しようとする。
      • その際に、単に解釈するのではなく、行為・経験と解釈を繰り返しながらフレームを作り、さらに、組織的・文化的文脈の中で他者と進めていく点が特徴。
    • センスメイキングの3段階(Daft and Weick 1984)
      • 情報探索:主に外部環境の探索
      • 情報解釈:その意味を切り出す
      • 代替行動の特定と評価
    • CSRという複雑さを学ぶ際にもセンスメイキングは有用
      • 学生個人ごとにCSRに関する情報探索、解釈、代替行為の特定・評価には差異があるはず
      • →認知マップ(コンセプトマップ)の内容・構造の2点で個人の差を見る
    • 認知マップの評価
      • 網羅性:差異と統合が重要
      • 情報探索=単語数で評価
      • 情報解釈=認知フレームの最大到達数で評価
      • 代替行動=マップの主題コーディングで評価
        • CSRの用語を超えた語を使っている
        • CSR活動の効果を評価するかの問いが含まれている
        • 代替行動が明示されている
    • 英国研究大学、経営分野の学部生125名、キャップストーンモジュール、他分野の認知マップを提示、最終回直前の授業でA3白紙に何も見ずにCSR認知マップを作成する
    • 主な結果
      • マップ内の平均単語数=33、最頻語はEthicsの54,
      • 深さの平均=3.5、16%の学生しか深さ5に至らない
      • コース外の内容を書いた学生は少ない
      • →複雑な対象に対する意味づけや理由づけができる学生は少ない
        • サイロ思考の学生があぶり出された
        • 特にセンスメイキングの1→2と2→3を支援する教育が必要

    2023/03/01

    Pattison, P., Bridgeman, A., Bulmer, A., McCallum, P. & Miles, R. (2022) Renewing the Sydney undergraduate curriculum, Higher Education,

    •  シドニー大学のカリキュラム改革
    • なぜカリキュラム改革が必要なのか:青年期の発達知見の充実が背景
      • 研究大学=学生の多くは職業経験がない
      • 高次の能力が発達する時期:思考と行動の一致、自己認識、アイデンティティ、自己管理
      • こうした認知の統合はハイインパクトプラクティスを通じて発達する:プロジェクト、サービスラーニング、多文化経験
    • まず卒業時の能力策定からスタート


    • 卒業時の質に対応するカリキュラムの枠となる中心的内容を策定

    2023/02/27

    Gebreiter, F. & Hidayah, N. (2019) Individual responses to competing accountability pressures in hybrid organisations: The case of an English business school, Accounting, Auditing & Accountability Journal, 32(3), 727-249

    •  NPM型大学政策=専門職ロジックに説明責任を持ち込んだ
      • 各教員はどう対応しているのか?:主に4つの反応(遵守、反抗、取捨選択、細分化)で対応していることを示す
      • 各教員の対応はとても多様かつ微妙、しかも意図的でなく即興・偶然・非一貫性もある
      • 説明責任ロジックの問題点も示す(授業アンケート重視が教育に悪影響)
    • 説明責任政策は大学をどう変えるか?
      • 業績主義は学内に仲間意識よりも競争意識を高める(フィンランド)
      • ジャーナルランキングが創造性を阻害して、安全な研究を量産する
    • 学生アンケートは全大学で行っているのに、国レベルでの活用はされない
    • 制度ロジックとは:組織の現実をどのように解釈するか、何が適切な行動を構成するか、どのように成功するかに関する暗黙的な前提や価値の集合(Thornton 2004)
      • 制度的論理は、組織や個人が意味を理解し、社会的に正当化された方法で行動することを助ける、歴史的に偶発的な、当然とされる信念と実践の蓄積を指す
      • これへの対応の類型がある:黙認、妥協、回避、反抗、操作(Oliver 1991)
    • 競合する制度ロジックに対する個人の反応は5つある
      • 無知:意図的な抵抗をしない、無反応
      • コンプライアンス:一方の論理に反しても、もう一方の論理に従う
      • 反抗:意識的に抵抗する(攻撃、除去もする)
      • 組み合わせ:ロジックの価値観は規範の一部を混ぜる
      • 細分化:両方のロジックに精通してるなら、選択的に遵守や拒否をする
    • ケーススタディ:あるビジネススクール
      • 企業化を経験:高学費留学生獲得、国際誌論文掲載、起業家学長任命、授業満足度調査重視
      • なのに、個人の自律性、協議、合議ガバナンスを保持
      • 外部者からは、伝統的な専門家ロジックに固執している印象
      • 教員14名のインタビュー、8名が教育研究職(phd教員)、6名は教育職(実務家教員)、主題分析
    • 教育をどう行うか?
      • 教員は探究させたい、答えの出ない問いに取り組みたい
      • ⇔ 答えが明確なほど、受動的に参加できるほど、学生の評価が上がる
      • 実務家教員は学生に共感しやすい
      • 学生も自分は顧客と思っている
    • 信念と矛盾する要求にどう対応したか?
      • コンプライアンスとサブカテゴリ:強制、内在化、消耗、道具的コンプライアンス
      • 教員は専門職ロジックの価値観に忠実→説明責任には「圧力に屈した」
      • 微妙な差異:ミスを録音し直す←苦情はないが、学生が不満に思うのでは?という圧力を感じた
      • 試験を易しくして合格させる対応と、合格率を低いままにする対応
    • 対応に多様性がある←なぜここまで個人ごとに対応が多様なのか?
      • (1)説明責任文化に共感している=遵守傾向⇔共感しない人=反抗傾向
      • (2)組織内外の個人の地位:研究力高い・他大学移籍可能=反抗傾向

    2023/02/26

    DiMaggio, P. (1997) Culture and Cognition, Annual Review of Sociology, 23, 263-287

    • 文化の分析単位はどう定めればよいか?
      • 教育、収入、居住地、社会階層などになる?
      • 潜在変数(一貫性がある)ではなく、心理的な前提を知る必要がある
    • 文化と認知プロセスの関連性
      • 共有されたシンボルが共通のアイデンティティの感覚を呼び起こす仮定
      • 特定のフレームが人々に新しい方法で社会問題について考えるように促すと仮定
      • 空間と時間の構造について学んだ学校が職場に一般化されていると仮定
      • 調査が階級意識を測定できると仮定など
    • 人は社会化を通じて文化を獲得するとは限らない
      • 人は自分の信念や表現における安定性と一貫性の源を探す
        • まず、あるアイデアやイメージを他のものよりもアクセスしやすくする図式的な組織化に向ける
        • 次に、物理的・社会的環境に埋め込まれた手がかりに向ける
    • スキーマを文化の研究のための分析の基本単位として扱える
      • スキーマの獲得、拡散、修正の社会的パターンに焦点を当てることが有用かも
      • スキーマ=知識と情報処理システムの表現、かつ、認知を単純化するメカニズム
      • →制度論社会学との類似性高い(エージェンシーの有効性のmicrofoundationになる)
    • 文化自体は情報にもスキーマにも存在しない
      • →人はどのようにある状況下で多くのスキーマから1つを選ぶのか?→外部刺激やフレーム(社会調査のフレーミング効果)
    • 制度ロジック=スキーマと社会構造を接続する試み
      • ロジック=複雑な文化構造←スキーマがどのように集約されるのかを理解すること
    • 文化が実践に与える影響についての説明は、認知における文化の役割についての仮定にかかっている

    2023/02/25

    Yuzhuo Cai & Nicola Mountford (2022) Institutional logics analysis in higher education research, Studies in Higher Education, 47:8, 1627-1651

