鈴木亘(2010)『年金は本当にもらえるのか?』ちくま新書
- 年金制度が頻繁に変わるのは,将来財政が維持できないことがわかると改革を行わなければならないから。
- 基礎年金の設立目的は,制度の共通化・一元化ではなく,国民年金の財政支援にあった。
- 賦課方式は百害あって一利なし。設立当初は積み立て方式で運営されていたが,いつのまにか賦課方式になった。その理由は,政治家・官僚が無計画に年金積立金を使ったから。使い道は,高齢者への年金振る舞い,天下り先へのプロジェクトや福利厚生。歴代の政権は,人気取りのために年金受給額に見合う保険料引き上げを行ってこなかった。つまり賦課方式とは,自転車操業のこと。
- 賦課方式の下では,高齢者/現役比率と保険料負担は完全に比例する。高齢化率の予測は,2070年の85%までをピークに,60年で50%以上も上昇する。ピーク時は,現役1.17人で高齢者1人を支える状態。現役に主婦や失業者が含まれると,勤労者負担はより高くなる。
- 少子化対策は,意味がないわけではないが,年金財政に影響する高齢者/現役比率は,当面影響を受けない。
- 年金は保険であるから,税金での調達は論理的におかしいが,国民年金の空洞化が深刻なため,いっそ消費税で徴収すれば未納・未加入問題や三号問題が解決し,年金受給者からも徴収ができ,世代間問題を多少改善できる。さらに,保険料徴収業務も大幅に縮小できる(行政コスト削減)。
- それでも未納対策を行うのは,厚労省がもつ年金財政予算の権限を維持したいため。
- 人々が努力せざるを得ないような制度的仕組みを,コミットメント・デバイスと呼ぶ。25年保険期間がそれにあたる。しかし,25年納付の給付額は,都市部では生活できず(4.1万円),コミットメント・デバイスとして十分機能しない。ここに,10年を加えれば,未納・未加入を助長するだけ。そして,将来の生活保護財源を圧迫するだけ。
- 有限均衡方式とは,100年後に積立金がなくなるように,今ある積立金をどんどん取り崩すこと。なくなった時点で,今の年金をいったん精算し,以降は新制度として高保険料・低給付を行う。これは反発を招くので,難しい言葉でごまかす。
- マクロ経済スライドは,要するに給付カットだが,実際には発動されていない。18.3%保険料固定をした時点で,財政均衡のためには給付カットしかないが,これも難しい言葉でごまかす。
- 積立方式はインフレに弱いといわれるが,これは規制金利時代なら正しい。今は,インフレになれば,その分長期金利も上昇し,資産価値の目減りを防ぐ(フィッシャー効果)。銀行も預金を獲得する競争のために,インフレ分金利を上げなければならない。実際,デフレで資産価値が上昇して嬉しかったというわけではなく,実際は低金利で資産価値は上がらなかった。