2022/08/26

會澤綾子(2017)「高信頼性組織を支える多様性とは」『赤門マネジメント・レビュー』16(4), 193-203

  • 組織の信頼性とは:信頼性は多様性で支えられる。信頼性を実現するには、必要多様性、dynamic non-event、イナクトメントの3つの要因がある。
  • 必要多様性:「人間は複雑なシステムを管理・運用するために、人間自体がより複雑になる必要がある」(Weick 1987)
  • 集団必要多様性:「多様な個人によるチームやネットワークを組成することで、より大きな多様性を実現できる」
    • 問題発生時に、メンバーが異なる解を探すことが重要
    • 実現には、権限委譲(トップが大局的に物事を見るために必要)と対面コミュニケーション(信頼関係の構築と、信頼関係を土台にした多様な情報の浸透につながる)が必要
  • 信頼とは、目に見えず、何も起きない、動的なものである。退屈で当たり前の日々こそ変化が支えている。
    • 注意深く観察力を持ち、小さな逸脱を見逃さないようにするためには、絶えず疑念を持ち続けることが必要。
    • こうしたことこそ、賞賛されるべき。
  • イナクトメント:「環境に対する解釈、意味づけを行うことにより、その環境をコントロール可能なものとして認知すること(Weick 1979)」
    • 組織化を実行するためのサイクルのひとつ。
    • 人はイナクトメント、淘汰、保持の三つのサイクルを通すことにより、社会システムを意味あるひとつの配列として解釈することができる。
  • 環境が不安定なときにこそ、意味形成の必要がある(環境が不安定だと、そもそも意思決定自体が難しく、変化する環境にラベリングするための意味形成が必要なため)。
    • 意味形成においては集権化が重要。
    • 集権化によって、人は同種の「意思決定前提」「仮定」を扱えるようになり、これを通じて調整のいらない分権化や多様性が実現される(分権化による多様性は、集権化があってこそ機能する)。
    • 集権化から分権化を成立させるには、物語(組織文化)が必要。物語が集権化された価値を思い出させ、多くの事実を結びつけられる。複雑なことも、物語を通じて再構築されると、人間の行動に内在する必要多様性を高めることができる。
  • カップリングがタイトでインタラクションが複雑な組織は、事故が起こりやすい。
  • 組織のマインドフルネス:5つの条件で支えられる状態
    • マインドフルネス=「多角的視点を持ち、文脈への気づきなど、創造的に物事を考えられる状態(Langer 1989)」
    • 5つの条件:「失敗から学ぶ」「単純化を許さない」「オペレーションを重視する」「復旧能力を高める」「専門能力を尊重する」

2022/08/22

白水始(2012)「認知科学と学習科学における知識の転移」『人工知能学会誌』27(4), 347-358

  • 転移と教育は密接に関係する:転移は本来認知現場→転移させると言いがち。
  • 2つの転移の混在
    • ソーンダイク:transfer outとしての転移=すでに起きてしまった現象を指す
    • フロイト:transfer inとしての転移=将来起きる現象を指す
  • 転移と似た概念:陶冶
    • 形式陶冶:あることを学んだ記憶力や抽象化などのスキルが他の分野にも使える(ラテン語を学ぶのはラテン語を使うためではない)
    • 実質陶冶:学んだことの内容そのものが役立つ(←領域知識の転移に相当)
  • ソーンダイクの形式陶冶批判:転移は、転移課題Bの内容が学習課題Aに含まれている場合に起きる(人の転移能力を矮小化したとも言える)
  • 状況論者のレイブ:転移という考え方自体を捨てるべき(実験者の想定した範囲だけで転移を評価している、知識は文脈から切り離せないなずなのに、転移には経験から知識の抽象化が必要と考えている)
  • 認知心理学の転移:知っていれば使える(個人の頭の中に十分な知識が蓄積されれば起きると考える)→状況論の転移:知識を使うには、知識を行使する行為が含まれる、それには知識の持ち主として振る舞うことが許される状況にいるかが転移の成否に影響する。→
  • 認知心理学の転移:実験者が転移のゴールを決め、その期待する範囲解に参加者がいたったかで転移を評価→学習者中心論:実験者側の意図しない解法でも参加者視点から学んだことを一般化しようとしたものがあれば転移にならないか。(教師が高次の解法を教えても学習者は自分なりに了解した低次な解法を使い続けることはよくある。)

2022/08/17

Five Strategies to Give Life to Class Discussions

  1.  授業開始前に学習内容に触れておき、話す準備をする。
    • 5分以内のビデオを公開し、文献の要旨や注目してほしい論点に触れる
  2. 学生に質問や意見を持ってから教室に来るよう準備する。
    • リーディングに対して5つの質問を用意させる:不明確な点について明確にする質問を2つ、概念・原理・理論の活用や応用を問う質問を2つ、著者の結論の示唆や批判に関する質問を1つ。
    • 3-2-1アクティビティ:文献の内容を端的に捉える言葉を3つ、著者に質問したい言葉を2つ、文献の要点を表現する比喩・直喩の言葉を1つ
  3. 学生に自分が知っていること・知りたいことを毎回書かせ、相互に閲覧させる。
    • 高次の思考を促せる。
    • 学生の現在の理解レベルを把握できる。
  4. 議論を途中で打ち切り、知っていること・知りたいことを2分で書かせる。
    • 全員の知識の状態を知ることができる。
    • 学生がグループ内だけでなく、グループ間でつながりを持てる。
  5. 学生に教え合うことを求める。
    • 多人数授業でも個人の声が聞こえる環境ができれば、学生はどの程度他者に依存してよいかを自分で判断できるようになる。

2022/08/16

Tapping Into Higher-Level Thinking in Online Courses

  •  オンライン議論では、まず教員の期待を明確にする:期限、ネチケット、成績への反映、議論の目的、学習活動との関連性を伝える
  • 優れた議論は、問題基盤の焦点化された問いかけから始まる。それは、学生に論拠を示したり、前提を評価・検証したり、示唆を示したり、帰結を予測したりすることを求める。
  • 収束質問:ある内容を理解したことを示すために、新しい方法で情報を解釈することを求める質問。タキソノミーで言う、判断、説明、演示、支持。
  • 拡散質問:あるシナリオの代替的な帰結を問う質問。
  • 焦点化質問で思考の振り返りの後で、議論の促進を行う。ここでは、お互いのアイディアを尊重することを重視し、学生のコメントに対して裏付けを求めるコメントを行う
    • ○○という時、何を意味しますか?
    • この言葉はどのように言い換えられますか?
    • その点についてもう少し説明してくれますか?


2022/08/15

Fourteen Simple Strategies to Reduce Cheating on Online Examinations

 オンライン試験で不正を防ぐ

  1. 高次の思考を求める問題を出す
  2. 質問の形式を多様にする:正誤や多肢選択だけでなく、オープンエンドを入れる
  3. オンライン試験のガイドラインを説明したビデオを見せる
  4. 学術倫理文書に署名をさせる
  5. 試験時間を指定する(複数のタイムゾーンがある場合は、その数だけ試験を作る)
  6. 1画面に表示される問題を1つにする
  7. 後戻りを禁止する:1画面1問題、1回の回答が最終回答
  8. 問題の順番を回答者ごとに変える
  9. 同じ問題の別バージョンを用意する
  10. 受験機会を1回に制限する
  11. 技術的トラブル対応のための、予備試験を行う
  12. 得点をすぐに開示せず、回答や回答のヒントを先に示す
  13. 出版社のテスト問題バンクの利用を避ける
  14. 学生が間違えた問題のみをフィードバックし、解答を示さない


https://www.facultyfocus.com/articles/educational-assessment/fourteen-simple-strategies-to-reduce-cheating-on-online-examinations/

2022/08/14

The Difference Between Emergency Remote Teaching and Online Learning

 オンライン学習を分類する視点
  • Modality
    • Fully online
    • Blended (over 50% online)
    • Blended (25–50% online)
    • Web-enabled F2F
  • Pacing
    • Self-paced (open entry, open exit)
    •  Class-paced
    • Class-paced with some self-paced
  • Student-Instructor Ratio
    • < 35 to 1
    • 36–99 to 1
    • 100–999 to 1
    • > 1,000 to 1
  • Pedagogy
    • Expository
    • Practice
    • Exploratory
    • Collaborative
  • Role of Online Assessments
    • Determine if student is ready for new content
    • Tell system how to support the student (adaptive instruction)
    • Provide student or teacher with information about learning state
    • Input to grade
    • Identify students at risk of failure
  • Instructor Role Online
    • Active instruction online
    • Small presence online
    • None
  • Student Role Online
    • Listen or read
    • Complete problems or answer questions
    • Explore simulation and resources
    • Collaborate with peers
  • Online Communication Synchrony
    • Asynchronous only
    • Synchronous only
    • Some blend of both
  • Source of Feedback
    • Automated
    • Teacher
    • Peers



2022/08/13

Student-Centered Remote Teaching: Lessons Learned from Online Education

  •  オンライン授業のデザインでは3つの活動の設計から始める。
    • 学生と内容のインタラクション
    • 学生間のインタラクション
    • 学生と教員のインタラクション
  • 学生と内容のインタラクション
    • 基本は「意味のある何かを行うこと」「学習を振り返ること」
    • リーディングノアとの活動例
      • 要旨を書く
      • 要旨をスライドにまとめる
      • 学んだこと5点と質問1点を書かせる
      • 明快になったことと不明瞭なことを書く
      • 過程を図式化する
      • インフォグラフィックを作る
    • 同期講義の後の活動例
      • 質問を出しシンク・ペア・シェアで理解を深める
      • 投票で理解を確認する
      • ホワイトボードに考えを図式化する
  • 学生間のインタラクション
    • 高次の思考を促すために行う
    • 活動例
      • 掲示板に意見を書かせる(ディベートで賛成と反対の立場を事前に指定する)
      • アサインメントに対するピアレビューを行う
      • グループでプレゼンをする
      • 学習内容を理解するためのボードゲーム作成を行う
      • 次年度履修する学生のための学習ガイドを作成する
  • 学生と教員のインタラクション
    • 単に質問に答える以上のことを行うために行う
    • 活動例
      • 学生が掲示板に書き込んだことに絡む
      • よく出る質問に対する回答をまとめた短いビデオを公開する
      • アサインメントに対して詳しいフィードバックを返す
      • オンラインでオフィスアワーを設ける

2022/08/12

Hybrid, HyFlex, Online, and Everything in Between: Course Models at a Glance

 オンライン学習のモデルの分類

  • 3つの要素それぞれに2つの選択肢がある
    • 場所:教室 VS 遠隔
    • 時間:指定 VS 無指定
    • 媒体:デスクトップ VS モバイル
  • 対面授業=教室・時間指定・デスクトップ
  • ブレンド授業=教室・時間指定・デスクトップ/モバイル
  • ハイブリッド授業=教室/遠隔・時間指定/無指定・モバイル
  • ハイフレックス授業=全ての選択を選べる
  • 完全オンライン授業=遠隔・時間指定/無指定・モバイル

