- 日本の1次・2次産業就業者は急速に減少 → 理工系進学希望者の減少
- 学部比率=f(1次産業比率,2次産業比率)の直線回帰
- どの国も相関なし(日本は工学部と2次産業比率の間に関係あり)
- ← 短期的に在学生数を変えることは難しいため(学生が減ったからといって教員を減らせないため)+効果のタイムラグがあるため(数年後の産業構造を見越した定員削減は難しい)
- 学問分野別就業先マトリックス
- 学部iから産業jへの就職割合÷学部iの構成比委率×産業jの構成比率という指標を作成
- これが1に近いほど、学部と産業の就職に偏りがない
- → 近年になるに従って、偏りが小さくなっている
- → サービス業は採用学生の垣根が低い
- 含意:抽象概念中心でさまざまな分野に応用可能な内容を教えるべき。(ロボットの作り方なら、部品加工やハンダ付けではなく、制御システムや設計方法を教える)。
2018/11/30
新井泰弘・川口大司(2011)「産業構造の変化と高等教育の役割」NIRA『時代の流れを読む』NIRA研究報告書,62-76
2018/11/29
Hunkering down: Japan’s higher education sector
- 大学の国際化は、国内のブランディングのためで、大学の国際化のためではない。
- 真に国際化した大学の国内インパクトも小さい。企業も国際人よりも日本語を話せる留学生をほしがる。
- 日本の大学職員=ハードワークなアマチュア
- 40代以降の転職ほとんどなし。専門職は短期契約雇用。国立の上級職は素人官僚。私立大も文科省のマイクロマネジメント下。
- 結果として新しい経営ができる人材が出てこない。
- 日本の講義は受け身過ぎという批判は気にするべきではない。日本の強みはゼミ教育で、これが真のアクティブラーニング。外国は1500人講義もある、コスト減でチュートリアルを減らしつつもある。
- 日本の高等教育研究者は、自国システムを過剰に批判しすぎ。自分たちの強みにもっと自信を持つべき。
2018/11/28
Shared Governance Does Not Mean Shared Decision Making
- シェアドガバナンス=共同意思決定ではない。
- 大規模災害時の意思決定では、シェアドガバナンスを停止した例。
- セネトと執行部は日頃から意思疎通を図ることが望ましい。
- 問題が起こってから議論するのではなく、日頃から議論しておいて、問題には迅速に対応する。
- セネト側は、アドバイザーとしての役割、意思決定の反対者としての役割を区別して用いる。
2018/11/27
Duties and Functions of Institutional Research
- 情報ニーズの特定
- 関係者を特定してその意思決定を支援するための継続的な対話プロセスを指す。その過程で、国内外や個別機関の高等教育情報に精通して、データ、情報、政策に関する問いを投げかけ続けなければならない。
- データと情報の収集・分析・解釈・報告
- 技術的な側面。
- 計画と評価
- 大学のあらゆる計画と、認証評価はプログラム評価に関わる。データを形成的、総括的評価に活用する。
- データと情報の世話役として振る舞う
- 大学全体のデータ戦略に参画することであり、情報保全などのコンプライアンス活動を含む。また、データをアクセスしやすく活用しやすいものにする。
- 情報の産み手と使い手の指導
- データを収集したり分析する人の学習を支援し、情報の質向上に関与する。
2018/11/26
Prospects and Limits of Online Liberal Arts Education
- もし大学教育が職業準備だけになったら?:学生が徳や個性を含む意味や目的の感覚を伸ばすことができなくなる。
- annual national surveys of faculty and chief academic officers:テクノロジーは深く考えることを妨げる、より感情的になる
