2017/08/01

石井拓児(2017)「戦後日本における教育行政学研究と福祉国家論」『教育論叢』60

  • 日本に特異な大学授業料政策(高い授業料負担)・奨学金政策(給付型奨学金制度の不在)・教育ローン事業の拡大政策について、これを「日本的家族主義」「親負担主義」が原因だとする学説が存在する。
    • いずれの研究も、1970 年代のある特定の時期に、意図的に持ち込まれた「日本的家族主義」を前提とする研究である。
    • 本研究が指摘するように、日本における授業料政策・奨学金政策の形成過程とその背景には、福祉国家構想の否定と不在、それを補完するように持ち込まれた「作られた家族主義(あるいは会社主義)」の存在がある。「作られた家族教育費負担意識」を実証して追認する ことに、いったいどれほどの研究的意義があるというのであろうか。
  • 天城勲の福祉国家における教育:第一に完全雇用の状態であり、第二にこれを支 える経済の成長であり、第三には社会保障制度の整備。→ まさに日本において特異な、「労働参加」を前提とする福祉国家論(資力調査や稼 働能力調査をふまえた選別的な社会保障制度論)が示されている。
    • 「福祉国家の要素の一つである経済成長との関連における教育の使命が問題となる」。高度の学問研究の発展、これら優秀な技術者の養成さらに新しい時代の社会に応じ進んでこれを形成する人間の育成」こそが、福祉国家における教育に 課られた「時代の要請」である。
  • 宗像誠也の批判:国家の財政支出を通じた教育内容統制
    • 教員給与の全額国庫負担化に対し、政治活動の制限と国家統制の危惧を表明。
  • 福祉国家システムの未整備:空白を支えたもの=賃金・企業福祉・税控除の「3 点セット」
    • 賃金カーブ,家族手当・法定外福利制度の拡充,扶養控除制度の3点
    • → 「日本型企業社会」の形成 → 「過度に競争的な教育システム」の形成
      • 社会保障の空白部分を補うだけの賃金を獲得しうる職業とは、中大規模の企業もしくは公務員・教員といった職に限定されていた。
  • 福祉国家教育行財政の原理原則
    • 就学前から高等教育段階まで、授業料を完全に無償とする
    • 「人生前半の社会保障」の確立を前 提とする、子ども・青年の学習権保障(=子ども手当制度を普遍的現金給付の仕組みに戻す,学生・青年本人が受給できる 生活費給付制度を創設)
    • 住宅と交通の問題解消(=18 歳で自立を果たす学生・青年には住宅手当の給付もしくは無償による住宅の現物給付)
    • 就学前児童、小学生、中学生の放課後の環境整備(=音楽・スポーツ指導者の育成)