2023/05/20

勅使川原真衣(2022)『「能力」の生きづらさをほぐす』どく社


  • 個人の能力が大きく変わることはないのだから、能力を評価する社会の方を見る必要がある。
  • 教育社会学は、なぜそうなってしまうかを問うことでメカニズムを明らかにしたり、そのような仕組みを後世に継ぐべきかを考えて提案する。
  • 日本の教育は、機会の平等を重視したことで結果の不平等を放置した。平等と信じられた日本の教育は、生まれの格差を是正しようとする気持ちを持ちにくくしている。そのため、うまくいかない人は努力が足りない人という主張に、社会が違和感を持てない。
  • 大学の教育方針の大転換は、社会が大学にかけた圧力そのもの。
  • 儀礼化した学校は精査されない。そこで獲得するとされている能力も深入りされずに顔パスになる。一人前になるには学校に行かないといけない、しかし能力をはじめとする教育内容の細部について、誰も興味がない。
  • 学校という権威に表面的な服従を示すことが実際の生きる力とは皮肉の極み。学校は通過点であり、照準は社会。実際に学習指導要領にも、「社会に出てからも学校で学んだことが生かせるよう」学びに向かう力・人間性、知識・技能、思考力・判断力・表現力の3つを育むとある。社会が求めるものを教育現場が下請けで子どもに教えている。
  • 人事部が人材開発業界という第三者を必要とした。人事は、昇格・降格などのシビアな内容を扱うため、公明正大さが求められる。そのため理論武装が必要で社員の納得感の醸成に気を遣う。なのに、人事もさまざまな業務を経験させるために数年ごとの配置換えがあたりまえ。
  • 人材コンサルをする外資系大手、保険会社から派生している。保険会社として保有する年金データを活用して応えたのが報酬専門のコンサル。報酬は何に基づいて決めれば納得性が高いか?→能力の違いに注目すればいい→能力専門のコンサル会社誕生
  • 全員を1つの同じ能力の獲得に向けて競争させる、キャッチーで訴求しやすい能力のレベルを測ることは危険(むしろ組織全体の機能を担い合うことが大事)
  • 組織の業績は組織風土次第:しかし、何が風土かに気づくのは難しい
  • →風土の醸成に大きな影響を与えるのがリーダシップ
  • 好業績者(ハイパフォーマー)と同じ行動を取っている度合いをコンピテンシーと呼ぶ
    • マクレランドがコンピテンシーモデルやコンピテンシーディクショナリーをつくった
    • できる人は脳みそが違うといわれるより、仕事の成果はよい行動ができているかどうかで、次はこの行動を取れるようにがんばろうと言われる方が納得感が高い。
  • →できる風を装う行動をする人が続出
  • ピクチャー・ストーリー・エクササイズ:正解がなくどうとでも解釈できる絵について作文を書き、そのキーワードを分析して評価
    • 画面の中心に白衣を着た女性が試験管を振って、それを眼鏡をかけた女性が見ている絵。
    • 実は性格を調べている検査
    • 行動は装いやすいといっても、自分が行動するとできない人がいる。行動の根底には性格があるから。
  • →マクレランドは氷山モデルを示す:知識・経験・スキル(表層=習熟可能)、マインドセット(意識・意欲・心構え・価値観)(中層=変容可能)、性格特性・動機(感情の素)(深層=変容困難)
  • 個人の能力の問題で仕事ができる・でき内を決められると、個人に無限の努力が強いられる。
  • 能力の商品化が進んだ先に、人の心・精神状態まで能力に取り込まれた。
  • 必要なのは違いをふまえること:背が高い人に、なんで背が高いんだ、病院行ってこいとは言わない。
  • 精神状態や発達特性は、わかれば解決するものではない。わかっても何も進まない。
  • 科学という客観性に傾倒するあまり、主観を置き去りにしてきた。プロなら主観は敵と言われる。どこかの誰かの客体ばかりが重視され、主体は我慢に我慢を重ねてきた。
  • →まず相手の話をとにかく聞くこと。聞くことこそが、相手にはほしくてたまらなかった私に関する情報を教えてもらったと同じ信頼を作り出す。その上でなら、どこかの誰かの話の客観性・エビデンスについても安心して聞く耳が持てる。
  • 人間は複雑なものをわかりやすく・はっきり提示する習慣が染みついている。