    •  制度ロジック
      • 当初定義:キリスト教圏の個人に内在する矛盾した実践と信念が、政治的な場における個人の行動をどのように形成するか(Alford & Friesland 1985)→5ロジック:官僚制、資本主義、核家族、民主主義、宗教
      • 次の定義:個人が実生活を生み出し、時間と空間を組織し、社会的現実に意味を与えることにより、個人の具体的な行動、仮定、価値観、信念に関する社会的に構築された歴史的なパターン (Thornton & Ocasio 1999)→6ロジック:国家、市場、家族、宗教、職業、企業
      • →コミュニティをいれた7ロジック(Thornton, Ocasio, & Lounsbury 2012)
    • 制度ロジックを使った高等教育研究
      • 当初は新制度論中心(同型化プロセス)
      • 大学は専門職組織でありながら、複数の制度的論理を含み、相互に競合する複雑な制度システム
      • 制度ロジックの混乱の源=体系的に分析できていない
      • ロジックに関する多くの研究があるのに、それらがどのように識別、記述、測定できるのか議論していない
      • →組織研究者が制度的ロジックを質的に捉えるために用いる3技法:(1)パターン演繹、(2)パターン照合、(3)パターン誘導
    • 4つ観点で先行研究を整理
      • 高等教育研究において、どのような制度的論理分析のアプローチが用いられているのか?
      • 高等教育研究において、どのような制度的論理が確認・適用されているのか?
      • 制度的論理を高等教育研究に適用する際に、どのような課題が見られるか?
      • 高等教育研究における制度的論理の使用は、制度的論理の理論にどのように貢献するのか?論理理論にどのように貢献するか?
    • 3技法
      • パターン演繹:「大量のテキストデータを収集し、テキストをカウント可能な出現頻度に変換し、分析してパターンを明らかにする
        • 既存研究にパターン演繹が少なすぎる
      • パターン照合:現存する文献からパターン(ロジックの理想型)を特定し、データを理想型と比較する
        • 質的インタビューやドキュメント分析によるパターン推論研究あり
      • パターン誘導:ボトムアッププロセスで生のデータに焦点を当て、パターン(ロジック)を特定して、現存の文献と比較する
        • (1)古典的な制度論理の文献で述べられている社会論理をガイドの枠組みとして使用する研究
        • (2)影響力のある学者(Gumport 2000; Berman 2011など)が特定したフィールドレベルのロジックを用いる研究
        • →ボトムアップのプロセスで高等教育研究の「新ロジック」を特定した研究が多い
    • 制度的ロジックを捉えるとは?=研究者がどのようにロジックを特定し、記述し、測定するかということ
      • →高等教育研究は、制度的ロジックを捉えることと実証研究における組織分析にロジックを適用することの双方が含まれる
      • →一方で、上の3パターンの境界は、実際かなりあいまい。(テキストからパターンを明らかにする=誘導と照合の両方で可能。)
      • 組織論者は理想型制度論理を社会レベルの論理と捉えているが、高等教育研究者が考える理想型制度論理は、社会レベルと現場レベルの両方である
    • 高等教育制度ロジック研究を再定義
      • 帰納的推論・演繹的推論×社会レベル・現場レベル
    • 社会レベル×帰納的:古典理論があてはまり、実際はほとんどない
    • 社会レベル×演繹的:古典的な制度論理の文献で定義された社会的制度論理を直接適用した実証研究
      • 理想型としての8つの社会的論理のすべてに言及、個々の研究で2~5の論理を適用
      • 議論されるロジックは、市場、職業、国家が最も多い。
      • 厳密に制度ロジック研究の理論に従う傾向がある⇔高等教育特有のロジックを見落とす可能性
    • 現場レベル×演繹的:実証分析の指針となる理想的なタイプとして、他の文献にある特定の現場レベルの制度論理を引用する研究
      • ロジックが18もあるのは多すぎる(似たものも多い):学術、市場、専門職、商業、管理、高等教育産業、高等教育社会、科学、ビジネス、学問の自由、操作的、経済的、学術資本主義、国家、官僚、三重らせん、セクター、時代
          • →現場レベルの理想型ロジックがないことが問題
      • 競合する2ロジックを使うものが多い:専門職VS商業的、学術VS商業、官僚制VS企業制
      • ロジックの解釈に違いがありすぎる問題
        • 最も一貫して使用されるロジック=「社会制度としての高等教育(教育的・ 民主的利益の名の下に、より広範な活動を正当に追求することを可能にするもの)」と「産業としての高等教育(目的と実践を経済合理性の範囲に限定するもの)」(Gumport  2000 2003)
        • →これらを企業ロジックと専門職ロジックで表すと考える研究と、市場論理と学問論理と解釈する研究がある→学術と専門職は交換可能ではない。
        • さらに、Gumportのロジックをのぞいて、追跡ができない
    • 現場レベル×帰納的:特定の制度的ロジックを参照せず、経験的データを帰納的に分析
      • →フィールドレベル・アクターレベルのロジックを修正・拡張する
      • →30以上のロジックを作る
    • 個人は自分の利益のために制度ロジックを戦略的に選択する(エージェンシーの重要な役割)、こういうミクロレベルのメカニズムを明らかにすることが必要
      • 競合するロジック間で妥協したりバランスを取るための戦略:ブリッジング、バッファリング(Narayan, Northcott & Parker 2017)、相反する制度ロジックに個人が対応する戦略マップ(Gebreiter & Nunung 2019)

    2023/02/24

    Narayan, A., Northcott, D. & Parker, L. (2017) Managing the accountability–autonomy tensions in university research commercialisation, Financial Accountability and Management, 3, 335-355

    •  研究の商業化:研究管理を研究者の自律性から組織による管理への移行をもたらした
      • 大学はこの緊張関係をどう緩和すべきか?
      • →競合する外部と内部のロジックにどう対処するか?
      • →ブリッジング、バッファリング、デカップリングが、説明責任と自律性の緊張管理において重要になる
    • 研究の商業化の背景は、高等教育予算削減・大学の自己資金調達
      • 説明責任要求増大→研究者の自律性の低下
    • 組織環境とは?=組織化された社会的信念、規則、神話、規範、受け入れられた慣行の現れ(=制度的環境)
      • →模倣・規範の圧力を通じて各組織を均質化する、あるいは、3戦略で対応するか両手利きで対応する
      • ブリッジング戦略:ネットワーク、コラボレーションで従来と異なる関心を持ち込んで管理すること
      • バッファリング戦略:正式な構造と運用のための構造を分離する、正当なイメージを投影できる構造や慣行を象徴的つくる
      • デカップリング戦略
      • 差別化戦略(両手利き)
      • 統合戦略(両手利き)
    • ただし、組織の歴史、文脈、価値観にも注意を払わないと解釈を誤る
    • 研究デザイン
      • 2002~2012の8年間=研究商業化圧力の期間
      • 28回インタビュー、ドキュメント
      • 伝統研究大学と新興教育大学の2ケーススタディ
    • 研究大学の商業化圧力対応
      • 両手利き組織としての2研究所設立
        • 学術部門から切り離された自律的な管理と独立外部予算(バッファリングでもある)
        • →自律性確保と商業化促進が矛盾しないようにできた
    • 教育大学の教員認識=商業化につなげるためにも自律性が必要=高い緊張
      • 当初はデカップリングで対応:商業化は別活動、基礎研究重視から切り離す
      • →文化的コンフリクトに:教員の多くは基礎研究にしか興味ない
      • →研究活性化は教育の質向上につながるというロジックで公式戦略を策定
      • →産業界と連携した研究の推進を公約する
      • →ブリッジングを選択:小規模研究センターの乱立
      • →実際には、外部資金を得たセンターは大きな裁量が与えられていた(研究大学は、完全に独立した研究センターがなかったのに)←隠れ蓑効果?
      • →ただし、商業化の優先は不明確、成果も出なさそう
    • 2つの事例から何が言えるか?
      • 予算削減・説明責任政策=研究目標と戦略の均質化につながった→緊張は緩和できた
      • 同じ戦略をとりながら、異なる結果になった=戦略は文脈に依存する(高い研究能力、構造的な両義性、資源への自律性、商業化インセンティブがあると、より容易に緊張が管理できる)
      • 基礎研究と商業化を補完するには、デカップリングとブリッジングが選ばれる
    • 政府の圧力政策にどう対応するか?
      • 積極的に対抗しない=変化に対応する
      • 研究者間で共有された価値観・規範・信念→規範的圧力になる→研究者の自律性要求を強化する+研究構造・プロセスの均質化を通じてコラボレーションを促進する
      • →研究商業化目標を採用することで、組織の安定と国際的評価の向上を追求できる→大学の戦略やミッションの均質化(Parker 2011)←正当性の獲得、継続的資金調達
    • 研究能力と商業化能力が高度に発達している場合=両利きな組織構成を採用することで、研究の商業化に関する説明責任と自律性の緊張関係を管理できる可能性がある
      • 両利きであるためには、予算、人材、システム、構造の自律性と、基礎研究または商業化(あるいはその両方)を追求する上で研究者が自らの判断を行使するための柔軟性とインセンティブを許容する文化的背景が必要
      • 研究能力が未発達な場合、次のステップである商業化を目指すよりも、研究を進めることに重点が置かれるため、商業化活動が周回遅れになる可能性がある
    • 自律性と商業化は選択問題ではない:ブリッジングで補完することができる
    • 結論として、研究者の自律性と商業化という相反する論理を調整する適切な戦略があれば、必ずしも基礎研究が犠牲になるとは限らない

