渡辺伊織(2019)「大学ガバナンスの概念に関する試行的検討」『大学経営政策研究』9,213-228
- 産業界・政府の考えるガバナンス ≠ 大学人が考えるガバナンス
- 政治学・行政学:
- ガバメント:統治の主体に着目する語(単一の統治機構を表す語)
- → 統治に関わるアクターの拡大 → 統治の関心がプロセス(アクター間の調整)に移る = ガバメントからガバナンスへ
- 経営学:
- ガバナンス ≒ コーポレートガバナンス
- 狭義の意味:企業内の内部統制システムやその構築(=PAによる監視・統制) → 関心がプロセスへ広がる
- 大学:
- 内的な政治的利害関係から、高等教育形成に決定的な役割をはたす、より広い政治的ダイナミクスや政策形成へと移行(Gumport 2007)
- 同僚性と連邦国家的性格による内的多様性が重要
- Kerr(1963)のマルチバーシティ:ユニバーサル化で様々なコミュニティを内包することで一貫性が低くなった = マルチバーシティ内の独自の価値観を持った多様なコミュニティの活動に共通点なし
- ガバナンスの主体:AAUP 1966宣言(教員団の大きい影響力)⇔ 2015 学校教育法・国立大学法人法改正
- → 大学組織モデル:クローズドシステムからオープンシステムと考えらえるようになった = 学外の多様性やステークホルダの存在が強く意識されるようになった(政治学・行政学、経営学と似ている)。
- 両角(2018):ガバナンス=意思決定の構造とプロセス、マネジメント=意思決定を実施するための構造とプロセス、リーダーシップ=個人が意思決定に影響を与えようとする構造とプロセス
- 共通点:組織内部の多様性に根本的関心がある
- → ガバナンス概念を支える重要な要素
- 多様性:特に内的多様性
- 意思決定:問題の認識と解決策の選択
- 調整:多様性のある組織を方向付ける
- ダイナミクス:意思決定のプロセスに注目する
- ガバナンスは多様性を内包する概念 ⇔ トップダウンという語との併用は矛盾になる
- 意思決定の研究:規範的(良いとされる意思決定を達成する方法を説く)と記述的(人間が実際に行う意思決定を説明する)がある
- 集団的意思決定:定型的と非定型的がある
- 意思決定の重要なモデル:IDC(Simon 1947、Intelligence-design-choice)
- 良い意思決定の見方(印南 1997):質、スピード、満足度・受容度(3つのバランスをどの程度求めるかは問題によって異なる)
- 限定合理性への対応:(1)プロセスの洗練化、(2)集団化による認知能力の拡大
- (1)適切なメタ意思決定が必要(=プロセスや方法に関する意思決定、意思決定の目的設定を含む)
- (2)メンバーの異質性が異なる側面から問題を捉え、認知を変革することで良い意思決定に至る
- ガバナンスと意思決定は一体的に捉えるべき:ガバナンスの成果=意思決定、実際の意思決定=ガバナンスを構築・改善する材料