- 経済学思考の源に個人主義があり,これは個人の集合が社会であるという考え方。個人の嗜好や判断を,他人の嗜好・判断を阻害しない範囲で,最大限尊重する。これにより,個人の満足度とは別の社会的価値を排除する。
- これは,価値判断から一歩引き,どの価値観に基づく目標に対しても,政策・制度の設定が可能になる。
- かつては,労働価値説など,商品に客観的な価値があると考えていたが,今は主観価値説に基づく(ステーキの価値は人によって違う)。
- 個人主義に立てば,個人の選択は常に合理的。これは,自分にとって主観的により満足な状態を得ようとして行動しているという意味で,合理的と考える。
- 無料であった時に人がほしいと思う総量が,全体の存在量よりも多いとき,その対象は希少である。
- ある行動をするか否かを,主観的な損得を比較して行動すると考える(インセンティブ)。
- 裁定取引が消滅することは,ノーフリーランチの原則。金融市場では,購買力平価説と利子率平価説に現れる。
- 長期定常状態とは,仮想的な状態を指す。この長期は日々変化する。無限先以外は,短期。
- 購買力平価は,1ドル50円になり,アメリカで1万ドルの車を買って,日本で2万ドルで売る裁定が可能になったとき,ドル資金の需要が上がり,ドル高へ調整が進む。こうして,購買力平価レート1ドル100円台後半が長期で実現される。
- 実際には,現在1ドル80円で,購買力平価レートへの調整が進まないが,これは金融市場の影響が大きいため。このときは,物価差に応じて為替レートが決まるのではなく,為替レートに応じて物価が変化する。
- 先の例では,アメリカで車の価格上昇で,日本で車の価格低下で調整する。
- 100万円を,2%の日本と4%のアメリカのどちらで運用するか。アメリカで運用して換金する裁定は成立せず,現在の為替レートが将来も同じという予想が間違っている(利子率平価)。
- 高金利の国の通貨に上昇トレンドがあるわけではない。高金利の国の通貨は,現時点で将来より相対的に高くなっている。
- 2財の機会費用は逆数であり,2国で機会費用を比較すれば,両財とも比較優位はありえない。
- 生産フロンティアの傾きは機会費用。
- 少ない家庭で導く結論は汎用性が高い。自然な仮定から導く結論は信頼できる。
- 個人の幸せを考える際には,他人の満足度に左右されないと仮定する。理由は,とりあえず問題ないことと,他人の不幸は蜜の味といった規範に配慮する必要がないこと。
- 所得が上がると消費も増える=上級財,消費が減る=下級財,価格が上がると需要が増える=ギッフェン財。
- ある財が超過需要なら,他の財の中に超過供給になっているものがある=ワルラス法則。
- パレート最適は,適切な配分のための必要条件。満たす最低限の条件を与えるもの。社会科学で,十分条件や必要十分条件が導けるケースはまれ。
- 競争均衡はパレート最適=厚生経済学の第一定理。
- いかなるパレート最適も,適当な初期分配から競争均衡として実現可能=厚生経済学の第二定理。財の消費量を政府が決めるより,初期保有点の再分配と自由な取引が最適分配を達成する。現物支給より,セーフティネットの下で競争する方がよい。
- 余剰分析の際は,人間の経済的なうれしさが,どれだけ高く売れたか,どれだけ安く買えたかで決まり(幸福が金銭で計れて,1円の価値は誰にとっても同じ),異なる人間の間でその損得を演算できる仮定が必要。
- 価格を戦略変数とする競争は,企業にとって不完全競争のうまみがなく避けたい。回避の方法の1つがコミットメント。独占的な回避方法は,ニッチと差別化。
- 自然独占(費用低減=固定費用が大きすぎる)の多くは,インフラ事業だが,その全てが費用低減とは限らない。多くは,供給網がそれ。そこで,そこだけ独立公益法人にして,その他を競争させる(発送電分離)。さらに残った独占部分には,他地域の同業他社との比較による適正価格以下を求めるヤードスティック規制,適正価格をインフレ率+標準的技術進歩率に設定するプライスキャップ規制がある。
- なお,限界費用規制や総括原価方式(=平均費用規制)もあるが,政府が企業の費用関数と需要関数を正確に理解する必要があり,企業は需要予想や人件費を高く設定する報告をしてしまう。
- 再分配は,パレート改善になっていない,直ちに正当化できない。しかし,第二定理では,再分配の重要性が示される。
新しいミクロと言うが,内容は伝統的・標準的ミクロ。講義の実況中継的な部分が新しい点で,初学者が疑問に持ちやすいところの概念解説を補っている点が優れている程度。