2012/12/18

潮木守一(2008)『フンボルト理念の終焉?―現代大学の新次元』東信堂


  • 大学の自由は,教師は教室の中で何を言おうが自由,学生は講義に出るのも出ないのも自由という意味で使う。ベルリン大学では,いつ何を学ぶかのカリキュラムが全くなかった。これがフンボルト型大学での学生の自由。
  • 大学は国家から独立した組織で,そうした組織には構成員を自分たちで裁く権限があった(大学裁判所)。学生は男を上げる名誉として,大学は裁きを甘くし,市民は歯がゆく見ていた。
  • 裁きが甘くなるのは,学生が持つ自由居住権のため。しかし,ベルリンは大学がなくてもやっていけいるとフィヒテ学長は宣言した。
  • 当時は多くの大学は,誘惑の多い大都会を避けて地方の静かな田舎に作るのが一般的だった(オックスフォード,ケンブリッジ)。
  • フンボルトは,学生を学ぶ学生でなく,研究する学生と考えた点が新しい。
  • 大学で教えるべきことは,知識をいかに作り出すか,いかに発見するかという方法であり技法である。
  • フンボルト型大学が相手にしていたのは,選ばれた少数の学生だけ。ゼミナールの学生になるには,厳しい選抜試験をクリアする必要があった。
  • ゼミナールとは,図書室・資料室とセットになった教室のことである。学生を研究させながら教育するために設計された特別の空間である。学生が研究を発表し,疑問点が出ればすぐ文献にあたり,その場その場で知識を確定していく。つまり,研究と教育の統合の具体的な姿。
  • ゼミナール生になると奨学金が出たため,一部の学生には厳しい選抜に挑むインセンティブがあった。
  • フンボルトの時代にも,時間割の生活から大人扱いされる大学生になって,万事を手探りで進む不安定な隙間に陥る困難があった。
  • 学生がレジャーランドであった背景には,学生を大人として扱う以外に,書籍の普及があり,講義に対する本質的な疑問が生じたことによる。
  • 20世紀を支配したフォーディズムは,労働者の賃金が機械の前に立っている時間で決まるものだが,単位制にも影響を及ぼし,何を学んだかではなく,何年在籍したか,何時間教育を受けたかで単位や卒業資格が与えられるようになった。現行の単位制度は,工場労働者の労働時間を基準に組み立てられた。
  • フンボルト型大学での教育の自由は,学生を教育するためのものではなく,自分の学説を紹介する場であった。
  • フンボルトが克服しようとしたのは,縁故採用による親族大学であり,教授の選考権を政府に引き上げようとしたことである。
  • そのために研究業績で教員を採用するようになる。これは,血縁で選ばれる教師を淘汰する一方,業績原理の導入は私講師に厳しい生活を強いる。今の非常勤と同じ構造。
  • フンボルトは教授会から選考権をはがそうとした。当の教授会も,閉鎖的な人事を自覚していた。重要なのは,教授会という制度の可否ではなく,その制度を支えている人間の思想である。大学と学問の閉鎖性を回避するには,大学と学問を取り巻く環境との緊張関係が欠かせなく,これを欠くと大学はマンネリとステレオタイプに支配される。

2012/12/17

島田次郎(2007)『日本の大学総長制』中央大学学術図書


  • 学校教育法には総長の名前はなく,学長が校務を掌り,所属職員を統督することになっている。
  • 東京大学は帝国大学になる前の創立時は,東京大学と称していた。その長は綜理といい,2名任命された。当時は4つの学部があり,一人が法学・理学・文学の3学部を,もう一人が医学部綜理であった。創立5年目に,これが一人の長である総理になった。
  • 当時の官制では,参謀総長,検事総長など,総長が最高責任者の一般名称であったこと,帝国大学令では,従来の学部がそのまま分科大学(法科大学,医科大学,工科大学,文科大学,理科大学)となり,それぞれに学長が置かれたために,帝国大学長が学長を名乗れなかったことが考えられる。
  • 短期間ながら,帝国大学総長は私立の諸校に対して,教育内容・教育方法・教育成果を詳細に把握し,規制することが行われていた。
  • 新制大学の学制で総長の制度的根拠は失われたが,東大の評議会は総合大学の長は総長と称すべきと提案されて了承される。その後,7帝国大学総長会議でも総長の名を存置することを申し合わせた。総合大学であることと,これまでの慣行であることが,存置理由の全て。帝国大学の格差意識が示されている。
  • 47年以降に総長を使っていたのは,東大・京大・阪大。しかし,91〜92年に,東北・九州・名古屋・北海道で総長が復活した。これも7大学学長会議で提案されたと言われ,特権意識がわかる。
  • 私立大学の学長制は,
    • 法人教学一体型(一元型):総長=理事長・学長,三位一体,早稲田・慶応・法政
    • 法人教学分立型(二元型):総長・学長⇔理事長,亜細亜・関西・上智・日本・立命館
    • 法人教学分立型(三元制):理事長⇔総長・院長⇔学長,青山・関西学院・専修・中央・東海・同志社・明治・立教。

2012/12/16

鈴木亘(2010)『年金は本当にもらえるのか?』ちくま新書


  • 年金制度が頻繁に変わるのは,将来財政が維持できないことがわかると改革を行わなければならないから。
  • 基礎年金の設立目的は,制度の共通化・一元化ではなく,国民年金の財政支援にあった。
  • 賦課方式は百害あって一利なし。設立当初は積み立て方式で運営されていたが,いつのまにか賦課方式になった。その理由は,政治家・官僚が無計画に年金積立金を使ったから。使い道は,高齢者への年金振る舞い,天下り先へのプロジェクトや福利厚生。歴代の政権は,人気取りのために年金受給額に見合う保険料引き上げを行ってこなかった。つまり賦課方式とは,自転車操業のこと。
  • 賦課方式の下では,高齢者/現役比率と保険料負担は完全に比例する。高齢化率の予測は,2070年の85%までをピークに,60年で50%以上も上昇する。ピーク時は,現役1.17人で高齢者1人を支える状態。現役に主婦や失業者が含まれると,勤労者負担はより高くなる。
  • 少子化対策は,意味がないわけではないが,年金財政に影響する高齢者/現役比率は,当面影響を受けない。
  • 年金は保険であるから,税金での調達は論理的におかしいが,国民年金の空洞化が深刻なため,いっそ消費税で徴収すれば未納・未加入問題や三号問題が解決し,年金受給者からも徴収ができ,世代間問題を多少改善できる。さらに,保険料徴収業務も大幅に縮小できる(行政コスト削減)。
  • それでも未納対策を行うのは,厚労省がもつ年金財政予算の権限を維持したいため。
  • 人々が努力せざるを得ないような制度的仕組みを,コミットメント・デバイスと呼ぶ。25年保険期間がそれにあたる。しかし,25年納付の給付額は,都市部では生活できず(4.1万円),コミットメント・デバイスとして十分機能しない。ここに,10年を加えれば,未納・未加入を助長するだけ。そして,将来の生活保護財源を圧迫するだけ。
  • 有限均衡方式とは,100年後に積立金がなくなるように,今ある積立金をどんどん取り崩すこと。なくなった時点で,今の年金をいったん精算し,以降は新制度として高保険料・低給付を行う。これは反発を招くので,難しい言葉でごまかす。
  • マクロ経済スライドは,要するに給付カットだが,実際には発動されていない。18.3%保険料固定をした時点で,財政均衡のためには給付カットしかないが,これも難しい言葉でごまかす。
  • 積立方式はインフレに弱いといわれるが,これは規制金利時代なら正しい。今は,インフレになれば,その分長期金利も上昇し,資産価値の目減りを防ぐ(フィッシャー効果)。銀行も預金を獲得する競争のために,インフレ分金利を上げなければならない。実際,デフレで資産価値が上昇して嬉しかったというわけではなく,実際は低金利で資産価値は上がらなかった。

2012/12/15

宮田由紀夫(2012)『米国キャンパス「拝金」報告 - これは日本のモデルなのか?』中公新書ラクレ)


  • 大学は医療と同様,経験財である。売り手と買い手の間でサービスの質に関する情報の非対称性があり,かつその便益は購入してすぐにわからず,将来に渡って生じる。さらには,通常は1回限りの購入で,しかも一括購入である。悪いと思っても途中で買い直せない。
  • そこで,医薬と同様,認可されたものだけが販売される。また,非営利で運営しなければ,消費者がだまされたり買い控えたりする。質に関する情報がなければ,低コストで低質な教育を行うものが残る逆淘汰も起こる。
  • 有名大学では,子供が生まれると寄付がはじまり,受験・合格でピークになり,不合格で寄付が減る。スポーツ推薦などで入学しやすくなり,実際にそうしたメリットがあるから寄付を行う。
  • 日本のAO入試では,プライバシー・個人情報の保護のために,思想,生活信条,尊敬する人物などを聞けない。APを定めても,そうした受験生を判別することはできない。逆に,一般入試では得点のみが有効で,APは機能しない。
  • テニュア審査は就職して6年目に行われ,認められれば8年目から昇進,だめなら7年目に食を探して8年目からは去る。テニュアを取れる確率は,平均で50%。
  • テニュアを解雇する条件は,財政難が正当に証明された場合,学生数の減少で学科廃止が正当に示された場合,明らかな職務不履行や違法行為の時。
  • 非営利組織は,利益の極大化ではなく,収入の最大化を目指すために,そのために費用の増加もいとわないという拝金行動が働きやすい。
 情報は豊富だが,分析視角がなく,単に知識やトリビアをひけらかしただけの本である点が残念。

2012/12/05

松田久一(2012)『成功と失敗の事例に学ぶ 戦略ケースの教科書』かんき出版


  • ビジネスの成否は,環境の差,戦略・ビジネスモデルの差,運・偶然性の3つで決まる。従って,市場や環境を知り尽くし,優れた戦略アイディアを構想すべき。
  • 戦略パラダイムの基本の型は,経験曲線とBPM,SWOT分析TOWS発想,競争優位,RBVコアコンピタンス,機動戦略の5つ。
  • SWOTでは,何を基準に機会と脅威,強みと弱みを分けるかは,分析者の判断にゆだねられる点が難しい。
  • 戦略の発想は,帰納でも演繹でもなく,類推法からしか生まれない。自分の体験や知っている事例に依存するため,個々人のものとなり,これが独創的な戦略に結びつく。
  • SWOTの際は,どのフレームで分析するか(3CかPEST),SO・ST・WO・WTのどのオプションを取るか,どうマーケティング戦略を組み立てるか(4P=製品ブランド,価格,プロモーション,流通・営業)。
  • 競争戦略の際は,中途半端が厳禁。コストも差別も両方は不可能であることが実証されている。
  • RBVでは,経営資源をリストアップして,VRIO(価値・希少性・模倣可能性・組織)の観点で評価した後,横軸に強みの経営資源・縦軸に市場を置く資源ポートフォリオを描く。
  • 機動戦略は,新規市場創出,フリーミアム,ロングテール,破壊的イノベーション,多次産業化という裏をとる。(対応するライバルはそれぞれ,既存市場深掘,コスト優位,上位集中,持続的イノベーション,産業内競争)。
  • 機動を成功させるには,まず機動ありき,起動した先で布石を打つ,ライバルが対応できない攻め方で市場を主導する。
  • 戦略は実行されて目的を達成できる。実効性を高める鍵は,戦略と組織文化の適合性。トップダウン,現場主導,ミドル主導に合わせる。特に日本はミドル主導が多い。つまりミドルがボトムを育てる。やってみせ,言って聞かせて,させてみせ,ほめてやらねば,人は動かじ。

 ここで登場する事例は,スケールメリットの働く製造業・小売業ばかり。スケールメリットが働かない業種や,非製造業では戦略論は適応できないなのか,という疑念を残す説明となっている。

2012/12/04

大鐘良一・小原健右(2010)『ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験』光文社新書


  • 宇宙飛行士の選抜で重視する点は,
    • 時間内に決められた作業を,きちんと達成できるように,集団をコントロールできるか
    • チーム内に意見の対立があっても,それをまとめて,課題を遂行できるか
    • チームに目標を示し,それに向かって作業を進めることができるか
    • リーダーからの指示を正確に実行できるか
    • 必要な場合,リーダーに対して適切に意見を述べることができるか
  • 宇宙飛行士に求められる資質は,
    • ストレスに耐える力
    • リーダーシップとフォロワーシップ
    • チームを盛り上げるユーモア
    • 機器を乗り越える力
  • 自らが日々積み重ねてきた努力を信じて,自身を誠意を持って伝えれば,相手の心を動かし,自らのペースに引き込むことが可能である。
  • 面接とは,つまるところ,この人間と一緒に働きたいかどうかを見ている。