2022/08/11

Course Design Models: Blended, Hybrid, Flipped, HyFlex

  •  ブレンド
    • 対面とオンラインを学習経験として整合的に統合したもの。
    • オンライン学習は対面の補足として位置づける。
  • ハイブリッド
    • 対面の学習をオンラインに置き換えるもので、学習の中心はオンラインで行われる。
    • オンライン学習は同期と非同期のどちらもありうる。
  • 反転
    • 基礎学習をオンラインで事前に行うもの。基礎知己の拡張を対面学習で行う。
    • 反転授業はブレンドの一種であり、ハイブリッドで行うこともできる。
  • ハイフレックス
    • 授業を対面、同期オンライン、非同期オンラインで提供するもの。
    • 学生は参加方法、コンテンツへの接触方法を授業期間中いつでも変えられる。

2022/08/07

松嶋登・高橋勅徳(2007)「制度的企業家の概念規定:埋め込まれたエージェンシーのパラドクスに対する理論的考察」『神戸大学経営学部ディスカッションペーパー』2007−48

  • 制度的企業家:制度に埋め込まれながら制度を変革する企業家(矛盾を含む)
  • 古典的企業家論:企業家を制度変革主体と捉えた(=エリート主義的起業家像)←2つの方向で検討された
    • 企業家の心性の解明:プロテスタントとしての職業倫理が家庭教育・教育制度を通じて刷り込まれた心性である。
    • 経済発展それ自体が制度化されたものである:企業家の存在を前提としながら、彼らが新結合を遂行する際に初診機能を果たす銀行家、新結合のルーチンを維持する管理者との総合的な関係性のこと。
  • →経済発展の果てに、企業の大規模化・集中化が生じ、経済活動は合理化・非人格化され、企業家の役割そのものが消失すると考えられていた(=経済を1つの機械として管理する時代精神を生む→社会主義という新たな制度への移行)。←エリートの存在を前提にしている。
  • エリート像研究から企業家研究は問いを変えた:現実の企業家行動は何か
    • →イノベーションの担い手としての企業家という位置付けは継承されたため、既存制度を所与とした企業家による正当性獲得(=イノベーションの実現に必要な資源動員に利害関係者の説得が必要なため)の議論に。
  • 現在の関心:企業家による制度変革のメカニズム(これまでの研究は、企業家を制度の変革者としながらその論理を無視してきた)
    • 背景:制度変化への関心が高まった(新制度論は制度的環境への服従という単純モデルだった)
    • ただし、制度の中心・周辺議論に一貫性がない問題がある(新興産業で正統性を得る研究=周辺と、成熟産業でサービス多様化を描く研究=中心など)。←研究者の都合で、中心か周辺かが選ばれている。
    • いずれも、企業家は制度から距離を置いた特殊なエージェンシーの持ち主という前提を置いていることが問題(だから、制度の中心に位置づく企業家も、外部環境変化などの外生要因がないと制度変革ができない)。
  • →制度と企業家を二元配置せず、企業家のエージェンシーの発言論理が必要:企業家が制度的慣行を実践の内から経験し、埋め込まれた制度を見直していく省察能力について、企業家の能力に還元せずに説明する論理を確立すること。

2022/08/06

盛山和夫(1996)「制度論の方法について」『社会学評論』46(4), 466-468

  • 仮に制度がモノのように存在していたら、方法論が特に問題にならない。
    • モノの世界は直接に理論的な言語系によって記述できる
    • モノの世界は、それを貫くなんらかの普遍的な構造が存在すると仮定できる
    • しかし、制度的世界は人々の思念した意味から成り立っており、まず人々の一次理論によって記述される。
    • その意味は個人間、異なる文化間で同一とはかぎらない。普遍的な構造を容易に仮定できない。
    • 意味を記述する言語自体も何らかの制度的な文化圏に属さざるをえない。
  • つまり、意味という個別的存在について、普遍的な認識が可能かという解釈学的難関がある。

2022/08/05

Yuzhuo Cai & Nicola Mountford, (2022) Institutional logics analysis in higher education research, Studies in Higher Education, 47:8, 1627-1651

  •  制度ロジックの高等教育研究への応用は、いくつか誤解や混乱がある。
  • 制度ロジックは、旧制度論、新制度論、制度的企業家、制度的実践等に並ぶ制度理論
  • 現在確立した制度ロジックは8つ:国家、市場、家族、民主主義、宗教、+専門職、企業、+地域
  • 制度ロジックの中心的価値
    • 行為や葛藤に対して意味を付与する組織を超えたパターンを用いて、制度という抽象的な概念を具体的に描く
    • 複雑な制度環境を観察するレンズを提供する(組織、社会の双方の変化や革新の動態に複数のロジックを提供できる
    • 埋め込まれた主体の矛盾を説明できる。組織内の主体の行為が所与の制度に制約される時に、どのように・なぜ制度や組織の行為が引き出されるのか?
    • 社会レベルで機能的に使われたロジックは、市場、専門職、国家権威の3つ=クラークの調整の三角形(3つの力の間の調整や力学の中で高等教育システムのあり方が決まる)と同じ
  • 社会レベルの機能的アプローチ:多くは制度ロジックの理論と方法論に厳密に従う傾向にあるが、2つの問題がある。(1)社会ロジックの理念型が西欧社会に依拠し、非西欧の分析に限界がある、(2)高等教育研究では、西欧研究でも理念型の拡張がされる傾向にある(マネジリアルロジックとか組織ロジックとか、社会レベルのロジックではないのに事由に定義されてしまっている)。
  • フィールドレベルで使われるロジック:アカデミック、市場、専門職、商業、マネジリアル、産業としての高等教育、社会としての高等教育、科学、ビジネス、学問的自律等←これらは十分に定義されていないし、トレースもできない。また、著者によりロジックの解釈が違ったり、別のロジックを同じ意味で使っている。
  • フィールドレベルの演繹的アプローチは最も前途があるが問題が多い。高等教育分野の理念型を特定できる点で有望だが、先行研究のロジックの定義に従わずに事由にロジックを定義してしまうことは問題。
    • これは難しい問題でもある。1つはロジックが少なすぎてもよくない。基本の8つで本当によいのか。一方で、ロジックが量産されてもいけない。ロジックはシンプルであるべき。
  • 帰納的か演繹的かは、ミックスで考えるべき。データから見出せるロジックを整理することと、既存のロジックをデータで検証することはどちらも重要。

2022/08/03

Thornton, P. and Ocasio, W. (2008) Institutional Logics, in Royston Greenwood, Christine Oliver, Roy Suddaby & Kerstin Sahlin, eds, The SAGE Handbook of Organizational Institutionalism, Chapter 3, 99-129

  • 制度ロジックを理解するには、制度理論の歴史を知る必要がある。
    • 転機は1970年代のMeyer& Rowan (1977)など:組織は外部環境(ルール)に従わね馬ならず、テクニカルコアを守るために構造がルースカップルになるという指摘。
    • DiMaggio & Powell (1983)はこれを発展させて、新制度論(=合理性より正当性)、すなわち、模倣的同型化を指摘する。
    • これを経て、Friedland & Alford (1991)の制度ロジック=制度の内容と意味につながる。
    • 新制度論の関心は同型化、制度ロジックの関心は制度と行為のつながりが関心。つまり、ミクロとマクロを接続する理論。
  • 近代西欧社会の制度に埋め込まれた慣習と信念:資本主義、国家官僚制、民主主義政治の3つが制度的秩序(社会の中心的制度)であり、個人がどう振る舞うかの慣習や信念に差を生むもの。
  • 制度ロジックの定義:社会的に構築されるもので、個人が現実社会に意味づけを行ったり、時間や空間を調整したり、生存のための活動を生産・再生産することで作られる、日常の実践、仮定・価値観・信念、ルールの歴史的パターン
  • 制度ロジックの基本的な前提=個人が持つ関心、アイデンティティ、価値、仮定は、個人を覆う制度ロジックの中に埋め込まれている。意思決定や成果は、個人が制度構造との相互作用の結果として生じるもの。個人や組織は、権威や地位を求めるものの、それも制度ロジックの制約の範囲内でしか得られない。社会は3つの主体で構成される:個人(競争と交渉をする)、組織(葛藤と調整を行う)、制度(矛盾と相互依存を扱う)。つまり、社会に単一の合理性は存在しない。例えば、病院は市場、民主主義国家、医療専門職のロジックで形成される。
  • 制度ロジック研究では、動機づけや行為が合理的か否かではなく、複数の制度ロジックの相対的な葛藤や調和が、個人や組織の行動にどう影響するかを重視する。
  • 研究においては、イベントヒストリー分析、解釈的手法、トライアンギュレーション、理念型が重要。データには、インタビュー、ドキュメント、演説、新聞などが使われ、分析方法には、系図分析、会話分析、内容分析などが使われる。トライアンギュレーションには、解釈と仮説検証のミックスが望ましい。
  • 複数の理念型は、意味と行動について、仮説と現実を比較する物差しとして機能する。
  • 理念型はルーブリックのようなもの、縦にカテゴリー、横に市場や専門職など。

2022/08/02

奈須正裕(2022)『個別最適な学びの足場を組む』教育開発研究所


  •  個別最適な学びの2つの構成要素:指導の個別化、学習の個性化
    • 指導の個別化:個人の特性、学習進度、学習到達度に応じて、指導方法、教材、学習時間の柔軟な提供・せっていを行う
    • 学習の個性化:基礎的な資質・能力を土台として、興味・関心・キャリアの方向に応じて課題の設定、情報の収集・整理・分析、まとめ・表現を行う機会を提供することで、子ども自身が学習が最適となるよう調整すること
  • 日本の歴史では個別指導が中心、一斉指導は近代革命後の短い期間しかない
  • コンピテンシー:対象や場面と適切に関われる有能さ(competencyを訳出した行政用語)
  • これまでの学校は自立した学習者を育ててこなかった:臨時休業で指示がないと何をしていいか分からない子どもがいた
  • 一斉指導は発明されたもの、1対1指導がもとも生産的(一斉指導の4倍の速さで同じ水準に達成する)。個別指導は大学生でもできるが、一斉指導はうまくできない。
  • ドリル学習の問題は、なぜそれが正解かを理解せずに、単なる手続きや行動として学んでしまうこと。スモールステップのプログラム学習は、外化と即時フィードバックで状況の確認が行われるため、意味理解が促進されることも多い。
  • 繰り下がりの引き算をいつも間違える子:借りるものは返さないとと考えていた→プレゼントにしたら間違えなくなった。こういう指導はAIにできない。
  • マスタリーラーニングの手順=一斉指導+習熟度別指導
    • 指導単元の教育目標の分析と授業内容の具体化をする=学習内容を縦、行動目標を横に配列したマトリクスで目標の細分化表を作る
    • 一斉指導で教える
    • 形成的テストを実施する:15~20分で自己採点できるもの
    • 学習が成立しなかった子=個別指導、子ども同士の教えあい、視聴覚教材などによる補充学習、学習が成立した子=定着を促す課題、発展的課題を与える
    • 総括的評価のテストを実施
  • 能力別学級編成が効果を上げない理由:指導法や教材の最適化が行われていない。能力別学級編成自体は、個別最適な学びではない。子どもを小集団に分けただけで、同じ指導、同じ教材では学力は上がらない。
  • 言語性知能の高いこと低い子には別の語学指導を行う:高い=文法中心、低い=会話中心 ← 教材は柔軟に提供されるべき


  • 子どもが主体的になれないと言うが、単元の構成も、何時間で学ぶかも伝えず、シナリオである指導案を受け取らないのに主体的に考えられるわけない。まず、基本的な情報の共有から始めるべき。
  • 個別学習の実学習時間は、総学習時間の91%。学習効率は高い。時間が足りなくて教科書が終わらないというのは、一斉指導における学習効率が低いから。
  • 個別最適な学びは、顧客満足的なサービス提供に陥ったり、分断を作らないか心配になるが、理念やカリキュラムのレベルで検討されればできる。
  • 国語の物語学習を、生物学的に検討した例:異端の迫り方をしたことで、かえって文学的なアプローチをとることの意味の自覚かを促した。
  • 一斉指導はテレビ、個別指導は読書、自分が開いて読まないといつまでたっても始まらない。
  • 個別最適な学びの2つの意味:(1)個に応じた多様な教材・学習時間・方法の柔軟な提供、(2)自分に最適な学びを自力で計画・実行できるこどもの育成
    • 1は手段、2は目的だが、1がないと2は生じない。
  • 自由進度学習には早修(Acceleration)と拡充(enrichment)がある。日本は拡充を基本とし、外国は早修を認めている。

2022/08/01

Maassen, P. (2017) The university's governance paradox. Higher Education Quarterly.71:290-298.

