2014/06/18

金井壽宏・楠見孝(2012)『実践知』有斐閣


  • 実践知:Practical Intelligence:よりよく生き,働く上で,より上手に物事を楽しむ上で役立つ知能・知性
  • 実践知を獲得する学習過程を熟達化とする。
  • 実践知の特徴:(1)個人の実戦経験によって獲得される,(2)仕事において目標指向的,(3)仕事の手順や手続きに関わる,(3)実践場面で役立つ(Sternberg et al 2000)
  • 暗黙知の構成要素は,タスク管理,他者管理,自己管理の3つのようである。
  • 熟達化の段階:初心者(仕事の手順・ルールを学習し,手続き的熟達化が行われ,状況が見えるようになる),一人前(定型的仕事は速く正確に自動化されて実行できるが,新奇の状況の対処はできない,アルバイトの限界),中堅者(柔軟な手続き的熟達化,状況に応じて規則を適用,文脈を越えた類推ができ,類似的な状況で過去の経験や獲得したスキルを使える),熟達者(高いレベルの完璧なパフォーマンスを効率良く正確に発揮,事態の予測・分析・判断が正確で信頼でき,難しい問題解決状況に対処,全ての人が到達しない)
  • 実践知の獲得:観察学習,他者との相互作用,経験の反復,経験からの機能と類推,メディアによる学習
  • 獲得の差が出る要素:経験から学習する態度(朝鮮製,柔軟性,状況への注意とフィードバックの活用,類推),省察(振り返り+見通し),批判的思考(明確化,判断の基盤の検討,判断)
  • 獲得を促進する環境要因:移動に伴う困難(新たな責任,能力顕示),仕事の特徴(変革創造,重責任,仕事の多様性,負担大),仕事の障害(困難状況,サポート欠如,難上司)
  • リーダーを育て,育成の仕組みを作ることはリーダーの役割の1つである。リーダーは,育て親リーダーの薫陶を受けながら経験からリーダーシップを学ぶ,その学びは育て親が自分なりのリーダーシップ論を言語化し,それと言行一致した行動を取る時に最も促進される。
  • リーダーシップ持論を暗黙知から形式知にすくい上げる方法:3つの一皮経験(いつ,どの立場で,誰と,何を成し遂げた),それぞれから得た教訓+後にどう活かしているか,どの教訓がどのように現時点のリーダーシップのもとになっているか選ぶ,教訓のうちLSに関わると思われるものが持論であることを確認,薫陶を聞く,OffJTと持論の関係を確認
  • MBAの授業で経験を省察するレポート,共有と議論。
  • 省察の三層:行為の中,行為に関して,行為の省察に関して
  • 学校の授業の特徴:不確実性(今日通じた手法が明日の教室でも通じるとは限らない),複雑性(授業はさまざまな価値を内包し,相反する価値の葛藤も抱える),観察による徒弟制(教師になる前の授業観形成)
  • 教師が持つ専門的知識は,「授業を想定した教科内容知識」を持つこと。教科内容を授業や子どもの知識と結びつけて再構成すること。
  • この知識は,教師のコミュニティで学ばれる。実際の授業で試し,それを省察する過程ではじめて形成される。この過程では,新しい教科内容を学ぶことはなくても,教材に対する見方を転換することがある。
  • 教師の実践知の継承はメンタリング。メンタリングの過程で,初任者の具体的な授業に文脈付けながら,自分の実践知を言語化して省察できるため。
  • 人間存在の二重性:主体性と共同性。主体性だけでは自己主張ばかりする発想や行動にとりつかれ,やがて自己破壊をもたらす(Bakan 1966)。交わりの中の主体性,観形成の中から生まれるアイデンティティ=自分らしさは,自分が成し遂げてきたものと,誰と共に成し遂げたかという関係性の中から形成される。
  • 熟達化への動機付け要因:有能感が得られる,用具性(結果的にもたらされる価値),動機付けの持続(自己決定と自己イメージの高揚)
  • 初心忘るべからずは,初心者の頃の初心だけでなく,中堅者の頃の時々の初心,エキスパートになってからも老後の初心が問われ,いずれも忘れてはいけない。
膨大な先行研究の整理と,実践的な示唆に富む,優れた本。この分野の入門として避けて通れない基本文献。