2014/06/02

川端望(2004)「国立大学法人の管理運営制度と教員の地位」『全大教時報』第27巻第6号,全国大学高専教職員組合,65-76


  • 法人化に伴う管理運営制度の変化は、個々の大学が独立した法人となること、教職員が非公務員になること、研究・教育と経営が分離されることの3点を柱とする。
  • 文科省は従来国立大学法人の運営費交付金のうち人件費分を義務的経費として予算請求を行ってきたが、財務省の要求に応じてこれを裁量的経費とする方針変更を行ったのである。裁量的経費となることの意味は、一方で国家公務員時代と類似の人件費保障がなくなり、さらに政府財政の現状においてはマイナスシーリングや効率化係数がかかることを意味する。他方では、人件費と物件費の区別がなくなり、交付された運営費交付金の使途について大学の自由度が増すことを意味する。
  • 研究・教育と経営の分離は、事実上評議会が最高議決機関であった従来の体制が否定され、大学内での権限配分が変化した。教職員は、教員や職員のまま学長・理事になることはできない。 総長は、役員会の議を経て、中期目標に関する意見提出、年度計画、予算の作成及び 執行並びに決算に関する事項、当該国立大学、学部、学科その他の重要な組織の設置 又は廃止に関する事項などについて決定する。従来は、大学の予算の見積りの方針に関する事項や学部、学科その他の重要な組織の設置又は廃止及び学生の定員に関する事項が評議会の審議事項であり、 最終決定権も事実上評議会が持っていた。法人化によって、これらに相当する決定権が役員会に吸い上げられたといってよい。
  • 多くの 国立大学教員が当然のように受け止めてきた人事システムの中で、教特法に よって法的保障が与えられてきたことが2点あり、教員人事に関する教授会・評議会自治である。
  • 教員の採用及び昇任のための選考は、評議会の議に基づき学長の定める基準により、教授会の議に基づき学長が行うことになっている。また、教員は評議会の審査によるのでなければ、意に反して転任、降任、免職されることはなく,、懲戒処分を受ける こともない。
  • もうひとつは、研修機会の確保である。教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。また、教員は、任命権者の定めるところにより、現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる。教員人事が教授会を中心に行われることも、手続きを踏んだ上で授業や会議以外の時間に自宅で原稿執筆をしたり、自費で学会出席のために遠出したりすることが認められるのも、教特法に基づくものである。しかし、これらに関する明文での法的保障は、非公務員化によってすべて消滅したのである。ただし,教特法はもともと私立大学には適用されない。
  • 国立大学法人法では、学長候補者は学長選考会議が選考し、学長選考会議は、教育研究評議会と経営協議会から同数ずつ選ばれた委員によって構成されるが、 それに加えて、現職の学長や理事を委員全体の3分の1を上限に加えることもできる。
  • この規定には、二つの考え方が表現されていると理解できる。ひとつは、研究・教育を行う者の代表者だけでなく経営に携わる審議機関の代表者にも学長選考権を認めるべきだという考えである。もうひとつは、 学長や理事の権限強化を、次期学長の選考にも及ぼそうという姿勢である。
  • これらは、いずれも学長選挙の公正さという点から見て問題がある。もともと学長は経営協議会の委員全員を任命できるのであるから、経営協議会の代表は学長の影響下にあると言ってよい。その上、現職の学長や理事が加わるのであれば、学長選考会議が現職の学長の意向を強く反映する構成となる可能性が高いのである。
  • 国立大学法人の学長選挙においては、広範な構成員が参加すべきだと考えられるが、その根拠は従来の大学自治理念だけにあるのではない。学長の強い権限をチェックするものがいないという、国立大学法人のガバナンス上の欠陥を補う必要性が注目されるべきである。