- Functional stupidity:省察の欠如、知的能力の不使用、近視眼、説明不足→愚行管理、対話的行動の阻害→前向きで一貫性のある個人の内的対話の促進→生産的な結果をもたらす可能性→個人と組織の不協和をもたらす
- この問題の背景は、知識経済化、組織における知識経営。これまでにも、semi-rational、集団浅慮として研究されてきた。
- FS:organizationally-supported lack of reflexivity, substantive rea- soning, and justification.
- 外部の知的資源の活用を拒むことで生じる
- 疑念や省察がもたらす摩擦から組織を守れる
- 問題のある思考パターンから抜け出せない
- 本論文の貢献
- 既存の認知能力活用による組織運営の過程を疑うこと
- 認知能力の活用がパワー・支配関係でいかに抑制されるかを示す(単に時間や資源の不足や認知的な固執による抑制ではなく)
- 普遍的だが認識されてこなかった側面を示す
- 従来の優秀さを制限するコンセプト
- 限定合理性(Simon 1972):個人はベストを尽くすが、資源や時間に限度があるという考え方。
- Midless ways(Ashforth & Fried 1988):所与の条件下で標準的な手続きを見出そうとする=一度学習すれば、深く考えずにできるので、認知的効率性が上がる。
- 熟練された無能(Argyris 1986):大規模組織で保守的なルーチンを作ることによる、管理職側の仕事のしやすさと、深い思考や探索を避ける問題。
- ゴミ箱型意思決定(Cohen et al 1972):組織内の曖昧さ、動態、不確実性による意思決定時の注意拡散。
- Foolishness(March 1996):曖昧な目標の組織が複雑な環境下にあると必要になる。Foolishな行動が、組織の選好を明確化・焦点化し、試行錯誤を促進する。
- Ignorance(Abbott 2010など):知識集約的な状況が作る問題、特に科学・社会政策(温暖化研究は、地球の温度が上がってきたことに注目を集めたが、その詳細な要因=新領域は無視されている)。部長がTQMの技術的詳細について無知→非現実的な期待を持つ。見せかけの知識が、いかに組織のメンバーを混乱させるか。
- これらのコンセプトは、「認知能力の発揮が組織活動の中心」という仮定を疑わない(=つまり、合理的な知的行動に伴う不可避な限界を論じている→半合理的な機能による限界を見落とす)。
- 例えばIgnorance:問題の中身に焦点化=専門家や教育を活用して知識を付加すれば問題に対処できると考える。←認知能力の積極的な活用・不活用の限界について論じることができない。
- 例えば熟練された無能:効率的な人的交流のための組織内規範が、問題に気づき、対処する行動を妨げることを示した。←感情や動機づけに関する問題(=不安、不確実性、組織内の和を乱したくない感情など)を見えにくくする。
- 要するに、認知的限界と感情的問題の関連性を説明できない。パワーや政治活動が知能の活用を妨げることにいかに貢献しているかを考察できない。
- だからこそFSの導入が必要。
- Stupidityの例:影響力のありすぎるリーダーの存在、インターネットバブル時のオンラインベンチャーへの過大投資、金融テックへの非合理的な信頼によるショック
- →知識の豊富な人は認知能力を積極的に使わないようにすることが必要。
- 実際多くの経営行動が、誤った推論に基づいて採用される(優れたタレントマネジメント手法を採用しない・採用してもしばらくすると使われなくなる)。
- →組織にはシステムとしてStupidityが存在するのではないか?と考えるべき。
- →Stupidityは病理・不合理・機能不全ではなく、積極的に支持され、積極的な結果を生み出すものと考えるべき。
- 心理学的なStupidity:自分の認知資源や知性を動員できない、あるいは動員する気がないこと ≠ 無知
- →組織がそうした行動を奨励する=組織文化の問題
- FS=知的能力活用をしない・できない3側面:省察性、正当化、実体的推論
- Lack of reflexivity:知識の主張や規範に疑問を出せない・出さない(メンバーが組織内で支配的な規範や信念に疑問を持たない場合に起こる。=既存ルーチンは、自然なもの、良いものと考えている。)
