- 研究生産性低下=高等教育政策のみならず,科学技術政策にもPA関係を持ち込んだ。
- 短期選択的な資金配分が大学組織のテクニカル・コアまで浸食,クラークの言う高等教育システムのより良い最下部を損なった。
- 最下部には教育研究という帰納的に進行する実践があり,最上部から演繹的・目標達成的に進められる統制を逸らす「脱連結」が 機能してきた。
- 資源配分の変化により「脱連結」が作用しなくなった可能性がある。
- 研究生産性低下は,競争的資金増,基盤研究費減,研究時間劣化による。
- 高等教育システムのより良い最下部が構造改革によりダメージを受けた=基盤研究費を抑制し,使途の明確な競争的 外部資金の割合を増やすことで果実を得るというニュー・ガバナンスの信念。
- 統制と実践の「脱連結」が許されるのは,大学に対する「信頼の論理」(盲目的委譲)により使途の自由な基盤研究費が維持されてきたから。
- 一方で,使途に制限のない個人研究費は,依然として一般大 学で論文生産性や競争的資金獲得額に影響を与えている。
- 競争的外部資金と個人研究費は代替的でない=基盤経費の上に競争的経費がある2階建て構造である。
2019/12/26
藤村正司(2018)「なぜ研究生産性が失速したのか?」『大学論集』50,1-16
2019/11/30
Using Bridge Questions to Teach Technical Content Online
- Bridge questions:現実問題を技術的概念で解決するための問い。
- 2つのアプローチ:
- 対面授業の場合:週・モジュールの冒頭で問題を提示し、授業中に解決方法を示す。解を出すためにリーディングやビデオ視聴がアクティブになる。グループ活動を入れてもよい。
- 非対面授業の場合:問いに掲示板などで答える。
- 取組は評価しないと、他の学生の解を待つ行動につながる。
https://www.facultyfocus.com/articles/online-education/using-bridge-questions-to-teach-technical-content-online/
Implementing Active Learning and Student-Centered Pedagogy in Large Classes
- 150人、固定机ホール教室の講義では、結局、ハイブリッドで実施。
- 10〜15分のビデオを作成、授業時間を空けてピア討論導入。
- 5分で取り組めるクイズ・ワークシートを配布。
- まず1人で考えてから周囲と相談、TAが巡回。ただし、一定数は常に参加しない。
2019/11/22
教学マネジメント指針(案)
- 教学マネジメント=大学がその教育目的を達成するために行う管理運営。
- 教学マネジメント確立には、次が必要。
- 3Pに基づく体系的で組織的な大学教育を展開し、その成果を学位プログラム共通尺度に則って点検・評価を行い、不断の改善に取り組むこと
- 学生の学修成果に関する情報や大学全体の教育成果に関する情報を的確に把握・測定し、教育活動の見直し等に適切に活用すること
- マネジメント=目標の達成に向けて、組織の限りある資源を効率的に活用する。
- 教学マネジメント指針=多様な大学等に共通する内容を中心に、分かりやすい形で示し、その取組の促進に主眼を置く。
- 指針の構造
- 3Pによる学修目標具体化:明確かつ具体的に定める
- 授業科目・教育課程の編成・実施:授業科目の精選・統合、科目数の絞り込み
- 学修成果・教育成果の把握・可視化:学生が実感・説明できる、成績評価の信頼性確保
- 基盤:FD、SD、IR
- 情報公表:取組状況、教育成果
- 1について
- 大学教育の成果をルーブリック等の尺度(アセスメントプラン)に則って点検・評価を行うことが必要。
- 卒業までに学生が身に付けるべき資質・能力を「学生は、〜することができる」といった形式で記述。
- 2について
- 「カリキュラムマップ」の作成等を通じて、「卒業認定・学位授与の方針」に設定された各観点を満たす上で必要な授業科目が過不足なく設定されているかを検証する。
- 「カリキュラムツリー」の作成等を通じて、各授業科目相互の関係や、学位取得に至るまでの履修順序や履修要件を検証する。
- 学位プログラム単位でシラバスの記載内容の骨子をある程度統一し、教員個人がそ れを具体化していくというプロセスを経る。
- 3について
- 各授業科目における到達目標の達成状況、学位の取得状況、学修時間、進学率や就職率等、修業年限期間内卒業率、留年率、中途退学率
- 卒業論文・卒業研究の水準、アセスメントテストの結果、語学力検定等の学外試験のスコア、資格取得や受賞・表彰歴等の状況、卒業生に対する評価、卒業生からの評価
- 「卒業認定・学位授与の方針」に定められた資質・能力を測定するためのルーブリックを作成→同方針に定められた特定の資質・能力と極めて関連性が深い授業科目において当該資質・能力の修得状況を直接的に評価(特に卒論)
- 4について
- FD・SDに効果測定(対象者アンケート、事後テスト、追跡調査)
- プレFD
- 経営学の専門家や企業経営者等を講師とした組織マネジメントに関する講演会!?
- 政策立案者を講師とした高等教育政策に関する講演会!?
2019/09/02
田村正紀(2015)『経営事例の質的比較分析』白桃書房
- 事例記述の問題:個人の関心と資料読解能力により、全体像が部分で切り取られる。
- 事例は、局所的文脈で記述されるところに特徴がある。
- しかし、事例の蓄積は因果知識の蓄積に貢献しない。
- 理論事例:実例を見る視点が理論的に絞り込まれていること。
- ある組織に複数の分析の焦点を定めることができる(持続成長、PB開発、軌道売り場等)。
- 理論事例研究:単独事例=過程追跡(結果が生み出されるメカニズムを明らかにする=長期にわたる資料・ヒアリングが必要)と比較事例=QCA(公式データ・聞き取りデータから有用な情報を引き出す)の2つがある。
- 経営判断の多くは二値変数→二値データが10〜15事例あればQCAは可能。
- QCAと統計分析
- 統計=データを変数から見る ⇔ QCA=データを事例から見る
- 統計=Y = a + b1X1 + b2X2 + ... ⇔ QCA=X1 * X2 + X3 * X4 → Y
- 論理式:+(あるいは or)、*(かつ and)、→(左の条件が存在すれば)
- 概念:事物の本質を捉える思考の形式。内包と外延の2つがある。
- 内包:事例の共通点
- 外延:概念が当てはまる事物の範囲=具体例。
- 内包が外延を決め、外延が内包を規定する。
- 理論概念は事例を入れる容器。
- QCAの容器は2種類:クレスプ集合(1/0:国籍の有無など)とファジイ集合(部分的な成員資格を許容、0.7, 0.3を許容)。
- 連続変化は閾値で2分する方が概念を明確にできる場合が多い。
- 各事例の成員スコアの設定は、理論知と経験知を組み合わせる。
- →結果に質的差異を生む閾値を設定する。
- 意見を論理式で表す:
- 専門家の贅沢品定義(T)または、消費者の贅沢品認知(F)を、卓越品質(Q)、高価(P)、稀少(R)、シンボル性(S)で議論するとき
- P*(Q+S+R)→T(卓越品は、高価であると共に、卓越品質か、シンボル性か、稀少性のいずれかを併せ持つ製品である)
- Q+P(~S+~R)→F(卓越品質を持つか、シンボル性がなくとも高価または稀少性がなくとも高価のものが贅沢品)
- 前者の補集合は、~P+~Q*~S*~R→~T
- 後者の補集合は、~Q*~P+S*R→~F
2019/08/29
東北大学高度教養教育学生支援機構(2019)『大学入試における「主体性」の評価: その理念と現実』東北大学出版会
- 主体性に関する概念:人はいかに主体性を持つのか=アイデンティティ(同一性)、人はいかに主体性によって行動するのか=動機づけ。
- 動機づけを把握する方法:行動観察、他者評定、自己報告。
- 最も直接的な方法は行動観察と他者評定。
- →調査書は適切な主体性の評価方法。
- アイデンティティの2つの側面:(1)斉一性(現在の自分がまとっている感覚)と連続性(過去から未来へ続いている感覚)、(2)役割実験(理想の自分の定義を他者に対して試して認めてもらう。
- 2つが絡み合うことで全体感情としてのアイデンティティ感覚が形成される。
- 主体性を動機づけと捉えれば、筆記試験の得点にも主体性が反映される。
- 学力:学んだ力と学ぶ力に分類できる(市川 2004)。
- 学んだ力:知識の量、論述力、批判的思考力、問題解決力
- 学ぶ力:学習意欲、学習計画、持続力
- 自己調整学習:学習者が自分の学習プロセスを能動的に調整していくこと(犬塚 2017)。
- 予見、遂行、自己内省の3段階で構成される循環的プロセス。
- 主体性は自己調整学習という観点で捉えることができる。
- サイクル循環で重要なのは、学習方略(認知的方略、メタ認知的方略、リソース管理方略)、課題価値の認知、エフォートフルコントロールの3要因。
- ストレスフルな状況やネガティブな感情が喚起される状況でも自身を制御して学習に取り組むことは主体的な学習の一側面。
- 主体性の問題を考えるには、特性レベル(特定場面・領域を超えた一般的傾向)と領域レベル(分野や領域の内容に即したもの)について考える必要がある。
- 数学では自己調整学習をしても英語では自己調整的でないなど。
- 主体性評価のアプローチ
- 結果に注目 VS プロセスに注目
- 分析的(複数観点で構造化して評価)VS 総合的(緩い構造化で1つの観点で評価)
- 調査書の活用は歴史的には高校が望んだもの。しかし、現場の教員から調査書の積極的利用は望まれていない。
- 調査書が入学選抜に活用されない理由:(1)学校によって評価基準が異なる、(2)同一学校でも教師によって評価基準が異なる、(3)学校差が現存しており相互の比較が困難である、(4)卒業年次によって評価基準が異なる、(5)そぐ長後の学力変化が認められない。
2019/08/28
鈴木竜太・服部泰宏(2019)『組織行動』有斐閣
- 組織メンバーに求められる3つの行動:参加(いつづける)、役割内行動(役割を果たす)、役割外行動(役割を超えた行動)。
- 組織行動論の学び方:(1)複数の理論をつなげて考える、(2)具体的な事象と理論をつなげて考える。
- モチベーション:目標に向かって努力し、その達成を目指そうとする心理的エネルギー。
- ワークモチベーション:個人の内部・外部にその源を持つ一連の心理的エネルギーの集合体で、仕事に関連する行動を始動し、その様態・方向性・強度・持続性を決定づけるもの。
- マズロー:わかりやすいから受け入れられやすいが、必ずしも人の欲求は階層的ではない(その後の研究でも支持されていない)。
- 生存が脅かされても尊厳を守る行動をとる人はいる。
- マクレランドの3+1欲求分類:パワー、親和、達成(回避)
- パワー:他者に影響を与えたい、コントロールしたい。
- 親和:友好的で親密な人間関係を結びたい。
- 達成:困難に挑戦し、成功の喜びを味わいたい。
- 回避:達成の裏、失敗や困難を回避したい。
- 外的報酬:2つの機能がある。
- コントロール機能:人を動機づける
- 有能さのフィードバック機能:有能であることをその人に伝達する
- 前者<後者ならアンダーマイニング効果は緩和できる
- → 外的報酬は与えられるか否かではなく、どのように与えられるかが重要
- 内発的動機づけをもたらすもの:有能感と自己決定
- 公平理論:過小報酬に不公正を知覚しやすいが、過剰報酬は知覚されにくい。
- 手続き的公正の6つの基準:一貫性、偏見の抑制、情報の正確さ、修正可能性、代表性、倫理性
- チームの業績を評価するポイント
- チームとして達成すべき点を明確に示す
- チームの顧客ニーズや業務プロセスに関連付けて評価する
- チームの目標達成に関連した個々人の業績も評価する
- チームにインセンティブを与える方法:プロフィットシェアリング、チーム業績奨励給制度。
- リアリスティックジョブプレビューが機能する条件:労働市場が買い手市場である、競争率が高い、仕事の内容がわかりにくい・見えにくい。
- 組織社会化=6+1つの側面について個人が理解していくこと
- 仕事に関するスキルや知識
- 仕事上のパフォーマンスの向上(仕事上の課題をどのくらい深く学ぶか)
- 組織文化
- 人間関係(他のメンバーとの間に十分な人間関係をどの程度確立するか)
- 政治(組織内の権力構造に関する情報をどの程度持っているか)
- 言語(職業に関する専門用語や所属集団に特有の俗語をどの程度理解しているか)
- 組織の目標と価値観(組織の持つ目標や価値観をどの程度理解しているか)
- 歴史(組織の伝統・習慣・神話・儀礼を含む歴史的なことをどの程度理解しているか)
- 心理的契約
- 組織から求められる役割
- メンバーによる組織社会化
- プロアクティブ行動:情報収集をしたり、既存メンバーとの関係を自ら構築する行動。
- フィードバック探索:自分に割り当てられた仕事に対するフィードバックを求める探索を行うほど、パフォーマンスが高い。
- しかし、これは必ずしも容易ではない。
- 探索コスト(誰からフィードバックをもらえればいいかわからない)、対面コスト(その時間的余裕がない)、探索と実行のコスト(耳の痛いフィードバックを受け止めたり行動に反映させる負荷)。
- 社会による組織社会化:入職前から受け取る情報(今年は売り手市場、ある企業の悪い噂など)。
- 社会化過剰=過剰な社会化で個性が犠牲となり、組織の変革やイノベーションの芽が摘まれてしまう状態。
- 組織社会化段階の新人がクリアすべきキャリア発達上の5課題
- 組織の現実を受け入れる(欠点も含めて受け入れる)
- 新しいやり方に対する抵抗に対処する(自分が正しいと思うことが通らないことを理解する)
- 働き方を学ぶ(曖昧さ・複雑さ・不条理を学ぶ)
- 上司との付き合い方と評価の仕組みを学ぶ
- 組織における自分の位置を定め、アイデンティティを確立する
- 心理的契約の4要素:個人の信念である(期待を抱けば契約が成立する)、合意が成立しているという認識、項目・中身が大事、互恵的な交換関係を期待する。
- フォロワーに対するリーダーの行動は大きく2つしかない:人間関係志向行動とタスク志向行動。
- 期待理論:報酬の価値、成果と報酬の関係、努力と成果の関係の積で決まる。
- パス・ゴール理論:リーダー・フォロワー関係に2つの前提を置く。
- リーダー行動が受け入れられるのは、その行動がフォロワーに満足をもたらすとわかった時。
- リーダー行動が動機づけになるのは、それが仕事の達成を通じて部下を満足させるか、部下の仕事の達成を妨げる状況を補完する時。
- リーダーシップ理論のまとめ:
- 古典的理論=個人に働きかけることで成果を上げるリーダーシップ。
- 期待理論・パスゴール理論=フォロワーが特定の行動を起こすことで得られる報酬への期待を高めることを通して、役割内の行動につなげるリーダーシップ。
- →どちらも個人に働きかけるリーダーシップ?
