近森憲助・谷村千絵・上野正恵(2017)「教育研究と教育実践における批判的実在論(クリティカル・リアリズム)の可能性」『教育学研究』84(4), 59-69
- 批判的実在論(クリティカル・リアリズム):ロイ・バスカーに始まる科学哲学、実践哲学
- 見えないものをも実在と捉えようとする
- 特に教育は言葉で捉えきれない
- 「学習とは何か」「どうしたら学習とは何かを知ることになるのか」2つの問いの区別が曖昧 ← 何か(what:存在論的な問い)とどうしたら(how:認識論的な問い)を明確に区別しないと、認識できないものは存在しないものとされる ← 現代は認識論が支配的
- → 学習についてそれは何かをまるごと問う=知ることができるかはともかく、まず対象に向かって問いかける
- バスカーの存在論の3つの主張
- 知識対象と対象についての知識の関係
- 太陽:自存的=人が太陽についての知識の生むにかかわらず存在している
- 我々の知識:意存的=さまざまな方法による太陽についての我々の認識に根ざす(認識されないなら太陽はないものとされる)
- 意存的な知識は誤っている可能性がある → だからこそ更新・洗練へ開かれている必要がある
- 現実世界は開放系
- 現実世界の現象は多くの要因が複雑に絡み合って生起する
- 学校カリキュラムは学校が閉鎖系であることを前提に作られる
- 実際には部分的な閉鎖系 → 開放系として学校外の教育資源を活用し、生で本物の学習機会の提供が求められている
- 現実世界は存在論的な深さを持つ
- 教師は生徒の行動の全てを経験として捉えない ← 教師自らの関心をもとに注目した一部の行動を捉えるのみ ← それを基に評価する
- 批判的実在論は、これら3つを全て含んで実在と捉える
- 批判的実在論の3段階
- 基礎的・批判的実在論:人間の生み出す知と現実世界は別物(科学を可能にする)
- 批判的自然主義:自然主義の可能性をあらためて描出
- 超越論的実在論:科学の基礎となる実在を巡る議論へのバスカーの答え
- 後者2つを1つにして、批判的実在論が定着
- バスカーの言葉
- 不在の不在化:目に見えるものを手がかりに見えないものを思考し、確認する実践・実験。これにより人間は「少し」自由になる。
- 対案がない:不在の不在化に進まず、破綻、堕落、思考停止
- 具体的個別=普遍:教育は具体的で個別な存在であると同時に、なんらかの普遍法則の相互作用を体現する
- → 批判的実在論は、経験主義、現実主義ポストモダンを批判する
- 世界には層的な深さがある、存在は皆異なり、それぞれ変化し、相互作用する。この世界でともによりよく生きるための工夫を生み出す知の創出を人はできる。
- 南アでの西洋文化:理科教育で土着知は迷信や神話とされる
- → 科学知と土着知の両者を、学習者自身が自分の生きる社会的・生態学的文脈に位置づけ、それぞれを関わらせる学習を重視する
- 日本の防災教育との相似:科学知と学校知のパラダイムが違う
- 学際性は社会科学の必要条件