  •  ガバナンスのパラドックス
    • (1)威信を高める大学のプロフィールをトップダウンで作ることは、特定の成果を伴わない活動である
    • (2)生産性の高い研究者の自律性を制限することで、大学の職場としての魅力を毀損し、優れた学生の忌避につながる
  • ボトムラインマネジメント:全体に同質の生産性や成果を求める単一解型マネジメント
    • 現実は高生産性研究者はボトムラインマネジメントから除外しなければならない
    • →いくつかの大学はそれに気づき、より柔軟で学術主体のマネジメントへ。
  • 執行部は改革計画の概念に沿った機関運営を志向し、改革の意図の実現がおろそかになる。
  • こうしたパラドックスは、大学の伝統・歴史と公式組織構造を無視することから生じる。
  • 実際、教員には教育者としての役割が期待されるが、採用プロセスでは学問分野の価値と選考基準にそってキャリアと研究成果が評価される。

2022/07/31

Wheeldon, A. L., Whitty, S. J., & van der Hoorn, B. (2022). Fish-out-of-office: How managerialised university conditions make administrative knowledge inaccessible to academics. Higher Education Quarterly, 1-14.

  •  マネジリアリズムがオーストラリアの大学をどう変えたか
  • ブルデューのフィールドと社会資本
    • フィールド=境界性のある社会空間
    • 社会資本=フィールド内にいる人が持つ影響力の関係性
  • 地方大学における24インタビュー(13教員、11職員)によるケーススタディ
  • 主要な抽出主題
    • 教員はアドミニ業務に対応しきれないという印象を持っている
    • 職員はチームワークからシェアドワークへという印象を持っている
    • 教員はより一人で行う仕事が増えていると感じている
    • 職員はコロナ禍もキャンパス内での仕事を強要されるが、教員はキャンパスの外の時間が増えている
    • 教員は忙しさの加速が職員との交流を限定的にし、職員はチャットルーツの導入などで社会的儀式の機会が増えている

2022/07/30

Kezar, A. (2005) Redesigning for Collaboration within Higher Education Institutions: An Exploration into the Developmental Process, Research in Higher Education, 46(7), 831-860

  •  大学におけるコラボレーションプロセスのモデル化
    • 4つの先行研究モデルを援用し、4大学80人の調査と書類データの主題分析から、(1)コミットメントの確立(外圧、価値、学習、ネットワーク)、(2)コミットメント(優先順位、ミッション、ネットワーク)、(3)維持(統合構造、報酬、ネットワーク)の3プロセスをモデル化
  • シングルケーススタディだが、一部のコラボレーションではなく、組織全体のコラボレーションを取り上げるために採用。モデルケースではなく、レアケースの研究。
  • MCMモデルで説明できる部分と、当てはまらない部分を指摘し、モデルをディフェンス。

2022/07/29

Lee, J., Lo, W. & Abdrasheva, D. (2021) Institutional logic meets global imagining: Kazakhstan’s engagement with China’s Belt and Road Initiative, Higher Education, 82, 237–253

  • カザフスタンの大学が中国との連携による国際化をどのように捉えているかを探った研究
  • 10大学の国際担当者へ質的調査、否定的回答なし、国際化に肯定的
  • 支配的な制度ロジックを聞く質問
    • 貴学にとってBRIにどのようなチャンスを見いだしているか?
    • BRIを通じてどのような目標を設定しているか?
    • BRIの文脈でどのような機関のマイルストーンが達成できたか?
  • 経済的なロジックよりも、実利的ロジックが重視されていた。
    • 10機関が実利的、2機関が自律的と実利的が同等、2機関が実利でなく自律的と管理的(=どちらも小規模私学)

2022/07/19

竹中克久(2002)「組織文化論から組織シンボリズムへ」『社会学評論』53(2), 36-51

  •  組織文化論と組織シンボリズム:同じ組織文化の理論なのにアプローチが違いすぎる
    • 組織文化論:成員の基本的仮定としての組織文化(シャイン)→機能主義的 な見地から分析を始めるがゆえに、組織文化を成員によって共有された一枚岩的なものであることを自明視せざるをえない 
    • 組織シンボリズム:成員・非成員と問わず当事者による解釈の対象としての組織文化(ハッチ)→組織文化はシンボルのシステム→シンボルを駆使していかに組織文化を共有化するか・しないかというプロセスに関心を示す
    • 組織シンボリズムの有効性は、従来の組織論が組織という現象を絶対的な合理性を有する存在であると自明視してきたことを相対化すること(組織の合理性・組織それ自体が、非合理でシンボル的な側面を有していることに言及)
  • 組織文化とは何か:組織構成員によって内面化され共有化された価値・規範・信念のセット」(加護野 1988)
    • 80年代より前の組織論=コンティンジェンシー理論(組織と環境は不可分)による従来組織観の刷新 
    • しかし現実は、組織は環境に適応して変動できない、なぜか?→ 組織内に非合理な要素があるから → 80年代の組織文化論へ(=組織文化論はコンティンジェンシー理論を補完するもの)
  • 組織文化論=組織文化を環境の1変数ととらえ、リーダーが基本的な仮定のレベルの操作にいかに関与するかを考察する研究(文化の道具性・操作可能性)
  • 組織シンボリズムのゆらぎ
    • 機能主義者:シンボル=社会的秩序の維持装置 → シンボルの政治利用論
    • 解釈主義者:シンボル=個人がシンボルを通して自らの世界を創造するのに不可欠なメディア → 当事者がいかにシンボルを駆使して組織文化を構築し解釈するか
  • 両者の人工物に対する見方
    • 組織文化論:基本的仮定を重視するため、人工物を軽視する傾向
    • 組織シンボリズム:人工物レベルにシンボル的要素が入り、当事者は人工物を解釈する存在であるから、人工物のレベルをシンボルとして分析する
      • 時計回りのプロセス
        • 成員は基本的仮定で支持されるべき価値観(何が正しいとされているかという基準)を創出する。
        • その価値観を、行為によって具現化することで人工物(神話・スローガン)を創出する。
        • その人工物は、イメージを通してシンボル化されることでシンボル(意味を付与された人工物)となり、そのシンボルは解釈され続けることで、基本的仮定を意味づけるのに役立つ。
      • 反時計回りのプロセス
        • ある新しい価値観が外から持ち込まれたり、人工物が破壊されることで組織文化を変動させることもあれば、現行の組織文化を再強化したり維持する場合がある。
      • このモデルは、基本的仮定が変動する際に、リーダーの介入だけでなく、フォロワーによるシンボルの再解釈でも起こる点が特徴(リーダーそのものやリーダーシップもシンボルとして分析する存在)。
  • 「教育組織は正当性を確保するため、環境の中で承認された様々な儀式(伝統的に確立されたカリキュラムの提供、それにもとづく学位授与)を行わねばならない。これらは有意義な教育の実行を保証しない。事実、教育組織は、その中核的な教育・学習活動を外部の評価や成果責任から遮断するのに骨を折っている。効率性を脚色することが、実際の効率性を制限するにもかかわらず、それに大きな努力を傾ける。」
    • 非合理でも構造を変化させることができないことを説明する方法:
      • 従来の組織論:官僚制の逆機能、組織文化を変えることの難しさ
      • 組織シンボリズム:組織外の観察・解釈に応えて、合理的であることを装飾しようとするため(官僚制の逆機能=意図せざる帰結⇔装飾=意図的な帰結)

2022/07/18

高橋弘司(1993)「組織社会化研究をめぐる諸問題」『経営行動科学』8(1), 1-22

  • 組織社会化の研究は質・量ともに不十分
  • 当初の関心:社会的秩序はどうすれば成り立つのか=個人が社会のために連帯する一方的な概念 → 社会の規範・価値・習慣的行動様式を学習して内面化する過程に
    • 3つの共通要素:社会化は成員性の習得、社会化は学習の過程、社会化は他者との相互作用を通じてパーソナリティを社会体系に結びつける過程
  • 組織社会科の定義:
    • 組織の一員として認められるために、個人が価値・規範・組織に必要な行動を身につけていく過程(Schein1968など)
    • 組織への新規参入者が、新たな役割・規範・価値を習得する形で変化し、組織に適応していく過程(Wanous 1992)
    • 組織の役割を引き受けるのに必要な社会的知識と技能を個人が獲得してく過程(Van Maanen & Schein 1979)
    • 自分の役割がどうあるべきかについて、規範とも言うべき信念を持つ人々との相互作用を通じて、個人が集団内での自分の地位にふさわしい行動を習得する様式(Brim 1966など)
  • 職業的社会化との異同
    • 職業的社会化:人々がある職業に就き、退職するまでのプロセス、およびその職業の担い手に期待される職務遂行能力や態度、職業倫理、職業観などが習得される過程

    • ここでは、組織社会化に職業的側面(技能的側面)と組織的側面(文化的側面)が並存する立場をとる。
  • 研究テーマの設定:組織と個人の間の相互作用を考察するものがほとんど
    • 組織の特徴や組織が個人に及ぼす影響の研究:社会化の促進策の働きかけ(職務予告や新任研修)と測定
    • 個人の特徴や個人が組織に及ぼす影響の研究:現実ショックを和らげる働きかけと測定
  • 社会化の開始・終了についての定説がない→キャリア全体の長期的と参入直後の短期的の2つの見方がある

  • なぜ組織社会化研究は質が低いと言われるのか?→ 曖昧な研究視点に基づいていること+複数のフレームワークの一部を取り出し、再構成して1つのフレームワークを作っているため
3
    • 組織行動論に基づいた実証研究であり、縦断的な因果関係を変数に想定する研究が必要