- 組織に働きかけるリーダーシップ:変革型・カリスマ型リーダーシップ
- 行動特性=高い目標の設定、イメージ形成(リーダーを特別な人と思わせる)、モデリング行動(価値観を反映した模範を示す)、モチベーション喚起(高い目標を受け入れやすくする態度をつくる)、コミュニケーション(高い目標は達成できるという自信を与える)。
- カリスマ型リーダーシップの5つの特徴:強い自信、ビジョンを設定する能力、リスクがあってもビジョンを追求する意思、型にはまらない戦略の採用、変革エージェントとしてのイメージ。
- 交換型リーダーシップ:フォロワーの欲求に応じた報酬に基づいて動かす。
- 両者を包含する=フルレンジ・リーダーシップ(7要素)
- 変革特徴:カリスマ、理想化された影響、鼓舞する動機づけ、知的刺激、個別配慮
- 交換特徴:業績に基づく報酬、積極的な例外管理
- 7要素を何もしない=自由放任型リーダーシップ
- リーダーシップの2つのモード:フォロワーには、受動的と能動的がいる。
- 支配的定義(受動的なフォロワーを想定):リーダー=ビジョンについてこさせる、フォロワー=ビジョンに無批判についていく
- ハイフェッツ定義(能動的なフォロワーを想定):リーダー=フォロワーがそれを自分のビジョンだと思うようにお膳立てする、フォロワー=自分なりの考えで選び、能動的にビジョンの軸に加わる
- フォロワーに適応を促す6つのリーダーシップ
- バルコニーに上がる(フォロワーに全体を俯瞰させる、リーダーはバルコニーから降りる)
- 適応への挑戦を見極める(挑戦に値する状況にする)
- メンバーの苦痛・苦悩を調整する
- 鍛錬された注意力を持ち続ける
- 仕事の責任を人々のもとに戻す
- 組織の中からやがて聞こえるリーダーシップの産声を守り育てる
- 従来理論=リーダーがフォロワー集団に等しく影響を与える(平均的リーダーシップスタイル)
- → 関係は1対1ではない=リーダーシップの交換関係アプローチ(Vertical Dyad Linkage, Leaer-Member Exchange)
- さらに、フォロワー同士の関係を考慮する=相互作用アプローチ(リーダーに目をかけられなかったメンバーがモチベーションを下げるなど)
- 状態推定問題:推測によって何らかの値を求める問題→複数人の集団による推定は、ここのメンバーの大半より常に正確。
- これには集団内に5つの多様性が必要:知識の多様性、視点の多様性、解釈の多様性、問題解決方法の多様性、予測モデルの多様性
- 協働には3つある
- 加算的協働:メンバーの貢献が単純に加算される(状態推定問題、募金を集める、多くのアイディアを出す)
- 連接的協働:全員が達成しなければ集団として達成したことにならない(チームスポーツ、合唱)
- 離接的協働:メンバーの誰かが達成すればそれが集団の成果になる(集団で問題の正解を出す)
- 加算的ならメンバー間の連携や調整は不要、連接・離接なら貢献の調整が必要。
- 連接的・離接的協働の問題
- 集団圧力:集団の規範や意見に同調する圧力がかかる
- 集団浅慮:深く考えないまま決定され、訂正されにくい
- 社会的手抜き
- 集団圧力・集団浅慮に陥る5つの理由
- マネジメント問題
- 集団の孤立化(外から独立していて影響を受けにくい)
- 手続きについての規範の欠如(最終決定を行う方法のルールがない)
- 多様性問題
- 凝集性が高い(メンバーの団結が強い、相互愛着が強い)
- バックグラウンドが同一(考えが似て衝突せずに意見を合わせる)
- リーダーシップ問題
- リーダーシップの欠如(強いリーダー不在で議論が勝手な方向へ流れる)
- 問題の解決
- 加算的協働:メンバーを十分多くする、独立して作業する
- 連接的・離接的協働:集団と外部をリンクさせる、決め方のルールの設定、多様な価値観を持ったメンバーの取り込み、強いリーダーシップの設定
- 組織内の3種のコンフリクト
- タスクコンフリクト:仕事内容や目標多声に対する考え方の違い。
- プロセスコンフリクト:仕事の進め方や裁量権限の対立。
- 感情のコンフリクト:好き嫌い・人間関係
- (1,2は生産的コンフリクト、3は非生産的コンフリクト)
- 交渉場面の7つの落とし穴
- 不合理なこだわり(自分の過去のやり方などにこだわる)
- パイの総量に関する固定観念
- アンカリング効果
- フレーミング作用(どのような形で情報が提示されるかに必要以上に影響を受ける=人はリスクに感応的)
- 情報の入手しやすさの罠(より重要で質の高い情報を見逃す)
- 勝者の呪縛
- 自信過剰
- 目標の二重性:組織目標と個人目標は一致するとは限らない←マネジャーはバランスさせることが役割(リーダーシップと組織コミットメントで調整する)。
- 組織コミットメントの3モデル
- 情緒的コミットメント:組織やメンバーへの感情的愛着、組織に対する同一化や一体感
- 規範的コミットメント:組織に居続ける義務感、忠誠心、恩義
- 継続的コミットメント:組織を去るデメリット、居続けるメリット、代替的選択の欠如
- (これらが参加、役割内行動、役割外行動を引き出す)
- 強い組織文化や価値共有でコミットメントを引き出す
- 組織文化=メンバーに共有された価値観・信念・行動規範のパターン
- 組織は文化を保存したがる
- 組織に惹かれてエントリーする(魅了)→均質化した人をピックアップする(選抜)→異なる価値観がはじかれる(淘汰)
- 社会的アイデンティティー:ある社会カテゴリのメンバーであるという形で成立する自己意識。
- パーソナリティ:人の行動や思考の前提にあり、それに強い影響を与える内面的な特性 ⇔ 自分の視点から見た自分らしさがアイデンティティ
- 組織アイデンティティ:我々らしさはなにか、我々は何者かに関するメンバーの自己認識
- 中心性(当該組織の本質的特性に関わる)、独自性(他の組織と比較して際立っている)、連続性(持続している)の3基準を満たすもの。
- あくまでメンバーの認識に注目している(認識していなければアイデンティティにならない)。
- 組織に基づくアイデンティティ:メンバーがその組織らしさから強い影響を受けて形成するアイデンティティ。
- 組織イメージ:組織外の第三者が組織に対して持つイメージ。
- これがメンバーに認識され、組織アイデンティティに取り込まれると、イメージがメンバーによって文化に取り込まれる。
- 組織アイデンティティは、メンバーの情報処理や解釈に影響を与え、メンバーのものの見方を決定する。
- センスギビング(意味提供):組織アイデンティティによってメンバーの組織に対する理解が形成され、情報処理や行動が方向づけられること。
- 組織アイデンティティの呪縛:かつて合理的でメリットをもたらした組織イメージが、有効性を失ったり陳腐化した時に、そのイメージにしがみつくこと。
2019/08/24
ロバート・キーガン,リサ・ラスコウ・レイヒー(2017)『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか ―すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる』英治出版
- 組織に属している人の多くは、本業とは別のもう1つの仕事(自分の弱さを隠すこと)に精を出している。
- 発達指向型組織(Deliverately Developmental Organization):組織文化を通じて人々の成長を支援する組織。
- DDOは、ビジネスで成果を上げることと、会社の仕事を通じて人々が成長するという2つの目標が一体化している。どの組織も、一般的な組織における最も基本的な約束事、すなわち私的なことと公的なことは分離すべしという考え方を覆している。
- Developmentは、社員のキャリアの発展ではなく、社員の人間としての発達に注目し、組織を大きくすることより組織をよくすることをまず考える。
- 大人の知性には3つの段階がある。
- 環境順応型知性:重要人物の意向に反しない、好ましいと考える環境に自分を合わせることが、一貫した自我を保つ上で大きな意味を持つ。そのため、情報に対してきわめて敏感でその影響を受けやすい。→集団浅慮になりやすい。
- 自己主導型知性:常に何らかのゴール、目標、基本姿勢、戦略、分析を持っていて、それがコミュニケーションの前提になる。受け入れる情報の選別フィルターを持つが、自分が求めるものや自分の目標・計画に関連が見出せるものだけを選ぶ。そもそもの計画に欠陥があったり、フィルターが重要な情報を排除すると深刻な結果になる。
- 自己変容型知性:フィルターと自分が一体化しておらず、フィルターそのものを客観的に見ることができる。
- ミッションステートメントを掲げる組織は多いが、それを支えるエコシステム(=そうした価値を具体化し、方向付けるための仕組み、慣行、ツール、共通言語)がなければ、望ましい組織文化の推進材料ではなく、空疎はお題目になる。
- DDO組織の実践に共通する5つの要素
- 人の内面の要素を外に引き出す
- 業務を自己改善に結びつける
- 物事の結果ではなく、その結果を生むプロセスに目を向けるよう促す
- 新しい枠組みを生むための用語を使う対話を重視する
- 全ての人が組織全体の背伸びに取り組む
- 組織に蔓延する2つの問題
- 自分に対して他人が抱くイメージをマネジメントするために時間を費やすこと
- 同僚同士の陰口を言うこと
2019/07/30
クリストドゥールー, D.(松本佳穂子・ベバリー ホーン・大井恭・熊本たま訳)(2019)『7つの神話との決別:21世紀の教育に向けたイングランドからの提言』東海大学出版部
事実学習は理解を妨げる
- 作業記憶は意識と同等であり、人間は作業記憶の内容に関してのみ意識でき、それを監視できる。作業記憶に取り込まれない限り、そのた全ての認知的機能は司会から隠されている。
- 事実学習の目的は、事実を学ぶことではなく、数百の事実を学び、総体として世界を理解するための助けになるスキーマを形成することにある。
- 知識とスキルは二重らせんのようなもので、表層学習と深層学習が連携して進む。
- 新しいトピックを導入するときの発問:絵1枚と高次な質問:シェイクスピアの授業で、シェイクスピアの絵を1枚見せて、この絵からどういうことが言えますか?
- 生徒になぜならばという単語を使わせることで、分析的なよい回答が得られるわけではない。分析的回答は知識の総体に依存していて、答えの中にある単語を使うようにといった抽象的な助言が引き出すものではない。
教師主導の授業により生徒は受け身になる
- 自立した学びが実際に可能となる唯一の方法は、生徒が既に知っている知識を使って作業することである。長期間にわたって収集された情報を再入手する方法としては、自立学習は非効率である。
- 問題解決、創造的思考、クリティカルシンキングは21世紀に特有なものではない。これらの目的を達成するために特定の方法を提唱することは有害である。なぜなら、21世紀スキルを唱える運動は、カリキュラムから知識の部分を排除するための合い言葉となっていることが多く、カリキュラムから知識を取り去ると、逆に子どもたちは21世紀型スキルを身に付けられなくなる。
- 科学的発見をするには、まず当該分野の知識の最前線に到達しなければならない。科学的知識は発展し続けているので、最前線はどんどん遠のき、研究者が追いつくまで以前よりも時間がかかる。
- 特定の職業に関連する知識やスキルは短い時価で時代遅れになるが、それを支える基本的な知識やスキルは時代遅れにならない。それこそ学校で教えるべきもの。
- どんな問題解決でも、人は長期記憶に保持している全ての知識に頼り、その知識が多いほど多くのタイプの問題を解決することができる。なぜ長期記憶に保存された知識が必要で、外部知識に頼ることができないかというと、作業記憶に制限があるため。作業記憶は一度に3〜7の新しい情報しか保持できない。
- 頻繁に使う情報の小片を長期記憶に保存しておくことで、作業記憶に過重負荷をかけずに、複雑な問題を解けるようになる。たとえ、答えに到るプロセスが概念的にわかっていても、物事を暗記することに価値があるのはこの理由のため。
- 新しい文章を理解するには、そこに含まれる語彙の95%の意味を知っている必要がある。
- 転移可能なスキルを教える方法の1つが、プロジェクトを通じてテーマに沿った授業をすること。
- クリティカルシンキングプロセスは背景知識と関連している。
- 抽象的な方法でスキルを教えるのは実際には不可能。人は知識を長期記憶に蓄え、それを使う操作を練習することで熟達した作業を達成できる。知識とスキルの区別は間違った二分法であり、そこから引き出せる実践的結論は、生徒が知識を記憶し、記憶からそれを引き出す練習を積めば、それが熟達した作業を生み出すということ。
- リーディング能力はどんなテクストにも応用可能な汎用的スキルだと考えられがち。実際にはリーディング能力のある人は、多くのことについて広範な知識を持っている人のことで、広い一般的な知識があるからさまざまなテクストを効率的に読むことができる。
- テクストを読むことは、単に単語の意味を知っていることに関連するのではなく、文章や表現が意味する概念の理解が関係する。何かを読むとき、人は長期記憶にある知識(スキーマ)を使って単語の意味を理解する。
- アクティビティは生徒に見当違いのことを考えさせるため有害。覚えるのに一番有効なことは考えること。だからこそ、生徒が授業目体に合う事柄を考えるように、授業やアクティビティを教員はしっかり計画しなければならない。
- 認知心理学が教師に提供できる有用な知見は、ここの授業計画を生徒が何について考えるだろうかという観点から見直すこと。
- 生徒にたくさんの複雑な作業を与えることは、複雑な作用の重要な要素の習得をかえって難しくしてしまい、実際は習得どころか忘れたり無視したりするようになる。11人のサッカーの試合をしてもパスやコントロールの熟達につながらない。
知識を教えることは洗脳である
- 知識と統制:これに従うと知識を教えることは、中立的な行為でなくなる。代わりに知識の指導は、権力、権威、社会階層の問題と深く関わることになる。
- スキルや能力は、知識の獲得から分離できるものではない。地域に頼らず観念的なスキルを教えることはできない。
- 今の教育システムは、教えるべき知識を特定することもなく、知識をスキルに比べて重要性が低いものとして扱っている。
2019/07/13
安藤史江・浅井秀明・伊藤秀仁・杉原浩志・浦倫彰(2017)『組織変革のレバレッジ: 困難が跳躍に変わるメカニズム』白桃書房
- 組織変革:組織の既存資源や要素を最大限にいかしつつ、その結合の仕方を変えることによって新たな価値を生み出すべく、内外整合性が損なわれたAという状態からBという状態へ不連続な変化を遂げること、その上でその変化を定着させること。その移行は、均等なペースで進まず、遅々として進まない時期を経て跳躍を経ると加速度的・拡張的に進行する。
- 学習:経験によって生じる比較的永続的な変化(実森・中島 2000)。
- 不連続な変化が起きても一時的なら組織学習も組織変革も成立したとはみなさない。
- 組織変革(組織学習)による成果には価値判断は含まない。
- Huber(1991)の組織学習:情報処理を通じて、学習主体の潜在的な行動の範囲が変化したとき、主体は学習したとみなす。
- 組織変革の駆動力:(1)システムの不安定化(不安定状態を解消しようと変革の必要性が知覚される)、(2)慣性(=ルーチン・価値観:慣性の克服を目指して変革が志向される)。
- 組織変化には大きく行動面と認知面の2種類の変化がある(Fiol & Lyles 1985)。
- 行動面が変化しても認知面が変化しなければ組織学習ではない。
- 組織変化を分類する次元にはさらにペース(速度・進め方)がある(Greenwood & Hinings 1996)。
- 漸進的であっても不連続な変化や、突発的だが連続的な変化はありえる。
