- カーネギー単位とは、教育提供者との120時間の接触を1単位とする定義から成り立っており、これは1つの科目を毎日1時間ずつ、週5日、年に24週受講するという計算に基いている。
- 米国ハイスクールの学生は、一般的に毎年6~7つのカーネギー単位を取得している。
- これに対して、高等教育機関では、学生は単位時間(credit hour)を取得する。
- 単位時間は、カーネギー単位の考えを基に、学期あたりに教員と接触する時間数(contact hour)を週平均で換算する。例えば、3単位(時間)が取得できる科目の場合、毎週3時間の授業を1学期15週にわたって開講することになる。
- このような概念のもと、学期ごとにフルタイム学生の基本的な履修量である15単位(時間)を取得し、前後期併せて30単位を取得することになるので、4年間での学士号取得には120単位を取得しているということになる。
2017/12/28
カーネギー単位
2017/12/26
両角亜希子・小方直幸(2011)「大学の経営と事務組織」『東京大学大学院教育学研究科紀要』51,159-174
- 私立大学ガバナンスのパターン化
- 法人と教育研究の二重構造に注目
- 学長付帯型、理事長・学長兼任型、経営・教学分離型
- 理事会・評議会メンバー特性に注目
- 構成員参加型、執行部支配型
- 組織風土の実態や効果に関する実証研究は未開拓
- → ガバナンス特性、人事制度、組織風土が経営状態に与える効果を推定する
- 主な結論
- ガバナンス特性(オーナー理事長、職員理事存在、教授会自治強)は有意
- 適切なパワーバランスは経営改善にプラス
- 組織風土も有意
- 業務のしやすさ、課題共有はプラス
- 経営状態を見る指標が定員充足率である点に注意
2017/12/25
林伸二(2001)「大学事務組織の改革の鍵」『青山経営論集』36(2),1-31
- Hambrick(1981)の研究
- 大学経営者:地位が高いほど、生産、規制、組織・管理の精査活動活発。
- 大学経営者は、病院・生保ほど生産セクターを重視しない(技術環境精査に積極的でない)。
- 生産セクターの精査活動を行う人は内部で強いパワーを持つ。
- 経営者のパワーと経営戦略に相関あり
- 防衛型戦略(既存サービスの質向上・低価格):生産セクターの精査活動活発=内部パワー強。
- 探査型戦略(新規プログラム重視):収益セクターの精査活動活発=内部パワー強。
- Milliken(1990)の研究
- 大学の資源依存性は、管理者が環境変化をどう解釈するかを決めるが、管理者の環境不確実性知覚・環境変化対応は左右しない。
- 資源依存性高=資源獲得可能性の低下への適応力低(=教育プログラムの魅力度への依存性・学生選抜方法の種類の多さへの依存性高)
- 大学組織の特徴は、環境の解釈プロセスに影響する
- 管理者の自組織有効性(環境変化適応力)知覚→環境変化解釈(自組織は有効=環境を脅威とみなさない)
- Pfeffer and Salancil(1977)の研究
- 大学運営の基本は管理方式ではなく、学部間のパワー不均衡と経営者のパワー志向にある。
- 重要な問題は、自己のパワーの維持・強化の観点から意思決定する傾向がある。
- 有力学部(パワー強学部)は、クリティカルでも稀少でもない資源について、自学部に都合のよい判断基準を主張する。
- パワー弱学部は、資源獲得能力が学内政治構造に関する知識・行動で決まる。
- 経営者とパワー強学部は対立関係にある(全学への追加資源をパワー強学部が獲得できない)。
- Graen(1977)の研究
- リーダーの上方影響力は、部下の職務態度と行動に強く影響し、満足度や業績も高い。
- Likert(1961)の連結ピン研究がベース。連結ピンは、大きなシステムを構成する会システムのリーダーで、部下に対する影響力(下方影響力)と上司への影響力(上方影響力)を行使し、対人関係能力や集団間の調整能力が求められる。
- Blau(1970)の構造文化理論(Theory of Structural Differentiation)の5命題
- 組織規模の増大は、管理スタッフの相対的な数を減らす。
- 組織規模の増大は、組織文化を高める(水平的と垂直的がある)。
- 組織分化の高度化は、管理スタッフの相対的規模を増加させる。
- 組織規模が増大している組織は、管理スタッフと組織分化の絶対的な規模が、組織規模の増加よりも小さい割合で増加する。
- 組織規模が減少している組織は、管理スタッフと組織分化の絶対的な規模が、組織規模の減少よりお小さい割合で減少する。
- なのに、大学では、組織規模が増大すると管理スタッフが増える(Cullen et al. 1986)。
- George and Bishop(1971)の研究
- 組織風土知覚=f(組織構造特徴に関するメンバーの知覚 × メンバーのパーソナリティ特性)
- 組織構造特徴とメンバーのパーソナリティ特性の間に調和があれば、組織メンバーは望ましい組織風土を知覚する
- この仮説は学校で支持された。
- Abbott(1974)の研究
- 大学の威信の高さは適応的目標(コスト減、社会ニーズ充足、学生教育、市民サービス、キャリア支援、社華人教育)の重視と関係がない。
- 財政基盤弱い→適応的目標重視
- 威信を高めるには、適応的目標以外の目標を重視する(?)。
2017/12/19
木村琢磨(2011)「組織内政治と企業内キャリア」『生涯学習とキャリアデザイン』
- 組織における意思決定(Allison 1971)
- 合理的モデル:価値の最大化を目指して合理的に選択
- 組織プロセスモデル:確立済ルーチンで多くの選択を行う(新たな解決策の選択をしない)
- 政治モデル:コンフリクト・権力闘争・合意形成を通して意思決定がされる
- 政治を生み出す組織的要因:不確実性、曖昧性、資源の希少性
- 政治モデルの意思決定=組織構造や人事・処遇に関する意思決定も組織内政治の影響を受ける(=従業員のキャリアに影響する)
- 組織内政治の捉え方
- 組織の基本的な機能に貢献しうる多様な社会的行動(=広義の組織内政治)
- Pittgrew(1973)の定義:組織における資源配分システムに要求を出すために個人または組織のサブユニットによって行われる行動。
- Pfeffer(1981)の定義:選択に不確実性や不同意がある状況において、自分にとって望ましい結果を得ることを目的として、パワーやその他の資源を獲得・開発・使用するために組織内で行われる活動。
- 組織によって正式に認められていない自己奉仕的行動(=狭義の組織内政治)
- Mintzberg(1983)の定義:非公式で表向きは局地的で、一般的に軋轢を生じさせ、そして特に技術的な意味で非合法な個人または集団の行動であり、公式権限や公認のイデオロギー・専門性によって認められていない行動。
- Ferris et al. (1989)の定義:短期的・長期的な自己の利益を最大化するために、他者の利益に合致する形、あるいはそれを犠牲にしうる形で、行動が戦略的に設計される社会的影響のプロセス。
- 組織内政治の類似概念
- 組織内政治=組織サポートがない:必ずしもそうでなく、別の概念と考える。
- 組織内政治=組織的公正がない:関係はあるが別の概念。
- 組織内政治の研究アプローチ
- 組織内の従業員や集団による政治行動・影響戦術に着目(実証主義的)
- 組織内の政治行動に対する個々人の知覚に着目(社会構成主義的)
- 政治行動・影響戦術を効果的に遂行するための政治スキルを分析対象とする
- 政治行動研究
- Allen(1979):組織内政治=機能的にも逆機能的にもなる
- 政治行動を8つに分類:「他者への攻撃」「情報の活用」「イメージ形成・印象マネジメント」「アイデイアへのサポートの形成」「他者の賞賛・ゴマすり」「パワー獲得のための連帯」「影響力のある人との関わり」「義務感・互恵的関係の形成」
- Tedeschi & Melburg(1984):「戦略的か戦術的か」「アサーティプかディフェンシブか」の2軸で政治行動を4つに分類
- 戦略的行動:長期的な個人の利益につながるような評判を形成しようとする行動。
- 戦術的行動:短期的でより具体的な目標に向けた行動。
- アサーティブな行動:自分が組織の成功につながる特徴や能力を持っている人間であるということを,組織内の他者に確信させるための自己顕示行動。
- ディフェンシブな行動:自身が置かれた苦境に対する反応としてとられる行動。
- Kipnis et al.(1980)による8分類:影響戦術を「アサーティブネス」「ゴマすり」「理性的行動」「制裁」「便益の交換」「上位者へのアピール」「妨害」「連帯」という8次元に分類
- Zanzi & O'Neill(2001)の政治戦術分類:公認=「専門性の活用」「上位目標」「ネットワーキング」「連帯形成」「説得」「イメージ形成」、非公認=「脅し・あてこすり」「策略」「乗っ取り」「情報のコントロール」「代理者の利用」「人材配置への影響」「他者への攻撃」
- 政治行動とキャリア
- 人事に影響する:人は自分と似た人を高く評価する、自分の評価を高めるために部下を高評価する、昇進がごますりで決まる、など。
- 組織内政治知覚(POPs)とキャリア(人は現実そのものではなく,現実に対する知覚に基づいて行動する)
- 研究として価値がある(?)
- (1)実際の政治よりも測定しやすい、(2)利害関係者の認識の上での現実であるために,行為者の考え方や意思に実際の政治よりも強く表出される、(3)実際の政治よりも従業員の態度や行動に強く影響すると思われるため。
- Ferris et al.(1989)のモデル
- 政治スキル:仕事において他者を理解する能力,および,その知識を用いて,個人的・組織的な目標の達成に役立つように他者の行動に影響を与える能力(POPsモデルの理解とコントロール)
- 政治スキルは学習可能で経験によって向上する。
- 政治スキル:
- 社会的鋭敏性(他者を鋭敏に観察し、さまざまな社会的状況に敏感に反応し、適応する能力)
- 対人影響力(微妙なニュアンスを把握する力や説得力を持ち、周囲の人に影響を与える能力)
- ネットワーキング能力(人的 ネットワークを形成し、それを自分または自分が属している集団・組織の利益のため に活用する能力)
- 仮現誠実性(自分が高潔・正直・誠実な人間であると他者に思わせる能力)
- 研究の歴史は浅い。
2017/12/14
三浦泰子・川上泰彦(2017)「高大接続改革をめぐる研究動向レビュー」『兵庫教育大学学校教育学研究』30,197-208
- 現行の大学入学者選抜の大きな影響下で高等学校教育が抱えている課題
- 選抜性高:自ら課題を発見し解決するために必要な思考力 ・判断力 ・表現力等の能力や、主体性を持って多様な人々と協働しながら学ぶ経験を持つこと
- 従来型:主体性や学修のための明確な目標が不足
- 困難型:基礎となる知識・技能自体の質と量 が不十分(入学者選抜が機能しなくなっている大学 に漫然と送り出される)
- ALは主体性の醸成につながらない
- 学ぶべき必然性の自覚(=目的意識の醸成プロセス)が必要なため
- 主体性は、進路意識(進学先決定の意識)・目的意識と密接に関連しながら、学力の三要素では言及されない。
- 生徒が各大学のAPに沿って進学先を決定することが暗黙の前提になっているが、高校教育はそれに対応できていない。
- (ALは学力向上の教授法とされているからでは?)