    2023/02/17

    Carla Patricia da Silva Souza & Adriana Roseli Wünsch Takahashi (2019) Dynamic capabilities, organizational learning and ambidexterity in a higher education institution, Learning Organization, 26(4), 397-411

    • テーマ:DCはOLやOAにどう関連しているのか?
      •  ダイナミック・ケイパビリティ=組織が自らを適応させ、更新するために必要なもの
        • リソースの再構成を通じて開発され、変化を調整、創造し、能力を更新する
        • 組織が効率性を向上させるために、組織的にその運営ルーチンを生成し、修正することを通じて、学習された安定的な集団活動のパターンを表す
      • 組織学習=社会的・心理的プロセスや知識の流れと組織の変化を伴うダイナミックでマルチレベルな現象
      • 組織的両利き性=変化に適応するには柔軟性と俊敏性が必要、組織は革新と安定性の維持を両立させる必要→いずれも緊張感のあるプロセス
    • 本稿は、ブラジルの私立(営利?)大学のケーススタディで、DCがOLとOA(探索・活用のバランス)にどう影響するかを分析
      • 私立大学が、強い市場競争で生き残り・成長を迫られているため
      • 9人の管理職インタビュー、文書分析、参与観察
      • 2つの学内事例に注目
    • DC=急速に変化する環境に対応するために、内外の能力を統合し、構築し、再構成する組織の能力
      • 3つの活動を通じて構成される
        • 環境を監視すること(sensing)
        • 定された 機会を利用すること(seizing)
        • 資源を再構成すること(reconfiguring)
      • →つまり、個人および組織の新しいルーチンの創出を促す
      • そのプロセスはセンスメイキングとセンスギビングで表せる
    • OL=変化を伴うダイナミックでマルチレベルの組織的プロセス
      • 集団的センスメイキング活動が重要→マルチレベルの学習と将来の行動を形成する
    • OA=探索と活用の実践の間に適切なバランスを見出す能力
      • 探索=研究・発見
      • 活用=洗練・実行
      • 構造アプローチと統合アプローチで研究されてきた
        • 構造:両利き性を実現するためには、異なるプロセス、構造、文化を持つ、1つのユニットと1つ以上の探索に焦点を当てた2つの構造を持つ必要がある
        • 統合:メンバーの行動を、働くコンテクストにおける一連のシステムとプロセスを考慮する(個人は組織のコンテクストに組み込まれているため、マネジャーは、メンバーが各自の時間を探索と活用の両方に使うことを奨励するために、コンテクストを作成し、維持する必要がある)
      • 両手利き能力を育成するには、変化から生じる緊張に対処する個人のスキルと、個人の統合を促進する正式な構造や調整メカニズムが必要
    • ブラジルの高等教育
      • 87%私立、75%の学生が私立
      • 事例校=マーケットリーダー、最も成長せいているHEI
    • 2つの事例
      • オンラインコース提供
        • 「希望する人たちだけがDEに取り組むようになったので、より多くの障壁を避けることができた」
      • 資本のオープン化(?)
        • 家族経営→専門家経営へ移行:組織文化を大きく変える
      • どちらにもDCの3活動(感知、把握、再構成)が見られる
      • どちらも個人の意図が個人レベルのセンスメイキング、トランスフォーメーションに影響を与え、それが他のメンバーの行動に影響を与えていた


    2023/02/16

    Nerland, M. (2022), "Organisational learning in complex epistemic environments: reflections from studies of professional work in Norway", The Learning Organization, Vol. 29 No. 3, pp. 243-254.

    •  情報技術の発展
      • 職場に複雑な認知的環境を持ち込む
      • 職場の概念を拡張する
      • 組織境界を曖昧にする
    • 専門職の特徴:分業が基本、方法論の共有
    • 専門職の認知的付加を高める要因:情報技術の発展+知の生成者の多様化(マルチレイヤー化)
    • ノルウェーは高学歴化、生涯学習社会化
    • 組織学習=認識論的実践:知の生成と共有の集団的な実践の変更
      • 認識論的実践:メンバーが知識の主張を提案し、伝達し、正当化し、評価し、正当化するための社会的、相互作用的に確立された方法
    • 教員養成課程の改革
      • 決められたことを教える仕事から、現場で知を生成して実践する仕事へ
      • チームでカリキュラムを作る仕事が増える
      • →権力から遠く、現場に自律性が与えられていたからできたこと

    2023/02/15

    Lukic, D. (2022), "Organisational learning and competence for boundary crossing", The Learning Organization, Vol. 29 No. 3, pp. 284-290.

    • 組織学習の課題は大きくなっている:人間-システム-構造-技術の相互作用の複雑化
    • 組織学習メカニズム:技術と文化の2つの面で構成される
    • 組織内の知識境界の越境を促すために、中間オフィスを提唱したい
    • 個人・組織の変化への開放性とコミュニケーションレベルの関係
      • コミュニケーションレベル高+個人・組織開放性高→組織学習にプラスの効果
      • 組織開放性>個人開放性→知識共有レベル低下(個人の視点に注目することが重要)
      • 個人と組織の態度に差があると、過剰なコミュニケーションでメンバーは知識を共有しない
    • 中間オフィスの3段階
      • プロジェクトの目的と相違点の確認、全関係者の声を聴取、共同で計画を作る
      • 定期的なミーティング+建設的批判
      • 結果の評価・解釈・データから、次の学習につなげる

    2023/02/12

    Love, P., Smith, J., Ackermann, F. & Irani, Z. (2018) The praxis of stupidity: an explanation to understand the barriers mitigating rework in construction, Production Planning & Control, 29(13), 1112-1125,