- 見落としがちな2つの視点
- 適応プロセスと変革プロセスの境界はあいまいで見極めにくい(跳躍前の適応プロセスは変革プロセスとは言いがたいが、区別も明確にできない)。
- 同じ要素が正反対の作用をする(組織を取り巻く要因は善悪が分けられない、適応しすぎれば失敗することもある)。
- モメンタム研究:跳躍のメカニズムを説明する可能性→不十分:豊富な知見があっても、最終的に偶然任せ。
- McCall(1998)のリーダーシップ研究:量子的飛躍を遂げた人には、成長させる経験が確認できた→誰にいつどのような経験を積ませるか、その経験を確実に学習につなげる触媒まで考慮したメカニズムの理解・構築・運営が不可欠。
- 組織変革を妨げる学習障害
- メンバーの心理的側面・感情が障害になると指摘する研究は多い(10か条、7つの学習障害など)。
- システムの影響が少なくないという指摘もある(OIシステムとOIIシステム)。
- 変革に適合的な使用理論(メンバーの行動を支配する理論)があっても、組織システムにそれを妨げる使用理論があると、システムに引きずられた認知や行動を取る。(使用理論⇔信奉理論:組織が表向き掲げる)。
- 学習する組織論=変革実現の阻害要因は認知面。→変革準備フェーズにフォーカスしている可能性。
- 明確な手順を強調する研究も多い(Rogersの5段階など)。
- 跳躍のメカニズム:システム思考におけるレバレッジが参考になる。
- システム思考における物事の因果関係:(1)自己強化型ループ(最初の状態を強化するループ)、(2)バランス型ループ(循環の過程でプラスもマイナスももたらし、全体としての安定をもたらすループ)がある。
- レバレッジポイント:バランスループにおけるマイナス点(添乗員の増加→添乗員の質低下)=組織がよかれと思って行ったことが業績の悪化をもたらす。
- レパレッジポイントは、好→悪も悪→好の循環も両方ある。
- 適応段階と実現段階の間を連結する方向転換器があるのではないか。
- スイッチを探索するための4つの着目点としての緊張関係(パラドックス)
- 学習:調整、再生、変革のために努力によって生じる緊張関係
- 組織化:競争と協調、方向付けとエンパワメント、統制と柔軟性など、組織化に関する緊張関係
- 実施:多数の利害関係者によって生じる、目標としての組織の成功に関する緊張関係
- 所属:アイデンティティによって生じる、個人と組織との関係、価値や役割との間の緊張関係
2019/07/11
簱康之(2019)「裁量性のマネジメントによる職場風土の変容」『現代社会文化研究』68,31-48
- 病院組織:チーム医療⇔職種間の闘争
- 事務職員は経営マネジメント職としてキーパーソンになり得る。
- 事務組織の目指すべき集団への変容:組織開発アプローチが取られる。
- 組織開発:組織のプロセスに働きかけることにより、組織の効果性(effectiveness)や健全性(healthiness)を高めようとする実践(中村 2014)。
- 外部者による定量調査に基づく診断型組織開発から、成員間の対話から将来像を自ら導出する対話型組織開発へシフトする傾向。
- この背景にはナラティブへの注目がある。
- 現実が言語によって構成されている(社会構成主義):組織の現実は成員のナラティブによって形成される。
- ナラティブが変容することを通じて、語り得ないものが表出する。
- 400床総合病院でエスノグラフィーを実施。
- 十全たる内部者によるオートエスノグラフィー⇔多くの研究は外部の観察者によるエスノグラフィー。
- 病院事務の風土:コンフリクトを避け波風立てない
- 専門職ヒエラルキーの底辺、医療職を支える存在、医療職からはやって当たり前という見方をされる、些細なミスにも叱責を被る→職員がコンフリクトを回避する身体性を獲得する。
- アシミレーションを実施:上司・部下の相互理解手法、仲介者によるフィードバック
2019/07/10
Liu, X. (2019) "Institutional governance in the development of private universities in China" Higher Education
- PAモデルの限界
- Pの利益志向を強調しすぎている、株価など観察可能な動機づけに注目しすぎて組織がどう運営されるかを見ていない、契約が1つの共通目標だけと考えすぎてPA双方が別の調整を行う余地を考慮していない。
- stewardship theoryで修正できる:(1)Aがミッションにコミットして報酬よりもしっかり仕事をすることに満足する場合、(2)PとAが関心を調整・統合してPにとっても望ましい結果となる場合。
- Pによるモニタリングを小さくできるが、大規模組織では難しい。
- 中国内で比較ケーススタディを実施。
- Comparative case studies are valuable in exploring differences and similarities within and between situations (Herriott and Firestone 1983). As Ragin (2014) writes, it can explore how different conditions or causes fit together in one setting and contrast that with how they fit together in another setting.
2019/07/09
Stouten, J., Rousseau, D. and Cremer, D. (2018) "Successful Organizational Change: Integrating the Management Practice and Scholarly Literatures" Academy of management Annals, 12(2), 752-788.
- 組織変革の主な理論
- Lewinの3段階プロセス:解凍、移行、再凍結
- Beerの6ステップマネジメント変革モデル
- 問題状況の正確な診断に基づく変化の必要性の強調
- 新たな役割や責任を定義し、変革の方向性の明確化
- 変革の方向性に合意し、関係者と対話を始める
- 変革の実施
- 変革を制度化し、公式の構造や仕組みに統合する
- 変革をモニタリングして調整する
- Appreciative Inquiry(Cooperrider and Srivastva 1987)
- 発見(組織の現状と成功を考える)、願望(組織がよくなるための理想状態をメンバーが考える)、設計(理想状態を実現するための計画を立てる)、宿命の4段階(他のモデルと異なり、組織の前向きな特徴や成功からスタートするが、どう願望が実行されるかは手薄で、共通理解形成に重点がある)。
- Judsonの5ステップ
- 分析と変革の計画、変革に関する意見交換、必要な変革の受入、初期の変革の着手、変革を制度化するために条件を整備
- Kanter, Stein, Jickの十戒
- 組織分析と変革の必要性
- 共有ビジョンと変革方向性の創出
- 過去との決別
- 重要な変革の必要性の知覚
- 変革を正当なものとするための強いリーダーによる支援
- 変革を進めるために組織内政治的な支援のとりつけ
- パイロットテストやトレーニングの提供、報償ステムの整備など変革推進を支援する制度の構築
- 変革に関するコミュニケーションを率直かつ公に行い、関係者を変革に関与させる
- 変革を制度化して新しい行動を日常レベルに統合する
- Kotterの8ステップモデル
- 変革が必要である危機を示して危機感を確立する
- 指示の下で連携を形成する
- 変革の方向性を打ち立てる
- メンバーで方向性について意見交換をする
- 変革の計画を立てながら連携やメンバーを変革過程に関与させる
- 変革を実施して短期間で達成できるものを実現する
- 実施されなかった変革を追加するなど、変革を強固にして制度化する
- 変革を制度化して組織に定着させる
- HiattのADKARモデル(Awareness, Desire, Knowledge and Ability, Reinforcement)
- 結局これらのモデルは10のステップにまとめられる
- 変革を動機づけるための機会や問題の評価
- 変革を支援する協力関係の構築
- 変革に向けた明確で切迫したビジョンの形成
- ビジョンに関する意見交換
- 変革へ向けた活力・意欲の結集
- 行動を促すためのエンパワーメント
- 変革に関連した知識や能力の形成・獲得
- 短期の成果の明確化とその変革推進強化に向けた活用
- 長期にわたる変革プロセスの把握と強化
- 変革を組織文化として制度化
2019/07/08
Holzman, B., Klasik, D. and Baker, R. (2019) "Gaps in the College Application Gauntlet" Research in Higher Education
- V-statistics:カテゴリカルな成績データ(基礎的、応用的、発展的など)におけるテストスコアギャップを測る方法
- 大学の選抜度ごとに人種の入学者割合を計算する。
- それをPPプロット(確率・確率プロット)にして、白人に対する黒人の累積構成比率を図にする。
- 曲線の下側は0.39:ランダムに選ばれた黒人は39%の確率で入学できる(ランダムに選ばれた白人に対して)
- 曲線の下側の範囲をP_a>bで表す(a=白人、b=黒人)
- このときV統計量は、V=√2φ^-1(P_a>b)
- Vは異なる学生グループ間のギャップを表す指標
- Cohenのd効果量:標準偏差の何倍(偏差値の標準偏差=10、偏差値が2上昇→効果量0.2)
- グループ間の平均の差は従来t検定や分散分析でp値を報告していたが、サンプルサイズが大きくなると有意になってしまう。
- サンプルサイズ、有意水準(α)、検定力(1−β)、効果量は他の3つが決まれば残りの1つは決まる。
- 平均値の差の効果量d:(実験群の平均−統制群の平均)/√(実験群標準偏差^2+統制群標準偏差^2)/2
- つまり、標準偏差を単位として平均値がどれだけ離れているかを表す。d=1なら1SD離れている(解釈はわかりにくい、理論的には上限・下限は無限)。
- パネルデータから600のギャップを計算(10ステップ、10州、3人種、3所得階層について)。
- ギャップをΓ(ステップ固定効果)、φ(グループ固定効果=白人・黒人、白人・ヒス、白人・アジア、1分位・4分位、2分位・4分位、3分位・4分位のダミー)、Ψ(州固定効果)で回帰。
2019/07/07
和田正法(2019)「教員の負担を減らしながら学生の自立的な研究力を高める教育手法」『技術文化論叢』22,21-36
- PBLで学生が取り組むテーマ:科学の素朴な疑問を一つ定め、その謎を解き明かした人と論文を特定したうえで、発見の過程や原理を分かりやすく発表する
- 例:ガラスはなぜ透明なのか?、電気はなぜプラスからマイナスへ流れる?、なぜ炭素は「C」なのか?、摩擦とは何?、光の速度はどれくらい?、なぜダイヤモンドは固いのか?
- 資料調査が基本。
- 到達目標
- 科学史・科学論の視点を理解する(C 評定)
- 現代社会における科学技術を、俯瞰的な立場から説明することができる(B評定)
- 科学や技術に関して学術的に探究することが可能な話題を自ら発見し、その題材について明解に発表することができる(A評定)
- 成績評価方法:発表の評価(50%)、グループ活動評価(30%)、活動記録(20%)
- 配点:前半40、後半60
- グループ点(発表の評価)50:前半0〜20、後半0〜30
- 個人点(グループ活動評価30):前半−10〜10、後半−20〜20
- 個人点(活動記録20):前半0〜10、後半0〜10
- 発表の評価(10段階評価)
- 内容の問題
- 基本情報がある
- ネタが面白く学術的にも深い
- 主張が明解で、説明が分かりやすい
- 信頼できる情報源にあたっている
- 無駄がない
- 見た目の問題
- 資料がきれいである
- 元気で、爽やかである
- 努力が伝わる
- グループ内の分担がうまくいっている
- 時間配分が適切である
- グループ活動評価(10段階)
- 実力面
- 豊富な知識を持っていた
- スライド作りのセンスがあった
- 発表と質疑が優れていた
- 的確な発言・作業をしていた
- 全体像がよく見えていた、計画的であった
- 多様な意見・視点を提供した、発想が豊かだった
- 努力・態度面
- やる気にあふれていた.率先していた
- リーダーシップがあった.分担の提案や指示が良かった
- よく調査した.作業量が多かった.几帳面に記録した
- 協力的な関係を築いた
- 他の人(教員、メンバー)によく相談していた
- 盛り上げた、楽しませた、和ませた
2019/07/06
柴田友厚・児玉充・鈴木潤(2017)「二刀流組織からみた富士フイルムの企業変貌プロセス」『赤門マネジメント・レビュー』16(1),1−22
- 探索=選択肢に対してさまざまな実験を行う試行錯誤。コスト・時間かかる。
- 活用=現在の能力・技術を拡張・精緻化する。短期には収益性高めるが長期の競争力低下につながる。
- 両者は学習の形態が違う。獲得される知識も違う。持続的成長には両方必要。
- 二刀流組織:両者を分離させながら同一組織内で共存させる。
- 通常は活用に傾斜しがち→だからこそ分離が必要(その分対立も生まれやすい)→トップが軋轢をマネジメントする。
- 探索が既存事業と競合的=対立回避が経営課題⇔補完的=効率的資源配分が経営課題。
- 第1ステージ:フィルムVSデジタル=競合的、対立回避マネジメント。
- 第2ステージ:技術と市場の2次元マトリックスで参入領域を2年かけて探索。
- 補完型では、開発を分化させる仕組みと、統括本部で部門間の壁を越えて統合させる仕組みをマトリックスとして共存(文化と統合のバランスを取る)。
2019/07/05
林倬史(2008)「新製品開発プロセスにおける知識創造と異文化マネジメント」『立教ビジネスレビュー』1,16-32
- 知識創造がクロスボーダー・クロスカルチュラル・クロスポリネーションになり、コンテキストと認知アプローチが異なるメタナショナルな枠組みで行われる=異なる知識創造のメカニズムが求められる。
- 文化の定義:考え方、感じ方、行動の仕方のパターン(Hofstede)。
- 分析的アプローチと解釈的アプローチは統合されることで、全体がメンバーに把握される。
- 革新的に新しい洞察や展開はコミュニティの境界で生じる(Wenger et al. 2002)。
- コミュニティ=明確な目的を持って知識と学習に重点的に取り組んでいる極めて現手k的な社会組織(CoP)。
- イノベーションはマインドセットの境界から生じる(Leonard 1998)。
- 1つの知識やスキル内で生起するものではない。
- 新しい知識はドメイン重複領域で起こる(Kelly 2001)。
- ミッションを共有している参加メンバーが真剣な対話のプロセスを通して、それぞれの専門的知識領域を深めると同時に、お互いに認知されているコンテキストの差異を次第に理解し、知識を正確に交換し始め、曖昧さを次第に明確にし、他の知識領域との接点を認識し、知識融合のプロセスを通して新たな知識が創造されうる。
- マネジャーの境界マネジメント能力が知識創造を決める。
2019/07/04
宮島健(2018)「残業規範知覚と意見表明との関係における心理的安全風土の調整効果」『組織科学』52(2),4-17
- 残業の2要因:(1)人員不足・公正業務配分、(2)他成員からの評価への懸念。
- 時間外労働を美徳と見なす社会規範を知覚することで、裏腹に残業に従事する行動に注目→個人の行動規定:近くされた規範>個人信念。
- 実際、残業に関する社会規範の認知はどの程度正確か?
