真野毅(2016)「協働による行政職員の意識改革のプロセス」『京都マネジメント・レビュー』29,51-72
- 官僚制:戦後の社会インフラの構築と福祉国家の実現にその効率性を発揮。
- 90年以降:規律を遵守することを過剰に叩きこまれた結果,規則の遵守そのものが自己目的化し,その規律ができた目的を考えないが故に柔軟な対応ができない。
- 行き過ぎた分業体制は,自部門の利益しか考えないセクショナリズムを生む。
- → 事務事業評価制度の導入:導入が容易,しかし,マネジメントの Will(意思)が明確でなくても形式的には実施できる(大住)。
- 一番大きな課題は,NPM が機能するための前提条件が未整備の課題である。特に, 様々な NPM のツールを与えられた公務員がマネジメント(経営)の意識・思考方法がない(西野)。
- 新しい公共:協働によるガバナンスの向上
- 多様なアクターが対等な立場で協力して統治していくという新しいガバナンス体制が求められる。
- → 民間人との協働を通じて,行政職員の意識が変容。
- 官僚制:1つの目的達成に向けて,効率的に,長期的に安定したサービスが提供できる最も理想的な組織モデル。
- 遵守すべき規則や手順に基づき,命令の一元化が貫徹されたヒエラルキー構造の中の役割や地位に応じて,分与された仕事を執行する組織が最も効率的。
- 命令の連鎖, 分業体制,公式化,業績重視,非人格的手続き → 組織目標の効率的達成。
- ⇔ 逆機能:訓練された無能力,規律の自己目的化, 自己利害の擁護,規範の神聖化,人間関係の非人格化。
- 官僚制組織改革の限界:法規範やルールなどの「制度的要因」にあるのでは なく,職員自身の「行動的要因」に起因するところが大である(田中 1994)。
- 組織理念や構造の変革はスムーズでも,機能の変革は困難。
- 「新制度が導入されても,それが実施される仕方は結局,それを運用する側 の新制度に対する理解の仕方や意識と,それを運用する能力に依存している」ので,職員の意識改革なしに,真の組織改革はありえない。
- セクショナリズムが醸成されるプロセス(菊池 2004):
- 組織文化や部門文化は,職員それぞれが自分と他者の役割というものをまず定義し,その役割間の関係性から形成される規範のようなものであり,日常業務,会議,上司との確認作業などにおける双方向の学習によって,維持や新たなものの積み上げが行われている。
- 組織文化が,他者や他部門,またはこれらの役割というものを強く意識したうえで行動を起こすという,行政職員の行動パターンが裏付けになっている。
- 1 つ 1 つの案件について行われている確認作業が,大きな役割を担っている。
- → 既存のルーティンを使い続けると,既存のルーティンの修正に留まり,新しいルーティンの開発を排除する傾向になる(March 1991)。
- コンティンジェンシー理論の時代へ:
- 環境の安定性に応じて組織構造に変革することで好業績が残せる。
- 比較的安定した市場環境の下では, 責任や権限階層が明確な官僚制型の機械的組織が有効。
- 不 安定で変化に富む市場環境の下では,規則が少なく自由なコミュニケーションを重視する有機的組織が有効。
- コンティンジェンシー理論には,どのようにすれば環境との適合が可能になるのかという分析視点がない。
- Argyris (1972):コンティンジェンシー理論は,組織の中にいる個人の行動,小集団の行動,集団間の行動という重要な構成要素がどのように組織全体に影響を及ぼしているという視点がない。
- 行為の理論:人間のすべての意識的な行動は,認識を基礎においており,その認識に従い,行為を実践し,同時にその行為から学んだものをその行為に反映していく。
- → 組織も同様に行為の理論を持つ。
- 組織の行為の理論:それを構成する諸個人に共有された『組織の地図』 と『組織のイメージ』として,記憶される。これらは,個人が自分自身の回りで起こっていることを理解するのに役立つ。しかし,この知識は不完全なものである。個人はそれをより完全なものに近づけようとしている。それが組織学習のプロセスである(加護野 1988)。
- 加護野の組織認識論の前提:
- 人間は情報の能動的な探索者であり, 人間が外界を理解するための枠組(=スキーマ)によって情報の探索は影響される。
- 個人の中に蓄積されたスキーマは変化に抵抗するという頑強性をもっている。
- 記憶された既存のスキーマに合致した学習よりも,新しく受け取った情報と記憶された情報との「新しい結合」には,スキーマそのものの改革を伴う学習が必要となる。
- 日常の理論:組織構成員に共有されるスキーマの集合体
- 組織のパラダイム:3つが齟齬に関連しあって構成される
- 基本メタファーによって表現される世界観(狭義のパラダイム)
- スキーマの集合としての日常の理論(構成員がさまざまな状況でいかに行動すべきかを具体的に示す価値・規範としてのパラダイム)
- 見本例(日常の理論の妥当性の維持・体現・伝承を行う)
- 組織パラダイムの頑強性
- パラダ イムに合致する情報は獲得できるが,合致しない情報は獲得することが困難。
- パラダイムと合致しない情報を入手したとしても,パラダイムの信奉者に,現在のパラダイムが通用しなくなっていることを説得することが難しい。
- パラダイムは,それ自体が問題解決能力を有しているので,新しいパラダイムによる問題解決より,過去の成功のパターンによる問題解決に向かわせる(すでに確立されたパラダイ ムを創造的に破壊することは難しい)。
- パラダイムの改革:慣性力の克服が必要
- 変化の土壌づくり:問題,矛盾,緊張,危機などの不安定状 態の創造と増幅というトップの「ゆさぶり」が危機感を創出し,組織改革の心理的エネルギーの重要な供給源をつくる
- 突出集団の発掘と育成と見本例の提示(この段階が重要)
- 社内の雑音からの隔離
- 集団内に十分な異質性を取り込むこと
- 集団の規模を,少なくとも初期の段階では小さくしておく
- きわめて挑戦的な目標と明確な納期の設定
- 予算,庶務手続きなどの組織的障害の排除
- パラダイムの伝搬と定着化(突出集団が生み出した新しい発想を伝搬・増幅・体系化)