- 実は、進路意識や目的意識は切実な要求になっていない。
- → 大学選択と将来のつながりが不明確な時代では、大学選択は脆弱で曖昧にならざるを得ない。
- 大学側中心の高大接続=高校学習者の視点が欠如(=主体的な学びと進路意識・目的意識)
- 探求学習については、大学での学問積極性や授業満足と必ずしも相関があるわけではない(学問分野選択のレリバンスを見いだした生徒も多くない)。
- 目的意識の形成プロセスも不透明(高大連携活動が進学に役立ったという+回答はあるものの)。
- → 総合的な学習が目的意識形成につながっているとはいえない。
- 中高での学びは自分の生き方と重ね合わせられることがない
- → モチベーションがないのに勉強する状態
- 高校生の学ぶ力の低下(谷口 2012)
- (1)言語力の低下、(2)知の量的不足と質的低下、(3)知に向かう姿勢の劣化
- 地方公立校生徒の意識
- 社会的自己実現志向と難関大学志向の結びつきは、都市部より地方の生徒が強い。
- 地域間移動者ほど社会への貢献意識を伴ったエリート意識と地域間格差是正への意識を持っている。
- 地位達成志向:進路希望+、内発的学習態度-
- 自己実現志向:内発的学習態度+ ← 社会的自己実現志向<個人的自己実現志向
2017/11/30
榊原禎宏・森脇正博・西村府子(2013)「教師はなぜ授業中の挙手を好むのか」『京都教育大学教育実践研究紀要』13,223-232
- 教員が懸命に教えてもどのように生徒が学習するかは不明確なのに、生徒の学習を第一義にすればどんな働きかけが有意かは曖昧である。
- 「学び」という表現は柔らかなイメージを滑り込ませ、生徒が何をどのように学習するかを追求しない点でずるい表現。
- 教育と学習との関係を実証できず、直観以上のものになりえないために、教育実践では目標の手段化がしばしば生じる。(=教育活動の制度化・硬直化)。
- 挙手
- 挙手は、授業に対する意欲や理解の表れと教師から一方的に定義され、いつどのように挙手を求めるかは専ら教師の判断に拠る。挙手の仕方も各教師の「マイ・ルール」にもとづきやすく、これから外れる子どもは否定的なラベリングをされやすい。
- 教師は子どもに手を挙げさせ、誰を当てるかを決める権限を行使することで、大きな自尊感や満足を得ることができる。
- 挙手は、子どもの人間関係も投影している。クラスで「浮く」ことを心配する生徒は、挙手したいけれどできないというアンビバレントに苦しむことになる。
- 挙手は、教師の知っていることを答えさせるカテキズム(宗教的問答)の様相を呈する。これは、「自ら学ぶ」人間の育成には逆行する形式陶冶である。
2017/11/13
Dee, J. and Leisyte, L. (2017) "Knowledge sharing and organizational change in higher education," The Learning Organization, 24(5), 355-365
- 研究の目的:大規模公立大学で知識フローを促進したり阻害する境界条件を明らかにすること
- 2つの取り組みに注目して分析:FYEセミナー科目の創設と学生アドバイスセンターの創設
- 一般に、対立する集団同士での知識の組織化は困難(Berends and Lammers 2010)
- マネジャーは組織学習を組織の効率性や効果を高める手段と見なしやすい
- 教員集団は新しいアイディアや革新的な取り組みを求める機会とみるが)
- 知識が組織境界を越える3つの要素
- 組織メンバーが転移を求める知識のタイプ
- 暗黙知ほど転移が困難:形式知にすることで転移を促進できる
- 知識フローに関する認知的・社会的プロセス
- 4Iプロセス
- 知識を送信・受信する組織間の境界条件
- 知識を断片化する
- 境界条件の分析方法(Carlile 2004):3つの条件を記述する
- Syntactic boundary:部署間のコード・ルーチン・プロトコルの違いを反映するもの → 知識に関する共通の語彙をつくることで越境しやすくなる
- Semantic boundary:部署間の異なる解釈を反映するもの(教育成果の測り方が学部間で違う=教育賞を作る基準が全学でつくれない) → 共通ストーリー・共通人工物をつくる(全学から構成される委員会で賞を決める)
- Pragmatic boundary:部署間の関心や主張の違いを反映するもの(共通言語を作ることは声の大きい部署の意見を反映すること)(研究を強化しようとする方針の下で教育の重要性を主張する = 共通言語の生成では解決できない → 知識の転移プロセスがより重要になる)
- 知識の転移プロセスには、知識の共同生成と共通関心の確認の2つがある

- 分析方法:大規模公立大学の戦略委員会メンバー:51教員と40管理職、主題分析
- FYE:執行部案に教員が懐疑的→1年遅れで実現
- 全学委員会を設置して議論:知識の共同生成が行われる
- アドバイスセンター:全学委員会が作られない=執行部からの知識転移のみ行われる
- 同様に1年遅れで実現したが、教員が懐疑的なまま効果が小さい
2017/11/10
藤原宏司(2015)「IR 実務担当者からみた Institutional Effectiveness」『大学評価とIR』3,3-10
- アセスメントの名称
- 学生:アセスメント
- 学科:プログラムレビュー
- 大学全体:Institutional Effectiveness
- →なぜか?:大学執行部が自分たちのパフォーマンスを評価されるというイメージを持ち拒否反応を示したから。
- 現在の米国:直接指標を用いたアセスメントが求められる
- Ex. 批判的思考力の教育効果測定に学生実態調査の結果は推奨されない
- 結局、IEとは継続的改善の循環的プロセスのことである。
2017/11/09
藤枝茂雄(2017)「地域協働による教科横断的な学びに関する考察」『岡山大学教師教育開発センター紀要』7,21-30
- 教科横断的な学びに関する指導上の課題:校内研究に関する協議の枠組みが「教員たちの自明視する教員の文化」の中に閉じており、その枠を越えて教員の教育観や児童観などを根本的に問い直すという視点が少ないこと。
- → 学校や地域においては、歴史的、文化的、社会的に組織の役割や成員の行動を規定してきた「固有の枠組み」が存在する。
- → 具体的には4つの壁。
- 教科・校種の壁
- 小中学校の職務文化の壁:小学校=理想主義、中学校=現実主義
- 学習指導要領に由来する壁: 合科的な教科学習の枠組みによる授業はない
- 地域と学校の役割分担意識による壁:学校=学習指導や教材開発、地域=安全活動・学校環境整備サポート
- 活動理論
- 第1世代(ヴィゴツキー):「主体」「対象」「それらを媒介する文化的な人工物」の三つを結んだ三角形のモデルを提示
- 個人と社会を媒介する文化的人工 物を人間の行為の要因としてとらえることで、「両者のあいだにあった裂け目」を克服
- 第2世代(レオンチェフ):分業が共同体における個人的行為と集団的活動のあいだに分化を引き起こしたことに注目
- 活動の概念は、 個人という主体と共同体との複合的な相互関係に焦点が合わされることになった
- 第3世代(エンゲストローム):相互作用する活動システムのネットワークという概念的な枠組みを持つ
- 二つの活動システムの相互作用を含むものに拡張
- エンゲストロームの活動理論
- 主体と対象あるいは行為者と課題領域の間の相互作用は、さまざまな記号や象徴を含む道具によって媒介される。しかしながら、この三角形の最上位の部分は氷山の一角に過ぎない。ルール、コミ ュニティ、分業といった、活動のより見えづらい社会的媒介物が、このモデルの下部に描かれている。 システムの要素間には連続的な変容がある。活動システムは絶え間ない再構築そのものである。
- 最近接発達領域(ヴィゴツキー)
- まだ成熟してはいないが成熟中の過程の中にある機能、今はまだ萌芽状態にあ るけれども明日には成熟するような機能を規定するもの
- 人が支援や相互作用なしにひとりで何ができるか ではなく、より経験のある他者の助けを借りて何が できるかということの方を吟味するなら、私たちは人間発達の潜在力をダイナミックに理解することが できる
- 活動システムの発達
- 個々バラバラの、内的矛盾をはらんだ学習行為を織り糸として結び合わせ、社会的に新しい活動の構造(新しい対象・新しい道具などを含む)を生起させ ること
- = 歴史的に累積されてきた「アーティファクト」「ルール」「分業パターン」に重層的に媒介された人間の学習の「集団的な学習システム」を変化・再編させ、「新たな活動への拡張」に挑戦すること
- この学習活動の力となるものが、活動システムに内在する幾種類かの「矛盾」や「板挟み状態」であり、それをもとにシステム自身のもつ歴史的・文化的な枠組みをシステムの三角形の頂点に描かれて いる諸要素が自己更新するとき、そのシステムによ って成り立っている集団や組織は最近接発達領域をわたり、新たな状況、新たなシステムを生み出す
2017/11/08
河井亨(2012)「Y. エンゲストロームの形成的介入の方法論」『京都大学大学院教育学研究科紀要』58,453-465
- レヴィンのアクションリサーチの方法論的核心は、「机上の空論ではなく、実際の場に根づき、さらにその場を変革していく研究、研究の進展とともにデータからさらに理論を生成展開し、実際の社会変革を生み出す研究」という変革志向と形成的志向にある。
- 文化歴史的活動理論もまた、方法論的行動主義あるいは方法論的個人主義を批判し、協同的実践に基づく変革志向と形成的志向を方法論的核心に据えている。
- チェンジラボラトリー:「発達的ワークリサーチ」を実際に進めるうえでの具体的な手法。
- 大きな組織の中の相対的に独立していて実験の許容される活動システムを単位として行われる。
- 形成的介入:チェンジラボラトリーという手法・アクションを支える方法論
- 直線的介入:
- 開始点:介入の内容とゴールは、介入に先立って研究者に知られている。
- プロセス:実践者は抵抗なく介入を実行することが期待される。実行の困難はデザインにおける脆弱さと解釈され、その脆弱さはデザインを純化することで修正可能と解釈される。
- アウトカム:目的は、全変数をコントロールし、新しい場面で転移されて実行される時に同じ望ましい結果を信頼性を持って産出するような標準化された解決モジュールに到達することである。
- 研究者の役割:研究者は全変数のコントロールを目的とする。
- 形成的介入:
- 開始点:研究者が前もって知ることのない概念である新しい概念を構築することで、分析・拡張される不確実で矛盾のある対象に実践者は直面する。
- プロセス:形成的介入では、介入の内容とコースは交渉に従い、介入の形成に実践者が責任をもつ。
- アウトカム:目的は、ローカルに適した新しい解決策に関するデザインのための枠組みとして他の場面でも活用されるような新しい概念を生成することである。
- 研究者の役割:研究者は実践者によって導かれ保有される拡張的な変容プロセスを喚起して保持することを目的とする。
- 形成的介入の刺激
- 第一刺激:現在までの実践を通じて蓄積されてきた矛盾やジレンマに起因する混乱状況・問題状況。
- 第二刺激:研究者の提起するモデルやアイデアを含む媒介する人工物(実践者が第二刺激としての人工物を自ら持ち込む場合もある)。
- → 介入プロセスを通じて、実践者と研究者はこの媒介する人工物を変化させていく。
2017/11/07
マイク・コール(2010)「批判的人種理論と教育」『学校実践学研究』16,77-84
- 人種差別こそが世界の不均衡を生み出している。
- CRTの2つの中心原理
- 白人優越主義
- 人種が階級よりも優先され、世界を分かつものとして機能している
- 第一原理の問題点
- 階級を生み出す生産様式から人々の意識をそらす
- WW2後の英国は人種というカテゴリーを作ったうえで生産様式に押し込めた
- 全ての白人を均一化する
- 必ずしも肌の色によらない人種差別を説明できない
- 人種差別に反対する運動をまとめる点で役不足
- CRTの6つの長所
- 有色人種の声を際立たせた
- 人種問題がいまだ深刻であることを明らかにした
- 時代の流れの中で起こってきたことを明らかにするように論じている
- 白人と黒人の利益が一致することを強調(利益の一致理論)
- 法曹界が改善されてきた
- 差別と白人優越主義が所有権を巡る概念であることを説明している
- 本論文のポイント
- 人種そのものの概念の虚構性:有色とか白人とかは歴史的に作り出されたもの
- 差別は肌の色だけではない:それは差別の一形態でそれを強調すると多様な差別の形態を隠すことになる
- 学校は限界を設けない学習をすべき:限界のある教育をすると差別を温存する可能性を残す
2017/10/19
間篠剛留・原圭寛・翟高燕・塔娜(2015)「ポスト・ボイヤーのスカラーシップ論」『慶応義塾大学大学院社会学研究科紀要』79,1-14
- ボイやーはスカラーシップを「知識の扱い方」という観点から4つに分類し,この全てが大学教授職に必要なものであるということを主張した。
- その背景は、教授や社会貢献の責務が大学教授職としての評価に結び付くものではなく,報賞に反映されないため,これらの責務の重要性を論じることで,この状況を改善しようとした。
- 4つのスカラーシップ
- 全ての大学教授職に必要
- 全ての大学教授職が同様の割合で以てこの4つを発揮すべきものではない
- 所属する大学の特徴,ライフコースの様々な時点に応じて,4つのスカラーシップの発揮の仕方やその割合が異なる
- このような個々の大学教授職の職責の差異=「威厳ある多様性(diversity with dignity)」
- ボイヤーの問題点
- 教授のスカラーシップ
- 教授という活動には知識の発見,統合,応用が含まれるため,他の要素とは次元が異なるという解釈が可能?
- 表現に揺れ:「知識共有のスカラーシップ(scholarship of sharing knowledge)」
- 統合のスカラーシップ
- 大衆向け著作や教科書の執筆=教授や応用のスカラーシップと関連した活動?
