松下佳代(2017)「学力とは」『日本労働研究雑誌』681,55-57
- 学力論争に見る学力論
- 第1期:読み・書き・計算などの「基礎学力」と新教育が めざす「問題解決能力」との関係、戦後新教育がもたらした学力低下への批判とそれへの反論が争点。
- 第2期:全国学力テスト(1956〜1966)で計測されるもの=学力ではなく、計測が意味をもつ条件として教育内容の系統化が不可欠である主張。広岡の「知識・技能」「態度」の三層学力モデルにおいて態度が中核に置かれ、態度への教育的介入の是非をめぐる態度主義論争。
- 第3期:高度経済成長による生活や地域の変化・科学技術の進歩にあわせた「教育内容の現代化」→ 学力形成を人格発達の中に位置づけることを主張する立場 VS 学力形成を教育内容(科学的概念)の獲得に限定する立場。言い換えると、学力の主体的側面(学力が主体においていかに形成されるのか)を重視する立場 VS 学力の客体的側面(学力の中身として何を教えるのか)を重視する立場の対立。
- 第4期:新学力観(=社会の変化に対応していける「自己教育力の育成」への転換)をめぐる論争:「関心・意欲・態度」を評価の観点の最上位にする立場 VS 基礎的な知識・技能の重要性を主張する立場 or 批判的な学び方の学習を主 張する立場(学力より学びに焦点化)。
- 第5期:学力水準の低下・学力格差の拡大:本当に低下?その要因は?
- 学力概念に関する立場
- 政策用語としての学力をそのまま受容し使用する。
- 学力を限定的に使用し、学力データにとどめるか、学びに焦点化する。
- 学力の多義性や曖昧さの問題を視野に入れながら、その肥大化をコントロールする。
- 学力は構成概念(実在しない)
- 教育社会学は、学力データと学校内外の変数をつなぎ、格差の形成要因や 社会的影響を見た。
- 学力そのものにはふみこまず、能力シグナルに議論を限定することで成功を収めた。
- 学力の定義と何らかのモデルがなければ、学力データの前提となっている学力調査をデザインすることすらできない。
- 教育社会学や教育経済学は事実を扱う学問であるの に対し、教育学は事実だけでなく価値も扱う学問。
- 教育学は、さまざまな能力の中で何を学力をみなすべきなのか、何を測定や評価の対象とすべきなのか、という価値に関わる議論から逃れられない。