2014/06/06

寺倉憲一(2014)「大学のガバナンス改革」『調査と情報(国立国会図書館)』No.826


  • 我が国の大学では、伝統的に学部や学科における構成員の自治が強いため、学部長や教授会に決定権限があるとする意識が根強く、現在でも、各学部や学部教授会において事実上の意思決定が行われるなど、学長がリーダーシップを発揮し難い場合があるとされる。
  • 教授会は「重要な事項を審議するため」に置かれると規定され、議決機関でなく審議機関であると位置付けられており、設置根拠が学校教育法であることから、教育研究に関する事項を審議するものと解される。
  • 「重要な事項」という文言が抽象的なこともあって、実際の教授会の審議事項は大学の経営面に関することも含め広範に及び、本来は学長や理事会に決定権があるはずの事項についても、内部規則等により教授会に決定権が認められている大学も多く、学長のリーダーシップを阻害しているとの指摘もある。
  • 教授会の権限については、戦前の帝国大学の時代に、政府等による人事への介入とのせめぎ合いの中で徐々に獲得されたものであり、戦後、学校教育法等に規定が置かれたことは、憲法第23条の規定により認められた大学の自治を保障する意義を持つと説明されていることからみても、十分に尊重する必要がある。
  • 国立大学の教授会の権限については、旧国立学校設置法中に規定が整備されたことがあり、国立大学に置かれる教授会は、「教育公務員特例法」で定められた事項(教員採用のための選考等)を行うほか、(1)学部又は研究科の教育課程の編成に関する事項(第1号)、(2)学生の入学、卒業又は課程の修了その他その在籍に関する事項及び学位の授与に関する事項(第2号)、(3)その他当該教授会を置く組織の教育又は研究に関する重要事項(第3号)について審議するとされた。国立大学に関する限り、既に平成11年の段階で教授会の役割が整理されていたことになるが、法人化に伴い旧国立学校設置法は平成16年4月に廃止された。
  • 意向投票の結果を学長選考会議等がそのまま追認するような場合には、過度に学内の意見に依拠することになり、学内外から幅広く人材を登用しようとする法制度の趣旨からみて、適切とはいえないとの指摘もある。私立大学では、学長選考方法に法令上の規定はなく、各大学の判断に委ねられている。
  • 知識の発見、伝達、応用を固有の使命とする大学では、専門領域ごとの下位の組織単位や専門的知見を有する個々の教員の知的生産活動こそが原動力であり、その創造性を最大限に発揮し得る環境が整備されていなければ、組織としての使命を果たすことが困難になる。
  • ガバナンス改革のためには、法改正だけでなく、組織文化の変革が伴わなければならないと考えられるが、それをもたらすのは組織全体の学習である。