- 多くの人はスカラーシップをばらばらに捉えている:SoTLの些細な『指標』がつくられる。
- → 教授とは発見,統合,応用が含まれるものであり,他の3スカラーシップと教授とを並置するのは論理的におかしい(Bosier)。
- 2つの大きな流れ
- SoTLやSoEをそれぞれ教授のスカラーシップ,応用のスカラーシップの発展形として捉える流れ
- SoTL・SoEをそれぞれ,ボイヤーが提示した4スカラーシップの統合の在り方として捉える流れ
- 公衆からの信頼回復を目指した個別的なスカラーシップ論
- 授業料に見合う学習経験+学問知の専門分化による大学と社会との隔絶の克服
- → 各々が教授と研究の両方を担う従来型のモデルはコストがかかる
- → 教育専従や研究専従といった単一の職務に従事する大学教授職の増加
- 分業的に役割を担わせることができるような新たなスカラーシップ論(教授及び公益的活動の地位向上に貢献)
- 多様性と共通基盤を求めた総合的なスカラーシップ論
- 各スカラーシップが個別に分断される危険性
- → 大学教授職に必要とされる共通要素を検討しようとする(一見すると多様性の議論と逆行)
- 統合のスカラーシップ:教授や公益的活動のためのものというよりも,「解釈し,一緒にひとまとめにし,独創的な研究を結実する新しい洞察をもたらそうとする」もの
2017/09/12
関田一彦・安永悟(2005)「協同学習の定義と関連用語の整理」『協同と教育』1,10-19
- Collaborative:少なくとも協同学習は不適切
- 協同学習(Cooperative)の定義:学ぶ内容の理解・習得を目指すと共に、協同の意義に気づき、協同の技能を磨き、協同の価値を学ぶ(内化する)ことが意図される教育活動。
- 互恵的相互依存関係の成立:目標達成には構成員すべての相互協力が不可欠なことが了解されている。
- 二重の個人責任の明確化:学習者個人の学習目標のみならず、グループ全体の学習目標を達成するために必要な条件(各自が負うべき責任)をすべての構成員が承知し、その取り組みの検証が可能になっている。
- 促進的相互交流の保障と顕在化:学習目標を達成するために構成員相互の協力(役割分担、学習資源や情報の共有など)が奨励される。
- 「協同」の体験的理解の促進:協同の価値・効用の理解・内化を促進する教師からの意図的な働きかけがある。
- 協調学習(Collaborative)の定義の提案:
- プロジ ェクト(一過性のイベント)の形をとり、
- メンバーの間で、相手の活動を参照して自分の行動を調整する仕組み(機会)があり、
- プロジェクトの成果物に対して各自が何らかの貢献を期待され、
- しばしばプロジェクトリーダーによって統率される学習活動であり、
- 質の高い成果物が求められる学習活動。
- すなわち、協同Cooperative ⊂ 協調Collaborative ⊂ グループ学習・共同学習。
- 英語では本来、cooperate の方が collaborate より協力し合う状態を指す言葉として一般 的。
- 協同学習では課題の理解のみならず、その学習活動を通して協同の意義や技能の学びが目指される。
- 共同研究や協調作業の過程でも学習者は協同の意義や技能を結果として学ぶことはある。→ それならはじめから協調学習でなく協同学習と表記するほうが妥当。
- 協働=「参加者の協働を重視する学習活動」のように活動の様態を記述す用語として用いたい(協働学習としない)。
2017/09/01
Sadler, D. (2016) Three in-course Assessment Reforms to Improve Higher Education Learning Outcomes, Assessment and Evaluation in Higher Education, 41(7), 1081-1099.
- accumulation of marks = most commonly used grading system in North America
- three arguments against accumulating performance measures
- Students need opportunities for false starts,
- These behaviors and activities may well assist learning, but they do not constitute the final level of achievement or even part of it,
- focus ends when they’ve acquired enough points to satisfy their grade needs,
- -> formative assessment: Purely formative assessments have high stakes for learning and zero influence on the final
- -> final summative assessment: Student knowledge and understanding should be tested in more authentic ways.
2017/08/25
山田礼子(2007)「アセスメントの理論と実践」『転換期の高等教育における学生の教育評価の開発に関する国際比較研究』7-20
- 発達:望ましい心理的,教育的,モラル上での目的を価値づけるあるいは求める方向性への成熟や成長(ペリー)。
- 変容:学生の認知的技能,情緒的特性,態度,価値,行動といった諸側面が時間軸でどれだけ量的,質的に変化したか。後退あるいは進展といった方向性を包含した用語ではない。
- アメリカにおける学生の変容に関する研究の系譜は主に心理学に基づいた発達理論と社会学をベースとしたカッレジ・インパクト理論に分類できる(パスカレラ)。
- 発達の理論:
- 7ベクトル(能力の達成,情動の統制,依存から自立へ,対人関係の成熟,アイデンティティの確立,目標の開発,統合性の発達)。
- 知的・倫理邸発達理論(ペリー)
- 反省的判断モデル(キング・キッチナー)
- 認識的反省モデル(バクスター)
- 道徳性発達理論(コールバーク)
- 女性の道徳性発達モデル(ギリガン)
- ← 学生の発達の段階が後退するという段階を勘案せず前向きに捉え過ぎている+学生の大学生活を通じての経験の軽視という批判(フェルドマン)。→ 社会的制度として機能している大学を前提として,大学という環境の中での学生の社会化過程を検討する必要性を主張 = カレッジインパクト。
- どうやってIEOを測定するか
- O:認知名と情緒面に分類,これらの成果は心理的側面と行動的側面に分類できる。
- 学問上と社会経験の統合が目標に結びつく(成功になる)。退学者は統合できなかったと考える。(ティント)
- 大学1年字アセスメント
- 履修前基本データ取得(オリエンテーション時に実施)(SATやACTとは異なり,学生の大学での期待や目標など入学前の行動や経験を把握)
- College Student Expectations Questionnaire(Indiana)
- College Student Inventory(Noel-Levits社)
- CIRP Student Information Form(UCLA)
- 1年次終了時点(一年間でどのような成長,変化があったかを見る)
- College Student Report, NSSE(Indiana)
- Your First College Year
- 学生の行動,態度,学習スキル,満足度や経験に関するアセスメント
- College Outcomes Survey(ACT)
- College Student Survey(UCLA)(4年生用,CIRP)
- 学力や知識に関するプレースメント・テスト(各年次で実施)
- Academic Profile(ETS):読解,作文,数学および批判的思考の測定
- Accuplacer & Companion(College Board):読解,文章技能,初級代数,数学部門の問題から成り立っているプレースメント・テストで,補習授業受講決定やガイダンス目的で実施
2017/08/23
松波晴人(2011)『ビジネスマンのための「行動観察」入門』講談社現代新書
- あらゆる企業の永遠の課題:付加価値の提案と生産性の向上
- 行動観察はこの2つの課題解決に役立つ。
- 行動観察には,観察,分析,改善の3ステップがある。
- 分析では様々な知見が重要:人間工学,エスノグラフィー,環境心理学,社会心理学,表情分析。
- 自分の価値観で観察対象者を批判的に見てはいけない。
- 途中経過はクライアントに伝えてはいけない。
- 行動観察をするには,自分の価値観から自由になる,人間に関する知見を持つの2つが重要。
2017/08/18
高橋知音(2015)「発達障害のある大学生への合理的配慮とは何か」『教育心理学年報』54,227-235
- 合理的配慮:障害のある者が,他の者と平等に教育を受ける権利を享有・行使することを確保するために,大学等が必要かつ適当な変更・調整を行うこと。その際,大学等に対して,体制面,財政面において,近郊を失した又は過度の負担を課さないもの。
- 学生の状態を訓練や治療で変えるのではない。大学が変更・調整を行う点がポイント。(障害の社会モデル)⇔ 障害の医学モデル=障害は個人に内在。
- もう1つのポイントは合理的。しかし,どこまでが合理的かの線引きは困難。(海外では判例の蓄積で線引きが決まる。)
- 財政面が考慮されることは,判断基準が大学で異なる可能性がある。
- 合理的配慮では,教育の本質や評価基準を変えることは求めない。
- 授業の本質や単位認定の基準の明確化が重要。
- 妥当な合理的配慮=学生が感じる学修上の困難と機能障害との関連について根拠が示されていること → 発達障害(見えにくい障害)では判断が難しい。
- ただし,医学的診断は必要条件だが十分条件ではない。
- 検査結果等の根拠に基づいて合理的配慮の内容を決めることが広がらない理由は,大学生に利用可能な認知機能検査が限られているから。
- 一方で,症状妥当性の検査(詐病の防止)も大きな課題。
- 試験は,受験者の能力,スキル,知識の程度を推測するために収集する行動のサンプルである。
- ← 何らかの機能障害がそのサンプル収集に影響を及ぼしているなら,そこから能力等の推定は不適切になる。
2017/08/17
寺島健一(2011)「組織学習論への新たなアプローチ」『経営学研究論集』35,59-69
- 自己組織性:組織が自らを変化させる性質(組織は存続のために,新しい知識を生み出したり,自らのあり方を変える)。
- → 組織の自律的な面や創発的な面を研究することが可能になる。
- 組織学習の系譜
- 古典論
- ダブルループ学習(=ミクロ視点):学習を阻害している要因を取り除くことが研究の中心。
- マクロ視点=学習主体が組織:学習はルーチンの変化
- その適応プロセスには新しい可能性の開発と古い確実性の活用があり,そのバランスが必要。
- Huberのレビュー:組織学習=情報処理を通して学習すれば,取り得る行動の範囲は変化する
- 組織学習=知識獲得,情報分配,情報解釈,組織記憶の4つで構成される情報プロセス。
- 知識創造論
- 古典論は,(1)行動主義(刺激・反応モデル),(2)個人学習をメタファーに使う,(3)組織学習が適応のための受動的変化,(4)ダブルループのタイミングを客観的に知っているという仮定。
- → 知識創造のSECIモデルへ。
- 状況的学習論
- 実践共同体への参加プロセスを通して学習の意味が形成される。
- しかしその後,実践共同体の定義が「あるテーマに関する関心や一群の問題熱意を共有し,その分野の知識や専門的技術を,持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団」と変化してしまう。
- センスメーキング
- ワイクの組織イメージ:壊するのをどうにか抑え,常に再建を余儀なくされている組織像。
- 組織化:意識的な相互連結行動によって多義性を削減するのに妥当と皆が思う文法。
- 組織化のプロセス:イナクトメント,淘汰,保持。
- イナクトメントは自然淘汰における変異に相当。
- 組織学習であるという以上,知識は共有されることが前提。
- → 学習は独立した行為ではない
2017/08/08
Battistina, E. and Meronie, E. (2016) "Should we increase instruction time in low achieving schools? Evidence from Southern Italy," Economics of Education Review, 55, 39-56
- We study the effect of lengthen instruction time on mathematics and language scores.
- Identification relies on a difference-in-differences assumption and we investigate both average and quantile effects.
- We find a positive effect for mathematics but not for language.
- Effects for mathematics are driven by the best students in schools with low socio-economic background.
- In the least problematic schools, more time spent at school on activities in language has negative effects on mathematics.
2017/08/07
Hill, A. (2017) "The positive influence of female college students on their male peers," Labour Economics, 44, 151-160
- Female college students improve the academic outcomes of their male peers at public 4-year colleges in the US.
- An increase in the female share of a freshman cohort increases graduation rates for males in that cohort.
- There is no effect of cohort gender composition for females.
- Effects appear to operate through changes in the college learning environment.