- 3800学生数のLAカレッジで調査:オンライン教養教育の実験、関係者の聞き取り分析
- 教養教育の成果=個性と市民的責任
- その重要な要素の一つ:共感 ← 対面の方が指導しやすい、アイコンタクトが重要なので
- アイコンタクト=相互理解、個人的つながり、アイデアの交換、雰囲気づくりに重要(これは学生も指摘)。
- 一方で可能性もある。
- デジタルツールを批判的に検討する。
- 学外の専門家につなげる。
- ハイブリッドにする(授業の一部で教会合宿、その後オンラインで議論orオンラインインタビュー)。
- 学外とうまくつながれるなら、対面のみよりハイブリッドの方が、いい教養教育ができる可能性がある。ただし、優れた課題が用意されることが前提。
2018/11/25
大学教育の崩壊:高等教育におけるラーニングの問題
- 大学教育の崩壊は、外部からではなく現在の教育実践に根ざして進んでいる=体験に基づく学びが増大し、これが部分ではなく主たる学習になり、学士課程の質保証のあり方を変えている(既存カリキュラムが崩壊している)。
- カリキュラムへの2つの圧力:(1)体験的な学びが効果を上げている、(2)インターネットを介した参加型インフォーマルラーニングの存在。← 学士課程カリキュラムは半世紀前に作られた遺産(=教員は協働による共通目標を設けた授業を教えていない=断片的な単位の集積で卒業)。
- 効果的な体験学修の効果:(1)時間を使って努力する、(2)教員・ピアと本質的なことで交流する、(3)多様で異質な体験をする、(4)頻繁なフィードバックに対応、(5)内省的で統合的な学習をしている、(6)社会とつながった学習をしている。
- 参加型インフォーマルラーニング:「人は何かを実践することでより学ぶ」⇔ 何を学ぶかを組み立ててから実践に至る(=伝統的カリキュラム)
- そのためには、早い段階でウェブメディアなどを使って、自信を持って語る経験をしておく必要がある。いかなる環境でも実践の中で考えることができるようにするため。
- 今のラーニングにティーチングを合わせるには、チームによるコース設計が必要(← 論拠弱い)。
2018/11/24
There's a gulf between academics and university management – and it's growing
- かつては研究者が執行部を兼業していた。今は専門職。そのため、アカデミックコミュニティとのつながりを失いつつある。
- 今は大学は運営するのではなく、管理するもの。
- 学長職は、いやいやとか懐柔されてなるのではなく、今や明確なキャリアビジョンの下で選んだ人がなっている。
- そのキャリアは学科長から始まり、権力を指向すると上のポストを目指す。
- 皮肉にも、学長は研究者出身でないとならないが、そのキャリアを捨てないとなれない。
2018/11/23
How to Deepen Online Dialogue
- オンラインでの議論は、表面的でまばら。しかも、教員がフォーマルな言葉で介入するとますます学生は沈黙する。これは、レポート課題で形式を強調しすぎると、中身が薄くなるのと似ている。
- → 日常語で発言させる。教員が意識的に行う。
- → フォーマルで大きい問いに答えさせない。経験のある身近な問いを重ねて問う。「医療過誤に対する処罰はどんな影響があるか?」→「本当のことを言うのをためらったことある?」「それはなんでためらった?」「医療ミスは隠される傾向があると思う?」(Discussion Promptを使う)
- Active online listening:他人のポストを読んで、自分の考えが変わったり拡張されたときに、それを書いてもらう。
https://www.facultyfocus.com/articles/online-education/deepen-online-dialogue/
2018/11/22
Can Online Teaching Work at Liberal-Arts Colleges?