2012/12/03

飯田泰之(2012)『飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1』光文社新書


  • 経済学思考の源に個人主義があり,これは個人の集合が社会であるという考え方。個人の嗜好や判断を,他人の嗜好・判断を阻害しない範囲で,最大限尊重する。これにより,個人の満足度とは別の社会的価値を排除する。
  • これは,価値判断から一歩引き,どの価値観に基づく目標に対しても,政策・制度の設定が可能になる。
  • かつては,労働価値説など,商品に客観的な価値があると考えていたが,今は主観価値説に基づく(ステーキの価値は人によって違う)。
  • 個人主義に立てば,個人の選択は常に合理的。これは,自分にとって主観的により満足な状態を得ようとして行動しているという意味で,合理的と考える。
  • 無料であった時に人がほしいと思う総量が,全体の存在量よりも多いとき,その対象は希少である。
  • ある行動をするか否かを,主観的な損得を比較して行動すると考える(インセンティブ)。
  • 裁定取引が消滅することは,ノーフリーランチの原則。金融市場では,購買力平価説と利子率平価説に現れる。
  • 長期定常状態とは,仮想的な状態を指す。この長期は日々変化する。無限先以外は,短期。
  • 購買力平価は,1ドル50円になり,アメリカで1万ドルの車を買って,日本で2万ドルで売る裁定が可能になったとき,ドル資金の需要が上がり,ドル高へ調整が進む。こうして,購買力平価レート1ドル100円台後半が長期で実現される。
  • 実際には,現在1ドル80円で,購買力平価レートへの調整が進まないが,これは金融市場の影響が大きいため。このときは,物価差に応じて為替レートが決まるのではなく,為替レートに応じて物価が変化する。
  • 先の例では,アメリカで車の価格上昇で,日本で車の価格低下で調整する。
  • 100万円を,2%の日本と4%のアメリカのどちらで運用するか。アメリカで運用して換金する裁定は成立せず,現在の為替レートが将来も同じという予想が間違っている(利子率平価)。
  • 高金利の国の通貨に上昇トレンドがあるわけではない。高金利の国の通貨は,現時点で将来より相対的に高くなっている。
  • 2財の機会費用は逆数であり,2国で機会費用を比較すれば,両財とも比較優位はありえない。
  • 生産フロンティアの傾きは機会費用。
  • 少ない家庭で導く結論は汎用性が高い。自然な仮定から導く結論は信頼できる。
  • 個人の幸せを考える際には,他人の満足度に左右されないと仮定する。理由は,とりあえず問題ないことと,他人の不幸は蜜の味といった規範に配慮する必要がないこと。
  • 所得が上がると消費も増える=上級財,消費が減る=下級財,価格が上がると需要が増える=ギッフェン財。
  • ある財が超過需要なら,他の財の中に超過供給になっているものがある=ワルラス法則。
  • パレート最適は,適切な配分のための必要条件。満たす最低限の条件を与えるもの。社会科学で,十分条件や必要十分条件が導けるケースはまれ。
  • 競争均衡はパレート最適=厚生経済学の第一定理。
  • いかなるパレート最適も,適当な初期分配から競争均衡として実現可能=厚生経済学の第二定理。財の消費量を政府が決めるより,初期保有点の再分配と自由な取引が最適分配を達成する。現物支給より,セーフティネットの下で競争する方がよい。
  • 余剰分析の際は,人間の経済的なうれしさが,どれだけ高く売れたか,どれだけ安く買えたかで決まり(幸福が金銭で計れて,1円の価値は誰にとっても同じ),異なる人間の間でその損得を演算できる仮定が必要。
  • 価格を戦略変数とする競争は,企業にとって不完全競争のうまみがなく避けたい。回避の方法の1つがコミットメント。独占的な回避方法は,ニッチと差別化。
  • 自然独占(費用低減=固定費用が大きすぎる)の多くは,インフラ事業だが,その全てが費用低減とは限らない。多くは,供給網がそれ。そこで,そこだけ独立公益法人にして,その他を競争させる(発送電分離)。さらに残った独占部分には,他地域の同業他社との比較による適正価格以下を求めるヤードスティック規制,適正価格をインフレ率+標準的技術進歩率に設定するプライスキャップ規制がある。
  • なお,限界費用規制や総括原価方式(=平均費用規制)もあるが,政府が企業の費用関数と需要関数を正確に理解する必要があり,企業は需要予想や人件費を高く設定する報告をしてしまう。
  • 再分配は,パレート改善になっていない,直ちに正当化できない。しかし,第二定理では,再分配の重要性が示される。
 新しいミクロと言うが,内容は伝統的・標準的ミクロ。講義の実況中継的な部分が新しい点で,初学者が疑問に持ちやすいところの概念解説を補っている点が優れている程度。

2012/12/02

柴田義松(2006)『批判的思考力を育てる―授業と学習集団の実践』日本標準


  • 9歳の壁:抽象概念を表す漢字が増える,2つの数・量の関係を表す分数が出る。
  • 日本の学校は,知識を教えるが,知識の獲得の仕方はあまり教えてくれない。詰め込み教育の問題点は,詰め込めないことにあり,詰め込めない詰め込み教育が,子供に非人間的な過剰な努力を強いている。
  • 学問とは,問うことを学ぶこと。教師が問い,子供が答える授業を,教師が見直す必要がある。何を問うか,価値ある問いは何かを教えることが,教師の必要性。
  • 問い心を育てるには,師問児答から児問児答へ,学習題材を現実性のあるものに,対立意見をたたかわせる討論学習が必要。
  • なぜ集団で学ぶのか。労働と学習はもともと一体で,集団的なものであった。教育の基本的目的は,人間を労働のために準備することである。
  • 国語の時間数は多いのに関わらず,読み方の力がついたという実感がわかない授業が繰り返されている。読み方には,文章の構造をとらえる,表現性をとらえる,視点(語り手の区別)をとらえる,人物をとらえる,文体をとらえるを教えなければならない。

     これを見ると,学習集団を作る上で,大学の週1回授業は制約が大きい。これでは同様の学習集団づくりは困難だろう。
     また,いろいろ批判してるものの,著者が指摘していない問題として,教員養成の問題が大きいと思われる。本書で指摘されるような批判的思考力を持たないまま教員になるのであれば,どれだけ本書のような知見があっても追いつかない。

    2012/12/01

    児美川孝一郎(2011)『若者はなぜ「就職」できなくなったのか?―生き抜くために知っておくべきこと』日本図書センター


    • 高卒の内定率は,90年頃の7割から,2010年頃の3割まで大きく減った。家計が許せば,進学へ進路を切り替えられる。この進学が,日本の高卒無業の放出を防いできた。
    • 教育は,経済,雇用,社会保障などと同じ,社会のサブシステム。どこかのサブシステムが機能不全であったり,大きく変容すれば,教育もその影響を受ける。
    • 高校の就職推薦を,学業成績と生活態度に基づく校内選抜で行うことで,就職希望者が多い高校における学習モチベーションを維持する機能として作用した。
    • 終身雇用,年功賃金,企業別組合というメリットの背後には,中小企業の大卒者確保困難,女性の排除,調整が不能,新卒就職以外の疎外,家族型企業・過度の忠誠心というデメリットがあった。つまり,保護や育成と引き替えに,支配に服従があった。
    • もう一つ,企業が,トレーナビリティを重視するために学校歴に注目した結果,学校は職業的レリバンスを失い,ランク上昇のみを目指すようになった。
    • 今のキャリア教育は,学校から職業への移行を構造的にとらえておらず,意図的に付け焼き刃の教育になっている。
    • それは,相変わらずの正社員モデルであり,エンプロイアビリティで着飾って,勝ち組コースへ進めというキャリア教育である。
    • 正社員の絶対数が決まっているのであれば,正社員を外れたときにいかに準備するかという教育こそが重要。正社員になれなかったことを自己責任にしてはあまりに酷。
    • 若者がフリーターが容認するのは,自分がフリーターになる現実を認識しているから。自分を納得させて自分の尊厳を守っているだけ。
    • キャリア教育は,社会理解,職業理解,労働理解こそが出発点。日本の労働をリアルに学ぶこと。
    • 仕事をしないうちから,職業と自分のマッチングをはかることは,発想が逆転している。やりたいこと探しは危険。
    • オーストラリアのように,中等教育の職業教育は,普通高校と職業高校,専修学校,職業訓練機関の連携で充実させる。全て1校で行うことは,資源の観点からも無理で無駄。
    • 自立とは,一人で何でもすることではなく,他人に上手に迷惑をかけること。

    2012/11/30

    フィル・レニール(2011)『ミンツバーグ教授のマネジャーの学校』ダイヤモンド社


    • リーダーシップは強調されすぎている。ある程度必要だが,コミュニティシップと両立しうる程度でよい。組織は,熱意あふれる人間のコミュニティになったとき,最もうまく機能する。
    • 欧米企業はリストラが当たり前というイメージがあるが,実際はそうではなく,地域に根ざした大企業は定年までは働く方が一般的。
    • 「お互いの経験を振り返って語り合い,内省する時間を持つといいだろう。リフレクションだ。」
    • 内省で大切な視点は,事実と感情,過去と現在,自分と他人,である。
    • 内省とは,単に過去の出来事を反省するのではなく,その出来事が生じた原因を洞察し,自分の固定観念に気づき,よりよい将来を気づくための行動指針を得る行為である。
    • 5つのマインドセット:内省(自己のマネジメント),分析(論理や合理性),広い視野(文脈のマネジメント),協働(リレーションのマネジメント),行動。
    • 内省を深くするには,映像のように活き活きと語る,飾らず語る,共感の姿勢で聞く,どうしてそこで○○しなかったのと問いかける。
    • リフレクション・ラウンドテーブルの5モジュール・30テーマ
      • 自分を知る(内省)
        • 自分のマネジメントスタイルを知る
        • 内省
        • コーチング
        • 一皮むけた経験
        • 自分史を振り返る
        • リーダーシップ
      • 組織を知る(分析)
        • 組織文化について
        • 集団における意思決定
        • 組織における見えない壁
        • 戦略クラフティング
        • マネジャーによるブランド構築
        • 戦略の盲点
      • 視野を広げる(広い視野)
        • グローバル化を考える
        • グローバルかワールドリーか
        • CSR
        • 文明からとらえる世界
        • 日本人のアイデンティティ
        • マキャベリと老子から学ぶ
      • 関係性を知る(協働)
        • モチベーションの源泉とは
        • 協働行動を阻害するもの
        • 対話
        • 場のマネジメント
        • 知識創造企業
        • 境界線上でのマネジメント
      • 変革を進める(行動)
        • 感情のマネジメント
        • サーバント・リーダーシップ
        • マネジメントのプレッシャーと闘う
        • 目標達成の阻害を排除する
        • 未達の課題
        • セッションを振り返って
    • コミュニティシップを形成するのは,配慮しながら人々を巻き込んでいくマネジメントであり,自らが課題解決していくヒーロー型リーダーシップではない。

    2012/11/29

    フランシス・J・ケリー,ヘザー・メイフィールド・ケリー(1987)『ハーバード・ビジネススクールは何をどう教えているか』経済界


    • HBSの学生は,数量分析,ヒューマニスト,総合人,政治的動物,最上階段,変人の6タイプに分かれる。
    • 経営方針の授業では,ゼネラルマネジャーの役割,戦力の意味とその重要性,企業戦略と経営方針の違い,企業戦略の様々な分析法を理解する。
    • 最高の戦略・方針とは変化するものである。
    • 組織行動の授業では,企業の根本は人間であり,従業員の感情,欲求,意欲を把握する重要性を理解する。
    • 組織を変化させる行動計画を勧告する前には,誰がキャスティングボートを握っているか,もっと問題なのはどのようなことか,望ましい結果が出ないのはなぜか,どうすれば成功するかなどを考える必要がある。
    • HBS行動のてこ理論:オペレーティング・システムのてこ=職務設計,業績評価システム,刺激・報酬システム,管理システム,測定システム,人間関係のてこ=マネジメントスタイル,コミュニケーションスタイル,交渉,状況管理。
    • マーケティング分析に欠かせないことは,市場の正確を理解する,ライバル会社を理解する,自社に対する理解を深める。
    • ビジネス状況は3つに分類される:ゼロサムゲーム,囚人のジレンマ,自然淘汰。
    • マネジリアル・エコノミクスの基礎:選択肢を図に表す(ディシジョンツリー),
    • コミュニケーションの訓練は,社内文書,報告書,グループ報告,雇用告知,解雇予告,新聞発表,年次報告書,職員募集書状,スピーチの準備,自発的なマスコミへの対処,インタビュー技術,討論技術について行う。
    • 講義での10分間スピーチ。
    • ビッグE分析の4つの原理:国家を1つの単位として景気分析を行う,国家戦略を歴史的に分析する,政府のトップの立場で,行動を制限している圧力や制約を理解する,国際体制を理解する(OPEC,IMF,GATT)。
    • 学位よりも自信がものを言う。HBSで得られる重要なものは,試練をくぐり抜けた満足感と自信。
    • HBSで教えられているのは,方法であり,問題点を見つけ,その問題と似た例を探し出す方法を学生は教わる。
    • なので,つねに現在の問題に集中的に取り組む。そして,即座に解決策を出す。

    2012/11/27

    美崎栄一郎(2009)『「結果を出す人」はノートに何を書いているのか』ナナ・コーポレート・コミュニケーション


    • ノートを取ることは,仕事を記録し,経験を貯金し,経験値を自らの成長につなげることである。
     タイトルは結果を出す人はノートに何を書いているかだが,中身は著者がノートに何を書いているかであり,多様な経験を比較するものではない。確かに著者は結果を出す人だと思うが,あまりにも誤解を生むタイトル。
     内容は,社会人1年目には有益であるものの,アイディアレベルのビジネススキルで,この内容でこれだけの分量を書いたことに逆に感嘆。

    2012/11/26

    堀裕嗣(2012)『一斉授業10の原理・100の原則』学事出版


    • 授業づくりには教師の仕事の全てが凝縮されている。
    • 授業には,教師の知識,仕事に対する構え,コミュニケーションスキル,人間的魅力が凝縮されており,授業を5分見れば教師としての実力はわかる。
    • 説明の命は具体例,発問の命は参加者の文化(5W1H),ペア交流から始める

    2012/11/25

    久保田崇(2012)『キャリア官僚の交渉術』アスコム


    • 交渉の基本は,相手が喜ぶことをして心から納得してもらうことであり,相手に関心を持ち,相手の興味のありかを探ること。
    • そのためには,相手の望む話題を持ち出し,気持ちよく仕事をしてもらう。
    • 交渉のテクニックには,そもそも交渉しない,日頃から信頼を得ておく,ストーリー(結局それが何の役に立つのか)で説明して説得する,どう変わるかを全て書き出して重要なポイントだけを残した1枚のポンチ絵で説明する,落としどころを探る,BATNAをもって交渉に臨む
    • 永田町では,俺は聞いていない=この件は事前に相談していないので絶対に認めない。
    • 話は,つかみ=最近の案件,地元のデータ,趣味,地域活動から始める。
    • 説明は紙1枚,トヨタはA3紙1枚,東芝,マツダ,マッキンゼーも1枚主義。
    • ○○先生には特に早めにご相談に上がりました。相手は歓迎し,こちらは先手必勝。
    • 上司の応対も基本的に交渉。相手の好みの話題を頭に入れ,相手に合わせて相談を持ちかける。
    • よくできていない決裁書は,細分に詳しく方向性や考え方が整理されていない。
    • 指示の意図が不明確な上司,言葉で伝えてこない上司には,こちらが何度か負けながらニースを探る。
    • 上司は論破しない。
    • 仕事ができない危険な上司には,仕事をさせないことが仕事。自分の実力を控えめにアピールして自分に任せるよう持って行く。
    • 部下には,方針を示して行動させる。つまづきそうになったら手助けする。締め切りが迫ったりトラブルになりそうなら,その前に引き取る。
    • 部下には,ちょっと教えて下さい,といって話をする。これは部下のマネジメントではなく,仕事のマネジメント。