2017/08/01
石井拓児(2017)「戦後日本における教育行政学研究と福祉国家論」『教育論叢』60
- 日本に特異な大学授業料政策(高い授業料負担)・奨学金政策(給付型奨学金制度の不在)・教育ローン事業の拡大政策について、これを「日本的家族主義」「親負担主義」が原因だとする学説が存在する。
- いずれの研究も、1970 年代のある特定の時期に、意図的に持ち込まれた「日本的家族主義」を前提とする研究である。
- 本研究が指摘するように、日本における授業料政策・奨学金政策の形成過程とその背景には、福祉国家構想の否定と不在、それを補完するように持ち込まれた「作られた家族主義(あるいは会社主義)」の存在がある。「作られた家族教育費負担意識」を実証して追認する ことに、いったいどれほどの研究的意義があるというのであろうか。
- 天城勲の福祉国家における教育:第一に完全雇用の状態であり、第二にこれを支 える経済の成長であり、第三には社会保障制度の整備。→ まさに日本において特異な、「労働参加」を前提とする福祉国家論(資力調査や稼 働能力調査をふまえた選別的な社会保障制度論)が示されている。
- 「福祉国家の要素の一つである経済成長との関連における教育の使命が問題となる」。高度の学問研究の発展、これら優秀な技術者の養成さらに新しい時代の社会に応じ進んでこれを形成する人間の育成」こそが、福祉国家における教育に 課られた「時代の要請」である。
- 宗像誠也の批判:国家の財政支出を通じた教育内容統制
- 教員給与の全額国庫負担化に対し、政治活動の制限と国家統制の危惧を表明。
- 福祉国家システムの未整備:空白を支えたもの=賃金・企業福祉・税控除の「3 点セット」
- 賃金カーブ,家族手当・法定外福利制度の拡充,扶養控除制度の3点
- → 「日本型企業社会」の形成 → 「過度に競争的な教育システム」の形成
- 社会保障の空白部分を補うだけの賃金を獲得しうる職業とは、中大規模の企業もしくは公務員・教員といった職に限定されていた。
- 福祉国家教育行財政の原理原則
- 就学前から高等教育段階まで、授業料を完全に無償とする
- 「人生前半の社会保障」の確立を前 提とする、子ども・青年の学習権保障(=子ども手当制度を普遍的現金給付の仕組みに戻す,学生・青年本人が受給できる 生活費給付制度を創設)
- 住宅と交通の問題解消(=18 歳で自立を果たす学生・青年には住宅手当の給付もしくは無償による住宅の現物給付)
- 就学前児童、小学生、中学生の放課後の環境整備(=音楽・スポーツ指導者の育成)
2017/07/28
羽田貴史(2004)「企業的大学経営と集権的分権化」『大学論集』34,21-40
- 大学の企業的行動:資源依存理論(Pfeffer & Salancik 1978)に基づいて,大学の財源的変化,外部資金の流入に影響されて大学の組織変化が生じていると説明(金を出した人間が笛を吹く)。
- 大学・ファカルティの行動・組織に与えている主要なインパクトは,高等教育に対する政府財源の縮小である。
- 80年代の大学の企業化行動:
- グローバルな政治経済競争,知識経済社会への移行
- 大学の特許取得促進,連邦・州政府による研究成果の企業化補助金などが推進され,資金供給量の増大が企業的行動の呼び水となった。→ 高等教育における資金の供給拡大が擬似市場の成立を促した。
- 政府の高等教育財政政策の変化,大学における財政の変化
- 政府財源減少による代替財源確保行動。
- 政府財源の戦略的配分:教育,研究などの領域で具体的な成果を挙げ,資源獲得競争に参入させる
- 福祉国家政策の転換とNPMの導入
- 高等教育における大衆化・商品化の進展
- 大衆化・グローバル化=リベラル教育よりは職業教育の必要・期待を増加させる。→ 学生ニーズが実学に傾斜,大学が商品としての教育プログラムの開発と提供に力を注ぎ,財源確保の手段とする。
- 情報革命
- 社会全体の商業主義,金銭価値化と大学の目的喪失
- 大学における教育研究の肥大
- → 大学像の構造的な変化をもたらしている。
- 企業的大学経営の2つの帰結
- 自由裁量財源の消失,システムの動揺,研究大学での差異化・公立大学の私学化が進み,研究資金が商業的科学に集中する。連邦資金は産学連携に集中,オーバーヘッドは減少,コアとなるフルタイム教員は縮小し,ファカルティ間の格差のために学者共同体としての大学の概念は拡散する。
- グローバリゼーションが安定し,政府財政の健全化が回復し,公立研究大学への財源投入が改善され,機関間の差異化は進行するが,高度な研究公立大学は維持,大学内部の差異化は進むが小さくとどまる。
- 外部資金の増加は教育にマイナスで,研究とサービスにはプラスな影響を与える。
- 企業的大学経営に関する研究が指摘する事実は,市場に対応するために,同僚制を基盤とした大学の運営には企業的執行体制が浸透し,官僚制と大学内の集権制が高まるが,同時に「大学への分権化」と「大学内の分権化」が促進されるということである。
- 市場的自由主義改革は本質的に自治を減少させず,むしろ企業的な意味で自由と自律を強化し,同僚的意味でそれを消滅させる(Merginson 1997)。
- 学内運営機構の集権化についても,アメリカで推進されている企業的な大学経営は,単なる集権化,トップダウン的な意思決定ではなく,教育研究の基礎組織への権限委譲,分権化とセットになった構造的なものであることを理解する必要がある。
2017/07/27
広島大学高等教育研究開発センター(2017)『大学運営におけるリーダーシップ』高等教育研究叢書 138
(菊澤)
- 市場取引はただではない。このような取引上の無駄のことを「取引コスト」といい,会計上には現れてこない,人間関係上の見えないコストである。
- 取引コストが存在すると,社会的にみてより良い方向へと変化することによって得られる個別利益よりも,変化するために発生する人間関係上のコストの方が大きい場合,たとえ現状が非効率で不正であっても,現状を維持する方が合理的となる(合理的不正や合理的非効率が発生する)。
- 不条理を解決するには,取引コストを節約する制度を事前に形成しておく必要がある。
- 大改革が必要なときには,外の人をを選任する。
- 危機的状況は従業員に知らせる。
- ダイナミック・ケイパビリティ:「変化対応自己変革能力」= 新しいものをゼロから形成する能力ではなく,既存の能力,既存の資源,資産,知識,技術を再構成・再結合し,さらに高い価値を生み出そうする能力(取引コストより大きい価値を生む能力)。3つに分けられる。
- Sensing:環境の変化,機会,そして脅威を感知する能力
- Seizing:機会をとらえて補足して資源を再構成する捕捉能力
- Transforming:持続的な競争優位を獲得するために組織全体を変容する能力
- ドラッカーの「顧客の創造」というのは,多くの人たちが誤解しているが,実は「経営者は自由人たれ」あるいは「経営者は自律的であるべきだ」ということの言い換え。
- 損得計算の予想がマイナスであったとしても正しいもの好きなものは実行し,損得計算の予想がプラスでも不正なものは実行しないということ。
- 限定合理性があるにもかかわらず,なぜ大学の中ではそれを自覚せず,完全合理性があるかのような主張が日常的に行われるか。
- 研究者は自分たちの専門領域での研究を行い,その成果を公表しながら行動様式を形成するが,その行動様式は,それぞれの分野の専門性に依拠した完全合理性を前提とする。そこで成功した思考様式がそのまま,大学運営や組織改革に応用される傾向が強い。これは,認識と行為における負の転移効果であり,自分の属する組織や経験に基づく知見ですべてを解釈し,それにそぐわない事実や見解を排除する行動様式である。
- 完全合理性をめざすための情報収集・分析,意思決定の煩雑さとコストを回避するために,政府の発する政策・方針に沿った意思決定を行う行動様式があるため。
- 取引コスト理論は,単独で理解するのではなく,企業組織が多様な関係者の利益実現であることと一体に扱う必要がある。
- クラークのトライアングル・モデル:
- 業務の特質に応じた機関内部の権限体系と,それを積分した国レベルの権限体系の説明からなり,機関内部の重層的な組織編成と文化がもたらすメカニズムの違いはよく説明されている。
- しかし,国レベルのガバナンスの説明としては,政府・大学官僚などのようなアクターが行う意思決定と,多様なアクター間での交換・取引を通じて行われる決定とは意味が違う。
- これら3つが等化されるのは,アメリカ政治学の機能主義的性格が基盤にあるから。
- 高等教育における市場は疑うべき命題。
- 日本の高等教育研究では「疑似市場」といった一般論で片付けられている。
- 多数の研究が,高等教育においては,シェアド・ガバナンスを含む分権型が適合的と示唆するのにもかかわらず,近年の大学ガバナンスの政策的具体化は,学長への集権に特化している。
- その理由は,官僚モデル組織論とコーポレート・ガバナンスの奇妙な混合理論が形成されている側面と,新古典派経済学とそれを基盤にする新自由主義の視点においては,組織内部の葛藤・調整は視野に入らず,高等教育機関が市場における供給者としてしか把握されない側面が関係している。
- ダイナミックケイパビリティは,変革を推進する行動原理を,利益ないし利潤のような損得計算ではなく,価値問題として扱うことと重視し,実践理性に基づくことを提言している点に注目すべき。公共的性格を持つ大学であればこそ,この視点は重要。
- 組織研究は,政治学,経済学,社会学,心理学にまたがる。
- 新制度経済学が,企業組織を研究するアプローチとしては,プロパティ・ライツ理論,取引コスト論,プリンシパル・エージェント理論がある。
- 取引コスト論をベースに組織論を構成すると,組織内に分業化された職務の構成要素が独立し,相互依存性が少なければコストは減少し,高度な分権化が1つの解になる(部局への分権化と単科大学化)。
- 高等教育の世界では,組織が相互に依存し,連携するほど統合的な機能が高まり,範囲の経済が高まる(集権化と総合大学化)。相互に背反するこの命題についての最適解は,どのように案出されるのか。
(藤村)
- 国立大学の法人化 = 積年の取引コスト(同僚制支配)を精算するために,財産の所有と経営を分離しつつ,経営権を学長に委譲することで代理人問題を解消することができるようになった。
- 文科省と国立大学の関係は,直接的な統治から金銭を媒介にした間接統治に移行し,間接統治のツールとして大学間と部局間に競争を組織化することで,政策的意図を組織の末端まで貫徹させることに成功した(法人化前にはできなかったヒエラルキーの構築が,「契約関係」に持ち込むことで可能になった)。
- したがって,司令塔としての学長の使命は,損得勘定ならぬ数値目標(世界大学ランキング)とスタンダードを設定し,いかに実働部隊である大学構成員のエフォートを引き出すかである。
- 独立行政法人の枠に入れた国立大学法人法は,急ごしらえで規律密度が薄く,行政の裁量が入り込みやすい法である。そのことを食い止めるために,法人化にあたって衆参議院で国立大学の自主的・自律的運営の確保を配慮した国会附帯決議がなされたはずだが,すっかり忘れられている。