- オンラインでの教養教育
- 教員は学生参加に疑問だが、学生はそう思っていない。
- 教員の評価は半々:半分は対面よりいい、半分は対面の方がいい。
- 自己規律の弱い学生に、オンライン議論は難しい。
- オンラインでの指導は、より時間がかかる(補習コンテンツを出すため)。
- 正課でやるよりも、スピンオフでやる方が向いている。
A Syllabus Tip: Embed Big Questions
- ステップ1:到達目標に関連した問いを作る
- 「主要なメディアと学術的資料を用いて今日の政治学的課題について議論ができる」→「主要なメディアと学術的資料の違いは何か?」「どの主要なメディアが世界の時事問題を知る上で信頼できるか?」前者は学生の科目に関する知識を問う問い、後者は学生の行動を評価する問い。
- ステップ2:全ての到達目標に関連した問いを作ったら、その問いが授業計画のどこに対応するかを考える。
- つまり、授業計画に塊を作り、問いに関連した活動を入れる。
- ステップ3:問いを全て埋め込んだら、初回の授業で問いを紹介する。初回の答え方と授業後の答え方を比較することもできる。
https://www.facultyfocus.com/articles/course-design-ideas/a-syllabus-tip-embed-big-questions/
2018/11/21
中原淳・中村和彦(2018)『組織開発の探究』ダイヤモンド社
- 組織開発の定義:定まっていない
- 計画的で、組織全体を対象にした、トップによって管理された、組織の効率性と健全さの向上のための努力であり、行動科学の知識を用いて組織プロセスに計画的に介入することで実現される(Beckhard 1969)。
- 組織の問題解決過程や、再生過程を改善するための継続的な努力である。その特徴は、とりわけ行動科学のセオリーやテクノロジーの助けを借りて、組織文化を効率的かつ協働的なものにしていくことを通して、目的を達成することである(French & Bell 1973)。
- → 計画的な変更、行動科学の知識を用いる、組織の中で起こるプロセスを対象にする、組織が適応し革新する力を高める。
- → 風呂敷:輪郭や境界が曖昧で、多様なものを包摂する。
- → (1)組織をworkさせる(成果を出せる)意図的な働きかけ、(2)多様化時代に求心力を働かせる、(3)組織問題の見える化・真剣な対話・今後を一同で決める3ステップで理解する。
- ガチ対話=一同に集まる(one time)、1つの話題(one topic)、全員テーブルにつく(one table)。
- → 組織開発には多様な立場があり、あらかじめ固定された考えに縛られること自体が非組織開発的。
- 組織開発の5段階実践モデル
- エントリーと心理的契約:キーマンと出会い、問題をヒアリング。目的・役割・スケジュールを合意。
- プロジェクトデザインと準備
- フィードバックによる対話:データをフィードバックして、メンバー間の対話を促す。
- アクション計画・実施:問題の真因を特定し、解決プランを実行する。
- 評価
- 組織開発の3層モデル
- 哲学的基盤:
- 経験と学習の理論(デューイ)
- 現象学(今ここの価値観)(フッサール):科学的事実より主観性
- 精神分析学(フロイト):無意識の中の抑圧(=氷山)を対話で顕在化させる
- 集団精神療法:
- モレノの心理劇:抑圧は語るのではなく、グループの前で演じる。演じた後にグループで振り返る。監督(セラピスト)が演技と振り返りをコントロールする。(役割交換、代弁などを使う)。
- パールズのゲシュタルト療法:ゲシュタルト=形、全体性、簡潔性、統合性。エンプティチェア(ホットシート)を使い、空席に向かって語りかける。
- 独自手法の発展
- 経営学的基盤:テイラーの科学的管理法、メイヨーの人間関係論(ホーソン実験)、バーナードの組織論(組織システム論=内部要素の公式・非公式の相互作用)
- 独自手法:
- Tグループ(レヴィン):ラボラトリー方式の体験学習。話題・課題が決まっていないグループセッションをして、状況をコンテント(何を話しているか)とプロセス(どのように話しているか)で捉える。
