2017/07/28

羽田貴史(2004)「企業的大学経営と集権的分権化」『大学論集』34,21-40


  • 大学の企業的行動:資源依存理論(Pfeffer & Salancik 1978)に基づいて,大学の財源的変化,外部資金の流入に影響されて大学の組織変化が生じていると説明(金を出した人間が笛を吹く)。
    • 大学・ファカルティの行動・組織に与えている主要なインパクトは,高等教育に対する政府財源の縮小である。
  • 80年代の大学の企業化行動:
    • グローバルな政治経済競争,知識経済社会への移行
      • 大学の特許取得促進,連邦・州政府による研究成果の企業化補助金などが推進され,資金供給量の増大が企業的行動の呼び水となった。→ 高等教育における資金の供給拡大が擬似市場の成立を促した。
    • 政府の高等教育財政政策の変化,大学における財政の変化
      • 政府財源減少による代替財源確保行動。
      • 政府財源の戦略的配分:教育,研究などの領域で具体的な成果を挙げ,資源獲得競争に参入させる
    • 福祉国家政策の転換とNPMの導入
    • 高等教育における大衆化・商品化の進展
      • 大衆化・グローバル化=リベラル教育よりは職業教育の必要・期待を増加させる。→ 学生ニーズが実学に傾斜,大学が商品としての教育プログラムの開発と提供に力を注ぎ,財源確保の手段とする。
    • 情報革命
    • 社会全体の商業主義,金銭価値化と大学の目的喪失
    • 大学における教育研究の肥大
  • → 大学像の構造的な変化をもたらしている。
  • 企業的大学経営の2つの帰結
    • 自由裁量財源の消失,システムの動揺,研究大学での差異化・公立大学の私学化が進み,研究資金が商業的科学に集中する。連邦資金は産学連携に集中,オーバーヘッドは減少,コアとなるフルタイム教員は縮小し,ファカルティ間の格差のために学者共同体としての大学の概念は拡散する。
    • グローバリゼーションが安定し,政府財政の健全化が回復し,公立研究大学への財源投入が改善され,機関間の差異化は進行するが,高度な研究公立大学は維持,大学内部の差異化は進むが小さくとどまる。
  • 外部資金の増加は教育にマイナスで,研究とサービスにはプラスな影響を与える。
  • 企業的大学経営に関する研究が指摘する事実は,市場に対応するために,同僚制を基盤とした大学の運営には企業的執行体制が浸透し,官僚制と大学内の集権制が高まるが,同時に「大学への分権化」と「大学内の分権化」が促進されるということである。
  • 市場的自由主義改革は本質的に自治を減少させず,むしろ企業的な意味で自由と自律を強化し,同僚的意味でそれを消滅させる(Merginson 1997)。
    • 学内運営機構の集権化についても,アメリカで推進されている企業的な大学経営は,単なる集権化,トップダウン的な意思決定ではなく,教育研究の基礎組織への権限委譲,分権化とセットになった構造的なものであることを理解する必要がある。