- 結果として,かつては全学ワーキング・グループで議論していた重要事項は執行部マターになり,管理職であるはずの教授が全学的意思決定に参加する機会は失われた。同僚制支配=分権化がもたらす「水平的なジレンマ」は解消されたが,執行部と部局構成員の間に面従腹背と疑心暗鬼という「垂直的なジレンマ」が生み出された。
- 調整トライアングルの内,政府と市場の力が強まる新たなステージに入った。そこで課題となるのは,権限の大きさ云々よりも,アメリカと異なり,上級管理職マーケットを持たないわが国の学長や副学長・理事の経営能力や職能成長である。
- 大学ガバナンス改革は世界的潮流
- 政策:機関の裁量の拡大とそれに伴う財源の多様化,評価制度や質保証の仕組みの整備等。
- 学内:企業的経営手法の導入,執行部の権限拡大や利害関係者の大学運営への参加。
- 大学の組織構成や権限配分の在り方(ガバナンスの公式的側面)と業績の関連性についての研究が取り組まれたが,両者の間の直接的な関係は見出し難いということで結論は一致している。
- 大学においては依然として学術的な背景が重視され,企業と同様のリーダーシップが求められる訳ではない(大学組織は他の組織と異なる性格を有し,求められるリーダーシップは同一ではない)。
- 法人化後の国立大学では,教学と経営の長が学長であるといった教学・経営一体型のガバナンス構造が採用された(諸外国においてリーダーシップの普遍性が強調されていることと相反し,制度的にも世界に類例を見ない管理運営システムとなっている)。
- この特異性は,国立大学法人制度導入が大学改革の一環として行われたのではなく,国の行政改革の枠組みの中で独立行政法人制度を基礎として制度設計が行われたこととに起因している。
- リーダーシップの構成要素(ロスト)
- 関係は影響力に基づく
- 先導者と追随者はこの関係にある者である
- 先導者と追随者は真の変革を追求している
- 先導者と追随者は共通の目的を設定している
- 国立大学法人制度設計が学長を最終意思決定権者として位置付ける一方で,学長のリーダーシップについて論じたことは,権限の問題と影響力の問題を混同したものと解される。
- クレイマーの信頼研究:高等教育研究においても,大学が機能するためには構成員間の信頼が不可欠であるとする研究は多い。
- 日本のガバナンス改革政策は,先行研究に依拠すれば効果が期待できないばかりか,大学の業績低下に繋がる恐れが否定できない。
- マネジメント手法の問題を権限体系の問題に還元し,権限と責任の体系を構築することで組織が円滑に機能すると想定する官僚制モデルに陥っている。
- 専門職組織と非専門職組織:専門職組織においては,最高の権限を握るのは専門職自身。
- よって,大学も学長など最高の意思決定者は研究者または教員でなければならない。→ 専門職組織もその規模が拡大して管理機構が必要になり,組織の論理で動くようになると様相が変わる。
- 専門職は,専門家社会と所属組織に対してダブルスタンダードで関与する。
- 非専門職を前提にした経営学の理論やマネジメントの手法が専門職に対してはそのままでは使えない(組織は専門職を限られた範囲でしかコントロールできない)。
- 研究や教育に直接関わる業務を除く狭義の学内行政は,教員が直接関わるより,職員に権限委譲(移譲でない)したほうがよい。
- 学長を中心にしたトップのリーダーシップについては,対象を職員と教員に分けて考える必要がある。
- 一般の職員に対しては,伝統的リーダーシップ理論がほぼそのまま応用できる。
- 専門職に対しては,プロフェッショナルとして意欲と能力を発揮しやすい環境を整備するとともに,成果につながるような活動を支援すること(インフラ型リーダーシップ)。
2017/07/13
真野毅(2016)「協働による行政職員の意識改革のプロセス」『京都マネジメント・レビュー』29,51-72
- 官僚制:戦後の社会インフラの構築と福祉国家の実現にその効率性を発揮。
- 90年以降:規律を遵守することを過剰に叩きこまれた結果,規則の遵守そのものが自己目的化し,その規律ができた目的を考えないが故に柔軟な対応ができない。
- 行き過ぎた分業体制は,自部門の利益しか考えないセクショナリズムを生む。
- → 事務事業評価制度の導入:導入が容易,しかし,マネジメントの Will(意思)が明確でなくても形式的には実施できる(大住)。
- 一番大きな課題は,NPM が機能するための前提条件が未整備の課題である。特に, 様々な NPM のツールを与えられた公務員がマネジメント(経営)の意識・思考方法がない(西野)。
- 新しい公共:協働によるガバナンスの向上
- 多様なアクターが対等な立場で協力して統治していくという新しいガバナンス体制が求められる。
- → 民間人との協働を通じて,行政職員の意識が変容。
- 官僚制:1つの目的達成に向けて,効率的に,長期的に安定したサービスが提供できる最も理想的な組織モデル。
- 遵守すべき規則や手順に基づき,命令の一元化が貫徹されたヒエラルキー構造の中の役割や地位に応じて,分与された仕事を執行する組織が最も効率的。
- 命令の連鎖, 分業体制,公式化,業績重視,非人格的手続き → 組織目標の効率的達成。
- ⇔ 逆機能:訓練された無能力,規律の自己目的化, 自己利害の擁護,規範の神聖化,人間関係の非人格化。
- 官僚制組織改革の限界:法規範やルールなどの「制度的要因」にあるのでは なく,職員自身の「行動的要因」に起因するところが大である(田中 1994)。
- 組織理念や構造の変革はスムーズでも,機能の変革は困難。
- 「新制度が導入されても,それが実施される仕方は結局,それを運用する側 の新制度に対する理解の仕方や意識と,それを運用する能力に依存している」ので,職員の意識改革なしに,真の組織改革はありえない。
- セクショナリズムが醸成されるプロセス(菊池 2004):
- 組織文化や部門文化は,職員それぞれが自分と他者の役割というものをまず定義し,その役割間の関係性から形成される規範のようなものであり,日常業務,会議,上司との確認作業などにおける双方向の学習によって,維持や新たなものの積み上げが行われている。
- 組織文化が,他者や他部門,またはこれらの役割というものを強く意識したうえで行動を起こすという,行政職員の行動パターンが裏付けになっている。
- 1 つ 1 つの案件について行われている確認作業が,大きな役割を担っている。
- → 既存のルーティンを使い続けると,既存のルーティンの修正に留まり,新しいルーティンの開発を排除する傾向になる(March 1991)。
- コンティンジェンシー理論の時代へ:
- 環境の安定性に応じて組織構造に変革することで好業績が残せる。
- 比較的安定した市場環境の下では, 責任や権限階層が明確な官僚制型の機械的組織が有効。
- 不 安定で変化に富む市場環境の下では,規則が少なく自由なコミュニケーションを重視する有機的組織が有効。
- コンティンジェンシー理論には,どのようにすれば環境との適合が可能になるのかという分析視点がない。
- Argyris (1972):コンティンジェンシー理論は,組織の中にいる個人の行動,小集団の行動,集団間の行動という重要な構成要素がどのように組織全体に影響を及ぼしているという視点がない。
- 行為の理論:人間のすべての意識的な行動は,認識を基礎においており,その認識に従い,行為を実践し,同時にその行為から学んだものをその行為に反映していく。
- → 組織も同様に行為の理論を持つ。
- 組織の行為の理論:それを構成する諸個人に共有された『組織の地図』 と『組織のイメージ』として,記憶される。これらは,個人が自分自身の回りで起こっていることを理解するのに役立つ。しかし,この知識は不完全なものである。個人はそれをより完全なものに近づけようとしている。それが組織学習のプロセスである(加護野 1988)。
- 加護野の組織認識論の前提:
- 人間は情報の能動的な探索者であり, 人間が外界を理解するための枠組(=スキーマ)によって情報の探索は影響される。
- 個人の中に蓄積されたスキーマは変化に抵抗するという頑強性をもっている。
- 記憶された既存のスキーマに合致した学習よりも,新しく受け取った情報と記憶された情報との「新しい結合」には,スキーマそのものの改革を伴う学習が必要となる。
- 日常の理論:組織構成員に共有されるスキーマの集合体
- 組織のパラダイム:3つが齟齬に関連しあって構成される
- 基本メタファーによって表現される世界観(狭義のパラダイム)
- スキーマの集合としての日常の理論(構成員がさまざまな状況でいかに行動すべきかを具体的に示す価値・規範としてのパラダイム)
- 見本例(日常の理論の妥当性の維持・体現・伝承を行う)
- 組織パラダイムの頑強性
- パラダ イムに合致する情報は獲得できるが,合致しない情報は獲得することが困難。
- パラダイムと合致しない情報を入手したとしても,パラダイムの信奉者に,現在のパラダイムが通用しなくなっていることを説得することが難しい。
- パラダイムは,それ自体が問題解決能力を有しているので,新しいパラダイムによる問題解決より,過去の成功のパターンによる問題解決に向かわせる(すでに確立されたパラダイ ムを創造的に破壊することは難しい)。
- パラダイムの改革:慣性力の克服が必要
- 変化の土壌づくり:問題,矛盾,緊張,危機などの不安定状 態の創造と増幅というトップの「ゆさぶり」が危機感を創出し,組織改革の心理的エネルギーの重要な供給源をつくる
- 突出集団の発掘と育成と見本例の提示(この段階が重要)
- 社内の雑音からの隔離
- 集団内に十分な異質性を取り込むこと
- 集団の規模を,少なくとも初期の段階では小さくしておく
- きわめて挑戦的な目標と明確な納期の設定
- 予算,庶務手続きなどの組織的障害の排除
- パラダイムの伝搬と定着化(突出集団が生み出した新しい発想を伝搬・増幅・体系化)
2017/07/06
羽田貴史(2009)「アメリカの大学理事会について」『私大経営システムの分析』私学高等教育研究所シリーズ(研究報告),34,59-70
- BoT:ボード=会議体で,議論する時に真ん中に板を置いてテーブルを囲んで議論をし,そのボードの上でボート(vote)する。
- トラスティース=被信託者の集まり
- BoTは一種の大学管理における革命(Encyclopedia of Higher Education)
- ボローニャ大学が学生支配の大学,パリ大学は教員支配,それに続く第3の管理運営の革命。
- もともと人間は原罪を持っている。単一の組織において個人主義的な形態だけではいいことができないので,複数のチェックシステムを置いてやっていく。
- → 監視者というのが理事会の大きな機能として現在まで続いている。
- アメリカで大学を作る:トラスティースが大学運営を実施する上で責任を持つ。
- 独占的な権力は,公共財への脅威になる。
- → 教育長官・知事・大学管理者・教員の支配:単一の組織があるものを運営することは公共的利益を侵害する → そこに対してチェックの仕組みが必要である。
- ヨーロッパ大陸では共有という概念がなく,所有する概念は個人のものでしかない。
- 日本の場合は,江戸時代の入会地が共同所有で誰が持っているかわからないが村全体を持っている観念があった。
- ヨーロッパでは,あるものを共有するのではなく,信託という形で一緒にやる(法律上の原理の違いもあり,信託が非常に発達した)。
- では,日本の理事会や理事は,誰に対して責任を負うのか?