- → アクションリサーチ、組織変革の3段階モデル(解凍・変化・再凍結)(=不安がある限り変化できない)、グループと組織のダイナミクス研究の基盤(リッカートのシステム4理論)の3つの発明につながる。
- エンカウンターグループ(ロジャーズ):Tグループ=対人関係の改善、エンカウンター=個人の改善を目指す
- 組織開発の誕生と発展:
- ブランドチェンジ、プロセスコンサルテーション:コンサルがクライアントに介入するタイプの開発
- 診断型組織開発などのコンサル改良型、チェンジマネジメントなどの非コンサル型(コッターの8段階モデル)へ。
- ジョハリの窓は、解放領域が広がり、盲点と隠された領域が狭まるときに気づきが得られる。
2018/11/20
仲野由佳理(2010)「「援助交際」体験者の逸脱キャリア」『教育社会学研究』87,5-24
- Beckerの逸脱キャリア:現象認識のためには個人の行動とパースペクティヴにおける諸段階・諸変化の時系列を扱わなければならない。
- 最初の逸脱(第1段階):無知から生じる非意図的な逸脱行為や意図的な逸脱行為。
- 逸脱行為の継続(第2段階):逸脱行為が継続し,最初の逸脱では明確でなかった動機が経験豊かな逸脱者との相互作用によって発展する(逸脱的な動機と関心の発達)。
- 今回の事例では、技法の学習、技法と成果の関連づけ、個人的な楽しみの発見。
- 逸脱下位文化の形成と常習化(第3段階):組織化された逸脱集団へ移行し,逸脱下位文化を形成する。
- 今回の事例では、インターネット上の準拠枠の参照。
- 初回の 「援助交際」に対する肯定的な意味づけが、継続への動機づけとして作用し、3つのを通して「援助交際」体験者としての適切なふるまいが獲得される。さらに個別の「楽しみ」が発見されることにより,動機をめぐる語りも発展した。
2018/11/19
佐藤郁哉(2018)「大学教育の「PDCA 化」をめぐる創造的誤解と破滅的誤解(第2部)」『同志社商学』70(2),31-88
- PDCAが2000年前後から行政関連文書に登場した背景:行政部門の効率化・活性化をはかる上できわめて有効な民間企業における経営理念・手法であると見なされていたから。
- 「十分な PDCA サイクルの不足」=PDCAサイクルが,その相対的な多寡を何らかの方法によって測定できるものと想定。
- 2008学士課程答申:内部質保証が初めて登場,しかし解説・定義がされない。→大学評価ハンドブックで「内部質保証とは,PDCA サイクル等の方法を適切に機能させることによって,質の向上を図り,教育・学習その他のサービスが一定水準にあることを大学自らの責任で説明・証明していく学内の恒常的・継続的プロセスのことをいう。→ その中でのPDCAの解説:「経営学で言われてきたPDCAサイクル」← しかし,経営学でPDCAサイクルは重要な用語として定着していない(経営用語ではある)。
- 制度的要請(圧力)への対応は2つ:脱連結(やり過ごし・面従腹背)と被植民地化(黙従・過剰同調)。
- 教育・研究に関してPDCA管理は無意味 → PdCa(実行と改善は伴わないが,計画と評価の作文だけは素晴らしい)
- 創造的誤解:理想的な状況を描いたものを手本に日本に根付かせる。
- 破滅的誤解:統計的品質管理(デミング)→PDCAサイクル
- NPMに含まれる矛盾:現場に大幅な裁量権を認める⇔現場を中央集権的に統制する → 混乱を生んでいる&マイクロマネジメントになりやすい。
- PDCAはポンチ絵映えするため魅力的⇔現場は経営ごっこの小道具でしかないと見抜いている。
- PDCAの禁止語化とポンチ絵禁止をすべき。
2018/11/14
中原淳・島村公俊・鈴木英智佳・関根雅泰(2018)『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』ダイヤモンド社
- 研修:組織の掲げる目標のために、仕事現場を離れた場所で、メンバーの学習を組織化し、個人の行動変化・現場の変化を導くこと。
