2022/08/07

松嶋登・高橋勅徳(2007)「制度的企業家の概念規定:埋め込まれたエージェンシーのパラドクスに対する理論的考察」『神戸大学経営学部ディスカッションペーパー』2007−48

  • 制度的企業家:制度に埋め込まれながら制度を変革する企業家(矛盾を含む)
  • 古典的企業家論:企業家を制度変革主体と捉えた(=エリート主義的起業家像)←2つの方向で検討された
    • 企業家の心性の解明:プロテスタントとしての職業倫理が家庭教育・教育制度を通じて刷り込まれた心性である。
    • 経済発展それ自体が制度化されたものである:企業家の存在を前提としながら、彼らが新結合を遂行する際に初診機能を果たす銀行家、新結合のルーチンを維持する管理者との総合的な関係性のこと。
  • →経済発展の果てに、企業の大規模化・集中化が生じ、経済活動は合理化・非人格化され、企業家の役割そのものが消失すると考えられていた(=経済を1つの機械として管理する時代精神を生む→社会主義という新たな制度への移行)。←エリートの存在を前提にしている。
  • エリート像研究から企業家研究は問いを変えた:現実の企業家行動は何か
    • →イノベーションの担い手としての企業家という位置付けは継承されたため、既存制度を所与とした企業家による正当性獲得(=イノベーションの実現に必要な資源動員に利害関係者の説得が必要なため)の議論に。
  • 現在の関心:企業家による制度変革のメカニズム(これまでの研究は、企業家を制度の変革者としながらその論理を無視してきた)
    • 背景:制度変化への関心が高まった(新制度論は制度的環境への服従という単純モデルだった)
    • ただし、制度の中心・周辺議論に一貫性がない問題がある(新興産業で正統性を得る研究=周辺と、成熟産業でサービス多様化を描く研究=中心など)。←研究者の都合で、中心か周辺かが選ばれている。
    • いずれも、企業家は制度から距離を置いた特殊なエージェンシーの持ち主という前提を置いていることが問題(だから、制度の中心に位置づく企業家も、外部環境変化などの外生要因がないと制度変革ができない)。
  • →制度と企業家を二元配置せず、企業家のエージェンシーの発言論理が必要:企業家が制度的慣行を実践の内から経験し、埋め込まれた制度を見直していく省察能力について、企業家の能力に還元せずに説明する論理を確立すること。