2017/11/08

河井亨(2012)「Y. エンゲストロームの形成的介入の方法論」『京都大学大学院教育学研究科紀要』58,453-465


  • レヴィンのアクションリサーチの方法論的核心は、「机上の空論ではなく、実際の場に根づき、さらにその場を変革していく研究、研究の進展とともにデータからさらに理論を生成展開し、実際の社会変革を生み出す研究」という変革志向と形成的志向にある。
  • 文化歴史的活動理論もまた、方法論的行動主義あるいは方法論的個人主義を批判し、協同的実践に基づく変革志向と形成的志向を方法論的核心に据えている。
  • チェンジラボラトリー:「発達的ワークリサーチ」を実際に進めるうえでの具体的な手法。
    • 大きな組織の中の相対的に独立していて実験の許容される活動システムを単位として行われる。
  • 形成的介入:チェンジラボラトリーという手法・アクションを支える方法論
    • 直線的介入:
      • 開始点:介入の内容とゴールは、介入に先立って研究者に知られている。
      • プロセス:実践者は抵抗なく介入を実行することが期待される。実行の困難はデザインにおける脆弱さと解釈され、その脆弱さはデザインを純化することで修正可能と解釈される。
      • アウトカム:目的は、全変数をコントロールし、新しい場面で転移されて実行される時に同じ望ましい結果を信頼性を持って産出するような標準化された解決モジュールに到達することである。
      • 研究者の役割:研究者は全変数のコントロールを目的とする。
    • 形成的介入:
      • 開始点:研究者が前もって知ることのない概念である新しい概念を構築することで、分析・拡張される不確実で矛盾のある対象に実践者は直面する。
      • プロセス:形成的介入では、介入の内容とコースは交渉に従い、介入の形成に実践者が責任をもつ。
      • アウトカム:目的は、ローカルに適した新しい解決策に関するデザインのための枠組みとして他の場面でも活用されるような新しい概念を生成することである。
      • 研究者の役割:研究者は実践者によって導かれ保有される拡張的な変容プロセスを喚起して保持することを目的とする。
  • 形成的介入の刺激
    • 第一刺激:現在までの実践を通じて蓄積されてきた矛盾やジレンマに起因する混乱状況・問題状況。
    • 第二刺激:研究者の提起するモデルやアイデアを含む媒介する人工物(実践者が第二刺激としての人工物を自ら持ち込む場合もある)。
    • → 介入プロセスを通じて、実践者と研究者はこの媒介する人工物を変化させていく。