- 多元的無知:自分が集団規範を受け入れていないにもかかわらず、他の成員の多くは受け入れていると信じている状況。
- →他者に与える自分の印象を好ましく管理しようとする動機が生まれる(知覚された他者の信念に合致する行動を選択しやすくなる)。
- →この行動が他者に影響を与えて、集団成員による規範の遵守が安定的に生み出される。
- どのような要因が多元的無知行動を弱めるか?
- 心理的安全:チームの課題葛藤が高くともチームパフォーマンスが高まる。
- 心理的安全風土はリーダーの行動で変化させることが可能(変革型リーダーシップ、倫理的リーダーシップ)。
- なぜ残業規範と多元的無知が生じたか?
- 伝統的な雇用慣行は年功序列=成果より忠誠心・コミットメントが評価される仕組み。忠誠心のシグナルとして残業が機能。
- 以前に支持された価値観が、支持を失っても維持され続ける現象=保守的遅延(多元的無知の1つの形態)。
2019/07/03
「学修の質を保証する」『IDE 現代の高等教育』No.612,2019.7
溝上慎一「大学生を大化けさせることは難しい。しかし「成長」させることはできる」
村上雅人「学修の質保証」
細川敏幸「学修の質保証」
塩崎俊彦「学生の成長を支援する質保証の取組」
- GPA4年間変わらない→高2から変わらない
- 資質・能力は長期的な発達の結果であり、大学だけで発達的変化(大化け)はしないが、成長(学習によるポジティブな変化)はしている。
村上雅人「学修の質保証」
- Graduate attitudeは4年間で全て身に付けるのは困難→どの程度のスキルに到達するかは、ルーブリックに評価基準を落とし込むことで表現する
- 卒研はすばらしいALだが、教員の研究の徒弟制になっているという批判もある。汎用的能力育成につながる卒研指導の方法の確立が必要、一人の教員の恣意的基準で評価しないことも必要
細川敏幸「学修の質保証」
- 学修の質保証=DP達成度を随時チェックして改善につなげる体制をつくること←この仕組みを明記したもの=アセスメントポリシー
- コンピテンシーの直接評価は高コスト→間接評価中心←ベンチマークがなければ結果を評価する基準を持てない
塩崎俊彦「学生の成長を支援する質保証の取組」
- 非認知的能力:客観評価が難しい→自己評価+教員評価(リフレクション面談=形成的)
2019/06/20
新江孝・伊藤克容(2018)「マネジメント・コントロール研究の整理」『商学集志』88(1),1-18
- 環境変化が必然である以上、組織変化(Organizational change)は不可欠。
- マネジメントコントロール:初期=所与の戦略を効率的に実行する役割→近年:組織変化への貢献が期待される。
- 本稿はマネジメントコントロール研究を整理する。
- 組織変化:状態と方向性の変化の2つ(=組織自体の変化と戦略の変化の2つ)。
- マネジメントコントロール:戦略の範囲内で機能する、MCをきっかけに戦略が創発したり組織文化が変化して組織変化につながる、の2つの見方。
- 組織の3つのレベルの構成要素(Laughlin 1991)
- 解釈図式(解釈枠組み):理念、価値観、規範、ミッション、メタルール
- 設計要素(組織デザイン):組織構造、意思決定プロセス、コミュニケーション手段
- サブシステム:有形の組織要素
- これらの間の均衡が変化することで、他の変化に波及し、最終的に組織変化が引き起こされる。その4つのプロセス
- 反発:設計要素がいったん変化するが結局元に戻る。
- 方向転換:設計要素が変化し、次にサブシステムが変化するが、解釈図式は変化しない。
- 植民:設計要素が変化し、それに引きづられて解釈図式(とサブシステム)が変化する。
- 進展:まず解釈図式が変化し、次に設計要素とサブシステムが変化する。
2019/06/19
ウィリンガム,D.(恒川正志訳)(2019)『教師の勝算』東洋館出版社
- 好奇心は、新しい概念や問題に取り組むための推進力となるが、脳は問題を解くのにどれくらいの知的活動が必要かを素早く計算し、多すぎても少なすぎても、やめることが可能なら問題に取り組むのをやめてしまう。
- 人の興味を引くのは問い。答えだけを聞いても役に立たない。
- 感情を揺さぶる事柄は記憶に残りやすいが、感情は学ぶための必須条件ではない。
- 授業アンケートは、教師はいい人に見えるか、クラスはうまく統率されているかの2つの質問に集約される。
- 子供に学んでほしい事柄は、問いに対する答え。答え自体は興味深いものではないが、問いを知ると答えがとても興味深いものになる。だから、問いを明確にすることが非常に重要。
- 探求学習は、どの問題に取り組みたいかの明確な意見を持っていれば、選択する問題に真剣に取り組み、対象を深く考えるため利益が大きい。ただし、子供の考えることは予想できない。自由な探求が許されると思考過程が成果に結びつかなかったり、誤った発見を記憶してしまう(記憶は思考の残渣なので)。
- 探求学習が有効な場面は、子供が問題について正しく考えているかどうか、環境から迅速なフィードバックが得られる場合(失敗すればすぐにわかる場合)。
- 新しい概念は、既知の概念上に構築する必要がある。子供が理解するには、子供の長期記憶から適切な概念を引き出し、ワーキングメモリに置く必要がある。時には、比較、結合、操作する必要がある。
- 深く知るとは、抽象概念と例、それらの組み合わせ方も含めて全てを理解することである。
- 問題の表層構造は問題を解くのに重要でなくても、実際は予想以上に表層構造に影響される(胃がんへの放射線の照射と、独裁国のスポーク道路への侵攻)。
- 練習は転移を促す一つの重要な要因。ある種の問題をたくさん解いていると、問題の深層構造を認識しやすくなる。
- 割り算を理解していても割り算が問題を解くのに役立つことがわからない理由:人は読んでいるときに、同様の話題と関連付けながら書かれている内容を解釈している。読み進めるにつれて、次に何が来るかという解釈の可能性を大幅に絞り込んでいる。これができないと深層構造を理解できない。
- 転移が難しいのは、初心者が表面的な特徴ばかり注目し、解くための鍵となる抽象的で機能的な問題の構造に目を向けるのが苦手だから。逆に熟達者はそれが優れている。
- ガードナーの8つの知能:言語的知能、論理数学的知能(論理、帰納・演繹推論)、身体運動的知能(スポーツ・ダンス)、対人的知能(他人の感情・欲求・視点の理解)、内省的知能(自分の動機・感情の理解)、音楽的知能(作曲・演奏・鑑賞)、博物的知能(植物相・動物相などの分類能力)、空間的知能(空間を使用・操作する能力)
- これらは才能や能力ではなく、知能の1つ。
- 学校は8つの全ての知能を教育すべき。
- 全ての知能は、新しい題材を学習する手段として使用する必要がある。
- 子供の視点ではなく、内容の視点で考える:学習スタイル理論は、子供に当てはめても役立たないが、内容に当てはめるなら有益。子供の認知スタイルがわかっていながら、子供に合わせて指導法を変える方がよいという理由はない。
- 知能の高い人は、複雑な概念を理解し、さまざまな形で論理的に考えることができる人のこと。知能の高い人はじっくり考えることで障害を乗り越えることができ、経験からも学ぶ。
- 経験は、単に活動に従事すること。練習は、能力を高めようとすること。
- 練習には有識者からのフィードバックが必要。
- 時間をかけずに授業改善に取り組む方法:指導日記をつける、仲間と議論する、観察する、
2019/06/05
Carlile, P. (2004) "Transferring, Translating, and Transforming: An Integrative Framework for Managing Knowledge Across Boundaries", Organization Science, 15(5), 555-568
- 変革は境界で起こる。
- 3つの境界と3つのプロセス:syntactic (information processing boundary), semantic (interpretive boundary), pragmatic (political boundary)とtransfer, translation, transformation。
- 境界では単に知識の共有が起こるのではなく、相互の知識の評価が行われる。
- まず、3つの知識の違いを考える
- Difference:素人と熟達者、専門部署間の違いなどの知識の差異のこと。
- 複雑なサービスを作るには必要なもの。
- Dependence:目的達成に異なる部門が協力すること。
- 知識の差異から共通知を作ることが求められる。
- 複雑なサービスではより多くの共通知が必要。
- Novelty(斬新さ)≒不確実性:新しい成果のこと。
- ある部門の知識が更新されると、共通知を作る努力も増加する。
- 3つの関係性
- 差異と依存が既知となるところからスタート、斬新さが増すと複雑さが増す。共通知ができるとそれが再利用され、経路依存度が高まる。新たな斬新さが増すと経路依存度が負の効果を持つようになる。ここで強いアクターが共通知を使い続けると、組織能力は下がる。
- 3つのレベル
- 基本は情報処理的境界:相互に知識の違いがわかっており、それを送受信して共通知ができている限り、境界は問題にならない。
- この考え方は技術中心のナレッジマネジメントや、製品開発による境界マネジメントの基盤となる考え方。
- しかし、斬新さが増すと、単に知識を送受信するだけでは共通知の形成や、相互の差異や依存性がわからなくなる。→次の段階へ。
- 次の段階になると部署横断チームができてくる。これは、形式知だけでなく暗黙知に注意が払われ始めることを意味する。
- 単に意味を探るだけでなく、関心の交渉やトレードオフも起こる。
- 解釈では対応できない斬新さが進むと、知識を組み替える必要が出てくる。
- 政治力で無効な共通知が使われ続けることがある。
- うまく知識を混合させて変換することで境界を越えることができる。
2019/05/22
Active Learning That Distracts from Learning
- 授業に活動を取り入れた結果、学生が活動に注目してしまい、重要な学習内容を身につけられないという事例。
2019/05/21
阿曽沼明裕(2019)「国立大学の機能強化のための統合・連携」『兵庫高等教育研究』3,47-57
- 名古屋大学の指定国立大学:しばらく進まなかった大学の連携・統合という課題に対して、中央教育審議会や国立大学協会などの談論に沿うとともに、それをリードしつつ、明確な形で大学の連携・統合のモデルを示したことが重要な要因。
- 自律分散型のマルチ・キャンパスシステム:アメリカの大学システムのように大学=機関(キャンパス)の自律的な運営を維持しつつ、各大学(キャンパス)の資源を共有することで、財政的な制約を乗り越えた機能強化を図ろうとするもの。
- 教育研究評議会は各大学
- 経営協議会、概算要求は法人
- 予算編成は法人化前ベース
- アメリカの大学システムは多様
- カリフォルニア:大学の機能分化に応じたシステム化(UCシステム=研究大学群、CSUシステム=教育重視大学群、CCCシステム=短期大学群)。
- ウィスコンシン:研究大学、教育重視大学、CCを含む ← 東海国立機構?
- システムの個別大学に対する統治の強さは、システムを構成する大学によって異なる。(旗艦大学以外は大学の自律性は概して低い)。
- 外部ガバナンス:機関としての大学経営を統治する。
- 内部ガバナンス:部局の経営を大学中央が統治する。
- アメリカの大学システム:理事会(=統治機関(governing body))はシステムに置く。
- 各大学は経営を行い、システムはそれをコントロール(統治)する。
- ⇔ 東海機構は、「法人としての経営と各大学の教育研究が分離される」=経営統合。← 経営とガバナンスの違いが認識されていない。
- アメリカ:理事会が学長を選ぶ(=学長の経営をコントロールする)。
- 日本国立大学:学長が理事を選ぶ(=学長の経営をコントロールする理事会がない)。
- 東海機構には大学経営をコントロールする意味での統治組織がない(実質は文科省?)。
- 研究大学は自律性が高くあるべき。(文科省コントロール下にあり、実態は低い)。
- アメリカは理事会が直接州議会等と交渉する(間に入る文科省などがない=大学が議会に対して自律性が高い)。(←?)