2022/07/10

マジョリティ側の教育

  •  白人人種的アイデンティティ発達理論(ヘルムス 1990)
    • 接触(Contact):制度的人種差別や自分自身の持つ特権に対して無自覚である段階
    • 分裂(Disintegration):徐々に自分の特権に気づき、罪悪感や怒りを感じるようになる
    • 再復興(Reintegration):それでも現状維持へのプレッシャーに負け、マイノリティを避けるようになる
    • 疑似独立(Pseudo-independent):自分について振り返る、見つめ直し、マイノリティの正確な情報を探し始め、現状について疑問を感じ始める
    • 没頭(Immersion):アメリカ社会において白人である、ということはどういうことかを知ろうとする
    • 自主性(Autonomy):白人として新たなアイデンティティを築き、人種差別に立ち向かい、抑圧のない社会を目指すために行動を起こす
  • 黒人の人種的アイデンティティ発達理論(Cross 1971)
    • 遭遇前(Pre-encounter):黒人に対してネガティブなステレオタイプを内面化する
    • 遭遇(Encounter):人種差別を体験することで、人種差別の存在に気づかされ、そのインパクトについて認知する
    • 没頭(Immersion/Emersion):黒人をポジティブに象徴する情報を収集し、自分が黒人であることと向き合う。白人とは距離を置く。
    • 内面化(Internalization):自分が黒人であることについてポジティブなアイデンティティを築く
    • 内面化・コミットメント(Internalization-commitment):人種差別をなくす社会にするためにコミットする

2022/05/27

舟津昌平(2019)「制度ロジック多元性下における組織のイノベーションマネジメント」『赤門マネジメント・レビュー』18(9), 117-146

  • 新制度派組織論(Institutional theory)=制度概念を用いて組織を検討する理論的パースペクティブ
    • 「組織が組織外部から影響を受ける」
    • ↑元を辿ればコンティンジェンシー理論(=旧制度論)
    • →新制度論=組織が制度の影響を受けて合理性や正当性を希求する
      • →組織の同型化が注目される(没個性、非効率など非合理的同型化とさえ見られた)
    • 問い:なぜ制度が同型化圧力を持つにも関わらず、一部は同型化しながら、組織は異なる行動を取るのか
      • →個々の組織が与する制度的環境が異なるから
      • 制度的環境の多元性を精緻化したい→制度ロジックの提唱
  • 制度ロジック
    • 個人と組織が物質的実存を再生産および時空間を組織化する基礎となる超組織的な活動のパターンであり、同時に、その活動のカテゴリ化および意味付与の基礎となる象徴システム(Friedland & Alford 1991)
    • 社会的に構築される、個々人が物質性を(再)生産し、時間と空間を組織し、また社会的現実に意味を与える、物質的実践、過程、価値、信念、規則のパターン(Thornton & Ocasio 1999)
      • ここで言う制度=「組織を取り巻く文化的環境」有形的で認識・参照可能なもの、つまり物質的側面と、無形的・暗黙的つまり象徴的側面の双方を含む定義
      • 制度(マクロ)・組織(メゾ)・個人(ミクロ)の三つの分析単位を採用するのも特徴
        • 超組織的なマクロ環境として「制度」の存在が想定されている
        • さらにこの「制度」は有限個に分類することが可能と考える→「制度セクター」と名付けて分類
          • 資本主義市場、官僚主義的国家、民主主義、核家族、キリスト教が特筆すべき制度セクター(Friedland & Alford 1991)
          • →市場、企業、専門家、国家、家族・血族、宗教の6つに整理(Thornton 2004)
    • (1)制度ロジック研究が前提とするマクロ単位の制度セクターは、少数の有限個に還元される
    • (2)組織単位におけるメゾの制度ロジックは、マクロ単位の制度ロジックがときに混淆や分化をすることで構成される
    • →複数の分析単位が使えることが制度ロジックの有用性
      • ⇔ 制度論で制度変化が説明できない、社会化過剰の組織論(組織や個人の主体性を看過)
    • →組織・個人の行為戦略を前提にしている
  • 合理性概念(rationality):制度ロジック研究における行為者の(物質的)実践について検討するうえでの鍵概念
    • 同型化概念:組織が正統性を獲得するために、ときに非効率性を受容してまで他の組織と同質的な形態をとる=組織が一律に(技術的)合理性に基づいて意思決定するという前提を揺さぶった
    • 一方で、正統性を得るために非合理性を受容する「非合理的同型化」という二項対立の理解を作ってしまった
    • マクロ単位における制度ロジックの変化が、組織や個人が没主体的に変化を受容したとするなら(=Thornton & Ocasio 1999やThornton 2004)、制度論における制度の入れ替えモデルや非合理的同型化などの理論課題を乗り越えたとは言えない
    • →「制度ロジック多元性」:業界や組織といった単位において複数の制度ロジックが関与し影響を持っている状態
  • 「組織レベルの精度ロジックは、マクロ単位における制度セクターに還元可能である」
    • 理論の重要な前提であるのに、組織レベルの制度ロジックがどのような制度セクターを基に生成されているのかの研究がない
  • 「制度ロジック多元性=複数の制度ロジックが存在する←なぜそれが組織によって異なるかという課題に答えてない」
    • →中心性と両立性(Besharov & Smith 2014)
    • 中心性:複数の制度ロジックが組織の機能に等しく有効となる・関連があると見なされる程度
    • 両立性:複数の制度ロジックの実体化が組織の行動に合致・強化する程度

  • 区分化戦略:多元な制度ロジックをドメインごとに切り分けることでコンフリクトを回避する戦略
    • イノベーションのマネジメントでは、多元な制度ロジックの維持・両立が重要(イノベーションはコンフリクトから生まれる)
  • 組織文化と制度ロジック
    • 文化は多義的でその用法は文脈に依存する
    • 組織文化=個々の組織における観念的・象徴的な意味のシステム(佐藤・山田 2004)
    • 両者は適用の単位が違う
      • 文化:抽象化の過程で、文化の源泉(=還元可能なカテゴリ)が軽視される
      • 制度ロジック:制度セクターという各組織の制度ロジックが還元される源泉が明示される

2022/05/18

Brazzill, M. (2020) The development of higher education in Japan and the United Kingdom, Higher Education Quarterly, 75, 381-397

  • 英国の新自由主義改革:SESの低い人の高等教育アクセスを阻害した。← 授業料導入により障壁が高くなった。
  • 英国:中流階級が選挙人として重要 → ポリテクでニーズを吸収する
  • 日本:戦後しばらく中流階級が重要出ない → 私学の拡大で対応した。

2022/05/17

小玉重夫・村松灯・田中智輝(2021)「高大接続改革の教育政治学的意義」『東京大学大学院教育学研究科紀要』61, 275-286

  • ランシエールの無知な教師:知識を有する者が知識を有さない者に対して「説明」をするという「説明体制」のもとでは、生徒の愚鈍化が進行する
    • 教師自身の説明が下手を指さない
    • 自分の権力を守るために嘘をつく者でもない
    • 生徒を服従させることによる
  • → 優れた知性を持つ者が劣った知性を持つ者を支配する構造そのものを変える必要がある
  • 高大接続のトランジションからトランスフォーメーション
    • 暗黙の仮定:知を生産する大学と知を伝達する高校=移行が必要
    • → その構造自体の変革(トランスフォーメーション)を含むべき
  • 知性の平等の前提に立てる教師=無知な教師=自分の学識から伝達をしない=説明と別の方法で教える
    • 生徒の知性が教師の知性に服従しない=教師と生徒は意志と医師の関係で結ばれる=教師が生徒自身の知性を用いるように強いること
    • → (1)質問する、(2)語ることを求める
    • 自分の知性を用いて文献に向かっていることを確かめるために、この2つの行為を行う
    • 文献を読ませる
    • 教師も一つのメディアになる(探求すべき内容を含んださまざまな事柄を提示するもの)
  • 高校の探求学習は、知性の平等につながる可能性はあるが…
    • その成果が進路実績や学術的・職業的観点から評価されてしまう(堀川の奇跡)
    • ← 高校生は本来大学生・研究者・社会人より劣っているという暗黙の前提
    • 探求学習の多様化の固定化:進学校=研究機関と連携、非進学校=地域と連携(多様化の名の下で序列が固定化されている)
  • 教育の出口である結果を重視する(=学習成果を数値化して評価)=ツリー構造の教育=普遍的な真理が頂点にあり、大学から中等、初等、幼児へ降りる垂直構造
    • → 出口がなく、答えのない問いと向き合う子供の探求活動をベースにした、ローカルで分権的なリゾーム型へ転換する必要がある

2022/05/15

元濱奈穂子(2021)「高等教育の質保証改革の根本的メカニズム」『東京大学大学院教育学研究科紀要』61,511-520

  • 質保証=誰にとっての質なのか、別の質はあり得ないのか、 という問いから逃れられない。→質保証システム自体が、改革が改革を呼ぶ再帰的性格を有する→改革を繰り返すだけでは質保証システムの 妥当性を向上させることはできない
  • 認証評価制度開始当初の評価の重点は「教育の成果よりも大学内の教育プロセスの課題把握」(林 2020)→教育研究活動の自己点検や改善につながっているかどうか=内部質保証へと移っていく→現在は学習成果の可視化を重視
  • この問題は2タイプの研究で把握されてきた
    • 現状の質保証システムの課題を乗り越えるため に,今後のさらなる改革の必要性を提言するもの
      • 望ましい将来像の提示に重きを置く
      • ただし、現行システムが課題を抱えている理由に関しては、グローバル化やユニバーサル化といっ た大学を取り巻く状況の変化に触れる程度の説明しかしない
    • 不断の改革の空虚性を批判するもの
      • 改革が現場の疲弊を招いていること、現場の「脱連結」的な対応によって改革の形骸化が起こっていることを指摘する
      • ただし、批判の多くは政策立案者に向けられ、質保証システム自体が内在する課題は看過
  • Harvey and Green(1993)の5つの質
    • 卓越性、完全性・一貫性、目的適合性、金銭的価値、変容
    • →複数の達成すべき質が共存している
    • →関係者たちはその事実に無自覚なままで「質保証」や「質改善」の議論を展開
  • 評価団体による認証評価制度の狙い=目的への適合としての質
    • →目的を何に設定するか によって評価が大きく変わる
    • →誰にとっての目的で適合度をどのように測るのか?
    • Harvey and Green(1993)=目的への適合としての質の評価の特徴は、インプット・アウトプットではなく、プロセスに焦点を当てた間接的な評価になる傾向がある→メカニズムがあれば質は保証できるという暗黙の前提
    • →目的への適合としての質の評価は、質そのものではなく 組織が質を達成するためのプロセスを保持しているかどうかの評価
    • →そのプロセスが結局のところ何を保証しているの かという疑念から逃れられない
  • 認証評価の関心の変化:法令順守中心のミニマム・スタンダードの達成→学生が何を身に付け、大学はどう貢 献し、改善に努めているのかを社会に示す(野田 2020)
  • 内部質保証重視への移行は、プロセスの評価を通して間接的に質を判定する認証評価制度の根本を覆すものではない
    • 評価の対象:大学としての教育研究活動の質をよりよく推定すると見込まれる自主的・自律的な 質保証への取組の有無⇔教育研究活動の質そのものではない
    • ただし、間接評価への疑念は提示された→「フォローアップ体制を整備する」=内部質保証の方法を指定することで、内部質保証を弱体化させた可能性
      • 標準的な基準に準拠した評価は、質への責任を組織の成員から引きはがすことに繋がるため、質の文化の概念に馴染まない(Harvey and Green 1993)
        • 成員が評価の枠組みを絶えず捉え直し、修正していくプロセスこそが、質の文化を維持するうえで重要
  • 学習成果重視=質を直接的に評価する方向へとシフト→金銭的価値としての質の台頭
    • 学習成果は、ステークホルダーと大学の間で共通理解を形成できる評価指標という前提
    • →自身の教育研究にどれだけ金銭的価値があるかどうかを大学自身が示すことによって、大学が自律的に質を改善することが可能だという暗黙の前提
  • 個々で生じる疑問:学習成果を定めることができるのは誰なのか?
    • コンピテンス枠組みは広く共有されるための公共性と正統性を付与されること が望ましい(深堀)
    • 意図された学習成果として機能することが期待されている分野別参照基準を、現場の第一線教員に回帰させるべき(広田)
    • 全ての学修成果・教育成果を網羅的に把握することはできない(中教審大学分科会)
  • 日本の質保証システムは、なぜ20年以上 にわたって改革を繰り返さざるを得なかったのか?
    • これまでの改善=一部の批判をかわす効果はあったが、質の政治性や包摂性に関する別の論争を呼ぶことで新たな批判を生んだ
    • →大学教育の質を評価することの根本的な限界を明確にしたうえで、その限界を補うための視点を考えるべき
    • →質をめぐる政治性が、実際の質保証の手続きの中でどのように表出するのかをい、まずは実証的に議論すべき
    • 新たな質の評価方法を提唱するのではなく、質をめぐる政治の中でこぼれ落ちやすい視点を拾い上げる=雇用可能性を意識した学習成果の設定と評価に対して懐疑的な教員たちであっても、現行の学習成果の枠組みを活用しながら、自身の納得のいく質の教育を実現する事例の蓄積