    2012/11/24

    向後千春(2012)『いちばんやさしい教える技術』永岡書店


    • 教え方のルール10か条
      1. 熱意よりも内をどうすればいいか具体的な指示を
      2. 教えたかどうかは学ぶ側が学んだかどうかで考える
      3. 結果が思わしくないのは,全て教える側の責任
      4. 上手に教えたいならコミュニケーション上手になる
      5. 教えるときは相手をよく観察して相手の状況をつかむ
      6. 相手にとってちょうどいい知識を与える
      7. 相手に教えたことを練習させて結果をフィードバックする
      8. 相手にできるようになってほしい具体的なゴールを決める
      9. 相手の心は変えられないが,行動は変えられる
      10. ゴールは必ず行動として設定する
    • 運動スキルは,スモールステップで教える,できたらすぐ声をかける,叱らない,褒めるより情報をフィードバック,相手の好む行動をご褒美にする,挑戦と技能のバランスを取る,脅しや褒めすぎは無意味。
    • 認知スキルは,記憶する,問題を解決する,話す・書くに分かれる。
    • すでに知っている知識と結びつける,聴覚型と視覚型を見極めて合わせる,解き方のパターンの多さが問題解決力を決める,後から見て記憶がよみがえるノートを取る,文章はスモールステップで書かせる(マップ,箇条書き,おしゃべり,段落),あるいは型で教える。
    • 態度スキルは,相手の心にタッチするという教える側に姿勢や覚悟が必要。
    • やればできる相手にさあやりましょうと言ってはいけない。相手がやるような質問をする(ボールはどんな回転をしていた?今日はどんな宿題がでた?さっきの宿題は何分くらいで終わる?)。
    • 人は命令されるのが嫌い。人はそう簡単にかわらない。なので,ストーリーを作る。ストーリーはなぜそれが必要か,それをやるとどんないいことがあるかを示す。それは教える側が作るのではなく,対話をしながら作る。つまり,答えは相手の中にある。人は自分の強みを言われるとモチベーションが上がる。
    • コーチングのGROWモデル:Goal,達成したい目標を設定・再確認,Reality,現状をチェック,Options,現状から目標への選択肢や行動案を決める,What/When/Who/Will,何をいつ誰がするかを決め実行する意思を持つ

    2012/11/19

    ケン・ベイン(高橋靖直訳)(2008)『ベストプロフェッサー』玉川大学出版部


    • 教えることを知らずして優れた教師になることはあり得ない。例外なく,優れた教師は担当する教科について,学者として,研究者としてよく知っている。
    • 優れた学習成果を上げるには,(1)学習者はメンタルモデルが機能しないような状況に直面しなければならず,(2)直面している課題を中止したり取り組むためには十分に機能しないことを気にかけ,(3)長い間信じていたことに挑戦することで生まれる感情的苦痛に対処しなければならない。
    • 通常,学生が学問分野の基礎知識を「知る」ことなしに,思考,分析,統合,判断は学べないと考える。そのため,情報の伝達を重視する。しかし,ベストプロフェッサーは,学ばなければならないとは考えるが,理解すること,理解すべきことについて学生の意思決定を重視している。学習は,学生の実際の思考,行動,感覚に何らかの影響を及ぼさなければ意味がないと考える。
    • 達成目標(Performance Goal)を持つ子供は,完全を期す,あるいは頭の良い子と思われるために,正しい答えを得たく,失敗を恐れる。
    • 熟達達成思考(学習によってより知的になると信じる)は,報酬ではなく,自分の力量を付けるために学ぶことが多い。学習の過程で冒険し,より困難な課題に挑戦し,その結果としてより多くを学ぶ。
    • スカラーシップは,4つの基本的質問を中核に展開する。(1)指導する学生たちは学習の結果として知的,身体的,情意的にどのようなことができるようになるか,(2)そのような能力とそれを活用するための心と頭の習慣を発展させるために何ができるか,(3)学生たちと私は学習の本質,性格,進展をどのようにしたら最もよく理解できるか,(4)そのような学習を促すための自らの努力をどのように評価することができるか。
    • 優れた教師は,学生たちが学ぶべきことよりも,知的に何をするべきかに注目する。
    • ティーチングという真剣な知的作業のための13の質問
      • この科目は学生のどのような課題,技能,能力,資質に役に立つか。私はどのようにそうした課題や能力に対する学生の関心を高められるか
      • 科目が提起する質問に答えるために,学生たちはどのような論理的能力を身につけ,開発しなければならないか
      • 教師として学生に挑戦してほしいようなメンタルモデルを学生が持っているか。そうした知的挑戦を行う学生にどのような援助ができるか
      • 科目の重要な質問に答えるために,また,自ら設定する仮説に挑戦するために,学生たちはどのような情報を必要とするか,得ることができるか
      • 課題を理解し,課題に答えるための証拠を活用し,論理的に考えることが苦手な学生をどのように援助するか
      • 心に軋轢や真実についての葛藤を持つ学生とどのように向き合い,問題に取り組むよう援助するか
      • 学生が既に知っていることや授業に何を期待しているかをどのようにして知るか。教師の期待と学生の期待の違いをどう調整するか
      • 学生たちが学び方を学び,自らの学習と思考を検討,評価し,より効果的,分析的,積極的に文献を読めるようにどのように援助するか
      • 学生を評価する前に,彼らが学んでいることをどのように見出せるか,評価とは別にどのようにフィードバックを提供するか
      • 学生が思考し続けるような方法で,どのようにして学生と意思疎通を図るか
      • 学生の学習成果を評価する際の知的・専門的基準をどう明示するか。なぜ,その基準を用いるか。この基準を使って学生が自らの学習を評価することを学ぶようにするには,どのように支援したらよいか。
      • 学生たちの学習の性格,進展,質をどのようにしたら理解できるか
      • 学生の好奇心を喚起し,自らの考えを再検討し,リアリティのメンタルモデルを再考するような魅力的で本物の課題を通して,教えたいと望む技能や情報を組み込んだ形で自然で効果的な学習環境をどのように創造できるか。学生が試行,失敗,フィードバックを得て再トライできる安心した環境をどのように形成できるか
    • あまり上手くいっていない教師は,学生に山ほど課題を出す。多くを期待しすぎることは,課題に疲れて疎外感を持つようになり,学習の低下をもたらすことが多い。
    • 約束のシラバスの3要素:(1)その授業が学生に提供する約束,学習機会を明確に述べる,どのような種類の質問に学生が答えてほしいか,どのような知的,身体的,感情的,社会的能力を発展させるのに授業が役立つかを示す,(2)教師は学生がその約束を実便するために何をするかを示す,(3)教師と学生が学習の性格をどのように理解し,その前進をどのように考えるかを要約する。
    • 優れたティーチングは,方法やルールではなく,教師の態度,学生の達成力への確信であり,学生に真剣に向きあい,彼らに自分の教育をコントロールさせる意思であり,学習目標と学生と教師の間にある相互の尊敬と合意によって行おうとする決意である。
    • 上手くいかない教師は,人間の記憶を貯蔵措置とみなし,その装置に蓄えた情報を利用する能力を知性と考える。
    • 優秀教師は,自然で批判的な学習環境を創りだす。自然とは,学生が学ぼうとする技能,習慣,態度,情報が含まれ,本質的に好奇心がかき立てられる本物の課題に出会うこと,批判的とは,学生が批判的に考え,証拠を持って論理的に考え,様々な知的基準を活用して自らの論理的思考の質を検討し,自らの思考を改善し,他人の思考について厳密で鋭い質問を提起することである。
    • 教師の最も重要な技能は,思考を刺激するような形でのコミュニケーション能力である。そして,温かい言葉を使い,物語を語ることで説明する。
    • (1)興味ある質問や問題,(2)学生が問題の重要性を理解する援助をする指導,(3)比較,応用,評価,分析,統合する活動を行う,(4)自分で問題を解くことを助ける指導,(5)質問に質問で答えるという要素がなければ,講義もディスカッションも同じ。ディスカッションをする授業が自動的によい授業ではない。
    • ルールは重要だが,それは知的基準を構成しない。学習到達基準は変更できないが,むしろルールをここの学生の必要に適合するように変更すればよい。重要になるのは,学生への信頼であり,学生との信頼関係である。
    • 単に難しいだけの試験は,Deep ThinkingではなくStrategic Learningを奨励してしまう。評価で重要なことは,成績よりも学習を強調することである。優秀教師は学生の動機付けに成績評価を利用しない。かわりに,学生が参加し注意を払うような魅力的な授業を作り出す。
    • ティーチングの評価では,教科内容は学ぶに値するものか,学生はこの科目で教えようとしていることを学ぼうとしているか,教員は学生の学習を助け励まそうとしたか,教員が学生を傷つけたりしなかったかを見ればよい。
    • ティーチングは,学習が生起したときにのみ存在する。つまり,学生が自らの学習能力に気づくような状況を創造することである。
    • 優れたティーチングはテクニックの問題だという誤解がある。教えることに唯一の最良の方法はない。我々自身が受け身で正解を期待する段階を超えなければならない。
    • 調査の方法は,人間的成長を与えた教師についての学生インタビュー数百名,教師の評判,ティーチング賞の受賞者からデータを得て,リストサーブで推薦を求める。その後候補者のシラバス,試験問題,成績評価方法,授業観察,学生の成果,学科が行う試験,学生インタビューから証拠を得る。学習を促進している証拠が得られるまでは仮候補のまま。結果として63人を調査対象とした。これらについて,統計を用いず,ナラティブな調査を行う。調査項目は,公式,非公式インタビュー,ティーチングについての考えが示された記録,特定科目のシラバス,課題シート,成績評価方針,講義録,授業観察,学生の作品・態度,学習目標に対する同僚教員のコメントなどである。
    ところどころに明らかな誤訳があるが,今のところ授業研究については必読書。原著は2004年出版。

      2012/11/09

      島田裕己(2007)『日本の10大新宗教』幻冬舎新書


      • 日本人が自分を無宗教と考えるのは,イスラム教と同様,生まれた時から既成宗教の信者になってしまうため。さらに,それが神道と仏教の組み合わせになっているために,自分が何の信者かを決められない。
      • 明治まで日本には宗教という概念はなかった。明治後,この概念が入ると,神道と仏教が2つの宗教に分離される。しかし日本人には,片方を選択できなかった。これが日本人の無宗教の起源。
      • 日本の新宗教は,神道か仏教の影響を必ず受けている。
      • 新宗教は基本的に都市の産物であり,急激な都市化という背景がなければその拡大はなかった。
      • 創価学会は信仰しさえすれば豊かになれると説く現世利益追求型の教団。
      • 創価学会には「仏法は勝負だ」という言い方があり,勝ち負けを問題にする。これが戦闘性の基盤となり,災いして他の政治運動から脅威と見なされた。
      • 60年代はじめ,日蓮正宗との関係がきれると,組織統合のために池田の神格化が必要となる。
      • 新宗教にとって高校野球は重要,創価高校,佼成学園,智辯学園,天理高校,PL学園。PL花火は,観光行事ではなく,宗教行事として営まれる。

      2012/10/10

      太田聰一(2012)「大卒就職率はなぜ低下したのか −進学率上昇の影響をめぐって」『日本労働研究雑誌』No.619,29-44


      • 大学進学率上昇が大学の平均的な就職率を低下させたからといって,それは進学率の上昇が意味のないものであるという結論に結びつくとは限らない。
      • 不況期に大学に進学する人々の中には,高卒では就職先が見つからないために,やむをえず進学した人々が含まれている。そうした人々が大学に行くことによって教育を受け,就職しやすくなったり,大学を一時的な不況からのシェルターとして活用しているならば,大学進学は当該世代全体の就職率を底上げする役割を果たしていることになる。(大学の「バッファー機能」)
      • 進学率上昇によってより「大衆化」した大学は,「学問の最前線」としての機能よりも「社会に役立つ能力」を付与する機関としての役割が強く求められるようになると思われる。しかし,大学の教育内容が就職に及ぼす因果的な効果については分かっていないことが多く,これも今後の研究課題と言えよう。
      シンプルなマッチング関数の推計から深いインプリケーションを導く素晴らしい論文だ。

      2012/09/26

      CHEPS, U of Twente, "The extent and impact of higher education curricular reform across Europe," Final report to the Directorate-General for Education and Culture of the European Commission.