- 経営と教育研究の分離はアメリカの大学の誤解、各大学内にも経営(人事・財務)があり、各カレッジ・デパートメントにも経営がある。
- 東海機構の基本構想:財政難・財政制約からの必要性+大学・産業・地域の好循環モデル
- 説明では後者を強調するが、成果は自明でない。産学連携には集約した窓口が必要という説明は説得力がない。
- まず抵抗の少ないマルチキャンパスシステムで始め、いずれ避けられないスクラップ&ビルドにならざるを得ない。
- 東海機構は、アメリカの大学システムとは違い、ガバナンスと経営の違いの認識がなく、法人統合よりも経営統合に近い、にもかかわらず経営統合のための財務評価もしていない。
2019/05/13
市川昭午(2004)「高等教育の理論を求めてー天野・喜多村両氏に学ぶ」『高等教育研究紀要』19,262-274
- 高等教育研究3つの疑問
- 現実から出発しなかった:大学紛争を無視(内部からの改革運動という希有な事例にもかかわらず)。大学とは何であるかという基本的な問いに答えられない。
- 理論があるのか:研究が蓄積されたにもかかわらず。政策にグランドデザインがないという前に、グランドセオリーがない。
- トロウのエリート・マス・ユニバーサルが有名。
- 論争が乏しい:例えば、女子教育の存在理由など議論されてしかるべき。学会でも論争がない。
- 歴史と比較の2つの視点は無視できない。
- 天野歴史研究の特徴
- 旧制専門学校を高等教育の主流ととらえる(旧制高校・帝国大学を正当とする見方と異なる)。
- 文部省所管の機関だけを対象としている。
- 戦時期・大学紛争期の分析を避けている。
- アメリカを重視して、これを基準に発言。
- 喜多村アメリカ研究の特徴
- アメリカを理想的・理念的モデルと捉えている。
- 日本が遅れているとしながら、どう改善するかを示さない。
- アメリカを将来予測の目安にしている。
- 重要な論点
- システム論:高等教育システムは社会に開かれているべき⇔サブシステムだから完全閉鎖はあり得ない&開かれすぎて自律性を失い、システムといえなくなる方が問題。
- 学校化論:教育不在を批判・大学の学校化の必要性を強調⇔研究の自由を制約する&教育に力を入れたからといって学生が勉強するようになる保証はない。
- 自己規制論:外部介入を避けるため大学は自ら変革すべき⇔大学評価の理論も方法も確立されていない。
- 企業体化論:大学が企業体化することは避けられない⇔既に企業化している。
- 未来論:高等教育の合理化が進むとゆとりや柔軟性、創造性が失われる。
- 大学人のあきらめ。抵抗精神のなさが急ピッチの改革を可能にしている。
- 大学に改革はなじまない。大学が変わるのは、個別の人間の選択や決定の積み重ねがもたらすゆっくりとした変化の過程を通じてである(天野)。
2019/05/12
羽田貴史(2019)『大学の組織とガバナンス』東信堂
- 高等教育の組織に関する議論の問題
- ガバナンスと組織を分けて論じる
- 大学の組織構造の二重性:水平的学術機構・階層的管理構造(Peterson 2007)。
- 70以前:官僚制モデル(閉鎖組織モデル)→70年代:オープンシステム→80年代:文化モデル・マトリクスモデル・サイバネティックモデル→企業家モデル(資源減少による)。
- 組織構造とガバナンスの相互依存性を論じていない。
- ガバナンスとマネジメントを区別していない。
- ガバナンス:権限と責任の体系
- マネジメント:ガバナンス構造のもとで目的を達成する作用
- →組織パフォーマンスを改善したい:権限と責任を組み替えればよいか?運営手法を改革すればよいか?で異なる。
- 普遍的に有効なガバナンスモデルはない。
- マネジメントの課題をガバナンスで解決する主張の繰り返しが問題。
- 組織が効率的に作動しないのは、問題を分割して把握し、断片化して扱うため(センゲ)。
- Peterson & Mots(1987)
- ガバナンス:意思決定の構造とプロセス
- マネジメント:決定を実行し、職務を果たす構造とプロセス
- リーダーシップ:個人が決定に影響を与える構造(地位・組織・役割)とプロセス
- クラークのトライアングルモデル
- 業務の特質に応じた統合と信念が理論的根拠。機関内の各階層で異なる価値体系が行動様式を決定する。⇔ システムレベルでの市場統制への移行を根拠づけるものと理解されがちだが。
- 大学と営利企業の違い:教員と職員の役割が区分され、権限と責任が分担されていること(Bess & Dee 2012)。
- 今後の研究課題
- 複雑系組織としての組織研究:単一原理と考えるべきでない。さまんざまなコンフリクトを処理するマネジメント論の構築が必要。
- マネジメントの多様性:大学は二重の権限体系を持たざるを得ない。この側面がシェアドガバナンスと表現されている。
- グローバル社会は国民国家の弱体化をもたらす=市民教育の再構築が求められている。日本の高等教育はこれを研究していない。
- 教育マネジメントの研究:正課中心からキャンパス全体の学習経験への転換。
- 学修成果測定=高等教育の画一化・標準化をもたらし、学生のプライバシーを危うくする。
- 認知科学、学生発達理論研究が不足。
- 組織分析には、(1)業務と組織の関係性、(2)構造、(3)ガバナンスの3つを包括する理論が必要。
- Clarkトライアングルモデル:システムレベルの登記構造の類型ではない。機関の各レベルで権威構造が異なることを示したもの(講座レベル=専門・個人・同僚支配、機関レベル=理事会権威・官僚性的権威が機能する、2つのレベルでは統合の要因がことなる)。
- 優れたマネジメント:構成員のモチベーションを高め、能力を引き出し、組織の価値を共有させるマネジメント。
- FDに組織社会性開発が欠落している:組織改革の必要性を認めながら、身体化された行動様式が裏切る状況→多様な組織移行モデルが提示されるべき。単に教育研究組織分離をすればいいというものではない。
- 国立大学法人法:法人の組織・運営を定める法律。国立大学の組織や活動を直接定める法律ではない。私立学校法も同じ。大学(教育研究組織)は、学校教育法などに基づき、各法人が学則で定める。
- Clarkの企業的大学の5つの特徴
- 強化された運営コアの成立:企業モデルの大学運営、学長への権限集中。
- 周辺組織の発展:学部中心→外部連携組織中心(&マトリクス化)
- 基盤となる自由裁量資金の保有:交付金中心→外部資金中心
- 中心地の促進:企業的になりやすい分野(理系など)を促進、文系軽視、企業的性格は学内に不均等に現れる。
- 統合された企業的信念:これらの思想が信念となり、文化として大学内で正当化され、再生産されていく。
- 集権的分権化:同僚制の大学に企業的執行体制が浸透→大学への分権化と大学内の分権化が進む=資源配分がパフォーマンスベースになる→あるユニットの成功が他のユニットの不成功をもたらす。
- つまり、中間組織で分権化が進むと、組織内の資源配分の不均等が進み、その不均衡を是正するために機関レベルの強力な集権化が必要になる。
- → 内部組織にインセンティブと権限を与えると同時に、中央の影響力を残すシステムが必要。
- 職員の専門職化論
- ジェネラリストは育たない(教員がそうであるように)。
- 教員を雑務から解放するという論理は、ユネスコの地位勧告に矛盾する。
- 大学教員の参加が不効率という根拠はない。
- 教員にありすぎるものが職員になく、職員にありすぎるものが教員にない。
- 教員の考えるよい管理者=自分の思考様式にあった組織を作る、規則に縛られずに活動を思いつく
- 職員の考えるよい管理者=規則を守る、リスクを比較衡量する
- →いまのまま職員の専門性を高めると、学長の思いつきを具体化するのがよい職員になってしまう。
- →大学管理者としての教員を見直してから職員の管理者を考えるべき。
- 職員論の問題
- 教員支配と職員という構図を過剰に強調:事務組織は実質事務局長が統括し、学長も権限が及ばないのが実態。
- 教育・研究事項が教員の責任で決定されるのはおかしいことではない。
- 専門化を万能処方箋とする:セクショナリズム、特権化などの課題を考えていない。
- 人事制度と一体に論じなければ、職員の役割や専門性を具体的に考えられない。
- 新たな価値を生み出す現場の在り方として職員論が進められていない。
2019/05/11
野口寛樹(2008)「NPOにおける組織ルーチンの生成プロセス」『經濟論叢』182(5-6),627-648
- NPO法人は継続が重要。社会からの信頼が高まり、新たな展開のため。
- →継続に必要な組織能力を持つために、組織で共有された活動パターン・ルーチンは何か?
- 自主性・自発性=既存の組織論で説明できない。
- ミッション重視、非官僚的システム、環境から強い影響→本稿は自主性・自発性に着目。
- 個人の自主性・自発性が尊重される組織で、個人を組織運営にどう参加させるか?
- NPO2分類:問題解決型(社会へ向けた活動)と存在重視型(自分たちのための活動)(松本 2006)→ 前者の方が高い組織能力が必要。
- 組織ルーチン:効率性、複雑性、環境圧力における問題解決の視角を提供できる。
- 8つの特徴:集合的な行動などのパターン、繰り返し・再現性がある、集合の現象である、意識せずできるものと努力して達成したもの、過程をさすもの、組織や構造に埋め込まれているか状況に特定的なのもの、経路依存するもの、二者間の相互関係また外部から影響を受け変化するもの
- → 行動規則・再現可能な相互関係のパターン、認識的な規則・一般的な運営手続・ルール、知識や記憶の3つに要約可能
- 6つの組織への影響: 調整と管理、休止状態を作る、非ルーチン作業ができるように認識できる潜在能力を高める、不確実性を減らす、安定性、知識の貯蔵庫
- → 調整、安定性、意識下にあるもの、知識・特に暗黙知を持つの4つに要約可能
- 3つの生成:組織学習(成員聞の相互作用パターンから形成される共通の反応パターンの学習)、戦略論(組織全体の持つ組織ルーチン及びその活用能力)、解釈論パラダイム(質的学習論)
- → 刺激−反応から生成されるルーチン(構造)、相互学習を通して生成されるルーチン(プロセス)の2つに要約可能
- ルーチン生成過程モデル:明示的とパフォーマティブの2つの間の循環で生成
- 循環に必要な3指標:実践主体、権力、主観性
- 生成の促進(明示→実行):方向付け、参照する、報告する
- 実践からのフィードバック(実行→明示):繰り返しする、使用し続ける、修正する
- トップのルーチン生成
- 厳しい仕事を率先して行う背中を見せる。→ 参加者の自主性が伸びる。
- =パフォーマティブな面からメンバーが学習を行い、明示的な面へ変換される。
- 参加者の理解:18名への聞き取り調査
- 必要性の理解が参加理由であることをデータで確認。
- 結論:トップがメンバーに学習を促し、ルーチン化させている。
- 創生期NPOのルーチン生成として。
2019/05/10
Robert Ubell (2016) Why Faculty Still Don’t Want to Teach Online
- 教員のキャリアが研究業績で決まる状況において、教員がオンライン教育に関わるモチベーションを持つだろうか?
- もちろん教育業績は評価されるが、教室の授業をうまくやることが評価されても、オンライン授業まで評価されるか?
- こうした教員のオンライン教育への関心の低さは調査でも裏付けられている:なぜオンライン教育を渋るのか→学生とのインタラクションが減るから、体面授業と同等の質が保てないから(ビジュアルサインがないために)。
- 威信の大学ほど、オンライン授業へのサポートが手薄。自分もいいオンライン教育の経験がないので、否定しがち(逆に経験すると抵抗も小さくなる)。
- 技術的・教授法的支援が少ないということも教員の不安の1つ。
- 最も教員が恐れるのは、コントロールを失うこと。通常授業は、授業計画、教材準備、課題を教員が用意するが、オンライン授業は専門化や支援者の介入を招いてしまう。
- 経営側はオンライン授業を低コストで多数を教えられる方法と考えがち(実際低コストで教えることは可能)。さらに、オンラインで学ぶ方が成績がよいという研究も一部にはある。
- しかし、教員のネガティブな態度に寄り添うことに失敗してきた。
- 対面教育で優れた教員はオンライン教育でも優れている。学生の心境に入り込み、彼らの困難を理解し、自分が学生の時の苦労を思い出している。
- また、講義をALにするのは完全に新しい授業を作るのと同じ(Craig 2014)。これまでの授業をオンラインにするのは転換ではなく、新しい国で生活したり新しい言語や文化を学ぶのと同じ。
- まず教員がオンラインで学ぶ経験をすべき。長所がわかれば抵抗は大きく減る。
- 対面かオンラインかという議論をやめて、ALを支援する優れた教授法を支援すべき。
2019/05/09
Jacobi, L. (2016) "The Trifecta Approach and More: Student Perspectives on Strategies for Successful Online Lectures", inquiry in education, 8(2),
- オンライン講義が効果的か非効果的かを論じた研究は多いが、何がオンライン講義を効果的にするかはよくわかっていない。これは、今までの研究が単に対面講義をオンラインに置き換えてきただけだから。しかし、そもそもオンライン講義の戦略は異なるはず。
- 即時性:コミュニケーション態度が親密さと非言語反応で促進される。オンラインでも存在することを確認した研究は多い。
- Teaching presence:双方向性・即時性と合致する概念。授業内容の選択、構造化、提示と学習活動・評価課題の開発を含む概念。
- これ以外にないのか?これを学生面談を通して探求する。
- この授業で最もよかった点は?、悪かった点は?、授業は効果的だったか否か、または対面と同等か、それはなぜか、何が効果的にしたか?、他のオンライン授業とどう異なっていたか?の4点を質問。
- コーディングで5つのテーマを生成:3連アプローチ、講義の振り返りの容易さ、講義の簡潔性、重要な点のハイライト、事例の活用。
- 3連アプローチ:スライド、音声、テキストの同時活用。授業にいる感覚を得るのに重要な要素。
- 振り返りの容易さ:止める、巻き戻す、見直すが必要に応じてできること。
- 簡潔性:簡潔、単純、限定されていること。20分以上はだめ。
- ハイライト:授業目標到達に何が重要かわかること。
- わかりやすい事例:概念を理解するための具体例・生活活用例がある。
- 学生が効果的でないというもの:テキストとの関連がわからないこと。
- どっちが効果的かについては、プラス、マイナス、イーブンどれもある。
2019/05/08
Sheikh, A. and Aghaz, A. (2019) "The challenges of the faculty members’ commitment: The role of university brand", Higher Education Quarterly, 1-16
- 専門コミットメントが高いほど、組織コミットメントは高まるか。大学ブランドは組織コミットメントを高めるかを実証。
- 組織コミットメント:Allen and Meyer's (1990) scaleで測定。
- 専門コミットメント:Meyer et al. (1993) で測定。
- ブランド:Mael and Ashforth (1992)で測定。
- 結果は、専門→組織のインパクトより、専門→ブランド→組織のインパクトの方が大きい。
2019/05/07
Miller, G. (2019) "I’ll Know One When I See It: Using Social Network Analysis to Define Comprehensive Institutions Through Organizational Identity" Research in Higher Education,
- IPEDSのベンチマークデータを使って、どの機関がどこを比較対象としているかのネットワーク関係を実証分析。
2019/05/06
Rose, M. (2018) What are some key attributes of effective online teachers? Journal of Open, Flexible and Distance Learning, 22(2), 32-48.
- 5人の効果的なオンライン教育を行う教員への質的調査。
- 構造化質問
- 質の高い教育はどのようなものだと考えますか?
- どのような特徴や要素が効果的なオンライン教育につながると考えますか?