- 研修で学ぶことができ、組織目標達成にポジティブな影響を与えている(=行動変化・現場の変化が起きている)研修にしか価値はない。
- 研修で学んだことの60~90%は、職場で実践されていない(Sackes and Haccoun 2004)。
- 研修転移:研修で学んだことが、仕事の現場で一般化され役立てられ、かつその効果が持続されること。
- 研修転移が駆動するには、トランスポートと類似度(学習内容と類似度が高い状況への転移)が重要。
- 4レベル研修評価:レベル1~2=効果的な研修であるかを評価、レベル3~4=研修の効果を評価。特に行動こそが、研修転移を促す要因として重要。
- 研修転移の促進モデル
- 転移プロセスモデル(Baldwin and Ford 1988):
- インプット:受講者の特徴(能力、性格、意欲)、研修設計(学習原理、一連の流れ、研修内容)、職場環境(支援、使用機会)
- 研修のアウトプット:学習と保持
- 転移の状況:一般化と維持
- 移転マトリックスモデル(Broad and Newstrom 1992):
- 役割者(マネジャー、講師、受講者)と時間(研修前、研修中、研修後)の2軸で転移マトリックスを提示
- 使用度(転移戦略として現在最も使われているものは何か)と影響度(転移戦略として最も影響力があるものは何か)を聞くインタビューで、転移戦略を抽出。
- マネジャーの雰囲気の5段階:抑止的(禁止)、やる気をそぐ(不快)、中立的(無視)、奨励的、要求的。
2018/11/13
Nembhard, I. and Edmondson, A. (2006) "Making it safe: The effects of leader inclusiveness and professional status on psychological safety and improvement efforts in health care teams", Journal of Organizational Behaviour, 27, 941-966
- 医療チームで、リーダーの行動がメンバーの心理的安全にどう影響するか?
- 医療現場は、医学的知識の発展スピードが速い、専門分化が進行、医療職種間の相互依存性が高まるの3つの特徴がある。そのため、オープンコミュニケーションと相互承認が重要。
- しかし、チーム単位での質向上において、協働を阻害する要因も多い。
- 負荷が高い取り組みで、失敗するとハイリスクであるなら、質向上の取り組みはどうしもて集権的・階層的なものになる。
- 職種間の情報共有では、包括的な情報処理が必要がだが、そうした負荷の高いコミュニケーションは起こらない。
- 医療職種間には強固な階層構造が未だにある。多くの失敗事例で、医師は他職種からの重要な情報を無視している。
- そこで、リーダーの包摂性を鍵概念として、チーム内のステータスと心理的安全の関連性を考察する。
- ステータス:年齢、学歴、人種、性別、役職などの属性に基づく個人的な力(卓越性、尊厳、影響力)のこと
- 高ステータス者ほど、下位のものより有形・無形の恩恵を組織内で受ける。
- 組織のイノベーションは、少数意見を採り上げなければ起きないが(Nemeth 1986)、高ステータス者が議論を占拠して、それを阻害する。
- 低ステータス者が意見を言えるかは、心理的安全が重要で、それは高ステータス者の振る舞いに左右される。
- 調査では、以下の仮説を検証する。
- 学際的チームでは、高ステータス者ほど心理的安全性を感じる。
- ステータスとメンバーシップの関連性が、心理的安全度を決める。
- リーダーの包摂度が、心理的安全を高める。
- リーダーの包摂度が、ステータスと心理的安全の関係性を調整する。
- 心理的安全度は、質向上の取り組みにプラスに働く。
- 心理的安全度は、リーダーの包摂度と質向上の取り組みの関係を調整する。
- 23NICUの1375/1440職員のデータを使用(100医師、998看護師、131呼吸器技師、146専門職)
- リーダーの包摂度が高いほど、低ステータス・高ステータス双方とも、心理的安全度が高い。
2018/11/12
