2012/12/15

宮田由紀夫(2012)『米国キャンパス「拝金」報告 - これは日本のモデルなのか?』中公新書ラクレ)


  • 大学は医療と同様,経験財である。売り手と買い手の間でサービスの質に関する情報の非対称性があり,かつその便益は購入してすぐにわからず,将来に渡って生じる。さらには,通常は1回限りの購入で,しかも一括購入である。悪いと思っても途中で買い直せない。
  • そこで,医薬と同様,認可されたものだけが販売される。また,非営利で運営しなければ,消費者がだまされたり買い控えたりする。質に関する情報がなければ,低コストで低質な教育を行うものが残る逆淘汰も起こる。
  • 有名大学では,子供が生まれると寄付がはじまり,受験・合格でピークになり,不合格で寄付が減る。スポーツ推薦などで入学しやすくなり,実際にそうしたメリットがあるから寄付を行う。
  • 日本のAO入試では,プライバシー・個人情報の保護のために,思想,生活信条,尊敬する人物などを聞けない。APを定めても,そうした受験生を判別することはできない。逆に,一般入試では得点のみが有効で,APは機能しない。
  • テニュア審査は就職して6年目に行われ,認められれば8年目から昇進,だめなら7年目に食を探して8年目からは去る。テニュアを取れる確率は,平均で50%。
  • テニュアを解雇する条件は,財政難が正当に証明された場合,学生数の減少で学科廃止が正当に示された場合,明らかな職務不履行や違法行為の時。
  • 非営利組織は,利益の極大化ではなく,収入の最大化を目指すために,そのために費用の増加もいとわないという拝金行動が働きやすい。
 情報は豊富だが,分析視角がなく,単に知識やトリビアをひけらかしただけの本である点が残念。