    •  安全インシデントの多くは手戻りの最中に生じる
      • 全体の知識が欠けるため、手戻りの原因・コストに関する質問ができない(あるいは避ける)。
      • 実務と文化の根本的な変革なしには、効果的な解決はできない。
    • なぜ問題解決に取り組めないか?4つの視点
      • ゼロビジョンと安全スローガン
        • ビジョンが抽象的
        • スローガンの存在=インシデントに関する情報提供に否定的
      • Stupidity Self-Management
        • 一定金額以上の不適合手直しは、上級管理職が決裁する
        • →1件のNCRを分割して按分
        • →手戻りの根本的な抑制のための批判的思考機会を奪う
      • Stupidity management
        • 上級管理職が、手戻りが収益上の問題であることを認識していない(現場は認識しているのに)
    • エラー防止ではなくエラー管理に重点を置く考え方をするべき
      • 品質と安全性は相反するのではなく、両者に同等の注意を向ける

    2023/02/11

    Morrison, E. and Milliken, F. (2000) Organizational Silence: A Barrier to Change and Development in a Pluralistic World, Academy of Management Review, 25(4), 706-725

    •  Organizational silence:従業員が潜在的な問題や課題に関する情報を広く保留する力
    • 組織のパラドックス:メンバーが組織内の問題・課題について、真実を知っていてもあえて上司に話さない(裸の王様理論)
      • なぜ話さないのか?理由2つ
        • 発言することでマイナスの影響を受けることを恐れた
        • 発言することで何かが変わるとは思えなかった
    • この問題が深刻な点:従業員自身は多様なのに、表明される意見が一枚岩にしかならない(=多様性が組織の強みにならない)
    • 本研究の3つの特色
      • 従来の研究は、メンバーが意見を発するかという個人の意思決定に注目→集団レベルのダイナミクスに注目
      • なぜメンバーが意見を言わなくなるかという規範に注目→ある個人が沈黙する動機と、残りの全員が沈黙する動機は全く異なることに注目
      • 個人レベルの先行要因(=コミットメント、満足度、リスクテイク)に注目→個々の行為者の外側の要因に注目
    • 組織的沈黙は2つのビリーフに起因する
      • (1)否定的なフィードバックに対する管理者側の不安
        • ネガティブフィードバックが下から来る=正確でなく、正当性に欠け、自分の権威や信頼性を脅かすものと見なす傾向がある
        • これが、情報を上向きに流さない慣行を生む(沈黙風土)
      • (2)マネジャーがもつ3つの暗黙の前提
        • 個人は自分の利益を最大化するために行動するという暗黙の前提(ビジネススクールの影響?)=インセンティブや懲罰なしには、組織のための行動しない
        • 組織の重要な問題の多くは、上層部が知っているという暗黙の前提
        • コンセンサスは組織の健全性の証であり、不一致や異論は避けるべきという信念(=組織の一元的な見方を助長する)
    • なぜこうした信念が形成されるのか?
      • 上層部が経済・金融分野出身者で占められている(合理的経済人モデルの前提を持つ)
      • 機能的な訓練と経験に関して均質であればあるほど、平均在職期間が長いほど、前提共有が強固になる
      • 上層部が上下関係の強い文化圏の出身者で構成されている(上司が正しいのは、単に上司だからだと考える傾向が強い)
      • 上層部とメンバーの非類似性(性別、人種、民族、年齢)が高い(=メンバーの意見を疑惑の目で見る可能性が高くなる)
      • 環境要因:予測可能性、統制、効率に依存する組織+資源の枯渇を特徴とする競争の激しい環境の組織+成熟した安定した業界の組織
      • 内部要因:上層部とメンバーの交流が薄い組織(垂直的乖離が大きい組織)+内部昇進よりも外部からマネジャーを採用する組織
    • 組織内の3つのイデオロギーによる影響:(1)メンバーは自己中心的である、(2)上層部が最も良く知っている、(3)意見の相違は悪いことである
      • メンバーは利己的という信念=メンバーを意思決定に参加させないことが合理的(タスクフォースなどで関与させても、真の意思決定はトップだけで行う)→公式の上方フィードバック傾向が弱くなる
      • メンバーは利己的という信念=メンバーの提案を(1)マネジャーへの攻撃と見る+(2)組織を心配しての行動と思えない
    • こうした上層部の傾向は、組織に影響する
      • 中間管理職に影響し、組織全体の傾向になる
      • 中間管理職が下からの上方を遮断する
    • 沈黙風土はどう発生するのか?
      • 組織風土=特定の職場環境の心理学的に重要な側面に関する、共有された永続的な認識
        • 風土は個人のニーズや動機づけ状態よりも強力な行動決定要因になりうる
        • 象徴的相互作用論(Blumer, 1969)が基盤=意味は所与でなく、メンバー間の相互作用から生じる
          • 人は自分の信念や認識を評価する強い欲求を持つ
          • →他者の信念や認識と比較する→職場の認識や経験を共有し、仕事の様々な側面の意味の共通理解をつくる(トライアンギュレーション)
      • 沈黙風土=(1)組織内の問題について発言することは努力に値しない、(2)自分の意見や懸念を口にすることは危険であるという2つの信念で定義する
    • 沈黙風土の発生ダイナミクス
      • 個人は、自分と似ていると思う人と一緒にいることが最も快適+自分の信念や認識を検証する参照先として似た他者を好む
        • →メンバーが発言機会ない+メンバーの類似性が高い=沈黙風土が生まれやすい
      • ワークフローの相互依存度が高い場合:より多くの人と調整が生じ、認識共有機会が増える→沈黙傾向解釈がより進む
      • インフォーマルネットワークが強い場合も同様
    • センスメイキングプロセスのゆがみ
      • メンバーは、限られた・偏った情報に基づいて、上層部の行動を理解する。
        • 情報の多くは又聞き
        • 人は自分が正しいと思うことよりも、他者が信じているように見えることをより信用する(他者が組織内で声を出すことに無関心だと思うと、自分は声を出すべきと思っても行わない)
      • メンバーは、自分と同じような人間がトップに立っていないことを知ると、組織は自分たちの意見を尊重していないと考える傾向がある


    • 多様な意見を出せるようにすべきだと言うが、なぜそれが難しいかの複雑な力学に関する理解が足りない。
      • その力学の多くは観察できない。
      • シニシズムは、不信感と同様、いったん根付くと排除することが困難
      • システム全体の変化には、強力な外圧が必要だが、それさえ十分とはいえない
      • トップの認識改革は必要条件だが、十分条件ではない。

    2023/02/10

    Schilling, J. and Kluge, A. (2009) Barriers to organizational learning: An integration of theory and research, International Journal of Management Reviews, 11(3), 337-360