      • 欧州のカリキュラム改革に関する調査報告,医学,法学,工学,教師教育,歴史学の5分野を対象に,2サイクル,コンピテンスベースラーニング,学習過程の柔軟性,学生の移動,組織の認識の5つについて調査する。
      • その際に,アクセス,卒業率,雇用状況,移動率,質,費用対効果の6つの変数に着目して調査する。
      • リサーチクエスチョンは次の通り
        • カリキュラム改革における基本的な国家方針がどのようなものかと,各5分野においてどのような効果,およびその根拠データがあるか
        • 機関レベルにおいて,カリキュラム改革の方法はどのようになっているか
        • プログラム単位において,改革の影響はどのようになっているか
      • このために,32カ国のナショナルカリキュラムの比較,学部長への質問紙調査,グッドプラクティス校の事例調査を行う。
      • ECTSや構造的な改革は進んでいるものの,機関レベルでの完全な履行には温度差がある。
      • コンピテンスベースラーニングは,まだほとんど行われていない。これは,コンセプトの理解に関する混乱もある。
      • 2サイクルに関しては,学士の学位と労働市場との混乱・ミスマッチが分野ごとにある。
      • 改革においては,欧州政策など外的なものが駆動力で,専門職組織や学内組織は主導できていない。

      2012/09/25

      安冨歩(2010)『生きるための論語』ちくま新書953


      • 論語は,学習に基づいた社会秩序という思想を,最も早く,最も明瞭に表現した書物である。
      • 論語の思想の最も重要な特徴は,学習のダイナミクスにある。書き下された形の知識を求めるのではなく,書き下し得ない微妙なダイナミクスに真理を求める点が,論語の魅力でありわかりにくさの源である。
      • 孔子の追求する人間のあり方は,自分を常にモニタリングして人の言うことに耳を傾け,自分の間違いに気づいたら直ちにそれを受け入れ,さらに自分の行動を改める。
      • 「忠」とは,君主に率直な考えを述べ,君主が立派な政治をすれば協力するが,そうでなければ協力しないという態度であえる。君主を相手にしても,自分の心を偽らないことが忠である。
      • 自分のやりたくないことは人にするな,これは自分のやりたいことを他人にしろを意味しない。人に何かするとなれば,それは自分のやりたいことでなければならない。
      • 人は,無意識の衝動にかられて間違った行いをする。「克己」は,その無意識の作動に気づき,それを認めてはじめて行いを改めることが可能になる。無意識の部分を意識するのは容易ではなく,自分の認めたくない記憶と向き合い,恥じて悲しみ,乗り越える行為である。
      • 学問をやって思考が固まる人は,自分の感覚に従って思うことが欠けており,学んだ知識にとらわれて自分の相対的状態が見えず,危うい状態になる。一流の選手もコーチを必要とするように,自分の状態の把握は難しく,そのための学が不可欠である。
      • 結局,常に自分を開き,ありのままの姿でいることが,君子にとって最も大切なことである。過ちを犯したら言い逃れをせず,それを改めることに躊躇しないのだ。
      • 自らの心を閉ざし,学習回路を停止している小人同士の「同」の中で表面的な礼儀作法をやっても「礼」にはならない。人々の学習過程が作動するときに真の秩序が達成される。
      • 仁・忠・恕・道・義・和・礼という諸概念は,相互に関係している。仁は学習過程が開かれていること,忠はそのとき達成されている自分自身の感覚への信頼を表現すること,恕はそのとき他者との関係において自分のあるがままが開かれていること,この状態にある人が道を見いだし,その道を辿って出会う出来事においてなすべきことが義である。仁にあるもの同士の調和のとれた相互作用が和であり,そのときに両者の間で交わされるメッセージのあり方を礼という。
      • 觚を孔子は嫌う。人間は「名」によって世界の「像」を認識する。よって安全でないなら危険と言わねばならず,爆発がおきなたら爆発したと言わねばならない。名を正し,正しく名を呼ぶことが人間がまともに生きる第一歩である。これは聖戦,皇軍,転進,玉砕,特攻の例からも明らか。
      • 学習停止という悪には伝染性がある。誰かが悪の状態でコミュニケーションをとれば,その相手の学習過程が破壊される。一人が複数の人を悪に陥れると悪が指数関数的に増える。君子が学習過程を守り抜けば,他者の学習回路を駆動させる。「怒りを遷さず」とは,悪を直ちに自覚し,その当人に怒りを向け,他の人に向けないという意味である。
      • ガンディーの思想の中核の非暴力的抵抗は,サッティヤーグラハといい,それは真理にしがみつくという意味である。
      • 西欧倫理学の有名な問題に,5人を轢くか1人を轢くかという設定があるが,孟子によれば,どんな問題を出してもその答えは惻隠の心に従え,自分自身の自発的な作動をとらえてそれに従って動けということになる。身体が感じ取り,身体が判断する。頭で考えて合理的に判断してはいけない。
      • 子供が井戸に落ちたときの反応は,君子の場合直ちに心が動き,同時に身体が作動する。小人は心が直ちに動くが,他人が自分にどう見えるか考えないと行けない。アダム・スミスの同感の場合,他人が自分にどう見えるかに加え,他人がその行動をどう判断するかをシミュレートしないといけない。
      • ドラッカー経営学の最も重要な発見は,組織はフィードバックと学習なしには決して作動しないということである。
      • 事業を成り立たせるマーケティングとイノベーションは,市場調査とか革新ではない。マーケティングはコミュニケーションであり,革新とはマーケティングで得られた知識によって自らを変革することである。
      • 自らの行いを良く見て,自らのあり方を変える。これがマーケティング+イノベーションであり,これは仁である。
      • 仁を実現できるのは,制度でも仕組みでもなく,君子だけである。よって組織は君子によってしかマネジメントし得ない。ドラッカーが組織や仕組みではなく,マネジャーのあり方を重視するのはそのため。
      • 現代の問題の多くは,経営者が小人によって占められ,和が失われて同と盗におおわれているから。
      • では,なぜ君子が少ないのか。1つの理由は,人材の登用がおかしいこと。もう1つは,君子がそもそもまれなこと。
      • 孔子の教えの本質はフィードバックと学習であり,人間の知性は動的で循環的で文脈的なものであるが,それが文字の出現によって固定化,一方向化,辞書化され貶められてしまった。
      すばらしい本。多くの教育関係者と経営者が読むべき本。教育学と経営学がなぜ似ているのかがよくわかった。

      2012/09/24

      Karseth, B. (2006) "Curriculum Restructuring in Higher Education after the Bologna Process: a New Pedagogic Regime?," Revista Española de Educación Comparada, 12, 255-284


      • ボローニャプロセスで求められるECTSと学生移動という要請が,近年のカリキュラムに大きな影響を及ぼしている。
      • このカリキュラムの変遷は,学生中心の教授法を求めることになるが,それは今のところ十分に受け入れられているとは言えない。

      2012/09/23

      大前研一(1999)『企業参謀』プレジデント社


      • 戦略的思考の根底は,一見渾然一体であったり,常識というパッケージに包まれた事象を分析し,ものの本質に基づいてバラバラにした上で,それぞれの持つ意味合いを自分にとって最も有利となるように組み立てた上で,攻勢に転じるやり方である。
      • 本質を問うには設問を解決志向にする必要がある。どうしたら残業を減らせるか → 当社は仕事量に対して十分な人がいるのか
      • 設問が的を得るには,問題点が正しく把握されている必要がある。それには,問題を現象追随的に絞る,すなわち,全ての問題を箇条書きにしてグルーピングする抽象化が重要である。あるいは,白い紙の上にイシューツリーを書く。
      • 財務指標は,絶対値の大きさではなく,利益率で見る。
      • 戦略の善し悪しで業績が左右されるのは中期(3±2年)である。長期でも短期でもない。しかし,実際はトップが日常に追われたり,遠大な計画や空想に時間を浪費する事例が多い。
      • 中期戦略の立案は,目標値の設定,基本ケースの確立,原価低減改善ケースの算定,市場販売改善ケースの算定,戦略的ギャップの算定,戦略的代替案の摘出,代替案の評価選定,実行計画というプロセスを経る。
        • 基本ケースでは,市場サイズとシェアの予想を仮定する必要がある。計画とは仮定の上に成り立つ目標値である。
        • 原価低減と販売改善を落とす人もいるが,そこには血のにじむ努力があり,狭義の戦略でしなかい。
        • 戦略ギャップは,現状の延長線上に解がないことなので,新しいものとしてでてくる。ここに,多角化,転出,統合,M&A,提携,分離,撤退・縮小・売却が出てくる。
      • PPMは,横軸に自社の強さを表す内的変数,縦軸に業種の魅力度を表す外的変数が入れば,変数は何でもよい。
      • これは政策でも同様で,横軸に日本の国際競争力,縦軸にマーケットサイズをとる。
      • 参謀五戒
        • もし状況がこうなったら,どのように考え・行動・反応したらよいかを常に問う
        • 完全主義を捨てる
        • 与えられた仕事のKFSを中心に考える
        • 制約条件は一度外し,その後障害物を除くことを考える
        • 記憶に頼らず分析する
      • どんな複雑な会社であっても,戦略を考えるときは,その基本思想を忘れない。それは,他律的要因(世の中の流れを見定め,その流れを上手く利用する)と自律的要因(競争相手と自分の差が最も大きくなるように努力を傾注する)に従って,防ぐ・選ぶ・守るを決めることである。

        2012/09/15

        Biggs, J., Kember, D. and Leung, D. (2001) "The Revised Two-factor Study Process Questionnaire: R-SPQ-2F," British Journal of Educational Psychology, 71, 133-149.


        • 本論文は,より簡素なdeep/surfaceの診断指標を開発することにある。
        • SPQの使い道には,クラスレベルで学習スタイルの違いを測定できる点がある。
        • 開発された設問は次の通り
          1. 学習が時に深い個人的な満足をもたらしたと思う
          2. 満足よりも自分なりの結論を得るために十分な勉強をしなければならないと思う
          3. 自分の関心はできるだけ最小限の努力で単位を得ることである
          4. 授業で扱われた内容だけは一生懸命勉強している
          5. 授業で触れた内容はどれもとても興味深いものだと思った
          6. 新たに学ぶ内容が面白く,授業時間外にも関連情報を集めていた
          7. 授業に全く興味が持てなかったので最低限の勉強をするようにした
          8. 内容が理解できなかったとしてもとにかく暗記で勉強した
          9. 学問的な内容を勉強することは映画を見る以上に興奮するときもある
          10. 大事なことは完璧に理解できるように,自分で自分をテストした
          11. 試験では理解するというよりも暗記することで乗り切った
          12. 特に必要と思うこと以外は不要と思ったので,最小限の勉強にとどめた
          13. 授業で触れた教材が興味深かったので一生懸命勉強した
          14. 自由な時間に授業で興味を持ったことについて独自に調べたりすることが多かった
          15. 物事を深く学ぶことは混乱するし時間がもったいないので,単位の取得に必要な分だけ勉強した
          16. 全てが試験に出るわけではないのだから,教員は学生が十分な時間をかけて勉強することを期待すべきでないと思う
          17. 授業に出るときにはいつも事前に質問を用意して出ていた
          18. 授業で示される文献には目を通して要点を押さえていた
          19. 試験に関係なさそうな文献にはあまり目を通さなかった
          20. 単位取得の早道は,最も出そうな問題にしぼって答えを覚えていくことだと思う
        • これらについて,とても当てはまる=5,当てはまらない=1として得点化し,スコアを出す。
        • Deep Approach = 1+2+5+6+9+10+13+14+17+18
        • Surface Approach = 3+4+7+8+11+12+15+16+19+20
        • Deep Motive = 1+5+9+13+17
        • Deep Strategy = 2+6+10+14+18
        • Surface Motive = 3+7+11+15+19
        • Surface Strategy = 4+8+12+16+20

        2012/09/14

        Pilz, M. and Li, J. (2012) "What Teachers in Pre-vocational Education Should Teach and What They Actually Teach: a comparison of curricula and teaching in Germany and China," Research in Comparative and International Education, Vol.7, No.2, 226-247.


        • 本論文の目的は,グローバル化や急速な社会変化などに直面する両国において,若者がどう社会へ出る準備をすべきかという問題に注目して,教育制度を比較することにある。
        • その際に重要なことは,カリキュラムの比較と,実際に何が教えられているかの両者を調査することである。
        • キャリア開発は,個人の関心や能力といった特質と,就業要件といった外的要因の複雑な結合で決まるものである。
        • Reetzは,カリキュラムは次の3つの視点で開発されると指摘する:ディシプリンに基づく設計,状況に基づく設計,個人の資質の基づく設計
        • いろいろ述べるも,結局両国の差異は,学校のおかれる状況,財政状況,教員の資質によるものと言ってしまい,何が示唆なのか曖昧なままである。

        2012/09/13

        山本繁(2010)『人を助けて仕事を創る』TOブックス

        • 失敗する人には,見切り発車,他人のせいにする,変化しないという3つの特徴がある。
        • これまでの教育は,どう生きていくかを規範として示してきたが,今日のどう生きていくかは戦略の問題である。従って,未来がどうなるかという仮説がなければ,どう生きていくかは考えられないが,予測のための道具や術がないために,若者はどう生きるかに漠然とした不安を感じている。
        • ビジネスをデザインする基本は,代替,補完,強化の3つ。
        • リーダーは言葉しか与えられない。だから,言葉を磨かなくてはならない。伝わる言葉,印象的な言葉,気付きを促す言葉。
        • チームを作る上で,モラル,要するに信頼できる人を選ぶ。モラルには潔癖なくらいがよく,モラルがなければどんなにスキルが優れていてもだめ。その上で,自分の強みと違う人が選べればいい。
        • 事業計画はコミットメントが大事で,立てる段階で多様な角度から意見を出してもらう。
        • 事業計画書は,いろいろな人に見てもらって意見をもらう。こうしてブラッシュアップされた事業計画は強固。30~40回は聞いて回る。
        • ビジョンとミッションは活用してこそ意味がある。実際に会議の中で,ミッションから考えると…,彼らのどちらがミッションへの理解が深いか…,と議論する。リーダーがそうした行動をすることで,構成員にビジョンやミッションが伝わる。
        • リーダーシップとは,率先して実行することで,みんなの模範になることである。
        本書をテキストにして,教養セミナーなどでビジネスモデリングをやると面白い授業ができそう。

        2012/09/12

        鈴木元(2012)『立命館の再生を願って』風濤社

        • 学校法人として将来を見通して大規模な土地を購入したり,キャンパスを3分割するといった戦略的計画は,参加・参画によって出てくるものではなく,トップダウンからしか提起できない。
        本書から何かを学ぶということは困難であるが,部分ごとにケーススタディの教材として利用するには十分なストーリーが描かれている。

        2012/09/11

        倉部史記(2012)『看板学部と看板倒れ学部』中公新書ラクレ422


        • 他大学の事例を見て,既に成功を収めている学部・学科を模倣する
        • 現在の受験生や保護者が求めているニーズを徹底的に分析し,そのニーズ通りのものを用意する
        • 既に学内にある教員・施設をそのまま流用しながら,より多くの受験生を集める学部に再編・改称する
        • 土地や施設・設備を安く・無料で提供してくれるパートナーを探す
        本書が看板倒れになりやすい発想として指摘するのは,この4点であるが,当たり前のことにすぎない。大学教育は玉石混交と副題をつけるが,大学教育の中身に関する考察は一切なく,ウェブや公刊資料で入手できる情報を整理しているのみである。確かにこの膨大な情報を整理した作業自体はすばらしいものの,逆に極めて表面的な内容にとどまる。日本の大学を全く知らない者が,日本にある数多くの大学を一望するためにはよいかもしれないが,大学教育に関する新たな知見は全く提供しない。

        2012/09/10

        石渡嶺司・山内太地(2012)『アホ大学のバカ学生』光文社新書561

         大学には様々な問題があることは間違いないが,本書はそれを第三者の立場から笑うもので,建設的な意見がみられないことが残念。タイトルにあるアホやバカとは,大学や学生がアホやバカではなく,著者らが大学や学生をどのようにアホとかバカと見ているかを書いたものであるといえる。

        2012/09/09

        Pilz, M. and Alexander, P. (2011), "The Transition from Education to Employment in the Context of Stratification in Japan - a view from the outside," Comparative Education, Vol.47, No.2, 265-280


        • 日本は,表向きには単層の教育システムとなっているが,インフォーマルには階層化された教育システムを持っており,これがうまく機能することで若者の労働市場への移行を円滑にしている側面がある。
        • とはいえ,中からは極めて常識的な内容であり,外から見たことで新たな知見が付加されたとは言えない。

        2012/05/30

        小竹雅子(2011)「オランダの大学における英語による学位プログラム」『大学論集』43, 207-222.

