2014/07/18

八田幸恵(2010)「リー・ショーマンにおける教師の知識と学習過程に関する理論の展開」『教育方法学研究』本教育方法学会紀要 35, 71-81


  • 教師の基礎知識(Knowledge Base)
    • 内容に関する知識(Content Knowledge)
    • 一般的な教育方法に関する知識(General Pedagogical Knowledge):教材を伝達する時に現れる,教室を運営し組織する広く一般的な原則と方略
    • カリキュラムに関する知識(Curriculum Knowledge):教師にとって交換の道具(Tools of the trade)として役に立つ教材とプログラムについての特定の理解
    • Pedagogical Content Knowledge:教師に特有の領域であり,専門職的な理解の特別な形。内容に関する知識と教育方法に関する知識の「特別な混合物」
    • 学習者とその特性に関する知識(Knowledge of Learners and their Characteristics)
    • 教育の文脈に関する知識(Knowledge of Educational Contexts):グループ・教室での学習,学区の政策・財政,コミュニティと文化の特性
    • 教育の目的・目標・価値,それらの哲学的・歴史的・基盤に関する知識(Knowledge of Educational Ends, Purposes and Values, and their Philosophical and Historical Grounds)
  • PCKはどのように形成されるのか?:教師の思考・学習過程(教育的推論)を通して形成される
    1. 理解(Comprehension):教育の目標,教育内容についての理解と批判的な検討
    2. 翻案(Transformation):(1)教材の準備(教材の構造化・分節化(既成の教材の批判的検討が必要)),(2)表現(教育内容を学習者が理解できるように表現を改める(類推や比喩等)),(3)選択(教授法とモデルから教授学的な選択(講義,グループ学習,作業等)),(4)適合(学習者の特性(能力,言語,誤った先行概念等)に教材を合致させる),(5)仕立て(特定のクラスの生徒及びグループに教材を合わせる)
    3. 指導(Instruction):実際の授業場面で,観察可能な教授行為がみられる
    4. 評価(Evaluation):学習者の理解度及び教師自身の教授行為の評価(PCKの活用))
    5. 省察(Reflection):授業を振り返り,目標達成の観点から出来事や成果等について検討する
    6. 新しい理解(New Comprehensions):推論と経験が加わった新しい包括的理解
  • 翻案:教師は理解した教育内容を,そのままでなく学習者が理解できるように「翻案」しなければならない = 教師は自身が理解している教育内容と学習者の思考過程との間を往復してPCKを形成する。
  • 知識の源泉
    1. 学問における学識(Scholarship  in content  disciplines):ある内容領域における重要な概念とその領域における真理の決定方法についての知識。
    2. 教育の素材と構造(Educational material and structures):具体的なカリキュラム,テスト,公的あるいは非公的な教師への指導,教職の組織学区の統治機関,政策と財政の一般的メカニズムなど(=教師が日常的に利用する道具や行動する文脈)。
    3. 正式な教育的学識(Formal educational scholarship):教授・学習・発達の領域における研究成果と方法論,および教育についての規範的・哲学的・倫理的基礎を含む。
    4. 実践の知恵(Wisdom of practice):教師が実践の中で自覚的・無自覚的に培ってきた知恵,実践のガイドラインとなる原則。← PCKはここからは生することが多い
  • ブルーム・タキソノミーは,ブルームの意図を越えて誤った使われ方をされる。
    1. 分析的なカテゴリーが評価のための指標になった。= プログラムやテストをデザインする枠組みとして使われる。
    2. 教育目標の連続性と階層性についての理論として使われるようになった。
  • ちなみに,ブルーム・タキソノミー:認知=知識,理解,応用,分析,総合,評価。情意=受入,反応,価値づけ,組織化,個性化
  • ゲス=ニューサムの統合モデル:教師の知識は,内容,教育方法,文脈の3つの知識から成り立ち,3つの統合によって教育実践が行われる = PCKという知識が存在するわけではない。⇔ 翻案モデルは3つの知識を独特な形へ翻案したのがPCK。