中村瑛仁(2015)「教員集団内における教職アイデンティティの確保戦略」『教育社会学研究』96,263-282
- 教員の自己意識:教授方法,職業的発達のあり方,教育現場の変化への反応等,専門性に関わる教員の意識・行為を条件付けるもの。
- 教員文化:教える仕事の困難に直面した教員たちが,その困難を乗り越 えるなかで形成してきた職業文化。
- アイデンティティ・ワーク(Snow and Anderson 1987)に注目:自己(self-concept)に対して,適合的,肯定的なアイデンティティ(personal identity)を創造,表現,維持するための人々の行為
- アイデンティティは人々が実践を通じて(特に表現活動)構築する。
- アイデンティティは社会的アイデンティティと自己との交 渉過程の中で捉える。
- 教員:多様な役割期待を向けられることで,自らの理想とする「教員としての自己」と,求められる教員役割との間に乖離が生じやすい職業的課題を有する。
- 中学校の事例
- しんどい子がいる学校→家庭背景が不安定な生徒を学校へ包摂する教職観+包摂するために生徒との信頼関係を重視した「つながる」指導観。
- →学校状況変化で新しい教員役割が現れ,伝統的な役割を問い直す動きに(=しつける教員:全ての生徒に対して社会性を身につけさせる教職観+集団の統制を通じて学校秩序を形成する指導観)。
- つながる教員としつける教員の役割葛藤 ⇔ 教員集団内の対立・問題の露呈は,生徒・保護者に対する教員権威を損ねる ← 指導観一致が規範化されている。
- 3つのアイデンティティワーク
- 異化(distancing):付与される社会的アイデンティティと自己との間に距離を保とうとするアイデンティティ・ワーク
- 過去のつながる教員を正当とみて,今のしつける教員と距離をとる。
- 調整:教員集団の状況に合わせて,適切な教員役割を選択する流動的な教職アイデンティティを表現するアイデンティティ・ワーク
- 2つの役割を相対的に捉え,状況に応じて役割を選択して,葛藤を処理する。
- 再定義:教員役割に対して新たな意味付けを行うことで,自身にとって適合的な教職アイデンティティを創造するアイデンティティ・ワーク
- どちらかの優位性が表れ,一方が劣位な役割として位置づけられる。
2018/11/09
保田直美(2014)「学校への新しい専門職の配置と教師役割」『教育学研究』81(1),1-13
- 専門職システム論(Abbott 1988):近接する複数の専門職を、ここの職務に対する管轄権を巡って相互作用する1つのシステムとして捉える。
- 専門職が公的なメディア、法的な議論、職場の折衝の中で、競争的な主張を行うことで確立される。
- 確立されても、永続的・完全でないため、近接する専門職は相互作用のシステムを作る。
- システム内のある専門職の職務管轄権が変化すると、他のそれにも影響する。
- 専門職は仕事環境を完全にコントロールできない=専門的に不純な仕事が含まれる → 仕事をルーチンとそれ以外に分ける → ルーチンを専門職の中の下位部門・他専門職へ委譲する動きが起きる。
- 管轄権を確保する中で、一部がゲートキーパーの役割を果たすことで、排除と周辺化のプロセスを作る。
- 小学校の事例:
- SSWが「教員も知識を持てはできる」として専門性を強調しない(難易度の高いケースには介入)。→ ケース会議・カンファレンスシート作成を教員がやることとされる。SSWは教員のアセスメントに大きな問題はないと主張する。職務を独占し、聖域化しないことで、職務を委譲している。
- 日常性を重視することで、委譲された職務を遂行できる(シートに書き込む内容は専門的でなくてよい・カンファレンスは聞いたことなど日常的なことが中心。
- 教員がピックアップ・振り分けの双方で、ゲートキーパーとして他の専門職よりも強い権限を持っている。他の専門職に任せることは期待されず、日常的に関わることが期待される。
- 委譲するのはルーチンではなく、高度な専門的判断が要求される部分。残りは日常的な関わりとして、自ら関わる。
- なぜ教員は教科指導以外を委譲しないのか?