- Lack of Justification:組織内の行為について、行為者が理由や説明を要求しない・提供しない(重要な批判的吟味や強固な理由づけのプロセスを経ることなく、慣行を受け入れる←会社をよく見せるため、他の人がやっているため)。
- Lack of substantive reasoning:認知資源が、特定の組織、職業、仕事の論理によって定義された小さな関心事に集中しているときに起こる(与えられた目的を効率的に達成することに焦点を当てた道具的合理性を近視眼的に適用し、その目的が実際に何であるかという幅広い本質的な問題を無視する)。
- FS=認知的側面だけでなく、情緒的側面の問題でもある
- 動機づけ:好奇心の欠如、閉鎖的な考え方、組織人・専門家アイデンティティ→広い思考に対する障壁になる
- 感情:感情は認知プロセスを左右する=仕事への不安・不安定な立場がFSを強化する。
- →これらを合わせると、能力不足と能力を発揮しようとしないことには相互作用がある。
- 反射性・正当化・実体的推論は、一般に組織内で中心的活動と位置づけられていない(一定程度行われてはいる)。←時間の浪費と思われるため、場合によっては危険な活動とも見られる
- ここでFSを再定義:認知的・省察的能力を狭く控えめにしか使わない・使いたがらないこと(知能の高い人がFSと無縁とは限らないし、知能の活用とFSは共存する)。
- 1つの例:組織内の情報の扱い
- 情報収集への関心の高さ、情報不足への不安→情報過多・活用不十分
- これは情報=理性的・信頼・知性というイメージがあるため→情報を使って意思決定をすれば、プロセスも結果も正当である=それを行った管理者は優れている
- つまり、情報偏重の組織文化の問題
- 組織内のFSダイナミクス:マネジメント層が対話的行動を阻害し、管理的命令が強化される。←組織が強い文化・アイデンティティ・ブランド・カリスマ的リーダーシップにより、シンボリックな操作を強化する時に起こる。←現代の説得型経済の影響。
- 説得型経済とは?:需要喚起が製品を作ることではなく、魅力的なイメージ・期待を作ることにより、仕事もイメージづくりが中心になる。
- →ブランディング、広報、イメージ構築 > 生産
- →メンバーは、イメージに忠実であることが期待される
- 管理職による愚かさの管理
- マインドセットを作ろうとする、特定の文化・価値観を浸透させようとする
- 組織内の実践を肯定的に理解することを求める
- メンバー間のコミュニケーションは4つのパワーの行使で阻害される
- 直接的な抑圧:現場を見に行くな、毎朝歩け
- アジェンダ設定:建設的な提案を行う場合しか議案に加えない
- イデオロギー的枠組みの設定:「考えるな・実行しろ」
- 特定の立場の設定と拡散:具体的にはリーダーの賞賛(リーダー主義)、分権的リーダーシップでさえリーダーは道徳的・精神的・社会的にフォロワーより優れているという前提を置いている=フォロワーはリーダーの提案を受動的に受け入れる行動が期待される
- 4つは相互に連関している
- メンバーがFSのプロセスに置かれる→省察的な活動を控え、組織の肯定的な側面に集中する
- →(1)意図的に組織から距離を取って内省に取り組み人もいる
- →(2)主観的には距離を取りながら現実的に組織規範に沿って行動する
- →(3)支配的な考えを内面化する
- →出世するために、組織が推奨するポジティブな価値観を受け入れることで、自分の経験を選択的に編集し、愚鈍なマネジャーに合わせる行動を取る。
- FSはどういう帰結をもたらすか?ポジとネガがある
- プラス面:個人=確実性の感覚をもたらす、キャリア形成に集中できる+組織=批判的思考に要する資源・コストを下げられる
- マイナス面:個人=自律性の低下、懐疑的態度→コミットメント低下+組織=問題回避や誤認(銀行のサブプライム問題への疑問封印)
- FSを見直すきっかけは大災害・大失敗。
- 学者の世界ですら同じ。狭い分野でトップ誌に載せることだけを目指し、社会的に有用なことを述べられない。
- 研究課題:FSが時間の経過と共にどう変化・進化するか、問題提起能力は時間の経過と共にどう発達するか、FSと理性的行動は共存できるか
この概念は正負両面あることが、面白さであり扱う難しさでもある。