        • 2002年から2007年までの5年間に,欧州大陸諸国で提供される英語による学位プログラムの数は約3倍に増加。ただし,2007年時点の全提供プログラムの約3分の1はオランダの高等教 育機関によるもの。(Wächter and Maiworm(2008))
        • オランダの高等教育制度は,研究大学(universiteit)と職業大学(hogeschool)の二元制。前者は,14大学,37%在籍,学術的な教育・研究を行う。後者は,39大学,高等職業教育を行う。
        • 1999年から欧州レベルでボローニャ・プロセスが進行。オランダは自国の高等教育の国際的地位向上の機会と捉え,学士・修士構造の導入に精力的に取り組んだ。新たな学位構造は2002年に法制化されたが,オランダの高等教育をより開放的で柔軟にし,国外でのマーケティングに不可欠と考えられたため,ほとんどの大学がそれ以前から導入を進めていた。
        • 1990年代初めの教授言語英語化を巡る政治的論争と対照的に,大学は英語による授業やプログラムの開発・実施に非常に積極的だった。その理由は,(1)国際留学生市場からの財政収入,(2)国内の高い英語力,(3)国内上位学生の国際キャリア意識がある。

        2012/05/29

        黄福涛(2003)「大学教育カリキュラムの国際化 オランダの事例研究」『大学論集』34,63-76


        • オランダでは,大学は主に学者と研究者の育成を中心に,教育活動と科学研究を行い,卒業生の多くは研究機関に勤めている。専門大学は,学生に専門的職業人として必要な知識・資質を身につけさせるため,専門性・実践性が高い科目を開設し,大学と違って3年次に約一年間の海外や地元の企業会社などで実習(internship)を行う義務を負うところもある。
        • 大学と専門大学においては「ボローニャ宣言」に基づいた「ヨーロッパ次元」の高等教育システムの実現を目指して学士課程カリキュラムが形成された。特に大学においては,従来の単一の構造を変えて,学士課程と修士課程からなる二重構造の大学教育カリキュラムが出来上がってきた。また,従来のように,大学と専門大学との間の壁を乗り越えて,二つの機関において,単位互換やプログラムの相互履修というシステムが実現されてきた。
        • オランダにおいては,大学教育カリキュラムの国際化は,基本的には英語による修士課程レベルにおいて行われていると考える。

        2012/05/28

        渡邉尚久(2005)『7つの習慣 小学校実践記』キングベアー出版


        • 教育とは,学び方を習得し,強い人格を育てるためのもの。
        • ちょっとやれば効果があるものを求める傾向があるが,短絡的な考え方であり,7つの習慣は,誠心誠意,効果的な人生を送りたいと思う人がそれなりの努力を払って長期的に幸せになる習慣のこと。
        • 小さなことは大きなこと。朝10分の運動の例。いきなり大きな成果を求めてもそれは幻想。
        • 7つの習慣は,
          1. 主体的に行動する,自分のやることに責任を持つ ⇔ 人のせいにする,自分に起きる問題すべてを自分以外のせいにする
          2. 目的を持って始める,自分の使命と目標をはっきりさせる ⇔ 目的を持たずに始める,明確な目標を持って取り組まずただなんとなく生きている
          3. 一番大切なことを大切にする,最も大切なことを最も大切にする ⇔ 一番大切なことは後回し,大切なことより大切でないことを優先してしまう
          4. Win-Winを考え?,相手も勝ち自分も勝つ考えを持つ ⇔ どんなときも勝ち負けを考える,すべてのことを勝ち負けでしか考えられない
          5. 理解してから理解される,人の話を誠実に聞くコミュニケーション ⇔ 自分が話し聞くふりをする,言いたいことだけを言い人の話は聞かない
          6. 相乗効果を発揮する,創造的な協力を発揮する ⇔ 頼れるのは自分だけ,人との協力など考えず自分の世界だけに生きる
          7. 自分を磨く ⇔ 自分を磨かず成長させることに取り組まない
        • 人生は選択の連続,その選択が今の自分を作っている。主体的とは,刺激を受けた時にスペースを作って一時停止し,反応すること。肯定的な言葉を使う。
        • 最終場面を思い浮かべて今日一日を始める。その時あなたは何と言われたいか。
        • 今の日本は夢や希望が持てないとは,無責任な発言。大人がしっかり教えてあげるべき。
        • どんな六年生になりたいか,なぜそのような六年生になりたいか,そのためにどんな努力をすればよいか。
        • 1時間をテレビに見ることに使うことは,他のことに使わないと決めたということ。時間泥棒。期限を決める。
        • 信頼残高を増やす:小さな親切をする,約束してそれを守る,その場にいない人に誠実になる,許す,人の話に耳を傾ける,見通し(できることできないこと)をはっきりさせる,謝る
        • Win-Winの考え方を身につけるには,私的な成功を目指す,競争と比較という二大悪習に用心する。
        • 自分にとって大切なことも相手には些細なことかもしれない,自分にとって些細なことでも相手には大切なことかもしれない。話の内容を言葉通り繰り返す,話の内容を自分の言葉で置き換える,相手の気持ちや感情を自分の言葉で表現する,言葉と気持ちの両方を自分の言葉で表現する。
        • 相乗効果を発揮するには,相違点を尊ぶ,無知・排他心・偏見をやめる。
        • 自分を磨く習慣:頭を賢くする,体を鍛える,心を豊かにする,人と関わる。
        • Do it now.

        2012/05/27

        OECD(2004)「Financial Management and Governance in HEIS: Netherlands」『OECD IMHE-HEFCE Project on International Comparative Higher Education Financial Management and Governance』

        • オランダの高等教育の制度的位置付けは,高等教育・研究法において定められている。教育大臣が高等教育を所管しており,高等教育は職業大学(HBO)及び研究大学(WO)から成る。
        • 職業大学は行動する自由と責任を得たが,依然として国庫資金に依存しており,職業大学は提供するプログラムに関して競争することはできるが,価格競争は行えない。
        • 一元的ガバナンス構造のアングロサクソン諸国と異なり,オランダでは二元的システムが存在する。一元的構造では,監督機能と執行(経営)機能が単一の役員会の内部で分担される。欧州大陸において見られる二元的構造は,法人レベルにおいて,執行機能と監督機能が区別されることを意味する。
        • 職業大学は,継続的な環境変化に直面しており,新しいコースを提供することにより,学生の希望に応じ,変化する労働市場の要請に応えるよう期待されている。職業大学は,職業大学協会(HBO-Raad)という中央組織を通じて,新コー スの計画に関し互いに情報提供し合う。新プログラムを開始するためには,初めに仮アクレディテーションを得る必要があるが,ひとたび得られると教育・科学大臣へ認可申請を提出する。同じ地域の他のプログラムとの間にあまり重複がなければ,通常,認可を得る。新プログラム開始に関するこの自由化の結果,過去数年間に,何百もの新プログラムが開始された。

        2012/04/27

        新渡戸稲造(須知徳平訳)(1998)『武士道』講談社


        • 戦争なき状態が平和にあらず。日本では平和は常に正義だが,国連は正義ある平和と正義なき平和を峻別する。正義なき平和は平和と呼べず,これを打ち破ってでも正義ある平和を樹立すると国連は考える。PKOの基礎となる考え。
        • 日本の学校で宗教教育がないのにどうして道徳教育ができるのか。善悪や正不正の概念を形成しているのは,武士道である。
        • 神道は,主君への忠節,祖先の崇拝,親への孝行を武士道に与えた。他の宗教で教えられなかったもの。日本人の宗教的観念は,個人的な道徳意識より,国民的な意識,つまり自然崇拝や祖先崇拝をあらわしている。
        • 知識が学ぶ者の心に同化せず,品性に表れないなら,本当の知識ではない。論語読みの論語知らす。
        • 義理とは正義の道理という意味だった。3つの教えの動機は愛であるべきだが,もしそれが欠けた場合,孝行を命ずる何らかの権威が必要で,それを義理として形成していった。
        • 礼儀が,上品でないと思われることを恐れるために実行されるなら,それは徳ではない。礼儀は,他人の感情を察する同情的な思いやりが表れたもの。
        • 切腹は単なる自殺の行為ではない。それは法律上・礼法上の制度。切腹は,罪を償い,友人に償い,自分の誠実を証明する方法であった。
        • 少女は成年に達すれば短刀を与えられ,自分を襲う者,あるいは自分の胸を刺す。自分の貞操に危険が迫ったときは,自分の武器を使うもので,自害の作法を知らないことは恥。
        • バラは甘美な花の下に棘を隠し,その生命に強い執着をもち,死を恐れて枝についたまま朽ちることを選ぶようである。桜は,美の下に短剣も毒も隠さず,自然のまま散り,色彩は華麗でなく,香りは淡くて人を飽きさせない。
        • 武士道は知性と文化を十分に蓄えた,権力を独占する人によって組織された,道徳的な価値を定める結合の精神。

        2012/04/09

        真田茂人(2008)『魅力的な組織を創るリーダーのための「自律」と「モチベーション」の教科書』CEOBOOKS


        • マーケット拡大期はつくれば売れるという正解がわかっているので,競争のポイントは効率。リーダーシップは支配型,マネジメントは管理命令型,メンバーシップは服従忠誠型。
        • 現代は,正解が顧客の中にある時代,競争のポイントは正解の発見。リーダーシップはサーバント型,マネジメントはモチベーション向上・協力型,メンバーシップは自律・セルフモチベーション型。
        • コーチングがうまく使えないのは,その人の中に答えがあるという肯定的で主体性を重視した手法で,一定の思想や価値観・人間観が内包されているものなのに,伝える段階で単なるテクニックとしてしか伝わっていないため。
        • 人間はイメージできないことは行動するのは難しい。イメージできるかどうかが自律と依存の分岐点。
        • 欲求は強さと満たされ具合のギャップの意識で決まり,この欲求の個人差がマネジメントを難しくする。リーダーは欲求を満たすよう指導する。
        • 組織力は,愛・所属の欲求から生まれる。個人主義,序列の崩壊,雇用の多様化,コミュニケーション欠如,メール文化はこの欲求を満たしにくくする。
        • 仕事をする上で,力・価値の欲求が重要。ほめるよりも認める(結果承認,事実承認,存在承認)ことが自律を促す。さらには,自己評価,仕事の定義の仕方を変えることでも促せる。
        • ギャップアプローチよりポジティブアプローチ。
        • 自由の欲求は,権限委譲で促す。
        • 楽しみの欲求は,仕事をおもしろくすることで促す。学びは本来最大の楽しみ。
        • 危機感で人を走らせると克服すると元に戻る。お互いを意識して協力して作り上げるクオリティタイムをつくる。

        2012/04/06

        クリスタ・メスナリック(2011)『アリストテレス マネジメント』ディスカヴァー・トゥエンティワン


        • 運動をプロセスに組み込め。最高のアイディアは散歩中にわいてくる。
        • 全ての認識は驚きから始まる。
        • はじめは全体の半分である。
        コンセプトは良いが,アリストテレス哲学から導出される含意が中途半端で,ビジネスに役立ちそうな役立ちそうでないような,明確なメッセージになっていない。おしい。

        2012/04/05

        宮台真司(2011)『宮台教授の就活原論』太田出版


        • かつて就職はborn again,家族・学校の共同体から企業共同体に生まれ直すことを意味したため,以前の共同体から持ち込まれるものは迷惑だった。
        • かつては企業も企業文化も変わらないことが前提だったため,学生に適応を求めたが,現在は存続のために変わるかもしれず適応力をを求める。
        • このことは就職活動の中身の変化を意味する。適応世代の年長者を相手に,年長世代の自明性を破る提案をしつつ,相対的に人間関係を台無しにしないで済ませる能力が重要になる。
        • 学生は仕事を通じて自己実現したいと考えるが,仕事で自己実現するという考え方自体に問題がある。
        • かつて,仕事での自己実現が難しくなった際,消費での自己実現へシフトした。しかし,意匠に駆られて買い換える社会は,市場の限界を超えられても,資源・環境の限界は超えられない(成長の限界)。こうして,家族や地域という帰還場所がなくなってから,再び仕事での自己実現を求め始めた。
        • 昔は生活のために働くうちに仕事=人生になったが,今はまじめにこつこつ働いても報われない可能性もある。そうであれば,仕事で不本意でも承認から見放されずに自己価値を保てる関係性や本拠地を持つ方がよい。
        • かつて,会社員が死ねば同僚が大挙して葬式を出した。地域でも葬式を仕切った。今は家族だけで,中には家族がなく葬式もしない人が多い。
        • 近代化は地域をホームベース(感情的安全を得る所)になることを困難にしたので,企業をホームペースにした。今は企業もホームベースになりにくく,自分の力で作らないといけない。その意味でも仕事での自己実現は危険。
        • 共同体の空洞化の解決には,就業時間の短縮が必要。少子化の要因は非婚化と晩婚化だが,その背景は恋愛市場におけるアンマッチングと信頼できる恋愛関係の樹立スキル低下,育児コスト上昇。
        • かつてはサークルが就職ルートだった。バブル後,採用枠が小さくなり,学生は別の採用ルートを探し,企業は優秀な学生をピンポイントで探して早く採用したいと考えるようになった。
        • 情報過多で,学生は適職幻想に陥る。選択肢は多いほどよいは勘違い。実際にどんな仕事かも知らずに職業を志望するのは問題。多くの学生は,周囲・世の中の承認がある仕事を希望しがち。メディアの情報は消費者向けに加工された誘引情報で,真に受けるのは問題。
        • 趣味の時間や家族の時間を楽しむためと思うなら,大企業への就職は合理的。仕事での自己実現を目指すなら,全体性が見える中小企業が合理的。そもそも大企業を狙うから就活がつらくなる。婚活がつらいのと同じ構造。両者とも貧しいマスイメージのみで考えている。
        • これから生き残るのは社会的に正しいことができる企業。
        • 内定を取る学生は実績のある学生。未来への希望ではなく,過去の実績が評価される。結局,大学生活を誰よりも充実して過ごすことが一番の近道。そのためには,すごい奴に出会って感染されろ。
        • 後から取り返せることに時間を使ってしまった子は,その機会費用の分,遊びで得られる経験をせずにしょぼい奴にになりやすい。
        • 何事もいいとこ取りやつまみ食いはできない。全体最適を考えない部分最適化は低いアウトプットにしかつながらない。相手の暗黙の要求がわからない学生が多い。グループワークには,その場にいる人々を観察し,期待による呼びかけと応答のやりとりの能力が必要。こうした訓練をしてこなかった学生に就職は難しい。
        • ゆえに,学校教育でグループワークを重視するひつようがある。サークル活動でもよいが,そうした機能を持つサークルは減りつつある。
        • 自殺したいといって屋上に立つ人を止めるロールプレイング。通常,どうして,そんな理由で自殺する必要がない,というが一番だめ。おまえが死んだら悲しいといって,相手がこの人を悲しませたくないという感情を動かせばOK。もう一つは,おなかすいてないか,何か食べてからにしよう,と思いもしない発言で硬直した文脈をずらす。コンテクストでなくテクストに反応すると本義を忘れた応酬ゲームになる。テクストから身を外してコンテクストに集中するのは意外と簡単。
        • 就活マニュアルをいかにも就職できなさそうな人が読んでいるのは,まさしく癒やし宗教。
        本書の主張に沿えば,本書の内容の鵜呑みも危険だが,学生には読んでもらいたい,1年生くらいの早い時期に。しかし,学生が気楽に読めるような文章ではなく,そこそこ学力と根気のいる本。

        2012/04/04

        Diana C. Bisbee, (2007) "Looking for Leaders: Current Practices in Leadership Identification in Higher Education," Planning and Changing, vol.38, no.1 and 2, 77-88.


