安藤史江・浅井秀明・伊藤秀仁・杉原浩志・浦倫彰(2017)『組織変革のレバレッジ: 困難が跳躍に変わるメカニズム』白桃書房
- 組織変革:組織の既存資源や要素を最大限にいかしつつ、その結合の仕方を変えることによって新たな価値を生み出すべく、内外整合性が損なわれたAという状態からBという状態へ不連続な変化を遂げること、その上でその変化を定着させること。その移行は、均等なペースで進まず、遅々として進まない時期を経て跳躍を経ると加速度的・拡張的に進行する。
- 学習:経験によって生じる比較的永続的な変化(実森・中島 2000)。
- 不連続な変化が起きても一時的なら組織学習も組織変革も成立したとはみなさない。
- 組織変革(組織学習)による成果には価値判断は含まない。
- Huber(1991)の組織学習:情報処理を通じて、学習主体の潜在的な行動の範囲が変化したとき、主体は学習したとみなす。
- 組織変革の駆動力:(1)システムの不安定化(不安定状態を解消しようと変革の必要性が知覚される)、(2)慣性(=ルーチン・価値観:慣性の克服を目指して変革が志向される)。
- 組織変化には大きく行動面と認知面の2種類の変化がある(Fiol & Lyles 1985)。
- 行動面が変化しても認知面が変化しなければ組織学習ではない。
- 組織変化を分類する次元にはさらにペース(速度・進め方)がある(Greenwood & Hinings 1996)。
- 漸進的であっても不連続な変化や、突発的だが連続的な変化はありえる。
- 見落としがちな2つの視点
- 適応プロセスと変革プロセスの境界はあいまいで見極めにくい(跳躍前の適応プロセスは変革プロセスとは言いがたいが、区別も明確にできない)。
- 同じ要素が正反対の作用をする(組織を取り巻く要因は善悪が分けられない、適応しすぎれば失敗することもある)。
- モメンタム研究:跳躍のメカニズムを説明する可能性→不十分:豊富な知見があっても、最終的に偶然任せ。
- McCall(1998)のリーダーシップ研究:量子的飛躍を遂げた人には、成長させる経験が確認できた→誰にいつどのような経験を積ませるか、その経験を確実に学習につなげる触媒まで考慮したメカニズムの理解・構築・運営が不可欠。
- 組織変革を妨げる学習障害
- メンバーの心理的側面・感情が障害になると指摘する研究は多い(10か条、7つの学習障害など)。
- システムの影響が少なくないという指摘もある(OIシステムとOIIシステム)。
- 変革に適合的な使用理論(メンバーの行動を支配する理論)があっても、組織システムにそれを妨げる使用理論があると、システムに引きずられた認知や行動を取る。(使用理論⇔信奉理論:組織が表向き掲げる)。
- 学習する組織論=変革実現の阻害要因は認知面。→変革準備フェーズにフォーカスしている可能性。
- 明確な手順を強調する研究も多い(Rogersの5段階など)。
- 跳躍のメカニズム:システム思考におけるレバレッジが参考になる。
- システム思考における物事の因果関係:(1)自己強化型ループ(最初の状態を強化するループ)、(2)バランス型ループ(循環の過程でプラスもマイナスももたらし、全体としての安定をもたらすループ)がある。
- レバレッジポイント:バランスループにおけるマイナス点(添乗員の増加→添乗員の質低下)=組織がよかれと思って行ったことが業績の悪化をもたらす。
- レパレッジポイントは、好→悪も悪→好の循環も両方ある。
- 適応段階と実現段階の間を連結する方向転換器があるのではないか。
- スイッチを探索するための4つの着目点としての緊張関係(パラドックス)
- 学習:調整、再生、変革のために努力によって生じる緊張関係
- 組織化:競争と協調、方向付けとエンパワメント、統制と柔軟性など、組織化に関する緊張関係
- 実施:多数の利害関係者によって生じる、目標としての組織の成功に関する緊張関係
- 所属:アイデンティティによって生じる、個人と組織との関係、価値や役割との間の緊張関係