松本雄一(2003)『組織と技能』白桃書房
- 人材育成は基本的に「自学」のプロセスであり,諸制度はそれをサポートするものである。
- Katz(1955):管理者の能力を考察する3技能:
- 技術的(方法,プロセス,手続き,テクニックを含む特定の活動に対する理解と熟達)
- 人間的(集団のメンバーに効率よく仕事をさせたり,チームの協働を促す能力)
- 概念的(組織全体を見て,組織の異なる機能を組み合わせたり,一部の変化を他に波及させたり,個々の仕事と業務全体との関係を明らかにする能力
- Mace(1950):技能の心理学的概念
- 身体的(Physical):感覚・知覚的きっかけによって導かれる身体動作を通じて,意図した一連の動作を生み出す能力
- 知的(Intellectual):一般化された知識や心像(イマジネーション)
- 社会的(Social):他者への微妙な感情表現や微妙な自分自身の表現
- 技能の概念整理
- 技能は生得的なものでなく,練習や経験の産物である
- 技能は意図する結果を生み出す能力である
- 技能は自動化された能力である(言語で表現しにくい)
- 技能にはその能力とメタ能力(変化する状況を理解・推論して必要な技能を用いる能力)という階層構造がある
- 組織学習研究の整理
- 組織学習研究は,組織目標や環境に対して行動を変化させる適応としての学習と,行為の理論や知識を獲得する知識獲得としての学習の2つのカテゴリに分けられる。
- 適応としての学習は個人の学習を組織の学習に援用して発展したが,その内容は組織的な技能形成に類似した側面がある。
- 知識獲得としての組織学習は共有による知識の保有・発展という概念を用いることで発展した。
- 組織学習研究では実践の概念が欠落したが,技能形成においては実践による体得が最も重要である。
- 状況的認知研究の整理
- 学習する技能や知識は,学習する状況の中に埋め込まれており,教授者・学習者・周囲の状況の三者の相互作用により学習はより効果的に進められる。
- 技能形成は,状況をうまく利用した教授者のガイドによってより効果的に進められる。
- 技能形成は,経験のある先輩が後輩を助けたり,話し合いながら作業を遂行するオープンな相互作用を起こしやすく状況を作ることでより効果的に進められる。
- 全ての技能を自身が保有する必要はなく,他者や状況に埋め込まれた技能をうまく利用することで,タスクやより効率よく達成される。
- 技能形成は,技能を保有する共同体への参加と,そこでのアイデンティティの構築が同時に達成される。
- 技能形成は,その共同体の中での実践がなければ完全には達成されず,共同体における即興的な実践を通じて相互的に達成される。
- 技能形成は,組織内だけでなく,組織外の共同体との協働や相互作用を通じても達成される。
- 技能形成は,その技能に対して価値的にコミットすることが必要であり,解釈の努力を伴う継続的な模倣がより効果的に技能を形成することにつながる。
- 本書の考察
- 技能は意図する成果を生み出す能力(スキル)とスキルを状況に応じて使い分ける能力(インテリジェンス)による階層構造をなす。
- 両者はその形成方法に違いがある。
- 両者を合わせてコンピタンスと呼び,その形成が学習者の目指す熟達目標である。
- 技能は,スキル,インテリジェンス,コンピタンスの順に形成していく。
- スキルは意図が変わらなければ,状況によって変化する度合いは少なく,その意味でポータブルである。
- インテリジェンスの形成については,状況的実践の重要性が大きく,具体的な状況下での具体例に基づくテクスト指向型教育が有効である。
- 状況的実践:技能形成の基本プロセスである実践を効果的に進めるための,状況的セッティングが重要。教授者は,学習者の周囲の状況を把握・コントロールすることで,学習者の主体的な実践を促進する。