2022/03/24

Five Techniques for Better Class Discussions

  •  学生のSelf-censorship問題
  • (1)Warm calling
    • ランダム指名(cold call)は学生を萎縮させる、挙手(hot call)は一部の学生しか参加しない
    • 発言させる前に書いてもらう、2人組で交換する、挙手させる
    • 発言したくない学生には無理させず、後からテキストで出させる
  • (2)Half-formed thoughts
    • 未形成・発展中の考えと学習内容を接続する時に最も学ぶ
    • 生煮えでもまず意見を出してもらう、それで混乱しても問題にしない
  • (3)Doubting-and-believing squares
    • 1×3の枠
      • 1列目=レターグレードは学習を促進するか?
      • 2列目=テーマの疑わしい理由を3つ書く
      • 3列目=テーマが真であると思う理由を3つ書く
    • 順次話してもらう→板書→重複する理由は強調
    • 賛否出した後なので、批判的議論をしやすい
  • (4)Page-number lines
    • 1-100頁のリーディングアサインメント
    • 付箋を配り、「最も混乱した一文を書いて」「最も笑えた一文を書いて」のタスク付与、無記名
    • 黒板に1~100まで書いたラインに付箋を貼る
    • 付箋はクラスターになるので、何人かにその理由を話してもらう。
    • 写真を撮って共有アルバムにアップ
  • (5)Preparatory notes
    • 事前にアサインメントに関する内容を教員にメールする、学生に意見を聞いてもらえているという感覚をつくれる
    • コメントのパターンも示せる

2022/03/17

Using Reflective Writing to Get Students Connected with the Material

  • 学習内容と自分の経験に関連性が見出せない学生が増えた
  • structured reflective writing assignments
    • reflective writingとは自分の経験に焦点化すること
    • 学期当初は教材について思い出せることを書かせる
      • なぜそれを思い出したのか、それを手がかりにするとテーマについて何が学べるか、それを思い出すとテーマについて疑問に思うことはあるか
  • reading reflection(学期中盤の課題)
    • 事前文献を2~3文で要約+内容と自分の体験の関連を説明させる課題
    • (1)この文献の内容で、他の科目で習ったことと関連のあったことを書いてください、(2)この文献の内容で、あなたの日常生活と関連のあったことを書いてください、(3)この文献について疑問に思ったことを書いてください
  • Letter to a future student(終盤の課題)
    • 授業で学んだ最も重要なことを将来参加する学生に説明する

https://www.facultyfocus.com/articles/educational-assessment/using-reflective-writing-to-get-students-connected-with-the-material/

2022/03/05

小沢和彦(2015)「ラディカルな組織変革研究における一考察」『日本経営学会誌』36,74-85

  •  2つの組織変革:基本的に対立している
    • ラディカル:環境変化が激しい時に重要、短期間に素早く行われる、計画的変革を想定、トップ主体、「システムの根本的な性質と状態の変更」
    • インクリメンタル:大きくない変化にフィットする変革、長期間の蓄積で行われる、創発的変革を想定、トップとメンバー主体、「安定的なシステムの中で行われる変更」
    • この2つは組織がどの程度変わるかという次元で分類している
  • 組織変革の定義は定まっていない
    • 「組織の主体者(経営主体)が、環境の変化がもたらす複雑性の中で行う組織の存続を確保する活動」
    • 「時間の経過とともに、組織の形態、質、状態が変化すること」
    • 「組織の構成要素の変更」
  • 有機体メタファーの組織変革論
    • ライフサイクルアプローチ:ラディカルな組織変革を想定
    • 断続的均衡モデル:インクリメンタルな変革を想定
      • インクリメンタルを繰り返してもラディカルに至らないと想定←組織慣性が強いことを想定=既存の整合性を強める変革が選ばれる
      • 90年以降は、インクリメンタルを繰り返してラディカルに至る研究←従来モデルがトップの役割に注目→メンバーに注目してラディカルを実現
        • 創発的な変革=事前の意図を欠く=既存の整合性を必ずしも強めない→ラディカルな変革に至る
        • これは組織慣性が弱い組織を想定している
  • 研究の問題点:
    • 創発的変革がラディカルに至るには時間がかかる
    • メンバーが変革主体になると全体の整合性が確保できない
    • 明確な事前の意図を欠く創発的変革は組織の有効性に寄与するとは限らない
  • Plowmanほか(2007)の教会研究
    • 上流階級のための教会→ホームレスのための教会、なぜ?
    • コンテクストと行為のインタラクションを通し、ラディカルな変革に至る
    • 創発的変革の蓄積が有効性に寄与したかは示せていない
  • 組織慣性がどのようなメカニズムで生起し、どう対応することで変革につながるかを検討すべき

2022/03/04

小沢和彦(2011)「組織変革における組織慣性の意義」『早稲田大学大学院商学研究科紀要』73,15-27

  •  組織慣性:構造と対比することで捉えられてきた。
    • Hannan & Freeman(1984)の構造的慣性:環境変化に対して比較的緩やかに反応する=環境と同じ速さで変化できない力。
    • 当初は停滞(=ネガティブ)と考えられてきた→長所もある
      • 環境が安定している場合、高度な再現能力により生き延びる
      • 行動の完成度が高まるために有効性・効率性が増大する
  • 組織変革(org change/transformation)における位置づけ
    • 組織変革が一時的と捉えるモデル(エピソディック)
      • 時折、短期間の大規模な変革を行う
      • 均衡状態から逸脱した時に起こる(=深層構造と環境のズレ=技術変化などによる)
      • 計画的な変革を想定(環境変化を事前に想定して対応)
      • 解凍・変革・再凍結モデル(組織慣性を仮定するため、まず解凍が必要)
    • 組織変革が継続的と捉えるモデル
      • 調整の積み重ねで大規模な変革へ至る
      • 組織変革の本質と捉えられている(Orlikowski 1996)
      • 創発的変革を想定(環境変化が激しい場合に有効)
      • 凍結・リバランス・解凍モデル
        • 凍結=欠点を発見するためにまず現状を明らかにする
        • リバランス=現状の再解釈を行う
        • 解凍=漸進的な変革を再開する
  • ルーチン:複数人が関与するタスク遂行に関わる反復的行動パターン
    • →ルーチンダイナミクス(Fedlman & Pentland 2008)
      • ルーチンをブラックボックスと扱わず、ルーチンの内部に注目する
      • いかに組織ルーチンが安定性や変化を達成できるかに注目する
    • ルーチンの2側面
      • 明示的:ルールとして成文化、明示的、抽象的、行動指針
      • 遂行的:特定の時間・場所における特定の行為、即興的
    • ルーチンの変化
      • 外生的:環境等の影響
      • 内生的:行使者が主体的にルーチンを変化させる、エージェンシーとしての行為者によってもたらされる
        • 行為が常に意図した結果をもたらさない時
        • 行為が新たな問題を作る時
        • 行為が新たな資源や機会を作り出す時
        • 結果は意図したとおりだが、改善の余地がある時
  • 部分最適ルーチン
    • 行為者は限定合理的と仮定
      • 現実の複雑な問題を単純化する→各部門に下位目的が設定される→各部門は全体を考慮する必要がなくなる→部門目的に固執して全体目的を無視する
    • 結果、内生的変化は部分最適ルーチンを増大させる→部門間調整が困難になる→組織慣性を増大させる(沼上ほか2007)
  • エピソディックと継続的はどちらの説明力があるか
    • エピソディック=組織慣性が強い組織を想定
    • 継続的=組織慣性が弱い組織を想定
    • 組織ルーチンが内生的に変化しない→組織慣性強い→エピソディック
    • 組織ルーチンが内生的に変化する→調整困難→組織慣性強い→エピソディック
    • 組織ルーチンが内生的に変化する→調整容易→組織慣性弱い→継続的

2022/03/03

西岡加名恵・大貫守(2020)「スーパーサイエンスハイスクール8校の連携による「標準ルーブリック」開発の試み」『教育方法の探究』23,1-12

  • 2018:総合的な学習の時間→総合的な探究の時間
  • 長期的なスパンで成長を捉えるルーブリックを作る
    • 入学から伸びた生徒の成長プロセスを記した事例レポートを持ち寄る
    • それを学校間教員で共有、生徒を捉える観点(評価規準)と2~3年間の質の深まり(評価基準)を明文化
  • 成果として論文があるから作成できる
  • 各校で課題研究の目標やカリキュラムの類似性を確認した上で作成された点が重要、ルーブリックのみを転用しても使えない

2022/02/16

元濱奈穂子(2021)「高等教育研究における政策研究の限界と展望」『教育学研究』88(3),65-74

  • 欧州質保証研究の動向:政策研究中心=政策で決めた標準枠組みを参照しながら各大学の責任で質保証に取り組むトップダウン設計→個別大学の組織・人員対象の研究へ
  • 政策研究の野心と実態にズレがあるため
    • 質保証=枠組み作成(マクロ目的)VS実際の教育の質改善(ミクロ目的)=評価基準の明確化・標準化(官僚制的対応)VS大学人の自律性→つまり相反する要素のバランスを保つ視点が重要なのに、バランスを欠いてきた(望ましい政策・野心的制度の議論に偏る)
    • 機関の自律性向上は重要と認識されながら、評価結果が政策と一致することを求めるプロセスを採用しがち=大学人はプロセスに干渉・影響しないことが暗に期待される=プロセスを変更する行為は正当でないと見なされる傾向を生む。=質保証の規定に沿わない行為は教員の抵抗・質文化の不在という問題として扱われる。
  • グローバリゼーション言説の過剰な支持
    • 特定の制度が特定の価値規範と結びついて世界的に広がっていく(組織内の合理性よりも組織外の環境に適応するために変化する)→各国の制度は世界モデルを基準として類似したものに収斂する。
    • →グローバル化研究は、言説的要素、公式の構造や手順、トップダウンの意思決定プロセス」に焦点を当てがち