        • 従来,意欲のあるベテラン教員が学科長になり,その職務に満足した人が上に上がっていた。今では,学科長から学部長になるのは,カレッジによって異なるが半分程度。学部長への入り口は多様化した。
        • 今では自発的に学科長になる教員は極めて少ない。説明責任,内部の変化などでストレスの多い仕事になったため。潜在的なリーダー候補者が少なくなるリスクがある。よって,組織的にリーダーを見つける(育てる)ことが今後必要。
        • 調査によれば,ほとんどの役職者は教員からキャリアをスタート,半数以上が内部候補者(上級職では3/4),3/4は同僚からリーダーに選ばれている。1/3はよりより任命方法が必要と考え,半数は任期後に教員に戻りたいと考えている。
        • リーダー候補者捜しは,単発のイベントではなくプロセスであり,様々な場面でリーダーシップを発揮する訓練機会を埋め込む必要がある。絶対なりたくないという人が,かなりいる中で,一般教員にも管理職の難しさを経験してもらえれば,組織の調整がより円滑になると期待されるため。

        2012/04/03

        大森信(2011)『トイレ掃除の経営学 -Strategy as Practiceアプローチからの研究』白桃書房


        • 型にはまった所作を徹底することは,手順をきちんと守り手際を良くする,正常な状態を知ったり保ったりする,他人のためになることや他人と共に活動する,仕事以外も含めたあらゆることを受容することの4つを大切にする精神が養われる。
        • トイレ掃除は手段指向性の高いプラクティス(企業経営や経営学は目的指向性が高い)。これは,他のプラクティスとの共存が容易で,組織の集団凝集性を高める。
        • トイレ掃除はない方が楽で組織の純度も上がるような異物であるが,組織にとって異物を抱えることは重要で,環境変化や安定化を脅かすものを受け入れて落ち着かせる覚悟や度量が培われる。
        • SAPは戦略化(Strategize)の課程に注目し,戦略を保有するものではなく戦略していくものとする。
        • 戦略のプロセス研究は,個人を対象としてこなかった。経営資源や組織能力は,存在の確認が困難であったり,優位性との因果関係が曖昧であったり,生み出される過程がブラックボックスである問題点がある。SAPはよりミクロで動態的な過程に注目することで,これらの課題が克服できるかもしれない。

        2012/04/02

        Judith Lithens (2005) "The Europeanisation of Higher Education in the Netherlands," European Educational Research Journal, vol.4, no.3, 208-217.


        • Europeanisationは,異なるシステムを維持したまま同一の目標を追求することを指す。
        • BAMAの導入は,Hogeschoolより大学にとって劇的な変化をもたらすプロセス。Hogeschoolはもともと学士システムに似ていたが,4年課程を3年学士と1年修士にする変革は大きい。
        • Hogeschoolの修士は公財源で運営されない点が問題。
        • ボローニャプロセスでは,教育の質の差は改善されなかった。
        • 公的には同じ学士であるが,異なる高等教育機関の間で学士や修士の比較をすることは困難(ボローニャの理念ではあるが,厳密なルールを確立しなかったため。)
        • ボローニャプロセスは,学生や教職員の移動を活発にすることを狙っていたが,実際にこれに効くのは財政的な要因である。フィンランドは2年の修士を全額支援するが,オランダの学生がフィンランドで2年修士を学ぶ際には,1年しか財政支援がない。
        • 欧州で修士は90ECTS相当の学習量だが,オランダでは60ECTS相当。政府はプラス30ECTSの財政支出を渋ったために,オランダの高等教育競争力が悪化。3+2や4+1を求めたにも関わらず,3+1となった上,学士+修士を1セットにする制度も作らず,結局BAMAシステムがオランダ経済にプラスの効果をもたらすに至っていない。
        • ただし,基本的に前向きで厳格な3年学士課程の運用は,ドロップアウト率を下げることが期待できる。

        2012/04/01

        中嶋嶺雄(2011)『日本人の教養 混迷する現代を生き抜くために』朝日新聞出版


        • 人間にとって一番大事な経験は知的経験=教養に支えられた個々人の決断によって獲得された実践的な体験。教養は決断を促すものであり,決断の精度を上げていくものが教養。実践を伴うものこそが教養であり,教養は社会を動かす力そのもの。
        • 設置基準の大綱化はSimplification。
        • 個性的と協調的の矛盾を克服したところに立てる人が教養人。
        • 若い時代に集中的に行う読書が個性を大いに育む。
        • 日本語,英語ともう1つの3言語主義が,異文化を理解し個性を磨く。
        • 人間は経験の生き物であり,どのような経験をしたかで人の判断基準は大きく変化する。
        • 知識があってもアイデンティティがなければ,ただの博識の人。
        • 知識の獲得には主体性が不可欠,それは家庭教育が担うもの。
        • 武士道はアイデンティティ獲得の上で有用。
        • 欧州人が好むバラは複雑で甘美の下にトゲを隠しているが,桜は刀も毒も持たず単純であるが故に美しい。
        • 知識を使い,考察を深めるために,統計的考察と批判的考察がある。
        • 人文科学や社会科学を含めてArts。本質をつかむ,つまり決断のプロセスがArts。本質を見抜く目は人間の外ではなく内にあり,選択や決断を養うには経験の蓄積が欠かせない。国境を越えて価値を認められるものを本物と呼ぶ。
        • 教養を深めることが個人にとって快楽であると同時に,周りの人のための決断によってより深い達成感があるものでないといけない。
        • 単位互換するにはカリキュラムにインターナショナルコードが付いていなければならない。
        • 家族が共有する図書がよい。ちびくろサンボ,モモ,マゼラン,車輪の下,おろしや国粋夢譚。
        • 日本を知る本もよい。三四郎,人間失格,石光真清の手記。
        • 多様な人生に触れる本。狭き門,若きウェルテルの悩み,シーシュポスの神話。
        • 国際教養大学の必読書。武士道,三酔人経綸問答,菊と刀,文明の生態史観,論文の書き方(清水幾太郎),万葉秀歌,文名が衰亡するとき。
        • 世界を広げる本。文明の衝突,モゴール族探検記,平和の代償,創造の方法学,職業としての学問,革命について。
        自身の自伝を交えた教養大学設計論。しかし,この自身の経験の部分が,結局教養の大切さを示している部分でもある。

        2012/03/31

        清水勝彦(2011)『戦略と実行―組織的コミュニケーションとは何か』日経BP社


        • 米国コンサルタントは,戦略が企業の業績を決めると言い切ってきた。業績=戦略=分析・ロジック。近年は揺り戻しがきて,業績=戦略×実行=分析・ロジックになった。でもこれはおかしな公式,本当は,業績=戦略×実行=分析・ロジック×組織における人間の気持ち。
        • 戦略や目標が共有化されていれば,実行につながる。それは,知らせる・明示されるではなく,社員側の知った・共有できたが鍵。単にロジカルに説明すればよいのではない。腑に落ちる,つまり夢を理解した上で,そのためにつらいこともあるが,やるしかないと覚悟すること。
        • 戦略はコモディティ化した。立てる,持つだけでは価値がない。
        • 実行は,戦略の仮説を展開し,戦略立案段階に明確にできなかったこと,予想できなかったこと,間違っていたことを知り,フィードバックを通して戦略を練り上げるプロセス(仏に魂を入れるプロセス)である。
        • 大きな問題に対して大きな改革で応えることは,複雑な問題を複雑な解き方で解くことであり,一歩間違えば傷を深める。理論的に正しいアイディアに支持が得られないことを,顧客や社員が間違っていると思っていたかもしれない。(HPのカーリー)
        • ハードの最大の才能は聞くこと。合理的であるとは,情緒的なものを無視してよいのではなく,人間をよく知った上で理にかなっていること。(カーリーの後のハード)
        • 失敗の理由は,あれもこれも(トレードオフがない),時間・準備不足(拙速),戦略が不明確(実際何をどうしたらよいかわからない),実行と評価がリンクしない,責任が不明確,部門間の対立,納得性が低い,片手間の実行,情熱・本気度の不足。すると,明確な指示をする,十分な準備を持って実行に臨む,戦略を具体的な行動レベルに落とし込む,という突破口を探してしまう。実は,これは戦略は難しいが実行は簡単という前提を置いている。これらの理由は全て誤解。
        • 結局,戦略(未来の仮説の実行)には,仮説を試行錯誤で完成させていくという「姿勢」が必要。
        • 戦略の意思決定では,核となる目標ははっきりさせないといけないが,実行のプロセスで新しい情報を得たり失敗して戦略に反映させることも必要。
        • コミュニケーションは,情報量が増えることではなく,お互いの立場をよく理解すること。価値観がどういうもので,なぜ対立するか・どこが対立するかをよく知る。情報,論理,価値観の順にレベルが上がる。
        • 組織におけるコミュニケーションとは,戦略の核とのある目的について合意する,合意できない戦略についても100%の力を投入するための納得を培う,実行の過程で新しく発見された情報を戦略に反映させること。
        • 納得は,感情によるところが大きい。そこまでするのか,という感動で人は動く。これが前向きな妥協を生む。
        • 仲が悪いからコミュニケーションがないのではなく,コミュニケーションがないから仲が悪くなる。
        • メールはレベル1,2のツールとしては効率的だが,レベル3のツールとしては致命的欠陥がある。意味を共有化するコミュニケーションは,基本的に非効率。
        • 組織の実行力を測る質問
          1. あなたは,相手が話を聞かないのは自分の責任だと思っているか。
          2. あなたは,会社のビジョンを「絵」に描けるか。
          3. あなたは,プランにどれだけ資源をかけているか知っているか。(掛け過ぎを認識)
          4. あなたは,チェックをした「つもり」になっていないか。
          5. あなたは,制度を作って「できた」と思っていないか。
          6. 「成功」と「失敗」の二分法でさまざまなことが語られていないか。(何ができ・できないかを突き詰める繊細さが必要)
          7. あなたは,「和気あいあい」が「コミュニケーションがよい」ことであると思っていないか?
          8. 「根負け」したりさせられた経験を社員が持っているか。
          9. あなたは,現場での「発見」を奨励しているか。
          10. あなたは,「コミュニケーション」に効率性ばかりを求めていないか。
        • 戦略を実行するとは,現場に投資すること,現場を酷使することではない。
        • 総論賛成・各論反対は,組織で実行する際の前提であり,実行がされない理由ではない。反対があっても各論を決めて実行に移せるかどうかがポイント。よって,コミュニケーション抜きにはありえない。結局,組織のメンバー間の「関心」の問題。メンバー間に関心がなければ組織力はないに等しい。
        戦略論研究の方法論のヒントも得られる良書。

        2012/03/30

        鈴木淳子(2002)『調査的面接の技法』ナカニシヤ出版


        • 質的調査では信頼性ではなく信憑性(Credibility)を追求する。作業・分析・発見などについてできるだけ詳しく記述する分厚い記述(Thick description)によって,調査を透明化し一貫性を示す。
        • トライアンギュレーションは,調査の信頼性や妥当性を高めるための方法。データ(同じ事象について,対象者・地域・時期などを変える),調査者(複数人の調査者で調査),理論(一つのデータを複数の視点・仮説で解釈),調査法(一つの問題を複数の調査法で調査)の4つのトライアンギュレーションがある。
        • インフォーマントに「あなた」と呼ぶのは失礼,「〜さん」と呼ぶ方が良い。特に外国人の場合は効果的。
        • 面接者は,インフォーマントから,親しみやすさ,社会的望ましさ(知性・誠実性・信頼性・道徳性),力本性(外向性・積極性・社交性など)の3つの次元で評価されている。
        インタビューを用いて修論を書く人には必読の文献だが,テキストに指定するには細かすぎる。