    •  研究目的:(1)OLの障壁に関する既存の概念や理論を整理、(2)それをOLプロセスのモデルに統合、(3)OLに関する今後の研究課題を示すこと。
    • OLの定義:組織のパフォーマンスや目標の向上に関する個人やグループでの学習経験が、組織のルーチン、プロセス、構造に伝達され、それが組織のメンバーの将来の学習活動に影響を与える、組織的に規制された集合的学習プロセス(=情報の獲得、伝達、蓄積の集合的なプロセス)
      • 個人とOLが相互に依存している(個人は組織の代表として学習する一方、個人が組織を離れても獲得した知識が適切に保持(文書、ルーチン、プロセス、構造などの形で)されなければ利用できない
      • 変化する環境の中で成功するには、組織が既存のアイデアや機会を活用すること(個人の学習経験をルーチン・構造・プロセスに移す)と、新しい機会を探求すること(個人や集団が行う学習経験)の両方が必要
    • OLの障壁を説明するには、OLのプロセスに関するモデルが必要
      • →4Iフレームワーク→OLの政治モデル(Lawrence 2005):解釈=影響力・道徳的手説得・交渉・恩着せ、統合=強制(正式な権限を持つ組織のメンバーが利用できる選択肢を制限するような状況を作り出す)、制度化=支配・規律(採用・社会化・報酬・研修・チーム作業)
    • Barriers to Intuiting
      • Actional-personal
        • 組織のセンサーとしての従業員の偏りや欠点
        • 迷信的な学習
        • 体系的な失敗分析に関するノウハウの欠如
        • イノベーターのモチベーションの欠如
        • 高いレベルのストレス
        • 一次的な問題解決を特徴とする専門家としてのアイデンティティ
        • 不利益を被ることへの恐れ
        • 制限的、統制的な管理スタイル
      • Structural-organizational
        • 明確で測定可能な目標やパフォーマンスのフィードバックの欠如
        • プロセスエラーをカバーする在庫と棚卸資産
        • 狭いコーポレートアイデンティティ
        • 同質的な労働力を持つ一枚岩の企業文化
        • 厳格な労働規則と規制
        • 狭い職務記述書と高度な分業(「私の仕事ではない」現象)
        • スケープゴート文化
      • Societal-environmental
        • 複雑でダイナミック・競争的な市場環境
        • 成功の基準が不明確な支店
        • 文化的な距離があり、関連する文化での経験値が低い
        • 複雑で、曖昧で、難しい知識 関連するが、暗黙的で、動かせない知識
    • Barriers to Interpreting
      • Actional-personal
        • 知識の所有権と支配権の喪失への恐れ
        • イノベーターやスポンサーの政治的・社会的スキルの欠如
        • イノベーターの地位の低さ、自信、信頼性
        • イノベーターとグループ間の対立関係
        • 既存の慣行に対する相対的な優位性の欠如
        • グループメンバーの吸収力・保持力の欠如
        • グループメンバーのモチベーションと不安の欠如
      • Structural-organizational
        • 組織的沈黙
        • 地位文化
        • 知識と重要な組織目標との間の連関性がない
        • 高い仕事量と最前線の状況
        • グループの失敗回避規範
        • 強い集団的アイデンティティのエ自己防衛
        • グループ内の目的、価値観、隠れた意図の相違
      • Societal-environmental
        • 既存の(職業)マインドセットと相容れない知識
    • Barriers to Institutionalizing
      • Actional-personal
        • イノベーションが将来の目的とは無関係であるとの認識
        • チームや従業員のイノベーションを実行するための知識不足
        • 穿孔された記憶
        • 自由放任の上級管理職スタイル
        • 不十分なダウンラインリーダーシップスキル
        • 学習移転の際に生じた過去の衝突の経験
        • チームや従業員に対する低い受容性と信頼性
        • 組織やイノベーションに対するシニシズム チームの願望がバラバラ 脅威としてのイノベーション
        • チーム/従業員の新しいアイデアに対するオープン度の低さ
        • 機会主義的行動
      • Structural-organizational
        • 職場の安定/静的状況
        • 時間と資源の不足(移転プロセス、トレーニングと開発、コミュニケーションの方法と実施のためのスペース) 従業員と管理職の高い離職率
        • 実施・保管に関する責任の所在の不明確さ
        • 一貫した規範体系の欠如:組織の偽善性
        • 組織戦略、システム、方針、慣行の一貫性のなさ
        • イノベーションの初期目標とそれを評価する成功基準との不一致・分権化(サイロ構造、強力な部門構造との縄張り意識)
      • Societal-environmental
        • 組織の行動やパフォーマンスをコントロールする手段や手段の欠如
        • 急激な技術革新
        • 手っ取り早い成功を約束する新たな経営ブーム
        • 言語と国民文化の問題
        • 暗黙知を保存する技術的・構造的な難しさ
    • これらから導かれる今後の研究課題
      • こうした障壁が、特定の部門にどのような影響を与えるか?
      • OLのレベルの違い(シングルループやダブルループなど)とOL障壁の間にどのような関係があるか?
      • OL障壁のどの組み合わせが典型的であり、組織に深刻な結果をもたらすか?

    2023/02/09

    Using Case Studies to Develop Questioning Skills

     ケーススタディで用いる発問
    • 事例分析のための発問
      • どのような状況か?
      • このケースにおける様々なアクターの異なる価値観、規範、あるいは利益は何か?
      • これらの異なる価値観、規範、または利益は互いに対立しているか?
      • このシナリオにおける異なるアクター間の力関係はどのようなものですか?
      • 力関係はこのケースにどのような影響を与えますか?
      • 関係者の行動と行為を明確にする文化的枠組みは何ですか?
      • 事件の進展に影響を与えたと思われる要因は何か。
      • このケースのどのような文化的、社会的、政治的側面が問題を引き起こしたのか?
    • 問題解決のための発問
      • 実行可能な解決策があるか?
      • あなたがこのケースの当事者であれば、どうしますか?
      • あなたがこのケースの当事者であったとしたら、何を伝えますか?
      • この場合、ある種の妥協は可能か、あるいは有用か?
      • 代替案としてはどのようなものがありますか?
      • この状況はどのような倫理的問題を提示しているか?
    • 事例の文脈を読み取る発問
      • このケースを検討する上で、どのような追加情報が有用か。
      • 同じような状況を他にどこで見ることができるか。
      • この事例の関係者の行動の根底には、どのような前提があるか。
      • この人が経験したことはどのようなものか、どのように表現するか。
      • この事例を評価する際に、どのような歴史を考慮することが重要か。
      • この人が置かれた状況で、どのような資源や支援に直面したのか。
      • この人が自力で自分の状況に立ち向かう上で、どのような障壁があったのか(もしあれば)。
      • このような状況において、他の人がその人を支援するべきだったか。もしそうなら、どのように?
    • 教訓を得る発問
      • この事例から何を学ぶことができるだろうか。
      • このケースを読み、話し合った後、あなたはどのような感想を持ちましたか?
      • このケースについて話し合ったことで、あなたの行動に何か変化がありますか?
      • このケースは、あなたの思い込みを見直すきっかけになりましたか?
      • あなたなら、この状況にどのように対処しますか?
      • このケースについて、何か驚くようなことがありましたか?
      • このケースを一言で表すとしたら、どんな言葉になりますか?
    https://www.facultyfocus.com/articles/effective-teaching-strategies/using-case-studies-to-develop-questioning-skills/

    2023/02/07

    Zaki, J. (2022) Don’t Let Cynicism Undermine Your Workplace, Harvard Business Review, September–October 2022

    •  シニシズム:他人は利己的で、貪欲で、不誠実であるという信念
      • 組織内で、業績不振、燃え尽き症候群、離職、不正行為につながりやすい。
      • 他人の行動を悪く見る人=噂話・陰口が多くなる。
      • シニシズム傾向のメンバー:収入減、精神疾患等の傾向
      • 調査では「デフォルトで他人を信用しない」=60%
    • シニシズム傾向の人は、人の感じ方・考え方のバグを利用する
      • 悪意同調性、先制攻撃、天賦の才の3要因に注目
    • 悪意同調性
      • 騙されないように用心する傾向が、人は悪いものと決め、他者の悪い資質に目を向けるようになってしまうこと(心理学で正負の非対称性という)。
      • 「一滴のタールが蜜の樽を腐らせる」
      • 人は、そこにいる人よりも悪い他者を想像している。
    • 先制攻撃
      • シニシズム傾向の人は、他者を助けるために時間やお金を使わない。不誠実な交渉をする傾向がある(行動同化という)。
    • 天賦の才
      • シニシズム傾向の人は、他者の悪意を感じる性質を、自分が苦労して身につけた知恵を考え、そうでな人を世間知らずと考える傾向がある。
    • 組織の方針がシニシズムを強化する可能性:特にゼロサムリーダーシップとオーバーマネジメントの2つが重要
    • ゼロサムリーダーシップ
      • 組織内の競争がゼロサムゲームにする(スタックランキングの導入=チーム内の成績上位者が評価され、下位者は警告や罰則を受ける)→自分がうまくやるだけでなく、同僚が失敗するように仕向ける必要がでる→職場は新しいアイディアを思いつく孤独な創造的スターを評価する傾向を持つ(天才文化)→不健全な競争が起こる→メンバー間での競争導入で、メンバーが集団のアイディアに貢献しなくなる→人間関係が悪化しイノベーションが失われる
    • オーバーマネジメント
      • 上司が部下を信頼しない=制限・圧力・監視の傾向→組織への信頼を失う→モチベーション低下
      • 人は最低限のことだけを強要されると、それしかしなくなる。
    • アンチシニシズムをどう導入するか?:協働文化とリーダーの信頼行動
    • 協働文化
      • 他者のために行動し、協働的な行動が評価されるインセンティブスキーム
      • 競合他社に対しても協働アプローチ(消費者に利益をもたらす相互補完)
      • 信頼を作る
        • メンバーが協働で学ぶことを奨励(例:大規模ハッカソン)
        • メンバーに選択の余地を与える
        • 社内ルールは「あらゆる場面で適切な判断をすること」のみ
    • アンチシニシズムを教える
      • メンバーに信頼を与えるには、まずリーダーが信頼を示すこと(研修で獲得できる?)