2022/02/15

加藤奈穂子・尾澤重知(2021)「大学入学後の学習経験が大学生の学習観に与える影響」『日本教育工学会研究報告集』2,32-39

  •  目からウロコ=(1)インプットとアウトプットがある(講義と議論がある)、(2)誰かと関わりながら進むことで自分の知識が深まる、(3)最先端の知識・スキルが学べる
  • この学習経験がアクティブラーニングに先行要件

2022/02/14

武谷慧悟(2021)「授業へのエンゲージメントに及ぼす調整方略の複合的効果」『大学評価・学位研究』22,3-18

  •  エンゲージメントの3側面:
    • 認知=注意,集中,挑戦への選好,認知的な参加を含めた概念
    • 感情=楽しさ,熱中,退屈,不安といった学習者の感情的な反応に関する概念
    • 行動=学習や学習課題に関する関与,努力や持続性,忍耐などを含む概念
  • エンゲージメントと動機づけの違い
    • 私的で観察不能な心理的プロセス
    • 公的に観察可能な行動
  • 動機づけは安定性の高い順に
    • 全体(特性):個人特性としての比 較的一貫した動機づけ
    • 文脈:特定の活動に対する動機づけ
    • 状況:いま・ここにおける動機づけ
  • エンゲージメントを形成する要因
    • 学生の置かれた文脈(学校規模、教員支援、同級生との関係、学習課題の特徴等)
  • 調整方略:学習に投入する努力量を規定する→エンゲージメントを高低させる調整方略の組み合わせを明らかにする
  • 従来:成績重視方略=感情エンゲージメントに負→他の方略と組み合わせて高める
  • 授業に関心がない学生:学習内容と自分の興味をむずび付ける+個人で学習+成績を目標にしない指導→感情的エンゲージメントを高めることが重要

2022/02/11

牧野みのり・尾澤重知(2021)「PBL型授業における対話型レポートの評価方法の開発」『日本教育工学会研究報告集』4,9-16

  •  対話型レポート:仮想インタビューを用い、仮想の他者との対話によって,振り返 りを促す要素を持つレポート。教員や学生に対してインタビューを行った想定で、授業や、自身の学習成果を紹介する「記事」を書く課題。
    • 本実践では、質問と回答の形式で書く、ターゲットを明確に定める、インタビュア ー」「自分自身」「教員」「高度授業TA」を登場させるが要件。
    • 評価は、3つの観点で行う。
      • 内容の網羅性:授業内容全体を振り返ることができているか(包括的な観点)=ペーパープロトタイピング、 プロジェクト活動、そして振り返り手法の 3 つの要素がレポート内に含まれているか。
      • 問いの質:事実を問う質問、高次の認知活動を引き起こす質問が含まれているか。
      • ストーリーラインの明確さ:想定する読者とレポート内の登場 人物が一致しているか(対話型レポートは他者視点が重要であるため、想定する読者を明確に定めているかや、著者が設定したターゲットに沿った人物が登場しているかが重要)。

2022/02/09

Lee, J. (2005) "Asiatic Values in East Asian Higher Education: From a Standpoint of Globalization," Globalization, 5(1)

  • グローバル化時代の高等教育:教育の質向上と文化的アイデンティティの確立が重要
  • 価値:様々な定義がある
    • 文化的価値:文化における価値と実践の組み合わせで定義される(Swidler 1986)
    • 倫理的価値:モラル・規範(Shea 1988)
    • 社会的価値:メンバーの要求と社旗の要求をバランスさせる(Parsons and Shils 1951)
  • アジア的価値観:日本の発展前は、産業化の障害と考えられていた
    • ウェーバーの二重論:急速な経済発展の源泉 ⇔ 産業化の遅れと金融危機の原因(本稿ではこの二重論を批判する)
  • アジア的価値観の政治文化:長老支配、権力者の絶対的リーダーシップ、無条件の忠誠
    • 階層が、権威と服従の2要素で成立している
    • これが社会のあらゆるレベルに適用されていた
    • 西側から見たこの短所:権威的リーダーシップ、長老権威、相手への不寛容
  • アジア的価値観の社会経済文化:家族主義、集団中心主義
    • →国家主導経済発展モデルの基礎になっている
    • 一方で閉鎖的・利己的システムであり、利己的集団主義という負の面がある
  • アジア的価値観には二面性がある
    • 西側理論は負の側面しか見ていない
  • アジア的価値観の高等教育:長老とえこひいき
    • 学習は社会的地位を得るためであり、国家経済を発展させるため
    • 一方で過剰な教育熱を生む
    • 組織文化でも階層的権威順序や互恵的人間関係が強調される→同質的な閉鎖組織システムをつくりやすい(年長者・若年者間、管理職・教員間、教員・学生間、先輩・後輩間での温情を生む)
    • これらは負の側面を生む:派閥主義(オープンな競争システムでの学術的発展を妨げる)
    • 教員学生間で重大なミスを見落としがちになる(学生は教員の言うことを批判しない、若手教員は年配教員に意見しない)
  • 高等教育の規模拡大の中で、負の側面が広がっている。
    • →グローバル化の中で、新しいパラダイムの確立を妨げている

2022/02/08

Taye, M., Sang, G. and Muthanna, A. (2019) "Organizational culture and its influence on the performance of higher education institutions: The case of a state university in Beijing," International Journal of Research Studies in Education, 8(2), 77-90

  •  Tierneyの組織文化6側面に沿って調査を実施
    • 環境、ミッション、リーダーシップ、情報、戦略、社会化 → 個人・組織のパフォーマンス
  • 環境
    • 物理環境:施設、建物、什器、事務用品で決まる
    • 心理環境:他のメンバーとの相互作用で決まる
  • ミッション
    • ミッションステートメントが、戦略と組織のパフォーマンスに影響する
    • ただし、ステートメントが文化に与える影響は正負両方で不明確
    • Tierneyは、どう定義されたか?どう表現されてるか?意思決定に使われてるか?実践との間に合意があるか?を問うことで評価することを提案
  • リーダーシップ
    • 人的交流文化のあるリーダーは、あらゆる階層でコミュニケーション、信頼、チームワーク促進を大事にする
  • 情報
    • 情報文化:Tierneyは、情報が何で構成されてるか?誰が持っているか?どう拡散されるか?で評価できると提案
    • メンバーが創造・共有・使用する情報に関する仮定・価値・規範のこと
  • 戦略
    • 組織文化としての戦略のこと、戦略をまとめるプロセスが重要
  • 社会化
    • 新人がメンバーになっていくことを支援すること
  • 調査設計:ケーススタディを用いる(深く、文脈的でシステマティックな分析をするため)、1件35分の半構造化面接を実施、組織文化の6側面に関する質問を用意
  • 結果:文化がパフォーマンスの善し悪しに影響する認識を、教員・学生が持っている。
    • 対象者は個人レベルのパフォーマンスに影響があると認識
    • 学生=歓迎的な社会化が学術的・社会的問題への対応で有効だった
    • 教員・学生=フレンドリーな環境が取り組みをしやすくする

2022/02/07

Batugal, M. and Tindowen, D. (2019) "Influence of Organizational Culture on Teachers' Organizational Commitment and Job Satisfaction: The Case of Catholic Higher Education Institutions in the Philippines," Universal Journal of Educational Research, 7(1), 2432-2443

  •  組織文化の6構成要素:主流の特性、リーダーシップ、従業員の管理、組織団結力、戦略性の強さ、成功基準
  • この6側面は、それぞれ4つのタイプを持つ:
    • アドホクラシー:高い柔軟性と個性をもとに外的なポジショニングを重視する(内的安定性を犠牲にして)
    • クラン:柔軟性、メンバーへの関心、顧客への感性を重視した内的安定性を重視する
    • ヒエラルキー:安定性とコントロールを求めて内的安定性を重視する
    • マーケット:安定性とコントロールをを求めて外的なポジショニングを重視する

  • 組織コミットメント:メンバーの組織への心理的愛着
    • 勤勉さ、組織資産の保護、目標の共有、好調不調に関わらず組織にとどまるといった行動に表れる。
    • コミットメントの3側面:
      • 情緒的コミットメント:メンバーの組織における感情的な愛着、アイデンティティ、参画の側面
      • 持続的コミットメント:組織を離れるコストととどまるコストの評価
      • 規範的コミットメント:組織への義務感・責務の感情
  • 職務満足:自分の仕事に対する前向きな感情と態度
  • 調査設計:キリスト教系大学のフルタイム教員129名、71%女性、31-35歳ピーク、6-10年勤続ピーク、Cameron and Quinn (1999)のOrganizational Culture Assessment Instrumentで調査
  • 結果:文化タイプはクラン、コミットメントは高い(キリスト教系だから?)、職務満足も高い
    • コミットメントにプラスの影響を与える組織文化は、クラン
    • 職務満足にプラスの影響を与える組織文化は、クラン、ヒエラルキー、アドホクラシー
  • アジアの研究だが、結果は西欧と同様だった。

2022/02/01

Taye, M., Sang, G. and Muthanna, A. (2019) "Organizational culture and its influence on the performance of higher education institutions: The case of a state university in Beijing", International Journal of Research Studies in Education, 8(2), 77-90

  •  組織文化の構成要素
    • Schein(1990):artifacts, values, assumptions
    • Tierney(1998):environment, mission, leadership, information, strategy, socialization
  • 組織文化を理解するには1ケースを深く理解する→北京の基幹大学で学生と教員に、Tierneyの6側面に沿ってインタビュー(各4名)

調査設計と解釈枠組みが甘いことが問題か

2022/01/31

Chang Zhu (2014) "Organizational culture and instructional innovations in higher education: Perceptions and reactions of teachers and students", Educational Management Administration & Leadership, 42(1), 136-158

  •  教育のイノベーションに組織文化が大きな影響を与える
    • イノベーションは、統合的な構造、多様性の強調、協働の重要性のある組織で生まれやすいから
    • ある特定の組織文化が、教育改革を受け入れやすくするかどうかは未知
  • 組織文化:shared philosophies, ideologies, values, assumptions, beliefs, expectations, attitudes and norms in organizations
  • 組織文化の動態を理解する上で、メンバー間の人的関係性の理解が重要
  • イノベーション文化は、組織のパフォーマンスを高める。新しいアイディアを受容しやすい価値観があるため。
  • ただし、文化は多層的・対面的なもの→多様な要素がイノベーションを支持・促進する(リーダーシップ、コミットメント、戦略、構造、支援制度、補償政策、信頼、コミュニケーション、研修、評価、時間、態度等)
  • 中国の大学改革政策=構造変更(統合・規模拡大)、表面的変更(インフラ整備やカリキュラム改革)に注目
    • 官僚的な構造、メンバー間の関心の対立、複雑な人間関係、自律性の欠如等→教育改革努力を困難にする→組織文化に及ぼす影響を懸念(Wu 2009)
  • 1級の大学はよりイノベーティブな文化を持っており、参加的な意志決定や共有ビジョンを持っているが、支持的なリーダーシップが低い