- ご自身が効果的だと考えたオンライン教育について説明してください。
- 効果的なオンライン教育を行って得られた知見や教訓を教えてください。
- 知見1:講義中心を避ける
- 知見2:教授法を変える
- チャンクを作る、80秒の映像にする。
- 短い講義、ウェブサイトへのジャンプ、鍵となる数問のクイズ、チャットフォーラム。
- 学生は一人で考えてから複数で考える経験をしないと深く内容に関与できない。
- 知見3:価値ある失敗をさせる
- 学ぶ前に問題に取り組んで、稚拙・間違った考えで挑戦する。コンテンツを学んだ後で、より高次の問題に取り組む。
- 知見4:学習を促す
- 学生を一人にせず、オンライン上や対面上でつなげる。教員ともつなげる。
- 知見5:シームレスな構造をつくる
- 学ぶ内容が構造化されている、体系的で、論理的で、次に学ぶことが予想できる構造になっている。
2019/05/05
渡辺伊織(2019)「大学ガバナンスの概念に関する試行的検討」『大学経営政策研究』9,213-228
- 産業界・政府の考えるガバナンス ≠ 大学人が考えるガバナンス
- 政治学・行政学:
- ガバメント:統治の主体に着目する語(単一の統治機構を表す語)
- → 統治に関わるアクターの拡大 → 統治の関心がプロセス(アクター間の調整)に移る = ガバメントからガバナンスへ
- 経営学:
- ガバナンス ≒ コーポレートガバナンス
- 狭義の意味:企業内の内部統制システムやその構築(=PAによる監視・統制) → 関心がプロセスへ広がる
- 大学:
- 内的な政治的利害関係から、高等教育形成に決定的な役割をはたす、より広い政治的ダイナミクスや政策形成へと移行(Gumport 2007)
- 同僚性と連邦国家的性格による内的多様性が重要
- Kerr(1963)のマルチバーシティ:ユニバーサル化で様々なコミュニティを内包することで一貫性が低くなった = マルチバーシティ内の独自の価値観を持った多様なコミュニティの活動に共通点なし
- ガバナンスの主体:AAUP 1966宣言(教員団の大きい影響力)⇔ 2015 学校教育法・国立大学法人法改正
- → 大学組織モデル:クローズドシステムからオープンシステムと考えらえるようになった = 学外の多様性やステークホルダの存在が強く意識されるようになった(政治学・行政学、経営学と似ている)。
- 両角(2018):ガバナンス=意思決定の構造とプロセス、マネジメント=意思決定を実施するための構造とプロセス、リーダーシップ=個人が意思決定に影響を与えようとする構造とプロセス
- 共通点:組織内部の多様性に根本的関心がある
- → ガバナンス概念を支える重要な要素
- 多様性:特に内的多様性
- 意思決定:問題の認識と解決策の選択
- 調整:多様性のある組織を方向付ける
- ダイナミクス:意思決定のプロセスに注目する
- ガバナンスは多様性を内包する概念 ⇔ トップダウンという語との併用は矛盾になる
- 意思決定の研究:規範的(良いとされる意思決定を達成する方法を説く)と記述的(人間が実際に行う意思決定を説明する)がある
- 集団的意思決定:定型的と非定型的がある
- 意思決定の重要なモデル:IDC(Simon 1947、Intelligence-design-choice)
- 良い意思決定の見方(印南 1997):質、スピード、満足度・受容度(3つのバランスをどの程度求めるかは問題によって異なる)
- 限定合理性への対応:(1)プロセスの洗練化、(2)集団化による認知能力の拡大
- (1)適切なメタ意思決定が必要(=プロセスや方法に関する意思決定、意思決定の目的設定を含む)
- (2)メンバーの異質性が異なる側面から問題を捉え、認知を変革することで良い意思決定に至る
- ガバナンスと意思決定は一体的に捉えるべき:ガバナンスの成果=意思決定、実際の意思決定=ガバナンスを構築・改善する材料
- この点に関する研究が不十分
2019/04/24
小野寺夏生・伊神正貫(2016)「研究計量に関するライデン声明について」『STIホライズン』2(4),35−39
- ライデン声明の10原則
- 定量的評価は、専門家による定性的評定の支援に用いるべきである。
- 機関、グループ又は研究者の研究目的に照らして業績を測定せよ。
- 優れた地域的研究を保護せよ。
- データ収集と分析のプロセスをオープン、透明、かつ単純に保て。
- 被評価者がデータと分析過程を確認できるようにすべきである。
- 分野により発表と引用の慣行は異なることに留意せよ。
- 個々の研究者の評定は、そのポートフォリオの定性的判定に基づくべきである。
- 不適切な具体性や誤った精緻性を避けよ。
- 評定と指標のシステム全体への効果を認識せよ。
- 指標を定期的に吟味し、改善せよ。
2019/04/17
Connecting the Disconnect Between Class Time and Course Readings
- 事前に文献課題を出し、その前提知識を用いて授業中に知識を活用・適用・援用をする。このような連関は自動的に起こるものか?
- 多くの学生は、時間外文献課題と授業との接続に困難を感じている。
- うまく接続するためのアイディア:
- Reading reflections:リーディングに関する日誌をつけてもらう。最も響いたこと、どう前回・今回の授業と関連するかなど。
- Reading discussion leaders:学生に順番でリーディングに関する議論のファシリテートをしてもらう。
- Reading quizzes:リーディングに関するクイズを解く。
- Model the connections:授業中にリーディング内容に言及する。ハイライトや重要点を示し、授業内容とどう接続しているかを示す。
https://www.facultyfocus.com/articles/teaching-and-learning/connecting-the-disconnect-between-class-time-and-course-readings/
2019/04/16
荒木利雄(2017)「わが国の大学経営における国際競争力向上のためのレピュテーション・マネジメントの役割と意義」『ビジネス&アカウンティングレビュー』19,41-59
- レピュテーションは大学自らマネジメントできるのか?
- レピュテーション:ステークホルダによる認知の集積(井上 2005)。
- 明確なアイデンティティ+それに基づく価値創造能力があることの発信→安定的レピュテーション。
- →ステークホルダごとの適切な認知の把握・要因分析が必要。
- 国内2大学でTGU事業担当者(国際担当副学長+RMユニット研究員)にインタビュー。コンセプトマップで因果関係を構造化。
- 九大RMユニット:国外広報を重視。
- 偏差値は国内レピュテーションサーベイの結果でもある(広大)。
- 情報発信ではステークホルダのセグメント化が必要。
- 学内:インターナルコミュニケーションで大学保有資源の共有。納得性あるデータで定期的に各ステージで対話。
- 海外:ランキング評価指標の改善。
2019/04/14
吉本圭一・坂巻文彩(2019)「大学における学修成果と質保証のための卒業生調査」『九州大学大学院教育学研究紀要』21,45-72
- ボローニャプロセス=プログラムの相互浸透性向上→質保証がプロセスからアウトカムへ。
- チューニング:一般的コンピテンスと専門分野別コンピテンスで学修成果を把握。
- →日本は学資力や参照基準を作成。
- ←教育プログラムにおける職業的な関連性を明示する点では分な実証的エビデンスの蓄積が不足。卒業後にそうした知識・技能などが 適切に活用されるのかどうか,検討の余地を残している。
- 「在学中の就業経験と学習内容の関連度」が高いほど「大学知識の職業での活用度」が高い(吉本 2001 CHEERS調査)。
- インターンシップ:「働き始める」「職場での学習」「現在の仕事の遂行」という職業生活において有効な準備となっている。
- 「職業統合的学習 work integrated learning」(Patrick 2009):カリキュラムを中心に構築したIS/PBL/SL。
- 米国の卒業生調査
- 30〜70年代:労働問題・キャリアが焦点。アウトカムアプローチ(仕事満足度、専攻と雇用分野の関連性、職場への移行)中心。
- 80〜:アウトカム+コンピテンシー(批判的思考力・対人関係・職業的スキル)
- 最近:+エンゲージメント
- 卒業生調査ウェブシステム:共同IR体制の卒業生調査
- 九大教育学部:職業統合的学習が有用。
2019/04/04
隠岐さや香(2018)『文系と理系はなぜ分かれたのか』星海社新書
- 啓蒙思想:普遍的な人間の理性を解放することで、人間は自由となり、自然の支配と社会の変革を実現していけるという考え方。
- フランスのアカデミー:自然科学は比較的自由な研究を許したが、人間社会に関する研究や思想は王国の栄光に役立つものでなければならなかった。
- 逆にイギリス・オランダ(新教を選んだ国):言論の自由が保障された。オランダは出版が自由だったため、政治・経済に関する出版と言論の場が確立していく。
- 百科全書:人間の3つの能力「記憶」「理性」「想像力」で学問を分類。
- ベルリン大学:国家からの学問の自由を掲げた。
- リービッヒの実験教育:均質で訓練された研究者集団を短期間で育成できた。一方で幅広い教養を身につけずに卒業する学生を増やした。
- 客観的な自然観=人間はバイアスの源、神を離れて人間中心の世界秩序を求める立場=人間は価値の源泉
- 文理の決定的場面:1910年代、中等教育について定めた第二次高等学校令第8条、行動学校高等科を文科と理科にする。大学入試準備段階で2つに分ける方式が定着。日本の大学が法学と工学の実務家養成を目的に作られ、その選抜機関として機能していたため。ドイツ=共通試験に受かればどの学部も選べる、英国エリート大学=数学から古典まで広い知識を競う。
- 国家建設と産業振興のための分野は国立大学、それ以外の価値観が入り込む分野は高い授業料が必要な私立大学。
- アカデミックキャピタリズム:大学経営の市場化・自己収入増加+高授業料と教育ローン。
2019/04/03
田村知子・村川雅弘・吉冨芳正・西岡加名恵(2016)『カリキュラムマネジメント・ハンドブック』ぎょうせい
- カリキュラムマネジメント
- 各学校が、学校の教育目標をよりよく達成するために、組織としてカリキュラムを創り、動かし、変えていく、継続的かつ発展的な、課題解決の営み。
- カリキュラムを主たる手段として、学校の課題を解決し、教育目標を達成していく営み。
- 学校経営と教育課程の編成・実施全体を広く視野に置いた概念。
- 3つの側面
- 教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと
- 教育内容の質の向上に向けて、子どもたちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。
- 教育内容と教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。
- カリキュラム
- 学校教育における児童生徒の経験の総体。計画、実施、学ばれたものを含めて広くとらえる。
- 教育課程
- 学校の教育活動全体の基幹となる計画。
- マネジメントの視点
- 目標設定、内容の組織、授業時数の配当。
2019/04/01
ピータース,G.(土屋光芳訳)(2007)『新制度論』芦書房
- 旧制度論
- 法律主義:法律が統治の中心的役割を果たす。
- 構造論:構造が行動を決定する。
- 全体論:法律を含めシステムを比較分析する。
- 歴史的分析
- 規範的分析:善い政府への関心。
- 新制度論:行動論と合理的選択論(=文脈主義、還元主義、功利主義、機能主義、道具主義)への批判として誕生。
- 新制度論のルーツはマーチ・オルセンの規範的制度論
- 制度は公式構造ではない。規範・ルール・理解の集合。一番重要なのはルーチン。
- 特に重要な概念:制度は「適切さの論理」を持つ傾向がある。(これは個人の行為を形成する結果の論理以上に行動に影響する。)
- ex. 消防士は死を覚悟しても炎に入る。
- 個人の行動の動機が制度的価値である時、行為は意図的であるが自由意志ではない。
- 制度が存在する→どの程度画一的である必要があるか?(ex. 組織文化は単一組織内に多層な文化がある。中には支配文化と直行するものもある。)
- 制度は制度を構成する社会から生まれる。個人は制度を結成する時、社会の一員であることによってあらかじめ社会化されている。
- 組織内の文化が均一になることはない(直行文化も適切さの源泉)。
- 合理的選択制度論
- 単一の実態があるかの議論。
- ルールとしての制度:ルールの利用を命令・禁止・許可の手段とみる。
- 制度=メンバーがその構造への帰属から引き出す便益と引き換えに遵守に合意したルールの集まり。
- 制度間、個人制度間の相互行為はPAモデル。
- 歴史的制度論
- 変動の予測能力がない。
- 組織の誕生時に行われた意思決定の絶対優位を擁護する傾向がある。
- 経験的制度論
- 社会学的制度論:合理的選択アプローチの代案
- 個体群生態学モデル:ニッチの存在の説明と、若すぎる年を取り過ぎた組織の消滅を説明した。
- 同型化:制度は意味体系。組織行動、組織内の個人行動は制度の意味内容とその象徴操作に依存する。
- 堆積化:今の慣行は過去に根がある。
- 制度は社会行動に安定と意味を与える認知・規範・規制の構造と活動からなる。
2019/03/20
Sarah Rose Cavanagh, (2019) How to Make Your Teaching More Engaging, The Chronicle of Higher Education
- Alexは高校時代に数学で苦労した経験がある。しかし、大学入学後のプレイスメントテストの結果、一般教育で基礎数学を必修とする判定を受けてしまう。期待を持って入学した大学なのに、新学期から不安感を抱えながらも、しぶしぶ数学のクラスを履修している。
- この学生に学んでもらうには、エンゲージメントが必要。これは4つの原則を守ること。(1)感情を利用する、(2)
- エンゲージメントはエンターテイメントではない。脳は認知だけで学習するのではなく感情とともに学習する。エンゲージメントは、成績を取る以上の意味がある課題を学生に与えること。
- 認知的領域は限界がある、感情をうまく使う。ではどうやるか?
- 1つの塊を15〜30分で教える。それぞれの導入にEmotional hookを使う。
- 学生自身に関連する課題・活動に取り組む。学生文化に精通しろというのではなく、生活に関連した課題を示す。たとえば、PHを教えるのに、なぜ人は水道水よりボトル水を選ぶのか?という問いを出して両者を味見させる。
- 教員の個性・パフォーマンスを活用する。学生は初年次授業で元気な先生の専攻を選ぶ傾向がある。よい感情はクラス内に容易に伝播する。学生は教員の身振りやアイコンタクトをよく見ている。ではどうやるか?
