2019/05/12

羽田貴史(2019)『大学の組織とガバナンス』東信堂


  • 高等教育の組織に関する議論の問題
    • ガバナンスと組織を分けて論じる
      • 大学の組織構造の二重性:水平的学術機構・階層的管理構造(Peterson 2007)。
      • 70以前:官僚制モデル(閉鎖組織モデル)→70年代:オープンシステム→80年代:文化モデル・マトリクスモデル・サイバネティックモデル→企業家モデル(資源減少による)。
    • 組織構造とガバナンスの相互依存性を論じていない。
    • ガバナンスとマネジメントを区別していない。
      • ガバナンス:権限と責任の体系
      • マネジメント:ガバナンス構造のもとで目的を達成する作用
      • →組織パフォーマンスを改善したい:権限と責任を組み替えればよいか?運営手法を改革すればよいか?で異なる。
    • 普遍的に有効なガバナンスモデルはない。
  • マネジメントの課題をガバナンスで解決する主張の繰り返しが問題。
  • 組織が効率的に作動しないのは、問題を分割して把握し、断片化して扱うため(センゲ)。



  • Peterson & Mots(1987)
    • ガバナンス:意思決定の構造とプロセス
    • マネジメント:決定を実行し、職務を果たす構造とプロセス
    • リーダーシップ:個人が決定に影響を与える構造(地位・組織・役割)とプロセス
  • クラークのトライアングルモデル
    • 業務の特質に応じた統合と信念が理論的根拠。機関内の各階層で異なる価値体系が行動様式を決定する。⇔ システムレベルでの市場統制への移行を根拠づけるものと理解されがちだが。
  • 大学と営利企業の違い:教員と職員の役割が区分され、権限と責任が分担されていること(Bess & Dee 2012)。
  • 今後の研究課題
    • 複雑系組織としての組織研究:単一原理と考えるべきでない。さまんざまなコンフリクトを処理するマネジメント論の構築が必要。
    • マネジメントの多様性:大学は二重の権限体系を持たざるを得ない。この側面がシェアドガバナンスと表現されている。
    • グローバル社会は国民国家の弱体化をもたらす=市民教育の再構築が求められている。日本の高等教育はこれを研究していない。
    • 教育マネジメントの研究:正課中心からキャンパス全体の学習経験への転換。
    • 学修成果測定=高等教育の画一化・標準化をもたらし、学生のプライバシーを危うくする。
    • 認知科学、学生発達理論研究が不足。



  • 組織分析には、(1)業務と組織の関係性、(2)構造、(3)ガバナンスの3つを包括する理論が必要。
  • Clarkトライアングルモデル:システムレベルの登記構造の類型ではない。機関の各レベルで権威構造が異なることを示したもの(講座レベル=専門・個人・同僚支配、機関レベル=理事会権威・官僚性的権威が機能する、2つのレベルでは統合の要因がことなる)。
  • 優れたマネジメント:構成員のモチベーションを高め、能力を引き出し、組織の価値を共有させるマネジメント。
  • FDに組織社会性開発が欠落している:組織改革の必要性を認めながら、身体化された行動様式が裏切る状況→多様な組織移行モデルが提示されるべき。単に教育研究組織分離をすればいいというものではない。



  • 国立大学法人法:法人の組織・運営を定める法律。国立大学の組織や活動を直接定める法律ではない。私立学校法も同じ。大学(教育研究組織)は、学校教育法などに基づき、各法人が学則で定める。
  • Clarkの企業的大学の5つの特徴
    • 強化された運営コアの成立:企業モデルの大学運営、学長への権限集中。
    • 周辺組織の発展:学部中心→外部連携組織中心(&マトリクス化)
    • 基盤となる自由裁量資金の保有:交付金中心→外部資金中心
    • 中心地の促進:企業的になりやすい分野(理系など)を促進、文系軽視、企業的性格は学内に不均等に現れる。
    • 統合された企業的信念:これらの思想が信念となり、文化として大学内で正当化され、再生産されていく。
  • 集権的分権化:同僚制の大学に企業的執行体制が浸透→大学への分権化と大学内の分権化が進む=資源配分がパフォーマンスベースになる→あるユニットの成功が他のユニットの不成功をもたらす。
    • つまり、中間組織で分権化が進むと、組織内の資源配分の不均等が進み、その不均衡を是正するために機関レベルの強力な集権化が必要になる。
    • → 内部組織にインセンティブと権限を与えると同時に、中央の影響力を残すシステムが必要。



  • 職員の専門職化論
    • ジェネラリストは育たない(教員がそうであるように)。
    • 教員を雑務から解放するという論理は、ユネスコの地位勧告に矛盾する。
    • 大学教員の参加が不効率という根拠はない。
    • 教員にありすぎるものが職員になく、職員にありすぎるものが教員にない。
      • 教員の考えるよい管理者=自分の思考様式にあった組織を作る、規則に縛られずに活動を思いつく
      • 職員の考えるよい管理者=規則を守る、リスクを比較衡量する
      • →いまのまま職員の専門性を高めると、学長の思いつきを具体化するのがよい職員になってしまう。
      • →大学管理者としての教員を見直してから職員の管理者を考えるべき。



  • 職員論の問題
    • 教員支配と職員という構図を過剰に強調:事務組織は実質事務局長が統括し、学長も権限が及ばないのが実態。
    • 教育・研究事項が教員の責任で決定されるのはおかしいことではない。
    • 専門化を万能処方箋とする:セクショナリズム、特権化などの課題を考えていない。
    • 人事制度と一体に論じなければ、職員の役割や専門性を具体的に考えられない。
    • 新たな価値を生み出す現場の在り方として職員論が進められていない。