2022/01/29

宮尾万理(2021)「高等教育で求められるクリティカルシンキングスキルの国際水準とは」『日本教育工学会研究報告集』4,140-143

  • 「高等教育開始までに身につける思考力とは、(1)論証に含まれる証拠を評価・使用する力、(2)推論を分析・評価・構築する力である。」とても明解でわかりやすい。
  • クリティカルシンキング≠批判的思考:意義を唱える思考と誤解される。
  • CTは3つの要素を含む:(1)内省的思考(前提となる概念を疑い、より深く問いただす習慣)、(2)合理的思考(論理的・規律的に論証を分析する能力)、(3)Reasonable approach(客観的な立場から公平で偏りのない見方をすること)
  • 大学入学までに身につけるべきCT:注意深いリフレクティブな推論に基づく議論を行う能力を育成し,公平な考え方,独立心,健全な懐疑心,持続力,論証に対する自信,知的勇気などを涵養すること。

2022/01/28

Jeong-Kyu Lee (2001) Confucian Thought Affecting Leadership and Organizational Culture of Korean Higher Education, Radical Pedagogy, 3 (3), 1-11

  •  西欧の4大リーダーシップ論:影響力、特性論、行動論、コンティンジェンシー理論
    • いずれも儒教と合致しないが、あえて言えば特性論
    • 論語に見るリーダーシップは2タイプに要約できる:階層権威的リーダーシップと相互人道的リーダーシップ
  • 論語に描かれるリーダー:gentleman, benevolence, wisdom, courageな統治者
  • 論語に見る倫理観:階層的な統治の上に互恵的な関係があること
  • 韓国は戦後、教育省が強力なコントロールを敷き、自律性が縮小した。大学も自ら権威的なリーダーシップを志向した。
    • 年長者への敬語、年齢順の職位、職位順の座席配置
  • 大学組織の3つの特徴
    • 階層的な閉鎖システムが公式管理構造に残っている(教授会でさえ年長者順の座席順がある、特に年齢が社会的・組織管理的地位を決める際に重要)
    • 学生は教員に従順だが、教員は学生を寛容に扱う。教員が学生を扱う際には、儒教的な価値行動を期待する(要するに親子関係的行動の期待)。
    • 儒教的価値観が組織構造に反映される調書と短所:
      • 長所は上司部下間に互恵的な関係があること、強い倫理観を求めること
      • 短所は男性支配中心の文化であること

2022/01/13

MacLeod, W. Bentley, and Miguel Urquiola. 2021. "Why Does the United States Have the Best Research Universities? Incentives, Resources, and Virtuous Circles." Journal of Economic Perspectives, 35 (1): 185-206.

  •  なぜアメリカの大学は研究力を大きく向上させたのか?単にデザインによるのではなく、さまざまなインセンティブメカニズムを構築してきたことによる。
  • 1800年以降の産業化→専門分化を促進→研究が容易に(研究成果が見えやすくなる)
  • 優れた研究者を優遇する→少数の大学に優れた研究者が集まる
    • トップ100大学にアメリカの大学は40入るが、スペインはゼロ
    • 83%のスペインの大学は何らかのランキングに登場するが、アメリカは23%
  • 研究力を高める仕組みがテニュア制度
  • 高等教育への自由市場アプローチを採用した→各大学は消費者のニーズを満たす行動が取れるようになった。

2022/01/12

Tafere Gedifew, M. and Shimelis Muluneh, G. (2020) "Bulding a change adaptive university: A system of composite indicators to measure and facilitate pervasive changes" Higher Education Quarterly, 1-20

  • Adaptive Capacity: 観察、評価、反応、内外を変革する能力
    • 不確実な環境で必要な能力
  • 環境が変わってもなぜ組織が変われないか:能力が足りないから(マネジメントスキル、教職員の支援など)
  • 文脈依存モデルによる大学のACを示すことを目指す
    • 変革に取り組む大学のACはどれくらい強いのか
    • 組織変革力を図るためのACモデルはどの程度妥当か
    • ACを作るための主要な方法には何があるのか
  • 複雑な組織は複雑な適応システムとして考察すべき→複雑理論(世界を理解する方法)と実用主義(我々は何をすべきか)が相互補完的
  • ACは多様な要因で決まるもの→単一指標で捉えるべきでない
  • Adaptive Leardership:コミットメント、ビジョナリティ、信頼性、エンパワーメント、ケイパビリティが重要な要素
  • Adaptive culture:現在の組織にはAdaptive employeeesが必要
  • 混合研究法を採用:量的データを収集→詳細を質的に研究
    • 古い大学と新しい大学の3大学を使用、22学科10事務室、957名から594サンプル、93質問を5段階評価
    • 37の半構造化面接(30~60分)を実施
  • 質問紙構成
    • AC→5つの潜在変数→19観測変数
      • Adaptive leardership = commitment, visionariness, trustworthiness, empowerment, capability
      • Adaptive culture = innovation & creativity, shared responsibility & accountability, shared decision-making, staff adaptability
      • Resource availability = financial resources, human rescources, technology
      • Effective communication system = information quality & clarity, communication strategy, information accessibility 
      • System thinking = seeing wholes, understanding interconnections, dveloping mulitidimensional view, identifying adaptive challenges
  • 質的面接も、この5つのカテゴリーに沿ってオープンエンドクエスチョンを行う

2022/01/08

de Groot, B., Leendertse, W. and Arts, J. (2022), "Learning across teams in project-oriented organisations: the role of programme management", The Learning Organization, Vol. 29 No. 1, pp. 6-20.

  • グループレベルが組織学習の重要な要素
    • チーム学習はプロジェクトの成果に左右される→プログラムマネジメントの導入で改善できるのではないか
  • プログラム:プロジェクトを束ねる枠組み(独立では実現されない利益をもたらす枠組み)
  • プロジェクト型組織:プロジェクトチームレベルでは強い関係性があり、チーム間や組織全体では関係性が弱いシステム(=ルースカップルシステム)
  • 集団学習:業務の中でメンバー主導で経験から学ぶことを集団で行う能力
  • プログラムが学習に与える影響には4つの観点がある
    • プログラムの特徴と学習へのインパクト
      • heartbeat:既存の機能やサービスを高める(実験的・段階的な変化を実行するための学習)
      • portfolio:共通資源を異なるプロジェクト間で調整する(資源使用の調整のための学習)
      • goal-oriented:新しいシステムや基盤をつくるための調整(不確実性への対処のための学習)
    • 学習のレベルと相互作用のレベル
      • 4iフレームワーク
    • プログラムマネジメントオフィスの役割
    • 学習のオープンさの影響
      • オープンさは、情報の解釈、知識の適応に影響し、ひいては学習能力を左右する

2022/01/06

Rose, A., Dee, J. and Leisyte, L. (2020) "Organizational learning through projects: a case of a German university" Learning Organization, 27(2), 85-99

  •  Project-based organizing:プロジェクトを通じた組織学習
    • 長所:メンバーが校時の学習にコミットする
    • 短所:知識の活用がプロジェクト内にとどまる
    • →PBO研究は知識の転移メカニズムに注目してきた
    • ←知識が形式化されている前提
    • →暗黙知や意味の多様性のある知識では困難
  • Social learning practices:知識は実践を通して作られる社会的活動であり、それが組織学習である
  • 研究目的:知識転移とSLPがPBOをいかに方向付けるかを検討する
    • 事例:全学から教職員が集まる短期プロジェクト
    • RQ:プロジェクト内でどのように学習が生じたか、プロジェクト学習はどの程度知識転移を促進したのか阻害したのか、プロジェクト学習はどの程度社会学習実践を促進したのか阻害したのか
  • 理論貢献:(1)社会学習実践を通して、暗黙知が組織全体に共有されることを示した、(2)知識転移と社会学習実践は補完的だったり敵対的だったりすることを示した、(3)伝統的な機能別組織の片手間で行われるプロジェクトを考察する点(既存研究はあらゆる仕事がプロジェクトを想定、そのためプロジェクト後のレビューなど公式機能に注目、本稿は非公式・アドホックな転移に注目)
  • 4iフレームワークで参与観察事例を分析
    • 学習の社会心理学的プロセスを説明するモデル
  • Intuition
    • 学習は基本的に暗黙的で、プロジェクトミーティング中の、新しい教育に関する議論の中で生じる
    • 参加者はプロジェクトに参加していなかったら得られなかった見方を得られたと言っている。
    • 参加者は専門分野ごとの文化や見方も学んだと言う。
  • Iterpretation
    • 主に若手中堅教員のグループで生じる
    • 多様な方法で議論することで考えが共有された
    • なぜ集団学習が強いのか;若手はプロジェクト雇用の教員だから
  • Integration
    • 専門の異なるメンバー間の共同作業が増えることで、統合が進む
    • ナラティブがプロジェクト内で生かされるかは参加者による。
  • Institutionalization
    • プロジェクトの成果を踏まえて、大学が研究領域にInclusionを入れた。
    • Incusion志向の教育を表彰に加えた
    • 課題は教師教育が専門分野間で未だ分断されていること。

2022/01/05

西村拓生・藤本夕衣・松浦良充 (2014)「「高等」教育とはなにか」『近代教育フォーラム』23,259-267

  • 機能主義:大学の知的活動、特にその教育・学習について、「社会」からの「ニーズ」に効率的に応答してはたらくという「機能」性を第一義的に重視する傾向、あるいはその捉え方を「機能」に還元して論ずる姿勢
    • 20世紀アメリカ高等教育に見られるもの→日本はアメリカの高等教育から強い影響を受けた
  • ニーズに対応することが問題ではなく、無批判に応じて翻弄されることが問題。
    • 大学が社会との関係をつなぎなおすには、大学が大切にする価値とそれを実現する組織・知的活動を自ら再生産する仕組みを作る必要がある。→さまざまな教育段階の教師を算出すること。
  • 高等教育の多義性:
    • 段階:初等・中等→高等
    • 価値:よりすぐれた・より高度な教育
    • 範囲:成人教育を含む多様で広い教育
  • 高等教育という概念はアメリカ独自の用語で1860年代後半から使われるようになった(天野 2013)。

  • ハッチンズ:教育を軸に大学の統合を図ろうと試みた
    • 大学の知的再生産を重視しながら、研究に教育を関連付けた
    • ⇔現在のFDは機能主義の授業観に基づき、知的再生産機能の失望である。

