竹中克久(2003)『組織の理論的研究』神戸大学大学院文化学研究科学位論文
- 組織とは、当事者がまさに組織と認識ないし解釈する対象でしかない。組織の成員がどこから組織を感じ、どこから組織を忘れるかという当事者による線引き以外に、組織を限定する手立てはない。= 組織はある空間(建築物)や時間(タイムカード)に限定される客体的事実ではない。
- 社会科学では、全ての現象は発明されたものであるが、発明が発見と同意にとらえられるようになり、その前提が揺るぎないものに変容することがある。組織論では目的や合理性などの概念である。
- 近代官僚制がトップからボトムへの指揮命令系統を持つのに対して、家元では業務に関連する権限は階のマネジメントに順次段階的に委嘱されるという、上下に結ばれたクリップ上の連結的階層である。これはビューロクラシーの代替案を示すコンティンジェンシー理論に位置づけるべき。
- 機能主義の絶対的優位性はすでに1970年を境に崩れかけていた。
- 解釈主義がメインストリームにならなかったのは、組織論に期待されていたのは組織とは何かという問いに答えることではなく、いかに組織をマネジメントするかという問いに答えることであったため。組織とは何かを根底的に理解する解釈主義の立場が必要とされなかった。
- 本稿はコミュニケーションを中心に組織を考察し、シンボルやメディアに沿って議論を展開する。
- 組織論は伝統的に、ビューロクラシーとアソシエーションという2つの概念で組織を分析してきた。
- システムという概念は常にシステム以外のもの(=環境)との差異を形成することで成立している。環境に比べてシステムは常に安定的・統一的・複雑性が低い。組織をシステムとしてみると常に一面的になる(=安定的で複雑性の低い土所的な側面の分析になる)。
- ネットワークという概念は、システムと異なり無秩序な側面を喪服見込んだ概念である。
- ワイクは組織という名詞を避けて、組織化という動名詞で語ろうとした:組織について語る時、多くの名詞を使いたくなる。しかし、そうした名詞は記述すべき状況にあらぬ静態的なイメージを与えてしまう。組織を理解しようとするなら、名詞を根絶すべきだと言いたい。組織の研究者が名詞の仕様を控え、惜しみなく動詞や動名詞を使うようになれば、仮定に対してもっと注意が払われ、それをどう理解しどう管理したらよいか、いっそう明らかにされるであろう。
- 狩俣の既存組織論分類
- 伝統的組織論:テイラー、ファヨール、ウェーバー
- 人間関係論:レスリスバーガー
- 行動科学的組織論:マクレガー、アージリス、ハースバーグ
- 意思決定論的組織論:バーナード、サイモン、マーチ、サイアート
- システム論的組織論:カッツ・カーン、カスト・ローゼンワイグ
- コンティンジェンシー理論:ローレンス・ローシュ、ウッドワード、フィードラー
- 情報処理論:ガルブレイス、タッシュマン・ナドラー
- 意味論的組織論:組織文化論、組織シンボリズム、ゴミ箱モデル、ルースカップリング
- ユニットとしてのコミュニケーション:コミュニケーションの当事者同士は直接接触せず、接触するのはメディアと情報という2つの対象物。
- 新参者が来ると、新たな当事者とのコミュニケーションを可能にするには、より普遍的なコード優位のコミュニケーションに頼らざるをえなくなる。そこで、貨幣や権力などのシンボリックメディアが登場する。
- 科学的管理法(テイラー)や人間関係論(メイヨー)(=バーナード以前の組織論)は、組織の満足と個人の満足は一致すると想定していた。バーナードは両者は一致するとは考えず、協働システムとしての目的の達成(有効性)とその協働システムに貢献する個人の意欲の満足(能率)が調整される時に組織は存続すると考えた。両者を調整するものがコミュニケーションであり、コミュニケーションを通じた組織化である。
- このとらえ方は、目的がまずあり、次に組織が形成され、その達成に向けてコミュニケーションを通じた組織化が行われると考える。
- 一方、ワイクは多様な個人目的を前提とする組織論を考える。多様な個人目的は共通手段を喚起し、その結果、共通目的が発生するという発想を立てて議論を開始する。ここには、個人が社会構造を創造するという重大な点が残っている。(だからワイクは動名詞を使った。)
- 組織という言葉は名詞で神話である。組織なるものを探しても見つからない。見つかるのはせいぜいコンクリートの陰の内側で生ずる互いに結びついた事象であり、これらの事象の連鎖やバイパス・タイミングのフォームであえる。しかし、組織について語る時、そのフォームが誤って実体とされてしまうのだ。
- ワイクの組織化は、意識的な相互連結行動によって多義性を縮減するのに妥当と皆が思う文法と定義される。
- ワイクによれば、組織目的は何かを行った後にしかわからない。組織は目的合理的には作動せず、組織の合理性は見た目よりも低い。
- 機能主義者は研究対象を切り取ることで理論の定式化を重視し、解釈主義者は研究対象を絶えず進行中の過程として分析することを重視する。
- エツィオーニの組織類型:権力=強制的→関与の種類=疎外的、報酬的→打算的、規範的→道徳的
- バーナード:協働システムの基礎として役立ちうる客観的目的は、それが組織の決められた目的であると貢献者によって信じ込まれている目的である。共通の目的が本当に存在しているという信念を植え付けることが基本的な管理職能である。
- 組織はXという目標を持っているという点では一致するが、X自体は一致していない。他者がXと答えそうなものをXと答える。その結果個人目的xとは異なる組織目的Xが生まれる。
- なぜ、個人目的xではなく組織目的Xを希求するかといえば、コミュニケーションの多義性縮減という目的が個人目的xに含まれており、人々は組織目的Xを獲得しなければならないという志向性を有しているため。
- 組織文化は、組織構成員によって内面化され共有化された価値・規範・信念のセット(加護野 1988)。
- シャインは組織文化とリーダーシップはコインの両面の関係であり、どちらか一方を取り出して分析することは不可能と考える。組織文化の道具性、操作可能性、操作に携わる者の地位の特権性を強調する。しかし、組織文化に関与する者の特権性を認めるのは適切ではない。