2023/02/11

Morrison, E. and Milliken, F. (2000) Organizational Silence: A Barrier to Change and Development in a Pluralistic World, Academy of Management Review, 25(4), 706-725

  •  Organizational silence:従業員が潜在的な問題や課題に関する情報を広く保留する力
  • 組織のパラドックス:メンバーが組織内の問題・課題について、真実を知っていてもあえて上司に話さない(裸の王様理論)
    • なぜ話さないのか?理由2つ
      • 発言することでマイナスの影響を受けることを恐れた
      • 発言することで何かが変わるとは思えなかった
  • この問題が深刻な点:従業員自身は多様なのに、表明される意見が一枚岩にしかならない(=多様性が組織の強みにならない)
  • 本研究の3つの特色
    • 従来の研究は、メンバーが意見を発するかという個人の意思決定に注目→集団レベルのダイナミクスに注目
    • なぜメンバーが意見を言わなくなるかという規範に注目→ある個人が沈黙する動機と、残りの全員が沈黙する動機は全く異なることに注目
    • 個人レベルの先行要因(=コミットメント、満足度、リスクテイク)に注目→個々の行為者の外側の要因に注目
  • 組織的沈黙は2つのビリーフに起因する
    • (1)否定的なフィードバックに対する管理者側の不安
      • ネガティブフィードバックが下から来る=正確でなく、正当性に欠け、自分の権威や信頼性を脅かすものと見なす傾向がある
      • これが、情報を上向きに流さない慣行を生む(沈黙風土)
    • (2)マネジャーがもつ3つの暗黙の前提
      • 個人は自分の利益を最大化するために行動するという暗黙の前提(ビジネススクールの影響?)=インセンティブや懲罰なしには、組織のための行動しない
      • 組織の重要な問題の多くは、上層部が知っているという暗黙の前提
      • コンセンサスは組織の健全性の証であり、不一致や異論は避けるべきという信念(=組織の一元的な見方を助長する)
  • なぜこうした信念が形成されるのか?
    • 上層部が経済・金融分野出身者で占められている(合理的経済人モデルの前提を持つ)
    • 機能的な訓練と経験に関して均質であればあるほど、平均在職期間が長いほど、前提共有が強固になる
    • 上層部が上下関係の強い文化圏の出身者で構成されている(上司が正しいのは、単に上司だからだと考える傾向が強い)
    • 上層部とメンバーの非類似性(性別、人種、民族、年齢)が高い(=メンバーの意見を疑惑の目で見る可能性が高くなる)
    • 環境要因:予測可能性、統制、効率に依存する組織+資源の枯渇を特徴とする競争の激しい環境の組織+成熟した安定した業界の組織
    • 内部要因:上層部とメンバーの交流が薄い組織(垂直的乖離が大きい組織)+内部昇進よりも外部からマネジャーを採用する組織
  • 組織内の3つのイデオロギーによる影響:(1)メンバーは自己中心的である、(2)上層部が最も良く知っている、(3)意見の相違は悪いことである
    • メンバーは利己的という信念=メンバーを意思決定に参加させないことが合理的(タスクフォースなどで関与させても、真の意思決定はトップだけで行う)→公式の上方フィードバック傾向が弱くなる
    • メンバーは利己的という信念=メンバーの提案を(1)マネジャーへの攻撃と見る+(2)組織を心配しての行動と思えない
  • こうした上層部の傾向は、組織に影響する
    • 中間管理職に影響し、組織全体の傾向になる
    • 中間管理職が下からの上方を遮断する
  • 沈黙風土はどう発生するのか?
    • 組織風土=特定の職場環境の心理学的に重要な側面に関する、共有された永続的な認識
      • 風土は個人のニーズや動機づけ状態よりも強力な行動決定要因になりうる
      • 象徴的相互作用論(Blumer, 1969)が基盤=意味は所与でなく、メンバー間の相互作用から生じる
        • 人は自分の信念や認識を評価する強い欲求を持つ
        • →他者の信念や認識と比較する→職場の認識や経験を共有し、仕事の様々な側面の意味の共通理解をつくる(トライアンギュレーション)
    • 沈黙風土=(1)組織内の問題について発言することは努力に値しない、(2)自分の意見や懸念を口にすることは危険であるという2つの信念で定義する
  • 沈黙風土の発生ダイナミクス
    • 個人は、自分と似ていると思う人と一緒にいることが最も快適+自分の信念や認識を検証する参照先として似た他者を好む
      • →メンバーが発言機会ない+メンバーの類似性が高い=沈黙風土が生まれやすい
    • ワークフローの相互依存度が高い場合:より多くの人と調整が生じ、認識共有機会が増える→沈黙傾向解釈がより進む
    • インフォーマルネットワークが強い場合も同様
  • センスメイキングプロセスのゆがみ
    • メンバーは、限られた・偏った情報に基づいて、上層部の行動を理解する。
      • 情報の多くは又聞き
      • 人は自分が正しいと思うことよりも、他者が信じているように見えることをより信用する(他者が組織内で声を出すことに無関心だと思うと、自分は声を出すべきと思っても行わない)
    • メンバーは、自分と同じような人間がトップに立っていないことを知ると、組織は自分たちの意見を尊重していないと考える傾向がある


  • 多様な意見を出せるようにすべきだと言うが、なぜそれが難しいかの複雑な力学に関する理解が足りない。
    • その力学の多くは観察できない。
    • シニシズムは、不信感と同様、いったん根付くと排除することが困難
    • システム全体の変化には、強力な外圧が必要だが、それさえ十分とはいえない
    • トップの認識改革は必要条件だが、十分条件ではない。