「大学教育のマネジメントと革新」『高等教育研究』第17集,2014
大森
- (答申は)学位プログラムの体系化は教学経営において実現されると位置づけている。
- 認証評価機関の定義でも,内部質保証は未成熟な概念。(基準協会:PDCAによって質向上を図り,教育サービスが一定水準であることを自ら証明する学内プロセス,評価機構:自学の諸活動の点検評価を行い,その結果から改善に努めて質を自ら保証すること,=どちらも自己点検・評価。)
- 英国でも経営の強化は質保証に結びつかない。(コンプライアンスにとどまり,学習成果に直接結びつく教授・学習過程にインパクトをもたらす実質化に至っていない。)
- ワイクは多くの現実の組織で,目的と手段・アクター間など,組織の構成要素間の結びつき・対応関係はルースでしかないことに着目した。
- コンプライアンスにとどまるのは,実質化へのインセンティブに欠けることが問題の本質。(注力しても,わかりやすいランキングなどのブランド確立に結びつかない。)
- 「優位にある大学の威信は,在学する学生の質によって維持される。これは閉じた循環をなす。このシステムにおいては,大学がプロセスやアウトカムの質について気に掛ける理由はない。」(Baldwin and James 2000)
森
- 「年間36-40週にわたり計120時間の授業を受けると1単位が与えられるというカーネギー単位は,高大接続問題の解決ツールとして採用され,1910年までにほぼ全ての高校がカーネギー単位を採用した。」
- CFAT設立以前から,学生の学修を時間で計ることは米国の大学で実践されていた。
- 米国では学期末試験への信頼が低く,外部試験員制度も根付いていなかったために家業時間は便利な尺度となった(Kleplin 1971)。
羽田
- マネジメントの不全は権限体系の美構築に起因すると思われやすい。→ 学長のリーダーシップ論。
- 公務を掌り,所属職員を統督する→統督=学問研究の自由と大学教員の特殊性に鑑み,いわゆる監督は細部にわたらず,大局的立場に立ってなされるべきことと解釈される。
- 学生処分は学長が行う,入退学などは教授会の議を経て学長が定める=大学は,上級者が下級者に委任して監督権を行使する官僚制ではなく,それぞれの領域の特質に対応して学内機関に権限を配分するシェアド・ガバナンス(事項によって責任主体を区分し,教育研究については教員の責任とする)。
- 大学の基本組織は,大学令以来学部である。設置認可は学部・学科単位で行われる。よって教員定数は大学ではなく学部に帰属する。
- 現在の学長リーダーシップ論は,株主利益の最大化を目指すコーポレート・ガバナンスを軸にし,あたかもそれが普遍的なガバナンスであるかのような前提で大学のガバナンスを組み立てており,教育・研究を遂行する組織の特質に対応したマネジメントを探求していない。
- 現在の論は,マネジメントにおける認知的限界の問題が全く視野に入っていない。特に,意思決定を制約する組織の階層性問題(人間は,複雑な問題を独立した部分に要素分解し,主要な局面のみを捉えた単純なモデルを持ち,極大化ではなく満足できるレベルを達成する満足かを目指す。→ 組織内の意思決定の不一致を導き,組織内コンフリクトの発生源となる。)
- 階層による価値規範が多元的であるからこそ,それを統合・調整するマネジメントの手法が課題なのである。
- 認知的限界は,学長に権限と責任を集中させることで克服できない。それゆえ,マネジメントのあり方が問題であり,学修する組織の概念は示唆的(部分的認知能力を克服し,組織全体がビジョンを共有し,システム思考を核としてメンタルモデルを変容していくこと)。
- センゲは,組織が効率的・効果的に作動しない理由を,問題を分割して把握すること,断片化して扱うことに求める。
- 学長リーダーシップ論は,マネジメント理論の展開に即したものではなく,ある特定のタイプ(=官僚制モデル)の理論に固執し続けているものだと言える。
- シェアド・ガバナンスが日本でも教育マネジメントを効果的に達成するとは言えない。欧米大学では運営参加は大学教員の業務の一部であり,専門職の責務であるが(大学教員の専門性に組織市民性が位置付いている),日本では雑務とされがち(管理運営負担を問題視すらする)で,職務としても位置付いていない(学校教育法)。
中井
- 大学におけるカリキュラムマネジメントは,大学の自主性・自律性が制度的・行政的にも確保されていることを前提にして,大学の教育理念を実現するために,教育活動の内容・方法(カリキュラム)上の連関性と条件整備活動(マネジメント)上の協働性との対応関係を,組織構造と組織文化を媒介としながら,PDCAサイクルを通じて組織的・戦略的に動態化していく営み(中留)。
- この枠組みで念頭に置かれているのは,学長・学部長を含む教員間の協働=職員の役割は不明。