- 望ましいゲートキーピングを行う上で、日常に関わる情報が重要であるため。
2018/11/08
Stensaker, B. (2017) "Academic development as cultural work: responding to the organizational complexity of modern higher education institutions", International Journal for Academic Development
- FDerの役割:組織開発・組織政策立案が加わった(移ったのではない)。
- その背景には、大学の外部環境変化が大きい。大学は、より専門分化しつつ、より管理的になったため。→ 学内に専門職部署を増やした。学内はより分断化した。
- これは戦略計画への注目を生んだが、それがFDerの役割をどう変化させたかについての考察が少なすぎる。
- この間、学内の文化の細分化も進んだ。既存の学術文化に加えて、マネジリアリズムも加わった。→ 単に多様化が進んだのではなく、緊張関係が増えた。
- 本研究で言うCultural work:ダブルループ学習に起因する。
- 目標設定、意思決定、ルーチンの実施が、どのように知識の獲得と関連しているかに注目。
- CW:組織を発展させたり破壊する意図的な試みと定義される。
- CWは建設的にも批判的にも見ることができる。
- 教育は、教員、執行部、法令、経済界などが関与する分野なので、CWが重要。
- 教員・執行部コンフリクトは深刻:従来FDは、教授法の変化に注目できた。今の執行部要求は、必ずしも教育の質向上に合わないものが含まれてしまう(制度化、可視化重視のため)。
- 教員・職員コンフリクトも発生:ルール遵守を求めすぎる(シラバス様式など)。
- FDerは、執行部期待を背負うようになることで、CWができなくなっている=Provider-capture効果(Boud and Brew 2013)。
- CWはベストプラクティスを作ることではない。ローカルプラクティスを作ることの方が大事。
- 今後のFDはより執行部よりになるのは避けられないので、CWの力に注目して実践をすすめるべき。
2018/11/07
Nguyen, N. and Hansen, J. (2017) "The academic non-consultation phenomenon revisited: a research agenda," Learning Organization, 24(5), 312-326
- なぜ大学経営陣は学内のマネジメント研究者を頼らないのか?
- Watsonの9仮説(最後2つが説明力強)
- 一人の研究者が全てのマネジメント課題に答えられない。
- 知見が民間分野によるもので、大学に適応できない。
- マネジメントを知っていることは、マネジメントができることを意味しない。
- 自組織の分析は他組織の分析より難しい。
- 研究の処方箋が効果的であることは稀。
- 理論は実践への示唆をもたらすので、単純化されたアドバイスができない。
- 執行部が相談を好まない。
- 執行部からは自組織教員が十分なアドバイザーであると信用できない。
- 研究者にとって自組織のアドバイジングに関わるインセンティブがない・ディスインセンティブがある。
- → 学内には組織学習を阻害する要因がある。
2018/11/06
Ramjeawon, P. and Rowley, J. (2017) "Knowledge management in higher education institutions: enablers and barriers in Mauritius," Learning Organization, 24(5), 366-377
- 大学=knowledge-intensive, knowledge-creating organization
- 大学の機能:研究=知識創造、教育=知識拡散、コンサル=知識移転。本稿ではこれらをナレッジマネジメントとする。
- 大学のKM
- 大学は元々KMが組み込まれているが、明確なKM戦略がなければ促進できない。
- 大学のKMの促進・阻害要因
- 文化:大学は個人主義。KM文化をつくるには、大きな変化が必要。元々文化は複雑でどのような文化が効果的かは不明確。
