木村琢磨(2011)「組織内政治と企業内キャリア」『生涯学習とキャリアデザイン』
- 組織における意思決定(Allison 1971)
- 合理的モデル:価値の最大化を目指して合理的に選択
- 組織プロセスモデル:確立済ルーチンで多くの選択を行う(新たな解決策の選択をしない)
- 政治モデル:コンフリクト・権力闘争・合意形成を通して意思決定がされる
- 政治を生み出す組織的要因:不確実性、曖昧性、資源の希少性
- 政治モデルの意思決定=組織構造や人事・処遇に関する意思決定も組織内政治の影響を受ける(=従業員のキャリアに影響する)
- 組織内政治の捉え方
- 組織の基本的な機能に貢献しうる多様な社会的行動(=広義の組織内政治)
- Pittgrew(1973)の定義:組織における資源配分システムに要求を出すために個人または組織のサブユニットによって行われる行動。
- Pfeffer(1981)の定義:選択に不確実性や不同意がある状況において、自分にとって望ましい結果を得ることを目的として、パワーやその他の資源を獲得・開発・使用するために組織内で行われる活動。
- 組織によって正式に認められていない自己奉仕的行動(=狭義の組織内政治)
- Mintzberg(1983)の定義:非公式で表向きは局地的で、一般的に軋轢を生じさせ、そして特に技術的な意味で非合法な個人または集団の行動であり、公式権限や公認のイデオロギー・専門性によって認められていない行動。
- Ferris et al. (1989)の定義:短期的・長期的な自己の利益を最大化するために、他者の利益に合致する形、あるいはそれを犠牲にしうる形で、行動が戦略的に設計される社会的影響のプロセス。
- 組織内政治の類似概念
- 組織内政治=組織サポートがない:必ずしもそうでなく、別の概念と考える。
- 組織内政治=組織的公正がない:関係はあるが別の概念。
- 組織内政治の研究アプローチ
- 組織内の従業員や集団による政治行動・影響戦術に着目(実証主義的)
- 組織内の政治行動に対する個々人の知覚に着目(社会構成主義的)
- 政治行動・影響戦術を効果的に遂行するための政治スキルを分析対象とする
- 政治行動研究
- Allen(1979):組織内政治=機能的にも逆機能的にもなる
- 政治行動を8つに分類:「他者への攻撃」「情報の活用」「イメージ形成・印象マネジメント」「アイデイアへのサポートの形成」「他者の賞賛・ゴマすり」「パワー獲得のための連帯」「影響力のある人との関わり」「義務感・互恵的関係の形成」
- Tedeschi & Melburg(1984):「戦略的か戦術的か」「アサーティプかディフェンシブか」の2軸で政治行動を4つに分類
- 戦略的行動:長期的な個人の利益につながるような評判を形成しようとする行動。
- 戦術的行動:短期的でより具体的な目標に向けた行動。
- アサーティブな行動:自分が組織の成功につながる特徴や能力を持っている人間であるということを,組織内の他者に確信させるための自己顕示行動。
- ディフェンシブな行動:自身が置かれた苦境に対する反応としてとられる行動。
- Kipnis et al.(1980)による8分類:影響戦術を「アサーティブネス」「ゴマすり」「理性的行動」「制裁」「便益の交換」「上位者へのアピール」「妨害」「連帯」という8次元に分類
- Zanzi & O'Neill(2001)の政治戦術分類:公認=「専門性の活用」「上位目標」「ネットワーキング」「連帯形成」「説得」「イメージ形成」、非公認=「脅し・あてこすり」「策略」「乗っ取り」「情報のコントロール」「代理者の利用」「人材配置への影響」「他者への攻撃」
- 政治行動とキャリア
- 人事に影響する:人は自分と似た人を高く評価する、自分の評価を高めるために部下を高評価する、昇進がごますりで決まる、など。
- 組織内政治知覚(POPs)とキャリア(人は現実そのものではなく,現実に対する知覚に基づいて行動する)
- 研究として価値がある(?)
- (1)実際の政治よりも測定しやすい、(2)利害関係者の認識の上での現実であるために,行為者の考え方や意思に実際の政治よりも強く表出される、(3)実際の政治よりも従業員の態度や行動に強く影響すると思われるため。
- Ferris et al.(1989)のモデル
- 理解:物事の因果関係・発生理由に関す る自分の理解水準に関する自己評価。
- 知覚されたコントロール:他者や状況に対する自分の影響力に関する自己評価。(それぞれ、マイナス=脅威、プラス=機会)。
- 実証の知見
- 昇進機会=-:上昇に恵まれない人ほどその原因を政治に求める
- 年齢=-:若いほど政治に耐性低い・組織忠誠低いため?
- 離職意思=+:知覚されると離職高まる
- コントロール=-:監督者はPOPsの影響小さい
- 理解=-:理解が高いと職務不安小さい
- 政治スキル:仕事において他者を理解する能力,および,その知識を用いて,個人的・組織的な目標の達成に役立つように他者の行動に影響を与える能力(POPsモデルの理解とコントロール)
- 政治スキルは学習可能で経験によって向上する。
- 政治スキル:
- 社会的鋭敏性(他者を鋭敏に観察し、さまざまな社会的状況に敏感に反応し、適応する能力)
- 対人影響力(微妙なニュアンスを把握する力や説得力を持ち、周囲の人に影響を与える能力)
- ネットワーキング能力(人的 ネットワークを形成し、それを自分または自分が属している集団・組織の利益のため に活用する能力)
- 仮現誠実性(自分が高潔・正直・誠実な人間であると他者に思わせる能力)
- 研究の歴史は浅い。