    2023/02/06

    Butler, N. (2016) Functional stupidity: A critique, Ephemera, 16(2), 115-123

    •  FSに関する説明
      • メンバー側が、自分が何をしているか(省察性)、なぜそれをしているか(正当化)、自分の活動の結果が目前のタスクを超えてどうなっているか(実体的推論)について批判的に考察する能力がないこと。
      • 権力・政治と明確に結びついている:組織的に承認された規範や価値に疑問を投げかけるような批判的な内省を阻止しようとするときにFSという現象が生じる 。
      • プラスとマイナスがある:組織が円滑に機能するための確実性をもたらし、疑念や反省によって引き起こされる摩擦から組織とそのメンバーを救う ⇔ 批判的省察は、自分が何をしているのか、なぜそれを行っているのかという確信の感覚を損ない、キャリアアップの妨げになる+組織にとっても追加的資源を用いるのでコストになる(安価な海外労働力にたよる倫理的問題に対応するには大きなコストがかかる)
      • 4つの提案:(1)組織は知識集約度と賢さの定義についてより謙虚な態度をとるべき、(2)アンチ・バカマネジメントを活用すべき(詳細不明)、(3)FSは組織が育成し、維持し、技術すべき重要な資源(知識経営とFSのバランスが重要)、(4)FSのネガティブ面に警戒すべき
      • しかし、こうした批判的な提案は、はるかに保守的な、まさに経営的な目的によって覆い隠されている。
    • FSのネガティブ面
      • FSにはプラス・マイナスがあると言いながら、FSの過剰・誤動作の時(=愚かさの管理者によって適切に管理されなかったとき)のみ、否定的な結果をもたらすと説明される。
      • FSの管理とは?:Stuidityが増えすぎると機能不全になるから、管理が必要
        • Stupidityにはもともと機能的な面と愚かな面の両方が含まれているのではなかったか?
        • 両面ある中で、愚かな面の割合が増えるということか?
        • 著者は概念の内部緊張と説明する ⇔ 議論自体に矛盾があるのではないか?
    • FSをどのように管理すれば、プラス面が増えてマイナス面が減るかは不明確。
    • なぜ賢い組織が愚かであり続けるのか?
      • 組織=代替案にコストと時間がかかるため、従業員の認知能力を制限しようとする
      • メンバー=不確実性を最小限に抑え、キャリアを向上させるために自らの内省性を抑制する
    • 愚かさは組織に不可欠:
      • Stupidityの機能的な面が仕事を円滑にする
    • Alvesson and Spicerはビジネスと学術の両方に訴えたために窮地に陥ったのでは?:学術的な概念と経営上の流行語の間の区別が曖昧になってしまった
    • ビジネススクールの研究は、一貫性・論理性の高い慎重な考察に基づく研究をすべきか、多少の一貫性はなくとも刺激的な議論を喚起すべきか?

    2023/02/05

    Paulsen, R. (2016) Slipping into functional stupidity: The bifocality of organizational compliance, Human relations, 70(2), 185-210

    • 公共職業安定所のFS研究:FSは、個人の性格ではなく、一過性の非省察的コンプライアンス様式
    • 仕事に「従事」している人=13%(ギャラップ調査)
      • 63%=給料をもらうために続けている←経済的余裕があれば仕事を辞めたいと言う人の割合と同じ
      • なぜ、これほど多くの人が不満なのに職場が維持されるのか?
    • 組織的に支持された省察性・実質的推論・正当化の欠如があれば、メンバーによる気の進まない仕事の遂行を支援できる
    • 職場におけるシニシズム研究:メンバーは、思考と行動を切り離し、システムを「見通す」ことで、システムの外側に立てる。
      • シニシズム=舞台裏の身振り
      • 批判家でさえ、他のメンバーと同様に日常の仕事に従事する
    • FS=「意識化概念」=気づきと指針を与えるもの⇔処方箋
      • ただし、意識化概念は全面的適用へ拡大されて、研究分野をファッションで覆うリスクもある。
      • ↑省察性を欠くという特徴ゆえにあとからでなければとらえられないため。
    • 人間の意識は二重性を持つ
      • メンバーは仕事中に愚かな行動をとっても、それを後から批判的に省察し、何度でも再演する能力を保持している。
    • FS研究の2つの障害
      • FSは、職場における他の機能的行動と区別するのが難しい
      • FSとは、組織的な場において、道具的合理性を無反省に適用すること
      • 「外科医の合図でメスを渡す看護師」省察なく行うが、これは機能的に愚鈍とは言えないのでは?
    • FS概念の問題点
      • Functional stupidityとFunctional intelligenceの区別は難しい=ある場面で省察的であったり正当化を求めるには、高度な知性の発揮が必要。倫理的に曖昧であったり、自分の仕事の目的が揺らいでいる時、非省察的な道具性はStupidになる。
      • 非省察的なモードは、インタビューで検証しにくい。インタビューによって、批判的な思考を始めるとFSを実践していることにならない。
      • →FSはどのような形で存在するか?を問うべき(現状に批判的な問いを持たない人はいないのでは?)
      • 省察的な「愚かさの自己管理」がないところでFSを明らかにすることは困難。
      • 冒頭のとおり、多くの人は仕事を終わらせるためにあまり考えないようにする。←この説明自体、省察的にしかできない。
    • 本事例はまれな例:全対象者が既存組織を非難した事例。
      • 発話と行動の不一致:主観的な説明における虚偽、道徳的な話法が原因
      • Layer of understanding:率直な議論をするために必要なこと
    • SPESでの観察研究
      • 週数回のスタッフミーティングの見学
      • 在職22年のITマネジャーに6ヶ月キーインフォーマント
      • 3~7年勤続の27名に面接:構造化質問
        • 労働プロセスの効率性
        • 特定の行動計画や管理プロセスに関する感情や考え
        • 職業規範に関する考え
        • 期待や義務における時間的変化
        • 理想と実際の労働プロセスの間の対立
        • これらの対立をどのように処理するか
      • 全員、求職者を助けるためにやりたいことと、求職者に要求されることの間にコンフリクトを経験
      • 求職者面接、新聞記事、内部報告書
    • 実証分析:鍵になる質問は「一日をどうやり過ごすか?」
      • 生成された概念