- アメリカ・ヨーロッパの場合,世間から信託されているという範囲で自分は行動しないといけない倫理規範が内面にセットされている。
- 19 世紀後半から進化論を教えることが必要になる → 教えることをめぐって理事会が教員を首にするという事態がたびたび起こる → テニュア制度が確立 = 理事会の教員人事に対する権限が制約される。
- 大学の規模が大きくなると,レイマン・コンロトールではできないので,学長の権限や大学の官僚の力が大きくなる = 理事会は最終責任を持つが,実際の権限は制約される。
- 1940 年頃から30 年程かけて,ファカルティの参加が拡大し, 今度は学長の権限が変化する。
- 70 年以降,ファカルティの参加が 後退して,再び学長の権限が拡大する。
- 90 年代以降,理事会の行動主義(ボード・アクティビズム)で,いい学長を選んであとはお任せでなく,理事会自身がもっと経営に責任を持つ動きができてくる。
- → アメリカの理事会は流動的。
- シェアドガバナンス:分担管理 = 教学と経営の分離,
- シェア=共有ではない(権限の共有はありえない)。
- 理事会の責任:信託を実行すること + 社会と大学の緩衝装置になる
- 不当な圧力には学問の自由を守る・社会の要求を持ち込んで象牙の塔にしない(バッファ&ブリッジ)。
- イギリス:大学の上級教授たちによる支配で,自分たちのやりたいことを再生産するだけで,大学の外に成長してきた学問というのを取り込むことが十分にできなかった。
2017/07/04
竹中克久(2003)『組織の理論的研究』神戸大学大学院文化学研究科学位論文
- 組織とは、当事者がまさに組織と認識ないし解釈する対象でしかない。組織の成員がどこから組織を感じ、どこから組織を忘れるかという当事者による線引き以外に、組織を限定する手立てはない。= 組織はある空間(建築物)や時間(タイムカード)に限定される客体的事実ではない。
- 社会科学では、全ての現象は発明されたものであるが、発明が発見と同意にとらえられるようになり、その前提が揺るぎないものに変容することがある。組織論では目的や合理性などの概念である。
- 近代官僚制がトップからボトムへの指揮命令系統を持つのに対して、家元では業務に関連する権限は階のマネジメントに順次段階的に委嘱されるという、上下に結ばれたクリップ上の連結的階層である。これはビューロクラシーの代替案を示すコンティンジェンシー理論に位置づけるべき。
- 機能主義の絶対的優位性はすでに1970年を境に崩れかけていた。
- 解釈主義がメインストリームにならなかったのは、組織論に期待されていたのは組織とは何かという問いに答えることではなく、いかに組織をマネジメントするかという問いに答えることであったため。組織とは何かを根底的に理解する解釈主義の立場が必要とされなかった。
- 本稿はコミュニケーションを中心に組織を考察し、シンボルやメディアに沿って議論を展開する。
- 組織論は伝統的に、ビューロクラシーとアソシエーションという2つの概念で組織を分析してきた。
- システムという概念は常にシステム以外のもの(=環境)との差異を形成することで成立している。環境に比べてシステムは常に安定的・統一的・複雑性が低い。組織をシステムとしてみると常に一面的になる(=安定的で複雑性の低い土所的な側面の分析になる)。
- ネットワークという概念は、システムと異なり無秩序な側面を喪服見込んだ概念である。
- ワイクは組織という名詞を避けて、組織化という動名詞で語ろうとした:組織について語る時、多くの名詞を使いたくなる。しかし、そうした名詞は記述すべき状況にあらぬ静態的なイメージを与えてしまう。組織を理解しようとするなら、名詞を根絶すべきだと言いたい。組織の研究者が名詞の仕様を控え、惜しみなく動詞や動名詞を使うようになれば、仮定に対してもっと注意が払われ、それをどう理解しどう管理したらよいか、いっそう明らかにされるであろう。
- 狩俣の既存組織論分類
- 伝統的組織論:テイラー、ファヨール、ウェーバー
- 人間関係論:レスリスバーガー
- 行動科学的組織論:マクレガー、アージリス、ハースバーグ
- 意思決定論的組織論:バーナード、サイモン、マーチ、サイアート
- システム論的組織論:カッツ・カーン、カスト・ローゼンワイグ
- コンティンジェンシー理論:ローレンス・ローシュ、ウッドワード、フィードラー
- 情報処理論:ガルブレイス、タッシュマン・ナドラー
- 意味論的組織論:組織文化論、組織シンボリズム、ゴミ箱モデル、ルースカップリング
- ユニットとしてのコミュニケーション:コミュニケーションの当事者同士は直接接触せず、接触するのはメディアと情報という2つの対象物。
- 新参者が来ると、新たな当事者とのコミュニケーションを可能にするには、より普遍的なコード優位のコミュニケーションに頼らざるをえなくなる。そこで、貨幣や権力などのシンボリックメディアが登場する。
- 科学的管理法(テイラー)や人間関係論(メイヨー)(=バーナード以前の組織論)は、組織の満足と個人の満足は一致すると想定していた。バーナードは両者は一致するとは考えず、協働システムとしての目的の達成(有効性)とその協働システムに貢献する個人の意欲の満足(能率)が調整される時に組織は存続すると考えた。両者を調整するものがコミュニケーションであり、コミュニケーションを通じた組織化である。
- このとらえ方は、目的がまずあり、次に組織が形成され、その達成に向けてコミュニケーションを通じた組織化が行われると考える。
- 一方、ワイクは多様な個人目的を前提とする組織論を考える。多様な個人目的は共通手段を喚起し、その結果、共通目的が発生するという発想を立てて議論を開始する。ここには、個人が社会構造を創造するという重大な点が残っている。(だからワイクは動名詞を使った。)
- 組織という言葉は名詞で神話である。組織なるものを探しても見つからない。見つかるのはせいぜいコンクリートの陰の内側で生ずる互いに結びついた事象であり、これらの事象の連鎖やバイパス・タイミングのフォームであえる。しかし、組織について語る時、そのフォームが誤って実体とされてしまうのだ。
- ワイクの組織化は、意識的な相互連結行動によって多義性を縮減するのに妥当と皆が思う文法と定義される。
- ワイクによれば、組織目的は何かを行った後にしかわからない。組織は目的合理的には作動せず、組織の合理性は見た目よりも低い。
- 機能主義者は研究対象を切り取ることで理論の定式化を重視し、解釈主義者は研究対象を絶えず進行中の過程として分析することを重視する。
- エツィオーニの組織類型:権力=強制的→関与の種類=疎外的、報酬的→打算的、規範的→道徳的
- バーナード:協働システムの基礎として役立ちうる客観的目的は、それが組織の決められた目的であると貢献者によって信じ込まれている目的である。共通の目的が本当に存在しているという信念を植え付けることが基本的な管理職能である。
- 組織はXという目標を持っているという点では一致するが、X自体は一致していない。他者がXと答えそうなものをXと答える。その結果個人目的xとは異なる組織目的Xが生まれる。
- なぜ、個人目的xではなく組織目的Xを希求するかといえば、コミュニケーションの多義性縮減という目的が個人目的xに含まれており、人々は組織目的Xを獲得しなければならないという志向性を有しているため。
- 組織文化は、組織構成員によって内面化され共有化された価値・規範・信念のセット(加護野 1988)。
- シャインは組織文化とリーダーシップはコインの両面の関係であり、どちらか一方を取り出して分析することは不可能と考える。組織文化の道具性、操作可能性、操作に携わる者の地位の特権性を強調する。しかし、組織文化に関与する者の特権性を認めるのは適切ではない。
2017/06/26
今井章・轟亮・潮村公弘(2003)「大学・学部運営への個人貢献度評価についての検討 : 諸委員会委員の職務分析・職務評価を中心として」『人文科学論集』信州大学,37, 45-63
- 大学・学部運営への教員の貢献度を適切に評価し測定する指標開発のための予備的調査を行う。
- 大学・学部運営への個人貢献度を測定するための指標開発に向け,運営組織の主体である各種委員会業務の職務分析(Job analysis)と職務評価(Job evaluation)から着手することにした。
- 職務分析:職務を構成している課業(task),その職務を遂行するうえでの環境,その職務を遂行するために必要とされる知識・技能・能力・性格などの特性を明確にして,他の職務との違いをあきらかにする手続き(松原 1989)。職務の内容を具体的に明文化し,文書化すること(吉田 1969)。→ 内規・規定集と実際の業務のすりあわせ。
- 職務評価:特定企業内において,ある職務のもつ価値を,その企業目的達成に対する重要度に応じて評価すること(吉田 1969)。
- 職務分析調査項目
- 委員会内規の確認経験の有無〔2件法〕
- 現在の職務と内規の一致度〔5件法〕
- 委員の職務内容の把握度〔5件法〕
- 他の委員会が行うべき職務〔自由記述〕
- 当該委員会が行うべきその他の職務〔自由記述〕
- 共同遂行すべき職務〔自由記述〕
- 委員会の職務の責任度〔5件法〕
- 職務(委員会および委員会委員長)の重要度〔マグニチュード推定〕
- 委員会職務の8つの側面についての評価〔5件法〕
- 職務の量,職務の質,所要の時間,手順の明快さ,自由裁量権,予算措置,委員選出方法の適切さ,教授会への影響力
- 問9の各側面への意見〔自由記述〕
- 職務評価調査項目
- 必要在職年数〔数値記入〕
- 必要経験〔自由記述〕
- 委員任期〔数値記入〕および任期の長さの評価〔5件法〕
- 委員の時間的負担〔マグニチュード推定〕
- 時間的負担軽減策〔自由記述〕
- 委員の責任度〔マグニチュード推定〕
- 委員のストレス度〔マグニチ=・一ド推定〕
- ストレス軽減策〔自由記述〕
- マグニチュード推定の標準刺激には,全員が判断できるA委員会(学生の授業履修に関する業務の実務的処理)を使用。
2017/06/14
串本剛(2017)「学士課程教育における成績評価の革新」『東北大学高度教養教育・学生支援機構紀要』3,9-12
- 成績評価:評価の根拠となる情報(=学習成果)の把握と,その情報に基づいて行 われる価値判断(=成績)の2段階。
- 情報把握の論点:目的,方法,時期,対象,主体
- 価値判断の論点:方法,対象
- 形成的評価は情報把握。
- 根拠情報:学習の活動と成果
- 活動:出席状況など
- 成果:知識,技能,態度(領域)
- 技能・態度の採点に使うルーブリックが革新
- ルーブリック
- 学生が採点の根拠と改善のための情報を得ることができる
- 教員の採点の効率と一貫性を高められる
- 課題時に見せることで学習の指針を与えられる
- 価値判断の基準:絶対と相対
- 厳格な成績評価=相対評価:教員が評価基準について考える必要がなくなってしまう。
- 絶対評価の基準:到達目標,学習成果 → 実際は素点が80点ならA評価
- ただし,これは問題。単位認定を前提にするとCの成績にあわせて授業目標を設定する必要がある。
- 目標水準は,45時間/1単位の学習で達成できる水準で決める。
2017/06/13
大森不二雄・高田英一・岡田有司(2017)「教育の「質保証」を学生の「学習」に連結させるための課題」『東北大学高度教養教育・学生支援機構紀要』3,75-88
- 合理的選択理論(rational choice theory):個人の行為を説明・予測する理論(意思決定理論)ではなく,初個人の行為が重なり合う結果として,どのような社会的帰結がもたらされるかを説明する理論。
- 各個人が合理的に行動すると仮定した場合,マクロの社会構造・メゾの組織にどのような帰結がもたらされるか。
- 英国の事例
- 質保証が経営陣レベルの名目的ポリシーにとどもあり,教育組織の営みや一般教員の意識に実質的なインパクトをもたらしていない。
- プログラム仕様書(≒3P)は,カリキュラム似合わせて作成するペーパーワークとして処理されている。
- 政府主導によるマクロレベルの高等教育システムの変革に対し,メゾレベルの団体行為者としての大学は,必要最小限の努力で形式的・皮相的にコンプライアンス要件を充たすという目的を達成するという意味で合理的な行為を選択している。
- 「内部質保証をどのようなものととらえていますか」に対する回答において,学習,学修の語が使われる頻度は極めて少ない。使っていても成果と結びつけられ,PDCAにおける点検評価対象にとどまっている。
- 学生の行動も大学の意図とは齟齬がある。
- 内部質保証はマクロ・メゾ・ミクロ連鎖が実現するかによるが,現状では連鎖していない。
- 大学がこうあってほしいという願望や理想論ではなく,合理的選択を行う個人を前提にしたシステムデザインが必要。
2017/05/08
苫野一徳(2017)「教育学のメタ理論体系」『本質学研究』4,1-17
- 教育学における規範欠如の問題は,教育構想や教育実践のためにどのような方向に研究を進めていけばよいのか,教育学が蓄積してきた多様な知見をいかに共同的に活用することができるかという指針欠如の問題に直結する。
- 教育学領域の細分化問題にも起因する。
- → 教育学のメタ理論体系の理路を明らかにする。
- 伝統的教育学
- 倫理学に基礎を置く目的論
- 心理学に基礎を置く技術論
- 今日では,3部門で広く了解されている
- 教育哲学(目的・規範部門)
- 教育科学(実証部門):教育心理学,教育社会学,教育史
- 実践的教育学(実践部門)
- 実際は,これらの部門を横断しながら研究を行う。
- この3部門それぞれに原理的視座(メタ理論)が必要である。
- ex. 教育社会学:社会学的分析がそもそもどのような意味において教育構想にしするのか,どのような目的によって行われるのが正当と言いうるか,明確でないことを問題視する動きがある。
- ⇔ 公教育の目的・正当性・構想指針原理が解明されれば,多様化・細分化した教育学の知見を整合的に再構築できる。
- メタ理論1の導出
- どのような教育を正当と言いうるか:政治哲学諸理論に求める(混乱しているが)。
- 道徳・義務的アプローチ(ロールズ,ノージック):どのような社会が最も道徳的で,そのような社会においてどのような義務があるかを問うアプローチ。
- 何を持って道徳的かは,欲望・関心相関的であるため,道徳原理を定めることは不可能。
- 状態・事実論アプローチ(テイラー,サンデル):われわれが事実的にどのような状態に置かれているかを思考の出発点として,社会構想理論を立てるアプローチ。
- 何を持って事実的状態かを一義的に決められない。
- 存在から当為を導出するアプローチになっている。
- プラグマティックアプローチ(ローティ,ウォルツァー):その都度どうすればうまくいくかを考えながら社会構想理論を立てるアプローチ。
- 具体的な考え方が欠けている。
- 現象学=欲望論的アプローチ:絶対正しい社会や教育の目的・正当性はあり得ないから出発する。
- 絶対客観的な目的・正当性ではなく,共通了解可能な目的・正当性を見出すよう問いを進めるアプローチ。
- 教育の目的や正当性に対して抱く確信が,欲望・関心相関的であるなら,普遍的に了解されうる欲望・関心がありうるか。あるなら,そのような欲望・関心を十全に達成しうる社会や教育の根本条件は何か。
- 人間的欲望の本質は,自由の相互承認。
- 互いが対等に自由な存在であることをルールとして認め,その上で自由への欲望を調整し合うことが,各人の自由を十全に達成するための根本的社会的条件。
- 実質化には,法の創設と教養が必要。
- 教養には学力だけでなく,自由の相互承認の原理の十全な理解(感度)が含まれる。
- 公教育の本質は,自由の相互承認の原理を教養を通して実質化するもの。
