村山功(2011)「概念変化についての諸理論」『心理学評論』54(3),218-231
- 概念変化研究の始まり:「教えたはずの基本的な内容が正しく理解されていない」
- その原因は、教える前から持っていた知識(=学習者が教育内容を誤解しているのではなく,教える前から持っていた知識が教育によっても変わらない)
- →素朴概念、誤概念、前概念、自然派生的理論、代替的枠組み
- 素朴概念の克服が困難であるなら、どのような条件で概念変化は生じるのか?
- 前概念C1、後概念C2の時、(1)拒否される、(2)丸暗記される、(3)C1がC2に置き換わる、(4)C1にC2が取り込まれる
- 概念変化の4条件:(1)C1に対する不満がある、(2)C2が理解可能(intelligible)である、(3)C2が妥当(plausible)である、(4)C2が生産的(fruitful)である
- ↑への批判:概念が明確に文節化でき、記号で定式化可能、合理性を過大視している、
- 素朴概念には変化しやすいものとしにくいものがある
- 信念(belief)=一文で表せる単一の考え
- 血液に酸素を送るのは心臓である(誤信念)→肺という信念を与えれば概念変化が生じる
- メンタルモデル=個別の信念が組織化されたもの
- メンタルモデルの修正を転換(transformation)と呼ぶ
- テキスト=一文一文は信念レベル→学習者が統合してモデルと理解する必要がある→信念修正の積み重ねで転換が生じる(メンタルモデルを構成する重要な誤信念が修正されるかに依存)
- カテゴリー:実態、プロセス、心的状態の3つ
- 別の枝のカテゴリーは排他的な関係(人工物と生物の場合、動かすことができる、動くことができるは全く別)
- 垂直方向の分類は上位カテゴリーに分類する限り誤りが生じない
- 水平方向に異なるカテゴリーへ入れることがある→本来対象が持たない属性を付与してしまう→分類し直す(カテゴリーシフト)はかなり困難な学習を伴う
- 断片的知識(knowledge in pieces):人間の知識は断片的だ、個々の知識はかなり単純な内容しか表していない→複雑な認知や行動が可能なのは,断片的な知識が組み合わされて用いられるため
- 「知識の組み合わせ方」が重要
- 公式を知識として教えることは難しくない→具体的な状況で正しく適用させたり、現象に対して大まかな解釈や説明をさせるのは困難→直観的理解はどのようなメカニズムで行われるのか?
- 物理学習の単純な知識=p-prim(phenomenological-primitives)、現象の観察に基づく
- 人は現象を見ると関連するp-primを呼び出す
- 呼び出しの優先度(呼び出されないものも、置き換わるのではなく残っている)
- 信頼性の優先度:呼び出されたp-primを使うかどうかを決める
- これら2つの優先度で推論がコントロールされる、優先度は文脈に依存する
- 重要な示唆:(1)個々のp-primについて正しい・誤りは意味がない、(2)素朴概念も科学的概念も、同じようなp-primを含んでいる、(3)科学的概念の獲得は学習の終了を意味しない(概念を正しく獲得しても現象に適用されるには、呼び出しや優先度の変更が不可欠)
- 概念変化研究で学習者特性を考慮していない⇔やる気があっても変化しないのはなぜかが出発点、やる気がないから概念変化しないという説明は概念変化自体を明らかにしない