    • 「自分が納得できない規則や命令に従うことについてどう感じるか?」
      • 明らかになった省察的遵守の様式を示していく。
    • Marcuseの1次元思考:経験主義(何であるかのみを考察する)、運用主義(何であるかの中の現象を測定可能なものに還元する)、潜在性という反事実的領域に属する思考を放棄することの3つに注目する。
    • 2次元思考:省察的な行為を妨げるものではない。絶望もその1つ(=劇的に変化する必要があるという強い感覚を保証するという意味で、最も一面的でない態度)。
    • SPESの事例:
      • 1980年代:サービス>コントロール→細部にわたって失業者をコントロール
      • 移民対象の新基準:数字達成不可能=ストレスが大きくなる
      • 組織の否定的な側面を語ることは「不毛」
      • 絶望とシニシズムの違い:前者は「もしかしたら違ったかも」を含むが、後者は希望の共有がない。
      • マネジャーによるシニシズム共有:モラルを脅かさない←メンバーは上からの指示を擁護すると思ったら、クソだなと。→メンバーも楽になる。
      • 現場のメンバー:「自分は人に言われたことをやる。できるだけ早く、簡単に、効率よくやるだけ。」という権威に縛られていることを省察的に話すことができる。←権威が実際に権威である必要はない、泣き言を言うよりもましと考える。
    • 職場は、労働市場、組織文化、分野、職種等の要因で独自のStupidityを構築する。
      • 健康主義:現実主義(仕事の正の側面に焦点化すること)でもいいが、健康主義の方が個人が管理しやすい。
      • 建設的:健康主義よりは制限された省察性に陥りやすい
      • 倫理的経験主義:「意味のない仕事はない。事務的ではあるが、必要悪だ。」←悪としてみる点でポジティブシンキングとは違うが、悪に変わるものがないので疑わない。
      • 代理人シフト:自分の仕事は政府・経営陣が提示したことを伝えること。
      • 言われたことをする:仕事は何でも大事。依頼をこなすことが大事。
      • 適者生存:法律や規則を読むことを楽しむべき。
      • 権威主義の終着点=この仕事が好きだ。
    • Stupidity self-management:個人が疑念、批判、その他省察的な懸念を脇に置き、組織生活のポジティブな側面に集中するプロセスのこと。
      • メンバーが組織権威との衝突を経験する→遵守を選択する→多様な遵守モードがある
        • メンバーは組織の不条理や欠点を認識している
        • 仕事は省察の機会を与えない⇔仕事が省察の能力を奪うわけではない
    • 自分が批判的であると同時に批判的である組織をどう再生産できるのか?
      • ジレンマに直面するメンバーの反応=絶望、シニシズム、権威主義等の態度
      • ↑いずれの態度も、その態度を変えることなく省察できる
      • Pulish or Prish:満足する研究者はいない、しかし皆適応する。その適応は、ある者は絶望的に、ある者はシニカルに、ある権威主義的な者はリラックスして。
      • どの態度をとっても、査読の過程ではそうした省察的態度を押し殺して目の前の課題に集中する。

    2023/02/04

    Alvesson, M. & Spicer, A. (2012) A Stupidity-Based Theory of Organization, Journal of Management Studies, 49(7), 1194-1220

    •  Functional stupidity:省察の欠如、知的能力の不使用、近視眼、説明不足→愚行管理、対話的行動の阻害→前向きで一貫性のある個人の内的対話の促進→生産的な結果をもたらす可能性→個人と組織の不協和をもたらす
    • この問題の背景は、知識経済化、組織における知識経営。これまでにも、semi-rational、集団浅慮として研究されてきた。
    • FS:organizationally-supported lack of reflexivity, substantive rea- soning, and justification.
      • 外部の知的資源の活用を拒むことで生じる
      • 疑念や省察がもたらす摩擦から組織を守れる
      • 問題のある思考パターンから抜け出せない
    • 本論文の貢献
      • 既存の認知能力活用による組織運営の過程を疑うこと
      • 認知能力の活用がパワー・支配関係でいかに抑制されるかを示す(単に時間や資源の不足や認知的な固執による抑制ではなく)
      • 普遍的だが認識されてこなかった側面を示す
    • 従来の優秀さを制限するコンセプト
      • 限定合理性(Simon 1972):個人はベストを尽くすが、資源や時間に限度があるという考え方。
      • Midless ways(Ashforth & Fried 1988):所与の条件下で標準的な手続きを見出そうとする=一度学習すれば、深く考えずにできるので、認知的効率性が上がる。
      • 熟練された無能(Argyris 1986):大規模組織で保守的なルーチンを作ることによる、管理職側の仕事のしやすさと、深い思考や探索を避ける問題。
      • ゴミ箱型意思決定(Cohen et al 1972):組織内の曖昧さ、動態、不確実性による意思決定時の注意拡散。
      • Foolishness(March 1996):曖昧な目標の組織が複雑な環境下にあると必要になる。Foolishな行動が、組織の選好を明確化・焦点化し、試行錯誤を促進する。
      • Ignorance(Abbott 2010など):知識集約的な状況が作る問題、特に科学・社会政策(温暖化研究は、地球の温度が上がってきたことに注目を集めたが、その詳細な要因=新領域は無視されている)。部長がTQMの技術的詳細について無知→非現実的な期待を持つ。見せかけの知識が、いかに組織のメンバーを混乱させるか。
    • これらのコンセプトは、「認知能力の発揮が組織活動の中心」という仮定を疑わない(=つまり、合理的な知的行動に伴う不可避な限界を論じている→半合理的な機能による限界を見落とす)。
      • 例えばIgnorance:問題の中身に焦点化=専門家や教育を活用して知識を付加すれば問題に対処できると考える。←認知能力の積極的な活用・不活用の限界について論じることができない。
      • 例えば熟練された無能:効率的な人的交流のための組織内規範が、問題に気づき、対処する行動を妨げることを示した。←感情や動機づけに関する問題(=不安、不確実性、組織内の和を乱したくない感情など)を見えにくくする。
      • 要するに、認知的限界と感情的問題の関連性を説明できない。パワーや政治活動が知能の活用を妨げることにいかに貢献しているかを考察できない。
      • だからこそFSの導入が必要。
    • Stupidityの例:影響力のありすぎるリーダーの存在、インターネットバブル時のオンラインベンチャーへの過大投資、金融テックへの非合理的な信頼によるショック
      • →知識の豊富な人は認知能力を積極的に使わないようにすることが必要。
    • 実際多くの経営行動が、誤った推論に基づいて採用される(優れたタレントマネジメント手法を採用しない・採用してもしばらくすると使われなくなる)。
      • →組織にはシステムとしてStupidityが存在するのではないか?と考えるべき。
      • →Stupidityは病理・不合理・機能不全ではなく、積極的に支持され、積極的な結果を生み出すものと考えるべき。
    • 心理学的なStupidity:自分の認知資源や知性を動員できない、あるいは動員する気がないこと ≠ 無知 
      • →組織がそうした行動を奨励する=組織文化の問題
    • FS=知的能力活用をしない・できない3側面:省察性、正当化、実体的推論
      • Lack of reflexivity:知識の主張や規範に疑問を出せない・出さない(メンバーが組織内で支配的な規範や信念に疑問を持たない場合に起こる。=既存ルーチンは、自然なもの、良いものと考えている。)
      • Lack of Justification:組織内の行為について、行為者が理由や説明を要求しない・提供しない(重要な批判的吟味や強固な理由づけのプロセスを経ることなく、慣行を受け入れる←会社をよく見せるため、他の人がやっているため)。
      • Lack of substantive reasoning:認知資源が、特定の組織、職業、仕事の論理によって定義された小さな関心事に集中しているときに起こる(与えられた目的を効率的に達成することに焦点を当てた道具的合理性を近視眼的に適用し、その目的が実際に何であるかという幅広い本質的な問題を無視する)。
    • FS=認知的側面だけでなく、情緒的側面の問題でもある
      • 動機づけ:好奇心の欠如、閉鎖的な考え方、組織人・専門家アイデンティティ→広い思考に対する障壁になる
      • 感情:感情は認知プロセスを左右する=仕事への不安・不安定な立場がFSを強化する。
      • →これらを合わせると、能力不足と能力を発揮しようとしないことには相互作用がある。
    • 反射性・正当化・実体的推論は、一般に組織内で中心的活動と位置づけられていない(一定程度行われてはいる)。←時間の浪費と思われるため、場合によっては危険な活動とも見られる
    • ここでFSを再定義:認知的・省察的能力を狭く控えめにしか使わない・使いたがらないこと(知能の高い人がFSと無縁とは限らないし、知能の活用とFSは共存する)。
    • 1つの例:組織内の情報の扱い
      • 情報収集への関心の高さ、情報不足への不安→情報過多・活用不十分
      • これは情報=理性的・信頼・知性というイメージがあるため→情報を使って意思決定をすれば、プロセスも結果も正当である=それを行った管理者は優れている
      • つまり、情報偏重の組織文化の問題