- 自分の授業を録画してみる。アイコンタクトだけ、身振りだけなど1つずつ試す。
- コミュニティを使う。人間は社会的動物であるため。
- 学生の名前を覚える。授業に貢献する機会をつくる。授業を共同プロジェクトにする(みんなで絵本を作るなど)。授業外で学生と会うのも効果的。
- 自分の考えの軌跡をストーリーで語る。
- 個人的な研究経験を語る。
2019/03/11
吉崎静夫(1988)「授業研究と教師教育(1)-教師の知識研究を媒介として」『教育方法学研究』13,11-17
- アメリカの教師の質向上の取り組み
- ニューヨーク・カーネギー社の8計画
- 教師に必要な知識・能力の高い基準を設定
- 専門職にふさわしい環境を用意できるよう学校を再構造化
- 教師集団を再構成、指導教師を導入
- 文理学士号保持者に教職課程を開く
- 教育大学院の開発
- マイノリティ支援
- 学業成績と教員報酬の連動
- 教員給与・昇進機会を他の専門職と競合的にする
- 大学の教職プログラム改革
- 教師教育を知的にしっかりさせる
- 講師、正教師、キャリア教師の3段階免許制度
- 教職試験を知的なものにする
- 大学と学校現場のつながりをつくり、教師教育や授業研究にエキスパート教師を活用する
- 学校を教師が仕事・学習をする場にする
- 日本でもアメリカでも、教師に必要とされる資質は何か、そのような資質はどのようなカリキュラムで育成されるか、そのような資質をどのような方法・基準で評価するかが教師教育の中心的研究課題。
- Shulmanの教師の知識領域の発展版
- 1:強化の中心的概念、概念間の相互関係、他の教材との関係の知識
- 2:導入・展開・まとめなどの授業構造、発見学習法などの学習指導法、授業におけるマネジメントやしつけなどの知識
- 3:一般的な発達段階における認知的・情意的特徴、個々の生徒の知的・人格的特性の知識
- A:教材+教授方法=ある教材を教えるときに使う説明・演示、概念の表現、例証などの知識
- B:内容+生徒=ある教材に対して生徒が持っている誤解やつまずきやすい部分の知識
- C:教授方法+生徒=さまざまな特性・ニーズを持つ生徒を教えたり動機づけるための知識
- D:内容+教授方法+生徒=生徒の誤りをただすための方法についての知識
2019/02/18
千草孝雄(2009)「新制度論研究序説」『駿河台法学』23(1), 63-80
- 以前の政治学の主たる問題は制度的・規範的問題。
- → 行動主義革命・合理的選択アプローチで政治学が変化:
- 反規範主義的バイアス:科学としての発展を強調するため
- 方法論的個人主義:研究の焦点が個人、効用最大化の仮定
- 入力主義(Inputism):行動主義=投票や利益集団行動を重視(=政府の形式的制度と制作プロセスはブラックボックス化され、アウトプットへの変換が不明確)。
- → 5つの特徴
- 文脈的:政治は社会の統合的な部分。社会から分割しない。
- 還元主義的:個人の行動の集合として見がち。
- 功利主義的:行動=個人的利益による。政治的行為者を義務に対応するものと見ない。
- 機能主義的:歴史=均衡到達への仕組み。不適合への関心低い。
- 道具主義的:政治=意思決定・資源配分。象徴・儀式への関心低い。
- マーチ・オルセンの制度:ルーチンの集合(規範、規則、理解)⇔ 形式的構造。
- 政治制度は役割と状況の間の観点における、相互に関連づけられた規定とルーチンの集合。
- 制度は手続きのレパートリーを持ち、その間で選択するルールを使う。
- 新制度論の考え方:
- 制度=ルール・役割・アイデンティティの形式的に限界づけられた枠組み。
- 選好に整合性ない。
- 制度的構造、役割、アイデンティティに基づく適正さの論理を強調。
- 適正さの論理:役割・ルールに基づく一方、状況にも基づく。
- 新制度論の展開→ゴミ箱モデル
2019/02/15
印南一路(1999)『すぐれた組織の意思決定』中央公論新社
- 組織にまつわる問題は全て意思決定の問題である。
- 初期の議論:経営=意思決定(合理主義的側面を強調)
- → 意思決定の改善:理想(規範)を明らかにする+現実の誤り(罠・癖)を明確にする
- 意思決定の特質を考えると、組織は何のために存在するかという本質的問題にいきつく(経営=意思決定、組織=意思決定の仕組み)。
- 意思決定は単なる選択でなく、高度な認知的活動。
- 意思決定は難しい:人間の理解の限界+情報は歪みがある(誇張・虚偽など)
- → 人は2つの認知モデルで意思決定を行う。
- 世界モデル(事実判断):何らかの単純化したモデル(こうなったらああなるという将来予測)
- 価値モデル(評価):価値要素内好み(車の色、就職する業界)と要素間好み(給与と安定性など)の2つで判断。
- → 優れた意思決定をする:
- 世界モデルを改善する(より現実の本質を捉えた世界モデルを持つ)
- 好みに忠実な意思決定をする
- ただし、完璧な選択肢は存在しない。
- 選択肢が現実化していない・入手不能な場合。
- 自分の本当の好みを認識していない(全ての属性を選択前に認識していない)。
- 目的に沿った意思決定をする
- 優れた選択肢を作る(選択肢は複数作るもの)
- できるだけ望ましいプロセスをとった意思決定をする
- 意思決定の結果が短気に観察できない場合、プロセスを重視する。
- できるだけ人間に起因するエラーを避ける意思決定をする。
- 組織の意思決定=合成的意思決定:個人・集団の意思決定が組織内で分業・統合され、構造化された意思決定。
- 権威・手続き・非公式コミュニケーションが利用される。各主体の意思決定は、その前段階でされた意思決定に依存している。
- 組織における人間は、動機づけられた意思決定人と見る。=2つの意思決定をする。
- 組織に属する個人は、参加するか否か、意欲・貢献レベルをどれだけ持つかという2つの(個人的)意思決定を行う(組織の意思決定ではない)。
- 意思決定の意図と効果を組織に向けて個人が行う意思決定をする(クレームを自分で処理するか上に取り次ぐか)。
- バーナード:管理者の役割はモラルを創造すること ← 組織の目的と個人の目的を一致させること ⇔ 組織と個人は基本的に利害が一致しないという前提がある。
- 意思決定は意思決定前提から引き出される(サイモン):
- 個人の認知する環境・外部世界は異なる → どれだけ現実を反映するかで意思決定の合理性が決まる → 影響力を行使して意思決定前提をマネジメントする。
- 外的プロセス:公式・非公式のコミュニケーションプロセス、特に権限に基づくコミュニケーションで影響を与える。
- 内的プロセス:あらかじめ望ましい心的態度、選択の基準、手続き、仕事のやり方を植えつけておく。
- 具体的な組織影響力(組織がピラミッド構造をしている理由でもある)
- 目標の設定
- 分業と専門化(個人を特定の注意に向けるよう限定する⇔コンフリクトの発生原因でもある→だから上長で調整する)
- 標準遂行手続きの設定(繰り返し問題の定型化)
- 権限システムの構築
- コミュニケーションシステムの構築
- これらによって、意思決定のスピードアップ、調整の効率化、個人の意思決定能力向上、意思決定プロセスの教育・訓練実施、新問題処理の時間確保をする。
- 意思決定における環境:それぞれが認知した環境。← 同じ環境でも認知が異なるから戦略が異なる。
- 戦略的意思決定=組織目的実現のための製品・市場ミックス選択に関する意思決定
- この意思決定の特徴:(1)構造化されていない問題を解く、(2)手法が適応的探索、(3)中長期の継続的意思決定、(4)学習が難しい意思決定(頻度が少ない、フィードバックが困難(不採用戦略の情報がない))、(5)政治的な意思決定の性格を帯びる
- 組織間関係を説明する理論:資源依存理論と取引コストアプローチ
- 取引コストアプローチの特徴:(1)経済活動は、主体間の活動を結合させる取引を基本とする制度である、(2)人に認知限界がある+機会主義発生の恐れある=意思決定には情報入手・交渉・監視のコストがかかる、(3)取引は組織間コストと組織内部コストの低い方に依存する。
- 組織間コストを下げる→相手組織を取り込む⇔官僚的コストはかかる
- 組織構造:環境との関係で論じられる→環境と構造の間に戦略という中間変数が置かれると、構造は戦略に依存することになる。
- これ以外の見方:(1)ワイク:環境は構成員が認知してはじめて環境になる(イナクトする)。(2)生き残ったものが良い構造。
- なぜ階層が増えるか?:(1)パーキンソンの法則(部下を作りたがる)、(2)動機づけのため。
- 組織慣性:意思決定プロセスが過度に構造化され、標準的な遂行自体が目的になり、変更に大きなエネルギーが必要になること。
- 官僚制の逆機能を緩和する方法:階層数を減らす=マトリックス・ネットワーク・チーム・フラット組織を使う。
- 日本の稟議制:本質は決裁プロセスのシリアル化。⇔ 本来はパラレル化が望ましい。
- コンセンサス重視の意思決定の1つである:決裁には時間がかかるが、一旦決まると抵抗が少なく実行が早い。
- 情報共有・動機づけからみて望ましい:押印した以上知らないではすまない。
- 共同の意思決定になる:責任を分散し、個人レベルに責任が下りないことに利便性がある。
- 記録性がある:多数の人のアイディアを文書に残せる(ただし、加筆修正が実際されているかは疑問)。
- → 問題はウェイティングタイム → 代理決裁・事後承諾を使う、電子化してパラレル化するなどで解決。
- 戦略的意思決定論の問題:組織文化と政治プロセスという2つを見落としている。
- 合理的なコミットをいつ打ち切るか?
- → 打ちきれないのには、エントラップメントに原因がある
- コストが見えにくい:(1)コストと便益の発生に時間的差がある(喫煙は後で影響する)、(2)コストの発生が確率的に小さいと感じる(危険運転)。
- サンクコスト:特に完成効果にとらわれる。
- フレーミング効果:損失にリスクを取りやすい(確実にもらえる500万円を選ぶのに、50%で1000万円の損を選んでしまう)。
- 願望思考:予測と自分の期待を混同してしまう。
- 自己正当化・確証バイアス:第三者が反証することで抑えられる。
- 組織的社会的理由:一貫性のある行動をとりたい(印象操作)。
- 競争の不合理性:競争があるとメンツにこだわってしまう。
- → 罠から抜け出す
- (1)事前に撤退ラインを決めておく、(2)過去の投資を判断に入れない、(3)現在の環境に自問自答する、(4)第三者の客観的な判断を仰ぐ、(5)メンツにこだわらず、競争相手と比較しない、(6)結果ではなくプロセスで意思決定を評価する、(7)否定的な結果の脅威をなくす
- 合目的な組織:組織の存続のための目標体系は作れるが、組織均衡を図る具体的な手段になると演繹的に目標を記述できない。だからコンフリクトは起こる。
- ただし目的の体系を持つことは、交渉を政治にせずに組織均衡を実現するための交渉にできる(交渉をガイドできる)。
- 組織倫理が重要な理由:(1)組織は社会システムの一部、(2)安定経営のため、(3)戦略上有利、(4)規制緩和への対応。
- 倫理的かどうかは状況による:
- 理想主義軸(悲観・理想)×絶対主義軸(相対・絶対)
- 悲観・相対=主観主義派(普遍的モラルない、モラルは個人が判断)
- 理想・相対=状況派(普遍的モラルない、個人の行動を分析せよ、噓も方便)
- 悲観・絶対=例外派(普遍的モラルあるが完全でない、噓も方便)
- 理想・絶対=絶対主義派(普遍的モラルに従え、例外はない、嘘は嘘)
- 組織文化は意思決定基準である(意思決定前提のひとつ)。
- 安定装置でもあり、組織慣性の重要な要素(基本前提のこと)。
- 組織の真理モデル:擬似的な真理(科学的な実証された真理ではない)。
- 真理モデルは意思決定に影響を与えられる:〇〇第一主義など前提にすることで、複雑な意思決定を簡単にできる。
- 真理モデルは、世界を単純化し、不安を解消し、合理的な行動を取れるという幻想を強化できる。
- 組織文化変革のサイクル:解凍・認知的再構成・固定化。
- 組織成長に応じた文化変容モデル:
- 初期段階:(1)一般・特殊進化による漸進的変容、(2)組織診断による洞察を通じた自律的変容、(3)組織なの文化的ハイブリッド者の昇進による変容
- 発展期:(4)特定の下位文化者の昇進による変容、(5)組織開発プロジェクトと並行学習構造の創造による変容、(6)技術的誘因による文化の解凍と変容
- 成熟・衰退期:(7)外部人材の投入による変容、(8)好かんだると神話の崩壊による解凍、(9)強制的方法による変容、(10)方向転換による変容、(11)組織の破壊と再生
- 組織文化は変わりにくいと強要されすぎ:人間の認知パターンはそれほど固定的ではない。
- シャインの組織文化の源:(1)リーダーの影響、(2)組織の歴史・伝統、(3)技術・製品・サービス、(4)業界構造と競争、(5)顧客、(6)組織の期待、(7)情報システムと管理システム、(8)規制と組織環境、(9)手続きと方針、(10)報酬う制度と評価システム、(11)組織構造と資源、(12)組織目的・価値・信条。
- 組織変革の阻害要因:1と2はトップの介入である程度対応可能、3は制度設計で対応可能、4はコンフリクトマネジメントが必要(→まとめて組織慣性)。
- (1)変革の必要性を認識できない:成功の呪縛、緩慢な危機(ゆでがえる)
- (2)変革の必要性を認めない:心理的安全がないため反証データが隠される
- (3)組織制度が変革と整合性を持っていない(笛吹けど踊らず):減点主義人事で企画提案。
- (4)変革が利害関係者の利益に一致しない。
- 組織にコンフリクトは不可避:コンフリクトは組織変革の契機。
- ボンディのコンフリクトモデル
- 潜在的なコンフリクト:組織構造の細分化など
- → 認知されたコンフリクト:部門間で異なる原因の指摘
- → 感じられたコンフリクト:感情的なコンフリクトに発展
- → 明白なコンフリクト:政治戦術が使われる(公式に批判、相互にサボタージュなど)
- → コンフリクトの余波:解決が十分でないと対立を残す
- → 潜在的なコンフリクト
- コンフリクトの解決にパワーが使われる時、コンフリクト解決の手段としてパワーの獲得が目的になる=パワーが組織政治になる。
- パワーの源泉:(1)権威・権限、(2)資源のコントロール、(3)情報のコントロール、専門知識、代替不可能生、(4)不確実性への対処能力、(5)同盟関係と意思決定前提の操作
- パワー行使の22の戦術:アジェンダコントロール、曖昧さの利用、瀬戸際政策、カリスマ利用、同盟形成、反対派の引き入れ、意思決定前提のコントロール、外部専門家の利用、好ましいイメージ形成、正当化コントロール、恩義の背負いこみ、組織的配置、プロアクティビティ、報償・しっぺ返し、合理化、資源配分、報酬施与、儀式主義、代理の利用、シンボルの利用、能力開発と訓練、訓練と方向づけ。
- 組織政治のパワーバランスを保つ:トップが政治に明け暮れるのを防ぐには、トップマネジメントの組織自体を変えてしまう。(役員を減らす、外部役員を増やすなど)。
- 優れた組織とは、自己変革能力と自浄能力を備えた組織であり、すぐれた組織の意思決定とは自己の存続のために絶えず組織の真理モデルの有効性をチェックし、政治プロセスを乗り越えながら、必要な組織変革を行うための合理的な意思決定である。
2019/02/10
吉田文(2012)「社会人の再教育と経営系専門職大学院」『日本生涯教育学会年報』33,3-21
- 社会人が大学院へ戻る目的:専門知識獲得、広い知識・教養。給料・役職、企業は低い。
- 仕事をすることで十分に燃焼できないときに再考する場として大学院が位置づけられる(個人的な問題解決の手段=仕事に不満がない・自己への漠たる不満)。
- 仕事の継続希望も多いが在学中に転職希望が多くなる。
- 学習内容がストレートに仕事に役立つことはないが、考え方、大局的なものの見方などのメタレベルで効果がある。
- MBA取得者に対する期待と能力の評価の差が大きいものは、意思決定力、リーダーシップ力、戦略的思考、問題解決能力、分析的思考力の順。
- 一方で、企業は大学院教育を評価する仕組みを持っていない。
- 専門職大学院=建前上、理論と実践の融合。← 院生からの評価は高いが、企業からの評価は低いというギャップ。
- 教育方法の問題:大学=ゼミ・少人数教育、企業=競争でもまれる。→ コースワークの充実をすべき(?)。
- 教員の問題:実務家教員と研究者教員が乖離(⇔ 欧米は実務家も研究する)。
2019/02/08
Cousin, G. (2006) "An introduction to threshold concepts" Planet, 17.