        2012/03/29

        学校法人会計基準の諸課題に関する検討会「学校法人会計基準の諸課題に関する検討について」文部科学省


        • 基本金は、「学校法人がその諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために維持すべきものとして、その帰属収入のうちから組み入れた金額」である。
        • 第1号基本金は、「学校法人が設立当初に取得した固定資産で教育の用に供され るものの価額又は新たな学校の設置若しくは既設の学校の規模の拡大若しくは教育の充実向上のために取得した固定資産の価額」を組入れ対象とする基本金である。
        • 第2号基本金は、「学校法人が新たな学校の設置又は既設の学校の規模の拡大若しくは教育の充実向上のために将来取得する固定資産の取得に充てる金銭その他 の資産の額」を対象とし、「基本金への組入れは、固定資産の取得に係る基本金組入計画に従い行うもの」である。
        • 第3号基本金は、「基金として継続的に保持し、かつ、運用する金銭その他の額」を対象とし、「基本金への組入れは、基金の 設定に係る基本金組入計画に従い行うもの」である。
        • 第4号基本金は、「恒常的に保持すべき金額として文部科学大臣が定める額」(1ヶ月分の経常経費)を組入れるものである。

        http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/034/gaiyou/__icsFiles/afieldfile/2012/03/30/1319158_01_1.pdf

        2012/03/28

        中嶋郁夫(2010)『その場面,うまい教師はこう叱る!』学陽書房

         全ての叱り方に共通する点は,教師の言うことを聞かせようとするのではなく,模範ややり方を示す,子供の言い訳を真に受けておおごとにする,すぐできる動作の指示を出すなど。相手に,態度を改める必要性を考えさせる行動をすること。ただし,命に関わる問題の時だけは,感情を出して怒る。

        2012/03/27

        上條晴夫(2008)『叱る技術』学陽書房


        • 距離を取って叱る
        • 「なぜ」つきで叱る
        • 小言はあっさり言う
        • 目安言葉を使って諭す
        • 教師がわざと失敗する
        40のノウハウを実践経験に基づいてまとめているが,なぜそれぞれの叱り方が意味があるのか・効果的なのかについての考察が乏しい。「私の場合はこうやってうまくいきましたが,参考にして下さい」というスタンスで書かれたものとして読めば,それなりに有益かもしれない。

        2012/03/26

        中井俊樹・上西浩司(2012)『大学の教務Q&A』玉川大学出版部


        • 定期試験の答案は5年保存する。
        • 論文博士は,最初の課程博士を出した後で授与できる。
        教務職員の実務上役に立つ本と思われがちだが,教員,特に教授会に出席している教授,学部長,教務院長などが知っておくべき豆知識が豊富。

        2012/03/25

        植木理恵(2002)「高校生の学習観の構造」『教育心理学研究』50巻3号,301-310


        • 高校生の学習観は,方法を重んじる志向と,練習量を重んじる志向の2つの対立的な志向がある。
        • 方法を重んじる志向には,自分で試行錯誤して学ぶ志向と,学習環境の力を利用して学ぶ志向の2つの独立的な志向がある。
        http://ci.nii.ac.jp/els/110001893310.pdf?id=ART0002072177&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1333095244&cp=

        2012/03/24

        ジョン・ファーンドン(小田島恒志・小田島則子 訳)(2011)『オックスフォード大学・ケンブリッジ大学の入試問題 あなたは自分を利口だと思いますか?』河出書房新社


        • あなたは自分を利口だと思いますか?
        • 蟻を落とすとどうなりますか?
        • 棒高跳びの世界記録はなぜ6.5m程度で破られないのですか?
        • 過去に戻れるとしたらいつにしますか,それはなぜですか?
        • あなたはクールですか?
        • もし全能の神がいるとしたら,彼は自身が持ち上げられない石を造ることができるでしょうか?
        • 自分の腎臓を売ってもいいでしょうか?
        • 殺人が唯一の楽しみである精神患者に,自分は好きなだけ人殺しができる現実世界にいると信じてしまうようなバーチャルリアリティを創出する機会を使わせることは,道徳的に問題ないでしょうか?
        • 肥満の人も国民健康保険制度の無料医療サービスを受けていいでしょうか?
        • なぜ昔の工場の煙突はあれほど高かったのですか?
        • なぜ宇宙船の中ではキャンドルを燃やせないのですか?
        • もしこの紙を無限回数折りたたむことができるとしたら,何回折れば月に届くでしょうか?
        • 歴史は次の戦争を止め得るでしょうか?
        • 誠実は法律のどこにおさまるでしょうか?
        • あなたにとって悪い本とは何ですか?
        • もし地面を地球の裏側まで掘ってその穴に飛び込んだらどうなりますか?
        • ガールスカウトに政治目的があるでしょうか?
        • 幸せだ,とはどういうことですか?
        • AはBが絶壁に向かって歩いているのを見ている。AはBが盲目であることを知っているが,彼のことが好きではないので,崖から落ちるに任せている。これは殺人でしょうか?
        • あなたは自分の頭部の重さをどのように量りますか?
        • 運命とは何ですか?
        • あなたならリンゴをどう説明しますか?
        • 舞台,つまり意見を表明したり,ただ娯楽を提供したりするための演壇,あなたはこれをどう考えますか?
        • 私は砂漠の石油王で,たまたま一直線上に位置している4つの町に石油を届けることになっている。その4つの町を順番に回るのだが,次の町へ行く前に必ず石油タンクに戻らなければならない。移動距離を最も短くするにはどこにタンクを置けばいいだろうか。
        • 木を描くとします。その木は現実のものですか?
        • カタツムリに意識はあるでしょうか?
        • なぜ海には塩があるのですか?
        • 高齢者を生かしておくために国民健康保険制度のお金を使うことに何の意味があるのでしょうか?
        • ここに3リットル用の水差しが一つと5リットル用の水差しが一つあります。4リットルを量りなさい。
        • 保全地区に住むある女性が自宅のドアを紫色に塗る計画を申請したところ却下されました。これは公正でしょうか?
        • 毛沢東主席は今日の中国を誇りに思っただろうと思いますか?
        • なぜ世界政府はないのでしょうか?
        • 聖書は架空の物語でしょうか?また聖書を女の子文学と呼ぶことは可能でしょうか?
        • フェミニズムは死にましたか?
        • 牛一頭には世界中の水の何パーセントが含まれていますか?
        • 自分がカリフォルニアにいない場合,カリフォルニアが存在していることをどのように知りますか?
        • 人はいつ死んだことになりますか?
        • チェーホフは偉大でしょうか?
        • クロイドンの人口は?
        • 大型で獰猛な動物はなぜこんなに少ないのでしょうか?
        • 地球には人が余計にいるでしょうか?
        • 方舟ににモーセは動物を何匹乗せましたか?
        • 世界に砂粒はいくつありますか?
        • ロミオは衝動的ですか?
        • 火星人に人間をどう説明しますか?
        • あなたは脳のどこが一番好きですか?
        • なぜ進化論を信じるアメリカ人はこれほど少ないのでしょうか?
        • どうしたら建築で犯罪を減らせるでしょうか?
        • 貧欲は善でしょうか悪でしょうか?
        • もし友人が私をある部屋に閉じ込めて,5ポンド払いさえすればいつでも好きなときに自由に外に出ていいと言ったとします。これは自由の剥奪でしょうか?
        • あなたならどうやってタイムトラベルをしますか?
        • コンピュータは良心をもつことができるでしょうか?
        • 古典学部が焼け落ちたらどうなるでしょうか?
        • ハムレットはちょっと長いと思いませんか?まあ,私はそう思いますが。
        • 人種というものはあるのでしょうか?
        • ネイチャーはナチュラルですか?
        • 環境や貧困はエイズなどより大きな危機でしょうか?
        • なぜGodとIは大文字で表すのでしょうか?
        • イギリス国内の貧困と海外の貧困のどちらに注目する方が重要でしょうか?
        • 私には考えがある,とあなたに思わせるものは何ですか?
        Aレベルの全国共通試験で,近年グレードAが非常に高くなってきており,かつオックスブリッジには5科目のストレートAがざらにおり,選抜に困るためインタビューによるふるい分けが行われる。30年前はひねくれた質問が多かったが,現在は専攻分野に関するものが多い。それに対する熱意や適応性があるかを知りたいため。さらに,公立校の受験生を考慮するため。私立は学力が高い上に全人教育に力を入れ,学力と情操の両方を磨く私立生に公立生が太刀打ちできない。イギリス的討論の伝統に慣れていない公立生のために,せめて勉強しているはずの専攻科目を題材にするという風潮。

        2012/03/22

        川嶋太津夫(2005)「欧州高等教育圏構想とUndergraduate課程の再構築 日本の学士課程改革への示唆」『高等教育研究』第8集,121-153


        • Graduateには,教育のある段階以前と以後という,明確な階梯性・分節性の考え方が含まれている。
        • 大陸欧州では,第1学位=Bachelorとはならない。ドイツは,多くの分野で修了年限が4年半だが,平均在籍期間は6.6年。1つの専門ならDiplomだが,複数の専門を修めればMagisterの第1学位になる。
        • 一元的高等教育は,イギリス,スペイン,スウェーデンしかない。2サイクルを持つ国は,デンマーク,フィンランド,フランス,アイルランド,アイスランド,リヒテンシュタイン,ノルウェー,ポルトガル,スウェーデン,イギリスの10国。
        • バチェラーの水準は,
          • 上級教科書を学習して,専攻分野の最先端の知識を含め,専攻分野の知識や理解を示した者
          • 獲得した知識や理解を自分の職業に専門的に適用でき,専攻分野での議論を行い,問題解決能力を有する者
          • 社会・科学・倫理問題の判断に必要なデータを収集・解釈する能力を持つ者
          • 情報・アイディア・問題・解決策を専門家/非専門家に伝えられる者
          • 自律的に継続して学習するための学習技能を備えた者
        • マスターの水準は,
          • 研究活動でオリジナルなアイディアを開発し,新しい/不慣れな環境下で,自分の知識や理解を適用し,問題解決できる者
          • 不完全な限られた情報に基づき,社会・倫理問題を考慮しながら,自らの知識を使って判断を下せる者
          • 自らの結論とそれを導いた知識や根拠を,専門家/非専門家に明確に伝えられる者
          • 自律的に学習できる学習技能を有する者 

        2012/03/21

        リーダーシップ行動のための5つの指針・10の実践・20の行動


        1. 模範となる
          • 価値観を明確にする
            • 自分自身の声で語る
            • 共通の価値観を確立する
          • 手本を示す
            • 共通の価値観を自ら実践する
            • 価値観の実践方法をメンバーに教える
        2. 共通のビジョンで鼓舞する
          • 未来を思い描く
            • 可能性を探る
            • 共通の目的を見つける
          • メンバーの協力を得る
            • 共通の理想に訴える
            • ビジョンをいきいきと描く
        3. 現状を改革する
          • チャンスを見つける
            • 自発的に行動する
            • 外の世界を観察する
          • 実験しリスクをとる
            • 小さな勝利を重ねる
            • 経験から学ぶ
        4. 行動できる環境をつくる
          • 協働を促す
            • 信頼の風土を培う
            • メンバー間の交流を増やす
          • メンバーに力を与える
            • メンバーの自己決定権を拡大する
            • メンバーの能力と自信を高める
        5. 心から励ます
          • 功績を認め感謝を伝える
            • ベストを維持する
            • 相手に合わせて感謝を伝える
          • 価値観をたたえ勝利を祝う
            • コミュニティ精神を生み出す
            • 進んでメンバーと交流する

        Bruce Stronach "Building a Leadership Team to Accomplish University Reform: What are the Necessary Administrative Skills and Abilities?"


        The most important administrative skill to develop

        • Horizontal intra-institutional communication
        • Human communication
        • Competitive mindset
        • IT skills and understanding the effective use of IT
        • Mentoring
        • Meaningful work experience at other Japanese and/or foreign universities
        • Customer service attitude toward other departments and students
        • Team-building
        • Leadership for the appropriate level

        2012/03/18

        竹内伸一(2010)『ケースメソッド教授法入門』慶應義塾大学出版会


        • 学びの共同体は教師が作るもの。授業の基本構造は,はじめに示す。授業で約束事を明確にする。初期設定で基本的な徳を確認する。
        • 非指示的に教えるとは,自己のモデルを視野に入れ,外の新たなモデルを作るために,自己モデルも操作せずにいられなくなるようにすること。非指示的な教育とは,自分から考えて何らかの気づきや学びを得ること。
        • 人は自己モデルを前提にしないと発言できない。自分にとって何か新しい事を話すには,自己モデルを更新しないといけない。討論には自己モデルの更新を促す作用がある。
        • これが分かると,講義でも非指示的に教えることはできる。討論しても自己モデルを頑なに守る人もいる。自分なりのものの見方を更新できる機会を提供することが教師の役割。
        • 自己モデルの更新は,解答,移動,再凍結。これを90分で行うのが授業。議論の授業がうまくいかないのは,このどれかがうまくいっていないため。ただし,再凍結まで回をまたぐ方法もある。
        • 日本のケースは,トップダウン組織のリーダー育成ではなく,ミドルアップダウンのリーダーが,組織を丁寧に動かすための訓練の場であるべき。また,終身雇用,年功序列,企業内組合を前提に議論できるべき。
        • ケースメソッドでは,ケースに対する教師の洞察水準が,教育目標にも,設問にも,討議中の発問にも影響する。
        • ケース教材には分析ケースと意思決定ケースがあり,それに応じて,分析・考察・検討・吟味・判断・選択のウェイトが違う。
        • 教育目的は(1)ケースが持つ論点と参加者の興味関心を十分に加味して設定されているか,(2)ケースを議論しないと得られないものか,(3)参加者が真に欲しているものか,(4)討議によって達成される見通しがあるか,で確認する。
        • 90分授業では設問は3つ。ケース配布時に示す。1つの設問に30分使える計算。30分に収容可能な発言は20程度。
        • とがった発言をする人には,と言い切るくらいそういう思いが強いらしいですよ,と沿えるだけで柔らかくなる。
        • 発言が長い場合は,一度止めましょうと,明確に介入する。
        • 討議では10分先の討議をイメージし,発言が止まったら次に何を言うかを用意しておく。創発的な沈黙なら,一度3分時間を取りましょうと,明確に指示する。
        • 議論の主導権を奪われた時は,ある程度見た後に,今の点とは別に議論してほしいことがある,と介入する。(目標を明確に維持している必要があるが。)
        • アドミニストレータとは,必要な配慮を行き届かせ,艱難辛苦を伴って,何とかやり遂げるというもの。マネジメントより高度,エクスキュートより実行が難しいもの。
        • ケースメソッドは,コクピットの計器類の充実を図るもの。
        • 討論ログである具体物を抽象化して教育目邸が達成される以上,板書は極めて重要。