- メタ理論2の導出
- 研究対象の同一性が高い場合は,帰納法が正当性を持ちうるが,人間科学が扱う1回起性の高い事象には有効でない。
- → 構造構成主義:構造化に至る諸条件の開示。どのような関心・目的を持つ研究者が,何を対象に,どのような観点からどのようにデータを収集し,どのような角度からどのように分析した結果得られたものかという条件を開示する。
- 実証部門の科学性は,関心相関的に立ち現れた教育減少を共通了解可能な仕方で説明できるよう構造化することによって担保される。
- メタ理論3の導出
- 4つの課題に取り組む:
- 現代において自由に生きるための教養(力能)は何か,
- この教養はいかに育めるか,
- 自由の相互承認の感度はどうすれば育めるか,
- 教育行政において一般福祉はいかに実現しうるか。
2017/04/27
河合亨(2016)「「体験の言語化」における学生の学びと成長」『体験の言語化』第7章,成文堂,158-188
- コルブの経験学習理論の問題
- 各局面での移行が説明されていない
- 4つの局面を構成する理解と変換の区別が直交する必然性がない
- 子供期と大人期の違いが説明されていない
- → 理論に欠如する点
- 社会的要因への考慮がない(各局面は個人的な営為として捉える)
- 情動的要因が考慮されていない(認知面に偏った理論化,思考と行為を二分法で切り分けることが誤り)
- 情動的要因
- 感情が動くことで経験への意味の探究が導かれる
- ブード:経験から生じる学習の5つの命題
- 経験は学習の基盤であり,学習を刺激するものである
- 学習者は自らの経験を積極的に構築する
- 学習は全体論的なプロセスである
- 学習は社会的・文化的に構築されている
- 学習はそれが生じる社会的・情動的文脈の影響を受けている
- 行為の中の省察がなぜ生じるか
- 情動的要因に関わって生じる → こうした関心に導かれながら認識を深めるべく省察していくことで,認知的・情動的葛藤を解きほぐし,対象との関係や他者との関係に関する経験の意味をくみとる。
2017/04/26
苫野一徳(2017)『はじめての哲学的思考』ちくまプリマー新書
- 一般化の罠と問い方のマジックに気をつける。
- 信念をぶつけ合うのではなく,信念がどのような欲望や関心から編み上げられたかを吟味する。
- いじめはだめ → どういう条件が整うと人はいじめをしてしまうのか
- 超ディベート:
- 対立する意見の底にある欲望・関心を自覚的にさかのぼり明らかにする
- お互いに納得できる共通関心を見出す
- 共通関心を満たしうる建設的な第三のアイディアを考え合う
- 事実から当為は直接導けない
2017/04/20
中澤渉(2014)『なぜ日本の公教育費は少ないのか』勁草書房
- コールマンの教育機会の平等の4つの要素
- 労働市場に出るのに適切な教育を誰でも無償で受けられる
- 社会的背景によらず誰でも同じカリキュラムで授業を受けられる
- 異なる背景を持つ者が同じ場所で同時に学ぶ
- 公教育が税金で運営される以上,ある所与の地域では同じ教育が受けられる
- 近年の教育改革は個の要求を満たすために市場主義的改革を行うが,学校が公費で運営されなければならないという疑問には3と4が関連する。
- 階級・人種・性による能力差はカテゴリーの差(遺伝的能力差)ではなく,環境の差が原因。ここに教育の介入する余地がある。
- ペーパーテストの手続き的公平性が,入試結果を実力や努力の反映と考えやすくさせる。
- アメリカ人が政府に頼ろうとしないのは独立運動に求められる。→ 大学が寄付金で支えられる。
- 学校の官僚制の特徴(カッツ)
- 統制と監督の集中化(教育委員会など)
- 機能の分化(部局制,専門教科分化,学年制など)
- 職務に対する資格の要求(客観的資格による任用と昇進)
- 客観性・専門性(素人を排除し,改革や決定は専門的行政官を通じて行われる)
- 正確さと一貫性(統計データに基づく行政的決定)
- 用心深さ(組織内人材の勤務態度や学校運営への評価を行い,評価結果を一部の上位職のみに限定することで権限強化と個人情報保護がはかられる)
- 教育制度が機能主義的な目的を持って設置されたわけではない。近代国家が備えるべき制度として学校制度を作ったに過ぎない(=制度的同型化)。
- 公教育負担が少ない=家庭の高負担?⇔教育費が高すぎる?
- 公教育費上昇にかかわらず私費負担も拡大(末冨 2010)。
- 教育費負担を自由-平等と厚生-効率の2軸で整理すると,日本の公教育費支出は効率-平等 → 機会均等としての義務教育と選択の自由としての高等教育。
- ポスト産業社会への移行の4段階(テイラー・グッビィ)
- 女性の社会進出,男性労働力参加減少 → 女性の教育・労働市場機会均等
- 社会的ケアを要する高齢者増 → 国の福祉サービスコスト増
- 労働市場と教育の関係強化,低学歴者の社会的排除リスク増
- 国家財政引き締め,民間年金拡大
- 日本は新自由主義の影響を受けた小さな政府という指摘は,政府の支出構造からは言えず,保守主義レジームの大陸欧州に近い。人々の政府に対する感情は,アメリカと異なっている。
- 納税者はメリットを感じる支出を正当と考える=教育は現役か子供のいる人,社会保障は全ての人が正当と考える。
- (社会人大学院が普及すれば変わるか?)
- 日本人は政府への信頼感が少ない(顔見知りは信頼するが,知らない人への信頼感はアメリカ人より低い。ただし,学歴が高いほど高い。)。→ 双方向教育の充実が必要(?)
- 政府債務の規模は,政府規模ではなく税収調達能力に依存する。日本は財政的に見れば相当小さい政府だが,それでも無駄の削減や公務員削減が掲げられる。← 低コストで政府が権力を発揮するには規制をつくること。日本は規制が強い。
- 日本人は公と官を混同している。公立学校=お上が設置した学校,≠ 税金負担による共同運営学校。
- 公はみんなが利用するから少しずつ負担して共同管理しよう。
- 官から民へ:共同管理を飛び越して公の管理を個人・企業に任せるという発想。
- 国立大学授業料は,私立からの圧力で値上げされた。
- 国立大の学部別授業料が検討されたのは1988年。
- 内閣の交代が不明確は場合,安定した統治のために強固に組織化された官僚制が形成される → 組織志向型官僚制では,官庁組織が民意と離れた組織を強固に構築する。
- 税の問題が負担でしか話されず,その使用で得られる利得の話がされない。
- 日本人の間では,教育は公的な意味を持つものと認識されていない。一方で,教育の公的なベネフィットを感じる場面も少ない。
2017/04/12
今井康雄(2015)「教育にとってエビデンスとは何か」『教育学研究』82(2),2-15
- エビデンスが受け入れられない背景
- 養成時の教育に縛られる専門職の態度
- 受け入れに値するエビデンスを算出していない研究(→ 何をいかに研究するかの決定を研究者コミュニティに委ねず,実践者や政策立案者が関与すべき。研究の自由度は失われるが,研究の発展には得るものの方が大きい(ハーグリーヴズ))。
- エビデンスが鉄壁となるには,ランダム化比較試験とメタアナリシスが必要。
- ランダム化は,当の薬以外の要因を相殺・無効化するため。
- 学級規模問題:小クラス=成績向上,しかし,「学級規模の縮小が児童・生徒の学力向上につながる明確な因果メカニズム」が明らかにされていない。
- 要するに,RCTは途中経過をブラックボックス化する。
- PISAのエビデンス化=それがエビデンスであることによってではなく,それがエビデンスと呼ばれることによって威力を発揮している(=正味の証拠能力のみを当てにする限りは無力)。
- → 一旦政策側にエビデンスとして受容されれば,たとえ専門的なエビデンスの基準を満たさなくとも政策を方向付ける威力を発揮する。
- PISAはRCTではないが,途中経過を無視することで教育の出力を数値化し,歴史的・文化的文脈を異にする教育制度の間での一元的な国際比較(ランキング化)を可能にした。
- エビデンス擁護派:正味の証拠能力に即してエビデンスを論じる
- 唯一意味のある研究上の問いは教育手段・教育手法の効果についての問い。
- エビデンス批判派:エビデンスの政治的・レトリック的効果について論じる
- 何が「効果的」であるかは,何が教育的に望ましいかについての判断に異存する。
- → 両者の議論はかみ合わない。
- 治療エビデンスは治療に関する個々人の専門知に情報を提供することはできるが,それにとって代わることは決してできない。外的なエビデンスが個々の患者にそもそも適合するか否かを決定するのはこの専門知(expertise)なのである。
- EBM=権威(教科書や大家)に目を向けることの見直し → 標準ガイドラインや説明責任に横滑り。
- なぜか?:応答責任が根づくべき生活世界から切り離されたところでエビデンスが産出される = RCT のような実験的な状況でこそエビデンスは産出されるという想定(近代科学の思想)。
- 生活世界こそが明証性の基盤(フッサール)→ エビデンス(=実験の結果や大規模調査の数値)は,それ自体として明証性を保証するものではない。
- EBEにおいて構想されているエビデンスは,こうした生活世界的検証の通路を欠いているがゆえに,応答責任を支えることが構造的にできない状態に留め置かれている。
- エビデンス指向の教育学が応答責任を支えられないのは,学習の経験という途中経過をブラックボックス化し,もっぱら学習の帰結からエビデンスを採取しようとしているため。
- エビデンスは,近代科学的なエビデンス(証拠・論拠)の方向と,生活世界的なエビデンス(明証性)の方向へと引き裂かれており,前者は教育の説明責任を,後者は教育の応答責任を支える。
- 学習の経験は,その帰結によって測ることはできず,過程を意味づける個別的な応答責任によってしか把握できない。⇔ 生活世界的な明証性に支えられているという思い込みから,独断論に陥る危険を持つ。
- 教育・教育実践はエビデンスで確実な支えを見いだせない = 教育実践に自由空間を与えている。
- 教師が判断の自由を持つことは,倫理的な要請というよりも教育の構造的条件である。
2017/04/11
北島江里子(2017)「スウェーデンの大学における教育の質向上への取り組みと教職員の能力開発」国際協力員レポート・スウェーデン
- Senior lecture,Associate professor,Professorの職を目指すものは,原則として高等教育における教育学について15単位を取得していなければならない。
- docent取得が教授及び准教授になるための必須条件。学生の教育と研究指導の両方を担当する全教員が,その職にふさわしい能力を身に着けていることが docent によって証明されている。
- スウェーデン王立工科大学(KTH)では,研究員を含む全ての教員に対し「大学における新しい教育学」=「教えるのではなく,学ばせるための教育学」を15単位分学ぶことが義務付けられている。
- 基本コース
- Basic Communication and Teaching(3単位・80時間・9週間),オンライン課題,グループワーク,フィールドワーク。
- Teaching and Learning in Higher Education(7.5単位・必修),グループワーク,プロジェクト。
- 発展コース
- Learning for Sustainable Development(4.5単位)
- Develop the Learning by Using Grading Criteria(1.5単位)
- Leading Educational Development(3単位),教育リーダー養成コース
- Supervision and Assessment of Degree Project Work in First and Second Cycle(3単位)
- Examinership for Courses at KTH(1.5単位)望ましい試験のあり方や試験監督の役割についてオンラインで学ぶ
- Creating Online and Blended Courses, Project Course(1.5単位)
- 研究指導担当教員向けコース
- Doctoral Supervision
2017/04/10
藤江康彦(2017)「「発問」づくりの大前提」『看護教育』58(4),2017年4月,254-260
- 発問の役割:学習者の認知や情動を活性化すること
- 学習者に問い方を教えていく(豊田)
- 発問のみに着目しても意味がない:発問は授業参加者間のコミュニケーション過程に適切に位置づいてはじめて意味を持つため。
- 発問の3つの誤解
- 発問は理解を促すために行う:間違いでないが正しくは,発問は理解のための思考をうながすものであること。発問が直接理解を促すわけではない。
- 教材を巡って問いを立てて思考する経験の蓄積が専門職としての資質能力の基盤をつくる
- 発問にはすぐ答えが返ってくることが望ましい:よく考えられた発問ほど,学生からの反応がよいと考えがちだが,重要なのは学生が問いを持ち,その問いを時間をかけて追究することを目指して発問がつくられること。
- よい発問づくりには教材研究が大切である:発問が本当に学生に問いを持たせるかを検討する必要がある。発問づくりでは教材研究と共に学習者研究も必要。
- 教員に必要なのは,教える内容の知識だけでなく,それを授業の場で学生にどう出会わせるかを含めた知識(PCK)。
- 発問を作るポイントは,教員が教えるためのものではなく,学生が学ぶためのもの。
- → 発問は技法化できない,学ぶためのものなので技法化しても意味がない。
- → 教員の役割は足場かけ。
- よい発問の基盤には,能動的学習者観が必要。
- 人は,認知的葛藤の状態で学びたいと思う。生活実感を理論に照らすと実は違う,経験としてわかるがうまく説明できない,専門家と非専門家で立場や見え方が異なることに関する教材や発問が有効。
- 学生の思考を促すには,教材・課題の構造を3つの過程でとらえる。
- 教材との対話:その教材がどういう事象を表すか,どういう問いを投げかけるかを学生なりに考え,向き合う時間。
- 自己との対話:学習者なりに取り出した教材の構造を言葉や記号などの道具で表現する過程。
- 他者との対話:具体的な現象から仕組みや原理への言及を促す発問で,わかったことを蓄積し,自分なりにまとめて使える状態にする(=理解する)。
- そのために教員は学生に言葉が生まれる工夫が必要:授業中の情報の流れを可視化する板書,学生が教材と向き合うためのワークシート,グループ内での言葉の生成と校リュを記録するもの。
2017/04/07
池西静恵(2017)「実践的思考力を育てる「発問」」『看護教育』58(4),2017年4月,262-267
- 思考は固有の形式(分析,総合,比較,一般化など)で深化・発達する。思考するとは,これらの形式を接続詞で綱供養に仕向けること。
- 夫婦関係が疎遠で1階と2階に分かれて暮らす夫婦
- 「この夫婦は家族と思うか」(Yes/No)
- 「なぜそう考えたのか」(分析)
- 「家族と言うには何が大事か」(総合)
- 「フリードマンの定義はみなさんが考えた家族の要素の何を大事にしているか」(比較)
- 発問づくりとは,教材をつくり,それを学生にどう提示し,どう問うかを考えること。
- 3つの発問づくりのこつ
- 情緒的活動を促し,心に響く問い(患者の思いや苦痛が伝わるもの)
- 知的好奇心を喚起する問い(生活的概念と学問的概念との違いに気づかせるもの)
- 問題解決を迫られる問い(看護場面で活用する必要性が実感できるもの)
- 発問の3原則(向山)
- 知覚語で問う(患者は何を見ている?どう聞こえたと思う?患者はどう感じていると思う?)