- Threshold concept approach:Less is more approach
- どうやって見つけるか?の5側面。
- 観の転換をもたらすもの:紅茶にミルクを入れて冷やす事例。
- いったん理解されると忘れにくい。
- これまで関連しないと思っていたものとの関連がわかる統合性がある。
- 一定の境界性があり、新しい領域へ踏み出すものである。
- ある程度難解で、直感に反したり一見不整合に見えたりするもの。
- TCを学ぶ過程では、学校・職業や子供・大人のような閾値・境界を往復する学習になる。
- 授業をどう設計するか?
- 重要なコンセプトにフォーカスする。
- 学生がわかりにくい場所がどこかをよく聞く。
- 学生が誤解したり失敗することを許容するスペースをとる。
- 繰り返し学べるようにする。
2019/02/06
Wardle, E. (2007) "Understanding ‘Transfer’ from FYC: Preliminary Results of a Longitudinal Study," Writing Program Administration, 31(1-2), 65-85
- 学生がエンゲージされるレポート課題
- 単一の正解があるものでなく、Authenticな問題。
- 教室外・ライティング外でも考えてしまう問題。
- 学生にOwnershipが委ねられている。
- 課題が事実の要約や受け売りでない。
- 課題に取り組むことが学生の興味や将来に関連していること。
- 課題が容易でなくある程度の難度があり、成果に高い期待を寄せられる。
- 課題が授業内容と関連している。
- 課題の目的が明確(goal-oriented)。
- 課題が、学生にとって何をしなければならないかが明確。
2019/02/04
草原克豪(2008)『日本の大学制度』弘文堂
- アメリカの学部は、高等専門学校相当。アメリカの大学院を含んでいた日本の旧制大学から大学院を切り落とした形になった。大学院を作るなら、旧制大学を基盤とするものでならなかったが、そうした基盤を持たずに大学院という制度だけが発足した。大学一元化の問題はここで、旧制高校の廃止より、旧制大学を学部レベル押し込めたことで、課程生大学院としての実態ある大学づくりの機会を逃したことが深刻。
- 大学制度一元化推進主体は、GHQのCIE。教育使節団でも教育刷新委員会でもない。それは、旧制高校(戦前指導者養成の中核)を存続させないため。
- 本来設置基準は、校地、校舎、定員、資産などの基準。教育課程は含まれない。CIEはこれでは全ての大学で一般教育が行われないと考え、大学基準協会の基準を設置認可基準として用いて、大学に義務づけた。
- 日本はアメリカみたいな4年リベラルアーツを考えていなかった。専門教育中心を変えずに、前期課程として一般教育をいれたが、理念を十分理解しなかったので、一般と専門を分断してしまった。修士課程も学部に変わる専門教育の場とは、当時の理解を超える発想だった。結局、学部から独立した組織としての実態が伴わないまま、大学院が形だけ発足した。
- 大学管理法が不成立となり、暫定的な教授会の権限がそのまま定着し、学部自治の慣行が全新制大学に受け継がれた。
- 内閣に直属する教育系審議会設置は、中曽根臨調(1984)がはじめて。
- 認証評価は目的が明確でない。設置認可に対して適格性認定は矛盾する。だから、教育研究水準の向上という目的がでてきてしまった。
- 政府主導で多様な大学を一律の基準で評価する制度は、経営者を学生や社会よりも監督官庁の方に向けさせ、結果的に大学の画一化をもたらす。
2019/02/03
中園篤典・谷川裕稔(2018)『アクティブラーニング批判的入門』ナカニシヤ出版
- 広義のAL(願望・価値観を除いた)の定義:授業における学習者の心的(内的)動きの生じる学び。
- 制御型AL:学習者の内面の自由を保障しつつ、外面的に学習者を制御することにより、学生を授業に参与させるように導くALの授業形式。
- 従来のALは、教員のリーダーシップを強調していない。
- 制御型=学生に何をすべきか(教員が何を要求しているか)を明示する授業。
- AL授業の問題=一般意志(こうすべきであるという空気)
- 教室に学生の意思を超えた一般意志が蔓延し、学習者は自我を抑えて、それに合わせて行動している状態。
- 成績評価を伴うと、学生は抵抗が面倒になり、クラスで良いとされる一般意志に合わせて行動するようになる。
- 学修=主体的態度の学び、学習=主体的でない学びという解釈は、学習が有する意味を無視した区分。
- AL成立の要件:(1)時間がかかる、(2)基礎知識が必須、(3)学ぶ意思・欲求・切実さが明確。
- 発問・指示・演示・説明・助言
- ディベートの3分類:(1)事実論題(論題が事実か否か)、(2)価値論題(事実に対する価値判断)、(3)政策論題(ある新しいことを行うべきか否か)。
2019/01/21
安藤史江・杉原浩志(2011)「組織はどのようにアンラーニングするのか?」『組織科学』44(3),5-20
- 環境変化が大きいほど、大規模な組織アンラーニングの必要性は増し、旗振り役としてのトップに対する期待も高くなる。
- ← トップ主導での取り組みが望ましい組織アンラーニングをどのように可能にするのかのメカニズムは不明。
- 組織アンラーニング(組織の学習棄却):時代遅れになったり組織や人を誤った方向に導く知識を、組織が捨て去るプロセス(Hedberg 1981)。
- 規範、価値、準拠枠、認知構造、世界観、基本的仮定も対象。
- これまでの研究は、ルーチンより深く埋め込まれた対象物に向けがち。何を捨て去るかについては議論されていない。
- 棄却と置き換えは別の活動と考える。(← ここでは棄却のみをアンラーニングとする)
- 棄却は置き換えの基盤になるが、可能性を高めるに過ぎない。
- 棄却を伴わない知識獲得も多い。
- 棄却と置き換えが同時に行われる場合もある。
- 棄却されても元の状態に戻り、置き換えられないこともある。
- Akgün et al.(2007):アンラーニングの対象はルーチンと信念(=使用理論 ⇔ 信奉理論(組織が表向き掲げる概念))。
- Tsang and Zahra (2008):ルーチンこそ、組織の行動的な側面と認知的側面を統合しうる概念。
- Feldman and Pentland(2003):表向き(原理原則的)ルーチンと、遂行的(実際に使用され、特定の場所や時間、行動に粘着性がある)ルーチのがあり、後者が棄却されないと元に戻ってしまう。
- 組織の共有されたメンタルモデル:組織ルーチン+世界観(組織価値、組織のものの見方)(Kim 1993)。→ 組織の共有されたメンタルモデルの変化とメンバー個人のメンタルモデルの変化がリンクするほど、置き換えが生じやすくなる。
- ← アンラーニングのプロセスを深く記述すると、個人の新年の変化と組織アンラーニングの関係をみなければならない。
- 3つのアンラーニング対象:(1)表向きの価値・ルーチン(慣性弱い)、(2)遂行的な価値・ルーチン(慣性強い)、(3)メンバーのメンタルモデル(組織アンラーニングの成否を握る)
- 組織はこの3つの対象全ての棄却を同時に行うのか?段階的なのか?後者ならどのようなメカニズムか?
- トップのイニシアティブ研究は、アンラーニング成立との関係をブラックボックスにしてきた。
- 事例の考察
- 段階的アンラーニング:トップ交代→表向き価値・ルーチンの棄却、従業員の新体制への信頼感希薄・受け身のまま→表向き価値観変化が成立、遂行的価値・ルーチンの変化発生→一般職員変化に施設長が気づいて棄却→遂行的価値・ルーチン下で学習活動活発化、トップのレッテル貼りから脱却。
- 段階的=足踏みがあった:一般職と管理職で棄却レベルが揃った時に変質が生じた。
- 先行研究でも棄却が元に戻る時は、ミドルが自己防衛意識から脱却できず、規則権益を守ろうとした時。
- 直接の上位層の棄却が重要。
- 階層間でアンラーニングの差がギャップとして現れ、それを解決するために段階的になった。
2019/01/07
谷川嘉浩(2017)「効果的なファカルティ・ディベロップメントの条件を考察する」『人間・環境学』26,107-118
- 適応よりも適応力(デューイ):現状に安定しない未熟性が、その力をつける主要な条件。
- 柔軟な適応力の涵養においては、注意を援用できる。
- 自動的注意:自己を機械的に没入させる注意(意識的な努力は一切ない)
- 反省的注意:目前の対象と紐づく目標と、その背後にある間接的目的を前提とする。
- そこには、間接的目的に紐づいた関心(対象と南からの繋がりの感覚を生じさせるもの)が必要。
- → 仕事(社会生活の営みを実験室で再現する活動)を教育に持ち込むべき。
- 注意を向けると対象に関する感覚が生じる。
- 正常な感覚は、なすべき活動を方向づける手がかりとして働く(=反省的な探求の方向性を決める手かがり → 感覚の相対性への注意が需要)⇔ 教室内の感覚観察:感覚の享受が自己目的化。
- 感覚:活動を方向づける手がかり ⇔ 思考:活動の目的・計画、実現の手段に関する手がかり → 感覚と思考の協働で、持続的な活動になる(問いや疑問を通じて自分の行為と想像をコントロールする)。
- クラフツマン(セネット):各々の対象に没入しながらも、遠くの目的に配慮しつつ、反省的に試行錯誤する態度が見出せる人。
- 教材への関心があれば、自動的注意は生じるが、反省的注意は生じない。教材に固有の魅力が必要。⇔ 講義を面白くしたり罰則をつけたりすることで注意を作る。
- 教材を無理に興味深く見せようとしない。実在する繋がりを実感させることで、教材を面白くすることが教師の役割。
- FDで涵養すべきものは、反省的注意を持続的に働かせる習慣。
- それには、共同体を要素の加算ではなく、何らかの全体論的な見方が必要。
2019/01/06
松下佳代(2017)「学力とは」『日本労働研究雑誌』681,55-57
- 学力論争に見る学力論
- 第1期:読み・書き・計算などの「基礎学力」と新教育が めざす「問題解決能力」との関係、戦後新教育がもたらした学力低下への批判とそれへの反論が争点。
- 第2期:全国学力テスト(1956〜1966)で計測されるもの=学力ではなく、計測が意味をもつ条件として教育内容の系統化が不可欠である主張。広岡の「知識・技能」「態度」の三層学力モデルにおいて態度が中核に置かれ、態度への教育的介入の是非をめぐる態度主義論争。
- 第3期:高度経済成長による生活や地域の変化・科学技術の進歩にあわせた「教育内容の現代化」→ 学力形成を人格発達の中に位置づけることを主張する立場 VS 学力形成を教育内容(科学的概念)の獲得に限定する立場。言い換えると、学力の主体的側面(学力が主体においていかに形成されるのか)を重視する立場 VS 学力の客体的側面(学力の中身として何を教えるのか)を重視する立場の対立。
- 第4期:新学力観(=社会の変化に対応していける「自己教育力の育成」への転換)をめぐる論争:「関心・意欲・態度」を評価の観点の最上位にする立場 VS 基礎的な知識・技能の重要性を主張する立場 or 批判的な学び方の学習を主 張する立場(学力より学びに焦点化)。
- 第5期:学力水準の低下・学力格差の拡大:本当に低下?その要因は?
- 学力概念に関する立場
- 政策用語としての学力をそのまま受容し使用する。
- 学力を限定的に使用し、学力データにとどめるか、学びに焦点化する。
- 学力の多義性や曖昧さの問題を視野に入れながら、その肥大化をコントロールする。
- 学力は構成概念(実在しない)
- 教育社会学は、学力データと学校内外の変数をつなぎ、格差の形成要因や 社会的影響を見た。
- 学力そのものにはふみこまず、能力シグナルに議論を限定することで成功を収めた。
- 学力の定義と何らかのモデルがなければ、学力データの前提となっている学力調査をデザインすることすらできない。
- 教育社会学や教育経済学は事実を扱う学問であるの に対し、教育学は事実だけでなく価値も扱う学問。
- 教育学は、さまざまな能力の中で何を学力をみなすべきなのか、何を測定や評価の対象とすべきなのか、という価値に関わる議論から逃れられない。
2019/01/04
山内祐平(2018)「教育工学とアクティブラーニング」『日本教育工学会論文誌』
- ALの定義:読解・議論・作文などの活動において,分析・統合・評価といった高次思考過程への関与によって,聴講と比較して積極的に参加する学習。
- ALの方法
- レベル1:知識の共有と反芻に関する方法:ミニットペーパーなど
- レベル2:葛藤と知識創出に関する方法:ジグソー法など
- レベル3:問題の設定と解決に関する方法:PBLなど
- アメリカ高等教育でのALの意味:多様な学生の学習成立のための学習保障
- ⇔ 日本:時代に対応した高度な能力を育てるための方法(=レベル3)
- 今後の研究課題
- 授業:単元・科目単位の研究のみで,それらをどうつなげてカリキュラムの質を担保するかの研究がない。授業設計に必要な能力や育成方法,教師の成長研究もない。
- 評価:高次思考過程が学習者に内面化され,他の領域に転移できるようになっているかについて評価する方法,社会情動的スキルに関する評価研究がない。
- 環境:環境と学習活動のセットで成果を確認する研究はあるが,空間が持つアフォーダンスと生起する行為の相互関係に着目するミクロな研究がない。
- 支援:教員の専門性向上に関する体系的な研究がない。
2019/01/02
塩野宏(2006)「国立大学法人について」『日本學士院紀要』60(2), 85-83
- 経営協議会と教育研究評議会は法人の組織で、審議機関≠意思決定機関。従前の評議会方式とは違う。教授会は学校教育法上の大学の機関。
- 学長と別に法人の長を置くと、外部権力の介入の余地を残す。
- 法人と国の関与
- 法人化によって、法人と国の関係は法律関係になった=大学の業務に関する国の行政的関与について争いが生じた場合、裁判上の救済を求められる。
- 法人法の規律の仕方から考えて、権力的関与は法理の根拠が必要。関与法定主義が採用されていると解釈でき、大学自治の観念に適合的。個別の関与手段には、学長任命権、中期目標策定・認可、大学評価権、財政権がある。
- 今後の関与手法:どのような評価基準で大学評価されるか。委員が自己見解に固執しても、実質が文科省に委ねられても、大学の方向を左右する。
- 大学が個性を発揮する:法人法で達成するものでないが、規律密度の薄いため促進された。
- ただし、一般に日本の行政法規は規律密度が薄い。これは、行政の裁量制確保として批判される。しかし、大学については、大学の裁量とみることもできる。
登録:
コメント (Atom)