        • 大人の学びは,本人のステージ次第。
        • ケースで議論を引き出すには,はじめにたくさんしゃべらせる。教員のはじめは1分半で既に長い。結果,授業時間はある程度必要。導入は1分で行う。
        • 個人への配慮が必要になるのは,ケースの中で個人の問題を扱わなければならないため。
        • ワンサイドにならない対立構造をつくる。


        2012/03/04

        トム・ピーターズ(2011)『エクセレントな仕事人になれ! 「抜群力」を発揮する自分づくりのためのヒント163』阪急コミュニケーションズ


        • ソフトはハードであり,ハードはソフトである。感謝の気持ちを表現するという行動を実践するだけで,あなたは確実に成長する。
        • 他人のやる気を引き出すにはどうするか。まず自分をやる気にさせることだ。一方的気構え調整型リーダーシップ。
        • ベストを尽くすだけでは足りない。職務を全うすることが目的。
        • 問題を解決し,新しいチャンスを生み出そうと思えば,これから30分間にできる小さいことが見つかる。ダメモト作戦。
        • 鈍い奴と思われようが,納得できるまではとことん質問する。
        • リーダーシップの第1のソフトスキルは,知寝に自分の時間の50%は予定を入れずに空けておく。
        • 最近どのくらい失敗したかを聞けば,イノベーションの活性度がわかる。
        要するに,自分がエクセレントと思う仕事をしろ,という自己啓発本。

        2012/03/03

        松尾睦(2011)『「経験学習」入門』ダイヤモンド社


        • ルーチンワークでも,仕事をどのように意味づけるかによって,良質な経験になる。
        • 仕事の信念の働きは2パターンあり,ストレッチ,リフレクション,エンジョイメントについて,自分への思い(認められたい・力を付けたい)からは,自分ための挑戦,「思い」の確認,達成感・成長感が,他者への思い(役に立ちたい)からは,他者のための挑戦,他者からのフィードバック,他者からの感謝がそれぞれある。

        2012/03/02

        日本中退予防研究所(2011)『中退予防戦略』NEWVERY

        大学の教職員が,戦略という抽象的な概念を,中退予防という具体的な問題を通じて獲得できるためのいい本。後半のインタビューは,関係者ならよく知られた内容で目新しくないが,前半の論理がきれいに整理されていて,教科書に最適。

        2012/03/01

        高橋宣行(2011)『「差別化するストーリー」の描き方』PHP研究所


        • ビジネス社会では,考えること以外は仕事と言わず,作業という。
        • 人が生活していく上で持っている2つの物差しは,損得と好き嫌い。
        • コンセプトとは,時代が求める新しい価値観の提案であり,その考えは全ての行動の指針となる。
        • ビジネスで考えるとは,今を否定すること。何が問題かを把握し,その上で誰に・何を・どうするのかを探り,新しい方向性を提案する。
        • コンセプト作りは,現状を認識する(自分),時代を洞察する(相手)の積から,ひらめき(新しい価値観の発券)をし,言葉化(イメージのリアル化)をすること。

        2012/02/29

        ジョン R. カッツェンバック,ジア・カン(ブーズアンドカンパニー 訳) (2011)『インフォーマル組織力 -組織を動かすリーダーの論理-』税務経理協会


        • マネジャーは,合理的アプローチやトップダウンを好む。フォーマルな組織は仕組みが明確なため,形に落として評価できるから。戦略,組織構造,プロセスと手続き,成果目標と測定指標が書類として整備される。
        • フォーマルな組織は,ベストプラクティス信条に縛られる。実証済みのベストプラクティスを発見して適用できれば,高いパフォーマンスが可能になると考えがち。ベストプラクティスを超えるには,洞察,リスクをとる,試行錯誤を繰り返す事が必要。ベストプラクティスではなく,ベストパフォーマンスを目指せ。
        • 部下の意欲を高める人の行動の特徴は,(1)部下を知る,(2)成功を称える,(3)方向性を維持する,(4)事実をもとに判断を下す,(5)仕事の枠を広げる。
        • 望ましい状況を作るには,まず自由(スペース)を与える。始めに一定の自由を与えて,望ましい行動を定着させ,望ましくない行動をやめさせるために働きかける。

        2012/02/28

        フリア・ゴンサレス,ローベルト・ワーヘナール(深堀聰子・竹中亨 訳)(2012)『欧州教育制度のチューニング―ボローニャ・プロセスへの大学の貢献』明石書店


        • 学習成果とは,学習を終了した時点で,何を知り・理解し・活用できるようになっていると期待されるかを詳述したもの。コンピテンスとは,知識・理解・技能・能力が有機的に結合したもの。
        • コンピテンスには,道具的(認知,方法論,技術,言語),対人的(社会的交流・協調),統合的(理解・感性・知識の総体)の3つに分類できる。
        • ECTSの1単位は,25〜30時間の学習量。多くの場合25〜26を想定。多くの国の正規年間学習プログラムは,34〜40週。

        2012/02/27

        日本能率協会(2011)『大学職員ナレッジ・スタンダード 大学マネジメント編I・II』日本能率協会


        • 新しい企画を生み出すには,ゼロベース思考で考えることが重要。
        • 情報の加工の方法は,(1)5W1H分解法,(2)対比法,(3)ロジックツリー(MECE)。
        • アイディア発想にはオズボーンの9チェックリスト:他に使い道はないか,応用できないか(他に似たもの,まねできるもの),変更したら(形式,意味・形・色,濡らす・乾かす),拡大したら(加える,回数増やす),縮小したら(分割,やめる),代用したら(他の材料,他の人),入れ替えたら(順序,原因結果入替,立てる・倒す・集中・分散・開く・閉じる),逆にしたら(役割,立場),結合したら(まとめる)。
        • プロジェクトマネジメントの例
          • 発足と目的の明確化:背景や必要性をデータで整理,キーマンの意向把握・説得,プロジェクトの目的・成果の設定,成果を評価できる仕組みづくり,目的の達成に必要なメンバーの選定,組織としての承認
          • プロジェクトの計画策定:作業の洗い出し,各作業の関連整理,工数見積もり,スケジュール策定,予算策定,リスク分析,未然防止策の計画への組み込み,組織承認
          • 実行とコントロール:全員が出席可能な会議日程の早めの設定,進捗の見える化,進捗状況に合わせたスケジュール修正,メンバーの悩み把握,メンバーの負担の平準化,事前協議による会議の円滑化・根回し
          • 振り返り:振り返り,成果の把握,振り返り会議の開催,プロジェクト報告会,形式知へ展開(マニュアル化)
        • プレゼンテーションの留意点
          • フックを工夫する:質問・問いかけ,逸話・エピソード,格言,信頼ある人の引用,新しい事実・常識を否定する新事実
          • 進め方:礼儀正しく,最も理解してもらいたいところに重点化,大事なポイントは繰り返し,聞き手が参加できる双方向,えーあーの禁止。
        • ディベートで使用する三角ロジックは,主張,データ,論拠。
        • 3つのポリシーは,経営戦略におけるミッションに相当する。
        • 経営戦略を策定する上で有効なのが,ドラッカーの5Q:我々の使命は何か,我々の顧客は誰か,顧客は何を価値あるものと考えるか,我々の成果は何か,我々の計画は何か。
        • 経営戦略の策定に活用できる手法に,マトリックス分析:時間×効果,費用×効果,難易度×費用,重要度×緊急度の組み合わせで,顧客・事業・施策を分析。リスク分析も,組織・事業への影響度×発生頻度・確率で分析。また3つの競争戦略は,コスト・差別化・ニッチ。
        • マグレガーのX理論は,仕事やいやなもの=目標達成には統制が重要,Y理論は,仕事はやり方次第で楽しい=創意工夫や判断能力があるのに組織が活用していない。
        • コーチングの際は,傾聴,質問,承認,反応(要約・叱咤・フィードバック)。
        新卒5年以内の職員なら,必要な知識がコンパクトにまとめられていて有益。
        ただし,全体的な指向性は筋肉質。ムリ・ムダ・ムラは少ないほどよいとは,必ずしも正しくない。

        2012/02/26

        筏井哲治(2010)『今すぐできる「戦略思考」の教科書』講談社


        • 問題は厳しい逆境に置かれた時に、前列のない発想をし、リスクをとって行動に移せるかどうか。
        • 打つ手なしと思っても、まだやっていないことはたくさんある。
        • 現状に不満がないGood Enough症候群。お、これはすごい、という演出ができればブレイクスルーはおこせる。
        • 考える範囲は小分けする。漏れなく・ダブりなく(MECE)。表裏、上下、前後、大小から、国籍、出身など。人について考えれば漏れが少なくなる。
        • 複雑な問題は、ヒト、モノ、カネ、時間のどこに原因があるかで考える。
        • 自社サービスの特性を分析するアトリビュート分析。横軸に基本要素、差別化要素、決定要素を、縦軸に肯定的特性、否定的特性、中立的特性をとる。セルの意味は、お金払うからできて当然→お、すごい、それは他にないね→こんなの見たことない、すぐ欲しい↓それができないのは仕方ないか→は、そんなこともできないの、ダメじゃん→ふざけるな↓ふーん→まあ、おまけなら。
        • 顧客ニーズとは、お客さんの当社に対する不満ではなく、お客さんが業務上困っていること。
        • 戦略の基本原則、目的を手段に適合させよ(無茶するな、取れる手段で目標を設定せよ)、目的を常に念頭に置け(目的を忘れるな)、最小予期線を選択せよ(相手が準備できない・先読みされない・先制されないルートで攻めよ)、最小抵抗線を活用せよ(相手の手薄な部分を攻めよ)、代替目標の選択が可能な作戦線をとれ(目的のために複数の目標を設定せよ・場のデザインが大事)、計画・配置が状況に適応するよう柔軟性を確保せよ(素早い計画修正)。
        • 複数目標を設定するとは、異なる立場の人がおーすごいと言う解を示すこと。=立場別のアトリビュート分析をする。
        • 説明を論理的で首尾一貫して行なうと反感を買う。思考は論理的に、説明は感情的に。人は感情で決めたことを論理で正当化する傾向がある。
        • 交渉力は総合力なので、準備、判断、感情など多面的に鍛える。
        • 交渉のセットアップは、情報収集とビジョンの共有から。相手に同じ目標に向かうパートナーと認識してもらうこと。
        • 情報は物語で伝える。物語の中心は人であり、挑戦のドラマ。
        • ドラマの要素は、脚本、演出、俳優。専門用語を多用しない、フラフラしない、下を見ないスライドを飛ばさない、チョークトーカーになる。頭の中がロジカルにまとまっていて、ビジュアルにイメージできればチョークとーくができる。
        • 提案を信用してもらうには、ビジュアルで表現する、データを示す、情報ソースを公開する、詳細を語る。
        • 振り返るためには、徹底的にサーベイ。4件法で(a/e-c+d/e)×100+50。そしてスコアは絶対。
        • マイクロソフトはマネジャー1人に対して管理は8人まで。
        • 報連相ができないのは、上司側に命解援ができていないから。
        • 新しいアイデアが生まれるには、自分が知っていて他人が知らない情報をオープンにすること。自己開示。
        • サイレントブレスト。
        • PDCAからEAチェーンへ。(実験・適用)。

        2012/02/25

        吉田道雄(2011)『実践的リーダーシップ・トレーニング』メヂカルフレンド社


        • 専制、民主、放任では民主が最も成果が高い。専制は人を攻撃的に、放任は低い成果にする。
        • イヌと言って、内容まで共有することはない。
        • リーダーシップは他者に対する影響力と定義する。
        • リーダーシップ力=専門力×人間力/フォロワー数
        • リーダーシップは特性論から行動論へ。行動論とは、リーダーの良し悪しは行動するかしないかで決まる。
        • 作業をさせる時は、早く終わった人のために読み物をつける。
        • 集団では反対意見を言えなくなる。集団では人は手抜きをする。1人でも支持・理解する、1人ずつほめるが大事。
        • リーダーシップはメニューを決めて地道に運動を続ければ身につく。
        • 研修は自己決定するようデザインする。行動リストを出す際に、チェックリストを使う点がポイント。

        2012/02/24

        柳川範之(2011)『元気と勇気が湧いてくる経済の考え方』日本経済新聞出版社


        • 将来がわからないからこそ、目標を明確にする。ただし仮置きで、わかってきたらすぐに修正する。
        • もう一つは、目標はいくつかのレベルに切り分けておく。
        事例は授業のネタに役に立つものの,新たに得るものは少ない。

        2012/02/09

        Bruner, J. S. (1961) The Process of Education, Harvard University Press.


        • どの学科でもその分野で最高の知力を持った人,高度の洞察力と能力を持った人を教育課程編成の仕事に動員しなければならない。
        • 推量・予測,自分で問題解決に向かう態度の教育で重要な要素は,発見を促す興奮の感覚。
        • 教育の方法は,教示的よりも仮説的な方が良く,それは既知の体系を学ぶのではなくて,仮説を立てて情報を内的に操作する体験を累積的に構成すること。
        • 基本的には科学教育の方法を考察する中で出てきた考え方。

        2012/02/08

        尾木直樹・諸星裕(2011)『危機の大学論 日本の大学に未来はあるか?』角川oneテーマ21


        • 日本は履修主義,その科目を履修すればよく理解していようが学力が付いていようが,小・中・高は6・3・3年行けば卒業させる。問題は出席日数くらい。
        • 欧州は修得主義,その課程を修得しない限り進級できない。小学校2,3年生でも留年させる。なぜ留年になったかという本質的な問題に目を向けずに,学力を上げることはありえない。
        • 大学への入り方は様々な形があっていい。ただ,どういう学生をこの大学は採るのか,これがはっきりしなければAOは意味を持たない。これが大学のミッション。日本の大学の欠陥で,どういう教育をしていいか分からず,無原則な学生の採用になっている。
        • 大学のタイプは,世界レベルの研究を支える大学,リベラルアーツを中心とした教育の中で豊かな教養と人間力を磨いたオールラウンダーを輩出する大学,国民としてのきちんとした常識と勤労者としての健全な労働倫理を身につけた善良な社会人を育成する大学の3つくらいしかない。

        2012/02/03

        櫻田大造(2011)『大学教員 採用・人事のカラクリ』中公新書ラクレ


        • 今の職場から逃げる人事は成功しない。
        書いてある内容はカラクリではなく全うで業界の常識。
        大学業界以外の人なら楽しめる可能性がある。