2019/05/13

市川昭午(2004)「高等教育の理論を求めてー天野・喜多村両氏に学ぶ」『高等教育研究紀要』19,262-274


  • 高等教育研究3つの疑問
    • 現実から出発しなかった:大学紛争を無視(内部からの改革運動という希有な事例にもかかわらず)。大学とは何であるかという基本的な問いに答えられない。
    • 理論があるのか:研究が蓄積されたにもかかわらず。政策にグランドデザインがないという前に、グランドセオリーがない。
      • トロウのエリート・マス・ユニバーサルが有名。
    • 論争が乏しい:例えば、女子教育の存在理由など議論されてしかるべき。学会でも論争がない。
  • 歴史と比較の2つの視点は無視できない。
  • 天野歴史研究の特徴
    • 旧制専門学校を高等教育の主流ととらえる(旧制高校・帝国大学を正当とする見方と異なる)。
    • 文部省所管の機関だけを対象としている。
    • 戦時期・大学紛争期の分析を避けている。
    • アメリカを重視して、これを基準に発言。
  • 喜多村アメリカ研究の特徴
    • アメリカを理想的・理念的モデルと捉えている。
    • 日本が遅れているとしながら、どう改善するかを示さない。
    • アメリカを将来予測の目安にしている。
  • 重要な論点
    • システム論:高等教育システムは社会に開かれているべき⇔サブシステムだから完全閉鎖はあり得ない&開かれすぎて自律性を失い、システムといえなくなる方が問題。
    • 学校化論:教育不在を批判・大学の学校化の必要性を強調⇔研究の自由を制約する&教育に力を入れたからといって学生が勉強するようになる保証はない。
    • 自己規制論:外部介入を避けるため大学は自ら変革すべき⇔大学評価の理論も方法も確立されていない。
    • 企業体化論:大学が企業体化することは避けられない⇔既に企業化している。
    • 未来論:高等教育の合理化が進むとゆとりや柔軟性、創造性が失われる。
  • 大学人のあきらめ。抵抗精神のなさが急ピッチの改革を可能にしている。
  • 大学に改革はなじまない。大学が変わるのは、個別の人間の選択や決定の積み重ねがもたらすゆっくりとした変化の過程を通じてである(天野)。