- 選択さえる言葉で問う(専門知識が必要なことは選択肢を示してどっちだと思う?)
- 発見させる言葉で問う(選択の上で,家族って何だと思うという語で問う)
- 実習での発問は,クリティカルシンキングの条件
- 患者の理解配慮(思いのうけとめ),情報・事実の把握,事実に基づく適切な判断,援助の根拠(エビデンスと論理性)の4つ。
2017/03/22
西谷勢至子(2008)「組織学習に関する学説研究」『三田商学研究』50(6),325-346
- 組織学習論の理論的停滞:アージリス学派とマーチ学派対立
- アージリス学派
- 問い:組織はなぜ不完全で,歪曲したフィードバックによって硬直化してしまうのか。
- 学習:組織の意図と現実を適合させること。しかし,ダブルループ学習はめったに実現されない。
- 人はモデル1の行為を取るため((1)失敗の責任から逃れるために問題を隠蔽,(2)自分への非難を避けるために,部下の批判を避ける = コミュニケーションが機能しない)。
- その経験により,組織メンバーは熟練した無能力によってフィードバックが機能しなくなる。
- 問題解決にはモデル2の行為が必要 ← 研究者がコンサルタントして組織に介入する必要がある。
- マーチ学派
- 問い:経験的な知恵を生み出す同じプロセスが,なぜしばしば迷信的学習,能力の罠,間違った推論をもたらすのか。
- 学習:ある行動の結果が組織の目標を達成したかどうかを解釈し,その知識に基づいてルーティンを変化させるという学習によって,継続的に環境に適応すること。
- ルーティン変化は難しい
- 代替ルーティンよりも現行ルーティンの方が成功しやすいために,代替を排除する傾向がある(能力の罠)。
- 経験の解釈をフレームを通じて行うため,過去の行為と結果の関係を謝って特定したフレームに基づいて解釈をすると謝ったルーティン変化をしてしまう(迷信的学習)。
- 学習が常に組織の有効性を高めるものではない点が重要。
- 両者の問題
- A:DL学習を実現できる組織にする方法に注目。DL学習は,組織が支配変数を意図的に変えたかどうかという基準。
- M:環境に適応した組織が学習したかどうかはわからない。学習の評価基準は,組織の個別目標でなく,環境の適応を可能としたか否か。
- しかし,認知と行動のいずれかの次元を重要な変化として強調することによって,必要以上に組織学習の見方を狭めている。→ 双方重視することで統合できないか。
2017/03/21
朴澤泰男(2001)「現代日本における大学設置認可行政の構造分析のための基礎的考察」『東京大学大学院教育学研究科教育行政学研究室紀要』20,107-115
- 許認可制度は,裁量現象としての組織活動とセットでよりよく理解できる。
- 行政活動のルールには2タイプある
- 統制ルール:行政活動を外部から拘束し,違反することが許されないルール(外部者による官僚制統制)
- 行動ルール:官僚制の構成員になすべき行動内容を指示し,行政活動を円滑に実施するためのルール(内部者による活動円滑化)
- 部下から見ればどちらも統制ルール,ルールにできない部分は,個人的な行動ルールでの行政活動が期待される → 行政裁量分析では区別の必要なし。
- 政策:政府が行う将来の活動の体系についての案。→ 目的と手段を含む(多重な目的-手段関係からある一対を取り出したもの)。現実の政府の活動そのものでない。
- 異なる目的を頂点とする目的-手段連鎖の体系がある。
- ex. 大学教育の水準維持と高等教育の量的規模抑制は独立の頂点目標
- 行政裁量分析:単一の政策や行政活動に着目,垂直的な分業と統治の問題を扱う(=ミクロ)⇔ 複数の政策や行政活動の間での分業・統合問題を扱う調整や計画の分析はメゾ・マクロ分析。
- 行政裁量は,プリンシパル・エージェント・クライアントの三者関係で分析する。
- 裁量現象を生じさせる基盤は,三者間のルールと情報の共有形態にある。
- 窓口行政
- 行政官(エージェント)は審議会(プリンシパル)とは異なるルールを用いているが,それが審議会に受容される行動であれば,そこに行政官の裁量領域が存在する。
- 実際の分析は行われない。
2017/03/20
河井亨(2014)「大学生の成長理論の検討」『京都大学高等教育研究』20,49-61
- 60年代の4つの学生成長研究
- Sanford(1966):成長を人と環境の相互作用として捉え,成長の条件にレディネス・チャレンジ・サポートの3つがあると指摘。成長のためには,環境との関係でのチャレンジとサポートのバランスが重要。
- Heath, D.(1968):成熟の4つの領域=知性・価値観・自己概念・対人関係。5つの成長局面=経験を象徴的に表現できる,他者志向になる,統合的になる,安定的になる,自律的になる。
- Heath, R. (1964):自我機能と個人的スタイルの2つの軸。
- Feldman & Newbomb(1969):カレッジインパクト研究をレビュー,調査とデータに基づく学生の実態把握の必要性指摘。
- 学生の成長理論
- 一般理論
- Erikson,アイデンティティ形成理論
- Kohlberg,道徳発達理論
- 大学・大学教育・学生対象理論
- Chickering,7ベクトル理論
- Perry,認知的・認識論的成長の理論
- Erikson:8つの段階からなる発達の漸進論的図式
- 基本的信頼/不信,自律/恥・疑惑,自発性/罪悪感,勤勉/劣等感,アイデンティティ/役割混乱,親密性/孤独,世代継承性/停滞,自我統合/絶望
- 前者が優位になるように葛藤を解決することが発達
- Chikering:ベクトル=方向と大きさを持ち,方向は単なる直線よりもステップやスパイラルによってより適切に表現される。
- コンピテンスの発達:知的・身体的・対人関係的に課題に取り組んで目標を達成し,自信を獲得していくこと。
- 感情管理:自分の感情を自覚して受容してコントロールし,行動と統合していくこと。
- 自律を通して相互依存に向かうこと:自己主導性において依存から自律へ向かい,相互依存の重要性を認識・受容したうえで,互助的な自立に至ること。
- 成熟した対人関係の発達:差異を受容・理解し,持続的な親密性のある関係を築くこと。
- アイデンティティの確立:身体・外見・ジェンダーの安定した感覚と社会・文化・歴史的ルーツの認識,役割とライフスタイルを踏まえた自己概念,重要な他者からの承認といったことを通じて,自己受容と自尊心を持ち、,パーソナルな安定性と統合に至ること。
- 目的の発達:意義ある活動と対人コミットメントを持って明確な職業上の目標を抱くこと。
- 統合の発達:多様性と個性化を両立した成熟した価値観をもって,その価値観と社会的責任に応える行動とを調和的に実現すること。
- これらは,直線的なものでなく,1 人ひとりに個性化された形で実現する。
- Evans 1996:4つの構造:二元論,多元性,相対主義,相対主義の中でのコミット
2017/03/17
大学改革支援・学位授与機構(2017)「質保証、 だれが何をどうするか」平成28年度大学質保証フォーラム報告書
Hawkins (UCLA)
- Traditionally, the word quality was associated with ideas of excellence or outstanding performance., but the most commonly now accepted is “fitness for purpose”. This allows institutions to define their purpose in their mission and objectives, so “quality” is demonstrated by achieving these. This definition allows variability in institutions, rather than forcing them to be clones of one another. (Quality and Internationalisations in Higher Education, D. Woodhouse (OECD, 1999)).
- 「質は見ればわかる」
- 評価文化が広がった背景
- 国際競争・ランキング
- 学習成果に注目が集まった
- → 説明責任の高まりで評価が複雑に。
- → 学生が学んだことを示せない・示さない(2000年代)
- なぜ学習成果の測定が困難か
- 学習成果の測定自体に懐疑的(測定の手段・方法の理解不足)
- 教員の抵抗
- 教職員の訓練不足(少人数で過大な業務)
- ヤング学長
- データを全て出せ ← 教員は選りすぐりの人,そんなことはしない。
- 一般的な事項は自己評価している,そこに含まれない重要な事項について悪レディテーションしてはどうか。
- → テーマ別アプローチ,4年かけて3つのテーマに取り組む,
- 大規模大でのキャップストーン実施
- 学祭委的な教育・研究
- 学習経験強化のための教育テクノロジー利用
2017/03/07
Nicholas Hillman (2016) "Why Performance-Based College Funding Doesn’t Work," College Completion Series: Part Four
- Performance-based funding:仕事が単純・定型,目標が明確,メンバーが生産に直接関与する状況でのみ機能する。
- 高等教育機関では効果がないことを確認した先行研究が多数ある。
- → 財政的インセンティブがなくとも,高等教育機関は十分なアウトプットが出せる。
- PFが機能するための前提条件
- インセンティブがパフォーマンスの低い機関の改善につながること
- 結果を得るための明確な方策があること
- 効果が継続的にあること
- 非伝統的学生を支援するための機関支援に重点を置くべき。
Authors*
|
Outcome
|
Years studied
|
Effects on outcome
| |
1
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Shin & Mitlon (2004)
|
Graduation rates
|
1997-01
|
Null
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2
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Volkwein & Tandberg (2008)
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Accountability score
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2000-06
|
Null
|
3
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Shin (2010)
|
Graduation rates & research funds
|
1997-07
|
Null
|
4
|
Sanford & Hunter (2011)
|
Graduation & retention rates
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1995-09
|
Null
|
5
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Rabovsky (2012)
|
Revenues & expenditures
|
1998-09
|
Mix, mostly null
|
6
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Radford & Rabovsky (2014)
|
Graduation rates & degrees
|
1993-10
|
Null, sometimes negative
|
7
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Hillman, Tandberg, & Gross (2014)
|
Bachelor’s degrees
|
1990-10
|
Null
|
8
|
Tandberg & Hillman (2014)
|
Bachelor’s degrees
|
1990-10
|
Null, some + over time
|
9
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Tandberg, Hillman & Barakat (2015)
|
Associate’s degrees
|
1990-10
|
Mix, mostly negative
|
10
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Hillman, Tandberg, & Fryar (2015)
|
Associate’s degrees & certificates
|
2002-12
|
More short-term certificates
|
11
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Umbricht, Fernandez & Ortagus (2015)
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Degrees, diversity, & admissions
|
2003-12
|
Null, more selective, less diverse
|
12
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Kelchen & Stedrak (2016)
|
Revenues, expenditures, & financial aid
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2003-12
|
More merit aid, less Pell aid
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