2014/07/31

杉本均編(2014)『トランスナショナル高等教育の国際比較』東信堂


  • トランスナショナル高等教育 ≒ 留学しない留学
  • 教育は売り手の資源が枯渇しない魔法のような貿易(Teichler)
  • しかしどう考えても,トランスナショナル高等教育は理想的な高等教育であるとは言えない。
  • 高まる高等教育需要を国内高等教育機関でまかなえる国は少数。
  • イギリスは,新大学の方がTNHEに積極的。学部レベル・理系中心(伝統大学は大学院・文系中心)。
  • インドでは,Twining形態が多い。ほとんどが無認可教育機関。外国大学のインド分校は2010年法で可能になったが,過去20年政府の統制から外れて行われていた。
  • 教育サービスの特性:資源の無尽蔵性,取引場所の非限定性,サービスの提供者と評価者が同一。
  • TNHEのマーケティング成功要因:高等教育需要が高い,学位の価値が高い(収益率が大きい),国内高等教育が未発達,自国と渡航先の教育・生活コスト差が大きい,渡航先と自国の言語環境が似ている
  • 王立メルボルン工科大は,ベトナム政府の後押しでベトナム校を設置した。ベトナムは今後も高等教育への外国資本の導入を考えている。
  • RMITの前身は職業教育機関で,現在は高等教育+技術継続教育の二元制大学。
  • ベトナム校は,学費の安さと質の統制の2つをアピールポイントとして訴求している。教授言語は英語。
  • 質保証では,特に成績評価の適正化プロセスを重視。成績評価方法は,メルボルンのコース調整担当者とベトナム校の副担当者の調整で行う。ベトナム校の試験の抜き取り調査も行う。 
  • オーストラリアの大学が海外に出る際に,政府の許認可などは不要,各大学は自律的に事業展開をできる。
  • TNHE主要受け入れ国は,マレーシア,中国,香港。
  • 香港の特質:英語が正式言語,自由市場経済が基礎,中国と他の国を結びつける役割。
  • 香港は高等教育の規模抑制:留学が多かった,経済発展が緩やかで人材需要が小さかった,高等教育費用が高すぎた。50年代からの私立カレッジ=中国語で授業。
  • 80〜00年,規模拡大:地域の教育バブ化。高等教育拡大は,自由な市場を通じたものではなく,政府がニーズや変容を踏まえて定めた方針や計画によって拡大が進んだ。=自由市場経済社会に適応しながら,高等教育機関は市場から隔離されている。
  • TNHEは,政府が具体的な基準や条件を設定しないと同時に,必要な情報を確実に公表することで,質の評価とそれによる質の維持向上の役割を市場に委ねている。=自由な市場の維持の重視。⇔ 中国は政府主導で質保証
  • タイはTNHEに懐疑的・警戒感。タイ独自の価値と知識に基づく創造的なリーダーシップを養成する高等教育への転換を目指す。
  • タイの大学の国際化1:部局意思決定=優秀なタイ人をインターナショナルプログラムへ → 国内で十分な教員が揃わないので外国人教員を招聘。
  • タイの大学の国際化2:国際的な組織によって私立大学を設立=アサンプション大学,アメリカ式,欧米と単位互換。
  • タイの大学の国際化3:大学全体で国際化戦略を構想+学内に国際化プログラム=マヒドン大学インターナショナルカレッジ,アメリカリベラルアーツ型。
  • ラオスは国内に博士課程がない,タイとのジョイントディグリープログラムを模索。→ TNHEが生まれつつある。しかし,私立カレッジが関心を持たない。
  • タイの留学受入は,CLMVからが主流。
  • インドは世界第2位の留学生送り出し国。世界水準の教育に対する需要増。→ 現在はTNEが注目される。
  • 90年代にFEPがインド進出,規制法律なし,その後質保証と商業化を問題視,経営・工学系へのFEP統制開始(2011)。
  • AICTEによる規制
    • AICTEの許可なしに学位・ディプロマ提供につながる教育活動を行ってはならない
    • FEPがインドの機関と連携して教育プログラムを提供する場合,所在国の質保証機関から認証されていること
    • FEPがインドで提供する学位は,所在国のものと同等に扱われること
    • FEPの学位はインドの認定大学と同等に扱われること
    • FEPのフランチャイズ展開は認めない
  • 認証を得たFEPは6校しかない → 68は承認なしFEP=規制が機能していない
  • FEP単独の分校はなし,通常はインドの機関との提携。英米豪墺加で8割。教授言語は英語(準公用語が英語)。
  • FEPは政府系56%,民間34%。66%は所在国質保証機関の認証あり,3%認証なし,31%不明。
  • インドの高等教育はイギリス式システムを踏襲,カレッジ制を採用=学位授与権を持つ1つの大学に複数のカレッジが加盟する制度(=カレッジは学位授与権持たない)。
  • 大学に加盟しない私立非加盟機関・カレッジもあるが,TNEを提供する機関の多くはこれ。TNE提供機関の9割は民間機関。
  • TNEプログラムではTwiningが最も多い(インドと所在国どちらか・双方に滞在して双方の単位を取得)。
  • インドのTNEプログラムは,英語圏先進国FEPと,都市部に展開するインドの機関の提携で実現,半数は非正規で質保証認証なし。
  • WIUインド校の場合:大学と称し,WIU本校からの学位授与をするが,インドの大学法で認定された学位は出せない。AICYEの承認も受けず,インドの質保証機関の認証もなし。=アメリカでは学位として認められる,インドでは学位として認められない。→ 公的機関就職・政府系大学院へは行けない。多国籍企業への就職に使えるので,学生の人気は高い。教員はほとんどインド人。
  • IIPMの場合:ベルギーIMIと提携,MBA,BCAを授与。世襲の中小企業経営者の家から学生が来る=政府認定学位の必要なし。インドにいながらグローバルな企業環境・企業文化を学べる点が人気。海外旅行が一般的でない中,海外派遣プログラムがある点も人気。ただし,入学者選抜の質保証なし,IMIがベルギーの質保証認証を受けているかも不明。教員はほとんどインド人。
  • 政府は,規制強化を検討(罰金含む)。
  • TNHEの成功は,大学のアカデミックな水準や威信と相関するか?