- 技術:一般に促進要因とされている。
- インセンティブ:研究で評価されるため、KMの明確なインセンティブなし。
- リーダーシップ:重要な促進要因になりうる。
- 産学連携:KM促進が困難。
- 組織構造:非公式組織が重要。物理的レイアウトも相互作用促進に重要。
- 11人のベテラン教員(主に長)への45~60分の半構造化面接。Thematic analysisで分析。
- 結果
2018/11/05
フェファー,J.・サットン ,R.(2014)『なぜ、わかっていても実行できないのか 知識を行動に変えるマネジメント』日本経済新聞出版社
- なぜ実行されないか
- 問題を話し合っただけで仕事した気になる
- 過去のやり方にこだわり続ける(組織は過去で評価したがる)
- 部下を動かすために恐怖心をあおる
- 重要でないことを評価する(知識の開発や活用に評価を役立てる:個々の活動でなく、全体を俯瞰した評価をする。結果だけでなくプロセスに注目する。文化や哲学を反映した評価をする。学んだ知識を生かした評価をする。)
- 業績を上げるために競争させる
- 組織の業績はマネジャーの知識量でなく、いかにうまくその知識を行動に変えられるかで決まる。
- 知識を行動に変えるポイント
- どうやって、より、なぜ?:大事なのは哲学
- 人は創造的で考える個人であり、学習能力がある
- 人には責任能力があり、信頼できる
- 人は過ちを犯すものである
- 人は社会に積極的に貢献したいし挑戦を好む
- 人は数字や機会ではなく、ユニークな個性を持つ個人として尊敬されるべきものである
- 行動すること・教えることで知識は身につく
- 問題にぶつかって試さないと知識は身につかない
- 素晴らしい計画やコンセプトより行動がまさる
- 行動すれば間違いも起こる
- 学習とは試してみることの延長である。人は失敗から学べるので、理にかなった失敗を怒りの対象としてはいけない。
- 恐怖心はギャップを広げる
- 競争を組織内の動機づけに使うのと、組織ぐるみで市場の戦いに勝つことを混同しない
- 組織が成功するには、誰でも理解できる戦略と、日常の仕事ぶりを判断する2,3の重点的な評価項目があればよい
- ギャップがわかったら行動せよ。
2018/11/02
「大学教育改革の現段階」『IDE現代の高等教育』No.605
金子元久「大学教育改革の現段階」
- 提出物にコメントをつけて返すの経験は3割程度 ⇔ 学生の自律的学習時間との関連の強さは提出物へのコメントが最も効果が大きい。(効果的な教授法の普及率が最も低い。)
- なぜ学習時間が増えないのか?20年間変化なし
- 組織改革は政策誘導で進んだが、教育は教員個人の裁量が未だ大きい。
- 教員の教育にかける時間が十分増えていない。
- 授業と授業外の相互行為を軸とした授業がされていない。
- カリキュラム=学習者に与えられる学習経験の総体=(1)制度化されたカリキュラム(国家・行政)、(2)計画されたカリキュラム(教育課程)(大学・学部・学科)、(3)実施されたカリキュラム(教員)、(4)達成されたカリキュラム(学生)の重層性を持つもの。
- 大学はこれらが独立ししていて、自由に振る舞うことができた=教育改革が学習改革に結びつかなかった。
- なぜ改革は実質化されないか
- 改革のデザインが悪い(キャップ制の幅が大きすぎるなど)
- 学生の合理的履修行動(3年早取り)
- → 単位制度は見直しの時期。成果で測る。
濱中義隆「大学生の学習時間は変化したか」
- 学習時間変化なし。
- アルバイト増加:経済的に厳しい学生の増加ではなく、景気回復・人手不足で、雇用機会増・時給増でアルバイト学生が増えた。(なぜなら週16時間以上バイトは増えてない)。
- 学習時間増には、コメント返却など、教員の負荷の大きい改善が必要。
- ただし、それだけでは疲弊するだけ。授業内容の標準化、開講科目数削減などの組織的改善の推進が必要。
広田照幸「大学教育の分野別質保証と参照基準」
- 国際的にみると、質保証は単一の物差し(同等性)ではなく、比較可能性(comparability)が担保された仕組みであればよい。
2018/11/01
青木久美子(2005)「学習スタイルの概念と理論」『メディア教育研究』2(1),197-212
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