2022/01/04

小沢和彦(2014)「組織変革論における4つのアプローチ」『経営学論集』85

  • 組織慣性への対処:環境変化に対応する組織変革を困難にする要因
    • 組織慣性:組織が既存の状態を維持しようとする性質
    • にもかかわらず、組織慣性はその概念を十分に検討されていない
  • 組織慣性を論じる主要なアプローチ:(1)組織開発アプローチ、(2)意志決定・ルーチンアプローチ、(3)組織文化アプローチ、(4)進化論アプローチ
  • 組織開発アプローチ
    • 行動科学をベースにする、組織のミクロレベルに注目する特徴
    • 組織慣性よりも変革への抵抗という概念を多く使う
    • 組織開発アプローチは3段階モデル(解凍・変革・再凍結)をよく使う
      • このモデルでは変革より解凍・再凍結段階が重視される
  • 意志決定・ルーチンアプローチ
    • 組織ルーチンの変革には多くのコストが結びついている(=コストはルーチンの継続性を促進する)←ここでのルーチンは「高度に複雑で体系化された反応の集合」
      • このコストは正確に評価することが困難
      • ルーチンに不満足がないと、代替のルーチン探索は行われず、組織変革は行われない(ルーチン化されたタスクとされていないタスクに直面する個人は、ルーチン化されたタスクを選択する傾向がある)
    • March and Simon(1958)では、パフォーマンスのフィードバックが不満足をもたらす場合のみ個人が組織ルーティンを変革させると考えられていた→Feldman and Pentland(2003)は、それ以外においても個人が組織ルーティンを変革させる
  • 組織文化アプローチ
    • 共有された:従来は組織全体で共有されたという意味(強い文化)→その後下位部門で共有される文化にも注目
    • 組織のミクロレベルとマクロレベルの双方に注目する特徴
    • 文化は意識しにくいために変革しにくい
    • 組織慣性をもたらす文化は強い文化(業績が低下してもその認識が困難になる)←組織文化の逆機能
    • 組織文化は、環境からの情報フィルター:情報過多を避ける長所と、自文化に合う情報だけを取り入れる短所がある
      • →逐次的な組織変革はできても外部者の介入なしにはラディカルな組織変革は行えない
  • 進化論アプローチ(断続的均衡モデル)
    • 2つの系統:個別組織を対象とするか(断続的均衡モデル)、ポピュレーションを対象とするか(ポピュレーション・エコロジー研究)
    • マクロレベルに注目する特徴
      • 組織は長期の均衡期間におけるインクリメンタルな変革と短期間のラディカルな変革を繰り返すと想定
      • そこでのトップの役割に注目(個人についてあまり論じない)
      • ただし、議論がラフで、規模、年齢、成功期間がなぜ組織慣性と関連するかを理論的に説明できていない。
  • ミクロに注目する、組織開発、意志決定・ルーチンが想定する個人観は素朴すぎる。
  • マクロに注目する、意志決定・ルーチン、組織文化、進化論は、各部門の多様性を考慮せず、一枚岩の素朴な組織観を想定する。
  • 今後の研究課題
    • 多元的な個人の想定、分化した組織観を想定、ミクロマクロリンクが今後の課題

2022/01/03

古澤和行(2016)「組織学習とアンラーニングに関する一考察 ―アンラーニングにおけるアーティファクトの役割を中心に―」『経営管理研究所紀要(愛知学院大学)』23,15-27

  • アーティファクト=人工物:自然と人間の間にあるもの
  • 組織研究では組織文化論として登場した
    • Schein(1985):アーティファクト、価値、基本的仮定
    • Hatch(1993):アーティファクト→価値→基本的仮定→シンボル→アーティファクトの循環モデル
    • Cook & Yanow(1993):組織学習研究に援用、文化の獲得・維持・発展プロセスを組織学習と捉える
    • 本稿:アーティファクトと組織学習を発展させて、アーティファクトとアンラーニングを議論
  • Hedberg(1981)の組織学習
    • 環境との相互作用を通じて学習する(組織の行為の結果を考察することで現実の理解を深める)
    • 組織の学習可能性:(1)組織自体に学習能力がある(Cyert & March 1963)、(2)メンバーを通して学ぶ(March & Olsen 1976)
    • 環境は一定でないため、学習しても陳腐化する。その場合は早く捨てる方が、新し環境に適応できる。
  • Hedberg(1981)の学習
    • ポジティブフィードバック=学習
      • 単に刺激に反応するのではなく、刺激の背後にある現実について試行や実験による探索的学習を行い,学習者と環境の間にある因果関係を発見し、出来事の背後にある前提の理解や、関連する環境の諸側面の因果マップを導くこと。
      • 学習者が環境を創造するプロセスが含まれる。
      • 学習は、学習者が環境を地図化し、 その地図を使って環境を変えるプロセスを繰り返すこと。
    • この前提では、環境変化が激しくても、過剰に安定でも学習不全になる。
  • SRモデル
    • 学習はマルチレベル:低次=シングルループ、メタ=ダブルループ、デューテロラーニング
    • 組織は反応する刺激を選択する:限定合理性のため→
      • 探索機械を抑制、明確な問題に集中
      • 多様な人が多様な現実を解釈=組織は多様な現実に直面
      • 組織が環境をイナクトするのと同じ(意味ある環境は近くフィルターを通して刺激が処理された時に生まれる=環境は組織の内部にある)
  • Simon(1982)の人工物
    • (1)人間によって合成される、(2)外見上自然物を模倣しても、自然物の実質を欠いている、(3)機能、目標、適応によって特徴づけられる、(4)設計されている時は記述方のみならず命令法によっても議論される。
  • 組織メンバー以外の外部者にとっては、そのアーティファクトが本当に意味するところについて外側から理解することは容易ではない。
  • Cook & Yanow(1993)以降、組織学習を文化的パースペクティブから分析するために、アーティファクトを取り上げる研究が増えた。
    • オフィスの配置は文化を反映する(Yanow 2006)
    • メンバーはアーティファクトを介してコミュニケーションを行う(Gagliardi 1990)
    • →同じ組織文化を背景とするメンバーが、アーティファクトを介する実践を繰り返すうちに、アーティファクトや阻止の価値について疑いを持たなくなる=アーティファクトが持つ他の意味や価値を覆い隠す。
    • →新しい意味や価値に目を向けるには、既存のアーティファクトを変化させたり置き換えることが重要。
  • 環境を知らないと反応・実験ができない⇔情報量が多く情報処理能力は容易に使い果たされるため、組織は実験的でない → 問題は山積した後にしか知覚できない。→ 実験を奨励する組織デザインが重要。
  • Hedberg(1981)組織を実験的にする4つの方法
    • メンバーの態度:最適なSRは長く続かないという意識を高める(=学習・棄却を継続的に行う)
    • 曖昧性への耐性があり実験への好奇心が強い人材をトップに置く
    • 挑戦やリスクに寛容な報酬体系をとる(失敗に代償を求めない)
    • 訓練技法をつかう(ブレーンストーミング、ロールプレイング、シミュレーション)

2022/01/02

小沢和彦(2014)「組織変革における組織文化の強さの組織慣性への影響」『日本経営学会誌』34, 63-74

  •  組織変革を必ず成功に導くモデルは発見されていない→なぜ容易に発見できないかを探究する。
  • その理由の1つは、組織慣性(=組織の現状を維持する性質)があるから。
    • 組織全体で広く共有されている文化が組織全体の文化の慣性をもたらす。(文化が共有されていない組織の慣性は必ずしも十分に検討されていない。)
    • 文化が共有されていない組織の2パターン:
      • 分化した組織:組織全体で共有された文化は強調されないが、各部門内の文化が明確に見られる組織
      • 分裂した組織:さらに各部門内でも明確な文化が見られない組織
    • 本稿は分化した組織に注目
  • 組織変革=組織の主体者が環境の変化がもたらす複雑性の中で行う組織の存続を確保する活動
  • 組織文化研究の共通の特徴:観察可能な行動の背後にあるものに注目する。
  • 組織慣性のタイプ:組織全体の慣性、組織文化の慣性、経営資源の慣性。
  • 従来研究の特徴:組織全体の文化の慣性の原因は、組織全体の強い文化にある。
    • しかし、強い文化の明確な定義が見られない。
    • たとえば「所与の組織のなかで人々によっ て広範囲に共有された組織文化」
  • 日産自動車は、組織変革をする必要性を感じながらも実行できない強い組織慣性を経験→どのように組織慣性がもたらされるかを知るケーススタディとして適切。
    • データソース:6回インタビュー(V-up推進チームの3人)、書籍、社内資料、ウェブ上の資料、雑誌記事、新聞記事、アニュアルレポート、有価証券報告書
    • レトロスペクティブなバイアスを防ぐために2時資料を使って事実確認
  • 改革以前=機能別組織=各部門で異なる価値観
    • 生産部門は技術志向の価値観、世界一の工場を作ろう→部門内の一貫性・部門間の対立
    • 副社長は取締役会で担当部門を中心に考える
    • 業績悪化→部門間で原因を押しつけ合う⇔部門内では自部門の責務は果たしていると思っていた(=危機感の欠如の原因)←危機感は認識であり、業績が悪化しても危機感が欠ける場合はありえる。
  • なぜ危機感があっても変われないのか:顧客志向は口に出されていた←技術志向の中で顧客満足を考えている=自文化・慣性の中でスローガンを知覚している
  • 総括:全体共有文化弱い+部門文化強い→業績悪化で責任の押し付け合い→部門目標の達成知覚→危機感欠如→既存文化優先→変革困難

2022/01/01

北居明(2011)「組織文化の測定と効果 : 代表的測定尺度の検討」『大阪府立大学經濟研究』57(1), 41-66, (2), 49-67

  • 5つの組織文化測定尺度の特徴を検討する
  • Organizational Culture Survey(OCS)
    • 4次元尺度
    • 関心:組織文化と成果の関係の分析
    • ケーススタディから得られたGTAで尺度作成
    • 高い成果につながる文化:(1)従業員の参加・高いコミットメント、(2)(1)が当てはまらない場合→規範的統合・強い文化
    • 組織文化のタイプ:(1)参加=有効な組織は人々をエンパワーメントする、(2)統合=一貫性が高く、よく調整され、高度に統合された強い文化を持つ組織が有効、(3)適応=顧客志向、リスクを負う、失敗から学ぶ、変化を作り出す(よく統合された組織は変化に適応が難しい)、(4)使命=組織の目標や戦略的目的を定義し、将来ビジョンを表明する組織が成功する


    • つまり、4文化特性は両立しにくい
    • 文化と主観的成果の関係:売上成長率に効くのは適応、ミッション、利益に効くのは一貫性、ミッション、品質、従業員満足度、全体的成果には全て効く
    • ただし、この結果は国によってかなり違う
  • Competing Values Framework(CVF)
    • OCSは帰納的モデル、CVFは演繹的に導出されたモデル
    • 最もよく使われる:文化と従属変数、媒介変数との関係の分析に関心がある
    • 組織有効性研究から演繹的に尺度を作成→2次元4クラスター=柔軟性・自由裁量 VS 安定性・コントロール、内部重視・統合 VS 外部重視・差別化
    • これらを組み合わせて4タイプを導出

    • 大学・病院ではクランタイプが相対的に有効
    • Cameron and Feeman (1991):アメリカ334大学のデータから成果と関係があるのは、クランやアドホクラシーである。
  • Organizational Culture Inventory(OCIy)
    • CVFと双璧
    • 成果に影響する12の思考スタイルを測定するもの
      • 人間的・援助的、関係的、承認的、保守的、依存的、回避的、反抗的、強制的、競争的、能力・完全主義、達成、自己実現の12。
      •  
  • Organizational Culture Index(OCIx)
    • 個人のキャリア上の成功は、知識・スキルの向上だけでなく、本人のパーソナリティやモチベーションと所属する組織の文化との適合に左右される
    • 官僚的文化、革新的文化、支持的文化の3タイプで文化を捉える
    • 個人レベルの組織文化知覚と個人のコミットメントの関係を見ているに過ぎず、集団レベルを捉えていないという批判
  • 市場志向
    • 市場志向を文化として捉える研究:具体的には、顧客志向、競争志向、部門間調整の3つで捉える
    • 非営利組織では市場志向行動が文化形成につながる:市場志向の行動が市場志向の文化を創り、それが顧客満足の成長につながり、経営資源の成長につながる。