    • 組織内のFSダイナミクス:マネジメント層が対話的行動を阻害し、管理的命令が強化される。←組織が強い文化・アイデンティティ・ブランド・カリスマ的リーダーシップにより、シンボリックな操作を強化する時に起こる。←現代の説得型経済の影響。
      • 説得型経済とは?:需要喚起が製品を作ることではなく、魅力的なイメージ・期待を作ることにより、仕事もイメージづくりが中心になる。
        • →ブランディング、広報、イメージ構築 > 生産
        • →メンバーは、イメージに忠実であることが期待される
    • 管理職による愚かさの管理
      • マインドセットを作ろうとする、特定の文化・価値観を浸透させようとする
      • 組織内の実践を肯定的に理解することを求める
    • メンバー間のコミュニケーションは4つのパワーの行使で阻害される
      • 直接的な抑圧:現場を見に行くな、毎朝歩け
      • アジェンダ設定:建設的な提案を行う場合しか議案に加えない
      • イデオロギー的枠組みの設定:「考えるな・実行しろ」
      • 特定の立場の設定と拡散:具体的にはリーダーの賞賛(リーダー主義)、分権的リーダーシップでさえリーダーは道徳的・精神的・社会的にフォロワーより優れているという前提を置いている=フォロワーはリーダーの提案を受動的に受け入れる行動が期待される
      • 4つは相互に連関している 

    • メンバーがFSのプロセスに置かれる→省察的な活動を控え、組織の肯定的な側面に集中する
      • →(1)意図的に組織から距離を取って内省に取り組み人もいる
      • →(2)主観的には距離を取りながら現実的に組織規範に沿って行動する
      • →(3)支配的な考えを内面化する
      • →出世するために、組織が推奨するポジティブな価値観を受け入れることで、自分の経験を選択的に編集し、愚鈍なマネジャーに合わせる行動を取る。

    • FSはどういう帰結をもたらすか?ポジとネガがある
      • プラス面:個人=確実性の感覚をもたらす、キャリア形成に集中できる+組織=批判的思考に要する資源・コストを下げられる
      • マイナス面:個人=自律性の低下、懐疑的態度→コミットメント低下+組織=問題回避や誤認(銀行のサブプライム問題への疑問封印)
    • FSを見直すきっかけは大災害・大失敗。
    • 学者の世界ですら同じ。狭い分野でトップ誌に載せることだけを目指し、社会的に有用なことを述べられない。

    • 研究課題:FSが時間の経過と共にどう変化・進化するか、問題提起能力は時間の経過と共にどう発達するか、FSと理性的行動は共存できるか

    この概念は正負両面あることが、面白さであり扱う難しさでもある。

    2023/02/03

    Karimi-Ghartemani, S., Khan, N. & Esfahan, A. (2020) Developing a framework for organizational stupidity, Journal of High Technology Management Research, 31

    • 何も考えず、自分の仕事の状況を批判することもなく、ただ仕事をこなすだけの満足度の低い従業員が多数いる→なぜこれらの組織は仕事の効率が悪いのか?
    • Organizationa Intelligenceには組織に不満をもたらす負の側面がある(OSと命名)。
    • Albrecht(2003):知的なメンバーが愚かなふりをするのは、支配的な組織文化が原因。
    • group stupidity=組織内の知的なスタッフが、より高い職位を得ることにつながる自身の能力向上ために、チームワークに参加することを避ける状況
    • Paulsen(2017)のOS定義:仕事をするために考えすぎないように努力するメンバー・マネジャー
    • OS定義の変遷
      • Albrecht (2003) = Smart people that pretend to be stupid
      • Ercetin et al (2007) = Avoid to participate in team working, in order to enhance their own capabilities
      • Alvesson & Spicer (2012) = Employees refusal to use intellectual capacities
      • Paulsen (2017) = Endeavor to not think too much in order to do their job
    • Alvesson & Spicer(2012)の貢献=OSを、説得の経済性、象徴的操作、愚かさの管理、愚かさの自己管理の4概念で説明した点
      • ただし、実証されていないことが問題
      • ↑そもそも実証が難しい=無反省的概念(自覚のない概念)だから(サルトル)⇔反省的概念=その人自身が自分の仕事を自覚している自発的行動
    • Paulsen(2017):初の実証研究
      • 批判的思考がOSに対抗できる
    • 知性はどう理解すべきか?:(1)個人の学習能力、(2)個人の環境適応能力、(3)抽象的な概念を処理する思考力
    • Stupidityはどう定義すべきか?:知識と意識の両方の欠如
      • この時の知識は、主要される知識(=存在しない知識):例=地球は温暖化しているが、その確実な理由は不明
      • この含意は、人間は簡潔な知識を持つことで深い無知を隠す
    • OSは組織的知性の欠如を意味するか?:知的な組織は同時に愚鈍=相互連関する概念
    • マネジメントファッション:定義が曖昧であるために、社会に浸透し、用語が一般化するにつれて、その曖昧さのパラダイムはさらに強化され、より複雑さを伴う。
      • 組織や社会におけるうまくいかない議論のこと→用語のリストが出版されやすい
    • CTの定義:証拠に基づいて評価し、意思決定する能力や傾向
      • CTには認知的側面と情意的側面が含まれる
    • OSの4段階
      • 愚鈍さのない組織:CTが上級管理職にとって魅力的なツール、メンバーにもCT教育が行われる。ただし、仕事のスピードは落ちる・パフォーマンスの低い組織になる可能性がある。
      • 愚鈍さのレベルが低い組織:メンバーが自分の仕事、なぜそれをやるのか、仕事の結果はどうなるのかについて無関心な状態=時給労働に多い→マネジャーが斬新なアイデアを出して実行に移そうとしても、メンバーは消極的で決められた仕事をこなすことを好む。
      • 愚鈍さのレベルが高い組織:マネジャーがメンバーの愚鈍さを助長し、メンバーに葛藤や疑念を許さない職場。規律を守り、安定した組織構造を作って、生産性を最大化しようとする。メンバーがマネジャーの指示に従うインセンティブスキームを作る。→FSが起こる=管理されたStupidity
      • 完全に愚鈍な組織:メンバーがCTを問題行動で不適切と思う職場(=自己管理されたStupidity)。メンバーのマインドセットを作ることがマネジャーの役割。→メンバーは自分たちの組織が優れた職場と思い込む。→組織はポジティビズムで満たされる。
    • OSプロセス
      • 省察的行為=管理されたStupidity→認知能力の抑制
      • 非省察的行為=説得の経済→シンボル操作→自己管理されたStupidity→認知能力発揮の抑制
      • →組織適応→組織満足度→組織メンバーの団結→OS